- 2
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 13:51:17.11 ID:G506Z6sj0
(´<_` )「扉だ」
( ;´_ゝ`)「ようやくか……」
平然としている弟者に対して、兄者は息を切らしている。
階段は思っていた以上に長く、体力のない兄者の膝は笑っていた。
( ;´_ゝ`)「何で金を持ってる奴は無駄にでかい家を建てるんだ!」
(´<_` )「知るか」
扉の前に立ち、兄者は息を整える。
(´<_` )「開けるぞ」
( ;´_ゝ`)「え、待って。心の準備が……」
制止の声など聞こえていなかったのか、弟者は扉を開ける。
暗い道に痛みを伴うような光が二人をさした。
ここが城の最上階とするならば、王の言っていた人物に会えるのだろう。
けれど、会う前に殺されてしまっては元も子もない。二人は魔法の気配を探す。
ようやく目が慣れてきたころ、辺りの光景を二人は目に映した。
王の部屋ということだけあって、高そうな物が多く、無駄に広い。
謁見用の場所ではないので、ベットや剣などの私物が見える。
- 3
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 13:54:18.17 ID:G506Z6sj0
( ´_ゝ`)「誰もいないな」
(´<_` )「会議でもしてるのかもな」
それならばそれでいいと口にする。
会わないのであれば、安全に逃げ出すことができるだけだ。
( ´_ゝ`)「おい」
(´<_` )「何だよ」
( ´_ゝ`)「王の頼みはどうするんだよ。ドクオとブーンも」
(´<_` )「そんなもんは後でも大丈夫だろ」
( ;´_ゝ`)「後でって……そんな悠長な」
今、こうしている間にドクオとブーンが死んでいるかもしれない。
モナーも閉じ込められたままだ。
( ´_ゝ`)「第一、このことを国中に伝えたって信じてくれる人間なんていない。
オレ達には今しかチャンスがないんだ」
(´<_` )「なら王の言っていた奴が帰ってくるまで待つのか?」
- 5
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 13:57:40.20 ID:G506Z6sj0
死ぬ可能性は上がる。
母者達が帰ってくるであろう家には誰もいないのだ。
( ´_ゝ`)「……」
考えるだけでも寒気がした。
誰にも知られることなく消えていくのは恐ろしい。
(´<_` )「どうした」
(´・ω・`)「そうそう。迷う必要なんてないよ」
唐突に響いた声は、二人の意識を同じ場所に集めた。
( ;´_ゝ`)「ま、まさか……」
(´・ω・`)「こんにちは。脱走者さん達」
にこりと笑うその顔は無邪気に見えた。
見る限り、たしかに歳は近そうだ。だが、まとう雰囲気はあきらかに違う。
(´<_` )「お前が今の王ってわけか」
(´・ω・`)「そういうことになるね」
- 8
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 14:00:25.12 ID:G506Z6sj0
彼が自らの手で顔を覆い、再び二人の前に顔を出す。
先ほどまでのしょぼくれ顔はどこかに消えていた。
( ´∀`)
そこにあるのは温和で人の良さそうな顔だ。
( ´_ゝ`)「精巧だな」
(´<_` )「誰も気づかなくても不思議じゃないな」
( ´∀・`)「でしょ?」
顔の形が崩れ、再び彼自身の顔へと戻る。
(´・ω・`)「ボクは頑張ってここまできたんだ」
広い部屋の中で偉そうにしているのも疲れると続けた。
王の仕事がどのようなものなのか、兄者達ははっきりとしたイメージを浮かべることはできなかった。
けれど、一国を治めるということがそれほど簡単なはずがないだろう。
( ´_ゝ`)「じゃあ、早くその席を返したらどうだ」
(´・ω・`)「やだよ」
- 9
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 14:03:25.62 ID:G506Z6sj0
彼は二人の顔を交互に見る。
(´・ω・`)「よく似てるね。双子の兄弟だから?」
( ´_ゝ`)「ああ」
(´<_` )「胸糞の悪いことにな」
(´・ω・`)「キミ達は兄弟なのに仲が悪いね」
そんな人達にボクの気持ちはわからないよと言う。
暗い瞳は目の前にいる二人ではなく、遠い過去の記憶を探っているようだ。
(´・ω・`)「ボクはただ復讐したいだけなんだ」
(´<_` )「邪魔はしない。だが、オレ達、いや……オレは見逃して欲しいな」
( ´_ゝ`)「弟者!」
(´・ω・`)「ダメ」
耳に届いたのは否定の声と、水分が凝固していく音だった。
ピキピキと高い音をたてて冷たい刃が作られていく。
(´・ω・`)「キミは嘘つきだもん」
(´<_` )「オレが? オレは正直者だぞ」
- 10
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 14:06:27.86 ID:G506Z6sj0
静かにふられる首。
向けられたのは冷たい刃。
(´・ω・`)「嘘つき」
彼が床を蹴る。
弟者は向かえうつように手の中に炎を宿す。
基本的には攻撃する術を持たぬ兄者は空中へと逃げた。
(´<_` )「中々の魔力だな」
(´・ω・`)「どうも」
弟者の炎が氷の刃を徐々に溶かす。
(´・ω・`)「キミは弟者君の方かな?」
(´<_` )「そうだ。あの馬鹿とは間違えてくれるなよ」
(´・ω・`)「わかった。あ、ボクはショボンっていうんだ」
よろしく。と言い終えたとたん、ショボンの手の中にあった氷が急激に溶けた。
煤i´<_` )
弟者の炎が競り勝ったわけではない。
氷を作り出していた魔力が消えたのだ。
- 11
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 14:09:19.83 ID:G506Z6sj0
氷は溶けて水となり、弟者の炎を消し去った。
(´<_` )「頭も回るようだな」
(´・ω・`)「褒めてくれてありがとう」
二人が鋭い視線を相手に向けあう。
兄者はその様子を傍観することしかできない。
浮遊系しか使えない劣等性がこの状況でなにができるというのだろうか。
( ;´_ゝ`)
だが、このままでいいのだろうか。
弟者ならばショボンに勝つこともできるだろう。
何をいっても天才だ。他人の姿をコピーし、多少の氷を操る程度の者に負けるはずがない。
( ´∀`)「悪いことをしたら叱らないとダメモナ」
モナーはそう言っていた。
力で叩きのめすことは、叱ることではないだろう。
( ;´_ゝ`)「いや、でも……うーん」
- 12
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 14:12:32.35 ID:G506Z6sj0
(´<_` )「ならば風で勝負だ」
弟者が風をまとい、ショボンは再び氷を生む。
肌を切り裂く風を氷が阻む。
相手へと向けられた氷のつぶては風により押し返される。
風と氷が舞うこの空間は、いつの間にかとても冷たくなっていた。
目の前にいる敵を倒すために頭を働かし、体を動いている二人とは違い、
ただ傍観しているだけの兄者にはその冷たさが身に刺さる。
今一度炎を使ってはくれないかと思うが、そんなことを口にすれば自分の身が危ない。
(´・ω・`)「キミ強いね」
(´<_` )「なら見逃してくれよ」
