8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/08(水) 21:52:53.44 ID:jT7unM/AP


 女はツンと名乗った。
 自らをブラゲ人だと言った。

 哨兵が手を縛ろうとした時、彼女は激しく抵抗した。

('A`)「いいさ、そのままにしておけ。ブラゲ人はプライドが高いんだ」

 ドクオが言った。タンブルストンも、その意見には異を挟まなかった。


 夜闇の中、周囲を赤服に囲まれて、ツンは衛兵詰所へと連行された。




   川 ゚ -゚)は探しているようです  第十四話


9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/08(水) 21:54:16.16 ID:jT7unM/AP
一.


 詰所内の小さな部屋に、ツンは入れられた。
 ブラゲ語を流暢に使えるのはタンブルストンだけだったので、彼が取調を行った。

 ツンは頑なだった。
 名前と国籍だけは連行される際に喋っていたものの、それ以外の会話には一切応じようとしなかった。
 書記役のドクオも、暇そうにペンをもてあましていた。

 クーは居心地が悪かった。狭い部屋の中で目が合うたびに、ツンに睨みつけられるのだ。
 仕方のないこととはいえ、ツンの上に馬乗りになって刃物をつきつけたことは、
 プライドの高いブラゲ人にとって、ずいぶんと恨みに思われているようだった。


10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/08(水) 21:58:37.03 ID:jT7unM/AP

 ツンの容貌は、それなりの年齢を感じさせるものだった。
 三十代半ば、といったところだろうか。
 そのふるまいからは、積み重ねた経験のもたらす、年相応の落ち着きと威厳が感じられた。

 身につけているものも、派手さはないものの、みな質の良いものばかりだった。
 男のようなボタン・ダウンの白シャツに胴衣。真鍮と貝殻で作られた、綺麗な色の上着のバックル。
 茶色い鹿皮の幅広のベルトには、ピストル用の装具一式が吊るされていた。

('A`)「お前、ドラグーンか?」

 武器を取り上げる際、ドクオはツンに聞いていた。
 倒れた馬には、四丁ものピストルが吊り下げられてあったからだ。

 ピストルを用いる騎兵のことを、この時代は竜騎兵(ドラグーン)と呼んでいた。
 敵に近づき、至近距離から発砲し、そのまま離脱する…という戦法をとる兵種だ。

 ドクオの問いかけに対しても、ツンはただ、きつい視線を返しただけだった。


11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/08(水) 22:00:21.46 ID:jT7unM/AP

 ツンの左手には細工の施された金の結婚指輪があった。
 この年では既婚であることに何の不思議もない。大きな子供がいても、おかしくない年齢だった。

 それでタンブルストンは、ツンに呼びかけるときには、既婚女性に対する敬称をつけるようにした。


 ツンは取調の会話には一切応じなかったが、無言のままにも、凛とした姿勢だけは崩さなかった。
 それは、そこらの自暴自棄になった犯罪者や、ガラの悪い下級兵士たちとは、一線を画する態度だった。

 彼女は貴族―あるいは少なくとも、そうした誇り高さを良しとする層の人間なのだろう。

 タンブルストンは腕組みをして黙り込んでしまった。
 あまりにツンが何も言わないので、もう聞くことも尽きたのだ。
 救いを求めるようにドクオのほうを見たりするが、ドクオも困惑した顔で首を横に振るだけだった。

 詰所の小さな石の部屋に、じりじりとした時間が流れた。

13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/08(水) 22:03:12.32 ID:jT7unM/AP

 ノックの音がした。
 「入れ」タンブルストンが言った。

 デレが入ってきた。
 両手に持ったトレイには、香気を立てているティーカップが四客、載っていた。

(´<_` )「ああ、ありがとう」

 デレは微笑んで、タンブルストン、ドクオ、クーの前に、静かにカップを置いた。
 そして最後の一つを、ツンの前に置いた。

ξ゚听)ξ …・・・ ・

 ツンがブラゲ語で何事かを言った。
 お礼の言葉だろうか、綺麗で、柔らかい調子の音だった。

 それは、この取調室で、ツンが初めて喋った言葉だった。


14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/08(水) 22:06:35.20 ID:jT7unM/AP

