- 2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/18(土) 21:54:06.61 ID:nY3kgir7P
軍営の機能的な一室で、最後の作戦会議が開かれていた。
室内には多くの人がいた。
ニューソク植民地に駐留する全ての軍から、主だった者が集められていた。
壁面に張られた大きな地図を背景に、アーネムが重厚な黒いデスクに腰掛けていた。
彼が指を絡めた拳をデスクに乗せて座る姿は、じつに「絵になる」ものだった。
川 ゚ -゚)は探しているようです 第十七話
- 7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/18(土) 22:07:27.76 ID:nY3kgir7P
タンブルストンが地図の前に立っていた。
そして、長い棒で壁面の地図を指し示し、集まった士官たちに作戦の説明をしていた。
(´<_` )「侵攻は陸路を取る。諸君がそれぞれの責務を適切に果たしてくれれば、
他の問題が起こらなければ、我々は一ヶ月でブラゲタウンに到達することができる」
タンブルストンは地図の説明の合間に、士官一人一人に対し、的確な指示を出した。
それらはどれも、彼の才知の煌きを明らかにするものだった。
彼が参謀に抜擢されたのは弱冠十七歳、士官学校在籍中のことだった。
その天性の軍事の才を見込まれてのことだ。
そして、彼は立派にその期待に応えた。彼の立てた計画は、常に見事なものだった。
旧大陸でのラウンジ戦争やガイドライン戦争で、彼はその才能を、しっかりと古参参謀たちに印象付けた。
その頭脳は、遠く本国を離れたここ植民地でも、遺憾なく発揮されていた。
居並ぶ士官にまじってタンブルストンの説明に耳を傾けていたドクオも、
彼の説明する作戦のたくみさに、ひそかに舌を巻いていた。
- 8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/18(土) 22:09:05.17 ID:nY3kgir7P
アーネムはその義弟の才能を知ってか、それとも彼特有のただの怠惰の虫からか、
作戦の細部に関する立案は、ほぼ丸投げの形でタンブルストンに任せきりだった。
こうした秀才型の粘り強い神経を必要とする作業には、アーネムは全く不向きだった。
アーネムは人好きのする性格だった。彼のことを嫌いだという人物は、多くはなかった。
それは、彼を特徴づける、率直でおおらかな性格の賜物だった。
彼は、王弟として自分を貴く見せる重厚な振る舞い方だけは身につけていたものの、
その感性にはまだ多分に少年的な直情さが残されていた。
それが、およそ浮わつくということを知らないタンブルストンとの、いちばんの差だった。
いついかなるときも理知的で冷静な、それ故に人からは好かれないタンブルストン。
それに対し、人間らしい好悪の感情を、いささか幼児的に素直に表現するアーネム。
いまのところ、二人の正対する性格は、うまくお互いの欠点を補い合う形であらわれていた。
- 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/18(土) 22:16:11.12 ID:nY3kgir7P
兵の動きに関する指示が終わり、壁面の地図は役目を終えた。
今回のブラゲ侵攻計画の大枠は以下の通り。
平原を徒歩で横切り、途中の小さな町を攻略しつつ南へ向かう。
最終的にはブラゲ人たちの新大陸での首都、城壁で囲まれたブラゲタウンを包囲し、攻略する。
ドクオは今回の作戦を、そう理解した。
少しの休憩を挟んで、作戦会議は次の段階に入った。
集められた部隊指揮官たちと、個別の戦術についての打ち合わせが始まった。
(´<_` )「ブラゲ軍で注意すべきは、クックル率いる重騎士隊と、ツン率いるドラグーン。この二つの騎兵だ」
タンブルストンが言った。
(´<_` )「重騎士連中は、馬上槍(ランス)を構えて馬体の重さで突撃をかける、昔ながらの騎士の戦法だ。
カビの生えたような中世のやり方だが、その威力は侮れない。
生半可な歩兵陣など、たちまち蹴散らされてしまうだろう」
居並ぶ士官たちは、士官学校で習った戦史教本を思い出した。
五百年前、十字軍の重装騎士たちは、同じ戦法で無数のイスラム歩兵を青草のようになぎ倒したのだ。
- 10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/18(土) 22:17:49.55 ID:nY3kgir7P
(´<_` )「そして、ドラグーンについては、私もこの目で見たのだが…。
こちらの槍の届かない距離から、じつに正確にピストルの弾丸を浴びせかけてくる。
彼らは射撃後すぐに退避する。後を追おうにも、彼らが使うアンダルシア産の馬は速い。
ニューソクの騎兵では、まず追いつけない」
士官たちの間から嘆声が上がった。
重騎士とドラグーン。性質の違うその二つの強敵に対し、
