- 3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 21:25:39.53 ID:75ow04D+0
( ´_ゝ`)「よーし。歩くか」
( ;^ω^)「弟者、大丈夫かお? ボクばっかり眠ってしまって……」
( ´_ゝ`)「いいって」
眠るブーンに代わり兄者は見張りをしていた。
自分の眠気が頂点に達したとき、申し訳ないと思いながらもブーンを起こそうとはした。
( ´_ゝ`)「ちゃんと仮眠もとったし」
しかし、ブーンは目を覚まさなかった。
彼が起きたのは兄者の頭が眠気で朦朧とし始めたときだった。
結局、兄者は一時間程度の仮眠を取っただけだ。
申し訳なさそうにしているブーンの肩を叩く。
( ´_ゝ`)「本当に大丈夫だぞ」
- 4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 21:28:09.63 ID:75ow04D+0
弟者と比べると兄者は体が弱い。
見た目からも貧弱さが伝わってくるのか、ブーンは相変わらず心配そうな目を向けている。
( ´_ゝ`)「そんなに心配される方が傷つくんだが……」
兄者も男だ。
この程度でこうも心配そうな目をされては、あまりいい気がしない。
( ^ω^)「おっ……。ますますごめんだお」
( ´_ゝ`)「ま、いいけどさ」
自分が弱いことは自覚している。
せめて足手まといにならぬよう、余計な心配をさせぬようと思う。
( ^ω^)「そうだお!」
ブーンが目を輝かせた。
- 5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 21:31:32.72 ID:75ow04D+0
( ^ω^)「弟者はここで待ってるお! ボク、木の実を探してくるお!」
兄者の返事も聞かず、ブーンは走って行く。その手には兄者のローブが握られている。
あの体形であれほどの早さを出す秘訣を今度教えてもらおうと思った。
( ´_ゝ`)「うーん。どうも役に立ってない気がするな」
精神を安定させるという意味では、自分の存在は必要かもしれない。
だが、使える魔法は一つしかない。体力もあるとはいえない。サバイバルの知識もない。
手ごろな岩に腰を降ろし、ため息をついた。
見上げた風景は、やはり変わらない電気と鉄がある。
どこかに監視カメラがあるのだろうが、それを見つけることはできなかった。
自分の体に生死を判別するような器具がつけられていないところをみると、
どこにいても監視できるような配置でカメラがしかけられているのは間違いない。
( ´_ゝ`)「オレとブーンが手を組んでるのはばれてるだろうな。
スパイとやらがきそうだし、ブーンが帰ってきたら移動するか」
一人で考えごとをしていると、眠気が襲ってくる。
欠伸を噛み殺しながら、じっとブーンを待つ。
- 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 21:34:29.36 ID:75ow04D+0
一方、ブーンは少し離れたところまで木の実を探しにきていた。
ここにある木の実は一部地域のものではなく、様々な場所から集められていた。
( ^ω^)「おっ。これとこれが一緒のところにあるなんて、すごいお」
嬉々とするあまり、時間を忘れて木の実を集める。
袋を持ってくるのを忘れたので、持ってきてしまった兄者のローブにそれらを溜めていく。
これ以上溜めると、木の実達はローブから転がり落ちてしまうだろうほど集めた。
( ^ω^)「お?」
草木で向こう側は見えないが、言い争うような声が聞こえてきた。
ここにいる人間だ。敵である可能性は高い。
本来ならば、すぐにでも逃げ出すべき状況だが、どのような人物が言葉を交わしているのかが気になった
。
戦いの音ではなく、言い争う声なのだから二人はある程度親しい仲なのだろう。
( ^ω^)「もしかしたら、王様が言ってたスパイかもしれないお」
スパイの顔を知っていれば、今後の役に立つかもしえない。
気配を消し、足音をたてないように静かに近づいた。
- 11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 21:37:49.69 ID:75ow04D+0
「ここどこだよ」
「オレが知ってるわけないだろ」
「もっと焦るなり、考えるなりしろよ!」
「焦ったところでどうこうなるもんでもないだろ」
言い争うというよりは、片方が一方的に怒っているように感じた。
落ち着いた声には何故か引っかかりを覚えた。
顔を見ようと、草木をかきわける。
('A`)「ここにはどんな奴がいるかわからないんだぞ?」
(´<_` )「それがどうした。自分の身は自分で守ればいいだけだろ」
( ^ω^)「……弟者?」
- 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 21:40:23.66 ID:75ow04D+0
そこにあったのは先ほどまで一緒にいた顔だった。
