7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 15:35:32.28 ID:ceFXcdGY0

【4月21日】

今日の天気は晴れ。

今日が木曜日の朝だと気付いたのは、アラームを設定した携帯電話を確認してからだった。
また一日が始まるのか、と思うとカーテンレールに遮断されている光すら憎らしい。

つまり、僕の病気が発症してから既に3日が経ったようだ。

( ^ω^)「……ふぁあ……」

それでも意外とぐっすりと寝れてしまったらしい。

はは、なんだ。意外と我慢強いじゃないか、僕。


昨日はあれだけ……自殺する、自殺すると呟いていたというのに。
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 15:37:35.67 ID:ceFXcdGY0
さぁ、リビングに行って母に声をかけてみよう。

今日こそは、とも思うが
今日もたぶん、とも思っている。

今更母がどんな反応をしようが構わないが、とりあえず警察を呼ぶのだけは勘弁してもらいたいものだ。

( ^ω^)「……」

ぎしりと音をたてる階段を降りリビングへ行けば、母は丁度朝ごはんを作っている最中だった。

J( 'ー`)し 〜♪

父と自分と、2人分の卵焼きを器用に巻いていく。
その醤油の香ばしい焼き色が食欲をそそり、思わず唾液が溢れてくる。

しかしどうせ僕のは用意されていないので我慢しよう。

( ^ω^)「……カーチャン、カーチャン」

そんな母に後ろから声をかけてみた。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 15:39:01.37 ID:ceFXcdGY0
J( 'ー`)し「?」

( ^ω^)「おはよう」

J( 'ー`)し

J(;'ー`)し

J(;'ー`)し「キャアアアアアア!!!」

J(;'ー`)し「あ……あなた誰ですか!?鍵はかかってるはず……えっ!?なんで家の中に……!?」

( ^ω^)「……」

カーチャン、僕は僕だよ。




――――リセット病のようです。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 15:40:14.52 ID:ceFXcdGY0


リセット病のようです


( ^ω^)


リセット病のようです…



リセット病のようです……( ^ω^)←こいつ誰だっけ?
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 15:42:45.43 ID:ceFXcdGY0
【4月17日】

今日の天気は晴れ。

明日、18日は僕の誕生日だ。

しかし、内藤家の空気はかなり悪い。
それが僕の発言のせいだと言うのだから都合が悪く、始末も悪い。

しかしなんだってんだ。

(;^ω^)「いや、生んでくれって頼んだ覚えはねーし!」

言い争った勢いでこう言ってしまった事に関しては悪いと思う、全面的に。

なんと子供じみた返答をしたものだろうか。
冷静になった今なら自分の言った事の恥ずかしさがわかる。

だけど。
21 名前:ただいま。これからも度々抜けるかも:2012/04/18(水) 16:00:38.02 ID:ceFXcdGY0
だけどそれに買い言葉として。

J( ;ー;)し「こっちだってあんたみたいな穀潰し生まれてくれと頼んで覚えはねーんだよ!嫌なら家から出てけよ!あァ!?」バキッ グシャッ

(;^ω^)「ちょっ……おいカーチャン!」

……親がこんな事言うもんかよ、普通。

J( ;ー;)し「こんなッ!わけわからんCDとかゲーム!何一つ取り柄ねー癖に遊ぶ事だけは一人前!ふざけんな!」ベキベキッ!

(;^ω^)「あ…あっ……!!やめろよオイ!」

J( ;ー;)し「んだよ触んなデブ!」

(;^ω^)

おかげでマイルームは大荒れも大荒れ。
僕の机の上のPCや漫画、最近ハマっているアニメCDを割られそうになったり(これはモララーから借りたものなので必死に制止した)と、かなり大変だった。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 16:02:34.56 ID:ceFXcdGY0
普段温厚な母がこんなにもキレた所を見た事がなかったので、正直寒気すらした。
なるほど、僕は予想以上に母にストレスを与えていたようだ。

反省しなければ。
そりゃあ、親の庇護を受けながら親の文句を言う俺が100%悪いに決まってるよな。

後味が悪いのは嫌いな方なので、今日はすぐに寝てしまおう。

明日朝イチに謝ってみよう。

そう言えばツンからメールが来ている。
ξ*゚听)ξ「あさっては3ヶ月記念日だね!」との事。

( ^ω^)「……」

1年記念日と言うならまだしも、なぜ女子は記念日を作りたがるのだろう。
こうやって特別な日を作らなければ、女の子は愛を感じられないと言うのか?

