1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/26(土) 16:17:16.09 ID:3C+Ps/fx0
 編まれた毛糸たちの隙間を潜り抜け、年末の寒さがわたしの首を撫でてくる。

 それをなんとか拒もうと顎先をマフラーに押し付けながら、
わたしは『バーボンハウス』のドアを押し開けた。
カランカラン、とステレオタイプな音が鳴り、
店長のショボンさんがにっこりと微笑みかけてくる。

(´・ω・`)「いらっしゃい。とりあえずコーヒー?」

 ショボンさんはわたしの答えを待つことなしに
コーヒー豆を取り出し、手動ミルで挽きだした。

川 ゚ -゚)「ブラックで」

 わたしはショボンさんにそう伝え、店内隅のテーブル席に腰掛ける。

 鞄からノートパソコンを取り出し電源を入れた。
オペレーションシステムの立ち上がる音が奏でられると、
ショボンさんがコーヒーを運んできたところだった。

 わたしの金曜日の夕食は、
『バーボンハウス』でとられると相場が決まっている。
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/26(土) 16:19:15.97 ID:3C+Ps/fx0
 『バーボンハウス』は喫茶店なのかバーなのか
よくわからない品揃えをした飲食店で、
客質や時間帯によってその性格が大きく変わる。

 時には居酒屋のような雑音に満たされることもあり、
時にはマティーニとピアノが似合うジャズバーのような雰囲気にもなったりもする。
ショボンさんはこの店を枠にはめることが好きではないようで、

(´・ω・`)「バーボンハウスは一期一会。
     その日その日のお客さんが楽しんでくれるなら、
     僕はどんな店になったとしても構わないよ」

 以前わたしがそのことについて訊いた際には
そのような答えが返ってきた。

川 ゚ -゚)「だから客が増えないんですよ」

 ターゲット層は絞らないと、と、そのときわたしはそう言った。
短所だと自覚しているが、わたしは思ったことがそのまま口に出てしまう。

 ショボンさんは困ったように小さく微笑んだ。

(´・ω・`)「でも、クーさんという常連客はゲットしてるよ」

 そして首もとの蝶ネクタイを触りながらそう言った。
わたしはそれに小さく笑い、
それは客が少ないからですよ、と言った。

 ショボンさんは、やはり困ったように小さく微笑んだ。

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/26(土) 16:22:06.93 ID:3C+Ps/fx0
 しばらくわたしはレポートの作成に没頭し、
合間にコーヒーを飲みながら黙々と作業をこなした。
それはわたしにとって毎週恒例のことであり、
『バーボンハウス』にとって毎週恒例のことである。

 そしてショボンさんにとっても毎週恒例のことであるのだが、
彼は長時間居座るわたしに文句も言わずに
時折コーヒーのおかわりを入れてくれる。

 気をつかってくれているのか、声をかけることなくカウンターの裏に引き返す
ショボンさんの後姿を見る度、わたしは感謝の気持ちでいっぱいになる。
安直な方法で良ければ涙のひとつでも見せてあげたいところだ。

 わたしは大きくひとつ息を吐き、
背伸びをしながら背もたれに体重をあずけ、
椅子の後ろ足2本でバランスをとる横着な座り方をした。

川 ゚ -゚)「おかわりください。ミルクを入れて」

 カウンターに向かって声をかけると、ショボンさんがいつもの笑顔で頷いた。

(´・ω・`)「出来上がり?」

 わたしのテーブルにコーヒーを運び、
カップにミルクと一緒に入れてくれる。
レポート作成の完了後、1杯だけミルクを入れてコーヒーを飲むのが
わたしたちにとって毎週恒例のことなのだった。

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/26(土) 16:25:08.27 ID:3C+Ps/fx0
 今日はいつもに増して客がおらず、店内にはわたし一人となっていた。
わたしが入店した時には客の一人がカウンターに座っていたのだが、
レポートを作成している間にいなくなっている。

川 ゚ -゚)「これ、経営は成り立っているのですか」

 わたしはミルクのたっぷり入ったコーヒーをすすりながらそう言った。

(´・ω・`)「なんとかね。
     金曜日に来る常連さんが、ご飯も食べていってくれるから」

川 ゚ -゚)「へえ。それは誰だろう。
     わたしは今晩自炊だし」

(;´・ω・`)「え。そうなの!?」

 ショボンさんは、わたしの予想よりはるかに大きく驚いた。
その手の中で丁寧に磨かれているグラスが落ちて割れるといけないので、
冗談ですよ、とわたしは笑った。

川 ゚ -゚)「そんなに驚かなくても」

(´・ω・`)「いやー、クーさんあまり冗談言わないじゃん」

 本気にするって、とショボンさんは大きくひとつ息を吐き、
曇りひとつなく磨き込まれたグラスを棚に並べた。
ピカピカの、様々な種類のグラスが整列する食器棚は、
とても様になっていた。
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/26(土) 16:28:01.53 ID:3C+Ps/fx0
 念のため、フラッシュメモリにレポートファイルをコピーしたわたしは
パソコンの電源を落とし、丁寧に鞄にしまいこんだ。

