3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 22:01:12.04 ID:4g7Uk6Z2P


 原住民の一団がやってきた。

 先頭はデレとジョルジュだった。
 二人は堂々と、まっすぐに入植地の門に向かって歩いていた。


 二人のうしろには十人ほどの褐色の若い男女が付いてきていたが、
 彼らのほうはおっかなびっくりといった感じの及び腰で、そろそろと入植地に近づいていた。




   川 ゚ -゚)は探しているようです  第八話

7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 22:06:58.80 ID:4g7Uk6Z2P
一.


 柵の上に作られた回廊から、ドクオは近づきつつある原住民の一団を眺めていた。
 デレがドクオを見上げて、親しげに手を振ってきた。


ミ,,゚Д゚彡「何ですか、連中は」

 フサが回廊の上で、油断なくマスケット銃を用意しながら、ドクオに尋ねた。

('A`)「俺が招待したんだ。一度こっちに遊びに来いって」

ミ,,゚Д゚彡「招待? 何でまた…」

('A`)「原住民とは仲良くしておいたほうがいい。食料のことだって、また頼まなきゃならんからな」


 ドクオは手近の部下に、門を開けるよう指示を出した。

8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 22:09:01.93 ID:4g7Uk6Z2P

 しばらく経った。
 門をくぐって入ってきたのは、デレと、ジョルジュと呼ばれた体の大きい若者だけだった。


 ドクオは回廊を降りて、二人を出迎えた。

('A`)「あれ? 二人だけか? 一緒に来た他の連中は?」

 流暢なラウンジ語でドクオは尋ねた。

ζ(゚、゚*ζ 門の外で 待ってる

('A`)「は?」

ζ(-o-*ζ みんな 中に入る こわい 言う。

('A`)「…あ、そう」

 ドクオは軽く一つ鼻を鳴らした。


9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 22:10:59.48 ID:4g7Uk6Z2P

('A`)「まあとにかく、ようこそ、ニューソク植民地へ。
   族長との約束のこともある。いろいろと見ていってくれ」

 門の周りには、仕事の手を休めたたくさんのニューソク人が集まってきて、
 物珍しそうに原住民の二人を見物している。

( ФωФ)「ふーん。色は黒いが、顔つきはアフリカってよりアジア系に似てるな、こいつら。
       アフリカ人より肌は薄い色だし」

 古参水兵であるロマネスクが言った。

(-_-)「……お!」

( ФωФ)「ん?」

(-_-)「か…可愛い…」

 ヒッキーはデレを一目見るなり、ふらふらと吸い寄せられるように、そちらに近寄っていった。
12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 22:13:07.98 ID:4g7Uk6Z2P

 そんなヒッキーの前にジョルジュが立ちはだかった。
 むきだしの上半身に、鍛え抜かれた無駄のない筋肉をあらわにして、
 強そうな瞳で、デレに近づくヒッキーをじっと睨みつける。

 それで、ヒッキーは不満げにすごすごと、見物の水兵たちの輪のなかに戻っていった。

( ФωФ)「ああいうのが好みなのか?」

(-_-)「お…女なら…なんでも可愛い…」

 ヒッキーの答えに、ロマネスクはあきれ顔で肩をすぼめた。

( ФωФ)「まあ、たしかにあの集団の中じゃ、あいつが一番可愛いな」

 腕組みをしたロマネスクは、うんうんと頷いた。


13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 22:15:01.87 ID:4g7Uk6Z2P

 ドクオの案内で、二人の原住民はニューソク植民地の中を見て回った。
 なぜかヒッキーは一行の後をずっとついて回ってきた。

 会話はデレとドクオの間でのみ交わされた。
 ジョルジュはラウンジ語を解さなかったからだ。

 そのぶん、ジョルジュはぴったりとデレのそばについて回った。
 時折するどい目でドクオを睨みつけ、威嚇するようなしぐさを見せることもあった。

('A`)(護衛の役目でも仰せつかってるのかな)

 ドクオはどうも、この体格の大きい原住民の若者が苦手だった。

15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 22:19:06.63 ID:4g7Uk6Z2P

 厨房に使っている建物を案内したとき、デレの顔がぱっと輝いた。

ζ(゚ー゚*ζ これ きれい! これなに? なに?

('A`)「え? そりゃただの鍋だが…」

ζ(゚ー゚*ζ これは? これは?

('A`)「それは皮剥き器。それはお玉」

ζ(゚ー゚*ζ きれー…

 デレは目をきらきらさせて、それら銅製の厨房器具を眺めていた。
 ドクオは不思議そうにその横顔を眺めていた。

('A`)「あ、ひょっとして、銅を知らないのか?」

 ドクオはぴかぴかに磨き上げられた銅製の鍋を持ち上げて、言った。
 艶やかな金属光沢が、窓からの白い光をきらきら反射する。

ζ(゚ー゚*ζ ……?