 ツンの言葉を聞いて、デレの顔から、さっと微笑が消えた。
 タンブルストンがそれを見て、不思議そうに言った。

(´<_` )「…デレ、君はブラゲ語がわかるのか?」


 ブラゲ、という単語がタンブルストンの口から出た瞬間、
 デレは机の上にあったティーカップを掴み、それをツンの顔めがけて投げつけた。

 ツンは小さく悲鳴を上げて、カップが額に当たるすんでのところで、身をかわした。

 カップが大きな音を立てて、部屋の隅で粉々に砕け散った。
 こぼれた紅茶の熱いしずくが、湯気を立ててツンの頬とシャツに飛び散った。

('A`)「デレ、何を…!」

 ドクオが立ち上がり、なおも暴れようとするデレの両腕を掴んだ。
 彼女は現地の言葉で何事かをわめきながら、凄まじい形相で、ツンに食って掛かろうとしていた。

 金切り声を上げるデレを引きずるような形で、ドクオは彼女を、部屋の外に連れて行った。

17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/08(水) 22:10:34.41 ID:jT7unM/AP

 廊下を引きずっていかれながらもわめくデレの声は、遠ざかりつつも、
 いぜん小さな取調べ室にまで届いてきた。
 突然の事態に、タンブルストンとクーは呆然となって、ドアのほうを見つめてた。

 はっとして、クーはタオルを取りに外に飛び出した。
 ツンの髪と顔を紅茶が濡らしているのに気づいたのだ。


 タンブルストンは立ち上がり、ツンに対して一礼した。

(´<_` )「お怪我はありませんか。ドーニャ・ツン。
      大変失礼を致しました。ニューソク植民地を代表して、私はお詫び申し上げます」

 ツンはやはり、何も返事を返さなかった。
 だがその態度は、先ほどまでのものとは変わっていた。

 彼女はいくぶんしおらしい表情になって、
 さっきまでの凛とした居住まいが崩れ、横向きに座り、目を伏せていた。

ξ゚听)ξ「…いえ」

 その横顔には、蔭がさしていた。

19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/08(水) 22:11:44.70 ID:jT7unM/AP

(´<_` )「デレ…給仕の彼女には後ほど、しかるべき懲罰が与えられるでしょう。
      外国の賓客に対して無礼を働くことは、わが国では法により固く禁じられて…」

ξ゚听)ξ「いえ、いいのです。…彼女に懲罰は不要です」

 ツンは言って、再び座りなおして膝に両手を置き、タンブルストンと向かい合った。

(´<_` )「ほう…?」

 タンブルストンも椅子に腰掛けて、ツンの話の続きを促すように、その目を見た。


川 ゚ -゚)「タオルタオル」

 いっぽうその頃、クーはおろおろと詰所の大広間に駆け出て、きょろきょろと視線を泳がせた。

ミ,,゚Д゚彡「ん? タオルか? ほれ、これ使いな」

 士官服を着崩したフサが、手近にあったタオルを投げた。
 それは水兵たちのぬぐった手垢や食べ残しの油で、薄黒く汚れたものだった。

川 ゚ -゚)「だめだよこんなの。きったねえなあ」

ミ,,゚Д゚彡「なんだおめえ、お高くとまりやがって」

川 ゚ -゚)「私が使うんじゃないよ、お客さんだよ」

21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/08(水) 22:14:56.31 ID:jT7unM/AP

('A`)「おお、いてて…」

 ドクオが詰所入り口から入ってきた。袖が破れ、首元と腕にミミズ腫れができていた。

川 ゚ -゚)「あ、おかえりドクオ。デレはどうだった?」

('A`)「ショボンさんに預けてきたよ。さんざん暴れるし、俺は引っかかれるし…」

ミ,,゚Д゚彡「へー。さっきの物音、ブラゲの捕虜が暴れたのかと思ってたら、デレだったのか」

('A`)「あんなデレを見たのは初めてだよ。
   死ねだの殺せだの、汚い言葉をわめき続けて、目を血走らせてさ」

川 ゚ -゚)「あいつ、ブラゲが嫌いなのかな」

('A`)「かもな。そういえばブラゲは最近、先住民に対して徹底的な弾圧をしてるって聞くな。
   ブラゲは歴代教皇ともゆかりが深い、狂信的なキリスト教国だ。
   あいかわらず異教徒どもに対しては容赦ないみたいだなあ」


22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/08(水) 22:16:20.55 ID:jT7unM/AP

 ドクオとクーが取調べの部屋に戻った時、ツンはぽつりぽつりと、口を開き始めていた。

 ツンはやはり身分の高い女だった。
 彼女は総督夫人――つまり、ブラゲ植民地総督ホライゾン氏の妻だと、自らを紹介した。

川 ゚ -゚)(ホライゾン? どこかで…)

 聞いたような名だと思ったが、その時は、クーは思い出せなかった。

('A`)「総督の妻たるお方が、どうしてあんな時間に、単身でニューソク砦の近くに?」

 と問うたドクオには、答えはなかった。

(´<_` )「ドーニャ・ツン。これも何かの、神の思し召しかもしれません。
      どうでしょう、新大陸に生きる者どうし、
      一度、我々はあなたがたの総督と、会談の機会を持ちたいと思うのですが」