川 ゚ -゚)「今夜は何を食べようか」

 お腹が空いているのも当然で、
窓から見える外の世界はすっかり闇に包まれている。
揺れる木の葉を観察するに、わたしと一枚の壁を隔てた向こうでは、
耳を痛めつけるような強風が吹きつづけているようだ。

 『バーボンハウス』の心地良い空調に身を任せ、
わたしはしばらくそのまま極寒の大地を見守った。
すると、見慣れないノボリが風にはためいているのに気がついた。

川 ゚ -゚)「ショボンさん、あんなの前からありましたっけ」

 わたしはカウンターに声をかけた。
ショボンさんがこちらに振り向き、覗き込むようにして窓の外に目をやる。

(´・ω・`)「あんなのって、あれ?」

川 ゚ -゚)「あれ。この店は、中華まんまで出すのですか」

 わたしは呆れてそう言った。
昔ながらのナポリタンにピッツァ・マルガリータ、
コロッケ定食と生姜焼き定食とブラッディマリーが同居していることは
知っているが、中華料理にも手を出しているとは思わなかった。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/26(土) 16:31:02.21 ID:3C+Ps/fx0
(´・ω・`)「あるよ。肉まん、あんまん、カレーまん。
     魚肉饅頭にピザまんと、なんでもござれだ」

 ショボンさんは胸を張り、誇らしげにそう言った。

川 ゚ -゚)「メニューを統一する気がないのは知っていますが、
     わざわざこんな店で中華料理を食べる人はいるのですか」

(´・ω・`)「あれ。中華まんって、中華料理なのかい」

川 ゚ -゚)「それはそうでしょう」

(´・ω・`)「本当に?」

 改めてそう訊かれると、わたしには確信がもてなかった。
とんこつラーメンは中国では食べられないことだろうし、
ケチャップとチーズで味付けたカタカナ饅頭が中華料理とは思えない。

川 ゚ -゚)「でもほら、名前に中華ってついてますから」

 わたしがノボリを指さしそう言うと、ショボンさんは小首をかしげた。

(´・ω・`)「でもクーさん。メロンパンはメロンじゃないし、
      ご飯ですよはご飯じゃないよ」

 それはそうだな、とわたしは頷いた。
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/26(土) 16:32:59.65 ID:3C+Ps/fx0
 このまま言い返せないのも癪なので、反撃の言葉を探していると、
カランカラン、とステレオタイプな音が鳴り、
『バーボンハウス』の扉が開かれた。

(´・ω・`)「お客さんだ。じゃあ、夕飯決めたら教えてね」

 ショボンさんはそう言うと、入ってきた男の子に応対する。
いらっしゃい、と優しく声をかけ、カウンターに座らせた。

(´・ω・`)「『バーボンハウス』にようこそ。
      寒かっただろ?
      このホットミルクはサービスだから、
      とりあえず飲んで体を温めると良い」

( ^ω^)「いただきますお。
      あの、僕、ピザまんが欲しいんですお」

 男の子はミルクの入ったマグカップを受け取りそう言った。
その様子をチラ見しながら、
注文する者がいるのか、とわたしは小さく驚いた。

(´・ω・`)「ピザまんね。お目が高いお客さんだ」

 ひとつで良いのかい、とショボンさんが指を1本立てて訊くと、
ふたつお願いしますお、と男の子は指を2本立てた。

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/26(土) 16:35:04.90 ID:3C+Ps/fx0
(´・ω・`)「ピザまんふたつね。他は良い?」

 男の子から他の注文が告げられないのを確認すると、
ちょっと待っててね、とショボンさんは言い、
店の奥からセイロのようなものを持ってきた。

(´・ω・`)「味には自信があるんだけどね。
     注文する人が少なくて」

 ショボンさんはそう言うと、ふたつの饅頭をセイロに入れた。

 ひょっとしたらはじめての注文なのではないか、と
わたしは疑ってかかったが、少し興味をそそられたのも事実である。
しばらく蒸された後取り出されたふたつの饅頭は
ホカホカと湯気に包まれていて、
匂いがここまで届いてきているわけではないのにわたしの胃袋を刺激する。

