657 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/21(木) 18:39:49 ID:Ek63zZAo0
 _、_
( ,_ノ` )y━・~ クルウ。もしも俺が魔王軍を裏切ったらどうする?

川;゚ 々゚) え!?渋澤は暁の側につくのですか!
 _、_
( ,_ノ` )y━・~ もしもの話だ

川 ゚ 々゚) そしたら、そしたら、クルウは渋澤についていくです
 _、_
( ,_ノ` )y━・~ じゃあもしも俺が死んだら?

川 ゚ 々゚) クルウも死ぬです!クルウはいつでもダンナさんの傍にいるですよ

658 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/21(木) 18:45:34 ID:Ek63zZAo0

 _、_
( ,_ノ` )y━・~ ならお前はお留守番だな

川 ゚ 々゚) え?


 刀の鞘でクルウの鳩尾を突いた。

 一瞬だけ痛みに顔を歪ませたクルウだったが、すぐに気を失い、
 その場に崩れ落ちそうになったところを渋澤に抱えられた。

 _、_
( ,_ノ` )y━・~ 寝顔も可愛いぜ


 妖刀「撫子」を携え、一度だけクルウの方を振り返った後、渋澤は一人で部屋から出て行った。

 センチメンタルではいられない、修羅の繰り出す戦場へ向けて。


最終話その四「鮮血邪神の名の下に」
660 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/21(木) 18:51:07 ID:Ek63zZAo0



 セクタ13は元々湖だった場所だが、今は干上がっており、泥のしかれた
 不安定な足下と、毒虫、毒草の住処となっている。



(´・ω・`) ここらでやろうじゃないか


<_プー゚)フ 逃げずに向かってくるとはな。褒めてやるぜ



 二人は数十メートルの間隔を保って対峙していた。

 殺気を放っているのはエクストの方だけで、ショボーンは感情のわからない無表情のまま
 彼を見返していた。

661 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/21(木) 18:54:54 ID:Ek63zZAo0

<_プー゚)フ 言っておくが、まさか勝てるなんて思ってはいないだろう?

(´・ω・`) どうしてそう思うのか、根拠が聞きたいね



 エクストは魔力を込めた塊を無造作に放り投げた。

 地面に接した瞬間、爆発と爆風が巻き起こり、泥の塊が宙に散る。



<_プー゚)フ 俺の方が強いからだ。お前は魔力も高くなければ格闘能力も低い
         知ってるぜ。7番隊がいつもどういう戦いをしているのか
         ゲリラか他の隊の補助役、それと逃走経路の確保だ
         真っ向から敵と戦った経験なんてねえだろ?

(´・ω・`) よく調べているじゃないか

662 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/21(木) 18:58:11 ID:Ek63zZAo0

<_プー゚)フ お前を倒したあとは、渋澤とクックルをやらなきゃいけねえんだ
         これはただの前座。つーか準備運動みたいなもんだ

(´・ω・`) 僕も同じだ。敵側の戦力分析がいまいち進んでいない
      特にアベという者についての情報が全く不明と来ている
      さっさとこれを終わらせて、情報収集を始めたいんだよ


<_プー゚)フ 理解できていないのか?もっとわかりやすく言ってやろう
         お前はここで死ぬ

(´・ω・`) いいものを見せてあげよう

<_プー゚)フ あ?

663 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/21(木) 19:02:34 ID:Ek63zZAo0


 ショボーンは短い呪文を唱えた後、手をかざして指を鳴らした。


 エクストから目を外す。
 彼の視線の先には、カタツムリによく似ているマイマイ草が一本生えていた。

 足下に落ちていた石を拾い、マイマイ草に向かって一直線に放り投げる。



<_;プー゚)フ っ



 エクストが起こしたものと同程度の爆発が起こり、再び泥を散らした。

 マイマイ草の周辺は地面が大きくえぐれてしまっている。
666 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/21(木) 19:06:52 ID:Ek63zZAo0

<_プー゚)フ (設置型の魔法陣、いつの間に仕掛けてやがったんだ!)



