87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 22:51:52.00 ID:KOuWO1vG0

(´<_` )「ああ、思い出した」

弟者は鉄の天井を仰いで呟く。
幼いころの光景も、ついさっき起こった光景も思い出した。

(´<_` )「オレは何であんたを助けたんだろうな」

( ´_ゝ`)「知るか。オレが知りたいわ」

ブーンの言っていた言葉が弟者の脳裏をかすめる。
今のうちに言わなければならない言葉があるのではないだろうか。
口を開くと、兄者にデコピンをされた。

( ´_ゝ`)「貸し借りなしだ。いや、さっき助けてもらった分借りか」

(´<_` )「……そうだな」

はぐらされたような気がしないでもないが、気持ちがストンと落ちる。
どうやら、言わなければならないものはないらしい。
兄者にさっさと浮遊系の魔力をブーンに吸収させろと言い、自分は一歩後ろにさがる。

ブーンとドクオはそれでいいのかと、尋ねたいという表情をしていたが無視をする。
いいのかも何も、他に言う言葉など思いつかないのだからしかたがない。

90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 22:54:25.07 ID:KOuWO1vG0

( ´_ゝ`)「いくぞ」

( ^ω^)「わかったお」

手を伸ばし、ブーンに合図をかける。

( ^ω^)「魔法よ、我が身へ吸収されよ」

目には見えない魔法が吸収される。
吸収している本人であるブーンにはその感覚が伝わっているようで、不思議そうな顔をしている。

( ^ω^)「変な感覚だお」

体が軽くなったような気がすると笑みを浮かべる。

(´<_` )「笑ってる暇があるなら合成しろ」

('A`)「そう急かしてやるなよ」

先ほどまでの緊張感が嘘のように軽い会話が続く。
ブーンも小さく笑い、目を閉じた。
93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 22:57:11.57 ID:KOuWO1vG0

体の中でいくつかの魔法が存在を小さく主張している。
その中でも似た波長を持つ魔力があった。

一つは力強く、一つは軽やかだった。
二つを選択して混ぜ合わせる。魔力同士はわずかに反発したが、すぐに馴染み始めた。
まるで元は一つの魔力だったかのようだ。

( ^ω^)「……できたお」

新しい力を得た魔力は暖かい。
腹の中からその暖かさを感じる。

(´<_` )「んじゃ陣でも作るか。ドクオ、手伝え」

('A`)「何でオレ?」

(´<_` )「兄者は馬鹿だし、ブーンは馬鹿っぽいからだ」

('A`)「……割りと納得だわ」

( ´_ゝ`)「失礼な」

( ^ω^)「ボクは楽できて嬉しいお」

95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:00:16.78 ID:KOuWO1vG0

弟者はドクオに木の枝を渡すと、地面に円を描き始める。

(´<_` )「そっちに今からいう紋様を描いていってくれ」

('A`)「はいはい」

大きな部分は弟者が描き、細かい部分はドクオが仕上げていく。
残された二人は陣が完成していく様子を黙って見ていた。

ブーンの方は兄者に言いたいことがいくつもあったのだが、兄者からかもしだされる雰囲気がそれを許さない。
何も聞くな。何も答えない。
誰にでも聞かれたくないことがある。ブーンはそう結論付けた。

(´<_` )「完成っと」

('A`)「ブーン、ここに魔法を使ってくれ」

( ^ω^)「わかったお」

中心へ手を向ける。

( ^ω^)「移動する魔力よ、陣へと入れ」
99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:03:12.24 ID:KOuWO1vG0