24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/08(水) 22:21:49.68 ID:jT7unM/AP

ξ゚听)ξ「…ブラゲ総督、つまり私の夫ホライゾンは、現在は本国に戻っており、不在です。
      ですが、ブラゲとニューソク、互いに話し合いを持っておくことは有益でしょう。
      いまブラゲ植民地は、総督代理のクックル氏が国王の委任状のもと、すべてを取り仕切っておりますが、
      彼とお会いになりますか」

(´<_` )「ご案内いただけますか?」

ξ゚听)ξ「ええ」

(´<_` )「…では、翌日、我々は使節を出発させ、あなたがたの植民地に送ります。
     ドーニャ・ツン、あなたには使節の道案内をお願いしたい」

 ツンの道案内によるブラゲ植民地訪問。
 それは事実上、ツンを釈放することをも意味していた。

 タンブルストンはツンを捕虜として身代金を取るより、
 ブラゲとの友好関係を築くことのほうが大事だと考えたのだろう。

ξ゚听)ξ「いいでしょう」

 話はそれでまとまった。
 タンブルストンとドクオは一礼して退席し、ツンには士官用宿舎の一室で休むように言われた。


25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/08(水) 22:23:24.66 ID:jT7unM/AP

 クーはツンを宿舎まで案内し、身の回りの世話をするよう命じられた。
 正直言って、クーには気の重い任務だった。

川 ゚ -゚)(私がとっ捕まえちゃったからなあ、この人…)

 夜の植民地の中を、二人の女は黙ったまま、歩いた。


 クーは気まずい思いで、隣を歩くツンを、こっそりと見上げた。
 その横顔は大人の余裕をたたえてはいるものの、どこかつんけんとした、
 とげとげしさを感じさせる表情だったのだ。

川 ゚ -゚)(それにしても、このつんつんした顔、どっかで…)

 じっと見つめているクーの視線に気づき、ツンが見つめ返してきた。
 その鋭い目つきに、クーはあわてて目をそらせた。

川;゚ -゚)(あーやっぱり、この人、苦手かも)

 クーは宿舎に向かって、少し足を早めて歩いていった。


26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/08(水) 22:26:58.80 ID:jT7unM/AP
二.


 ブラゲ植民地へは十日の船旅だと、ツンは言った。
 使節団の足として、アーネムは快速フリゲート艦ハイペリオン号を用意した。

(´<_` )「それじゃ兄者、行ってきます」

 ニューソクタウンの港、集兵場の一角で、アーネムとタンブルストンは向かい合っていた。
 しっかりとしたブラゲ語を使える唯一の上級士官として、
 タンブルストンは今回、使節団長という役割が与えられていた。

( ´_ゝ`)「ああ、しっかり頼む。ブラゲに我々との友好の意思があるかどうか、探ってきてくれ。
     それと…。その、事務作業が溜まってるから…その…弟者、なるべく早く帰ってきて…」

 アーネムの最後の言葉は尻すぼみだった。
 「は?」とタンブルストンは、アーネムを見下ろして言った。

(;´_ゝ`)「ああ、いや、なんでもない。無事の船旅を」

(´<_` )「はっ」

29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/08(水) 22:30:15.13 ID:jT7unM/AP

 使節団の正使はタンブルストンであり、副使にクーが選ばれた。
 クーが連れて行かれるのは、ツンの世話役としての意味合いが強かったが。


 ブラゲ人に対する出迎え方がわからなかったので、ハイペリオン号の艦長はツンが乗船するとき、
 乗員をずらりと舷門に整列させ、艦長乗船と同じ種類の号笛を吹かせてみた。
 その敬意の払い方はどうやら、すました足取りでステップを上がるツンを喜ばせたようだった。

 艦は帆を上げ出航した。
 海はおだやかで、良い風が吹いていた。


 航海は順調に進んだ。
 沿岸部を順風に乗って南下するだけなので、ひどい揺れや雨との戦いは無縁だった。

 春の海上は暖かく、どこか生ぬるいような潮風が吹いていた。
 群青の海面と青い空に挟まれた、それは快適な船旅だった。

 八日目の早朝、フォアマスト員が目的地の陸地をランドフォール(初認)した。
 大きな湾を抱え込んでいる、岬の先端部だった。

31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/08(水) 22:33:27.64 ID:jT7unM/AP

