5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 21:58:01.17 ID:j6wq//9OP


 デレはもう寝ていた。どこかで、陸軍兵たちが酔って騒いでいる声がしていた。

 クーは本を開いてみた。
 活字は小さく、カンテラの細い明かりでは読みにくかった。

 質の悪い紙にかすれた印刷で、表紙には『海軍歩兵操典』と書かれている。
 ドクオから借りてきた、士官のための教科書だ。

 文字は、読める。
 だが本を読むという体験は、クーにとって初めてのことだった。

 クーはがんばって文章を目で追った。
 読み進むにつれて、目がしだいに重くなり、頭はうわついて、同じところを何度も読み返したりした。




   川 ゚ -゚)は探しているようです  第十三話

11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 22:01:30.19 ID:j6wq//9OP
一.


 家のドアが開いて、ショボンが帰ってきた。

 デレは自分のベッドで寝息を立てていた。
 クーはテーブルに突っ伏していびきを上げ、半ば開いた口からよだれをたらしていた。

 ショボンはテーブルに歩み寄り、ぐんにゃりしたクーの手のなかからそっと本を引き抜いて、
 水に弱い藁半紙製の冊子が、あわやぐしゃぐしゃになろうとしているのを救い出した。

 それから毛布をもってきて、それをそっと、クーの肩にかけた。

(´・ω・`)「おめでとう。昇進したんだってね」

 寝息を立てているクーに、ショボンは小さく声を掛けた。
 返事は期待していなかった。

(´・ω・`)「士官になると、いろいろ勉強しなければならないから、大変だね。
     でももう夜も遅い。今日はゆっくりおやすみ、クー」

 言って、ショボンは、テーブルの上に置かれたカンテラを持ち上げ、吹き消した。

 暖色の光が消え、部屋は青暗くなった。
 窓から差し込む星明りが、ショボンの輪郭だけを、闇に浮かび上がらせた。

14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 22:03:57.50 ID:j6wq//9OP

 しばらく、ショボンはそこに立っていた。
 やがて輪郭は動き、ショボンが自分のベッドに腰掛けたのがわかった。


 時間が経った。
 闇の中の人影は、頭を抱えてうずくまっているように見えた。

 ショボンの頭の中には、モララーが発していた恐ろしい言葉が、
 繰り返す波のように、何度も渦を巻いて打ち寄せてきていた。


 ショボンは、テーブルに突っ伏しているクーのほうを、ちらりと見た。

(´・ω・`)(…僕には、できるわけがない。そんな恐ろしいこと)

 そう思ってショボンは、また顔を伏せた。
16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 22:05:56.73 ID:j6wq//9OP

 記憶の中のモララーが声を上げた。
 ショボンの頭の中で何度と無く繰り返された光景だ。

( ・∀・)「ショボン牧師、きみ…君は、ニューソク国家と国王のために死ねるか?
      あーつまり、忠誠心はあるかい?」

(´・ω・`)「はっ。それは、もちろん」

( ・∀・)「けっこう。では私は安心して、君に次の任務を与えることができるよ。
      クーを殺せ。ショボン」

 はっきりとそう、モララーは言った。
20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 22:10:27.97 ID:j6wq//9OP

(´・ω・`)「…理由を伺っても、よろしいでしょうか」

( ・∀・)「えっ? 君は上司の命令に対し、その理由を尋ねるの?」

 モララーは声に凄味を利かせて、言った。
 ショボンはたじろぎながらも、自分の言葉を撤回はしなかった。

( ・∀・)「…まあ、いいか。説明してやるよ。
      ショボン、お前はニューソクのためなら死ねると言ったね。
      同じことだ。あのクーという娘は、ニューソクのために死ぬんだ」

(´・ω・`)「…?」

( ・∀・)「王弟アーネムは、あの娘を英雄に仕立て上げようとしている。
      でもね…英雄ってのは、じつは国家にとっては、とっても危険な存在なんだよ。
      反乱の「芽」になっちゃう恐れがあるからねえ」

22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 22:13:39.71 ID:j6wq//9OP

(´・ω・`)「反乱…」

( ・∀・)「そう、反乱。わがニューソク王国にとって、アーネムが新大陸開発を成功させて、
      やつが力をつけるのは、望ましくないんだ。
      一国に二人の王はいらない。現王がいるなら、王弟は必要ない」

(´・ω・`)「それで、クーの命を? し、しかし…。
     それじゃ、彼女は全く悪くないのに、王宮の都合だけで、彼女は命を狙われるということに…」

( ・∀・)「そうだねえ。じつに可哀想なことだねえ…。
      彼女に罪があるとすれば、それは王弟アーネムの勢力の側につき従ったということかな。
      英雄は、危険なんだ。これを消すのは、わが王国の要請だ。…わかるね?」