 エクストは足下を見渡し目をこらした。
 魔法陣の痕は見つからなかったが、うかつに動ける状況ではなくなった。



(´・ω・`) 僕は前座なんだろ?さっさと終わらせようよ


 動けないエクストに、ショボーンはジグザクの軌跡を描き近づいていく。



<__;プー゚)フ (一直線に近づかないのは、設置した魔法陣に自分自身が引っかからないようにだ。
          下手をすれば自爆してしまうような捨て身の作戦か。クソが!)

667 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/21(木) 19:10:52 ID:Ek63zZAo0

<_プー゚)フ (奴はこのエリアに仕掛けた魔法陣の場所を把握しているのか。
         でなければ奴自身おいそれと動くことは出来なくなる)

(´・ω・`) どうした。攻撃を開始するよ

<_プー゚)フ (待て。挑発に乗るな。俺は狡猾な男なんだ)


 ふとショボーンの後ろを見ると、泥の上に足跡がくっきりとついていた。

 自分の後ろにも足跡が続いている。
 セクタ13の地面は乾いていない泥がそこら中にあるので、動けばその分だけ足跡がつく。



 ショボーンの間合いに入った。気砲による攻撃がエクストを襲う。

668 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/21(木) 19:14:22 ID:Ek63zZAo0


 エクストは避けることはせずに防御に徹した。


<_プー゚)フ (ここまで誘い込まれたのは俺のミスだ。
          だがこの場所を選んだのはテメーのミスだぜ)


 ショボーンとの距離はほんの十数メートルほどだ。


(´・ω・`) む…


 エクストは爆風の余波を受ける覚悟で、自分とショボーンの中間に気砲を放った。

 ショボーンは後ろに跳んで逃げたが、エクストはその場から動かず、余波をその身に受けた。

669 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/21(木) 19:18:47 ID:Ek63zZAo0


 二人の間で、地面が大きくえぐれた。



<メプー゚)フ 魔法陣はそれ以上の力で吹っ飛ばせば消える。残念だったな


(´・ω・`) 安心しなよ。他にいくらでもあるから



 エクストはショボーンの足下を見ていた。
 やはり彼の周りには彼の足跡がついている。

670 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/21(木) 19:22:31 ID:Ek63zZAo0


<メプー゚)フ それと、お前の通った跡は絶対に安全…なんだよな!



 エクストはショボーンの通った軌跡を通り、一気に彼との距離を詰めた。



 彼らの体が初めて交差し、魔力の火花が散る。



(´・ω・`) そうか、足跡か



 攻撃の反動で二人は同時に後ろに飛んだ。

 エクストは無傷のまま、先ほど自分が作った安全地帯(えぐれた地面)に降り立つ。
 ショボーンは足下を気にしながら、左右にステップを取って攻撃の反動を殺した。

671 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/21(木) 19:28:15 ID:Ek63zZAo0

<メプー゚)フ また新しい「足跡」を増やしてくれたな。助かるぜ
        俺が動けるエリアを勝手に増やしてくれたんだからな


 ショボーンの防御は間に合っていたが、ダメージは体に大きく残っていた。

 魔力も身体能力も負けているショボーンでは、エクストの攻撃を防ぎきることは不可能だった。


(´・ω・`) それじゃあ、なるべく君に貢献しないように戦わないとね


<メプー゚)フ (涼しい顔してやがるが、戦いの場にセクタ13を選んだのは致命的なミスだ。
         お前のトラップはこれで半分無効化された。戦いが進めば足跡も増える。
         いずれお前の逃げ場所は無くなり、俺の攻撃はスムーズに通るようになる。
         そうなればお前は、終わりだ)

672 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/21(木) 19:32:58 ID:Ek63zZAo0


 完全に優勢を取ったエクストだったが、何か頭に引っかかる感じがあった。

 腑に落ちない点、理解しがたい点、違和感。


 それが何かわからないまま、戦いは静かに進んでいった。



 威力の高い気砲を使えば魔法陣をかき消せるが、これ以降エクストはそれをしなかった。


 理由は二つ、魔力のストックに限りがあるということと、陣地を増やす為だけの気砲は
 相手に無防備な一瞬を晒すということだからだ。

673 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/21(木) 19:37:07 ID:Ek63zZAo0