(´・ω・`)「それはダメ。ボクのしたいことに支障がでる」
(´<_` )「復讐か?」
(´・ω・`)「そうだよ」
ショボンは眉間にわずかなしわを寄せる。
復讐をする。その言葉は彼の心に深く根付いているのだろう。
- 13
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 14:15:37.50 ID:G506Z6sj0
(´・ω・`)「聞いたんでしょ? ボクのこと」
(´<_` )「あの馬鹿のほうが主にな」
(´・ω・`)「そうなんだ。まあ、大好きな家族のための復讐だよ」
(´<_` )「ありきたりだな」
(´・ω・`)「そうだね」
他愛もない会話をしているようで、彼らの手からは未だに魔力が放出されている。
ショボンの方にはまだ余裕がありそうだが、モナーの手錠を外したり、階段を登ったりと、
ここ最近魔力、体力ともに消費するばかりだった弟者には早くも疲れが見えてきた。
( ;´_ゝ`)
これは不味いと兄者は感じた。
いくら弟者が強くとも疲労には勝てない。
止めるべきか、と自らに問いかけ、それはできないと結論を出す。
あの弟者が自分の言葉に耳をかすはずがない。
ならば放っておくのか。
弟者が負けるかもしれない。勝ったとして、それは本当に理想に叶っているのだろうか。
王の言葉を尊重しているのだろうか。
- 14
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 14:18:30.42 ID:G506Z6sj0
( ;´_ゝ`)「お、おい!」
(´<_` )「あ?」
苛立ったような声と、冷たい視線が返ってくる。
( ;´_ゝ`)「復讐なんてよくないぞ」
(´・ω・`)「ボクに言ってるの?」
( ;´_ゝ`)「ああそうだ」
彼さえ止まればすべて解決するのだ。
弟者も戦わずにすむ。王の言葉だって尊重できる。
( ;´_ゝ`)「お前の家族が復讐を望むとでもいうのかよ!」
本の中でしか見たことがないような台詞だ。
こんなものを自分が口にするとは、今の今まで思ってもみなかった。
自分で言っておいて、と思ったが兄者はこの台詞はあまりにも陳腐だと思った。
(´・ω・`)「……当然じゃないか」
彼の言葉がそれを裏付ける。
- 15
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 14:21:30.89 ID:G506Z6sj0
(´・ω・`)「ボクの大切な家族を馬鹿にしないでよ」
寒気が増した。
ショボンの魔力がわずかに強くなった。
(´<_`; )「っく……」
奥歯を噛み締め、弟者も魔力をさらに放つ。
(´・ω・`)「とっても優しい人なんだ。
お兄ちゃんはいつだってボクのことを心配してくれてた」
ショボンが兄者を見る。
氷を操るために使っていた両手のうち、片方の手を兄者へと向けた。
その一瞬、ショボンの力は弱まり、弟者の風が圧倒する。
( ;´_ゝ`)「うおっ」
だが、それは一瞬のできごとだった。
わずかな時間で、ショボンは兄者へと氷のつぶてを放ち、再び弟者に向けて両手を使った。
(´・ω・`)「だから復讐なんて、そんなこと絶対に望まない。
キミ達と違って、お互いのこともよくわかってるんだ」
口を挟むなとでも言いたいのか。
弟者の瞳よりも、ショボンのそれは冷たい。
- 16
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 14:24:33.04 ID:G506Z6sj0
(´・ω・`)「復讐はボクがしたいの。ボクが家族を忘れないように」
( ´_ゝ`)「でも……」
(´・ω・`)「復讐は復讐を生む?」
( ´_ゝ`)「そうだ」
(´・ω・`)「全部なくなるから、心配しなくていいよ」
(´<_` )「お前は世界を破滅させるつもりか」
(´・ω・`)「まさか。さすがにそこまではしないよ」
笑みが浮かぶ。
(´・ω・`)「いずれボクが復讐のために死んだら、あとは誰もいない。
だからどうなったとしても、復讐はボクで終わるんだ」
( ;´_ゝ`)
嫌な汗が出た。
気味が悪い。
(´・ω・`)「……そんなに引かなくてもいいじゃないか」
- 17
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 14:27:18.61 ID:G506Z6sj0
(´・ω・`)「キミはどう思う?」
(´<_`; )「オレか?」
寒い部屋の中だというのに、弟者の頬には汗が流れていた。
疲れのあまり、手も震えてきている。
(´<_`; )「そうだなあ、よっぽどいい兄貴だったんだろうな」
(´・ω・`)「うん。とってもいいお兄ちゃんだったよ」
弟者の腕がだんだんと下がっていく。
( ´_ゝ`)「弟者!」
(´<_` )「……うるせ」
(´・ω・`)「無理はしないほうがいいよ」
(´<_` )「無理しなきゃ殺されるじゃねーか」
(´・ω・`)「怖いの?」
(´<_` )「怖いっていうか嫌だろ。常識的に」
歯を食いしばり、腕と魔法を維持する。
兄者は自分が劣等性なんだと思い知らされるばかりだった。
- 19
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 14:30:29.48 ID:G506Z6sj0
( ´_ゝ`)「……違うだろ」
呟く。
( ´_ゝ`)「劣等性だけど、だからって……」
足に力を入れる。
( ´_ゝ`)「このままでいいわけないよな!」
飛びこむようにして、ショボンの態勢を崩す。
(´<_`; )ハアハア
体勢を崩し、ショボンの魔法を止めたのはいい。
だが、追撃するだけの体力が弟者にはなかった。
兄者には今以上の攻撃の術などなかった。
(´・ω・`)「ねえ、どいてよ」
魔法が使えないような状態でもないはずなのに、ショボンはただじっと兄者を見ている。
不安になる瞳だった。
まるで、ドクオの目を直視しているときのような気分になる。
- 20
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 14:33:28.53 ID:G506Z6sj0
(´・ω・`)「ドクオ君って、キミの友達でしょ?」
( ´_ゝ`)「それがどうかしたか」
(´・ω・`)「ふーん、変な能力を持ってるんだね。ボクなら欲しくないかな」
( ´_ゝ`)「何を突然」
(´・ω・`)「キミが思ったんでしょ? ドクオ君とボクの瞳が似てるって」
( ´_ゝ`)「……え」
(´・ω・`)「どうしてわかった? そうだね。ボクもドクオ君とちょっと似てるからかな」
( ´_ゝ`)「どういうことだ」
ショボンを抑える手が震えた。
彼と同じ。それはやはり恐ろしいことだ。
(´・ω・`)「ボクは感情とかはあまりわからないけどさ」
ちらりと弟者を見る。
(´・ω・`)「今考えてることの一部とかがわかるんだ」
- 22
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 14:36:20.18 ID:G506Z6sj0
戦いにおいて、それほど強力な武器はないのではないか。
( ´_ゝ`)「嘘だろ?」
(´・ω・`)「残念だけど、嘘じゃないんだ」
だから、弟者は逃がさないのだという。
彼を放っておけば、後で計画に支障がでると判断したのだ。
(´・ω・`)「ね、キミはこれからどうする?」
トドメを刺すのか?