('A`)「ああ、それで銅製品に惹かれたわけか」

 デレは銅鍋の取っ手を持って、うっとりとそれを眺めている。

17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 22:21:11.49 ID:4g7Uk6Z2P

('A`)「ほしけりゃ、やるよ」

ζ(゚ー゚*ζ …えっ! これ くれるの?!

('A`)「ああ。俺達から君らの王様へのプレゼントだ」

ζ(゚∇゚*ζ やった!

 デレは無邪気にドクオに飛びついてきた。
 予想もしていなかった突然のデレの行動に、ドクオは思わずどきりとして、たじろいだ。

 ジョルジュが一層厳しい目でドクオを強く睨みつけた。
 物陰からヒッキーがうらやましそうにドクオを見ていた。

('A`)「お、おい!」

 ドクオはデレをぐいっと手で押した。
 押しのけられてデレは、少し寂しそうな顔をした。

19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 22:23:01.58 ID:4g7Uk6Z2P

 次にドクオは、海岸近くの工作場に二人を案内した。

 広い工作場では、難破したパートレム号の部品を使って、新しい船を作っていた。
 春になったら大西洋を渡り、ニューソク本国へ連絡をつけに帰るための船だ。

 見上げるように大きな、高い船体が作られていた。

 こんなに大きな木造の建築物を見たことがなかったデレとジョルジュは、
 作業台の下でぽっかりと口を開けて、作業中の船体を眺め上げた。


('A`)「骨組みはおおむね出来たので、船体を張り始めたところだ」

 ドクオは各部を指差しながら解説した。

('A`)「まだマストが無いので帆を張ることはできないが、沿岸部なら櫂走も可能だ」

 船に関する技術的な話は、どうも二人には伝わらなかったようだ。


20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 22:24:59.19 ID:4g7Uk6Z2P

 こうして、原住民とニューソク人たちの最初の顔合わせは終わった。

 入植地をひとまわり見学したデレは、
 プレゼントされたぴかぴかの銅製の鍋をなぜか頭にかぶって、
 満面の笑顔でドクオに手を振って、帰っていった。

ミ,,゚Д゚彡「あいつら、鍋を何に使うんでしょうね」

('A`)「さあ…」

 ドクオは彼らに向けて手を振りながら、不思議そうに答えた。
 ヒッキーは見送りの列の中で、名残惜しそうにデレの姿を目で追い続けていた。

23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 22:27:23.91 ID:4g7Uk6Z2P

 こんなふうに、ニューソク人と原住民は互いの村と入植地を行き来して、平和な関係を築いていった。


 他の多くの例とは異なり、ニューソク人と原住民との出会いは幸運に彩られたものだった。

 ニューソク人は征服の意図を持たなかった。征服できるだけの軍事力が無かったことが、ここでは幸いした。
 原住民のほうも、自分たちの土地から侵入者を排除しようと攻め寄せることはしなかった。
 排撃よりも交易と共存を選んだのだ。

 ドクオはデレはじめ王の子供たちに、ニューソクの言葉と文明を少しずつ教えた。
 六分儀や建築技術や地質学には、彼らはあまり関心を示さなかった。
 かわりに音楽や万華鏡や天文学にはおおいに興味をひかれたようだ。

 そのおかえしに、原住民たちは時折入植地にやってきては、
 新大陸でのさまざまな生活の知識を教えてくれた。
 この地に適した「とうもろこし」という穀物の栽培を教えてくれたり、漁場を紹介してくれたり、
 七面鳥の捕まえ方と捌き方を教えてくれたりした。

25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 22:32:00.56 ID:4g7Uk6Z2P

 デレは現地人の王の末娘で、聡明な子供だった。
 子供といっても年齢は今年で18歳になるという。
 目が黒く小柄な原住民は、ニューソク人から見れば、実際の年齢よりいくぶん若く見えた。

 王には十数人の子供がいたが、
 その中でもデレはとりわけ何にでも関心を示し、物事の理解も早かった。
 物怖じするところがなく、人懐こいために、ニューソク植民地の中をひとりで歩き回り、
 作業をしている水兵たちに覚えたてのニューソク語で話しかけてまわっていた。

 そんな彼女だが、ニューソク人の中でもヒッキーだけは避けた。
 ヒッキーはしつこくデレに付きまとい、隙があれば彼女の体を触ろうとするし、
 そうでないときもいつもいやらしい目でじろじろとデレの全身を舐めるように眺め回しているのだ。
 