 岬の先頭、高台の上には、赤レンガ作りの要塞のような建物があった。
 望遠鏡で覗いていた艦長が「ブラゲ旗が上がっている」と告げた。

 要塞からぱっと小さく、白い噴煙があがった。
 つづいてファルコネット砲の、どこか間の抜けたような砲声が響いてきた。

ξ゚听)ξ「警告の空砲です。国旗と信号旗を出してください。Z、P、K、Aの順に」

 ハイペリオン号のマストに、ツンの言うとおりの信号旗が掲げられた。
 砦からもう一度空砲が轟いた。フリゲート艦からも返礼の空砲が放たれた。

 そのまま軽帆を張りひろげたフリゲート艦ハイペリオン号は、湾の奥のほうへと近づいていった。

 外国の軍艦が来たというので、波止場の上には、興味津々といった顔つきの商船乗りや民間人たちが、
 南部独特の幅広帽を斜めに頭にのせて、続々と集まってきていた。
33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/08(水) 22:37:57.77 ID:jT7unM/AP

 港からは陸路だった。
 総督の館は、ここから少し内陸のブラゲ植民地の首都「ブラゲタウン」に置かれているのだそうだ。

 港町の役所前で一行は馬車を拾った。
 御者はごま塩頭の痩せたじいさんだった。
 彼はツンの顔を知っていて、「これはどうも、奥様…」と、帽子を取って深ぶかと頭を下げた。

 一行は馬車に乗り込み、小さな港町を後にした。


 馬車の中で、タンブルストンとツンは、向かい合って座った。

(´<_` )「あなたはこのあたりでは、顔を知られた有名人なのですね。ドーニャ・ツン」

ξ゚听)ξ「ええ、まあ。
     このブラゲ植民地を最初に作り上げたのは、初代総督である私の夫ですから」

(´<_` )「ほう、それは…」

ξ゚听)ξ「ここまで立派に大きくしたのは、いまの総督代理のクックル氏ですけどね」

 御者台の上から、話に割ってはいる声がした。

「そうですなあ。このへんにまで砂糖畑を広げたのは、つい去年のことでしたなあ」


34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/08(水) 22:41:24.36 ID:jT7unM/AP

 馬車は、じめじめと湿度の高い南部の道を、内陸へと進んだ。
 太陽の照りつけは、北部にあるニューソク植民地より強かった。 

 道の両側は見渡す限りのサトウキビ畑だった。
 あたりの景色を見ようと馬車から身を乗り出したクーに向かって、御者は
「砂糖農園ばっかしですぜ、ほかにはなんもないです」と、のんびりとした調子で言った。

 農園では褐色の肌の現地人が働いていた。
 クーは彼らを見て驚いた。
 原住民の全員が黒光りする鉄の足かせをはめ、鎖で繋がれていたからだ。

 一人の痩せこけた原住民の少年が、石か何かにつまずいて、足の鎖が絡まり、倒れた。
 抱えていたサトウキビの苗が地面にちらばった。

 どこにいたのか、でっぷり太った白人の男が鬼のような形相で駆け寄ってきて、
 手に持っていた不思議な形の短く黒いムチで、地面に横たわる少年を打ち据えた。

「ああ、あのムチは馬の陰茎でがす。あれで打たれると、たいそう痛い。
 それに、痛いだけじゃない。
 黒んぼどもの自尊心のほうまで傷つけることのできる、便利な一品ですわい」

 御者は身を乗り出したクーを横目で見て、笑いながら言った。


35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/08(水) 22:44:00.31 ID:jT7unM/AP

 クーは眉をしかめた。
 首を引っ込めて、馬車のなかに戻った。

 そしてブラゲ人であるツンの顔を、とがめるようにじっと見た。

ξ゚听)ξ「…クックル氏の方針なの」

川 ゚ -゚)「方針?」

ξ゚听)ξ「私と夫は、現地人とはできるだけ仲良くやりたいと思ってた。
      でもクックル氏は違う。彼は私たちのやりかたを、手ぬるいといって前々から批判してたの。
      そんなやり方では本国に利益を送ることができない。私たちのやり方は愛国心が足りない、って。
      それで、彼が総督代理に正式に就任してからは、原住民に対して徹底した弾圧を始めた」

 ツンは馬車の窓から、地平線まで一面に広がるサトウキビ畑を眺めやった。

ξ゚听)ξ「この土地はもともと、オネイダ族とモホーク族という原住民が暮らしていた場所だった。
      私と夫はオネイダ族から土地を購入して、ブラゲ植民地都市を作ったわ。ちゃんと銀で対価を払ってね。
      でもクックルのやりかたは違った。彼は就任するやいなや、軍隊を出した。
      オネイダ族を襲って全員を奴隷にして、さらにモホーク族を追い払って、この大農園を作ったの」

37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/08(水) 22:48:00.70 ID:jT7unM/AP