自分の部隊ではどのように対処しようか、皆が頭を悩ませているようだった。
(´<_` )「各上級指揮官は、自らの配下をどのように使って、これら恐ろしい敵を食い止めるべきか、
それぞれの部隊の実情に応じて、対処してもらうことになる」
タンブルストンは、前席を占める上級指揮官にひととおり意見を聞いたあと、
(´<_` )「ドクオ海尉、君が率いる海軍兵では、どう戦うかね」
と尋ねた。会議室の目が、若い銀髪の一等海尉に注がれた。
- 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/18(土) 22:19:47.34 ID:nY3kgir7P
('A`)「重騎士には長槍兵の方陣、ドラグーンにはマスケット銃士隊を当てる。これでしょうな」
(´<_` )「うむ」
ドクオの意見は、タンブルストンのそれと一致した。
彼が正統派の堅実な用兵術を身につけていることを再確認して、タンブルストンは満足そうだった。
今回の戦いには陸軍と海軍の双方が参加する。艦隊からも、水兵を地上に降ろし、参戦するのだ。
そして、アーネムの総指揮の下、陸軍をタンブルストンが、海軍をドクオが統括することになっていた。
(´<_` )「それが最も現実的な案だろう。マスケットでは敵を殲滅するというわけにはいかないが、
ピストルより長射程のマスケット銃による一斉射撃で威嚇し、ドラグーンを寄せ付けないでおくことはできる。
今回はそれでよしとするしかない」
- 13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/18(土) 22:24:51.47 ID:nY3kgir7P
いくつかのこまごまとした確認のやりとりの後、作戦会議は終わった。
幹部たちは散り散りに退室する。
目の上に手のひらをかざす陸軍式と、額に拳を触れる海軍式の敬礼が、それぞれ飛び交った。
ドクオは椅子から立ち上がり、去り際にタンブルストンに一礼した。
たとえ他の面で不満があったとしても、タンブルストンの用兵に関する才能については、
ドクオとしても認めないわけにはいかなかった。
略礼を受け、タンブルストンもドクオに向き直り、返礼した。
困難な状況で部下をまとめ、単艦で未知の大陸に植民地を拓いた実力と、状況を読む的確な判断力。
タンブルストンも、ドクオが能力のある士官であることを認めないほどに、頑迷ではなかった。
アーネム麾下の指揮官としては、その智謀も用兵の才能も、
現在のところはドクオとタンブルストンが双璧をなしているといえる。
二人の名将は、互いを認め始めていた。
- 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/18(土) 22:27:19.80 ID:nY3kgir7P
- 一.
執務室は緑の壁紙で覆われていた。
目に刺激のすくないこの色が、総督アーネムの好みだった。
( ´_ゝ`)「やれやれ。これを着ると、首が絞まってたまらん」
ドアを閉めて二人きりになるや、アーネムは礼装の上着を脱ぎ捨てて、手近な椅子に放り投げた。
気楽なシャツ姿になった彼は、椅子を引き寄せて、それに飛び乗るように腰掛けた。
…ようとした。
だが椅子は後ろに引かれ、アーネムはあやうく、床に勢い良くその体を投げ倒してしまうところだった。
(´<_` )「背に服がかかってるのに、その上から座らないでください。礼服に皺がつきます」
タンブルストンが椅子の背を持ち、言った。
- 17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/18(土) 22:28:21.95 ID:nY3kgir7P
アーネムは何か言いたげにタンブルストンを見ていたが、
見られているほうはまるでそんな視線にお構いなしといったふうに、さっさと自分の執務机に腰掛けた。
タンブルストンの机の上には、届いたばかりの郵便物が大量に山積みになっていた。
それらの大半は決済を求める公文書であったり、街の親方たちからの陳情書であったりした。
そういった事務文書は、本来なら総督であるアーネムの机に置かれるべきものだったが、
郵便係も慣れたもので、最近ではタンブルストンが封書の山を移し変える作業が不必要になるよう、配慮していた。
うんざりするような事務文書の山の中に、いっぷう変わった小包がひとつ、混じっていた。
(´<_` )「……?」
タンブルストンはそれを手にとって、宛名書きを読んだ。
それは彼の故郷から発送された小包だった。
ニューソク本国の高原地帯に住む家族から、タンブルストン個人宛に送られたものだった。
- 20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/18(土) 22:31:55.70 ID:nY3kgir7P
( ´_ゝ`)「それ、何?」
(´<_` )「ああ…」