('A`)「おいヒッキー、ほどほどにしておけ」

 そう諌めるドクオに対し、いつもヒッキーは恨めしげな視線を投げかけ、
 すごすごと退散していくのだった。

27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 22:35:12.38 ID:4g7Uk6Z2P

 ドクオはときどき原住民の王と会談を持った。
 そういうときはデレが通訳に立った。

 人のいないところで話してみると、王は老人らしく、現実的な常識と知恵を兼ね備えた温厚な人物だった。

 彼は部族の若者たちの盲目的な愛国心を苦々しく思っていた。

「若者は白人と戦うことばかりを主張する。
 白い人間と戦えば、きりがない。彼らは海の向こうからいくらでも軍隊を持ってくる。
 それすらもわからず、あるいはわかっていても『勇気』の名を冠した蛮勇でもってことさらに無視し、
 我等の土地を寸土たりとも白い人間には渡さない、と若者たちは息巻いている」

 体の底に響くような深い声で、王はドクオに語った。
 ドクオはデレから原住民の言葉を教わりつつあり、少しなら王の言葉を直接理解することができた。

「ドクオよ、あなたがたにお願いする。どうか我が村の若者を刺激するような行動はやめてくれ。
 そうすれば、我々もあなたがたに食べ物を渡すことができるだろう」

 ゆらめく獣脂のろうそくの炎に照らされた大きな小屋で、ドクオと王はよく話をした。

31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 22:37:24.80 ID:4g7Uk6Z2P

 かくしてニューソク植民地は、とりあえずの危機を脱することに成功していた。


 本国から持ってきた小麦と大麦の栽培には失敗したが、
 原住民にもらった豆ととうもろこしは立派に成長していた。

 植民地内の建物も、入植から一ヶ月ほどであらかた完成していた。
 大きな教会を中心に、暖炉を備えた土壁の家が、植民地の柵の内側に立ち並んでいた。

 柵も立派なものができた。
 植民地をぐるりと囲むようにして、高さ4メートルもの丸木の壁が作られていた。
 壁の上には回廊も作られ、そこから外に向かって弓を射たりマスケット銃を撃ったりできる。
 二箇所に作られた見張り台からは遠くを見通すことができた。

 万一の防御の面でも、ひととおりのめどはたったということだ。
34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 22:39:54.78 ID:4g7Uk6Z2P
二.


 中秋の頃、秋晴れの一日だった。


 その日もデレはニューソク植民地に遊びに行くと言った。
 ジョルジュはそれを止めた。


 まばらな白樺の木々の間を通って、優しい太陽の光がいちめんに降り注いでいる。

 部族の村の出入り口で、頬をふくらませたデレがジョルジュに突っかかっていた。

ζ(゚、゚*ζ どーしてよ!
  _
( ゚∀゚) だめだ。お前は最近、やつらの砦に行き過ぎている。
     お前の護衛を王に命じられている身として、お前の行動を許すわけにはいかない。

37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 22:44:28.93 ID:4g7Uk6Z2P

ζ(゚、゚*ζ あの砦は安全よ! 白い人間たちは、私になにもしない。
  _
( ゚∀゚) あまりあいつらと親しくなるな。あいつらは敵なのだ。

ζ(゚、゚*ζ 敵? そんなことは無い。
  _
( ゚∀゚) いいや敵だ。白い人間は我々の食べ物をむさぼり、我々の土地にのさばる敵だ。
     今は羊の皮を被っているだけだ。いずれほかの白い人間どもと同じように、狼の本性を現す。
     我々の戦士を恐ろしい火の武器で殺し、女どもを襲い、家畜を奪い、村を焼き尽くす…

ζ(゚、゚*ζ ドクオはそんなことをしない!
       白い人間でなく私たちの同胞にも、好戦的な部族とそうでないのがある。それは族長の性質によるものよ。
       ドクオは優しくて、知恵があって、私たちに好意的な人間よ。
  _
( ゚∀゚) 好意的、だと…? 

 ジョルジュの言葉が怒気を孕み、強くなった。
  _
( ゚∀゚) 騙されるな。それはお前に対してだけだろう。

 デレは彼の放った威圧感に押され、怯んだ。

40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 22:46:03.76 ID:4g7Uk6Z2P

ζ(゚、゚*ζ …ど、どうしてあなたはあの人を悪く言うの。

 デレは精一杯の虚勢を張って、言った。

 ジョルジュはだしぬけにデレの腕を掴むと、ぐいっと自分のほうに引き寄せた。
 デレは小さな悲鳴を上げた。

 触れそうなくらい顔を近くに寄せて、ジョルジュは言った。
  _
( ゚∀゚) デレ、早く俺のものになれ

 デレはジョルジュに横顔を向けたまま、暗い顔で俯いた。

 沈黙の後、ジョルジュが言った。
  _
( ゚∀゚) …そうか、やっぱりお前は、あのドクオとかいう白い人間が好きなんだな


41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 22:49:13.54 ID:4g7Uk6Z2P

ζ(-、-;ζ ち、ちが…
  _
( ゚∀゚) あんなののどこがいいんだ。ひょろっと細くて情けない暗い顔つきの、真っ白な男なんか

ζ(゚、゚*ζ ドクオはそんなんじゃない!

