5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 21:29:37.40 ID:QOS+TnA/0
人物紹介

ξ゚听)ξ ツン。相当常識に疎い。脳内ツッコミ症候群。結構な緊張しい。22歳。一応主人公。

( ^ω^) ブーン。ブーンと呼ばれて早八年。意外とおっさん28歳。
  _
( ゚∀゚) ジョルジュ。旧式。モーリスよりフィリップ。

川 ゚ -゚) クー。世界の誇るスナオモデル一号機。皮膚が生きてるので毎日風呂に入りたい。

爪'ー`)y‐ フォックス。「スモッグ」の異名を持つ。適当な人。昔はしっかり者の好青年だった。42歳。

ハハ ロ -ロ)ハ  ハロー。黒縁眼鏡の女の子。ツンも羨む巨乳。17歳。義務教育は受けていない。

▼・ェ・▼ ビーグル。キメラロボット。天才医師ハインリッヒ高岡の傑作。戦闘力>情報処理能力。

 彡⌒ミ
( ´_ゝ`) 流石 父者。「マニュアル・ファンタジスタ」の異名を持つ。トーキョー本部所長。20代からハゲ。

('A`) ドクオ。世界を股に駆ける風来坊。もちろんブサメン。いや、シケメン。ポイズン・ヴォルト()

o川*゚ー゚)o キュート。スナオモデル最新機。バリアを作るのもなかなか疲れる。体系年齢は12歳。

パワードスーツ
(十) 原子王。ツンのパワードスーツ。赤いけど彗星ではない。

|::━◎┥ 歯車王。ブーンのパワードスーツ。色は黒。

/◎ ) =| ) 蒸気王。ドクオのパワードスーツ。ロマン仕様。キュート曰く、ロマンは人に迷惑をかけること。

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 21:31:44.25 ID:QOS+TnA/0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

【一刻前 某所】

(#・∀・)「あ?」

( ><)

(#・∀・)「近くにいておきながら逃げてしまいました?」

( ><)「はい」


 ΞΞ#・∀・)つ)><)バキィ!!


( ´∀`)「……おい、モララー」

(#)><)「……うぅ」

(#・∀・)「てめぇ、ふざけるんじゃねえ!」

(#・∀・)「あいつが逃げた事でどれだけの情報が漏れると思ってんだ!!」

(#)><)

(#・∀・)「何とか言えよ……」
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 21:34:22.06 ID:QOS+TnA/0
(#・∀・)「何とか言えよおおおおおお!!」


 ΞΞ#・∀・)つ)><)バキィ!!


( ´∀`)「……もうこの位にするモナ」

(#;;)><)「ガ、ガハッ……」

(#・∀・)

( ・∀・)「ちっ……。またデミタスさんのお小言だ」

( ´∀`)「しょうがないモナ。結局逃がしてしまったのは僕たち皆の責任だし」

( ・∀・)「……で、どうするんだよ」

( ´∀`)「……僕が行くモナ。『加速王』のテストと『ブーメランワープ』のテストも兼ねてね」

( ・∀・)「まあ、幸いあっちには横堀もいるからな……」

( ・∀・)

( ・∀・)「おいビロード」

(#;;)><)「はい」


10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 21:36:09.49 ID:QOS+TnA/0
( ・∀・)「ちんぽっぽみたいになりたくなかったらな、しっかりやれ」

(#;;)><)「……!!」

( ・∀・)「返事は?」

(#;;)><)「……はい」

( ´∀`)「……僕は早速『加速王』の用意をするモナ。モララーも手伝うモナ」

( ・∀・)「ああ。わかった」

ツカツカ……

(#;;)><)

(#;;)><)

('、`*川「行ったみたいね」

(#;;)><)そ

('、`*川「大丈夫?」

(#;;)><)

('、`*川「そんなわけ、ないか」


11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 21:38:41.79 ID:QOS+TnA/0
(#;;)><)

('、`*川「わざと逃がしたんでしょ?」

(#;;)><)

('、`*川「いいんだよ、隠さなくて。私にはわかるから」

(#;;)><)

(#;;)><)「……責めないんですか?」

('、`*川「うん」

(#;;)><)「……なんで?」

('、`*川「責めたって何にもならないよ」

(#;;)><)「……僕はこの計画に迷いがあるから逃がしたんです。迷いが無かったらあの場で殺してました」

('、`*川「……君に迷いがあるだの無いだの、そんなこと私は知らない」

('、`*川「ただ、少しでも平和な世界に縋り付きたいからここに残ってる」

('、`*川「たとえその方法が正しいか正しくないかわからなくても」

('、`*川「違う?」

(#;;)><)
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 21:42:39.97 ID:QOS+TnA/0
('、`*川「なんとなく、わかるんだ」

('、`*川「私も少なからずこういう気持ちあるから」

(#;;)><)

('、`*川「……結局祈りながら生きてるんだよね」

('、`*川「私の話なんだけどね」

(#;;)><)

('、`*川「見知らずの平和に、今やろうとしている事が正しくあって欲しいと願いを込めて」

('、`*川「祈りながら生きているの」

('、`*川「……君はどうかな?」

(#;;)><)「……わかんないです」

('、`*川「そっか……」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 21:44:13.11 ID:QOS+TnA/0










     ξ゚听)ξパワードスーツを身に着けて、のようです

        第六話「情報提供者を守れ! 後編」












17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 21:47:00.16 ID:QOS+TnA/0
(十)「ふぅ……」

なんとか回避成功。
ブーンが変な事を言ったせいで行動が遅れたけど。


‖ΞΞФΞ‖ ゴォォ・・・

それにしても、この黄色いパワードスーツ。
私に向かって何の工夫も無しに突っ込んできた。
要するに、体当たり。
その黄色いパワードスーツはジェットからもうもうと煙を上げて私の背後、遥か遠くで様子を見ている。

……驚いたのは、馬鹿みたいに大きなジェットを身に着けている割に、そこまで早くない。
量産型パワードスーツのフルブーストに追いつくか、追いつかないか……。たかだかこの程度の速さ。

あんな的になるようなものを積んでおいて性能を発揮するでもない。
……もしかして、完全じゃない?