タンブルストンは小包を手に取り、その封を切った。
中からはなにかの紙包みと、手紙の束が出てきた。
(´<_` )「本国の、私の実家から届いた私信ですね」
言って、タンブルストンは丈夫な油紙でできた包みを開いた。
果物の甘い芳香が漂った。
干しりんごがいくつか入っていた。高原地方の特産品だった。
そのしなびた茶褐色の実は、タンブルストンにとっては見慣れたものだった。
( ´_ゝ`)「ふーん。いいなあ…」
(´<_` )「よかったら、兄者もどうぞ」
形のいいものをひとつ選んで、タンブルストンは干しりんごをアーネムに手渡した。
そして彼も、そのなかの一を手にとって、かじりついた。
しなびた実のはじける感覚に続いて、甘酸っぱい味が口中に広がった。
なつかしい故郷の味だ。
- 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/18(土) 22:34:25.01 ID:nY3kgir7P
( ´_ゝ`)「いいよなあ。お前には、手紙をくれるような肉親が、故郷にいるんだもんな」
干しりんごをもぐもぐやりながら、アーネムは言った。
アーネムは私生児だ。
王族とはいえ、父親とは会ったこともないし、母に至ってはその名前すら知らない。
王家にゆかりのある地方の家を転々として育った彼には、定まった居所もなかった。
(´<_` )「手紙がほしかったら、私が書いてあげますよ」
タンブルストンが言った。
アーネムはしばらく無言でりんごを噛んでいたが、
やがて、義弟のたった今の発言が「冗談」であることに気づいて、むせ返った。
(;´_ゝ`)「い、いや、手紙って、いつも一緒にいるじゃん、俺たち…」
タンブルストンの無表情に変化はなかった。アーネムも苦笑すらしなかった。
彼の冗談は、くすりとも笑えるものではなかった。
だが、彼が形だけでも冗談めいたことを言うなど、アーネムですらめったに見かけない珍しいことだった。
表情からは伺えないが、ひさしぶりの故郷からの便りを受け取って、よほど上機嫌なのだろう。
- 25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/18(土) 22:36:19.87 ID:nY3kgir7P
タンブルストンは手紙の束を縛っていた麻糸を解き、いちばん上から読み始めた。
それは案の定、故郷の父母からの長い便りだった。
母の手紙には、まず最初にながながと、故郷の風土の移り変わりが記されていた。
雪の降り方、羊の具合、山の変化。
村のどこの家がどうなった、だれの娘がだれと結婚した。
続いて記された文章に、タンブルストンは少し面食らった。
「王様のお言いつけどおり、ウェールズ公にはちゃんとお仕えしていますか…」
この一文で彼は、自分が兄王の命を受けてアーネムの監視役をおおせつかっていることを、
今更ながら思い出した。
今となってはそれは、不思議な気持ちだった。
信心深く純朴な母は、「おうさま」というものを、なにより尊いものと信じているのだろう。
母の手紙は、国と王室の高貴さを説き、
最後にはニューソク国民として恥ずかしくない振る舞いをするよう述べて、結ばれていた。
- 26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/18(土) 22:41:18.90 ID:nY3kgir7P
つづいて彼は父からの手紙にとりかかった。
父の文章は、母のそれに比べてずいぶんと実際的だった。
のっけから最近の宮廷内のどろどろを描き、宰相やら大臣やらの細々とした政治闘争が描かれている。
小役人である父親らしい、微に入り細をうがつ観察眼だ。
「王国宰相派が力をつけています。王は民衆との歩み寄りを進めていますが、
それを良しとしない貴族たちが宰相を中心に会談を重ねており…、○○大臣派は…」
延々と続く無味乾燥な記述に、タンブルストンは半ばうんざりして、途中からは飛ばし読みすることにした。
父はそういった権力闘争を嘆くでもなく、むしろそれを、世の中に当然あることとして受け止めていた。
その中で息子がうまく立ち回ることができるように、という願いの込められた筆致で、ただ淡々と事実を述べていた。
「王弟アーネム公の動きにしっかり気をつけなさい。お前は兄王の忠実な臣下であることを決して忘れないように」
親らしい説教めいた言葉で、最後は閉められていた。
長い手紙を読み終え、タンブルストンは満足げに、長い息を吐き出した。
手紙の内容は右から左に抜けてしまっていたが、彼は脳裏によみがえったなつかしい父母の姿を噛み締めていた。
- 30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/18(土) 22:45:21.90 ID:nY3kgir7P
ドアの開く音で、彼はわれに返った。
両手にティーカップを持って、アーネムが入ってきた。いつのまにか彼は、部屋の外に出ていたのだ。