ショボンを諭してみるのか。
( ´_ゝ`)「それは……」
(´・ω・`)「何を言って説得する?」
復讐するなという言葉は届かない。
彼は誰かのための復讐ではなく、自分自身の考えで行動に移している。
(´<_`; )「どけ……オレがやってやる」
( ´_ゝ`)「弟者」
(´・ω・`)「ダメだよ。兄者君はそれを望んでない」
- 23
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 14:39:31.95 ID:G506Z6sj0
兄者はモナーの言葉が忘れられない。
( ´_ゝ`)「……殺したらダメだ」
(´<_` )「まだそんなことをっ!」
(´・ω・`)「兄者君は優しいもんね」
( ´_ゝ`)「うるさい」
わかっている。
自分がどれほど愚かなことをしているのか。
(´<_` )「どけ!」
(´・ω・`)「じゃあ手伝うよ」
( ´_ゝ`)「ぐっ……」
ショボンの足が兄者の鳩尾を蹴った。
思わず手を離し、床へ尻もちをつく。
(´・ω・`)「ほら、兄者君はいなくなったよ」
(´<_` )「ああ、そうだな。おかげでやりやすくなった」
- 24
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 14:42:22.47 ID:G506Z6sj0
( ´_ゝ`)「おい、無理するな」
(´<_` )「腹抑えながら、何言ってんだよ」
(´・ω・`)「そうそう。劣等性はそこで大人しく見てなよ」
天才同士の戦いだとでも言うのだろうか。
兄者は知らずに拳を握る。
魔法が使えないことや、体力がないことをここまで悔やんだことはない。
( ´_ゝ`)「おい!」
(´・ω・`)「いいじゃないか。別に」
( ´_ゝ`)「オレが何のためにきたと思ってんだ」
(´・ω・`)「……ああ、弟者君の身代わりか」
(´<_` )「胸糞の悪い話してんじゃねーよ」
弟者の雷と、ショボンの氷がぶつかりあう。
寒々しい部屋に飛び散る光は美しい。
( ´_ゝ`)「弟者、お前は下がってろ」
(´<_` )「お前が戦ったところで、何も変わらんだろ」
(´・ω・`)「兄者君はボクを殺す気ないしね」
- 25
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 14:45:31.29 ID:G506Z6sj0
( ´_ゝ`)「オレだって魔法は使える」
部屋にあった大きな壺に手を向ける。
兄者は自分にできることを理解している。
壺はふわりと、宙に浮いてショボンへ向かう。
(´・ω・`)「おっと」
ショボンに当たる前に、氷が壺を破壊する。
細かい破片が飛び散った。
(´<_` )「やっぱりお前には無理だ」
( ´_ゝ`)「いや、考えがある」
(´・ω・`)「ふーん」
冷たい瞳が兄者を見る。
しまった。そう心の中で思った。
(´・ω・`)「ボクの魔力を削ぐの?」
( ;´_ゝ`)「…………」
少しでも弟者と五分五分の状態にしたかった。
そうすれば殺さずともどうにかなる方法が見つかると思っていた。
- 26
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 14:48:25.40 ID:G506Z6sj0
(´・ω・`)「うんうん。いい考えだね」
( ´_ゝ`)「バレたからって、どうすることもできないだろ!」
大きな絵画をショボンへ向ける。
(´・ω・`)「でもさ、こうすればいいだけだって気づいてた?」
薄い氷の壁が絵画を阻む。
ただ、魔力を節約していたのか、氷の壁はすぐに砕けた。
( ´_ゝ`)「もういっちょ!」
(´・ω・`)「氷よ我意思により、鋭き矢となれ」
宙に浮いた壺が床に落ち、無残な姿となった。
同時に、兄者は痛みを感じた。
ショボンが放った氷の矢は、壺だけでなく兄者も射ち抜いていた。
( ;´_ゝ`)「おいおい、勘弁してくれよ」
兄者は自分の手のひらを見る。
見なくても生暖かい液体が流れているのはわかりきっていた。
(´<_` )「あー。やっぱりな」
こうなると思ったと、弟者は呆れたように言う。
- 28
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 14:51:31.27 ID:G506Z6sj0
兄者の手のひらからは血が流れていた。
これでは魔法を使うことは困難になる。
( ;´_ゝ`)「い、いや……使えないわけじゃない」
手を上げ、今一度ショボンに向けて壺か絵画をぶつけようとする。
(´・ω・`)「やめときなよ。痛みが増すだけだよ」
( ;´_ゝ`)「うるせぇ……」
(´<_` )「風よ刃となり、彼者を裂け」
睨みあう二人を邪魔するかのように、弟者の風がショボンを裂く。
(´・ω・`)「痛いじゃないか」
(´<_` )「痛くしてるからな」
(´・ω・`)「お返ししちゃうよ」
氷のつぶてが弟者を襲う。
魔法でそれらを打ち落とすのは今の弟者には難しい。
魔力がないのならば、運動神経でそれを補う。
- 29
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 14:54:38.92 ID:G506Z6sj0
- しゃがみ、床を転がりながら氷を避ける。
時折、氷が弟者の体を傷つけたが、致命傷にはいたらない。
(´<_` )「炎よ……!」
(´・ω・`)「氷よ水へと返れ」
弟者の炎はあっけなく消える。
舌打ちをしている弟者を見るショボンの目は楽しそうだ。
(´・ω・`)「兄者君は黙って見てるの?」
( ´_ゝ`)「そうもいかないだろ」
震える声で返す。
手が痛い。寒い部屋の中で、手のひらだけが異様に熱い。
(´・ω・`)「ボクはね、もっと憎んで欲しいんだ」
( ´_ゝ`)「憎んで欲しい?」
(´・ω・`)「そう。その憎しみが力になるんだ」
復讐のための力。
ショボンがどのような能力を持っているのか。
わかっているのは姿を変える魔法と、氷をを操る魔法。そして人の心を読む能力。
他にもう一つくらい能力があったとしても不思議ではない。
- 30
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 14:57:25.89 ID:G506Z6sj0
(´・ω・`)「安心して、復讐のための能力はボクにないから」
(´<_` )「お前にはない?」
ならばどうするつもりなのだろう。
貞子のことを知らぬ兄者達は心の中で首を傾げる。
(´・ω・`)「気にしなくていいよ。ボクはちゃんと考えてるから」
( ´_ゝ`)「別に考えてなくていいよ」
(´・ω・`)「そんなこと言わないでよ」
(´<_` )「余所見なんてしてる余裕あるのか」
カマイタチがショボンを襲う。
防御が一瞬遅れたため、ショボンの体には無数の切り傷が生まれた。
(´・ω・`)「ああ、服がボロボロだ」
(´<_` )「お肌の方もボロボロにしてやるよ」
(´・ω・`)「まだ若いんだけどなー」
(´<_` )「そうかい!」
- 32
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 15:00:32.19 ID:G506Z6sj0
再び風がショボンを襲う。
(´・ω・`)「もういいかな」
(´<_` )「何が」
(´・ω・`)「痛いし、疲れたし」
( ´_ゝ`)「嫌な予感」
思わず、一歩後ろに下がる。
ニコリと笑うショボンに対する感情は恐れだけだ。
(´・ω・`)「バイバイでいいよね」
(´<_` )「だが断る!」
(´・ω・`)「そんなの、ダメだよ」
つぶて。そんなレベルではなかった。
大きなつららだ。それらが弟者に向かって降り注ぐ。
避けようと動くが、先を見透かされてしまっているため、完全に避けきることはできない。
( ´_ゝ`)「う、おりゃ!」
ショボンの集中力を削ぐために、辺りにあったものを浮かせ、ぶつけていく。
(´・ω・`)「危ないじゃない」
- 35
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 15:03:29.92 ID:G506Z6sj0