とにかく、ここで戦闘は出来ない。
あんまり激しくドンパチすれば集落に被害が出る。もう出てるけど。

(十)「ブーン」

|::━◎┥[あ?]

(十)「あいつを集落の外におびき寄せるわよ」

|::━◎┥[普通に俺らが外に向かって走れば追いかけてくるか?]


18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 21:49:34.50 ID:QOS+TnA/0
確かにホイホイついてくるとは言い切れない、かも。

(十)「じゃあ……」

(十)ガシャ

腕部内蔵ビームガン、用意。
右腕から銃口が顔を出す。

(十)「こうやって突っついてやれば追いかけてくるんじゃない?」

右腕を黄色いパワードスーツに対して突き出し、

(十)「それっ!」バフィィィ!

ビーム射出。
甲高い音と共に、閃光が黄色いパワードスーツに向けて走った。

‖ΞΞФΞ‖ ガンッ

そして、閃光が胸部に直撃。
……が、ダメージは見られない。
あれれ?

(十)「……あー」

ビームコート……かしら?
ちなみにビームコートって言うのは、熱線粒子による攻撃を受け付けない特殊コーティング。
強力な粒子だったらダメージはあるけど、こんな内蔵ビームガンじゃダメージは与えられない。

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 21:51:51.97 ID:QOS+TnA/0
|::━◎┥[ははっ! やべぇな]

(十)「笑い事じゃないわよ……」

私の原子王はビーム兵器しか持たないから完全に無力。
かといって歯車王も内蔵武器はビーム兵器のみ。

なんか換装してくればよかったかな……。


‖ΞΞФΞ‖ゴウンゴウン・・・

また黄色いパワードスーツが大きな音を立て始めた。
間違いなく、また体当たりをかまして来る。
うまくこのままおびき寄せる事が出来ればいいけど。

(十)「とりあえず、行くわよブーン」

|::━◎┥[OK。暗くなる前に蹴りつけちまおうぜ]

(十)「そうね……!」ゴウッ!

ジェット始動。

|::━◎┥[惨めに俺のケツでも追いかけるんだなファッキンイエロー!]バフォォォ!!

集落の外に向けて移動開始。
私の前を歯車王が青い尾を引いて出発。その後ろを私が追う。
そして、私の後ろを黄色いパワードスーツが轟音上げて追いかけてくる。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 21:54:16.48 ID:QOS+TnA/0
(十)ゴオオオオオオオオ!

どうやら、うまく誘導が出来てるみたい。
さっきから何故か右手のバズーカを使おうとしないから、ある程度の距離を保てば心配は無い。
このまま行けば集落に被害が出る事は……

ピピッ

通信…?

/◎ ) =| )[あ、赤の勇者よ。非常に聞きづらいんだけど、君たちはどこにいったの?]

この喋りとしゃがれた声は……。

(十)「……ドクオさんですか?」ゴオオオオオオオオ!

/◎ ) =| )[……ポイズン・ヴォルトでいい]

(十)「は、はぁ」ゴオオオオオオオオ!

/◎ ) =| )[それで、君たちは……]

(十)「あそこで戦うのは危険だったので集落の外に誘導中なんですが……」

/◎ ) =| )

/◎ ) =| )[置いてけぼり……だと……?]

まあ、そういうことになるわね。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 21:56:55.48 ID:QOS+TnA/0
(十)「あとから合流できれば合流して……」ゴオオオオオオオオ!

|::━◎┥[……ツン、集落抜けて荒野に入ったぞ]

あっ。喋ってる間に抜けたみたい。
こんな通信してる場合じゃなかった。

/◎ ) =| )[赤の勇者よ、いまd] ブチッ

通信遮断。

(十)「OK。ここでうまく仕留められれば仕留めたいわね」ゴオオオオオオオオ!

目の前に広がるのは夕日に当てられて赤く染まる荒地。
草木の一本も生えていない腐った土地だ。
いつもの事だけど、それだけに隠れる場所が無い。
だから暗くなる前に終わらせてしまわないと……。

|::━◎┥[そうだな。じゃ、停止するぜ]

|::━◎┥バッフウウウウ!!

歯車王が逆噴射を開始。
砂塵を派手に飛ばしてスピードを殺していく。

(十)ゴフゥゥゥ・・・

それと同時に私も逆噴射をかける。
浮力を無くして地に足をつけ、後ろから迫ってくる黄色いパワードスーツを見据えた。


27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 21:59:28.28 ID:QOS+TnA/0
‖ΞΞФΞ‖ゴォォフゥゥゥ・・・

ある程度の距離を取り、相手も逆噴射。
完全に動きが止まった。

(十)「……変なの」

そのまま突っ込んできてもいいのに、この人、凄く正々堂々よね。
あからさまに誘導してきてるのに黙ってホイホイ付いてくるし。
手に持ってるバズーカをぶっ放すでも無いし……。

ピピッ

ん?
また通信?

‖ΞΞФΞ‖[通信失敬モナ]

……聞いた事無い声。
もしかして、黄色いパワードスーツの人?

(十)「…………あなたは?」

‖ΞΞФΞ‖[モナー。ただの戦闘員モナ]

|::━◎┥[なんだ、ファッキンイエローにも名前があったんだな]

この通信はブーンにも届いてるみたい。
一体何の用かしら。
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 22:01:57.76 ID:QOS+TnA/0
‖ΞΞФΞ‖[君たちは僕がこの地に来た理由、わかってるモナ?]

(十)「……ワカッテマスって男の殺害じゃないの?」

‖ΞΞФΞ‖[そうモナ]

……何この人?
こうもあっけらかんと自分の目的を喋る?

|::━◎┥[なのに何で俺たちを追いかけてきたんだよ]

確かにそうね。
単純にワカッテマスを殺すだけならあの場で二機が協力しながら奇襲をかければもっと手っ取り早いはず。

‖ΞΞФΞ‖[あいつを殺すのは横堀だけで十分モナ」

‖ΞΞФΞ‖[それに腕を試したかったんだモナ。この『加速王』とトーキョーの治安部隊のね」

(十)「……あんたの目的、私たちに喋っていいわけ?」

‖ΞΞФΞ‖[その方が良いモナ]

|::━◎┥[は?]