(´・ω・`)「し、しかしですよ、彼女はまだ、英雄どころか、名も知られていないただの子供で…」

( ・∀・)「知られてからでは遅いんだよ。英雄は、芽のうちに摘む。
      彼女の名が本国の民衆に知れる前に、始末するんだ。いいな」

 モララーがショボンに迫り、低音を効かせて、凄んだ。

( ・∀・)「おいショボン…命令は、命令なんだぞ?
      王と国家からの命令を、わかったのか、わからんのか…、どっちだ?」

 そう言われると、ショボンは何もいえなかった。
 脇を冷たいものが流れ、彼は体を硬くして、ドアの前に立っていた。

25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 22:15:41.79 ID:j6wq//9OP

 テーブルに突っ伏していたクーがうめき声を上げた。

 ショボンはどきりとして、跳ねとばされたように立ち上がった。
 床とベッドががたんと音を立てた。

 その音で、クーが目をさました。

川ぅ-`)。゚ …?

川 ゚ -`)「…ショボン。帰ってきてた…のか」

(´・ω・`)「あ、ああ」

川 ゚ -゚)「あれ、なんだこの毛布」

 クーは自分の肩にかけられた毛布を取って、くるくると膝の上に丸めた。

川 ゚ -゚)「毛布…。お前がやったのか?」

(´・ω・`)「春とはいえ、夜はまだ寒いよ。テーブルなんかで寝たら、風邪をひいてしまう」


26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 22:17:48.15 ID:j6wq//9OP

川 ゚ -゚)「余計なことを。お前のせいで、私の学問が中断してしまったじゃないか」

 もぐもぐと、まだ目が醒めきっていない様子で、クーは喋った。

(´・ω・`)「学問とは、これかな」

 ショボンは取り上げてあった『海軍歩兵操典』を持ち上げて、闇の中でひらひらと振って見せた。

(´・ω・`)「あぶないところだったね。
     君の学問は、真理のもたらす心地よい眠りの中で、溺れてふやけてしまうところだったよ」

川 ゚ -゚)「う、うるさい」

 あせった声が闇の中から飛んで、クーの影が動いた。
 口元のよだれをぬぐったようだった。

28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 22:19:26.78 ID:j6wq//9OP

(´・ω・`)「精が出るね。こんな難しい本を、君が読むなんて。
     でも、今日はもう寝たほうがいい。その様子だとね」

 くすくす笑って、ショボンは言った。

川 ゚ -゚)「わ、私は、えらいんだぞ。士官になるんだ。だから、勉強…。なる……ふぁぁ」

 クーの途切れ途切れの言葉は、割って入った大あくびで中断された。
 ショボンは彼女の肩をとって、ゆっくりとベッドへと導き、静かに横たえた。

川 ´ -゚)「なる…」

 夢うつつの中、最後に力なくクーは言って、毛布をたぐり寄せて胸元に?き抱くと、
 そのまま動かなくなった。

 すぐに、寝息が聞こえてきた。

30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 22:24:00.06 ID:j6wq//9OP

(´・ω・`)(とりあえず、今日は、やめよう…)

 安心したようにおだやかなクーの寝顔を見て、ショボンはそう思った。

 モララーは、クーの名声が本国に知られる前に始末しろ、と言っていた。
 ならばクーはまだ無名だから、まだ時間はある。
 ぼくが考えをまとめ、腹を据えるための時間は、まだ。

 そして、袖口に用意していた暗殺用の小針を、元の隠し場所にもどした。
 それは、今まで何人もの人間の命を苦悶と絶望のうちに闇に送ってきた、小さな毒針だった。

 人殺しという職業に、ショボンの聖職という表の顔は、都合がよかった。
 殺した相手のとむらいを、自分自身ができるのだから。


 その夜、ショボンは寝付けなかった。
 外で騒ぐ陸兵の、遠くから小さく聞こえてくる声が、
 どうにも昂ぶった気に障り続けたのだ。

32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 22:27:48.14 ID:j6wq//9OP
二.