魔力は目に見えない。
けれど、陣が薄く光ったのは誰の目にも明らかだった。

( ^ω^)「……点滅してるお」

(;'A`)「やっぱ魔力が不安定だからか」

(´<_` )「さっさと入れ」

( ´_ゝ`)「行くぞ」

光が消える前に四人が陣へ入る。

(´<_` )「発動」

言葉に反応し、陣がさらに大きな光を発する。
その光は四人を包み込む。

(´<_` )「絶対に生きて帰るぞ」

弟者は兄者に告げる。

( ´_ゝ`)「そうだな」

101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:06:43.37 ID:KOuWO1vG0

光が晴れると、そこはあの大広間だった。

('A`)「……戻ってこれた」

( ^ω^)「助かったのかお」

あの密室から抜け出せたことに安堵したのか、二人はその場に座り込む。
二人の腕を弟者と兄者が掴んだ。

( ´_ゝ`)「安心してる場合じゃないぞ」

(´<_` )「まだここは城の中なんだからな」

( ^ω^)「そう、だおね」

ドクオとブーンは立ち上がり、四人は扉に近づく。
今はまだ騎士達の姿が見えないが、いつ現れるかわからない。
扉に耳を当ててみるが、物音は聞こえない。

('A`)「変だな」

四人を襲ってきた女は王の命令でやってきた。
つまり、自分達の行動は筒抜けだったということだ。
ならば何故ここに騎士達がいないのだろうか。

104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:10:23.31 ID:KOuWO1vG0

(´<_` )「オレ達がここにくる前、あの騎士言ってたな」

この政策について詳しく知っているのは王と、以前やってきた魔術師だけだと。

('A`)「オレ達を捕まえるように命令すれば、全てばれてしまうってわけか」

助かったと言えばいいのか。
そもそも、このような政策がなければよかっただけの話なのだが。

( ´_ゝ`)「まあ、不幸中の幸いってことで」

( ^ω^)「だお」

四人はそっと扉を開ける。
広い廊下のどこを見渡しても人の影はない。
そっと足音をたてないように歩く。

今は命令されていないが、四人のような城に相応しくない不審者の存在が確認されていれば、
王は躊躇なく四人の捜索を命令するだろう。
常に回りに気を配りながら進んで行く。


105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:13:17.91 ID:KOuWO1vG0

<ヽ`∀´>「まだ背中が痛いニダ」

( ^Д^)「不審者なら報告しろよww」

<ヽ`∀´>「そんなことしたら、ウリが仕事を忘れてたのまでバレるニダ」

( ^Д^)「メシウマwwプギャーww」

曲がり角の向こう側から声がした。
ここは一本道なので、このままじっとしているわけにもいかない。

( ;´_ゝ`)「隠れるところなんてないぞ」

大きな置物もなく、四人もの人数が隠れられそうな場所はない。

(;'A`)「あっ、ここ開いてる。
    中は物置っぽい!」

小さな声で言いあい、四人はなだれ込むように扉へ入って行く。

( ^Д^)「ん? 何か聞こえたか?」

<ヽ`∀´>「聞こえなかったニダ」

( ^Д^)「そっか。ならいいや」

<ヽ`∀´>「歳のせいで耳が馬鹿になったニダww」

( #^Д^)「てめーぶっ殺す」
108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:16:03.19 ID:KOuWO1vG0

(´<_` )「……行ったか?」

( ^ω^)「……行ったお」

緊張で固まっていた体の力を抜く。
暗い部屋だが、辺りを見回せば置物や刃の欠けた剣があった。
ゴミを集めているのだろうかと思うほど汚い部屋だ。

('A`)「何だろ」

( ´_ゝ`)「どうしたんだ?」

別の騎士がくる前にと、扉を開けたが、ドクオだけが部屋の中に残っている。
兄者が声をかけるが、ドクオは返事もせずに部屋の中を見ている。

(´<_` )「おい、置いて行くぞ」

('A`)「ここ、何か変だ」

具体的にはわからないが、直感的におかしいと感じた。
ドクオは家柄、直感を大切にしている。
変だと感じたときは調べる。呪いの類に気づくのは案外こうした直感なのだ。

110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:19:27.12 ID:KOuWO1vG0

( ^ω^)「早くしないと……」

( ´_ゝ`)「ま、いいんじゃね? ここにいれば安全だし」

隠れる場所は山のようにある。
第一、このような場所を好き好んで訪れる騎士がいるとも思えない。

(´<_` )「ちっ」

不満を隠そうともしない。
単独行動は危険だとわかっているのか、弟者も大人しく扉を閉めて部屋の中に戻った。

('A`)「んー。どこだ?」

見渡すだけではわからなかったのか、あらゆる所を触れて探り始める。
ドクオが動くたびに埃が舞い、ここがいかに使われていないかがわかる。

( ^ω^)「病気になりそうだお……」

(´<_` )「もういいだろ」

('A`)「もうちょっと」


111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:21:59.92 ID:KOuWO1vG0

時間を計ることはできなかったが、それでもずいぶんと時間が経ったのはわかる。
そろそろ待つことに飽き飽きし始めた。
今もまだ辺りを探っているドクオの様子を見守っている三人はため息をつく。