‖ΞΞФΞ‖[僕の目的を知ってくれてた方が、心置きなく戦えるモナ]

‖ΞΞФΞ‖[何も知らないまま戦うっていうのは嫌モナよね?]

言ってる事わからなくも無いけど……。
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 22:04:26.17 ID:QOS+TnA/0
‖ΞΞФΞ‖[というわけで、悪いけどこのモナーと一緒に踊って貰うモナ]

‖ΞΞФΞ‖ガチャ

加速王が右手のバズーカを私に向けた。
夕日に照らされたバズーカの銃口が赤い輝きを放っている。

(十)「……私たちにお相手が務まるかしらね」

こうやって強がったこと言っても、心臓が張り裂けそうなほど緊張している。
……パワードスーツに手汗を定期的に取る機能が欲しいわね。

|::━◎┥[本当に貴殿のお相手がこんなおっさんと乳臭いガキ娘で宜しいですかな?]

‖ΞΞФΞ‖[僕みたいな狸顔にはお似合いの相手だモナ]

(十)「へぇ。是非とも面を拝みたいわ」

|::━◎┥[まるで仮面舞踏会だ。洒落てるねえ]

‖ΞΞФΞ‖[じゃあ、出来上がった頃に顔見せといきましょう……]

‖ΞΞФΞ‖[モナ!!] ガオゥゥウウン!!

加速王のバズーカが火を噴いた。
それに反応し、左に転がり回避。


33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 22:06:35.35 ID:QOS+TnA/0
(十)「そういうのは出来上がってからじゃ……」フィィィイ!

瞬時に体制を整え、立て膝の状態からレーザーブレード展開。

(十)「遅いのよ!」ゴオオオ!!

ジェット稼動。
一気に距離を詰める。

ビームガンが駄目でも接近武器なら多少のダメージがあるはずだ。

(十)「だぁぁああ!!」フィィィイイイ!!

敵機目前。
相手の肩から胸にかけて右手を振り下ろす。

‖ΞΞФΞ‖[真正面からなんて男らしいモナね……!] フィィイイ!

が、相手の左手から伸びたレーザーブレードに押さえられた。
お互いの熱線がぶつかり合い甲高い音を鳴らしてスパークする。

(十)「……駄目かっ」バフォォ!!

一旦、逆噴射。
相手に砂をかけ、距離を取る。

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 22:10:18.09 ID:QOS+TnA/0
|::━◎┥[女に気を取られてんじゃあ、二流だな。ファッキンイエロー] ゴォォオオ!

相手に砂がかかった直後。
歯車王が敵機の背後に青い尾を引きながら滑り込む形で回り込んだ。
その拳はしっかりと自分の腰に添えられている。

‖ΞΞФΞ‖[……後ろか?!]

敵機は瞬時に反転。

右手のバズーカを放り投げ、両手を胸の前にクロス。
即席のガード。

|::━◎┥[ボクシングじゃねーんだ。こんなんで守れるかよ……!] ブンッ

‖ΞΞФΞ‖[……ッ!!] ガン!

腰から放たれた拳が即席ガードに直撃。
鈍い音が荒野に響き、敵機を中心に衝撃波が広がった。
が、

‖ΞΞФΞ‖[……凄い馬力モナね。流石は原子動力]

敵機腕部にへこみ、しかしモナーと名乗る男にはダメージが見られない。

(十)「……ワオ」

正直、驚いた。
あれだけの直撃を受けておいて膝を折る事も無いし、声も平然としている。


36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 22:12:27.61 ID:QOS+TnA/0
|::━◎┥[……ちっ。どうなってやがる]

確かに、不気味だ。
パワードスーツのダメージが薄くても、あんな攻撃を受けておいて着用者が無事であるわけが無い。

‖ΞΞФΞ‖[……ボーっとしてる暇は無いモナよ]

困惑している私たちを尻目に両腕を広げ始める加速王。

‖ΞΞФΞ‖ キュラッ

加速王のジェットが特徴的な音を出して変形。
肩の上に突出していた大きな二つのジェットの一部が割け、中からウイングが現れた。

‖ΞΞФΞ‖[『加速王』は読んで字の如く]

‖ΞΞФΞ‖[異常なまでのスピードを追求したパワードスーツだモナ]

口を動かしながら大きな二つのジェットから光が漏れ始める。

‖ΞΞФΞ‖[つまり、このウイングで……]

|::━◎┥[空気抵抗を減らして、爽快な荒野の旅へご招待……ってか?]

‖ΞΞФΞ‖[ご名答] ゴウ!!

ジェットから光の柱が走った。
それと同時に一切の予備動作無く、高速で駆け始めた。

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 22:15:25.35 ID:QOS+TnA/0
巻き上がる粉塵。
その中に腕を押さえて膝を付く歯車王の姿がはっきりと見え始める。

|::━◎┥[……チィ! 過ぎ去り様にブチかましてくるとはな……]

(十)「だ、大丈夫……?」

私はゆっくりとブーンに近寄った。

|::━◎┥[気にすんな。ただのかすり傷だ]

ブーンはそう言って見せると、ゆっくりと立ち上がり、遠くで粉塵を巻き上げながら広い荒野を駆け巡っている加速王を見据えた。

私もそれを見て、ここから狙撃して見せようと腰部ハイカノンに手を掛ける。
が、どうにも相手が早すぎて狙いが定まらない。

(十)「……尋常じゃない速さね。とてもじゃないけど、当てられないわ」

|::━◎┥[ああ。接近戦に持ち込むしかなさそうだ]

|::━◎┥[……また来るぞ]

地平線から迫ってくる巻き上げられた砂。
速度を緩めることなく、こちらに突っ込んでくるつもりだ。

(十)「ひとまず逃げ回るしかないわね……!」

|::━◎┥[だな。散開!] ゴォ!
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 22:17:32.47 ID:QOS+TnA/0
ブーンの声を受けて、今いる位置から勢い良く散開。
一呼吸置いて、今までいた位置に黄色い風が過ぎ去る。
加速王だ。

(十)「……ッ! すごいスピード」

地に足を着いて、一瞬で彼方まで行ってしまった加速王を見据える。

どうにもこうにも、こんなに早い相手を捕まえるなんて、ほとんど不可能に近い。
接近戦に持ち込む事だって、簡単ではないと思う。
かといってどうすれば……。

|::━◎┥[……妙だな]

どうしようかと戸惑っている時、通信機からボソリとブーンの声が流れた。

(十)「何が妙なのよ」

|::━◎┥[なんであんな便利なもんを隠してたんだよ。最初から使えばいいだろうが]

何言ってんのかしら。馬鹿じゃないの?