 一ヶ月ほどが経った。
 真新しい石とレンガで、ニューソクタウンは生まれ変わっていた。

 中央の広場には、にわか作りの市場が立っていた。
 ニューソク本国から来た民間人を客と狙って立てられたもので、
 地面にござを広げたりして少ない商品を並べているのは、これも本国から来た冒険商人たちが多かった。

 昼のさわやかな日差しを受けて、市場にも人通りは多かった。
 埃っぽい街路を、水兵がだみ声を上げて通り、民間人の女たちが買い物籠を抱えて、世間話に興じている。

 それは平和な、街のいつもの風景だった。


33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 22:29:30.34 ID:j6wq//9OP

 二人組の水兵が、市場の物売り女をからかっていた。

( ><)「ねーちゃん、なんぼなんです!」

 魚を揚げた軽食を樽の上に並べていた女は、もごもごと金額を言った。

( <●><●>)「魚の値段はわかってます。俺達はねーちゃん、あんたがなんぼかを聞いてるんです!
        ドゥフフwwwwグフフwwwwwwwww」

( ><)「わかんないですかwわかんないですかwwwwwwww」

 頑丈そうな手足の、鼻の平べったい物売り女は、露骨に顔に嫌悪感を浮かべて、二人の水兵から体を離した。

( <●><●>)「俺達はあのパートレム号の乗員ですよ。超有名人で、英雄ですよ」

( ><)「このタウンは俺達が作ったんです!」

( <●><●>)「だからねーちゃん、俺達とめくるめく素敵な一夜を過ごすのは、光栄なことなんですよ!
        わかってますか? グフ、グフ、グフフw」

( ><)「今夜は、そこに新しくできた宿屋の二階を借りましょう! なにをする宿屋なのかはわかんないです!
      きっととても健全な宿屋です! フヒヒ!」

35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 22:31:03.72 ID:j6wq//9OP

 そんな二人の後ろから、人ごみを掻き分けて、小さな人影が駆け寄ってきた。

ミセ*゚ー゚)リ「あの、ちょっと、ちょっとすみません!」

 水兵二人は、声のしたほうを振り返った。

 鳥撃ち帽をかぶった小柄な女の子が立っていた。
 機能的な茶色のチョッキにズボン姿で、それは男の…中流階級の市民が好んで身につける普段着だったが、
 赤っぽい栗毛を大きな編みこみにまとめて後ろに流しているのが、活動的な印象を女の子に与えていた。

ミセ*゚ー゚)リ「お二人はパートレム号の方なんですか?」

( <●><●>)「ええ、そうですとも!」

 水兵は誇らしげに、いくぶん胸を反らしぎみに答えた。
 三十数名ほどのパートレム号の生き残りは、この植民地を最初に開いたメンバーとして、
 このタウンの中では畏敬の念を持って見られていたのだ。

ミセ*゚ー゚)リ「わーい、嬉しい! あなたがたと、じっくりお話してみたいなー。
      ねえ、ちょっとどこか落ち着けるところに行きません?」

 少女は言った。二人の水兵の目が、ぎらりと光った。

38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 22:34:54.72 ID:j6wq//9OP

 三人は市場を離れ、水兵二人の先導のもと、怪しげな裏路地へと歩いていった。

( <●><●>)「こ、こ、ここです、この茶屋です…!!!!!」

( ><)「何をする茶屋かはわかんないです!! わかんないです!!!!!!!」

 水兵は少女を連れて、真新しい一軒の建物へと入っていった。
 表の看板には「茶」とだけ書かれていて、ほかにめぼしい装飾物などはない。


 人の気配が不自然に無い廊下を歩き、三人は小さな個室へと入った。

 部屋の中は薄暗い。
 丸いテーブルには水差しが置かれ、片隅にはなぜか、簡素なベッドが用意されていた。

ミセ*゚ー゚)リ「わあ、宿屋なんですね、ここ」

 知ってかしらずか、少女は明るくそう言って、ベッドの端に勢いよく腰を下ろした。

42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 22:38:24.95 ID:j6wq//9OP

( <●><●>)「ウヘ、ウヘヘヘ…ねえちゃーんwwwwwww」

 目の大きな水兵が両手をわきわきさせて、女の子のほうへとじりじり近寄っていった。

( ><)「わかんないです! わかんないです!
      ワカッテマス君、君がなにをしようとしてるのか、さっぱりわかんないです!」

 言いながらも糸目の水兵は手回りよく自分の上着を脱ぎ、
 すでに腰のベルトに両手をかけて、かちゃかちゃ言わせはじめていた。

ミセ*゚ー゚)リ「ワカッテマス? そちらの目の大きい水兵さんのお名前?」

( <●><●>)「そうです。パートレム号の二等水兵、ワカッテマスとは私のことです!」

( ><)「そして同じく二等水兵ビロードです! ヒヒヒ…ねえちゃんは何て名前なんです?」

ミセ*゚ー゚)リ「あ、ごめんね。私はミセリ。本国ニューソク・トリビューン紙の記者、ヴィップ特派員です。
      どうぞよろしく、ミスタ・ワカッテマスにミスタ・ビロード。
      それじゃさっそく、植民地のお話を聞かせてもらおうかな」