 正午前、道標がブラゲタウンに近づいていることを示してくれた頃、
 馬車の中に、おかしな、何かの腐ったような強烈な異臭が漂ってきた。

 不思議に思って、一行は窓から顔を出して、外を見た。

 それはむごい光景だった。
 街道の脇に大きな十字架が並び、その一つ一つに、磔刑にされた原住民の死体がぶらさがっていた。
 十字架の列は等間隔に絶えることなく続き、街道に沿ってまっすぐに、地平線まで延びていっていた。

「ああ、ああ、奥様はまだ、ご存知なかったんでげすね」

 御者が明るい声で言った。相変わらず、のんびりとした調子だった。

「でっかい奴隷反乱があったんすよ、一週間ほど前に。
 もちろん、そんなふざけた有色人種どもは、即日出動したわが栄光のブラゲ軍に鎮圧されて、
 そんで見せしめのため、反乱を起こした現地村は、全員がこうして引っ括られたってわけでさ」

 磔にされているものは、男女も老若も関係なかった。
 一つの十字架の四箇所に、小さな子供ばかり四人を、頭を下にしてくくりつけてあるものもあった。
 みな、眼球を丸く飛び出させて、糞尿も垂れ流しが逆流し、口を開けて息絶えていた。

 クーは、沿道に並ぶ悲惨な現地人の亡骸を見ながら、
 いまさらながら、デレの怒りももっともなものだったんだな、と考えていた。

40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/08(水) 22:50:31.20 ID:jT7unM/AP

 馬車は石造りの城門を潜り、ブラゲタウンの中に入った。
 この街は新大陸ヴィップにもっとも古くから存在した植民都市なので、とても大きく、栄えていた。

 植民地とは思えない壮麗な石積みと、優美な街灯に代表される街の装飾。
 通りには商店が立ち並び、ガラス張りのショー・ウィンドーには、新旧両大陸のさまざまな物品が飾られていた。

 それは、作られて一年もたっていないニューソクタウンとは比べるのも愚かという感だったし、
 あの見せかけだけは栄えていたラウンジ植民地と比べても、まったく見劣りのしない街並みだった。

43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/08(水) 22:54:55.65 ID:jT7unM/AP

 街には黄金が目立った。

 ちょっとした出店の鋼鉄細工の風見鶏にまで、
 綺麗にメッキされた金の光が、きらきらと街路に彩りを添えていた。

 ブラゲ市民たちは陽気に笑い騒ぎ、みな裕福そうな格好をして、満ち足りて幸福そうだった。


 一軒の大きな銀行の前を通ったとき、ツンが独り言のように言った。

ξ゚听)ξ「総督代理クックルは、もとは大きな商人だったの。だから金融や商業に精通していて、植民地は栄えたわ。
      でも、あふれ出た投資マネーは、飢えた豚のように黄金を求めるの。
      彼は現地人の持つ黄金を徹底的にかき集めた。金鉱山では無数の奴隷たちが投入され、
      プランテーションでは鎖に繋がれた現地人たちが、強制労働に駆り立てられている…」

 そう言うツンの顔は、悔しそうに、苦い薬を含んだように翳り、ゆがんでいた。


44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/08(水) 22:58:52.43 ID:jT7unM/AP

川 ゚ -゚)「ひどいなあ。ツンさん、総督夫人なんだろ。なんとか言ってやろうよ、そのクックルってのに…」

ξ゚听)ξ「何度も言ったわ。でも、クックルは昔ながらのブラゲ人。男尊女卑の考えが、骨の髄まで染みこんでる。
      男が一番えらいと思ってて、女の言うことには耳を貸さないの。
      …ああ、ホライゾン。あの人さえいれば……」

 唇をかんで、ツンは下を向いていた。
 肩が、震えていた。

ξ゚听)ξ「…このブラゲ植民地は、私とホライゾンで作ったものなのよ。
      それなのに、クックルのようなやり方で統治されるのは、私は耐えられない!」

 きっ、とツンは顔を上げた。
 でも次の瞬間には、再び苦い顔に戻って、うなだれた。

ξ゚听)ξ「…でも、人々はみんな、今ではクックルを支持してるわ。
      彼のやり方のほうが儲かるし、それに、本国政府も、たっぷりの税収で潤うしね……」

(´<_` )「なるほど…。
     ドーニャ・ツン、あなたはとても気高く、神の愛に満ち溢れた考えをお持ちのようです」

 タンブルストンが、会話に割り込んできた。

47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/08(水) 23:01:44.25 ID:jT7unM/AP

(´<_` )「どうだろう。あなたさえよければだが、我々ニューソク植民地の陸軍と海軍は、
     あなたの理想を実現するために、兵力を提供する用意がありますが。
     つまり、クックルの暴虐の統治を終わりにするという意味で…」