 デレは思わず語気を強めた。


  _
( ゚∀゚) …忘れるな。お前は俺の許婚だ。ほかの男に目をやることは、この俺が許さん。

ζ(゚、゚*ζ あら、知らないの?
  _
( ゚∀゚) …?

ζ(゚、゚*ζ 最近のお父様は、あなたと私との婚約を取り消す、って言ってるわ
  _
( ゚∀゚) なん…だと…?

 二人は睨みあい、沈黙した。

43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 22:51:01.16 ID:4g7Uk6Z2P

ζ(゚、゚*ζ あなたが悪いのよ。あなたにこの部族の未来は任せられない、って言ってたわ
  _
( ゚∀゚) 王が…俺のことを…そんなふうに?

ζ(゚、゚*ζ いいかげん、戦争のことばかり考えるの、止めなさいよね

 そう言って、デレはくるりとジョルジュに背を向けると、
 そのままニューソク植民地のほうに向かって駆け出した。

 ジョルジュは舌打ちをして、その背中を追って、駆けた。
47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 22:54:15.99 ID:4g7Uk6Z2P

 ニューソク砦では、デレはいつも、ドクオのテントに通された。

 デレはほとんどいつもドクオの傍にいた。
 それは言葉を教わるという必要性があってのことだったが、
 時々楽しげにじゃれあって遊んでいる二人の姿は、
 どうもそれ以上の何らかの感情の存在を推測せざるを得ないようなものだった。

 だからますます、ジョルジュの顔は険しくなった。

 対抗するようにジョルジュも常にデレにぴったりと付いて回った。
 それは護衛という役割上当然であるともいえたが、
 彼は彼で、時として過剰ともいえる動作で、デレをニューソク人から「守ろう」とした。

 そんな状態で、しばし月日が過ぎていった。


48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 22:56:05.24 ID:4g7Uk6Z2P
三.


 秋が深まった。
 とうもろこしの栽培も終わり、いよいよ本格的な冬が始まろうとしていた。

ミ,,゚Д゚彡「でよ、さすがに俺っちも、原住民には感謝をせざるを得ないわけよ」

 麦わら帽を被ったフサが、山盛りの収穫物を前に、ドクオに語っていた。

('A`)「なるほど…」

 ドクオは腕組みをしてフサの報告を受けていた。

ミ,,゚Д゚彡「本音を言えばよ、みんな粗食ばっかり食わされての仕事仕事の毎日で辟易してんだ。
      ここらでいっぱつ、でかい祭りでもやらにゃあ、
      この植民地のニューソク人は全部が塞ぎの虫にとりつかれちまいますぜ」

 フサの後ろに控えた「元」水兵たちから、賛同の声が上がった。
51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 22:58:04.67 ID:4g7Uk6Z2P

('A`)「原住民を招いての秋祭り、『収穫祭』、ね…」

ミ,,゚Д゚彡「ああ。名目なんて何だっていいんだ俺たち。とにかく酒を飲んでバカ騒ぎできりゃあよ。
      ただまあ、これだけもの収穫物を獲れたのはあいつら野蛮人どものおかげだから、
      やつらにも振る舞い酒をして、ついでにおみやげの一つも持ってきてもらおうってわけでさ」

('A`)「なるほどな」

 ドクオは主計長に任命されていたシナーのほうをちらりと見た。

( `ハ´)「酒は大丈夫アル。原住民に振舞うくらいのグロッグはあるアル」

 ドクオは頷いて、少し考え込んだ。
55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 23:01:27.02 ID:4g7Uk6Z2P

('A`)「よし、趣旨はわかった。許可しよう。
   来週、十一月の第四木曜日に、原住民に感謝をささげる『感謝祭』を開催する。
   その前日は準備のため、植民地の仕事を休むことを許可する」

 フサが満面の笑みで指を鳴らした。
 後ろに詰め掛けた男たちが歓声を上げた。


 それから祭りの日までというもの、植民地の男たちの間ではその話題で持ちきりだった。
 皆は自分の生まれ育った村での祭りの様子を話し、やれどんな行事を行うだ、
 どんな飾りつけをするだといった話に花が咲いた。

 皮なめし工が、祭りのための派手な衣装を作り始めた。
 魚を獲っていた者は当日の料理をあれこれと考えて、厨師たちと議論した。
 厳重に仕舞っておかれていたニューソク国旗が取り出され、虫食いが無いか点検が始まった。