( <●><●>)「へ? 新聞記者…?」

 ワカッテマスの動きが、ぴたりと止まった。
44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 22:40:57.95 ID:j6wq//9OP

 ミセリは素早く懐から手帳と鉛筆を取り出すと、ぱらぱらとページをめくって、日付を書き込んだ。

ミセ*゚ー゚)リ「えーと、お二人が始めてこの入植地に来たのは、いつの事でしたか?」

( <●><●>)「…あー…えーと……」

( ><)「……その…お楽しみタイムは…?」

 ビロードはズボンの前をなかば開いたままの間抜けな姿勢で止まっていた。
 ワカッテマスは上げた手の下ろしどころがわからないまま、ぶつぶつと何事かを呟いていた。

ミセ*゚ー゚)リ「ん? ええ、そうですね、私たちいっぱい楽しみましょう!
      でも…私はあなたがたと、もっとたくさんお話がしたいかも。
      なにが何だかわかんなくなっちゃう前に…ね」

 ワカッテマスの鼻息が大きく音を立てた。

ミセ*゚ー゚)リ「あのパートレム号の船乗りさんとお話できる機会なんて、めったにないもの!」

 そう言って、ミセリは矢継ぎ早に質問を繰り出した。

 二人の水兵は、その問いかけのスピードにたじろいだ。
 問われたことに答えるために、単純な頭を、普段は使わないような速度でぐるぐる回転させた。
46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 22:43:41.21 ID:j6wq//9OP

 三十分ほど、ミセリは一方的に質問を繰り返した。

 椅子に腰掛けたワカッテマスとビロードは、ときには自慢話ふうに誇張した話をしたり、
 ときには悲しい事件を思い出してしゅんとなったりしながら、植民地でのあれこれをミセリに語って聞かせた。


 ひととおりのことを聞き終えると、ベッドに座っていたミセリは、ぱたんと手帳を閉じた。

ミセ*゚ー゚)リ「ありがとうございました。貴重なお話が聞けて、嬉しいです!」

( ><)「それはよかったです!
      さて…では、そろそろ…クフフ…!」

( <●><●>)「今度はこっちが楽しむ番なのは、わかってます、わかってます…!!!!」

50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 22:47:47.85 ID:j6wq//9OP

 水兵たちは椅子から立ち上がろうとした。
 だが小さな赤毛の女の子は、男たちの予想をはるかに超えて敏捷だった。

 ミセリは素早く立ち上がり、床を滑るように二人の水兵の間を駆け抜けると、
 個室の入り口ドアを開けて、あっという間に廊下へと出ていってしまったのだ。

( ><)「えっ、あれ、ちょ…!」

( <●><●>)「お、お楽しみ…! 約束のお楽しみタイムは?!」

 ようやく椅子から立ちあがって追いすがる二人に、
 ミセリはドアの隙間から笑顔を覗かせ、手を振った。

ミセ*^ー゚)リ「ええ、私はとっても楽しかったですよ! それじゃ、また!」

 バタンと大きな音がして、水兵二人の鼻先でドアが閉じられた。
54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 22:50:49.62 ID:j6wq//9OP

( ><)「ま、待つんでーす!!!!!」

( <●><●>)「サギです!! シィーット! このアマッコ、待ちなさい!!!!」

 勢いよく廊下に出て行こうとした二人の前に、館の主人の老婆が立ちふさがった。

「あんたら部屋代を忘れちゃ困るよ」

( ><)「そ、そ、それどころじゃないんです! ああもう、ええい、なんぼなんです!」

「まったくバタバタとうるさいねえ…ブツブツ……
 メーワクしたから三人で六シリングだよ、さっさと出しな」

( <○><○>)「ろろろろろろろろろろ六シリング!!!!!!!!!!!!!!!!!!
        水兵の給料三か月分なのはわかってます!!!!!!!!!!」

( ><)「せっかくもらったパートレム号乗員ボーナスがあああああああああ!!!!!!!!
      ふざけんじゃないですこのくそばばあ!!!!!!!!!!!」

 どたばたと騒がしい物音を立て始めた怪しい茶屋を背に、新聞記者ミセリはにこにこと快活に笑って、
 昼のニューソクタウンのほこりっぽい路地を元気よく駆け去っていった。
57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 22:55:14.10 ID:j6wq//9OP
三.