彼女には、ぼくの事をホントに好きなのかと聞きたくなる。
しかしまぁ、彼女がNOと答えたところで「なら別れてくれ」と言うような器量はないのだけれど。

何分、彼女がいると体面がいいしね。

( ^ω^)「……まいったまいった」

では、お休みなさい。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 16:04:24.17 ID:ceFXcdGY0
【4月18日】

今日の天気は晴れ。

今日は僕の誕生日。





僕って誰だよ。

当たり前だが、僕は内藤ホライゾンだ。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 16:06:00.46 ID:ceFXcdGY0
( ^ω^)「……おはよ」

J( 'ー`)し「……おは」

J( 'ー`)し

J(;'ー`)し「……?」

( ^ω^)「母さん、昨日は、その……」

J(;'ー`)し「えっ……?」

( ^ω^)「え……?」

J(;'ー`)し「……だ」

J(;'ー`)し「誰ですか……?」

( ^ω^)


「……は?」



僕は内藤ホライゾンだ。
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 16:06:57.21 ID:ceFXcdGY0

僕は内藤ホライゾンだ。 僕は内藤ホライゾンだ。 僕は内藤ホライゾンだ。

僕は内藤ホライゾンだ。 僕は内藤ホライゾンだ。 僕は内藤ホライゾンだ。

僕は内藤ホライゾンだ。 僕は内藤ホライゾンだ。 僕は内藤ホライゾンだ。

僕は内藤ホライゾンだ。 僕は内藤ホライゾンだ。 僕は内藤ホライゾンだ。

僕は内藤ホライゾンだ。 僕は内藤ホライゾンだ。 僕は内藤ホライゾンだ。



29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 16:09:02.73 ID:ceFXcdGY0
(;^ω^)「か、カーチャン?なんの冗談だお……?」

J(;'ー`)し「母さんなんて、なんですかあなたは!」

J(;'ー`)し「うちに息子なんかいません!けっ……警察呼びますよ!」

(;^ω^)「え……え!?」

最初は何かの冗談かと思った。
昨日の件への当て付けか何かだろうと。

しかしその目は、明らかに違う。

J(;'ー`)し

不審者を見る目、そのまんまだ。
人は実の息子を、こうも怪訝な顔をして伺えるものなのか。

( ^ω^)「なぁ、カーチャン……」

J(;'ー`)し「ひっ……」

その悲鳴も、本気で怯える人のそれ。
たまらずと言った風にカーチャンはそのまま受話器に手をかける。
どうやら本気で警察を呼ぶつもりらしい。
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 16:14:19.40 ID:ceFXcdGY0
J(;'ー`)し「もっ……もしもし!警察ですか!?助けてください!家に……」

(;^ω^)「う……うわっ……!!」

マジで電話をかけやがった。
ショックも大きい中、僕らそのまま家を飛び出した。



学生服だけ着たまま、かばんも持たずに家から走り出す。

後になりよく考えたら逃げなくてもなんら不都合はなかったのだが、とっさに体が動いてしまった。
あんなに真剣な目で「不審者」と呼ばれたら、なぁ。


今日は僕の誕生日。

カーチャンは僕の事を、完全に忘れていた。
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 16:49:09.84 ID:ceFXcdGY0
(;^ω^)ハッ……ハッ……

何が起きたかわからない。
何故だかわからないが、母は僕を「知らない」と言い放った。

母さんに、何があったのだろう。
とは言っても違和感はなかった。顔色も至って普通のそれだったし、口調も普段と変わりない。
……だからこそあの言葉は、ひどく胸に響いた。