小さい方の顔は見覚えがないが、今のブーンには弟者しか見えていない。
声に引っかかりを覚えたのは、聞いたことがあったからだ。
すぐに気づくことができなかったのは、口調のためだった。
ブーンの知る弟者は穏やかで柔らかい口調だが、今見ている男の口調は棘がある。
( ^ω^)「…………」
ブーンは思わず後ずさりをする。
向こう側に見える彼は、ブーンの知っている弟者ではない。
得体の知れないものから逃げるように足を動かそうとした。
(´<_` )「……誰だ」
足元にあった小枝が派手な音を立てた。
向こうにいた二人が近づいてくる。
( ^ω^)「逃げるが勝ちだお!」
- 14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 21:43:40.55 ID:75ow04D+0
自慢の足を使えば二人くらい簡単に引き離せると自信があった。
木の実をばら撒きながら走って行く。
('A`)「はあ……はあ。弟者、たの、む……」
ドクオはすぐに体力がつき、その場に膝をついた。
返事もせず、振り向くこともなかった弟者は着実にブーンとの距離を縮めていく。
純粋な速さならばブーンの方が弟者を上回る。
だが、弟者は風を使い自分のスピードをかさ上げしていた。
( ;^ω^)「うおおおおお」
(´<_` )「よっと」
トドメと言わんばかりにブーン側の風を向かい風にしてやれば、弟者の手がブーンの方をあっさりと掴む。
そのまま首に腕を回し、締め上げる。
( ;^ω^)「し、死ぬ! 死んじゃうお!」
解放を求めて手を叩くが、弟者は無反応で返す。
- 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 21:46:13.61 ID:75ow04D+0
(;'A`)「ストーップ! ストップ!」
歩いてきていたドクオが再び走り出す。
(´<_` )「死なないって」
そのくらいの手加減はしていると返されたが、ブーンの必死な表情を見ていると、とてもそうは思えないところだ。
('A`)「とりあえず、解放してやれよ」
(´<_` )「また逃げるだろ」
('A`)「じゃあ、とりあえず緩めてやれよ」
そのままではろくに話を聞くこともできないと言えば、盛大な舌打ちと共に力が緩められる。
- 17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 21:49:12.40 ID:75ow04D+0
( ;^ω^)「助かりましたお」
('A`)「いや、ツレが悪い」
(´<_` )「誰が誰のツレだ」
再び腕に力が込められ、ドクオが慌てて謝罪をする。
二人の上下関係が垣間見えた。
('A`)「あんたって、王に騙された人だよな?」
( ^ω^)「そうだお。キミ達もそうじゃないのかお?」
ドクオは違うと首を振る。
ここへきたのは自分達の意思であり、とある人物を探しているのだと告げた。
( ^ω^)「友達をさがして、こんなところまで……。ドクオは優しいおね」
('A`)「…………いや、そうでもないよ」
- 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 21:52:26.85 ID:75ow04D+0
こんなところにきたくなどなかった。
どう頑張っても、弟者を止められなかったため、ここまできたにすぎない。
優しい人間などではない。
(´<_` )「んで、オレと同じ顔したクズ知らね?」
( ;^ω^)「見えませんお」
背後で己の首を絞めている人間の顔が見えるわけがない。
捕まる前に見た弟者の顔をブーンは知っていたが、何かの間違いだろうと思うことにしていた。
第一、こんな怪しさの塊を仲間のもとへ連れて行くなどできるはずがない。
('A`)「離してやれよ弟者」
代わりに俺が掴むからと、ドクオはブーンの手を掴む。
ドクオに腕力を期待することはできないが、このまま首を絞めていてもしかたないと判断し、弟者はブーンを解放した。
( ^ω^)「……弟者って言うのかお」
- 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 21:55:15.63 ID:75ow04D+0
ドクオの言葉にブーンが疑問を口にする。
(´<_` )「ああ、そうだ。で、オレの顔知ってるか」
( ^ω^)
再び弟者の顔を見る。
見れば見るほど兄者と瓜二つだ。
('A`)「オレ達、弟者の双子の兄を探してるんだ」
双子という言葉に、ブーンは少し納得する。
それならば顔が似ているのも当然だろう。だが、やはり信用できないのも事実だ。
これが自分だけのことならば、ブーンはすぐにでも信用しただろう。
けれど、目の前にいる二人が敵だったとすれば、自分だけの問題ではすまない。
頑なに口を閉ざすブーンに、ドクオは困ったような顔をする。
ちらりと見た弟者の顔には苛立ちが浮かんでいる。
- 22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 21:58:22.03 ID:75ow04D+0