<メプー゚)フ (俺の作った安全地帯に奴は入って来られない。
         まともに戦えば奴に勝機は無いからだ。安全地帯の外からの攻撃なら
         防御さえしていれば致命傷にはならない。俺は刺し返しのタイミングで
         時々攻撃していればいいだけ。俺の攻撃が直撃すれば奴程度なら一撃。
         あわよくば俺の攻撃によって奴が魔法陣に引っかかる可能性もある)


 エクストは安全地帯から決して出ようとはしなかった。



(´・ω・`) なるほど。狡猾だね。いや、それは臆病というべきなのかな


<メプー゚)フ (何とでも言え!そんな安い挑発に乗る訳がねえだろ!)
675 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/21(木) 19:41:14 ID:Ek63zZAo0


 ショボーンの気砲がエクストに向かって放たれる。

 安全地帯の範囲でそれを避けると、お返しとばかりにエクストは気砲を放った。


(;´・ω・) ぐっ



 エクストは元々格闘タイプで、気砲は苦手な部類に入る攻撃方法だが
 魔力差のあるショボーンでは当たれば致命傷。

 慌てて気砲を避けた彼は、つんのめって地面を手で掴んだ。



 その光景にエクストはある疑惑を持った。

676 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/21(木) 19:44:44 ID:Ek63zZAo0

<メプ−゚)フ (妙だ)


(´・ω・`)


<メプ−゚)フ (奴の動きはおかしい)


 移動するときは基本的に足下を見ているショボーンだが、
 とっさに攻撃を避ける際は、素早く受け身を取ることだけに終始している。


 ショボーンは攻撃を避けるとき、足下を見ていないときがある。


 それは何故か?

677 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/21(木) 19:50:56 ID:Ek63zZAo0

(´・ω・`) いい加減そこから出てきたらどうだい?
      そこまでいくと狡猾というよりただのビビリだよ


 相変わらず挑発は続いているが、無視してエクストは考え続けた。



<メプ−゚)フ (そもそも前提がおかしいだろ。どうして奴は魔法陣があることを俺に教えた?
         どうせ設置したのなら教えずに戦った方が有利に決まっている。
         魔法陣の発動に詠唱が必要だから、どうせばれると思ってわざと教えた?
         これならつじつまは合うが、少し違う気がする)

(´・ω・`) 攻撃してこないのかい?僕は遠慮無く行くよ

678 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/21(木) 19:54:00 ID:Ek63zZAo0


 ショボーンの気砲の間合いに入り、攻撃が飛んできたが、エクストは冷静に防御に徹した。
 反撃は入れなかった。


<メプ−゚)フ (大体、魔法陣を設置して、その地雷原の中で戦おうってのが正気の沙汰じゃない。
         いや、待て。待てよ。そうだよ。正気の沙汰じゃないんだ)



<メプ−゚)フ (ステルス魔法陣は設置した者でさえ感知は出来ない!
         そしておそらく、こいつが設置したのはステルス属性のもの!)

679 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/21(木) 19:55:51 ID:Ek63zZAo0


 ショボーンはエクストを中心に、ゆっくりと円を描くように移動していた。



<メプー゚)フ やられたよ



 不敵な笑みを浮かべたエクストを見て、ショボーンは歩を止めた。



<メプー゚)フ 最初から設置して無かったんだろ?魔法陣なんてよ

680 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/21(木) 20:00:34 ID:Ek63zZAo0

(´・ω・`) 何を言っているんだい?

<メプー゚)フ 今更しらばっくれんな。確かに地雷原にして、その上で戦えば
         実力差のある奴が相手でもある程度は戦える
         だがステルス魔法陣でなければ、魔法陣につけられた目印を見つけられたり
         敵に探知能力があった場合、魔法陣の脅威は無くなる

(´・ω・`) …

<メプー゚)フ ステルス魔法陣を設置する場合、複数の魔法陣を用意したとすると、今度は
        自分が自爆する可能性が高くなる。一つや二つ設置したところで
        敵が魔法陣にかかってくれるかどうかは運頼みだ。だからお前は「魔法陣を設置したふり」を
        することによって、自分に一切のリスクをかけることなく、俺の行動を制限しようとした


<メプー゚)フ だが、見破ったぜ

681 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/21(木) 20:05:51 ID:Ek63zZAo0