次に狙われたのは兄者だ。
だが、弟者の声がショボンの意識を兄者から離す。
(´<_` )「……なあショボンさんよ」
(´・ω・`)「なあに?」
(´<_` )「気づかないか」
(´・ω・`)「…………」
つららを落とす手を止め、弟者を見据える。
(´<_` )「オレらの位置関係だよ」
ショボンは弟者から目を離し、兄者を見る。
( ´_ゝ`)
兄者がいるのは弟者とは正反対の方向だ。
心なしか顔が青いのは、手からの出血があるのだからしかたがないだろう。
(´・ω・`)「うまく、考えたね」
自分の不覚に気がついた。
ため息をつきたい気持ちではあったが、今はそれどころではない。
(´・ω・`)「まあ、別に大したことないさ」
- 36
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 15:06:34.72 ID:G506Z6sj0
ショボンの目は二つだ。
兄者や弟者と同じ位置に、二つだけしかない。
(´・ω・`)「正反対にいられたら、片方の考えしか見えないや」
(´<_` )「ドクオと同じなんだ。しかたないな」
(´・ω・`)「うん。しかたないね」
だが、大した問題ではないとショボンは繰りかえす。
片方はろくな攻撃手段を持っていない。
(´・ω・`)「まあ、少しばかり面倒だけどね」
再び大きなつららが宙に作られる。
先ほどよりも多い数のそれは、兄者と弟者の両方を狙っている。
(´・ω・`)「下手な鉄砲数打ちゃなんとやら」
凶器が降り注ぐ。
弟者は炎でそれらを溶かし、兄者は震える手でそれらをゆっくりと降ろす。
(´・ω・`)「ほーら、第二段作っちゃうよ」
二人がつららの処理をしている間にも、ショボンは新たなつららを作る。
このままでは二人の体力がつきる方が早いだろう。
- 37
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 15:09:20.51 ID:G506Z6sj0
(´<_` )「何か、何かないのか……」
頭を働かせる。
弟者の魔力は限界に近い。
兄者に何かを期待することはできない。
絶体絶命。そんな言葉が脳裏を過ぎる。
(´・ω・`)「はい、これで終わりかな?」
( )「させないモナ!」
頭の中でぐるぐると思考を巡らせていると、何者かの声が耳に届いた。
突如現れた何者かは、ショボンの抱き締めるようにして動きを止めた。
予期せぬ事態に驚いたのか、ショボンは氷を形作っていた魔力を解いてしまった。
頭から降り注いだ水はその場にいた者達の体温を奪う。
(´・ω・`)「どうして……ここに」
( ´∀`)「ボクがいるのがおかしいかモナ?」
ここにいて、一番しっくりとくる人物だ。
( ´∀`)「ここはボクの部屋モナ」
穏やかな顔をしている王ではあるが、体のあちらこちらに傷を負っていた。
- 39
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 15:12:35.14 ID:G506Z6sj0
(´・ω・`)「よく、ここまでこれましたね」
( ´∀`)「モナ。よくわからないけど、彼らが急に倒れたモナ」
(´・ω・`)「あの兵が?」
( ;´_ゝ`)「王、危ないです」
抱きかかえるようにして、ショボンの動きを封じてはいるが、あの程度ではすぐに逃げられる。
( ´∀`)「キミ達にばかり任せてはいけないモナ」
(´・ω・`)「……あの兵が、ということは」
ショボンは目線を下げて拳を握る。
体を振るわせる。
( ´∀`)「ショボン?」
(´・ω・`)「ふふふ……」
笑っていたのだ。
小さな笑い声は、次第に大きくなっていった。
(´・ω・`)「あはははははははは!」
(´<_` )「おいおい、これはヤベエだろ」
- 41
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 15:15:25.86 ID:G506Z6sj0
誰もが思った。
この様子はただごとではない。まともな人間ではない。
(´・ω・`)「あーあ。もう……ヤダなあ」
冷たい手をモナーの背に添える。
悲しげな瞳は、今にも涙を流しそうだ。
( ´∀`)「モナ?」
(´・ω・`)「本当に、計画が台無しだよ」
その瞬間、ショボンの手からはつららが生み出された。
( ´∀`)「モ……ナ……」
( ;´_ゝ`)「モナー王!」
生み出されたばかりのつららは、モナーの体を貫いた。
腹から突き出た二本の氷は不気味な冷たさを帯びている。
(´・ω・`)「兵が急に倒れたってことはさ」
氷を消し去り、力を失くしたモナーを床に置く。
(´・ω・`)「貞子さん、やられちゃったんだね」
- 42
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 15:18:30.02 ID:G506Z6sj0
- (´<_` )「貞子?」
(´・ω・`)「ボクの相方。彼女が復讐の力を持っていたんだ」
誰かの悲しみを呪いにする貞子。
呪いの力を使い、世界に復讐するためには彼女の力が必要だった。
呪いの素を作りだすためには、ショボンの能力が必要だった。
復讐を果たすためには、貞子の呪いが必要だった。
利害関係の一致だけが二人の関係を繋ぎとめていた。
(´・ω・`)「なのに、誰にやられたかしらないけどさ……」
倒れているモナーを見下しながら、ショボンは一筋の涙を流した。
(´・ω・`)「もう、終わりだね」
今までやってきたことは無駄になる。
彼にできることと言えば、後は戦争を起こすことくらいしかないのだ。
(´・ω・`)「キミ達がこなければ、こうはならなかったのかな?」
( ´_ゝ`)「終わったなら、モナー王をそうする必要はあったのか」
(´・ω・`)「ただのうさばらしだよ」
ショボンは静かに手を上げる。
(´・ω・`)「これからも、ただのうさばらし」
- 43
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 15:21:29.92 ID:G506Z6sj0
冷たい空気が集まり、床全体が氷はじめる。
(´<_` )「洒落にならんな」
今の弟者ではどうにもできない。
冷汗もでない冷たさだ。
そんなとき、視界の端に映ったのは兄者の姿だった。
(´<_`; )「何やってんだ!」
滑る床を走りながら、ショボンへと近づいていく。
もうどうにもできない状況だとはいえ、敵に真正面から突っ込んでいくなど正気の沙汰ではない。
( ´_ゝ`)「王!」
兄者は王の腕を肩に回し、モナーを移動させようとしている。
(´・ω・`)「優しい人だね」
ショボンは兄者の後ろ姿を見て笑う。
(´<_`; )「馬鹿がっ……!」
真っ直ぐに兄者を狙うつららを弟者が打ち落とす。
( ´_ゝ`)「すまん!」
- 45
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 15:24:21.18 ID:G506Z6sj0
(´<_` )「本当に馬鹿だな。王とはいえ、今はそれどころじゃないだろ」
( ´_ゝ`)「王だから助けたわけじゃない。目の前で死にかけの奴がいたから助けたんだ」
(´<_` )「ああ、そうかい」
( ´_ゝ`)「弟者、頼む」
(´<_` )「…………今、王を治癒したところで、状況は変わらないぞ」
( ´_ゝ`)「そういう問題じゃないってわかってるだろ」
(´<_` )「はいはい。お優しいこって」
兄者からモナーを預かり、傷口に手をかざす。
暖かな光がモナーの傷口を癒し始める。
( ´_ゝ`)「さて、お前はオレと遊んでもらうぞ」
(´・ω・`)「いいよ。どうせ、すべて真っ白にするしね」
( ´_ゝ`)「恐ろしいこと言うなよ」
いつもと変わらないように見えた。
しかし、兄者の心は今までにないほど荒れていた。
- 46
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 15:27:34.99 ID:G506Z6sj0
(´・ω・`)「ねえ、何をそんなに怒ってるの?」
怒りはショボンの目を通して伝わってくる。