手紙に没頭していたタンブルストンは、それにまったく気づいていなかった。
紅茶の香りが、タンブルストンの事務机にまで漂ってきた。
( ´_ゝ`)「干しりんごと言ったら、これが合うからな」
言って、アーネムは皿に乗った湯気の立つカップを、タンブルストンの机に置いた。
(´<_` )「兄者…」
アーネムは自分のデスクに歩み寄り、椅子ではなく、その机の上に身を乗り上げて、座った。
ソーサーをつまむように持ち、反対の手で自分の紅茶のカップを持っていた。
そんな無作法な姿でも、彼がやれば、やはり「絵」になった。
父母からの手紙には、「兄王の忠実な臣下」という文字があった。
タンブルストンはどうもそこに、現在の自分とのちぐはぐな違和感を感じていた。
アーネムの行動には、いかなるものであっても、常に優雅な自信と優しさに彩られた何かがあった。
もっともそれは、昔からそうであったわけではない。
タンブルストンが常に傍にいる、という安心感が彼の心を満たし、
その余裕が王者としての風格とあいまって、細く穏やかな目の中に、ゆるぎない信頼感を与えているのだ。
- 32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/18(土) 22:47:20.99 ID:nY3kgir7P
この王弟の忠実な騎士になる、と誓った自分の判断は間違っていない。
それは、埋没し泥にまみれようとしていたアーネムの貴い人格に、再び輝きを与えようという誓いだったのだ。
タンブルストンはそう確認し、満足げに紅茶を一口、含んだ。
(´<_` )「兄者」
( ´_ゝ`)「ん? 何だ」
(´<_` )「苦いです。紅茶の抽出時間が長すぎます。これは南方諸島の細葉を使っているようですが、
その場合、時間は三分を基本として、ポットの上部に散る開いた葉が…」
(;´_ゝ`)「ときに待て弟者。淹れておいてもらって、それはないだろ」
アーネムは義弟を見た。そして、どきりとした。
あのタンブルストンが、わずかに微笑んでいた。
めったにない事だったので彼は面食らったが、
笑みを浮かべた義弟の横顔も、悪いものではなかった。
緑色の執務室には、これから戦場に向かうとはとても思えないような、ゆったりとした時間が流れていた。
- 35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/18(土) 22:52:19.90 ID:nY3kgir7P
- 二.
ニューソクタウンはお祭り騒ぎだった。
軍隊の集結が終わり、午後までには街はずれの練兵場から出発することになっていた。
いよいよ対ブラゲ戦争が始まるのだ。
軍隊の通り道にあたる沿道の家々からは、ニューソク王朝の赤い獅子旗や青の国旗、
またさまざまなニューソク語の書かれたのぼりや幕が垂れ下がっていた。
勇壮な軍隊を一目見ようと、たくさんの市民が沿道に集まっていた。
二階建ての石造りの民家の窓から、いくつもの期待にはやる顔が突き出している。
隊が通り過ぎるときに祝福を与えるため、かごの中には大量の花が用意されていた。
沿道では物売りたちが声を張り上げていた。
花を売る者、酒を売る者、食べ物を売る者…。
いつの時代も変わらぬ、軍隊の出発のときの光景だった。
- 37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/18(土) 22:55:20.77 ID:nY3kgir7P
今か今かと待つ市民の耳に、遠くから軍楽が聞こえてきた。
沿道に詰め掛けた彼らはいっせいに音のするほうを振り向いた。
勇壮な曲が近づいてくる。
ドロドロと太鼓が鳴り、横笛が奏でる「擲弾兵行進曲」の調べが聞こえる。
やがて道の角から、アーネム公の乗った黒毛馬が姿を見せたとき、
集まった市民たちは一斉に、沿道の石積みが崩れんばかりの勢いで歓呼の声を上げた。
ウェールズ公アーネムは、タンブルストン率いる陸軍の歩兵連隊を引き連れて、英雄のように街路に馬を進めていた。
花が舞った。沿道からも、民家の二階からも、皆おしげもなくアーネムに向かって花を投げた。
つややかに真っ黒な馬の上で、兜を脱ぎ、礼装に身を包んだ貴公子。
色とりどりの花びらが舞う中を、ゆるやかなウェーブのかかった金髪をあらわにしたアーネムは進んだ。
そしてその細い目の中の薄青色の瞳を左右に向け、民衆が彼を呼ぶ声に、軽く手を上げて答えていた。
- 38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/18(土) 22:56:26.62 ID:nY3kgir7P
ミセ*゚ー゚)リ「どうですか? 今回の対ブラゲ植民地戦争について、何か一言」
新聞記者ミセリが沿道に詰め掛けた市民にインタビューを繰り返していた。
浮かれ騒ぐ市民たちはみな、上機嫌でそれに応じていた。
「ブラゲはひどいやつらだそうじゃねえか。そいつをやっつけにいくんだ! 胸のすく話だ!」