 ツンが顔を上げた。
 激しい怒りのまなざしで、彼女はタンブルストンの顔を正面から睨みつけた。

ξ゚听)ξ「我々の作り上げたブラゲ植民地を、ニューソク軍は侵略するつもりか」

(´<_` )「いえ、そういったつもりでは、全くありませんが…」

 タンブルストンはいくぶん気おされて、ツンの瞳を受け止めきれないまま、言った。

川 ゚ -゚)「でもツンさん、クックルはひどいじゃないか。
    現地の人をころしたり、奴隷にしてこきつかったりしてさ。
    それでもツンさんは今の制度を守るの?」

ξ゚听)ξ「私はクックルを守るんじゃない。私と夫が作り上げたこの街を、私は守るのよ。
      どんなことをしてでも、私は絶対にここを守る。あなたたちなんかには、負けやしないわ」

 いまやツンの目には強さが戻っていた。
 元のように険のある表情で、ふたたび彼女は口を閉ざしてしまった。

 総督の館に着くまで、馬車の中はずっと、沈黙したままだった。


48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/08(水) 23:04:43.44 ID:jT7unM/AP
三.


 総督の館は、中世時代を模したような城砦作りになっていた。
 堀にかけられた跳ね橋を渡って、馬車は「城」の中に入っていった。

 鉄の格子でつくられた門のところで一行は止められたが、
 馬車の中からツンが顔を出すと、門衛たちはたちまち槍を立てて直立し、道をあけた。

 高い城壁と無数の尖塔を備えた石造りの「城」は、威圧感たっぷりに馬車を見下ろしていた。


 一行は馬車を降り、城の中に入った。
 執事がツンの外套を受け取り、召使が髪の汚れを梳いた。
 ツンはこの城の中では、立派に女主人の貫禄を持って振舞っていた。

52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/08(水) 23:08:19.45 ID:jT7unM/AP

 入り口のホールでニューソク人使節はツンと別れた。
 クックルとの面会は、夕食の席で行われることになった。
 それまでの間、使節であるタンブルストンとクーは、あてがわれた部屋で休んでおくよう言われた。


 二人は天井の高い、豪奢な趣向の凝らされた客間へと案内された。

 クーはぽかんと口をあけて、豪華な内装の施された部屋を眺め回した。
 それから、紫のビロード張りのソファに飛び乗って、嬉しそうに両手でばんばんと座面を叩いた。

 控えていたブラゲ人の召使たちが、田舎者を小ばかにしたような笑みを唇の端に浮かべた。
 ひそひそとささやき交わす声もする。

 クーの奔放な無作法ぶりに、見かねてタンブルストンが口を開いた。

(´<_` )「静かにしろ、クー。おまえは、もう少し礼儀ってやつを…」

 言われて、クーははっとした。
 自分を見つめる召使たちの、あきれたような視線、視線、視線に気づいて、
 真っ赤になって、小さく座った。
54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/08(水) 23:10:22.30 ID:jT7unM/AP

(´<_` )「ったく、たたき上げの士官は、これだから困る…」

 タンブルストンは言って、クーの向かいの椅子に腰掛けた。

(´<_` )「こういうところに出るときは、お前も洗練された礼儀作法という点で、もっと気をつけろ」

川 ゚ -゚)「で、でも、上品なやり方なんて、わかんないよ…」

 クーは、生まれて初めての人間づきあいというものを、船乗りたちの間で学んできていた。
 だから彼女は、その言葉使いも態度にも、
 おだやかなやり方に対してはじれったがるような性格が身についていた。

(´<_` )「しょうがないな…。じゃあ、夕食の席では、私のやるとおりに振舞うんだ。
     私のやり方をよく見て、それをそのまま真似るんだ」

川 ゚ -゚)「う、うん…」

58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/08(水) 23:14:48.98 ID:jT7unM/AP

 外が暗くなるころ、晩餐会が始まった。

 食堂には縦に長いテーブルが置かれ、たくさんの銀のろうそく立てで飾り付けられた。
 テーブル奥には、大きな装飾の施された椅子に、クックルがゆったりと腰掛けていた。

 部屋の無数のろうそくの明かりで、壁や天井はオレンジ色に輝いていた。


( ゚∋゚)「さあ、最初はなんと言っても、これです。小鹿のテリーヌ」

 クックルは痩せているように見えて、そのじつ全身の筋肉がしなやかによく動く人物だった。
 くりくり動く可愛らしい目玉は、商人らしい油断のならない、目端のききそうな印象を、彼の容貌に与えていた。

 彼は次々に、テーブルに並べられた料理の解説をした。

( ゚∋゚)「つぎは白鳥です。こんがりと丸焼きにローストしたものに、内臓で作ったソースをかける。
     このソースのレシピは、私が抱えておる料理人の秘伝でしてな」