(十)「そんなの、集落じゃろくに駆け回れないからに決まってるでしょ」

|::━◎┥[……どうだろうな]

(十)「じゃあ、何なのよ」
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 22:20:05.78 ID:QOS+TnA/0
|::━◎┥[脆いんだろ]

(十)「は?」

|::━◎┥[あのウイング、コーティングされてないと見た]

ウイングはジェットから出てきた物だ。
確かに、コーティングされてない可能性が高い。
ビーム兵器が通用する。

(十)「……って事は、あのウイングを狙えば……」

|::━◎┥[ある程度は有利になるだろうが、無理だな。速すぎる]

(十)「何よ。現状は変わらないわけね」

|::━◎┥[ああ。俺たちは無様に逃げまとう以外何も出来ないな]

(十)「はぁ。どうしようってのよ……」

その時、地平線に爆煙が上がる。
少し遅れて鈍い爆音。

|::━◎┥[……なんだ?]

そして、立て続けにあちらこちらで爆煙。
……もしや。

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 22:22:22.39 ID:QOS+TnA/0
/◎ ) =| )[おいッ! こいつ何もんだ! 早すぎて全く当たる気がしないぞ!] ピピッ

……やっぱり。
相当焦ってるのかいつもの喋りを忘れてるみたい。

(十)「と、とりあえず、私たちと合流してください」

(十)「ああいう動きの速くて大胆な相手は固まって散開を繰り返すのが一番ですから」

/◎ ) =| )[お、おう……]

助けてもらった時はカッコよく見えたけど、今は頼りなく見えるわね。
通信機から漏れる声も、どもっててなんだかダサい。

|::━◎┥[……ツン]

(十)「今度は何?」

|::━◎┥[あの、でっかいパワードスーツ、実弾装備揃ってるな]

……よくこんな遠くからわかるわね。
あっ。そうか。歯車王にはロックオンが付いてるのか。

(十)「そりゃ見るからに蒸気王型だもの。多少スリムにみえるけど基本はゴテゴテ装備ね」

|::━◎┥[なら、俺に考えがある]

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 22:24:59.97 ID:QOS+TnA/0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

川 ゚ -゚)「……接近」ゴオ!

敵機が上空9メートル前後に来たところでジェット稼動。
接近戦に持ち込み、地上に叩き落す。

爪(//‰ ゚)爪「……近づいてくるか」

川 ゚ -゚)「ああ。そうとも」バフィィィイ! バフィィィイ!

接近しつつ、ビームガンを射出。
相手の起動をこちらで掌握する。
そうでなければ、奴を叩く事は難しい。空中戦となれば敵機に分がある。

爪(//‰ ゚)爪「……そんな見え透いた攻撃」ヒョイヒョイ

敵機は華麗に体を回転させ、あしらう様に閃光を避け始める。
私の思惑通り、起動を反らしながら。

敵機の起動にあわせてコンタクト位置、演算。

川 ゚ -゚) ゴォォオオオオ!!

超接近。

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 22:27:08.75 ID:QOS+TnA/0
爪(//‰ ゚)爪「……な?!」

川 ゚ -゚)「チェックメイト」フィィイイ!

右手のレーザーブレードを敵機目掛けて振り下ろす。
当たりに飛び散る眩しい光。
間違いなく直撃。

が、

爪(//‰‐)爪「くぁ……!」

敵機右腕部から出現した赤い波紋に遮られた。

……出力はキュートの4分の1程度だが、間違いなくバリアーだ。
まさか、キュート以外にもバリア搭載のロボットがいたとは。
私の膨大なライブラリにも記されていなかった事だ。

しかし、所詮は一時しのぎ程度の出力。
ダメージは期待できる。
その証拠に、

爪(//‰‐)爪そ「……ッ!!」バチッ!

敵機右腕部ショート。
多少のダメージで暴発するとは、不完全なシステム。
取り付けられたのは最近と予想。猿真似に過ぎない。

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 22:30:03.09 ID:QOS+TnA/0
その衝撃により、敵機の飛行能力が一時麻痺。
力なく重力の影響を受け、地面に叩きつけられた。

川 ゚ -゚)「……まずいな」

……力なく落ちた様に見えたが、どうやら少々起動を操作していたらしい。

落ちた場所は、

o川;゚ー゚)o「……ありゃ」

爪(//‰ ゚)爪「……災い転じたか」

青い波紋の目前。

爪(//‰ ゚)爪 ガシャ

o川;゚ー゚)o「……バリアー粒子最大出力」

敵機の胸部が展開。
その中にはびっしりと並ぶ赤い弾頭。
あれだけ打ってもまだこれだけの数があるというのか。

川;゚ -゚)「くッ……!」グン!

▼;・ェ・▼「……!」バッ!!

重力に任せ、一気に降下開始。
ビーグルも四足を使って敵機との間合いを詰める。


52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 22:34:01.87 ID:QOS+TnA/0
爪(//‰ ゚)爪「……全弾射出」

爪(//‰ ゚)爪 ズドドドドドドドド!!

o川; ー )o ズガガガガガ!!

o川; ー )o「……あー。やばいかも」ズガガガガガ!!

ほぼゼロ距離でのミサイル正射。
もはや自分へのダメージすら考えていないだろう。

……いくらバリアー越しとは言え、これだけの正射を受ければロボットは大丈夫でも人間は無事ではすまない。
いよいよ万事休すか。

▼;・ェ・▼「止まれよッ!」

私が地に達する前にビーグルが爆煙の中に突入。

▼;・ェ・▼「チェァア!」ブン!