56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 23:05:22.64 ID:4g7Uk6Z2P

 祭りの朝が来た。

 男たちは前日の準備のときからこっそりと配給のラム酒をちびちびやっており、
 その日は夜明けと同時に、既にみんな上機嫌だった。


 朝日を浴びて、原住民の一団がニューソク砦にやってきた。

ミ,,゚Д゚彡「おーおー、来た来た」

 回廊の上から望遠鏡で眺め、フサが上機嫌で言った。

ミ,,゚Д゚彡「ざっと九十人ってところか。ずいぶんとたくさん来たもんだ」

 原住民たちは若いのもいれば中年もおり、男もいれば女もいた。
 みな祭りと聞いてとっておきの晴れ着でめかしこんでおり、
 手に手に果物や毛皮、干し肉といったおみやげを持っている。

('A`)「門を開けて、連中を中に入れてやれ」

 ドクオが指示を出した。


57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 23:07:19.04 ID:4g7Uk6Z2P

 植民地中央の広場は、色とりどりの幟で円形に縁取られ、飾り立てられていた。
 ヴァイオリン弾きが陽気な音色を奏で、太鼓打ちがリズミカルにそれを盛り立てている。

 門から入った原住民はたちまちできあがった水兵たちに取り囲まれて広場へと押し流された。
 水兵たちは赤ら顔で、ニューソク語でしゃべりまくりながらばんばんと背中を叩いてくる。
 とまどっていた原住民たちも、渡された杯を二、三回干すあいだに、すぐに大騒ぎの輪の中に加わっていった。

( ФωФ)「ンだよ、俺の酒が飲め、飲めねえってのか」

川 ゚ -゚)「やだよやだってば」

 杯を片手に、千鳥足のロマネスクはクーを追い回していた。

川 ゚ -゚)「酒をたくさん飲んだらバカになるんだよ! うちの酒場ではみんなバカになってたんだよ!」

( ФωФ)「だったらバカも悪くねえじゃねえか、え、秀才さんよ?
       ぐだぐだ言わずに、お、お、俺の杯を…」

 ロマネスクと一緒に、真っ赤な顔のヒッキーも、別の目的でクーを追い掛け回していた。
59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 23:09:21.69 ID:4g7Uk6Z2P

 広場に用意された大量の料理は、つぎつぎに皿が換えられて、人々の腹を満たしていった。
 原住民にはニシンと牡蠣の米料理が特に好評なようだった。

川 ゚ -゚)「やだよう」

 駆け逃げながらもクーは広場の周囲からは離れず、
 通り過ぎざまにテーブルの上の料理を拾っては、がつがつと胃に押し込めていっていた。

 近づいたヒッキーの魔の手から逃れるために、クーは一つながりのソーセージを脇に抱えながら飛び上がり、
 ヒッキーの頭を蹴ってどこかに飛んでいってしまった。


 頭を抱えてうずくまるヒッキーの前を、着飾ったデレが通り過ぎた。
 緑色の宝石と色あざやかな羽根飾りのついた装身具で、その日のデレは一段と美しかった。

 ヒッキーの顔が露骨にヤニ下がった。


60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 23:11:11.56 ID:4g7Uk6Z2P

 楽師たちは楽しげな踊りの曲を奏でていた。
 ヴァイオリン弾きと鼓笛隊が急造の笛とドラムで、
 いつもの勇ましい行進曲ではなく、もっと軽やかなステップを聞き手に要求するカントリー・ダンスを奏でていた。

 水兵たちは酔いながらも礼儀正しく現地人の女性を誘い、ダンスの輪へと駆り立てていった。
 原住民もニューソク人も、言葉は通じないまでも、お互いの技法の違う踊りの動きを、すぐに把握した。
 広場は笑いあい、舞い踊る男女で溢れ始めていた。

川 ゚ -゚)「やだよう」

 クーはまた誰かから逃げていた。ひき肉のパイを口いっぱいにほおばって走っていた。
 酒を飲めないクーを、みんなが面白がって杯を手に追い掛け回していたのだ。


61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 23:13:03.88 ID:4g7Uk6Z2P

 日も傾き始め、宴もたけなわとなってきた。
 どっちを見てもしゃべりまくる顔、顔、顔。
 好きなだけごちそうを食べて酒を飲んで、ニューソク人も原住民も大喜びだ。

 広場は耳も聞こえないほどのどんちゃん騒ぎだった。
 赤い顔と、ラム酒の甘い香りと、楽師たちが軽やかに奏でる音楽。


 騒々しい押し合いへし合いの中で、ぽっこり膨れたおなかを抱えて座り込んで、クーはふと思った。

川 ゚ -゚)(あれ? そういや、あいつの姿が無いぞ)


 少し、思い返してみた。
 たしかに今朝からのバカ騒ぎの最中、あいつ――ドクオの姿を見かけていない。
 回廊の上から「門を開け」という指示を出していたのが、今日最後に見た姿だ。

 クーは少し考えて、立ち上がった。
 そうして騒がしい人の輪を押しのけ押しのけ、いずこかへと駆け去っていった。

64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 23:17:14.45 ID:4g7Uk6Z2P
四.