「あんなに美しい人が総大将なんだ。負けるはずがないよ!」
「新大陸は我がニューソクが頂くんだ。ニューソクの覇権は世界を覆うんだ」
「南の土地との貿易権を、早く欲しいものだね。陸軍には期待してるよ」
ミセリの鉛筆はあわただしく手帳の上を滑った。
人々は興奮で顔を赤くして、まくしたてられるように早口で喋っていた。
角からは次々に、目の醒めるような緋色の軍服を着た陸軍兵が姿を現していた。
それはどこまでも途切れることが無い行列のように続いた。
真っ白なゲートルが力強く上下し、太陽の光を受けて、銃身や装具が銀の光を輝かせていた。
- 41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/18(土) 23:00:41.34 ID:nY3kgir7P
陸軍兵が過ぎ去った後は、海軍の行進が続いた。
先頭に馬を進めるドクオに、群集は祝福の声を送った。
パートレム号の勇敢な船長の名は、いまや植民地を拓いた開祖として、広く人々の間に知れ渡っていた。
明るい色の花びらで祝福のアーチを作る市民たちに、ドクオは困惑したような仏頂面で答えた。
レースで飾り立てた大きな帽子をかぶった女たちのグループが、ドクオに黄色い声を送った。
ドクオはどうしていいかわからないような、困りきった顔になっていた。
それが、女たちの心の何かを刺激したようだった。女たちの熱い視線と嬌声の中を、ドクオは馬を進めた。
後ろからはクーの率いるマスケット銃の部隊が歩いていた。
クーに対しても、人々は惜しみない声援を送った。
彼女の開拓初期の活躍は、最近の新聞紙上を賑わす常連のネタになっていたのだ。
「あれがクーか…本当に子供じゃないか」
「あんな小さな体で、ブラゲども相手に斬り合いを演じたり、ラウンジ砦への一番乗りを果たしたのか」
涼しい表情で馬を操る黒髪の少女は、主に若い男たちからの野太い声援を集めた。
クーはそんな声にまったく答えるそぶりも見せず、冷たい目はじっと前だけを見つめていた。
- 42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/18(土) 23:03:41.95 ID:nY3kgir7P
続いてフサが海兵隊を率いてあらわれた。
フサは海兵隊員たちに怒鳴りながら歩いていた。
ミ,,゚Д゚彡「もっと行儀良く隊列を組めよ、ちゃんと四列に並べ、この役立たずのごろつきどもめ!
ばらけずにしっかり前に歩くんだよ、なあ、頼むからさ」
敵艦の舷側を越えて斬り込むとなると海兵隊員はたのもしいが、
行進の整然とした機械的な動きとなると、彼らにはお手上げだった。
海兵隊員たちの列はでこぼこした塊となって、沿道につめかけた女たちに勝手に声をかけたり、
市民に食べ物を分けてもらって、焼き鳥の串を噛みながら歩いていたりする。
ミ,,゚Д゚彡「そこの列、静かにしろ! おしゃべりは…こらー! 物を食うなー!!」
隊員たちのだらだら歩きに、フサは顔を真っ赤にして叫び続けていた。
その後ろから、砲車に乗った長い十二ポンド・カノン砲を引いたロマネスクの部隊が続いた。
黒光りする鉄の武器は、それを見る市民たちの興味を集めるのに十分な、
恐ろしげで、どこか畏敬の念を呼び起こす独特の雰囲気を放っていた。
掌砲長ロマネスクは、中年の古参水兵の風格をその表情に湛えながら、悠然と歩を進めていた。
- 45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/18(土) 23:07:06.18 ID:nY3kgir7P
すべての軍隊が通り過ぎた後も、街の熱気は収まらなかった。
露天からは肉やとうもろこしの焼ける香ばしいにおいが漂い、通りを満たしていた。
太陽は天にあり、異常なほどに輝いていた。
「擲弾兵行進曲」はどんどん遠ざかっていった。
軍隊が通り過ぎてからも市民は何人かのグループを作っては声高におしゃべりを続けていたが、
やがて、自然に集まってきた彼らは、自然に一人、また一人と通りから姿を消していった。
ミセ*゚ー゚)リ「すごいなあ、アーネム公に対する町の人の支持」
ミセリは手帳を読み返して、そうひとりごちた。
さまざまな階層のさまざまな男女の声が、そこには記されていた。
そして驚くべきことに、そのほとんどが、金髪碧眼の貴公子に対する賛辞で占められていたのだ。
公とその軍隊に神の祝福があるよう、町の人たちはほんとうに、心から願っているようだった。
ミセ*゚ー゚)リ「※ただしイケメンに限る、っと…」
美しく気高い偶像というものが、信仰のように人々に与える効果の高さを、
彼女は自分流にそう手帳に記して、ぱたんと表紙を閉じた。
- 46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/18(土) 23:09:28.65 ID:nY3kgir7P
- 三.