 ニューソクタウン郊外の、景色の良い湖水のほとりに、クーとフサが立っていた。

 あたりには人家もない。
 気持ちいい日差しがおだやかに湖面をきらめかせ、白樺の森からはほのかな木々の香気が漂ってくる。

 小鳥のさえずりが、長く辛い冬を耐え抜いた二人に、春のおとずれを感じさせていた。


ミ,,゚Д゚彡「んじゃ、俺がやってみっから、お前はよーく見とけよ」

 二人はそれぞれマスケット銃を抱えていた。

 フサは銃を胸元に上げると、まずは打ち金をおこして、装薬をそそぎ込む。
 それを当て金で閉じて、次に銃を回し、銃口から残りの装薬と弾丸を入れ、棒で突き固めた。

 打ち金をいっぱいまで起こすと、フサは銃尾を肩にしっかりつけて構え、湖水に向かって引き金を引いた。

 パチュン、という黒色火薬の発射音が、開けた湖面に大きく響き渡り、遠くの山々にこだました。
 六十メートルほど離れた場所に、小さな水柱が上がった。
60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 22:59:10.66 ID:j6wq//9OP

ミ,,゚Д゚彡「よっしゃ。じゃあクー、俺と同じようにやってみろ」

川 ゚ -゚)「うん」

 クーは自分が抱えていてた大きなマスケット銃を持ち上げた。

 街中で売ってる鳥撃ち用の猟銃に比べると、軍用のマスケット銃は大きくて、重たくて、野蛮な感じがした。
 銃身はどっしりした黒い鉄製で、へこみだらけのイチイの木のストックに、しっかりと固定されてある。
 それが親指ほどの太さを持っているということは、銃弾は重く、強大な殺傷力があるということだ。

 クーはもたもたと、フサの動作の真似をした。
 薬包の頭を歯でちぎって、ぺっと吐き捨てた。装薬を込め、弾丸を入れ、突き固めた。
 点火薬の具合をフサがチェックした。

ミ,,゚Д゚彡「打ち金を起こして、水平線を狙え」

 二丁のマスケット銃の銃口が上がった。

 水平に構えられたそれらは、フサにとってはほどよくその大きな体格に馴染んだものだったが、
 小柄なクーにとっては、銃だけがやたらと大きく見える、奇妙な対比になっていた。

64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 23:00:51.62 ID:j6wq//9OP

ミ,,゚Д゚彡「撃てッ!」

 カチン、パタン、バン!
 引き金を引くと白い煙の束が前方へ噴き出し、強烈な反動がクーの肩を蹴って、銃口が跳ね上がった。

川;゚ -゚)「わっ!」

 銃を抱えてよろめいたクーを見て、「やると思った」とフサが笑った。

 煙がもくもくと巻きかえってきて、二人を包み込んだ。
 硝煙はすっぱいような臭いがして、目にしみた。
 湖面の遠くのほうで、波紋が広がるのが見えた。


 二人はその後も、一緒に何発か撃った。

ミ,,゚Д゚彡「装填の動作を四十秒以内にできるようになるまで、しっかり練習しとけ」

川;゚ -゚)「四十秒?! で、できるかなあ…」

 もたもたと索杖を動かしながら、クーは言った。

66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 23:03:19.07 ID:j6wq//9OP

ミ,,゚Д゚彡「できるさ。海兵隊員の選抜試験では、三十秒以内の時間制限があるんだぜ」

川 ゚ -゚)「…海兵隊員って、なにげにすごかったんだな」

 わはははと、豪快にフサが笑った。


 十発ほど撃ったところで、フサは手近な木に、持ってきた大きな紙を釘で打ちつけた。

ミ,,゚Д゚彡「んじゃ次は、的撃ちといくか」

 二人は、的紙からきっちり百歩、歩いて離れた。


 決められた場所に立って、クーは銃に弾丸と装薬を込めた。
 だんだんと手つきも手馴れたものになってきていた。

 百歩も離れると、白い紙は小さな点のように見えた。
 クーは銃を持ち上げて、銃身ぞいに視線を通して、的の紙を見た。
 照星をあわせようとしたが、重い銃を支えていると、銃口はせわしなく動き、的からそれた。

 引き金を引いた。撃った瞬間、外れたとわかった。
 大きな銃声が森の中に響いたが、的の紙はそしらぬ顔で、何も変わらず風にふかれていた。


67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 23:06:37.28 ID:j6wq//9OP

 がっかりした顔のクーに、フサは声をかけた。

ミ,,゚Д゚彡「ま、百歩も離れりゃ、あの小さな的に当てるのは難しいよ。
      照星を使わず、目標に向かって勘で撃つことを覚える訓練だよ、これは。
      当たるまで、好きに撃っていいぜ」