 太陽はもう西の空にかかっていた。

 静かな崖の上に、真っ赤な夕日を投げかけていた。
 デレに教えてもらった、空の見える崖だ。


 大騒ぎの輪から抜け出してきたクーにとって、
 波の音と木の葉がこすれるかすかなざわめきだけのその静寂の世界は、
 不思議に心を落ち着かせるものだった。


 赤い光に照らされた緑の草原の崖に、ドクオは海を向いて座っていた。

川 ゚ -゚)「やっぱり、ここだったか」

 クーはドクオの隣に腰を下ろした。

川 ゚ -゚)「祭りの初めに抜け出してから、一日中ずっとここにいたのか?」


 ドクオは動かず、ただ膝を抱え、クーに横顔だけを見せていた。

66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 23:19:35.76 ID:4g7Uk6Z2P

 赤い夕日に照らされたその横顔は、クーがいままで見てきた水兵たちとはまったく感じの違う顔だった。
 知性をのぞかせた用心深そうな目、性格をうかがわせる皺の刻まれた額。
 そんな風貌が、危険なにおいのする謎めいた雰囲気を醸し出している。

 クーはこのドクオが酔っ払っているところを見たことが無い。
 銀色の髪が、彼の禁欲的な内面を表しているように思えた。


川 ゚ -゚)「食い物を持ってきたぞ。食べろ」

 ブドウ蔓で編んだ籠を、クーはドクオの前に置いた。
 祭りに出されていた料理を少しずつ選んでクーが詰めたものだった。


 ドクオは一瞬冷たくいやな顔を見せたが、
 黙って手を伸ばすと小さなとうもろこしのパンを手に取り、食べた。
68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 23:21:16.15 ID:4g7Uk6Z2P

川 ゚ -゚)「お前の姿が祭りになかったから、その、どうしてるのかと思って、それで…」

 クーは無言のドクオに少し戸惑いながら言った。

 ドクオは追い返すような目でクーを見るだけで、やはり無言だった。

 ただ…
 それはいつもの冷徹な拒絶の目つきではなく、どこか戸惑いを感じているような、そんな目だった。

 つらそうな、お願いだから一人にしてくれ、とでも言いたげなふうな…。
 そのときのドクオの目には、悪意をこめることができないようだった。

 ドクオは、変わってきている。


 そう思ったクーは、だしぬけに聞いた。

川 ゚ -゚)「なぜお前は、人を拒むんだ」

 以前と同じ質問を。

 聞かずにはいられなかった。
 ドクオの瞳を見ていると、まるで鏡の中の自分が苦しんで、助けを求めているようにも思えた。


69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 23:23:00.97 ID:4g7Uk6Z2P

 ドクオの顔が苦悩にゆがんだ。
 彼はもう、彼自身の防波堤をとどめておくことができなかったのだ。

('A`)「…お前は、お前はどうして、人を拒まずにいられるんだ?
   そんな恐ろしい経歴を持ちながら…」

 ついにドクオが口を開いた。

川 ゚ -゚)「どうして、って…」

 クーは考え込むそぶりを見せた。

川 ゚ -゚)「理由が要るのか、そんなことに」

('A`)「お前は人間を嫌いにならないのか?」

川 ゚ -゚)「フォックスとハインは嫌いだ」

 弱まっていく日差しの中で、クーの顔が少しだけ険しくなった。
 だがすぐに元の、感情を感じさせないいつものクーの顔に戻った。
71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 23:25:00.35 ID:4g7Uk6Z2P

川 ゚ -゚)「お前は人間が嫌いなのか」

('A`)「無邪気に信じることができた時代があった。世の中は公正で、人は清いのだと。
   悪いことをするのは、悪人たちだけなんだと」

 ドクオが語りだしたので、クーはそれに耳を傾けた。

('A`)「ところがそうではない。悪事をするのは、人間だ。人間は、悪事をするのだ。みんな、必ず」

川 ゚ -゚)「…?」

 クーはドクオを見た。彼が何を言っているのかわからなかったし、
 それにどう答えていいかもわからなかった。

 だがクーにはその時、少しの感謝の気持ちがあった。
 ドクオがこんなうち明け話をしてくれたのは、おそらく、私が始めてなのだろう。
 ドクオの唇は少し震えていた。

 クーは寡黙の殻を破ったこの不思議な男と、もっとつっこんだ話をしたいという気持ちになった。


72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 23:27:03.10 ID:4g7Uk6Z2P

川 ゚ -゚)「何かあったのか? その――事件というか」

('A`)「そんなこと、お前には関係無いだろうが」

 クーは露骨に眉をしかめた。
 ドクオの心の扉は、一瞬光を漏らしただけで、またすぐに閉じられてしまった。そう思ったからだ。

 そんなクーを見て、あわててドクオは言いなおした。

('A`)「ああ、いや、少し俺はせっかちに話しすぎたな。そう、そう、事件ね、いろいろあった。
   なに、遠い昔の記憶だ。つらいのはもう過ぎたし、今となってはそれらは、俺に良い教訓を残してくれた。
   すっかり茜色になった、小さい頃の記憶だ」