爪(//‰ )爪 ガン!

刹那、高く跳び、敵機頭部に蹴りをかます。
敵機頭部は大きく歪み、勢い良く吹っ飛んだ。

▼;・ェ・▼「無事か、小娘」

o川; ー )o「私は大丈夫でも、……」
55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 22:35:55.49 ID:QOS+TnA/0
川;゚ -゚) シュタッ

ようやく地に足をつけられた。
落下している間のほんの2秒3秒が果てしなく長く感じた。

キュートの背後を確認。
情報提供者と店主の姿が見えない。

o川;゚ー゚)o「……あれ? あの二人は?」

▼;・ェ・▼「消し飛んだか?」

川;゚ -゚)「……いや、それは無いだろう。そこまで柔ではない」

熱線センサーON。
……そこの崩れた壁の裏か。
敵機が落ちるのを見ていち早く逃げ出したようだ。


<;`∀´>「あ、ありがとうニダ」ヒソヒソ

(;<●><●>)「いえ、手荒にしてすみません」ヒソヒソ


何はともあれ、無事で良かった。

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 22:37:47.68 ID:QOS+TnA/0
川 ゚ -゚)「……さて」

爪(//‰ )爪 ムクッ

振り向き様に敵機の再動を確認。

爪(//‰ )爪 ゴウ!

助走無しにジェットを稼動した様だ。
ダメージもあり、黒い煙を派手に上げて暗くなりつつある上空へと飛び立った。

▼・ェ・▼「また、飛んだか」

o川*゚‐゚)o「これじゃ、イタチゴッコだよ……」

確かに、切りが無い。
だが、ダメージのせいか、ある程度飛行能力が落ちていると見た。
先ほどまで悠々と飛んでいた姿とは少し変わり、フラフラとバランスを崩しているように見える。

川 ゚ -゚)「……いや、そうでもない。仕留めるなら今だ」

左手の銃口を敵機に向け、狙いを定めたその時、

爪(//‰ )※ ガンッ!

敵機左翼に被弾。
そのまま二、三回転しながら力なく地上に叩きつけられた。
58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 22:40:51.38 ID:QOS+TnA/0
  _
( (==)[ヘイ、マイガール。狙った女は逃さない世紀のイケメン、ジョルジュ様の登場だ] ピピッ

その拍子に脳内にジョルジュの通信が響く。

川 ゚ -゚)「馬鹿者。遅すぎる」

川 ゚ -゚)「それに、敵機は一応男性型ロボットだ」
  _
( (==)[まあ、細けえことは気にすんな。どうする? あと二、三発打ち込むか?]

川 ゚ -゚)「……いや、その必要は無い」

私は過度のエラーで醜くのた打ち回っている敵機に再び銃口を向けた。

川 ゚ -゚)「すぐに終わらせる」 バフィィイ!

一瞬の閃光が敵機の頭部に直撃。
頭部が激しくスパークした後、大きな音を立てて爆発した。

川 ゚ -゚)「……敵機、完全に沈黙」キュイッ

両腕部変形。
通常モードに移行。


59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 22:43:25.39 ID:QOS+TnA/0
( <●><●>)「……終わりましたか」

背後の崩れた壁の裏から状況提供者が歩み寄ってきた。
特に目立った外傷も無く、無事任務成功と言えるだろう。

<ヽ`∀´>

隣の店主も目立った外傷は無い。
店主の保護は任務内容ではないが、尊い人命を守りきった事は自信へと繋がるだろう。

<ヽ`∀´>「ウリのキムチが……。ウリの店が……」

川 ゚ -゚)「……ふむ」

人命は無事だったが、彼の経営していた食堂はこの有様だ。
外壁はほとんど残されていなく、店として機能するのは不可能だろう。
決して大きな食堂では無かったが、彼の思い出や、大切な物、言わば努力の軌跡だったはずだ。
それを失ったショックは計り知れないだろう。

o川*゚‐゚)o「……なんか可愛そう」

川 ゚ -゚)「とは言え、どうする事も出来ん」

任務の範囲外ではあるが……。
どうしたものか。

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 22:46:20.36 ID:QOS+TnA/0
▼・ェ・▼「簡単な事だろ」

川 ゚ -゚)「……ん?」

▼・ェ・▼「新しい場を提供すればいい」パンパン

ビーグルがスーツに付いた砂埃を叩き落とす。

川 ゚ -゚)「どこにそんな場が」

▼・ェ・▼「……スナオモデルは名前だけか。意外と馬鹿なもんだな」

川 ゚ -゚)「すまない」

o川*゚ー゚)o「スナオモデルでは初期型だから少し抜けてるのかも……」

キュートはわかったというのか。
……ふむ。
確かに私は抜けているのかもしれない。

▼・ェ・▼「とにかく、話は情報提供者を本部まで護衛してから……」

川 ゚ -゚)「いや、待て。ツン達がまだ帰って来ていない」

o川*゚ー゚)o「本当だ。どこ行っちゃったんだろう」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 22:48:19.11 ID:QOS+TnA/0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

|::━◎┥[じゃあ、作戦通り行こうぜ!]

作戦とは、こうだ。

加速王が直進してくると同時に蒸気王の全弾射撃。
それにあわせて、私とブーンも申し訳程度に射撃攻撃。
全弾が命中しなくてもエンジン系統に当たれば、あとは近づいて切り刻めばいい。
というシンプル極まりない作戦。


/◎ ) =| )[任せてくれ。このポイズン・ヴォルトの名に懸けて必ず落として見せよう]

/◎ ) =| ) ガシャガシャ

蒸気王の各部が展開。
両手が外れ、中から無数の銃口が顔を覗かる。
背部のキャノン、肩のミサイルポットも射撃体勢に入った。

(十)「……やるだけやってみましょうか」

(十)カシャ

腕部内蔵ビームガン用意。

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 22:51:55.01 ID:QOS+TnA/0
|::━◎┥[……うまく行きゃあラッキー位の気持ちでやりゃいい]

|::━◎┥カシャ

歯車王の腕部からも細長いバレルが現れた。

|::━◎┥[よし、各自ポイントに着いてくれ] ゴウ!