 クーは長い間、くやしそうな顔で、遠くの白い紙を見つめていた。


 もう一度弾丸を装填すると、マスケット銃を持ち上げ、ぴたりと銃口を的に向けた。
 照門は見なかった。像はぼやけたが、彼女は遠くの白い紙の存在を感じようとした。

 フサははっとした。
 銃を構えるクーの表情は澄み切って、毛ほどの雑念も、その姿からは感じ取れない。
 きわめて高度な集中力を、クーは発揮していた。
 獲物を狙う猫のような盲目さで、クーの感覚は白い的紙に食いついていた。


 引き金を引いた――バシッと遠くで音が聞こえ、白樺の木の幹から煙が立ちのぼった。
 紙が二つにちぎれて、下半分がひらひらと木から舞い落ちていった。


 フサが感嘆の声を上げ、クーは満足げに、マスケット銃を肩から離した。

70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 23:09:48.02 ID:j6wq//9OP
四.


 ある夜のこと。
 その夜、クーは非番だった。

 とくにやることもなかったので、なんとなく街の周囲をぶらぶらしているうち、
 街を囲う柵の一角にカンテラの明かりが浮かんでいたので、クーは興味を引かれ、梯子段を上った。

 回廊が広くなっている部分に、ドクオが壁に背をもたせかけて、本を読んでいた。
 新月の夜だったので月明りはなかったが、カンテラは文字を読むのに十分な光を放っていた。


 梯子を上がってきたクーの気配に気づいて、ドクオは本から顔を上げた。

川 ゚ -゚)「何してんの?」

('A`)「ん。最近、街中はうるさくてな」

川 ゚ -゚)「ああ、人が増えたもんね…。それでこんなとこで、本を読んでるのか」

72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 23:12:09.10 ID:j6wq//9OP

 たしかに回廊の上は静かだった。
 ときおり回ってくる歩哨以外には、人の気配もあまりない。

 クーはドクオの近くに腰を下ろした。

川 ゚ -゚)「その本、前にも読んでたね」

('A`)「何度も読んだ。目からうろこだよ。真理が、ここには書いてある」

川 ゚ -゚)「真理?」

('A`)「そうだ真理だ。
   伝統的社会では、国家の存在は当然のものと理解され、国家を動かす王の権力は無制限とされていた。
   必然的に社会においては厳格な身分制度が確立されており、人々は生まれながらにして
   身分に応じた義務が課せられていて…」

川;゚ -゚)「ああ、うん、何だか難しそうだね」

 クーはあわてて、ドクオの言葉を遮った。


73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 23:13:40.82 ID:j6wq//9OP

川 ゚ -゚)「で、真理って何?」

('A`)「王や国家は、絶対じゃないってこと」

川 ゚ -゚)「?」

('A`)「国なんてのは、けっきょくは人々ひとりひとりが、おたがいに協力して自分たちを守るために、
   約束をしあって政府をつくったものなんだ。
   古代の国々はそういうものだった。都市国家というやつだ」

川 ゚ -゚)「ふーん」

('A`)「だから、王様は、さいしょからえらいんじゃない。王様は偉くない。
   人々が『王様はえらい』と約束事を決めたから、国王は権威と権力を持って…」

川 ゚ -゚)「あっ」

 クーが声を上げて、ドクオの言葉を遮った。

 梯子段を、金髪が上がってくるのが見えた。タンブルストンが回廊の上に上がってきた。
 険しい顔つきだった。

75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 23:17:37.89 ID:j6wq//9OP

 ドクオが立ち上がり、額に拳を触れて敬礼した。
 タンブルストンはそんなドクオを睨みつけ、続けてクーも睨みつけた。

(´<_` )「お前たち、ここで何をしている」

 厳しい口調のタンブルストンに、いたずらを見つかった子供みたいに、クーは身をこわばらせた。
 非番の日に、街の軍事施設である防壁の上で、おしゃべりに興じていたのだ。
 固いことをいえば、これは軍令違反だった。

 タンブルストンの問いかけに対し、ドクオは無言だった。

(´<_` )「カンテラを消せ。回廊上に光があっては、歩哨の見張りに支障がでる」

('A`)「…はっ」

 クーがあわててカンテラを上げて、吹き消した。
 薄い煙の筋がたなびき、石油の臭いが鼻をついた。

 タンブルストンは後ろ手を組んで、冷たい鳶色の瞳を、詰問するように真っ直ぐにドクオに向けている。
 長身の二人が、向かい合って立っていたが、身長はタンブルストンが少し上だった。
78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 23:20:52.61 ID:j6wq//9OP