ニューソクタウンの城壁の外には、新しく拓かれた畑が一面に広がっていた。
ぽつぽつと立つ農家の庭先にも住民が出て、通り過ぎる軍隊に手を振って、声援を送った。
やがてそれらの民家も遠のいていき、軍隊は無人の北ヴィップの野を行進し始めた。
春に萌え出でた青草が地面を覆い、たんぽぽのような黄色くて小さな花が、それに彩りを添えた。
照りつける太陽の下、クーは馬を進めていた。
風は無かった。
行軍中の兵士たちは、まだ出発したばかりで元気いっぱいなので、
あれこれと騒がしいくらいにおしゃべりを交わしていた。
だが、馬上のクーは、ずっと一言も口を開かなかった。
まるで荒野を一人きりで歩んでいるかのように、クーは他者を拒絶して、前だけを見て進んでいた。
- 51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/18(土) 23:14:02.38 ID:nY3kgir7P
クーの精神世界は、このとき凍りついていた。
自分自身をすら遠くから冷淡に眺めているようだった。
心の交流、というものを、クーは異物として否定した。
それは、いたずらに彼女の精神を揺さぶり、感じやすい心を惑わすものだったからだ。
乾いた虚無があった。
彼女はそれを直視しようとしたが、ショボンの顔は彼女の冷静さを乱すばかりだったので、
そのことについて考えるのは、ぱったりと止めにしていた。
川 ゚ -゚)(仲間など、感情など、持つもんじゃないな)
馬の背に揺られ、彼女は考えた。
川 ゚ -゚)(何もかも失うとわかっているんだったら、そういう状況に自分を置いちゃだめだ。
誰かを失うような立場に身を置くべきじゃない)
クーは何も無い地平線だけを見て、歩いていた。
- 52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/18(土) 23:16:28.50 ID:nY3kgir7P
('A`)「おーい、クー」
隊列は丘を登っていた。少しの上りになった坂に差し掛かっていた。
前を行くドクオが振り返って呼びかけてきたので、クーは目顔で、それに答えた。
('A`)「ロマネスクの砲兵隊が遅れてるみたいだ。行って、様子を見てきてくれ」
クーは黙ったまま馬の首を巡らせて、隊列を後ろへと駆けた。
フサの海兵隊の脇を通り抜け、その後ろを歩くロマネスクの隊へと、クーは向かった。
砲兵は重い荷車と十二ポンド砲に苦戦していた。
彼らが引いていたのは、陸戦用の軽いファルコネット砲ではなく、艦載用の大口径のカノン砲だった。
もともと陸上を引っ張って歩くことは想定されていないため、それはじつに重く、扱いにくいものだった。
(;ФωФ)「ん? クーじゃねえか。どうした、何か用か?」
引き綱の先頭にはロマネスクがついていた。
彼は重い砲車から伸びたロープを肩に食い込ませながら、馬上のクーを見やった。
- 54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/18(土) 23:17:36.03 ID:nY3kgir7P
川 ゚ -゚)「お前の隊が遅れているようなので、様子を見に来た」
(;ФωФ)「おー。見ての通りだ、こいつを引っ張っての上り坂は、ちょいときついぜ」
クーは砲車についた男たちを見た。
一門につき二本の太い麻ロープがつけられ、それに男たちが連なって、必死の形相で引っ張っている。
太陽の光は容赦なく男たちを照りつけた。
彼らは汗で服を体に張り付かせて、顔を真っ赤にして、重い砲車を引き続けていた。
(;ФωФ)「これ以上の速度は出せねえよ。なんせこの上り坂の勾配ときたら…」
川 ゚ -゚)「言い訳をするな。お前も指揮官なら、部下を鞭打ってでも行軍速度を上げろ」
クーの言葉に、ロマネスクはびっくりして、馬上の昔馴染みを眺めた。
彼女は見下したように冷たい目でロマネスクを見おろすと、ふいと馬の首を巡らせた。
そのまま馬に一鞭くれると、兵たちには何の言葉もかけず、走り去った。
砲車にとりついた砲兵たちが、目を危なげにぎらつかせて、彼女の後姿を見送っていた。
- 57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/18(土) 23:23:11.90 ID:nY3kgir7P
- 四.
