- 54 :78 ◆pP.8LqKfPo :2006/06/25(日)
10:34:29.04 ID:glZnZBfU0
- 第4話( ^ω^)毒男の昔話だお!
('A`)「俺の親父は、飛行機械技師だったんだ」
( ^ω^)「すごいお。息子も優秀なら、親父も優秀だお」
('A`)「いやあwwww
まあ、親父は俺ほどいい大学出てないがなwww」
( ^ω^)「自慢ktkrwwwww」
(`・ω・´)「ぶち殺すぞ毒男。」
('A`)「いや、スマンかったwww
で、飛行機械を作る親父の背中に俺はあこがれていたんだ。
でも、飛行機械は危険だからって、親父はあまり俺を乗せてはくれなかったな。」
そういうと毒男は芋焼酎を一口、口に含んだ。
グラスの中の氷が、からんと乾いた音を立てる。
- 55 :78 ◆pP.8LqKfPo :2006/06/25(日)
10:35:21.51 ID:glZnZBfU0
( ^ω^)「息子思いのいい親父さんだお」
('A`)「そうだなwいい親父だったよ。
今でも俺は親父を尊敬してるよ。
で、親父の作った飛行機械に乗せてもらったことが何度かあったんだ。
はじめて飛行機械に乗せてもらった時のことは今でも忘れねぇ。
飛行機械から見る世界は広大で、荘厳で、風が生き物のように吹き抜けていったな」
毒男は語りながら目を細めた。
その目は、今は遠い、もう戻らない過去の光景を見つめているのだろうか。
- 56 :78 ◆pP.8LqKfPo :2006/06/25(日)
10:36:16.74 ID:glZnZBfU0
- ('A`)「で、俺が中学に上がる前くらいかな。
あの日はやってきた。
夕食を食べ終わった後、親父は言ったよ。
『俺は世界の裂け目を超える』ってな。」
( ^ω^)「・・・・。」
('A`)「お袋はずっと黙っていた。
ただ一言だけ、こう言ったよ。
『見送りはしない。ただ、必ず帰ってこい。』ってな。」
(`・ω・´)「・・・お袋さんは、きっとその日が来ることをわかってたんだろうな。」
毒男は、少し寂しげな笑みを浮かべて頷いた。
バーには、いつの間にかブーンたち以外、誰もいなくなっていた。
毒男が再び語りだすまでの間、シャキンがグラスを磨く音だけが、バーに響いていた。
- 57 :78 ◆pP.8LqKfPo :2006/06/25(日)
10:38:45.85 ID:glZnZBfU0
- ('A`)「俺は親父が大好きだった。
だから親父には行ってほしくなかった。
憧れる親父の太い腕、広い背中。そんな親父の姿を、俺は見失いたくは無かった。
でも、夕食のとき言えなくてな・・・。
それで次の日の早朝、俺は親父の工場に行ったよ。
親父を引き止めるつもりでな。」
('A`)「だけど、飛行服に身を包んだ親父を見たとき、俺は涙しか出なかった。
あの涙はなんだったんだろうな。今でもわからない。
そんなただ泣くだけの俺を親父は抱きしめてこう言ったんだ。
『お前たちには本当に悪いと思ってる。
だけど、これは父さんの夢なんだ。
この夢をあきらめれば、俺は干からびた魚みたいになっちまう。
そんな姿、お前たちには見せたくないよ。』」
毒男は再び目を細めた。
きっとその目は、あの日の自分と、そしてあの日の父親を見つめているのだろう。
- 58 :78 ◆pP.8LqKfPo :2006/06/25(日)
10:39:53.56 ID:glZnZBfU0
- ('A`)「最後の親父の言葉は今でもはっきり覚えている。
『だめな親父でごめんな。
だが、父さんは必ず戻ってくる。
だからその時は、また一緒に飛行機械で空を飛ぼうな。』
・・・だけど、親父は戻ってこなかった。」
ブーンは毒男の方をちらりと見た。
空になったグラスを見つめる毒男の目が、きらりと涙が滲んでいるように見えたのはブ
ーンの見間違いだったのだろうか。
- 59 :78 ◆pP.8LqKfPo :2006/06/25(日)
10:40:42.22 ID:glZnZBfU0
- ('A`)「親父が行ってすぐ、世界の裂け目に挑むことは禁止されてな。
今思えば、親父が急にあんなことを言い出したのは、世界の裂け目に挑戦することが禁止されるのを知ってたからなのかもしれないな。
それからお袋は、愚痴の一つも言わないで
親父の残した工場のきりもりをしながら俺を育てたよ。
で、高校生のときに俺が飛行機械技師になるって言ったとき、
お袋は通帳を取り出してこう言ったよ。
『父さんの残したお金はすべてこの中にとってある。
お金の心配はしないで、お前は思いっきり夢をかなえな』ってな。」
- 61 :78 ◆pP.8LqKfPo :2006/06/25(日)
10:42:02.37 ID:glZnZBfU0
- ( ;ω;)「おおお〜親は偉大だお〜〜〜」
('A`)「ばっ、馬鹿、泣くなよw」
(`;ω;´)「・・・・・」
('A`)「お、お前もか!
・・・まあ俺もそのときは号泣したけどなw
そんなお袋も、もう死んじまっていないがな。
で、俺は死に物狂いで勉強してVIP大学に入った。
でもそのころには飛行機械を作ること自体禁止されていてな。
しょうがないから、他の工学系の学部に進んで、勉強を続けた。
で、設計図も完成していざ飛行機械の製作に取り掛かろうとしたら、
大学にばれて退学になっちまった、てわけよ。」
- 64 :78 ◆pP.8LqKfPo :2006/06/25(日)
10:45:01.46 ID:glZnZBfU0
( ^ω^)「なんか落ちがぱっとしないお」
('A`)「うるせえwwww」
( ^ω^)「でも、今でも飛行機械の製作は続けてるんだお?」
('A`)「当たり前だ。
大体、このニー即シティに住んでるのも、ここが世界の裂け目に最も近い都市だからだしな。」
( ^ω^)「おkwwww把握した!」
- 65 :78 ◆pP.8LqKfPo :2006/06/25(日)
10:46:17.36 ID:glZnZBfU0
- ('A`)「で、次はお前の番だ。」
( ^ω^)「お?」
('A`)「なんでお前は世界の裂け目を超えたいんだ?
わかっているとは思うが、今では世界の裂け目を超えることは、お前だけでなく
家族や周りの人々にまで刑が及ぶ重罪だ。
理由しだいでは、俺はお前に協力できない。
・・・マスター、もう一杯。」
(`・ω・´)「ほれ。テキーラ。」
('A`)「ちょwwwだから違うwwっうぇうぇww」
- 66 :78 ◆pP.8LqKfPo :2006/06/25(日)
10:47:06.60 ID:glZnZBfU0
- シャキンは芋焼酎を毒男に差し出した。
一口、口に含んで、毒男はブーンに向けて問いかけた。
その顔は、冗談やごまかしを許さない、厳しい男の目だった。
('A`)「さて、もう一度聞く。
ブーン、お前は何で世界の裂け目を超えたいんだ?」
( ^ω^)「・・・・・・僕は孤児だったお。」
第4話 完