('A`)「こいつは兄者のこと知らないんじゃないか?」
(´<_` )「お前の目は節穴か」
ブーンを指差す。
いや、正確にはブーンが持っていたローブを指差した。
(´<_` )「アレは兄者のものだろう」
('A`)「あ、本当だ」
特別製というわけではないが、兄者のローブは少々変わっている。
具体的に言うならば、その色だ。
魔術師の殆どが黒を好むのに対して、兄者は濃紺を好んだ。
昔、青色が好きだと言っていたことをドクオは思い出す。
(´<_` )「で、何で隠す」
直接口にはしなかったが、その言葉の裏には殺したのかという疑問が隠れていた。
- 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 22:01:28.26 ID:75ow04D+0
( ^ω^)「ボクも濃紺が好きだってだけの話だお」
あくまでもしらをきる。
本当のことを吐こうとしないことに腹を立てたのか、弟者は右の拳で彼の腹を殴った。
母者の息子だ。弟者の拳は魔術師にしては強い。
膝をつき、苦しそうに咳き込む。
(´<_` )「手加減はしたぞ」
何をするんだと睨みつけたドクオへ返す。
手加減をすれば許されるというものでもない。
今までは周りが弟者に逆らうことがなかったためにわからなかったが、こうしてみると弟者の危険さがよくわかる。
('A`)「暴君……」
小さく呟いた言葉を聞き取ったのか、軽く小突かれる。
力いっぱい殴られなかったのは、ブーンを掴んでいる手があるからだろう。
- 25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 22:04:13.37 ID:75ow04D+0
(´<_` )「早く言え。兄者はどこだ。殺したのか?」
細い目から見える鋭い眼光は、返答によってはお前を殺すと告げていた。
目に涙をためながら弟者を見上げる。
やはり、彼らが兄弟だとは思えない。
ブーンは弟者を危険な人物と判断した。連れて行くことはできない。
ここで殺されるのは嫌だと、心の中で思う。
愛しい彼女に会いたい。姉と、その婚約者のことを両親に伝えたい。
したいことばかりが頭の中を駆け巡る。
('A`)「その辺でやめとけよ」
止めに入ったのはドクオだった。
(´<_` )「あ?」
('A`)「そのローブだって、もしかしたらそいつのものかもしれない」
- 27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 22:07:23.58 ID:75ow04D+0
(´<_` )「今さら何言ってんだ」
('A`)「だって、放っておいたらお前本当に殺しそうだし」
頭に血が上りすぎだと諭す。
兄者の身を案じているのではなく、自分の代わりに兄者がなっていると事実が気に入らないのはわかっている。
('A`)「誰かを殺すほどではないだろ」
ドクオはブーンを掴んでいた手を離した。
すかさず、ブーンは走りだす。
(´<_` )「あっ!」
('A`)「弟者」
追いかけようとした弟者を引き止める。
- 29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 22:11:07.47 ID:75ow04D+0
( ;^ω^)「もう追いかけてきてないおね?」
少し遠回りをしながら、兄者の待つ場所まで走る。
( ´_ゝ`)「おかえり。お前さ、木の実とりに行くなら袋くらい持っていけよ」
( ^ω^)「それどころじゃないんだお!」
木の実らしきものを一つも持たず、ただただ焦るブーンを兄者は怪訝そうに見る。
何があったのかを尋ねる前に、腕を掴まれた。
( ^ω^)「弟者にも聞きたいことはたくさんあるお。
でも、今はここから逃げることが先決だお!」
( ´_ゝ`)「お、おい……」
腰を上げ、引かれるままに足を進める。
('A`)「やっぱり、兄者のローブだったのか」
- 31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 22:14:23.34 ID:75ow04D+0
二人の前に立ちふさがったのは、ドクオと弟者だった。
(´<_` )「デブの服に氷をつけといて正解だったな」
弟者の言葉に、ブーンは自分の服を見る。
裾に薄緑の氷が付いていた。小さな氷はキラキラと光の筋を作っている。
これのおかげで、二人はブーンを追うことができたのだろう。
青ざめているブーンを視界の端に捕らえながら、弟者は真っ直ぐに歩いていく。
握られた拳はそのまま兄者の顔面にぶつけられた。
( ´_ゝ`)「――――っ」
地面に倒れ、立っている弟者を見る。
見えるのは怒りだった。
(´<_` )「オレの身代わりとか、ふざけてんの?」
兄者は無言で立ち上がる。
口の端からは血が流れていた。
- 33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 22:17:11.58 ID:75ow04D+0