('A`)「あ」

小さな、でもはっきりと声が聞こえた。

( ^ω^)「何かあったお?」

('A`)「隠し扉だ」

( ´_ゝ`)「え?」

(´<_` )「んなもんがあったのか」

各々座っていた場所からドクオのいるところへ移動する。
ガラクタがなくなった床には、下へ続く扉が開かれていた。

( ^ω^)「……どうするお?」

この扉がどこに続いているかわからない。
もしかすると、外に続いているかもしれない。一階にあるかもしれない倉庫に続いているかもしれない。
少なくとも、騎士が集まっているような場所にはでないだろう。

(´<_` )「行けばいいんじゃね」

117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:24:32.99 ID:KOuWO1vG0

この部屋から出て、城からの脱出を試みるのも、目の前にある階段を下るのもリスクは同じ程度だろう。

('A`)「オレもそれがいいと思う」

きっとこの先には何かがあるとドクオが言う。
ブーンも兄者も二人の意見に賛成した。

弟者が先頭をきり、階段を下りていく。一番後ろはブーンが歩いた。
薄暗く、どこかかび臭い。

( ^ω^)「さっきの部屋よりも環境が悪いお」

( ´_ゝ`)「まあ、文句言ってもしかたがないだろ」

先頭にいる弟者が炎を出しているおかげで、かろうじて足元が見える。

('A`)「それにしても長いな……」

(´<_` )「地下まで続いてるのかもな」

一階はとうに過ぎてしまっているだろう。
それでもまだ階段が続いている。
ゆっくりと下りていると、薄っすらと明かりが見えてきた。

( ´_ゝ`)「明かり?」

('A`)「誰かいるのか?」


118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:26:27.96 ID:KOuWO1vG0

下りるスピードを早めると、ひらけた場所に出た。

(  ∀ )「誰かいるモナ?」

特徴的な語尾が四人の耳に入る。
驚きと、このままでは不味いという感情が混ざり合う。

( ´∀`)「助けて欲しいモナ……」

弱々しい声と同時に、金属音がする。
鎖が動いた音だ。

よく見てみると、人が壁に繋がれていた。

( ´_ゝ`)「……モナー王がなんでここに」

呟きに答える者は誰もいなかった。
誰も答えを知らなかった。

( ;´∀`)「ど、どうしたモナ?
       いつもの人とは違うみたいだけど、もしかして味方じゃないモナ?」

( ^ω^)「どう思うお?」

(´<_` )「こっちの王が本物で、オレらが見たのは偽者ってことか?」

('A`)「ぽいね」

( ´_ゝ`)「それにしても王、普通のおっさんぽいんだが」
122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:28:15.11 ID:KOuWO1vG0