<メプー゚)フ おっと、そうだ語弊があるな。お前は一つだけ魔法陣を設置しておいたんだ
        わざと魔法陣の力を見せておくことによって、ここが地雷原だと敵に錯覚させるためにな


 エクストは安全地帯から堂々と足を踏み出した。

 彼の読み通り、魔法陣が発動する気配は全く無かった。


<メプー゚)フ 中々上手い演技だったぜ。だがとっさの行動のとき、お前が魔法陣を意識していない
        動きになっていたのを、俺が見つけられないとでも思っていたのかよ
        こちとら、何度も修羅場をくぐってきたんだ。戦闘の経験値が違うんだよ


<メプー゚)フ ああ、今思えば、足跡がつくような場所を選んだのも、魔法陣が設置されていないことを
         隠すための目くらましか。わざと敵につけいる隙を与えて、本当の狙いに気がつきにくく
         した訳ね。なるほど、狡猾だ

682 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/21(木) 20:09:29 ID:Ek63zZAo0


 エクストとショボーンの間には、もう十メートル程度の距離しかない。


 一足飛びで攻撃を仕掛けられる間合いだった。





<メプー゚)フ 実力の差を作戦で埋めようとしたのは褒めたいが
         頭の程度が足りなかったようだな!知性も戦闘能力も何もかも俺が上だ!

(´・ω・`) 狡猾という言葉は、君には似合わない
      そうだな、君は今日から「愚か者」と名乗るがいい

<メプー゚)フ ほざけ!

683 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/21(木) 20:14:46 ID:Ek63zZAo0


 ショボーンに飛び込もうとしたとき、エクストの眼下でマイマイ草が揺れた。



<メプー゚)フ 死っ―――――――



 突然、目の前が赤く光り、視界の全てを飲み込んだ。

 エクストは自分が爆発に飲み込まれたことを理解していないまま、意識を闇の中へ落としていった。


 ショボーンは爆発の際後ろに飛び、余波を受けないように小さな防御結界を張った。

 爆風が収まると、えぐれた地面の上に横たわるエクストが、爆発によって舞っている
 粉塵の中から現れた。

684 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/21(木) 20:18:13 ID:Ek63zZAo0



(´・ω・`) ふん、大した「狡猾」だったよ




 ショボーンは二つのトラップを仕掛けた。


 一つは魔法陣によって辺りが地雷原になっているように見せかけるもの。

 もう一つは、一つ目のトラップが見抜かれたとき、一直線に攻撃してくるだろうエクストに
 反応するように仕掛けた「本物の」魔法陣である。


 魔法陣なんてものは、通常は敵を足止めする程度のもので、戦闘で使えるような代物ではない。
 理由はエクストが思考した通りである。
686 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/21(木) 20:23:23 ID:Ek63zZAo0

 また威力の大きな魔法陣は、反応してから発動するまでの時間にラグがある。

 意識が他にいってなければ実力者であれば防御が間に合ってしまうのだ。


 例えば勝ちを確信し、目の前の相手に向かって猪突猛進に攻撃を仕掛けに行った場合などは、
 魔法陣に反応し防御を行うというのは至難の業になる。




(´・ω・`) 確かに僕は君より弱いよ
      でもリングの上で正々堂々と戦っている訳じゃあないんだ


<メ###- )フ

687 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/21(木) 20:26:25 ID:Ek63zZAo0


 たった二つの魔法陣と作戦により、この戦いはショボーンに軍配が上がった。



(´・ω・`) ステルス魔法陣の場合は目印が必要になる。見抜かれたらまずいかなと
      思っていたが、「愚か者」の君が相手では杞憂だったな


<メ###- )フ う…


(´・ω・`) 安心しなよ。威力は下げてある。僕らのボスに感謝するんだな
      おそらくあの方は誰も死なないことを望んでいるようなんでね

688 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/21(木) 20:30:43 ID:Ek63zZAo0


<メ###- )フ く………そ………が………




(´・ω・`) それとマイマイ草は乾燥地帯にしか生えないんだ
      君に必要だったのは魔力や腕力じゃなくて、学だったようだね



 ショボーンの言葉を聞き終えると、エクストは苦々しく口を歪めてから、再び意識を失った。

 彼が気絶したのがわかると、興味なさそうに一瞥した後、ショボーンは踵を返して帰っていった。



 to be continued…

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