 クーが自分の前にずらりと並べられた銀食器を前に、かちかちに緊張していた。
 タンブルストンはクーの向かい側に座り、ナイフやフォークの使い方を、ひとつひとつ目で合図して教えた。


59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/08(水) 23:17:00.12 ID:jT7unM/AP

(´<_` )「これほどのごちそうを、かたじけない。セニョール・クックル」

( ゚∋゚)「いやあ、ツン夫人をここまで無事にお送りくださり、我々としてもあなた方には、
     感謝のしようもないほど感謝しているのですよ。
     むしろこの程度のおもてなししかできずに、汗顔の至りですわい」

(´<_` )「十分すぎるおもてなしです。我々としては、ごちそうをいただきに来たのではありませんから。
     我々ニューソクは、ぜひあなた方ブラゲと…」

( ゚∋゚)「おーっ! お待ちかねの豚の丸焼きだ! これは最高に美味しいですぞ!」

 タンブルストンの言葉は、クックルの大声によって中断された。

 クックルはしたたかだった。
 タンブルストンはこの外交会談で、ニューソク・ブラゲ間の中立条約と貿易権の獲得を狙っていたようだが、
 その話を持ち出そうとするたびにクックルは話を遮って、のらりくらりとかわし続け、
 話の主導権はけっして渡さなかった。

 かえってクックルは、巧みな話術を駆使して、こちらから得られる限りの情報を引き出そうとする始末だった。

61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/08(水) 23:21:18.78 ID:jT7unM/AP

 しかし、話が植民地経営のことに向いたとき、食卓の状況に変化が起こった。

( ゚∋゚)「奴隷を使った大規模なプランテーションの経営。
    新大陸において金を稼ぐには、これがいちばん効率的ですな」

(´<_` )「ほう、奴隷を…」

( ゚∋゚)「そうです。奴隷はアフリカの黒人でも、この地の原住民でもいい。やらせる仕事は単純ですからな。
     どんな原始人でも、ムチで仕込めば、農園の仕事くらいはできる。綿花、砂糖、タバコ……」

 孔雀の足のローストをむさぼりながら言うクックルに、
テーブルの向かいから、ツンが苦言を呈した。

ξ゚听)ξ「クックル総督代理。あなたのその、奴隷を使う方針ですが…
      もしここに総督ホライズンがいれば、その件に関しては、どう言うでしょうね」

 クックルがツンのほうを向いた。

ξ゚听)ξ「総督代理は、あくまで総督がこの地にいない間の、臨時の役職ですよ。
      あなたは総督の定めた方針を逸脱しないような方法で、植民地経営をする義務があると思うのですが」

64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/08(水) 23:23:50.04 ID:jT7unM/AP

 ツンの言葉に、クックルは乾いた笑いで応じた。

( ゚∋゚)「奥様、ああツン夫人…。こんなことを申し上げるのは非常につらいことですが、
    ですが、奥様はそろそろお認めにならなければいけません。
    この野蛮な大西洋に船を出して、一年以上も行方が知れないような人物は、もうすでに、
    …この世にはいないのだ、ということを」

 語尾をわざと生ぬるくゆっくり喋るクックルに、ツンは卓上の拳を握り締めた。

ξ゚听)ξ「…私の夫が死んだという連絡を、私はまだ、受けておりませんわ」

( ゚∋゚)「その連絡が無いというのが、すでに、死を伝える連絡なのですよ」

 優越感をその細身の顔にたっぷりと浮かべて、クックルはツンに、囁きかけるように優しく言った。

( ゚∋゚)「奥様、これは、もし奥様がお忘れであってはいけないと思って言うのですが、
    総督が死亡した場合は、総督代理の地位にある者が、そのまま総督の地位につくのです。
    いかにツン様であられましても、将来の総督たる私に対しては、
    あまり余計なことを言われないほうが、結局は奥様のためになると思うのですが」

 半ば脅しのようなクックルの言葉に、ツンはそれ以上は言い返さず、黙った。
66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/08(水) 23:26:36.86 ID:jT7unM/AP

 会食も終盤に近づいた。
 テーブルに果物を大盛りにした銀の器が出され、甘いソーテルヌのグラスが配られた。

 酔いの回った一座では、話題が旧大陸の社交界でのあれこれの噂のことに行きはしても、
 政治と外交のほうには、もはや向くことがなかった。
 タンブルストンもなかば諦め気味に、クックルの振ってくるどうでもいい雑談に応じていた。