けれど、怒りの根源がよくわからない。
(´・ω・`)「そういえば、キミはお兄さんなんだよね」
( ´_ゝ`)「一応な」
弟者と兄者は双子だ。
兄や弟などという言葉に意味はない。
(´・ω・`)「ボクのお兄ちゃんは優しかったんだ」
( ´_ゝ`)「そうか」
(´・ω・`)「だから、死んじゃった」
キミはどうなの? と問いかけの声と同時に、つららが飛び出す。
避けようと考え、空へ逃げよう足に力を入れる。
だが、つららは兄者を素通りし、後ろにいた弟者とモナーに向かっていた。
( ;´_ゝ`)「笑えねぇって!」
慌ててつららに手を向ける。
数は二本。操れない数ではない。
- 47
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 15:30:34.80 ID:G506Z6sj0
ショボンの放ったつららは、弟者とモナーの上を通り、壁に刺さった。
弟者も肝を冷やしたのか、小さくため息をつく。
先ほどからずっと治療を進めているおかげで、モナーの顔色はずいぶんと良くなっている。
(´<_` )「おい!」
思わず叫んだ。
( ;´_ゝ`)「ですよねー」
兄者は笑った。
(´・ω・`)「お兄ちゃんって、やっぱり優しいものなのかな?」
ショボンは呟いていた。
(´<_`; )「こっちにはオレがいるんだ。余計なことしなくても」
( ;´_ゝ`)「お前はずっと魔力を使いっぱなしだろ」
良い格好くらいさせろ。そう言った兄者の足にはいくつかの細いつららが刺さっていた。
笑っていた兄者はそのまま、床に倒れこむ。
つららに貫かれた足は、その機能を放棄してしまったようだ。
(´・ω・`)「優しいね。反吐がでるよ」
ゆっくりと近づいてくるショボン。
兄者は這い蹲りながらその様子を目に映している。
- 48
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 15:33:44.96 ID:G506Z6sj0
(´・ω・`)「ボクのお兄ちゃんだけでいいんだよ。
キミとお兄ちゃんを重ねるなんて真っ平ごめんだよ」
見下す者と、見上げる者。
( ´_ゝ`)「オレも嫌だわ」
歯を食いしばり、ショボンを睨みつける。
兄者の中の怒りがはっきりと見え始めた。
( ´_ゝ`)「お前みたいな、クズの兄貴なんてよ」
(´・ω・`)「キミの弟も中々だと思うけどね」
( ´_ゝ`)「ふざけんな。オレの弟はオレ以外の家族には優しいんだ」
(´・ω・`)「……失礼だね。ボクはボクの家族を誰よりも愛してるよ」
会話を続けていく間も、兄者の足からは血が流れている。
( ´_ゝ`)「どうだか」
(´・ω・`)「温厚なボクでも怒るよ」
( ´_ゝ`)「あんたさ、王に何したんだよ」
(´・ω・`)「ん?」
( #´_ゝ`)「何したかって聞いてるんだよ」
- 50
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 15:37:11.34 ID:G506Z6sj0
兄者は吼えるように叫んだ。
血が足りていないのに、大きな声を出したせいか、頭が一瞬白くなる。
それでも兄者は続けていく。
( #´_ゝ`)「あの人はお前のこと心配してたんだぞ!
見ろ! オレの考えてることがわかるんだろ!」
(´・ω・`)「……知ってるよ。あの人がボクのことを大切に思ってくれていたことくらい」
( #´_ゝ`)「いた。なんて過去形にするな。王は今だって思ってるはずだ。
お前を、実の子供みたいに思ってるはずだ!」
(´・ω・`)「うるさいなぁ」
( #´_ゝ`)「お前は、親を殺そうとしたんだ!」
(#´・ω・`)「もう! うるさいよ!」
ショボンが氷の刃を作り、兄者へと向ける。
ろくに動くことのできない兄者は黙ってそれを見る。
(´<_` )「風よ!」
振り下ろされる刃を砕いたのは弟者の放った風だった。
(´・ω・`)「もう王様の治療はいいの?」
(´<_` )「ああ、最低ラインまでは治療した」
- 52
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 15:39:27.65 ID:G506Z6sj0
- 疲れたのか、弟者は肩で息をしている。
(´・ω・`)「無理しないでいいよ。どうせキミもすぐに死ぬんだから」
(´<_` )「ごめんだね」
( ´_ゝ`)「弟者」
自らの体を浮かせ、弟者に近づく。
( ´_ゝ`)「手を貸せ」
(´<_` )「オレは高いぞ」
( ´_ゝ`)「お前の命よりもか?」
(´<_` )「……しかたないな」
( ´_ゝ`)「よし」
ショボンに聞こえぬ程度の音量で言葉を紡ぐ。
その間も弟者とショボンの間では、大きな魔力と小さな魔力がぶつかりあっている。
(´<_` )「それをしろというのか?」
( ´_ゝ`)「頼む」
(´<_` )「…………」
弟者は口を閉じ、ショボンを見る。
- 53
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 15:42:42.12 ID:G506Z6sj0
- (´<_` )
そこにいたのはショボンではなかった。
(´<_`; )「おお、また嫌なことをするな」
( ´_ゝ`)「何のつもりだ」
(´<_` )「別に? ただ、姿を変えて見たくなっただけだよ」
弟者の顔で、ショボンが笑う。
氷はやんでいた。
(´<_` )「それくらい、いいでしょ? 劣等クズ兄貴」
( ´_ゝ`)「……」
その言葉が兄者の心を抉ると思ったら、大きな間違いだ。
兄者は今までずっと弟者と暮らしてきた。
あの程度の言葉は何度も向けられてきた。
(´<_`; )
しかし、意外にも弟者には効果があった。
誰かが誰かを罵倒している姿というのは、どうにも胸糞が悪い。
自分の姿で、自分の兄をとなるとなおさらだ。
( ´_ゝ`)「人の弟の姿を借りて、何好き勝手言ってんだ」
(´<_` )「いいでしょ? どうせいつも言われてたんだし」
- 55
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 15:45:26.12 ID:G506Z6sj0
( ´_ゝ`)「弟者が言うのはいい。オレが悪い。
だがお前は許さん」
(´<_` )「見た目は同じじゃない」
( ´_ゝ`)「双子を舐めるな。見た目だけで判断してたら鏡が見れなくなるだろ」
(´<_` )「そういうもの?」
( ´_ゝ`)「そういうものだ」
兄者は弟者にささやく。
自分がショボンの気を引いている間に、先ほどたてた作戦を自行しよう。
(´<_` )「……把握した」
弟者は疑問に思い始めていた。
ショボンが兄者をとぼす度に、嫌な気持ちがつのる理由。それは、一つしかないのではないのか。
(´<_` )「劣等、馬鹿兄」
小さく呟く。自分に言い聞かせるように。
足を進めながら、思い出すのは兄の姿だ。
確かに兄者は馬鹿だった。
考えなしに突っ込み、今回のような危険に巻き込まれる。
そのおかげで弟者が怪我をすることもあった。
- 57
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 15:48:23.75 ID:G506Z6sj0
だから憎かったのか。
(´<_` )「違うな」
ずっと憎かった。
時を経て、その形はいびつに歪んでいた。
(´<_` )「おい、馬鹿兄者!」
( ;´_ゝ`)「ちょっ、オレの努力!」
ショボンが弟者の方を振り向く。
(´<_` )「何してるの?」
弟者は部屋に飾られていた剣を握っている。
あくまでも装飾品のそれは、殺傷能力を持っていないはずだ。
(´<_` )「よく聞けよ」
眉間にしわを寄せ、ショボンに向かって駆けながら叫ぶ。
(´<_` )「オレはあんたが憎い」
刀身に氷が張りつく。
鋭いそれは飾りの剣を、本物の剣へと変える。
- 59
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 15:51:56.21 ID:G506Z6sj0
(´<_` )「オレは兄者のできないことはやってやると言った!