軍隊が出発した日から、半月ほどが経った。
進撃は順調だった。
ニューソク植民地軍は、ブラゲ支配下の農村や小さな要塞と小競り合いを繰り返しながら、
ゆっくりと中部ヴィップの南下を続けていた。
たくさんの小さな勝利の噂が、続々とタウンに届けられた。
そのたびにニューソクタウンではお祭り騒ぎが繰り返された。
前線からの報告のなかでも、とりわけ市民を熱狂させたのは、
あのパートレム号出身の最年少士官、幸運の女神クーの活躍に関するものだった。
広大なヴィップ大陸に点在する小さな農村の攻略には、主として海軍の部隊が派遣された。
ドクオ麾下の四百の海軍兵は、独立の部隊として使い勝手が良かったのだ。
さまざまな場所で海軍兵は戦った。
橋を守る小さな要塞。広大な農園を管理する役所の出張所。
そんな小さな戦いにクーが参加すると、彼女は、ほぼ毎回のように何らかの戦功をたてた。
- 58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/18(土) 23:26:03.37 ID:nY3kgir7P
住民全部で二百人に満たないような小さな村を制圧するのは簡単だった。
ほとんどの村は、ろくに戦いもせずに降伏した。
珍しく抵抗があってもそれは散発的なもので、マスケット銃どうしの小競り合いがあるくらいだった。
クーは勇敢に戦った。…というより、命知らずであったというべきか。
彼女は自分の命を、そして部下の命を、尊いものとして扱わなかった。
敵が銃列を敷いている前に堂々と立ち、飛び交う弾丸をまるで意に介さぬ、といったように振舞った。
光を失ったように冷たくうつろな目で、彼女は兵を率いて前進した。
自分の後ろで何人の兵が倒れようと、自分自身の頬や脇を熱い鉛の弾丸が掠めようと、
彼女は決して表情を変えることなく、前進を止めなかった。
そして白兵戦では決して容赦しなかった。剣を抜けば、彼女は悪鬼と化した。
たとえ相手が戦意を失って逃げ出しても、敵が全く動かなくなるまで、背中から何度も斬りつけ、刺した。
まるで死霊のような彼女と、それに従う軍勢の噂に、ブラゲ人たちは震え上がって恐怖した。
いつしかクーの名前は、伝説的な妖しい響きを持って、ブラゲ人の間に口から口に伝えられた。
- 62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/18(土) 23:30:08.91 ID:nY3kgir7P
ところで、熱気の冷める暇もないニューソクタウンでも、
その郊外では浮かれ騒ぐ市民の姿も無く、いつもとかわらぬ日常があった。
静かな港の一角、樽修理工場の二階では、あいかわらずすべての窓が閉め切られていた。
モララーは本国から届いた一通の郵便を開封した。
ランプを手元に引き寄せ、芯を出して、光を強くした。
手紙に差出人の名前は無かった。
もっとも、モララーにしてみれば、その手紙の差出人は自明だった。
彼の仕える主人である、王国宰相ネーヨだ。
モララーは兄王のスパイということになっていたが、
実質は王国宰相ネーヨが、彼の行動の逐一について指令を出していた。
- 64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/18(土) 23:33:18.52 ID:nY3kgir7P
ネーヨの指令は従来のものと同じだった。
王弟アーネムの力をできるだけ削いでおくように、というものだ。
モララーは手紙を読み終えると、それをランプの炎にかざして火を移し、灰にした。
それから紙とペンを用意して、報告の返信を書き始めた。
( ・∀・)「うーん…まいったなあ。
クー殺しに失敗しちゃったこと、報告しにくいなあ…」
モララーは、アーネムの植民地を潰すには、クーという英雄を消すことが何よりも必要であると考えていた。
植民地の人々は、植民地出身の英雄の活躍に喜び、勇気付けられる。
そして敬意と忠誠心と一体感を持つようになるだろう。本国の王にではなく、植民地の英雄に対して。
- 65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/18(土) 23:35:11.41 ID:nY3kgir7P
そう考えたモララーの危惧は、現実のものとなりつつあった。
クーの活躍は逐一ニューソクタウンに伝えられていた。
それを新聞記者たちは、センセーショナルな記事に仕上げ、新聞に刷って発行した。
市民は争ってそれら新聞を求めた。
自国の軍隊が快進撃を続けている記事を読むのは、なにより爽快なことだった。
ことにそれが、弱冠十五歳の美しい少女によってあげられた戦果とあれば。
いまや植民地のだれもがクーの名を知るようになっていた。それだけにとどまらず、
いずれこれらの新聞は本国にも運ばれ、彼女の名は、ニューソク国じゅうに知れ渡ることになろう。
英雄を芽のうちに消す、というモララーの作戦は、もはや失敗したと言ってもいい。
英雄の芽は、立派に英雄そのものになりつつあったのだ。
- 66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/18(土) 23:36:11.19 ID:nY3kgir7P
クー以外にも、気にかかることはいくつもあった。
ドクオという士官は、最近、王政に対し否定的な言動を繰り返しているらしい。
それから兄王派であり、アーネムの目付け役として派遣されているはずのタンブルストンも、
どうも近頃は王弟側に心が揺らいでいるように見受けられる。
( ・∀・)「あーあ、仕事がいっぱいだ」
ペンを置いて、モララーは言った。
( ・∀・)(せめて、クーを潰す作業だけは、近いうちに終わらせなきゃなあ…)
何か良い方法はないものか。
彼は椅子の背にもたれかかり、あれこれと工作の案を練り始めていた。
- 71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/18(土) 23:43:43.68 ID:nY3kgir7P
- 五.