川 ゚ -゚)「そうか」

 ちょっとあった。崖の下に波のぶつかる音が一つ、した。

75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 23:29:01.29 ID:4g7Uk6Z2P

川 ゚ -゚)「うらやましいな」

('A`)「?」

 ドクオはちらっとクーを見た。

川 ゚ -゚)「茜色の、昔の出来事の記憶か。私にはそういうものがない。
     記憶にあるのは小さく汚い館での、思い返すのも嫌な出来事ばかりだ。
     それが、私の世界のすべてだったんだ」

 今度はドクオの瞳に悲しげな色が浮かんだ。
 自分に関することではない。他人の出来事に心を動かされた、哀しみの色だった。


 長いことドクオは黙っていたが、やがて言葉を続けた。

('A`)「ならば、いま作ればいい」

 ドクオは言って、崖のむこうに沈もうとしている夕日を指差した。
 細い雲もその背景の空も、目に映るすべての景色は、いちめんの茜色に染まっていた。

('A`)「綺麗だ」

 遠くに海鳥が何羽か、ドクオたちと太陽との間を羽ばたいて横切っていった。


76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 23:30:59.92 ID:4g7Uk6Z2P
五.


 同じ頃、赤い顔をしたデレが、ドクオたちのいる崖に向かって歩いていた。

 森の中は既に薄暗かったが、デレは何かにつまずく様子も見せず、
 足をふらふらさせながらも軽やかな足取りで森の中を抜けていく。

 入植地でのお祭りは既に終わっていた。
 ニューソク人たちは残念がっていたが、「日没から夜明けまでは軍人以外を砦に入れてはならない」
 という軍規がある以上、これはどうしようもないことだった。

 原住民たちはぞろぞろと陽気に浮かれ騒ぎながら、自分たちの村へと帰っていった。

79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 23:34:36.70 ID:4g7Uk6Z2P

 デレはそんな人々の群れから一人離れて、秘密の場所である「崖」へと向かっていた。
 少し海風にあたって酔いを冷まそうと思ったのだ。

 祭りだということで、いつもの口うるさいジョルジュも、ついてきてはいない。

 ジョルジュはじめ村の者たちのなかには、祭りに参加しない者もいた。
 敵のただ中で酒を飲むなどとんでもない、と言うのだ。
 それで、村には王をはじめいくらかの若者や老人などが、祭りには出かけずに残っていたのだ。


 デレはお目付け役がいない開放感に酔いしれながら、足取りもかろやかに歩いていた。

81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 23:36:00.00 ID:4g7Uk6Z2P

 何だかわからなかった。
 突然、自分に何かが覆いかぶさった。

 デレは地面に引き倒された。
 「何か」がそのまま上にのしかかってきた。

 酒臭い息がデレの顔にかかった。

(-_-)「デヘヘ…」

 ヒッキーの体が、デレの上に乗っていた。
 デレの胸を覆う皮の衣服をずらそうと、乱暴に右手をまさぐっている。
84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 23:39:00.39 ID:4g7Uk6Z2P

(-_-)「な、な、いいだろ? ちょっとだけ、すぐ済むから、なっ! ヒヒ…」

 ヒッキーはぶつぶつと呟いて強引にデレの口を押さえ、暴れないように右手を押さえつけた。
 そうして酒で真っ赤になった顔を近づけて、舌を延ばし、デレの首筋を舐めようとする。

 あまりの気持ち悪さに、デレは全身に粟が立った。

 叫ぶより早く、とっさに空いていた左手で落ちていた小石を握り、
 それを思い切りヒッキーの側頭部にたたきつけた。
 軽い石だったが、酔っ払いに対しては十分な打撃だったようだ。

(-_-)「いてえ!」

 一声叫んで、ヒッキーは跳ね上がった。
86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 23:41:12.28 ID:4g7Uk6Z2P

 デレはその隙に体をよじって、ヒッキーの体の下から逃れ、
 すばやく立ち上がった。

(-_-)「こ…このアマ…」

 右の側頭部を押さえて痛そうにヒッキーが呟く。
 小さな石だったので、血が出たりはしていないようだ。

 デレはヒッキーの股間を蹴り上げた。
 ドリフの金的の音がした。

 地面に崩れ落ちたヒッキーに、デレは軽蔑の視線を投げかけた。

ζ(゚、゚#ζ 最低! 大嫌い! ばか!