だから助けた。だから助けてもらった」
(´・ω`)
ショボンは姿を戻しつつ、弟者に手を向ける。
彼の魔力にも限界が近づきはじめたのか、つららではなくつぶてに変わっていた。
(´<_` )「なのにあんたはいつまでも、いつまでも」
氷のつぶてをその足で避けながら近づいていく。
もう余計な魔力は使えない。体がボロボロになっても構わずに走る。
(´<_` )「罪悪感ばかりだ! イライラする!」
( ;´_ゝ`)「だが、そもそもオレが――」
(´<_` )「そんな話は聞き飽きた!」
(´・ω・`)「キミも八つ当たり?」
苛立ちをぶつけるように、弟者はショボンを睨む。
(´<_` )「いや、お前が余計なことをしたから考えさせられただけだ」
憎いのは兄者自身ではなかった。
兄者の行動が憎かった。
いつまでも罪悪感をまとい、おどおどとして弟者に文句の一つも言わない。
- 61
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 15:54:31.29 ID:G506Z6sj0
(´・ω・`)「キミ達も、キミ達なりに兄弟を思う気持ちなんてものがあったんだ」
(´<_` )「さてな」
弟者の持つ剣の切先がショボンをとらえた。
(´・ω・`)「ボクはキミのお兄さんが嫌いだよ」
(´<_` )「それは良かった」
(´・ω・`)「だってさ、ボクのお兄ちゃんと少しだけ似てる」
ショボンが大きなつららを生み出す。
最後の魔法になっても構わない。弟者を仕留めることができれば、あとはろくに戦うことのできない兄者だけ
だ。
(´<_` )「それは勘違いだろ」
つららがふわりと浮く。ショボンの意思とは違う。
(´<_` )「うちの馬鹿兄貴は死なないからな」
ショボンの目に映ったのは、弟者が持っている剣の切先と、その後を追っている氷のつぶてだった。
部屋中に散らばったそれらを兄者は操っている。
視線を兄者の方に向けてみると、手は痛みで震えていた。
痛みを耐えるために、歯を強く食いしばっていることまでわかる。
- 62
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 15:57:37.49 ID:G506Z6sj0
(´・ω・`)「ボク負けたの?」
(´<_` )「そうだな」
切先はショボンの肩を貫いた。つぶては体中に小さな傷を作る。
ショボンはゆっくりと倒れ、弟者はそのまま剣を押し込む。
(´・ω・`)「痛いよ。痛い……」
(´<_` )「そうだろうな」
ショボンは弟者を見上げる。
弟者は剣を通して、氷を地面に張り巡らせる。それはショボンの手足の自由を奪っていく。
(´<_` )「オレは殺さない」
(´・ω・`)「痛い、冷たい……」
剣から手を離す。
(´;ω;`)「助けて……お兄ちゃん」
(´<_` )「だってよ、兄者」
( ´_ゝ`)「オレがお前の兄なら、言葉は一つだな」
ショボンと似た目線の兄者は言う。
- 63
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 16:00:29.85 ID:G506Z6sj0
( ´_ゝ`)「だが、断る」
(´;ω;`)「ボクは、ボクはあいつらに復讐を……」
許すことなどできない。
大好きな人が殺された。殺した人間も、そんな人間がいる世界も、すべて許せなかった。
家族のためではない。自分が納得するための復讐をしたかった。
( ´_ゝ`)「お前は本当に世界が憎かったのか」
(´;ω;`)「憎いよ! 憎いんだ!」
( ´_ゝ`)「殺しあいをさせるほど、大切な家族と永遠の別れにさせるほど、
お前を愛してくれた人を殺そうとするほど、憎かったのか」
(´;ω;`)「にく、い……よ」
( #´_ゝ`)「本当だな!」
( ´∀`)「もう、やめてあげて欲しいモナ」
兄者を止めたのはモナーだった。
まだ完全に回復したわけではないのに立ち上がり、ショボンへ向かって足を進める。
(´<_` )「まだ動かない方が……」
( ´∀`)「大丈夫モナ」
- 64
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 16:03:26.89 ID:G506Z6sj0
モナーはショボンの横に膝をつく。
( ´∀`)「憎しみを忘れるのは、悪いことじゃないモナよ」
(´;ω;`)「ダメだよ……お兄ちゃんやお母さん、お父さんが殺されたんだもん」
( ´∀`)「いいモナ。憎しみを持っていたら、ショボンはどんどん傷ついちゃうモナ。
ショボンの心は、もういっぱい悲しんだモナ」
(´;ω;`)「モナーさんなんて嫌いだ……」
( ´∀`)「それは悲しいモナ」
(´;ω;`)「モナーさんが笑う度に、ボクはこの世界を許せるんだ」
許せる自分が憎かった。
優しい人が憎かった。
(´;ω;`)「お兄ちゃん……ごめんなさい」
( ´_ゝ`)「お前は、誰に謝ってるんだ」
(´;ω;`)「え?」
(`・ω・´)「ごめんなさいは、迷惑をかけた人にだろ」
一瞬、兄者とショボンの兄が重なった。
- 67
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 16:06:40.06 ID:G506Z6sj0
(´;ω;`)「……うん。ボク、本当は、もう」
最後まで言うことなく、ショボンは気を失った。
モナーは驚いて体を揺すったが、胸が上下しているのを確認して一息つく。
( ´∀`)「ありがとうモナ」
( ´_ゝ`)「いえ」
( ´∀`)「すぐに医者を……」
(´<_` )「あ、あなたも怪我を……って元気だなあの人」
痛む体に鞭をうちながらモナーは部屋から出て行った。
部屋に残っているのは、ボロボロの三人だ。
( ´_ゝ`)「終わったな」
(´<_` )「死ぬなよ」
兄者の隣に弟者も寝転ぶ。
体を支えていることがダルかった。
( ´_ゝ`)「お前もな」
(´<_` )「オレは魔力不足なだけだ」
( ´_ゝ`)「そうか」
- 69
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 16:09:35.20 ID:G506Z6sj0
ひんやりとした部屋の中で、兄者は徐々に目蓋を落としていく。
ここ最近は疲れることばかりだった。
(´<_` )「なあ」
( ´_ゝ`)「ん……?」
(´<_` )「一つだけ、言う言葉があったわ」
( ´_ゝ`)「……ああ、ブーンが言ってたアレか」
血の足りていない頭で思い出す。
ブーンは姉に言えなかった言葉があると嘆いていた。
弟者には同じ思いをして欲しくないと言っていたような気がする。
( ´_ゝ`)「ないって言ってなかったっけか」
(´<_` )「思い出したんだよ」