 タンブルストンは長い間、何も言わなかった。
 それからようやく出てきた言葉は、クーにとっては、意外な話題に関するものだった。

(´<_` )「ドクオ海尉。君は…
     さきほど、国王は偉くない、と発言したように聞こえたが、…私の聞き間違いでは無いね?」

('A`)「アイ・サー」

 言ったドクオに、タンブルストンは詰め寄った。

(´<_` )「それは、国王を侮辱する意味かね?」

('A`)「ノー・サー」

(´<_` )「では、国王に対する反乱の意思かね?」

('A`)「ノー・サー」

(´<_` )「では、どういう?」

('A`)「理念であります。現国王は、現国民の信託の下で、我々を支配する統治権を持っておられます」

(´<_` )「なるほど」


79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 23:21:56.38 ID:j6wq//9OP

(´<_` )「だが君の考えは間違っている。国王の統治権は、神から授けられた絶対不可侵のものなのだ。
      人民が国王を選んだ、などということは決して無いぞ。
      王は、生まれながらにして、人民を統治する権利を持っておられる。国家は、尊いのだ」

 ドクオは黙っていた。タンブルストンはなおも続けた。

(´<_` )「国のために、主君のために命を捧げることが、臣民の務めだ。
     君はその義務を、ないがしろにしようというのか?」

 タンブルストンは足をめぐらせ、こつ、こつとドクオの周りを歩き始めた。
 厳しい視線を、不動の姿勢のドクオに注ぎながら。

 ドクオは何も答えなかった。
 ただすました顔で、顔を上げているだけだった。

81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 23:24:23.23 ID:j6wq//9OP

(´<_` )(…なぜ兄者は、こんな男を重用しようとするのだろう)

 歩きながら、タンブルストンは考えていた。

(´<_` )(反抗的なのは、上官に対してだけではないようだ。国王に対してすら反抗的ではないか。
      この男にとっては、おおよそ、権威というもの全てが気に食わないのだろうか?
      だとすればこの男は、危険だ。…国家と国王に対して、危険な存在だ)

 タンブルストンとドクオの目が合った。
 銀髪の下の目が、アーネムに向けられているときと同じような、拒絶するような調子に光っていた。

(´<_` )(兄者はこの男に拒絶されつつも、この男を私よりも高く評価している…)

 そのとき、ドクオの瞳に一瞬侮蔑の色が浮かんだように、タンブルストンには感じられた。
 その笑いは、自分がアーネムのことをちらりと考えた瞬間に向けられているように、彼は感じた。

83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 23:26:37.00 ID:j6wq//9OP

 ちょいちょいと、クーがタンブルストンの裾を引っ張った。
 緊迫した雰囲気は、そこで時間を止めた。

(´<_` )「…何だ!」

 タンブルストンは自分の胸部より低い上背のクーに振り返り、いらいらした声で鋭く言った。


 クーは唇に人差し指を当てて、静かにするように、動作で示した。
 そして左手でタウンの外側、柵の向こう側の森のほうを指し示した。

 夜の真っ暗な森は静まり返っていた。
 タンブルストンとドクオは、クーの指の延長上の闇に目をこらした。


 わずかな星明りが、二百メートルほど離れた森の端に、
 馬にまたがった怪しい人間の輪郭を、小さく浮かび上がらせていた。
85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 23:29:26.44 ID:j6wq//9OP

 クーとドクオは目顔を交し合った。
 そして、近くの武器棚から歩哨用のマスケット銃と薬包を取り出した。


(´<_` )「斥候か」

 タンブルストンが小さな声で言った。

('A`)「そのようですな。こっちの様子を、伺ってる」

 音を立てないようにして銃に弾丸を装填しながら、ドクオが言った。
 クーは胸壁から頭だけを出して、注意深く騎馬の様子を伺っていた。


 ニューソクタウンに住む者は、夜間に柵の外に出ることはない。
 それに、友好的な人物なら、こんな夜中にこっそり訪れたりはしないだろう。

 となると、遠くに見えている怪しい人影は、タウンに友好的な人間以外のもの…
 つまり、敵、なのだろう。

 原住民なのか、それとも他国の植民地の人間なのか、それはわからないが。

87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 23:31:14.58 ID:j6wq//9OP

 ドクオは装填のできた銃を持ち上げて、柵のむこうに銃口を向けた。

(´<_` )「…何をするつもりだ」

('A`)「威嚇射撃をして、追い払います。こういうことは、ときどきあることでしてな」

(´<_` )「威嚇射撃?」

('A`)「あいつのそばの地面を狙って撃ちます。ただの斥候だ、殺すこともないでしょう」

(´<_` )「それは、君の方針か」

('A`)「…?」

 タンブルストンはドクオの肩に手をかけた。
 不思議そうに、ドクオは振り返った。

(´<_` )「殺せ。あの斥候を、撃て」
91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 23:33:10.30 ID:j6wq//9OP