 デレはそう叫ぶと、胸元の衣服をなおしながら、森の奥のほうへと駆け込んでいった。
 酔いはすっかり冷めていた。

88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 23:43:42.15 ID:4g7Uk6Z2P

 しばらくあった。

 地面で悶絶しているヒッキーのそばに、原住民の筋肉質で褐色の足が踏み出され、
 積み重なった落ち葉をがさりと鳴らした。


 武器を持った原住民の若者が、倒れているヒッキーの前に立っていた。


89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 23:45:47.96 ID:4g7Uk6Z2P
六.


 すっかり夜だった。

 暗い森を駆けていたデレは、ふといやな空気を感じて、足を止めた。

 どこかでふくろうが鳴いていた。

 それは樹木のまばらなこのあたりの森にしては珍しく、少し樹勢が立て込んでおり、
 星も月の光もほとんど届かない、暗い場所だった。


 いくつかの小さな明かりが見えていた。
 獣脂のろうそくの光が、木々の間から漏れていた。


 デレは忍び足でその場所に近づいた。
91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 23:47:15.02 ID:4g7Uk6Z2P

 物陰からひそひそ声が聞こえる。
 デレの心臓が高鳴る。

 声は、ジョルジュのものだった。
 低く押し殺すような声だった。
 _
( ゚∀゚)「爺さんのそのまた爺さんの時代、この土地のすべては我々のものだった。
    素晴らしい土地だ。白樺の森が茂り、海には神と精霊よりの贈り物が溢れ、
    平原には家畜に良い草が満ち溢れている。
    だが…いまや、この土地には、白い人間どもの汚らわしい砦がはびこっている」
 _
( ゚∀゚)「白い人間どもが、この土地に根を出し、根付こうとしている。
    まずブラゲが来た。つぎにラウンジが来て、今ニューソクと名乗るやつらがやってきた。
    やつらは我々を追い払い、殺し、女を奪い、家畜を屠る。
    森を焼き、村を壊し、そうしてすべてをやつらのものにしてしまう」

 多くの人間がジョルジュの周りにいるようだ。
 ときおり賛意を示すように顎を上下させる姿が、ろうそくの炎に照らされて怪しく浮かび上がっている。


92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 23:49:39.33 ID:4g7Uk6Z2P
 _
( ゚∀゚)「白い人間はうそつきだ。ブラゲは我々の同胞に鎖をかけて鉱山で酷使し、
    ラウンジは交易相手を卑怯な策で破滅に追いやった。
    いずれ、ニューソクとか言うやつらも、我々を滅ぼし、すべてを自分のものにするつもりだろう」

 一人の若者が武器を持った右手を上げ、戦いの雄たけびを上げようとした。
 だがジョルジュはそれを制し、話を続けた。
 _
( ゚∀゚)「静かに聴け。王に我々の意図を悟られるとまずい。
    白豚どもは我々の仲間を騙した。我々の王に取り入り、たくさんの小白人を作ろうとしている。
    デレはすでに奴らの手に落ちた。我々はデレを、白い魔手から救い出さなければならない。
    そのためには…白い悪魔に魂を売った現在の王を追放する必要がある」

 デレはひきつけのように息を呑んだ。
 とっさのところで自分の口に手を当てて、なんとかその音は集まっている戦士達に聞かれずに済んだ。
 _
( ゚∀゚)「わかるな。白い豚どもの用意した祭りに喜んで参加するようなやつは…
     もはや同胞などではない。我らが部族の…裏切り者、だ…」


93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/04(木) 23:52:59.38 ID:4g7Uk6Z2P
 _
( ゚∀゚)「すばやく、正確に、事を運べ。まずは白い豚どもからだ。
    ニューソク人どもは今夜酒で酔いつぶれている。一人も生かすな。
    特に…ドクオというやつは、どこに潜んでいようとも、必ず見つけ出して、殺せ。
    できるかぎり残忍に、皮をはぎ、じっくりいたぶってから…、だ。
    我等の王のことは、それからだ。まずは、白い豚だ」

 ジョルジュは明かりの上に、誓いの手のひらを差し出した。
 若い戦士たちが次々にその上に手を重ねた。


 デレは蒼白な顔をしていた。
 全身ががたがたと震えていた。

 言うことをきかない足をなんとか押さえ込んで、ゆっくりと後ろを振り向くと、抜き足でその場を離れた。

 そして、今来たばかりの道を、ニューソク砦のほうに駆け戻っていった。




第八話 ここまで―――

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