51 : ◆X5HsMAMEOw :2007/07/07(土) 20:24:36.14 ID:vh6HcH7A0
ブーンがセイント(聖者)になったようです。

エピローグ「神官の手記」


この世に悪があるとしたら、それは人の心だと。
そういった人間もいた。あながち、間違っちゃいないと思う。
人間がいなければ、悪という感情は生まれないだろうから。

だから、本当の悪が何だったのかは僕にも実際よく分からない。
トリーシャ様が昔倒した悪と言うのはヴァンパイアで、オルミアたちがもし、その子孫だったのなら、オルミアたちにとってそれは正義になったのだろう。
要するに感じ方の問題なのだ。だから難しい。

まあ、どうでもいいことではあるが。
53 : ◆X5HsMAMEOw :2007/07/07(土) 20:26:12.55 ID:vh6HcH7A0
結局その後、ミルナ様の姿はもう見ていない。
外に出たとき、魔術士もヴァンパイアも全員殲滅されていた。
けど、ミルナ様の姿もなかった。おそらく、僕らがオルミアを倒したからだろう。
もともとミルナ様は死人。オルミアの力を受けていたにすぎない。
悲しかったが、平和の代償だった。ショボもクーも、ほんの一瞬再開できただけでも幸せだったと納得してくれた。


ドクオはと言うと、やはり詰め所に戻ったようだ。
ブーンの警護をしている時に、詰め所には報告もよこさずそのまま付いてきていたのだから、ドクオの扱いは行方不明になっていた。
そして不幸なことに、リスボン崩壊が同時期に起きる。
何日たっても帰ってこないドクオを、仲間達は皆リスボンで死んだものだと思っていたから、ドクオが町に帰ってきたときはたいそう驚かれたものらしい。

そうそう、彼の持っていた退魔銀の剣だが、やはり僕が預かっている。
また何か起こったときのために、今度は僕がこの剣を持つにふさわしい人間を見つけ、育てていかなければならないのかもしれない。
56 : ◆X5HsMAMEOw :2007/07/07(土) 20:27:47.29 ID:vh6HcH7A0
ショボとツンは、リスボンへ戻った。
崩壊しきったリスボンだったが、復興を願う二人の気持ちの下、今では立派に栄えた都市となっている。
だが、二人の存続は不明であったりする。
リスボンを立て直す計画を立て、協力してくれる仲間を募ってはいたのだが、リスボン復興作業中、人も多くなってきた頃合にぱったりと姿を消してしまったそうな。
結局リスボンは復興したのだから、もしかするとひっそりとリスボンに住んでいるのかもしれないし、どこか山の奥にでも住居を構えているのかもしれない。

だから、ショボとツンとはあれ以来もう会っていない。
退魔銀の杖も、ツンの子孫に受け継がれていくのだろう。少なくとも僕は、それで良いと思う。



そしてクーと僕はと言うと、実を言うと両方孤児で。
それでミルナ様に引き取っていただいたものだから、山奥の修道院が潰れてしまった今、行き場所がなかった。

仕方なくオズヴァから一番近かった帝都に住み着き、教会に住み込みで働くようになった。
そしてその内、術力が認められ、僕は今のこの地位を獲得したと言うわけだ。
ちなみにクーも神官として、帝都の教会で現役中。

まあ、大神官なんて僕にはお似合いじゃあないけどね。
僕より優秀だったクー、そしてミルナ様よりも上の地位に行ってしまうなんて、何だか気が引ける。
ちなみに右目は、義眼をしているものの、やはり視力は二度と戻らなかった。
58 : ◆X5HsMAMEOw :2007/07/07(土) 20:29:14.21 ID:vh6HcH7A0
まあそんなこんなあって、世界は今も平和です。
最初にも言ったが、僕はやっぱりこんな身分になっても神様の存在なんか信じちゃいない。
神様がいるなら、全てを善へと導いてくれるのだろうから。
そうしたら、何かで悲しむ人も、悪という言葉さえも存在しないだろう。

あくまでこれは僕の論理。
もしかしたら、神様はいるのかもしれない。

だけど、未来って言うのは神様っていう寄り辺が作ってくれるものじゃない。
僕達一人一人が作り上げていくものだ。
その経緯が、僕は大事だと思っている。


僕がセイントになったのは、突拍子もない偶然だけど。
そんな偶然だって、人が作り上げた必然なんだ。


そのことが善だったか悪だったか……?
それは、あなたの中で決断してみてください。

                           〜大神官ブーンの手記 終章より〜



( ^ω^)ブーンがセイントになったようです:完

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