(十)「了解」ゴウ!

/◎ ) =| )[任せてくれ。もうポイントには着いている]

私とブーンがポイントに付く前に加速王がけたたましい音を上げながらこちらへ迫ってきた。
……この速さからすると、恐らくコンタクトまでそんなに時間が無い。

(十)「で、タイミングは?」

|::━◎┥[……俺が体感でコンタクトを計る]

大丈夫かしら。
私にはヤクが回ってる頭で冷静な判断を下せるとは思えないわ。

|::━◎┥[よし、いくぞ……。5、4、……]

……信じるしかないわね。
66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 22:54:32.63 ID:QOS+TnA/0
‖ΞΞФΞ‖ゴォォオオオオオオオ!!

猛スピードで突進してくる加速王。
その姿が大きくなるに連れて、凄まじいまでの威圧感が襲い掛かる。
くわばら、くわばら。

|::━◎┥[3、2、……]

その、もはや砂塵そのものと化した加速王に向け、

|::━◎┥[1、……ぶちかませぇえ!!] バフィィィイイ!! バフィィィイイ!!

打ち込む!

(十)「……当たれ!」バフィィィイイ!! バフィィィイイ!!

/◎ ) =| )[砂の王よ! 我が光を受けろ!] ズガガガガガガガ!!

辺りが蒸気王から発せられた青白い硝煙に包まれた。
青白い硝煙の中から飛び出す無数の光が加速王に襲い掛かる。
それに混じって、両脇から緑の閃光。
銃身が焼き付けるほどの閃光を相手に浴びせる。

よもや、回避は不可能だ。


67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 22:57:01.26 ID:QOS+TnA/0
が、

‖ΞΞФΞ‖ギュイッ!

加速王がスピードを落とさず平行に横移動。
無数の閃光は空を切った。


(十)「へ?」

|::━◎┥[あ?]

/◎ ) =| )[なん……だと……]

正確には、避けられた直後何が起きたか分からなかった。
三人一緒に素っ頓狂な声を上げて銃撃を一旦停止。

加速王も速度を落とさずに私たちをすり抜け、遥か後方を走っていった。

(十)「ど、どんな原理よ! 物理どうなってんの!]

|::━◎┥[知るかよ! 通信越しに怒鳴るんじゃねえ!]

|::━◎┥[んなもん今のご時勢、科学で何とかなるんだよ!]

いや。
いやいやいやいやいや。
科学でどうにかなるって問題じゃないでしょ。
ありえない移動したでしょ、今。
71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 23:03:50.09 ID:QOS+TnA/0
/◎ ) =| )[お、おい。また次が来るんじゃねえのか?]

(十)「あっ」

ドクオさんの言う通りだ。
早くまた対策を取らないと……。
とは言え、私の脳みそでは全く思いつかない。

|::━◎┥[……横に動くなら、そこにぶち込めばいい]

(十)「はあ?」

|::━◎┥[ほら、真横に動いてまた直進したとき、一瞬動きが止まっただろ?]

……確かに。
ほんの一瞬だけ、動きが止まった。
いや、止まったというよりは角が見えた、と言ったほうが正しいかも。

でも、あんな一瞬で狙いなんて定まるわけ無いじゃない。

|::━◎┥[ま、そんな感じでやってみようぜ] ゴウ!

(十)「そんな感じって……うまくいくかしらね」ゴウ!

/◎ ) =| )[やらないよりマシだろ]

とりあえず、またポイントへ。
あと、ドクオさん、口調が素に戻ってるわよ。
76 名前:おうふ。みすったわ。75で訂正しといてくだしゃあ:2011/02/24(木) 23:09:12.78 ID:QOS+TnA/0
‖ΞΞФΞ‖ゴォォオオオオオオオ!!

デジャヴの様に再び迫ってくる加速王。
蒸気王が射撃体制に入る。
ブーンの作戦通りやるとしたら、蒸気王が全弾打ち込んだ後、それを避けた加速王を私かブーンが撃つ、ということだ。
勿論、相手はビームコートを装備しているので、ねらい目はウイング。コーティングされてないとは限らないけど。
とにかく、それに懸けるしかない。

|::━◎┥[よーし、行くぞ。5、4、……]

やっぱりデジャヴの様に通信機からブーンのカウントダウン。
このまま行けば、きっとデジャヴのようにうまい事避けられてしまう。
いや、そんな希望の無い事を考えるのはよそう。

……この作戦、結局は私とブーンの腕次第よね。

|::━◎┥[3、2、……]

どう移動してくるかわからないけど、一応銃口を蒸気王の射程から少し右に反らす。
奇跡的にそこに飛び込んでくればいいけど……。

|::━◎┥[1、……ファイア!]

/◎ ) =| )[そら、持ってけ!] ズガガガガガガ!!

起動を変えて飛ぶホーミングミサイル、轟音を上げて飛び出すカノン、マシンガンは伸びる赤い光。
一種のイルミネーションのように華麗に飛び交っていく。



77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 23:11:42.25 ID:QOS+TnA/0
そして、

‖ΞΞФΞ‖ギュイッ!

加速王はそれらを見事に回避。
その行き着いた先は……。

奇跡的に私の射程内。


(十)「……!」

私は反射的に閃光を打ち込んだ。
特に狙いを定めず、本当に反射的に。
当たったのは、

‖ΞΞФΞ‖ボンッ!

ウイングではなく、肩から伸びているジェットの内部。
要するに、スクリュー部分。
吸い込まれるように入ったビームがその内部を蝕んだ。

その結果、暴発。
内部までコーティングされていなかったのだ。

加速王はバランスを崩し、地面を派手に転げた。

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 23:14:24.03 ID:QOS+TnA/0
|::━◎┥[……! やったか?!]

/◎ ) =| )[おお! まさか本当に当てるなんてな……!]