( ´_ゝ`)「そうか」
どのような言葉が飛び出すのか、兄者には予想もできない。
やはり罵倒なのだろうか。
それとも死を悲しむ言葉なのだろうか。
本当に最期になるかもしれない。
兄者は頭にかかっていた靄を払う。
- 70
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 16:12:44.12 ID:G506Z6sj0
d(´<_` )「流石だよなオレら」
親指を立てて小さく笑う。
ずいぶん久々に見た気がした。
( ´_ゝ`)b「ああ、流石だよなオレら」
拳を突き合わせる。
二人はそのまま、目を閉じた。
- 72
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 16:15:39.08 ID:G506Z6sj0
('A`)「おはよう」
( ^ω^)「おはようだお」
(´<_` )「……おはよう」
( ´_ゝ`)「おはよう」
目を開けたとき、四人はお互いの顔を見て誰も欠けていないことを確認した。
誰もが満身創痍で、無事とはいいがたいものだったが、生きている。
重傷だった兄者も、あの寒い空間のおかげで出血が少なかったため何とか助かった。
( ^ω^)「みんなはこれからどうするお?」
ベットの上でブーンが尋ねた。
('A`)「そうだな……」
各々これからのことを話す。
傷がある程度癒えたら、王が家まで送ってくれると約束した。
その代わり、というわけではないが、今回のことを口にするなと口止めされた。
必ず、自分自身で公表すると、王も誓ってくれたので、四人は素直に頷いた。
( ´_ゝ`)「落ち着いたら手紙でも書くさ」
( ^ω^)「本当かお? 楽しみだお!」
- 74
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 16:18:50.47 ID:G506Z6sj0
そんな話をしたのが三ヶ月ほど前のことだ。
ドクオは自分の部屋で筆を片手に紙と睨めっこをしている。
いざとなると、何を書いていけばいいのかわからない。
('A`)「うーん」
頭を抱えていると、ノックの音が聞こえた。
('A`)「どうぞー」
(゚A゚*)「お兄ちゃん、何してるのー?」
('A`)「手紙書いてるんだよ」
(゚A゚*)「お友達?」
('A`)「うん。とっても大切な友達だ」
(゚A゚*)「のーも書きたい!」
('A`)「え、何書くんだ?」
(゚A゚*)「お兄ちゃんがお世話になりました! って書くのー」
(;'A`)「お世話にって……」
(゚A゚*)「筆ちょうだーいー」
- 76
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 16:22:24.00 ID:G506Z6sj0
弟者へ
そっちの方はどうだ?
オレは実家の方でのーと楽しく過ごしてる。
本当はのーの様子を見て、すぐにそっちに帰るつもりだったのに、
こうして今でも実家にいることがオレ自身信じられない
のーはずっとオレのことを見ていたらしい。
千里眼の恐ろしさを実感したよ。
でも、ちょっと嬉しかったな。やっぱり妹は可愛いもんだ。
オレの顔を見たときの、のーは涙をボロボロ流してて、本当に可愛かった。
お前には絶対にやらん。つか見せるのも嫌だ。
両親の方も、昔と違って優しい気がする。
やっぱり、強い呪術師を打ち負かしたことが大きいみたいだ。
今はオレの目を制御する特訓とかしてる。おかげで他人の気持ち悪い部分を見なくてもすみそうだ。
正直、オレはお前と兄者が仲良く暮らしているところなんて想像もできない。
まだ母者さん達は帰ってきてないんだろ?
ちょっと心配だったりするよ。
だけど、三ヶ月前の別れのときのお前達は本当に普通の兄弟みたいだった。
また機会があれば遊びに行くよ。
ドクオより
- 80
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 16:25:41.58 ID:G506Z6sj0
(´<_` )「お前の妹なんていらんわ」
朝食の用意をしながら手紙を読む。
テーブルの上には二人分の朝食が用意されている。
(´<_` )「できたぞー」
( ´_ゝ`)「おー」
ふわふわとやってきた兄者は椅子に座る。
(´<_` )「おい、車椅子はどうした」
( ´_ゝ`)「家の中の移動くらいいいだろ」
(´<_` )「そんなこと言って、また魔力が切れても知らんからな」
( ;´_ゝ`)「まだ根に持ってるのか」
(´<_` )「『まだ』? 一度しかないみたいな言い方はやめろ」
( ;´_ゝ`)「数回だろ」
(´<_` )「お前の中で二桁の大台は数回に変換されるのか」
( ;´_ゝ`)モグモグ
- 82
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 16:28:42.32 ID:G506Z6sj0
ブーンへ
姉貴との生活はどうだ?
兄者との生活は疲れるぞ。
足が使えなくなったのはしかたないし、それについて文句を言うつもりはない。
だが、あの馬鹿は自分が浮遊系を得意としているのをいいことに、どこに行くのにも車椅子を使わない。
遠出しすぎて、魔力が切れた。ということがもう十回以上ある。
その度に迎えに行ったり、連れてきてもらったりしなければならん。
たまには這い蹲って帰ってくればいいんだ。
他の家族が帰ってきたときの言い訳も考えないといけないからな。
ブーンは何て言ったのか教えてくれ。
兄者の足についての言い訳を考えてくれ。
真実だけだと、オレ達が母者に殺される。
っと、愚痴みたいな手紙になってしまったな。すまん。
ブーンの方は今頃、例の幼馴染の尻の下だろう。
彼女の回復魔法のおかげで、オレはこうしてここにいられているんだったな。
礼を言っておいてくれ。
家族が帰ってきたら、一度遊びに行こうと思っている。
まあいつになるかわからんから、そっちから来てくれた方が早いかもしれないな。
くることがあったら、彼女になった幼馴染を連れてきてくれよ。
じゃあ、待ってるぞ。
弟者より
- 83
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 16:31:53.08 ID:G506Z6sj0
( ^ω^)「……もうボクが行くことが確定してるお」
どうせ、近いうちに遊びに行くつもりだったので問題はないが、
遊びに行くと書いていた部分は何だったのだろう。
ξ゚听)ξ「何読んでるのよ?」
( ^ω^)「友達からの手紙だお」
ξ゚听)ξ「ふーん」
( ^ω^)「今度遊びに行くから、ツンも行くお」
ξ゚听)ξ「別にいいわよ」
( ^ω^)(よし、あとはこ、こ、こ……」
ξ゚听)ξ?