('A`)「あ、兄者。弟者はこれでもお前のことを心配してだな」
嘘だ。
ここまでの道中で、弟者は兄者の身を案じたことはない。
案じていたのは自分自信がつちかってきたプライドが傷つくことばかりだ。
( ´_ゝ`)「弟者」
血を拭い、自分がされたように弟者の顔面を殴る。
ひ弱な兄者の拳ではあったが、殴られたという事実に弟者は驚きを隠すことができない。
(´<_` )「あ、に……」
( ´_ゝ`)「馬鹿か! お前は!」
殴られた頬を抑えている弟者へ怒声を浴びせる。
ドクオも驚いた。この兄弟を知ってから七年間の月日があったがその時間の中で、兄者が怒鳴ったことなどなかった。
それも弟者に対して。
- 36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 22:20:22.05 ID:75ow04D+0
( ´_ゝ`)「お前もオレも死んだら、母者に何て言うんだ」
(´<_` )「あんたが死んだなんて言ったら、オレが殺されるわけだが」
( ´_ゝ`)「本気では殺されないさ」
鏡あわせのような顔が向かい合う。
どちらも怒りを持ち、相手を睨みつけている。
( ´_ゝ`)「お前が生きていた方がいい。
そんなことは考える間でもないだろ」
薄い笑みを浮かべた。
( ´_ゝ`)「それとも、命の大切さでも説くのか?
似合わないことはやめておけよ」
(´<_` )「言わせておけば!」
呪文を唱え、炎を呼ぶ。
- 38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 22:23:15.20 ID:75ow04D+0
(;'A`)「もうやめろよ!」
二人の間に立つ。
ここまできてしまったのだ。もう、戻ることはできない。
争うことは無意味だ。
('A`)「兄者、すまん。
お前に弟者のことを任されたのに、ここまで連れてきちまった」
( #´_ゝ`)
口が開かれる。
どのような罵声も受け取る覚悟はできていた。
( ´_ゝ`)「……いや。すまんな」
不安そうなドクオの顔を見て、冷静さを取り戻したのか謝罪の言葉が出た。
(´<_` )「おい。オレが連れてきてもらったんじゃなくて、お前がついてきたんだろ」
('A`)「歩いて行くとか正気の沙汰じゃないだろ」
- 41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 22:26:20.20 ID:75ow04D+0
( ^ω^)「……そろそろいいかお?」
( ´_ゝ`)「あ、すまん」
すっかり蚊帳の外となっていたブーンが話に入ってくる。
兄者にローブを返しながら現状について尋ねる。
( ^ω^)「弟者は、弟者じゃないのかお?」
(´<_` )「何言ってんだこのデブ」
再度拳を握った弟者をドクオと兄者が止める。
( ´_ゝ`)「オレの本当の名前は兄者だ。そこにいるのが本当の弟者」
同じ顔を指差す。
不快そうに眉間にしわがよるが、殴りかかろうとはしていない。
冗談ではないようだ。
- 42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 22:29:24.82 ID:75ow04D+0
兄者は自分がここに来ることになった経緯を話した。
( ^ω^)「それじゃあ、おと……兄者は本当に死ぬ気でここにきたのかお」
( ´_ゝ`)「そうなるな」
ここへ連れてこられるまでは、心のどこかでドクオの勘違いなのではないかと思っていた。そうあればいいと願っていた。
しかし現実はこの通りだ。
( ´_ゝ`)「ブーンに会えてよかった」
( ^ω^)「お?」
( ´_ゝ`)「お前に会ってなかったら、死んでただろうし」
死んでいたら、二人に会えなかった。
とんだ無駄足を踏ませるところだった。
- 46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 22:32:27.92 ID:75ow04D+0
(´<_` )「んで、これからどうするんだよ」
弟者も単独行動を取るつもりはないらしい。
元々、兄者が己の代わりになるのが嫌だっただけで、死にたくてきたわけではない。
王側の人間がいるということも聞かされ、生きて戻るためには今そろっている面子で行動したほうが得策なのは日を見るよりも明らかだ。
( ´_ゝ`)「とりあえず、壁まで行ってみよう」
('A`)「そうだな」
( ´_ゝ`)「あ、そうだ」
兄者はドクオにいつごろこちらにきたのかを尋ねる。
質問の意図がわからず、首を傾げたが、つい先ほどだと応えた。
( ´_ゝ`)「何時ごろだった?」
('A`)「えっと……昼過ぎ。二時か三時くらいだったと思う」
( ´_ゝ`)「ありがとう」
- 47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 22:35:15.64 ID:75ow04D+0