(十)「……奇跡ってこういう事を言うのかしら」

興奮する二人をよそに私は放心状態。
正直、こうも見事に当たるとは思わなかった。
……ご都合主義ね。

当の転げたパワードスーツ、加速王は地面に伏せたままピクリとも動かない。

/◎ ) =| )[よし、やっちまうか]

/◎ ) =| )つy= カチャ

(十)「うーん、ちょっと待って」

私はチャージ砲を構える蒸気王の前に割って入った。

勿論、ここで殺してしまえば情報を手に入れるチャンスが少なくなるからだ。
それにあの水平移動の原理も知りたいし。

|::━◎┥[ツン、捕虜にするのか]

(十)「一応ね」

82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 23:16:59.09 ID:QOS+TnA/0
左のジェットから煙を上げている加速王に近寄る。
あれだけ走り回ってもボディーに目立ったダメージは無い様で、装甲の頑丈さは計り知れない。

……まあ、あんな無茶な速度を出す設定で作れば生半可な装甲じゃ耐え切れないよね。

‖ΞΞФΞ‖ヴヴヴヴ・・・・

ん?
なんか変な音が……。


‖ΞΞФ;;;:::.... ヴヴヴヴ・・・・

えっ。


(十)「ブーン! なんか、消えてく!」

|::━◎┥[うお! 本当だ、スゲェ!]

‖Ξ;;;;;;:::.... ヴヴヴヴ・・・・

/◎ ) =| )[……これが噂のワープか?!]

;;;;;;:::.... フッ


87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 23:18:43.61 ID:QOS+TnA/0
私たちが呆気にとられている内に、青いキラキラを撒き散らして加速王は完全に消えてしまった。

|::━◎┥[スゲェけど、あいつらどこでもワープできるのか?]

……もし、そうだとしたらヤバくない?
もう無敵よね、無敵。

/◎ ) =| )[いや、んなこた無いだろ。もしそうだとしたら、さっきの戦いでやってるはずだ]

ああ、そうか。
じゃあ、なんで今ワープしたんだろう。
そして一体何処へ……。

うん。わかんないや。
考えててもしょうがないわね。

(十)「そういう考察は頭のいい人に任せましょ。とりあえず戻って、情報提供者を本部まで護衛しないと」

|::━◎┥[……そうだな。データの整理は任せたぞ]

(十)「OK」

/◎ ) =| )[……しかしどうなってるんだ?]

|::━◎┥[……引っかかるな]

止めにしようって言ってるのに、また始まった。
考えたってわからないものはわからないのに。
私より馬鹿なんじゃないかしら……。

91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 23:22:26.59 ID:QOS+TnA/0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

その後ロボットたちと合流し、特に何事も無く本部までの護衛は終了。

そして、本部に着いたら即、情報提供者は取り調べ。
でもって、私たちは自分の支部に戻るはずだったんだけど、所長が支部の代表者は一緒に聞いていて欲しいとの事。
その代表者が誰でも良いって言うんだから実に所長らしい。


( ^ω^)「ツンが行けお。僕は腕を痛めたから医務室に行ってくるお」

ξ;゚听)ξ「えー。なんで私なのよ」

ξ;゚-)ξ「……ほら、クーが行けばいいじゃない。こういうの得意でしょ?」

<ヽ`∀川 ゚ -゚)「いや、こういう責任のある仕事は人間がやるべきだ」

ξ;゚听)ξ「まあ、そうだけどさ……」
  _
( ゚∀゚)「お? どうしてもって言うなら俺が行ってやってもいいぜ」

ξ;--)ξ「……アンタが行くなら私が行くわよ」

ってことで私が取り調べを聞くことになった。

取り調べ内容とか覚えてられないわよ。
本当に知らないんだから。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 23:25:37.46 ID:QOS+TnA/0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「じゃあ、始めようか」

( <●><●>)「はい」

中央の古びた机に情報提供者のワカッテマスと所長が向かい合わせに座っている。

ξ゚听)ξ「……私はさっき大体聞いてたんだけどね」

爪'ー`)「まあ、そういうな。おとなしくしてようぜ」

少し離れて壁側で立ち聞きの私とフォックス。

(`∠´)

そして、所長の隣に直立不動の副所長。

ご覧の通り、この何とも言えない面子で取り調べを行う事になる。
あと忘れてはいけないのが、此処、取調室の臭い。
かび臭いというか、何というか。

 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「君の名前は……?」

っと。
取り調べが始まったみたいなので、変な事を考えるのはよそう。

100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 23:29:21.14 ID:QOS+TnA/0
……しばらくはあの食堂で質問した内容が繰り返される。
やはり、Xanadu計画とやらの事を聞いた時は三人とも驚いていた。
私も最初聞いたときは信じられ無かったけど、二回目となれば話は別。

私は、その後所長たちが「こんなの出来るわけ無い」って言うのをニヤニヤしながら待っている。
そして、冷静なのはきっと私だけ。
間違いなく、優位に立てる。
馬鹿な私でも、少しくらいは見栄を張りたい。

フフフ……。

 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「……Xanadu計画か」

来る、来るわよ。
出来るわけがないの一言が。

爪'ー`)「……やれやれ。事は思ったよりも重要だったな」

あ、あれ?

(`∠´)「……地球規模の洗脳か。例を見ないが、この科学力ならな」

あれ、あれれ?

 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「いや、この科学力でも無理に近い。ともなれば、優れた研究者が必要だろう。素直シュールの様な」

あ〜れあれ?

104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 23:33:30.66 ID:QOS+TnA/0
( <●><●>)「はい。計画の過程に素直シュールの誘拐は含まれています」

 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「……ふむ」

えっと、なんでこんなに物分りが良いのかしら、このおじ様たち。
逆に私が全然話についていけてないみたいじゃないの。

 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「その首謀者は?」

見栄をうまく張れなくて困惑している私をよそに所長は次々に話を進めていく。

( <●><●>)「直接は見た事ありませんが、名前はデレ・デレと名乗っていて……」

 彡⌒ミ
(;´_ゝ`)ガタッ

(`∠´;)「馬鹿な……?!」

爪;'ー`)「なっ……!」

えっ?
何?
何なの?