(;^ω^)「……」

(;^ω^)白 ぴっぴっ

とりあえず、父親に連絡してみよう。
父なら母がああなってしまった理由を何か知っているかもしれない。
もしかしたら、という懸念もあったが構っていられなかった。

(;^ω^)白

ピッ「どちら様ですか?」

(;^ω^)白「あ、もしもし!?トーチャンかお!?」

「……?」

(;^ω^)白「あの、トーチャン……!?」

「あの、間違い電話では?うちに息子なんていませんし……」

(;゚ω゚)

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 16:54:46.35 ID:ceFXcdGY0

( ・∀・)「は?誰だよお前」

(;゚ω゚)

おい。

ξ゚听)ξ「え!?誰……ですか」

(;゚ω゚)

おい。

(;´∀`)「な、なに言ってんの。うちのクラスに内藤なんていないよ……」

おい。

なぜどこにも、僕を覚えているやつがいないんだ。

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 16:56:52.88 ID:ceFXcdGY0
('A`)「『衆体的存在被忘却症候群』」

('A`)「……通称、リセット病ですね」

(;^ω^)「リセット病……ですかお?」

その医者は汚ならしい無精髭をかきながら、こちらを真剣に見つめてきた。
どうやらなんだったかの名医という事らしいが、その風格は微塵も感じられない。

('A`)「はい」

('A`)「簡単に言えば、周りの人間から存在を忘れられてしまう病気……」

('A`)「未だに前例が世界に1つしかない、体系付けるものすらない奇病です」

(;^ω^)「……」
49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 17:02:51.12 ID:ceFXcdGY0
あの後行くあてもなく家に戻った僕は、母ともう一度同じ問答をした……けれど。
今回はちゃんと説得する事にしてみた。
するとわかったのは、母は僕の存在をホントにわかっていないという事だった。

どこかで見た事すらない、赤の他人という扱いになっているのだ。

その赤の他人の為に一緒に病院に来てくれるんだから、母はいい人なんだろう。

(;^ω^)「信じられませんお……先生。人を忘れるならまだしも、人から忘れられる、なんて」

J(;'ー`)し「わたしも未だにびっくりしてるんですが……この子はホントに私の息子なんですか……?」

('A`)「……」
52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 17:08:16.60 ID:ceFXcdGY0
('A`)「ではまずこの病気について説明しましょうか……といっても、この病気は未だ医学と呼んでいいのかすらわからないものです」

('A`)「今から話すのは諸説ですから。話半分に聞いてください」

つまり実際はわからないという事なのだろうか。
不安しかないが、今は藁にもすがる思いだ。
とりあえずこの現状をなんとかしなくてはならない。

('A`)「内藤さん、あなたは蟻を識別出来ますか?」

(;^ω^)「……あり?」

('A`)「はい。蟻です。例えば列をなし歩く蟻の一匹一匹に名を付けたとして、あなたは翌日もその一匹一匹を識別し名を呼べますか?」

(;^ω^)「いえ……それは」

そんな事、出来るわけ……

('A`)「でしょう。この稀有な病気の本質は、そこにあります」

ここからの話は少々概念論が混じる、との事だ。
67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 17:42:04.96 ID:ceFXcdGY0
('A`)「実は私達人間が人をどうやって他人と識別しているかという事は、未だにわかってないんですよ」

(;^ω^)「?」

('A`)「先ほどの蟻で言えば、あなたは意識しないから。どうでもいいから認識出来ない。例えば、あなたがあなたである為に必要な因子を、我々はどうでもいいと認識している」

('A`)「あなたが意識しないどうでもいい部分が、どうでもよくないレベルで変動してしまう」

('A`)「ここで例えばあなたをあなたたらしめてる何かをAとしましょうか」

('A`)「この目に見えない何かがBに代わってしまい、途端に認識できなくなる……」

('A`)「つまりは、あなたがどんな個性的な形をしていようが、忘れるというよりは少しずつ別の存在になっている……と」

('A`)「それがリセット病の諸説の一つですね」

(;^ω^)「なんだお、それ……」

J(;'ー`)し

('A`)「さて」

('A`)「このリセット病の怖い部分はここからなんですが」
74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 17:49:59.47 ID:ceFXcdGY0
('A`)「あなたの存在はリセットされてしまったのですが」