ブラゲタウン。
新大陸ヴィップに初めて築かれた、歴史ある白人たちの植民地。
古い都市らしく中世風の城壁に囲まれたその街は、他の粗末な新大陸の入植都市とは違い、
学問や芸術が華やかに業績を競う街として、ヴィップのみならず、遠く旧大陸にまで名が知られていた。
学者に、芸術家。
そうした無産階級が活躍できるということは、彼らを支える生産階級が別にいたということだ。
農業、土木、建築、運送といった、日々の生活に必要な単調で莫大な重労働は、
この街ではすべて、奴隷たちが担当することになっていた。
この街での白人の仕事は単純だった。
午前中は書類の数字に目を通し、午後からはサロンに集い、酒と音楽を楽しむこと。
そうしてときどき、定期的に起こる奴隷反乱の鎮圧のため、軍隊に寄付金を出すことだった。
学問と芸術は、こうして作られた白人たちの暇な時間を埋めるために、発展していったのだ。
- 73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/18(土) 23:46:48.45 ID:nY3kgir7P
その壮麗な大都市は、いま、混乱のさなかにあった。
ニューソク植民地の大軍がニューソクタウンを発った日から、二週間が過ぎていた。
彼らの軍隊は着実にこのブラゲタウンに迫りつつある。
既にいくつかのブラゲ人の小さな農村が、彼らの軍隊に攻め落とされたとの噂も流れていた。
街の通りには連日、荷車の列ができた。
戦を恐れて街から逃げ出す者、逆に城壁の中の街に逃げ込む近在の農民、
また金目当てに集まる、新大陸を放浪するならず者の傭兵たち…。
ニューソク側の熱狂ぶりとは大変な違いだが、
これらもまた、いつの時代にも変わらぬ、戦の前の光景だった。
街には不安顔の市民と、勇ましく武装した傭兵と、日々変わらぬ無表情の奴隷とが溢れていた。
- 74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/18(土) 23:50:23.53 ID:nY3kgir7P
そんな中だから、ブラゲ軍の召集と勢ぞろいは、街の城壁を離れた荒野の演習場で行われた。
もう半月もすれば、ニューソク軍はブラゲタウンの城壁にまでたどり着くだろう。
( ゚∋゚)「そうなる前に、平原での会戦で、やつらを打ち砕くのです」
全身にぴかぴかの銀色の鎧をまとったクックルが、言った。
( ゚∋゚)「大軍同士の会戦で、いっきにけりをつける。それが可能なのが、我が精強なるブラゲ軍です」
ツンは演習場に集まったブラゲの大軍を見やった。
長槍兵、剣士、マスケット銃士といった歩兵たち。半数ほどが傭兵だったが、その数は夥しい。
それからクックルの後ろに控える重騎士たち。全員が壮麗なプレート・メイルを身にまとい、
さまざまな模様を描いた長いランスで武装している。まるで中世の騎士団のようだった。
ξ゚听)ξ「そうね。総督ホライゾン氏の軍隊は、何者にも決して負けないわ」
そう言ってツンは、麾下の騎乗銃兵の一団を振り返った。
鎧を身に着けず軽装の彼らは、各自が四丁から六丁のピストルで武装していた。
- 76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/18(土) 23:53:02.56 ID:nY3kgir7P
( ゚∋゚)「…いいかげん、死んだホライゾン氏の名にこだわるのは、お止めになってはいかがですか」
クックルはツンに対し、保護者が子供を諌めるような口調で語りかけた。
その言葉はツンの神経を苛立たせたが、ここでクックルなどと言い合いをしても、何にもならなかった。
ツンはとにかくブラゲタウンを守りたかった。
夫と共に作り上げてきた、この植民地を。
クックルはいけすかない男だが、ニューソクの大軍と戦うためには、この男の協力が不可欠だった。
ブラゲ国の黄色を基調とした旗の下に集結した大軍は、クックルとツンを先頭に、
迫りくるニューソク軍に向かって、ブラゲタウン郊外の演習場を発った。
第十七話 ここまで―――
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