( ;´∀`)「普通のおっさんで悪かったモナね」

四人の会話を聞いていたモナーが口を挟む。
雑談は置いておいて、とにかくこの鎖を外してくれた頼んだ。

(´<_` )「どうするよ」

( ^ω^)「助けてあげるお」

('A`)「でも罠かもしれないぞ」

( ´_ゝ`)「うーん」

顔を突き合わせて相談をしてみるが、話は一向にまとまらない。

( ´∀`)「慎重なのはいいモナ。でも、急がないとあの子の仲間がきてしまうモナ」

( ´_ゝ`)「あの子?」

( ´∀`)「助けてくれたら話すモナ」

('A`)「交換条件か」

( ^ω^)「もう早く助けてあげるお」

(´<_` )「……しかたないな」

124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:30:41.22 ID:KOuWO1vG0

警戒しながらモナーに近づく。
正面からではなく、横側から近づいて手錠に触れる。
鍵穴があったが、周りの空間を見ても鍵がありそうな場所はない。

(´<_` )「あー。面倒くせぇな」

弟者が鍵穴に手をかざし、呪文を唱える。
細い氷が鍵穴の中に侵入して形を作っていく。
このような精密作業をするためには、術者の集中力と技量が問われる。

( ´_ゝ`)「大丈夫かな」

('A`)「弟者は色々使えるけど、器用貧乏って感じだしな」

(´<_`# )「聞こえてんだよ!」

怒鳴りながらも、視線は鍵穴の方に向けられている。
鍵の形になった氷を弟者が回すと、手錠は心地良い音をてててはずれた。

( ´∀`)「もう片方も頼むモナ!」

(´<_`; )「あー。はい」

疲労の色が見えているが、弟者は再び鍵穴と向き合う。
呪文を唱え、再び細い氷を鍵穴の中へと侵入させる。

しかし、今度は中々上手くいかない。
氷系の魔法は得意な方であるが、先ほどの魔法で集中力をつかいきってしまったかのようだ。

127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:32:26.50 ID:KOuWO1vG0

しばらくしてようやく両手の手錠がはずれた。

( ´∀`)「ありがとうモナ。本当に感謝してるモナ」

自由になった腕を振る。
嬉しそうに笑っているが、感謝されている弟者は疲労のあまりうつぶせになっている。

('A`)「とりあえず移動しましょう。あの子の仲間とやらが来るのでしょう?」

思い出したかのように敬語を使う。

( ´∀`)「お腹の減り具合からいって、まだまだこないから大丈夫モナ」

( ´_ゝ`)「なん……だと……」

( ^ω^)「騙されたお」

もうすぐ敵がくるかもしれないと思い、弟者を急かしていたというのに、モナーはあっさりと嘘を暴露し た。
うつぶせになっている弟者が舌打ちをしたのが聞こえる。

('A`)「ま、まあそれならゆっくり話も聞けるし。
    弟者には休息が必要だしな」

( ^ω^)「そうだおね」
129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:34:59.39 ID:KOuWO1vG0

弟者を除いた四人は輪になって座る。
モナーの言っていた『あの子』とやらについて聞くためだ。

( ´_ゝ`)「で、あの子っていうのは?」

( ´∀`)「その前に、キミ達はどうやってここにきたモナ?」

('A`)「えっと、優秀な魔術師を城が集めていて、それできました」

詳しく説明すると長くなるので、要点だけをまとめて話す。
集められた魔術師達が殺しあいをさせられ、呪術の一つとなっていることを話すと、モナーは少し悲しげな顔をした。

( ´∀`)「外ではそんなことになってるモナね」

( ^ω^)「王様はいつからここにいたんですかお?」

( ´∀`)「うーん。詳しい時間はわからないけど、ボクはそんな政策考えてもなかったモナ」

('A`)「つまり一年近く?」

よく誰も気づかなかったものだと思う。
一年も本物の王が不在の状態で国が回るとは到底思えない。

( ´∀`)「もうほとんど隠居状態だったからだと思うモナ。
       最近は国内も安定してたから、息子にまかせっきりだったモナ。
       その息子もしばらく国中を見て回るって言うから、大臣達に丸投げしてたモナ」

(´<_` )「仕事してくださいよ」
132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:36:38.69 ID:KOuWO1vG0

( ´_ゝ`)「あの……。そろそろあの子とやらについて聞きたいんですけど」

( ´∀`)「モナ……。あの子はキミ達と同じ年くらいの男の子モナ」

まさかと思う。
同じ年くらいの人間がこのようなことをできるとは思えない。

('A`)「オレ、殺しあいをさせたいなんて思ったことないぜ」

(´<_` )「オレもだよ」

誰だって、他人の死ぬ姿を見たいとは思わない。

( ´∀`)「あの子も、そうやって生きていくはずだったモナ」

( ^ω^)「何かあったのかお?」

( ´∀`)「あの子は元々隣国で生まれたモナ」

( ´_ゝ`)「え、じゃあ何でここに」

隣国とは友好関係を結んでいる。
だが、国同士の仲が良いとはいえない。
民間でのやりとりはいくつかあるようだが、大きな輸出や輸入はされていない。

一昔前の大戦がまだ両国にくすぶっているのだ。


133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:38:14.26 ID:KOuWO1vG0

( ´∀`)「向こうの国で両親と兄弟を殺されて、こっちへ逃げてきたモナ」

('A`)「殺された……」

兄者と弟者はどちらかが死ぬかもしれないという状況に陥っていた。
ブーンは姉をこの政策の中で殺された。
身内が殺されるという感覚をドクオは知らない。

( ´∀`)「あの子の魔法は良い目では見られてなかったみたいモナ」

亡命してきたあの子とやらをモナーは受け入れた。
城にかくまい、外の世界で生きていけるだけの知識を与えていった。

( ´∀`)「でも、ある日……」

モナーの息子が城を出た日、あの子は本性を現したかのようにモナーに襲いかかった。
知らぬうちに仲間を集めていたようで、気がつけばここにいたという。

(´<_` )「王は魔法の方は……」

( ´∀`)「使えないモナ」

多数に無勢。さらに魔法使いと使えない者の差は大きい。
このような状態になってしまったモナーを責めることはできない。
135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:40:15.14 ID:KOuWO1vG0