(;^ω^)

('A`)「これは、今回だけではありません」

(;^ω^)「……え?」

('A`)「……この病気のリセットは……発症している限り、定期的に起こるんです」

(;^ω^)「は……?」

('A`)「前例があると言いましたが、その前例で言えば……その人間は、1年半に一度、再び忘れられてしまいました」

('A`)「恐らく1年半に一度、先ほどの存在因子AがBに……BがCに……と代わっていったんでしょうね」

(;^ω^)「……つまり」

('A`)「はい」

('A`)「周期こそわかりませんが、リセット病がリセット病と呼ばれる理由はそこにあります」

(;^ω^)「……はぁ」

('A`)「もちろん周期が無い場合もあります。だから私は、あなたを個人的に保護したい」

(;^ω^)「……」

研究対象として、か。
78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 17:54:44.39 ID:ceFXcdGY0
(;^ω^)「……いや」

('A`)「悩むのもわかります。親御さんだって心配でしょうし」

J(;'ー`)し「えっ、あ……」

心此処にあらずと言う風に、母はうまい反応が出来ないようだった。

('A`)「わかりますよ。しかし私はそちらの方がいいと思いますね……」

('A`)「言わば内藤さんは、今や社会との円環を断たれている状態。このまままた社会へ戻るとなれば、厳しいものも……」

(;^ω^)「はぁ」

('A`)「……ちょっと書類を取ってきますね」

医者は、そのまま奥に引っ込んでいった。
81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 18:00:49.67 ID:ceFXcdGY0
(;^ω^)「……」

しかし、びっくりした。
リセット病。
全てが0になるという事。

僕はこれからどうして生きていけばいいのだろう。

友達も、地位も、これまで積み上げてきたあらゆるモノが一瞬で崩れてしまったのだ。

それに……母に謝る機会も。
そう言えばカーチャンには、どんな風になってるんだろう。
話によれば、僕に冠する記憶は完全に抹消された状態らしいが。

( ^ω^)「なぁ、カーチャン……僕が息子って、未だに信じられないかお?」

J(;'ー`)し「……」

( ^ω^)

J(;'ー`)し「……れ……」

(;^ω^)「ん?」
84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 18:02:48.27 ID:ceFXcdGY0

J(;'ー`)し「あなた……誰ですか……?」



(;^ω^)

(;゚ω゚)「え?」


('A`)「いやぁ、よっこいせっと……こんにちわ、内藤さん」


('A`)「はじめまして。今日は、なんの御用ですかな?」

(;゚ω゚)
87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 18:03:47.12 ID:ceFXcdGY0





わかった事が一つ。

僕が僕という存在でいられるのは、約一時間。







100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 18:14:43.89 ID:ceFXcdGY0
【4月22日】


誰も僕を、覚えてくれない。


存在を残そうと紙に書いた。
どういうわけか僕自体の存在を忘れていた。

家に帰れば母が僕の私物を、まるごと捨てていた。
なんだこれ、気持ち悪い、と。
誰だよ内藤ホライゾンって、と。



僕は、内藤ホライゾンのはずなのに。
103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 18:22:24.94 ID:ceFXcdGY0
【4月23日】



もう何度警察に行っただろう。

しかし1時間で忘れられるので、取り調べの最中に平然と出ていける。




誰か、僕を思い出してくれ。




105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 18:23:52.17 ID:ceFXcdGY0
【4月24日】

吹っ切れた。



こうなった以上、僕はもうこの世界に期待などしていない。



とりあえず自分の症状を確かめる為にも、コンビニに行ってみた。

( ^ω^)