兄者の体内時計はすでに狂いつつあった。
寝起きの体は今を朝だと認識している。
( ^ω^)「そうだ。兄者、何も食べてないけど大丈夫かお?」
(´<_` )「お前が食べたいだけじゃねーの」
( #^ω^)「そういうところはそっくりだお」
木の実には詳しいと言ったときの兄者の反応を思い出す。
似ているのは顔だけかと思っていたが、案外考え方も似ているらしい。
(´<_`# )「ふざけるな」
弟者の方は考え方が似ていると思われたことは不快でしかたがないようだ。
本日、何度目かの拳をドクオが止め、四人は歩き出した。
道中、適当な木の実をブーンが取り、三人に渡していく。
- 49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 22:38:17.77 ID:75ow04D+0
('A`)「口大丈夫か?」
( ´_ゝ`)「ちょっと切れただけだ」
前を歩くのは兄者とドクオだ。
ここまでどうやってきたのかなどを話ながら、ひたすら前へ進んでいく。
すっかりいつも通りの雰囲気で、今の現状を忘れているようにも見える。
( ^ω^)「これも食べれるお」
(´<_` )「ふーん」
一方、少し後ろの方を歩いている弟者とブーンの雰囲気は悪い。
ブーンは木の実を取っているため、弟者は兄者と並びたくないがためにこの配置となっているが、会話もなりたたない。
( ^ω^)「…………」
(´<_` )「…………」
すぐにでも前の二人に合流したいとブーンは思う。
けれど、一人だけが取り残されてしまうような状況を作りたくない。
- 52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 22:41:34.07 ID:75ow04D+0
( ^ω^)「弟者は死んでも良かったのかお?」
(´<_` )「んなわけねーだろ」
劣等性が優秀な自分の代わりになるのが嫌だっただけだ。
死にたくない。だが、プライドのもっとも大きな部分を傷つけられるのだけは我慢できなかった。
(´<_` )「あいつにだけは借りを作りたくねぇ」
( ^ω^)「兄弟だお?」
(´<_` )「虫唾が走る」
再び無言の時間が始まる。
土を踏みしめる音と、前方での会話の端々だけが聞こえる。
- 53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 22:44:15.98 ID:75ow04D+0
( ^ω^)「ボクには姉さんがいたお」
(´<_` )「いた?」
過去形で言葉を紡いだことに違和感を感じる。
( ^ω^)「以前、ここに集められたんだお」
(´<_` )「……それは、すまない」
彼が謝罪の言葉を口にするとは思っていなかった。
出会ってまだ一時間も経っていないが、かなり横暴な人間であるということしか知らない。
弟者は兄者を思い出させる劣等性が嫌いなだけだ。
ごく普通の魔術師には、ごく普通の対応ができる。
( ^ω^)「ボクは言えなかった言葉があるお。
だから、弟者にはそんな思いして欲しくないお」
(´<_` )「オレにはそんなものない」
罵倒の言葉なら限りなくあると笑う。
- 56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 22:47:13.27 ID:75ow04D+0
壁際には思っていたよりも時間がかかったものの、なんとかたどりつくことができた。
鈍い光沢を持ったそれは、一見すると極一般的な金属に見える。
試しに触れて見るが、冷たさを感じることができるだけで、特別な風には感じられなかった。
(´<_` )「邪魔だ」
弟者が炎を壁にぶつける。
近くにいるだけで熱さを感じることができるほどの温度が出ていた。
('A`)「変わらないな」
炎が消えた後も、壁は変わらずそこにあった。
色も変わらず、熱も変わらない。ブーンが触れてみても、先ほどと同じ冷たさがあるだけだ。
特殊だと言われるだけあって、並大抵のものではないようだ。
壁を壊すことはまず無理だろう。
それがわかっただけでも、一つ収穫があった。
( ´_ゝ`)「壁に沿って歩いてみるか?」
- 58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 22:50:18.79 ID:75ow04D+0
この空間は広いが、一周できないほどの広さではない。
一周してみれば出入り口のようなものが見つかるかもしれない。
たとえ、そのようなものが見つからなくとも、ほころびの一つでも見つけられればいい。
( ^ω^)「賛成だお」
('A`)「オレも」
(´<_` )「……それしかないか」
兄者の案に反対する者はいなかった。
「無理無理。諦めた方がいいよ」
聞こえてきた声に、四人は同じ方向へ視線を向けた。
意識をそちらへ向けた瞬間、鉄の匂いを感じる。
( ´_ゝ`)「誰だ」
第五話 完
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