(#゚;;-゚)「あら、ツンちゃん」
ξ゚听)ξ「あ、しぃさん」
(#゚;;-゚)「ふふ、ツンちゃんいつ見ても可愛いわね。私の妹にならない?」
ξ*゚听)ξ「え、いいんですか」
( ^ω^)「姉ちゃんの妹……ということは!」
- 86
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 16:34:32.42 ID:G506Z6sj0
兄者へ
ボクだお!
ブーンだお!
兄者は元気かお?
ボクは元気だお。
姉ちゃんも、ギコさんの両親もずいぶん元気になったお。
ツンは……相変わらずだお。
今日も調子に乗るな! って殴られたお……。
遊びに行くときはツンも連れていくお。
兄者や弟者にも紹介したいお。
でも、好きになったらダメだお! 絶対だお!
こうして、姉ちゃんやツンと馬鹿やって、兄者に手紙が書けて、ボクは幸せだお。
あの時、あの会場で兄者と会えて良かったお。
会えてなかったら、きっと今頃ボクはあの地下室で死んでいたお。
本当にありがとうだお。
遊びに行ったら、ありがとうをいっぱい伝えるお。
ボクは言う言葉を忘れないようにしていくんだお。
それが、今回学んだことなんだお。
それじゃあ、また遊びに行くお。
ブーンより
- 89
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 16:42:18.17 ID:G506Z6sj0
( ´_ゝ`)「おお、待ってるぞー」
椅子に座りながら手紙に目を通す。
今は弟者がいない。友人と出かけている。
三ヶ月の間で兄者にも友人と呼べる人間は増えたが、やはり外出に誘ってくれる者は少ない。
暇を持て余していると、ノックの音が聞こえた。
( ´_ゝ`)「はーい」
足が使えないので、ふわりと宙を浮きながら玄関を開ける。
( ∀ )「お久しぶりモナ」
(´ ω `)「久しぶりです」
( ´_ゝ`)「……ああ、久しぶりです。どうぞ」
( ∀ )「いや、ちょっとした挨拶にきただけモナ」
( ´_ゝ`)「そうですか」
( ´∀`)「これから、ボクらは旅に出るモナ」
(´・ω・`)「弟者さんは?」
( ´_ゝ`)「今はいないよ」
- 90
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 16:45:46.12 ID:G506Z6sj0
ショボンはフードを上げて、残念そうな顔をする。
( ´_ゝ`)「ま、あいつにはオレから言っておくよ」
( ´∀`)「よろしく頼むモナ」
モナーはフードを深く被り、背を向ける。
( ´_ゝ`)「気をつけて」
(´・ω・`)「兄者さん、その……」
視線を彷徨わせながら、言葉を紡いでいく。
その目が兄者の足を捕らえると、まぶたを固く閉じてしまう。
( ´_ゝ`)「……ま、気にするな、とは言えないからなぁ」
(´-ω-`)「ごめんなさい」
( ´_ゝ`)「うん。とりあえず、いいよ」
早く追いかけろと、兄者はショボンを反転させて背中を押す。
ショボンは何度か振り向いたが、兄者が笑って頷くと、モナー王へと駆けて行った。
( ´_ゝ`)「あれから三ヶ月……か」
- 93
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 16:48:37.87 ID:G506Z6sj0
兄者達がそれぞれの家に帰ってから一ヶ月ほどしたとき、国中に大ニュースが広がった。
あの呪いの部屋の話。おぞましい呪術師の影と死。
そして、モナー王の自殺だ。
呪術師に誑かされた自分を恨み、後を息子に任せて自殺したという。
国中が怒りに溢れていた。
息子に丸投げするのかという批判と、死んだ者は返らない悲しみ。
三ヶ月経った今、こうして国が平和なのは新王のモララーが優秀だったからだ。
被害者の家族の家を回り、一人ずつに頭を下げて回ったのだ。
もちろん、補償もおこなっていった。
兄者達に手紙がやってきたのはそんなときだった。
( ´_ゝ`)「誰からだ?」
(´<_` )「読んでみろよ」
手紙は死んだはずのモナーからだった。
自殺というのは国民へけじめを見せるためのフェイクだったそうだ。
('A`)「ショボンも生きてるのか」
ショボンは体中に罪人の証である刺青を施された。
刺青には魔力を消し去る術式が組み込まれている。彼は二度と魔術師を名乗れない。
( ^ω^)「国が落ち着いたら旅に……?」
- 94
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 16:51:30.08 ID:G506Z6sj0
二人で贖罪の旅に出ると、手紙には書いてあった。
魔法を使えない彼に何ができるのかはわからない。
それでも、悲しみを負った人々と会うことこそ、彼への罰だとモナーは書く。
ショボンを止めてくれた四人には真実を話したかったと、手紙は締められていた。
( ´_ゝ`)「オレはいいと思うぞ」
(´<_` )「そうか? オレは死刑でも良かったと思うぞ」
( ´_ゝ`)「元々、王……元王はそれを望んでなかったわけだし」
彼と直接会ったことのある二人はそんな話をしていた。
旅立ちの日がようやく来たのだ。
これから彼らはどのようなものを見るのだろうか。
旅の途中で命を落とすことがないようにだけ祈り、兄者は背を伸ばす。
ドクオ達へ手紙を書かなければならないし、遊びにきたときのために部屋の掃除もしなければならない。
( ´_ゝ`)「あーすることは多いな」
空を見上げながら呟く。
兄者は家の扉を閉めた。
( ´_ゝ`)は劣等性のようです 完
- 99
名前: ◆UJEaB9eZsVvR
:2011/01/10(月) 16:54:53.21 ID:G506Z6sj0
- サブタイ
『兄弟達の物語のようです』
終わりました。
初長編。長々とやってきましたが、支援、乙してくださった皆様ありがとうございました。
一人っ子による兄弟の話でした。
正直、劣等性関係な(ry
川д川の過去話を書く時間がなかったので、しばらくしたらながらでだらだら書くかも。
質問が書き込まれたら先にそっち書くかも。
それではひとまずありがとうございました。
- 100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 16:57:07.63 ID:KavBRTAQ0
- 一人っ子は兄弟を欲しがるとは聞くが
そこのところが関係してるのか
- 102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 16:58:52.57 ID:C+Yr60mn0
- 兄者の足は一生駄目なの?
あとドクオは学校はやめたの?
- 103 名前:
◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月)
17:08:19.74 ID:G506Z6sj0
- >>100
話には関係してない。
オレは欲しい。
>>102
現時点では一生ダメ。
(´<_` )が「アレは借りだろ」とか言いつつ頑張りそう。
ドクオは学校辞めて実家頑張ってます。
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