( ∵)「……いらっしゃーせー」

店員は、僕の事を気にも止めていない。
それでは少しつまらないので、僕は並べられたおにぎりを手に取り、上に掲げてみた。

( ∵)「……?」

ははは、見てる見てる。

そして僕はそのおにぎりを、平然とポケットに入れて持ち帰る事にした。

(;∵)「!? は!?おい君!」

そこからは、ダッシュ。

間抜け面で僕を追いかけようとする店員が、やけに可笑しく見えた。
109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 18:26:28.05 ID:ceFXcdGY0

―――1時間後。


( ∵)「……っしゃーせー」

( ^ω^)「wwwwww」

(;∵)「?」

こいつは傑作だ。
なんだよ。さっきの間抜け面はどこいったんだよ。

必死に走ってたじゃねえか。
どうなってんだよ。

(;^ω^)(……くくくくwww)

もう一回やるか。
112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 18:30:20.95 ID:ceFXcdGY0

( ^ω^)「……」

僕はさっきまでこれを嘆いていたけど、これはこれで素晴らしい世界ではないか。
なんでも許される世界。
僕はいまそれを体言しているんだ。


( ^ω^)

だからこうやって普通に商品を取っても、手首捕まれたりしない――――

川 ゚ -゚)「……おい」ガシッ


(;^ω^)「えっ?」

川 ゚ -゚)「きみ、さっきも商品取ってただろ?」
119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 18:33:14.93 ID:ceFXcdGY0
【4月25日】


僕はこの世に一人なんかじゃなかった。



僕が良い事をしても、悪い事をしても、みんなが覚えてくれるのは1時間だけ。
ならばせめて、好きにさせてもらおう。


……そう思っていたのに。



僕は、一人じゃない
125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 18:39:37.12 ID:ceFXcdGY0
【4月26日】


川 ゚ -゚)「おはよう、ブーン」

( ^ω^)「おはよう、クー」

川 ゚ -゚)「今日も元気そうで何よりだな」


僕を覚えてくれる人間がいた。
名前は明かしてくれないが、代わりにクーという渾名を教えてくれた。
僕もそれに、ブーンという渾名を教えて返した。

内藤ホライゾンはもういい。誰にも通じない本名なんか、もういらない。


( ^ω^)「君は今日は何をしにいくんだお?」

川 ゚ -゚)「ん、私か。私は今からカフェにでもいくつもりだ」

( ^ω^)「……その服で?」

川 ゚ -゚)「制服はさすがにまずいか?」

( ^ω^)「警察に補導されるお」

彼女は体が弱いらしく、なかなか学校にもいけないとの事。
129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 18:45:48.88 ID:ceFXcdGY0
( ^ω^)「にしても、なんで君は僕を覚えてられるんだお?」

川 ゚ -゚)「知るか」

( ^ω^)「ですよねー」

彼女と居たら、誰かに忘れ去られてしまう一時間がとても短く感じる。
まっすぐにこちらを見てくれる人は久しぶりなものだから、僕は舞い上がっていたのだろう。

人と繋がっていられる事が、こんなにも幸せだとは思わなかった。

川 ゚ -゚)「こういうのはどうだろう」

川 ゚ -゚)「私は病院通いで、大量に人を見る機会が少ないから」

川 ゚ -゚)「君のいう『蟻の識別』のように、人を認識する必要がなかった、とか」

( ^ω^)「おお……君にとって、蟻は2、3匹しかいないってこと?」

川 ゚ -゚)「かもな」
134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 18:51:27.51 ID:ceFXcdGY0
川 ゚ -゚)「でも私はうらやましいぞ、そっちの世界が」

( ^ω^)「……?」

川 ゚ -゚)「繋がりが一つもない世界」

川 ゚ -゚)「悪いものに追われない世界」

( ^ω^)「良いものもない世界、だお」

川 ゚ -゚)

( ^ω^)「僕はこうなってようやくわかったお。生きていく事は、人と繋がっていく事なんだって」

川 ゚ -゚)「人と繋がらなくたって、生きていけるでしょう。今の、君みたいに」

( ^ω^)「生きる事は出来るお。でもね……それは生きてるとは言わないんだお?」

川 ゚ -゚)「?」

( ^ω^)「人間は人と人の間に居るから人間って書くんだお。こうして皆で持ちつ持たれつ、関係しあっていく事が生きる事なんだお」

川 ゚ -゚)