( ^ω^)「その子はどんな魔法を使うんだお?」

( ´∀`)「『氷系』と『変化系』モナ」

( ´_ゝ`)「変化か」

四人が今まで見てきた王の姿はあの子が変化した姿だったのだろう。
遠目からしか見ていないので、精度のほどはわからないが、一年もの間周りを騙し通しているのだからそ

うとうのものなのだろう。

('A`)「目的って、何だろうね」

(1∵)「知ル必要ハナイ」

(2∵)「オ前ラハココデ死ヌ」

感情のこもらない声に振り返れば無表情の男が数人立っていた。

( ;´∀`)「いつもの人達モナ」

(´<_` )「えっ」

( ^ω^)「さっき、まだしばらくこないって……」

( ;´∀`)「テヘ」

( ´_ゝ`)「ダメだこの王」


136 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:42:47.49 ID:KOuWO1vG0

( ´∀`)「左側の壁にスイッチがあるモナ。それを押せば最上階への階段が出てくるモナ」

男達がこちらへ足を進めるのと同時に五人は走りだした。
足の遅い兄者よりもモナーは足が遅い。

(´<_` )「ったく!」

弟者がモナーの手を引く。

( ´∀`)「……お願いがあるモナ」

(´<_` )「それって今じゃないとダメですか!」

( ´∀`)「ダメモナ」

息をきらせながらもモナーは言った。

( ´_ゝ`)「どうぞ」

よほど大切なことなのだろうと、兄者は言葉の先を促す。
先頭を走っていたブーンがスイッチを押した。

( ´∀`)「ボクが足止めするモナ。だから、キミ達はあの子を助けてあげて欲しいモナ」

(´<_` )「助ける?」

壁が鈍い音を立てて横へスライドする。
向こう側には階段が見える。

140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:44:42.06 ID:KOuWO1vG0

( ´∀`)「悪いことをしたら叱らないとダメモナ」

( ´_ゝ`)「あなたが叱ってやったらどうですか?」

( ´∀`)「ボクじゃまた捕まるのがオチモナ」

偽者が同じ姿をとれるのだ。今さら騎士を招集しても遅いだろう。

(´<_` )「オレらにそんなたいそれたことをしろと?」

( ´∀`)「どうせ、ここから出るには最上階にある王室に行ってからしか出る道はないモナ。
       ついでだと思ってくれればいいモナ」

( ´_ゝ`)「でかいついでだこと」

モナーは弟者の手から抜け、男達と向き合う。

( ´∀`)「彼らは魔法が使えないはずモナ」

腰を低くし、拳を男の顔面に叩きつける。

( ´∀`)「護身術ならボクだってできるモナ」

(´<_` )「行くぞ」

('A`)「え、王様は?」

( ´_ゝ`)「いいから!」

143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:46:38.10 ID:KOuWO1vG0
ブーンとドクオに早く上れと声をかける。
狭い階段は人が一人通るのがやっとだ。
先頭をブーンが走り、その後にドクオが続く。少し距離が開いて弟者と兄者が走る。

( ;^ω^)「さ、流石に疲れてきた、お……」

(´<_`; )「止まったら追いつかれるぞ」

息を切らせる。
下りてきた階段よりもずっと長い階段だ。それでも止まることは許されない。

(;'A`)「何か嫌な予感」

( ;´_ゝ`)「やめろよ」

ドクオの予感は当たる。
先頭を走っていたブーンの足元が淡く光った。

( ^ω^)「お?」

('A`)「魔法陣か!」

( ´_ゝ`)「ブーン! ドクオ!」

兄者が叫ぶ。
だが返事は返ってこなかった。二人はなす術もなく光にのまれて消えた。

(´<_` )「罠か」

( ´_ゝ`)「……そんな」
145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 23:48:23.04 ID:KOuWO1vG0

階段にしかけられていた魔法陣は消滅していた。
追うことはできない。

(´<_` )「行くぞ」

( ´_ゝ`)「お前、なんでそんなに冷静なんだよ」

(´<_` )「ぼけーっとしてたってしかたないだろ」

弟者は階段をのぼっていく。

( ´_ゝ`)「……」

消えた二人の姿が脳裏に焼きついて離れない。

(´<_` )「王の言ってたあの子とやらに会えばどうにかできるかもしれんぞ」

( ´_ゝ`)「……そう、だよな」

兄者は名残惜しげにその場を離れる。
一歩ずつ上がっていく足音が狭い階段の中でただ一つの音となった。

二人はただ黙々と足を進めていく。


第八話 完

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