 廊下で幼児の声がした。
 無作法に扉が開かれ、小さな男の子が、会食の席に駆け込んできた。

( ^ω^)「ママー」

ξ゚听)ξ「あっ、こらブーン、勝手に部屋を出ちゃだめって言っておいたでしょう」

 男の子はツンに駆け寄って、膝の上に飛び乗ろうとした。

( ゚∋゚)「はっはっは。ご婦人はやはり、家庭を守るのが一番ですなあ」

 クックルが上機嫌に、酒で真っ赤な顔をして、言った。


67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/08(水) 23:29:14.83 ID:jT7unM/AP

ξ゚听)ξ「すみません皆様。このような形ではありますが、紹介させていただきます。
     この子は私と、夫ナイト・ホライゾンとの間の子、ブーン・ホライゾンです。
     当年で五歳となります」

(´<_` )「ほう、総督夫妻の…」

川 ゚ -゚)(ツンさん、子供いたんだ)

 ブーンは半ズボンに胴衣という姿で、にこにこと屈託なく笑い、
 卓上の甘いごちそうに目を奪われて、短い手をどれに伸ばそうかと、うろうろさせていた。

 ツンは一礼し、ブーンの手をたずさえて、席を立った。

 それでなんとなく、会食はお開きの雰囲気になった。
 主人クックルはおざなりに訪問の礼を言い、儀礼ばってタンブルストンが返礼をした。
 クーは立ち上がろうとしたが、酒で、足元がふらふらした。


 けっきょくこの会談は、ニューソク側にとっては、何の成果も無いものだった。

69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/08(水) 23:32:11.19 ID:jT7unM/AP
四.


 翌朝、涼しいもやの立ち込める中、
 タンブルストンとクーはブラゲ人召使たちに見送られ、総督の館を発った。
 そのまま馬車はブラゲタウンの街中を抜けて、街を囲む城壁の外に出た。


 大きなブラゲタウンの脇を、雄大な川が流れていた。
 街を包む朝靄はその川から立ち上っているようだ。


 クーは馬車の中で頭を抱えていた。
 目の下にクマができて、肌具合も悪そうだった。

(´<_` )「なんだ。二日酔いか?」

川"゚ -゚)「……」

 馬車はガタガタッと轍の刻まれた道を進んでいた。
 車輪が跳ね上がるたびに、クーは気分の悪そうな顔をした。

73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/08(水) 23:36:23.74 ID:jT7unM/AP

 通り過ぎていくサトウキビ畑では、褐色の女たちが頭にカゴを載せて、作業をしていた。
 擦り切れた服に身を包み、草取りをしたり、畑の世話をしたりしている。
 みな、足首には鉄の輪をつけていた。


 そんな緑の畑のむこうは、休耕地と思われる広い空き地になっていた。
 むきだしの地面が広がるその場所に、百騎ほどの武装した騎馬がいた。

(´<_` )(……?)

 遠く小さく見える騎馬隊の、先頭に立つ指揮官は、どうやらツンらしかった。
 金髪の巻き髪をなびかせながら馬を早駆けさせる女なんて、そうはいないだろう。

75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/08(水) 23:41:24.00 ID:jT7unM/AP

 その空き地はどうやら、軍隊の演習場になっているようだった。
 片隅には樽や藁で作った人形などが置かれているのが見えた。樽には無数の穴が空いていた。


 ツン率いる騎馬の一隊は、ツンを先頭に一列になって人形の群れに近づき、
 両手にもったピストルを正確に一体の人形に撃ち込んで、そのまま駆け去っていく。

 騎馬隊は一つの大きな輪となって、ぐるぐる回りながら装填と射撃を繰り返している。
 カンタブリア円陣といわれる陣形だ。

(´<_` )「クー、お前も見ておけ。ブラゲ軍のドラグゥーン部隊だ」

 クーも顔を上げて、馬車の窓からツン率いるドラグーンの姿を遠望した。
 風に乗ってかすかに聞こえてくる豆のはじけるような音は、ピストルの銃声なのだろう。


76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/08(水) 23:43:22.23 ID:jT7unM/AP

川"゚ -゚)「あ…。
     すげーなあ。揺れる馬の上で、あんなに正確にピストルを撃てるなんて」

 クーはずきずきする頭を手で支え、窓からブラゲ騎兵たちの姿を見ていた。

(´<_` )「さすがブラゲは、いちばん古くからある植民地だけある。
      ……戦うとなったら強敵だな」

 タンブルストンは小さく呟いて、窓から目を離した。
 そして腕組みをして、何事か考え込んでいるようだった。


 遠くのほうから切れ切れに歌が聞こえてきた。
 奴隷たちが歌う、辛く単調な、農作業の歌だった。


 馬車はどこまでも続きそうな平原の土の道を、砂埃を立てながら走っていた。




第十四話 ここまで―――

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