川 ゚ -゚)「そうか」
135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 18:53:59.44 ID:ceFXcdGY0
川 ゚ -゚)「ブーンは生きてて楽しい?」

( ^ω^)「……楽しいお」

( ^ω^)「君がいるから。僕は人間でいられる気がするお」

川 ゚ -゚)「やだ、ロリコンみたいw」

( ^ω^)「ははww」

川 ゚ -゚)「私も、もっと頑張って生きてみようかな」

( ^ω^)「そうした方がいいお。君は、まだまだ未来があるんだから」

川 ゚ー゚)「……ふふ」
137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 18:54:54.46 ID:ceFXcdGY0




【4月29日】


あれから3日後。





138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 18:55:39.07 ID:ceFXcdGY0








クーは、僕のいない世界に旅立った。






149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 18:59:52.97 ID:ceFXcdGY0

学校の屋上からの、飛び降り自殺だった。

それと同時に、彼女が僕を認識出来た理由がわかった気がした。



彼女が病弱だなんて、嘘だったんだ。
彼女はただのいじめられっこで不登校少女なだけだった。


周りが全て加害者に見えていた彼女にとって、世界の全ての人間は等しく悪。

彼女にとっては、世界中がどうでもいい蟻だったんだろう。

(  ω )


僕はまた、孤独になった。
156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 19:05:28.00 ID:ceFXcdGY0

僕のヘタな助言が彼女を学校に向かわせ、勇気を出させた。
反発に合い、絶望させた。

彼女は一人、人の円環に戻ろうとして吐き出された。

たぶん、そんなとこだろう。



とりあえず僕は一つだけ知る事が出来た。

周りが全て蟻に見える人間……つまり、社会不適合者なら僕が見える人らしい。

さて、ここで問題が生まれる。
158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 19:07:47.10 ID:ceFXcdGY0

僕はそんなやつらとつるんでまで、繋がりを感じていたいのか?


繋がりはどこにある?

僕が生きる意味はどこにある?


クー。
なぜ君は、僕を頼ってくれなかったんだ?

僕と君との繋がりは……?


159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 19:08:26.83 ID:ceFXcdGY0

【4月※%●】


クー。

クー。
クー。


クー。






クー。
161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 19:11:10.90 ID:ceFXcdGY0
【※●※%※】


さようなら、誰も覚えてくれない世界。
僕は、僕がいない世界を見に行きます。

もし僕が肉の塊になったならば、この世からいなくなれば、誰か僕を覚えてくれる人はいるんだろうか?

それならば嬉しいな。
僕はまた、人の輪に戻るんだ。

もしかしてクーも、同じ気持ちだったのかな?
それならば納得だ。
向こうでは本名を教えてくれるかな?
また一緒にお喋りしてくれると嬉しいな。



では、この日記を見た皆様。
ここまで読んでくれてありがとう。








1時間後にまた会いま
170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 19:15:10.16 ID:ceFXcdGY0

リセット病のようです ―完―



ξ;゚听)ξ「……ん?」

ξ;゚听)ξ「なによこのオチ……まぁ、面白かったからいいけど」


白<PLLL……

ξ゚听)ξ「あ、電話だ」

ξ゚听)ξ白「あ、もしもしヒート?うん、いま丁度読んでて……うん。面白かったわよ、意外と」


ξ゚听)ξ「ただちょっと悲しいよね……忘れられる、なんて」

ξ゚听)ξ「うん、うん、じゃあね……」ピッ

ξ゚听)ξ


ξ゚听)ξ「……」
174 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/18(水) 19:16:33.52 ID:ceFXcdGY0

ξ゚听)ξ「……気のせいかな」



「私、この本昨日買った気がするんだけど……」





リセット病のようです…



リセット病のようです…( ^ω^)←こいつ誰だっけ? ――完――

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