デレ・デレ……?

108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 23:36:11.06 ID:QOS+TnA/0
 彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「その名前、確かなのか?」

(;<●><●>)「は、はい。姿は見た事ありませんが、そう名乗っています」

……さっきまでは全然話についていけない風だったけど、今は本当に蚊帳の外。
一体誰?
所長も副所長もフォックスも知ってるような有名な人なのかしら。

爪;'ー`)「……死んだはずだ。あの時確かに死んだはずだ」

 彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「ああ。確かに死んだ。私の目の前で」

 彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「……本当に姿は見た事ないんだな?」

(;<●><●>)「え、ええ」

 彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「……ならばそれは偽名だ」

(`∠´;)「……もしや」

 彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「ああ。杉浦としか考えられん」

えーっと。デレ・デレといい、杉浦といい、もうちょっとわかりやすいように話して欲しいな……。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 23:38:29.04 ID:QOS+TnA/0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

【同時刻 治安部隊ラウンジ本部】

(;`・ω・)「……総帥!」

/ ,' 3「いくら言おうが無駄だ。トーキョー支部に人員を割くわけにはいかない」

(;`・ω・)「何故だ?! これは明らかな異常だ!」

(;`・ω・)「もし流石父者の報告通り、亜空間からのワープ実験が行われているとしたら……!」

/ ,' 3「仮説だろう。そんなうわ言に構ってはやれないな」

(;`・ω・)「笑止……!」

(;`・ω・)「事が大きくなってからでは遅いのでは無いですか?!」

(;`・ω・)「やはりラウンジからも研究員や兵を派遣して解決を……」

/ ,' 3「しつこいヤツだ。少々老いたな、シャキン」

(;`・ω・)

(`・ω・´)「……もういい。私が直接出向く」

/ ,' 3「狂ったか」
111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 23:41:17.33 ID:QOS+TnA/0
(`・ω・´)「狂ったのは貴様だ。……いや、もともと狂っていたか」

/ ,' 3

(`・ω・´)「裏の根回しで総帥までのし上がった男よ」

/ ,' 3「……挑発して何になる」

(`・ω・´)「挑発? うぬぼれるな。本音だ」

(`・ω・´)

(`・ω・´) スタスタ

/ ,' 3

/ ,' 3「貴様、覚えておけよ」

(`・ω・´)

(`・ω・´) ガチャ

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 23:43:34.32 ID:QOS+TnA/0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

(`・ω・´) バタン

(´・ω・`)

(´・ω・`)「兄さん」

(`・ω・´)「どうした、ショボン」

(´・ω・`)「……聞いてたよ」

(´・ω・`)「あなたが直接出向いて何になるの?」

(`・ω・´)「……戦力は一人でも多いほうが良い」

(´・ω・`)「……戦うつもり? もう、60過ぎだよ?」

(`・ω・´)「問題無い。案ずるな」

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 23:46:19.26 ID:QOS+TnA/0
(`・ω・´)「……用意があるんでな。失礼するぞ」

(`・ω・´) スタスタ

(´・ω・`)

(´・ω・`)(僕は……)

( "ゞ)「わっ!」

(;´・ω・)そ

(;´・ω・)「なんだ、デルタさんですか」

( "ゞ)「……君は行かなくて良いのかい?」

( "ゞ)「後悔するぞ」

(´・ω・`)

(´・ω・`)「ええ。きっと、きっと後悔します」

( "ゞ)「なら……」

(´・ω・`)「でも、僕は行けない」


119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 23:48:19.92 ID:QOS+TnA/0
(´・ω・`)「僕には残って守らなければならない人たちがいるから」

( "ゞ)「嫁さんや子供か」

(´・ω・`)「ええ。50過ぎてやっと手に入れた幸せです」

(´・ω・`)「後悔してでも、守らなくてはならない」

( "ゞ)「そうかい」

(´・ω・`)「はい」

( "ゞ)「シャキンさんはいい弟を持ったな」

(´・ω・`)「……僕は兄さんに何もしてやれてません」

( "ゞ)「いや、十分だよ」

(´・ω・`)

( "ゞ)「金魚の糞みたいに付いて来られるよりも、しっかりと自分の意思を持っていた方が兄としては嬉しいのさ」

(´・ω・`)「そうでしょうか」

( "ゞ)「そうだとも。君は人生半分過ぎてそんな事もわからないのかい」

(´・ω・`)「……お兄ちゃんっ子ですから」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 23:52:18.62 ID:QOS+TnA/0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

(`・ω・´)「ダイオード」

/ ゚、。 /「はい」

(`・ω・´)「私はこれからトーキョーへ飛び立つ」

(`・ω・´)「流石父者のパワードースーツを持ってな」

/ ゚、。 /「……お言葉ですが、流石父者は長い事パワードスーツに乗っていないので、前線の復帰は出来ないかと」

(`・ω・´)「ヤツが乗るわけではない。私が乗るのだ」

/ ゚、。 /「シャキン様がですか」

(`・ω・´)「ああ。整備は済んでいるだろう?」

/ ゚、。 /「はい。『第六天魔王』は当時のスペックの97%まで発揮できます」

(`・ω・´)「……ふむ。まさかここまで回復するとはな。上出来だ、ダイオード」

/ ゚、。 /「シャキン様の為ならば」
126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/24(木) 23:55:21.09 ID:QOS+TnA/0
(`・ω・´)「……して、ダイオード。共に赴くか?」

/ ゚、。 /「シャキン様の為ならば」

(`・ω・´)

(`・ω・´)「そうか。ならば換装パーツはある程度用意しておけよ」

/ ゚、。 /「わかりました」

(`・ω・´)「エリアVIPには男性型の戦闘用ロボットも多く配属されている」

(`・ω・´)「変な気を起こすなよ」

/ ゚、。 /「私たちロボットには恋愛感情を持ち合わせていませんが」

(`・ω・´)「冗談だ」

/ ゚、。 /「ナンセンスです」

(`・ω・´)

/ ゚、。 /

(`・ω・´)


        ξ゚听)ξパワードスーツを身に着けて、のようです つづく

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