 ややあって、困惑したようなドクオの声がした。

('A`)「何も、殺す必要は…」

(´<_` )「だめだ。この砦の情報を、誰だかわからん敵に渡すことはできない。
     わずかなりとも我々に不利益なことが起きる可能性があるなら、殺せ。あの騎馬を撃つんだ」

 闇の中で、ドクオとタンブルストンが、にらみ合っている気配がした。
 しばらく、回廊の上を、沈黙が支配した。


 打ち金を上げる小さな音がした。
 睨みあう二人は驚いて、音のしたほうを向いた。

 クーが、騎馬に向かってマスケット銃を構えていた。

('A`)「お、おい!」

 小さく、ドクオは言った。

(´<_` )「構わん、撃て」

 タンブルストンが言った。

94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 23:36:32.57 ID:j6wq//9OP

 クーの指が、引き金を引いた。
 火打石が当て金を叩き、銃は炎を吹き出して、夜空に轟音を響かせた。

 ややあって、騎馬がゆっくりと倒れていくのが見え、人が地面に投げ出された。
 遅れて遠くから、どさりという音が聞こえてきた。


 クーはマスケット銃を放り捨てて、回廊の床を蹴り、城壁から身軽に飛んで、タウンの外に降りた。
 そのまま一直線に、倒れた騎馬のほうに向かって駆けていっていた。

 ドクオがすぐ後から銃を捨て、続いて飛び降りた。


 回廊の上のそこかしこに、ニューソク語の声があがった。
 時ならぬ銃声に、警備の歩哨たちがざわめき立ったのだ。

('A`)「なぜ撃った、クー!」

 後ろを走るドクオが、クーの背中から声をかけた。

川 ゚ -゚)「私は馬を撃った! 見えはしなかったが、きっと上の人間は無事なはずだ!
     急ぐぞ、逃げられる前に捕らえるんだ!」

97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 23:38:55.87 ID:j6wq//9OP

(´<_` )(馬を? なるほど…)

 城壁の上で腕を組み、タンブルストンは駆けていく二人を目で追っていた。

 クーの咄嗟の判断力に、彼は内心、感嘆していた。
 馬を撃てば、馬上の人間は殺さずに済むし、また斥候を逃がして砦の情報を敵に渡さずにも済む。

 それに、夜間の遠距離狙撃をこなしたクーの射撃の腕前も、彼を驚かせるものだった。


 歩哨が数人、タンブルストンの元に集まってきた。
 指示を仰ぐように彼らは、豪華な濃紺の士官服姿のタンブルストンを見上げていた。

 タンブルストンはサーベルを抜くと、言った。

(´<_` )「集まった者は私に続け。外に出て、敵の斥候を捕らえるぞ」

 歩哨たちが緊張して、マスケット銃を捧げなおした。
100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 23:40:31.22 ID:j6wq//9OP

 騎馬は撃たれた場所のまま、そこにあった。

 馬はまだ息があり、体を横たえて、痛みで激しく足をばたつかせていた。
 その脇に人が倒れている。
 左足を馬体と地面に挟まれて、そこから逃れようと必死にもがいているようだった。

 クーは腰のベルトに挟んであった小さな水兵ナイフを抜いて、倒れている人物に踊りかかった。
 あおむけの人物に馬乗りになり、首元にまっすぐにナイフの切っ先を突きつけた。

川 ゚ -゚)「動くな! お前は我々の捕虜だ!」

 駆け続けた荒い息の下、クーは叫んだ。
 人物は喉元に冷たい鋼鉄の存在を感じ、動きを止めた。
102 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 23:42:37.10 ID:j6wq//9OP

 せわしなく息をしながら、二人は闇を通して見つめあった。

 やがて星明りに目が慣れ、倒れている人物の姿が、ぼんやりと浮かび上がってきた。

川 ゚ -゚)(女?!)

 金髪の豊かな巻髪をしたその女は、整った中にもきつそうな二つの眼に怒りを湛えて、
 悔しそうに歯噛みをして、上に乗るクーを睨みつけていた。


ξ゚听)ξ ・・ ・・・・ ・ ・・・ ・!!


 何事か、強い調子で喋った。外国語だった。
 闇の中から聞こえた声は、やはり、女のものだった。





第十三話 ここまで―――

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