川 ゚ -゚)「夕食が中華まんというのはどうなのだろう」

 中華まんは夕食にふさわしくないのではないか、と頭の一部で考えながら、
たまにだから良いのではないだろうか、
いや、そもそも中華まんは栄養のバランスもおそらくとれていて、
夕食にこそふさわしい筈だ、とわたしは自分に対する理論武装を着々と進める。

 男の子は満足そうに笑みを浮かべ、中華まんにかぶりついた。
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/26(土) 16:38:01.69 ID:3C+Ps/fx0
( *^ω^)「旨いお!」

 男の子は、一口食べるなりそう言った。
わたしの中華まんに対する興味はそれだけいっそう高まった。

 しかし、咀嚼し嚥下した後も、続いて饅頭にかぶりつこうとはしなかった。

(´・ω・`)「どうかした?」

 ショボンさんが男の子の顔を覗き込むようにして、
少し心配そうにそう訊いた。
男の子は首を振り、しかし小首をかしげて何やら思案しているようである。

( ^ω^)「あのー、これ」

 やがて男の子は、遠慮がちに饅頭を割って見せた。
わたしの席からその中身は見えないが、
割られたことによってその匂いが空調に乗ってわたしの鼻に運ばれる。

 ケチャップとチーズの匂いではなかった。

(;´・ω・`)「……どう見ても肉まんです」

 本当にありがとうございました、とショボンさんはなぜかその場に頭を下げた。
17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/26(土) 16:40:10.02 ID:3C+Ps/fx0
 ショボンさんに促され、男の子はもうひとつの饅頭も割った。

( ;^ω^)「こっちも、ですお」

(;´・ω・`)「うわーごめんよ。どうしよう。
      っていうか、作り直すけどさ。それで良いかな」

( ^ω^)「もちろん、僕としてはピザまんが食べられれば構いませんお」

(;´・ω・`)「本当にごめんね。すぐ作るから」

 ショボンさんはそう言い、男の子から皿を回収した。
それを見ていたわたしは、自分に対する完璧な言い訳を思いつく。

川 ゚ -゚)「それなら、わたしがこれからピザまんをふたつ注文しましょう」

 人助けという名目の下では、大概のことが容認されるのだ。
わたしは男の子を手招いた。

川 ゚ -゚)「ただし、わたしの伝票には肉まんふたつと書くように。
     少年、君はわたしと饅頭トレードを行おう。
     見たところ肉まんも美味しそうだし、それでどうかな?」

 しばらく店内に沈黙が漂い、10秒ほどが経過した後、
ようやく合点がいった様子で男の子の表情がパッと華やいだ。

( ^ω^)「それなら僕も構いませんお」

 1個なら、と彼は何度も頷いた。
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/26(土) 16:43:06.06 ID:3C+Ps/fx0
(´・ω・`)「助かるよ、ありがとう。
     じゃあピザまんできたらそっちの机に持っていくから」

 ショボンさんはそう言って、ピザまんを蒸す作業に取り掛かる。
男の子が肉まんのふたつ乗った皿を持ち、わたしの席に寄ってきた。

川 ゚ -゚)「ウーロン茶をホットでふたつください」

 わたしはショボンさんに向かってそう言った。
男の子には迷惑をかけるわけだから、このくらいのことはするべきだろう。
彼を促し、対面する形で座らせた。

( ^ω^)「お邪魔しますお」

川 ゚ -゚)「よろしく。わたしはクーだ」

( ^ω^)「僕は内藤ホライゾン。
      ブーンと呼ばれることが多いですお」

 男の子はフルネームにあだ名を添えて教えてくれた。
そんなことはわたしにとってはじめてで、
わたしは少し、この少年に興味を持った。

川 ゚ -゚)「それならわたしもブーンと呼ぼう。呼び捨てで良いかな」

 もちろんですお、とブーンはやはり何度も頷いた。

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/26(土) 16:46:04.64 ID:3C+Ps/fx0
 ピザまんが蒸し終わらないうちに、まずウーロン茶が運ばれた。
わたしたちはウーロン茶を一口すすり、肉まんを食べる作業に取り掛かる。

川 ゚ -゚)「これは旨い」

 口に含むや、わたしは心の中でそう呟いた。
コンビニで売られるものとは明らかに違った味わいで、
ひょっとしたら、わたしがこれまで食べていたのは
肉まんと呼ぶにふさわしいものではなかったのかもしれない。

川 ゚ -゚)「正解だったな」

 ほとんど噛んでいないのではないかと思われる勢いで
肉まんを食らうブーンを眺めながら、わたしは小さく呟いた。
窓から外を眺めると、夜の世界にノボリが揺られている。

川 ゚ -゚)「もっと早く教えろよ」

 肉まんの最後の一口を頬張ると、ふたつのピザまんが運ばれてきた。
ショボンさんと目が合ったので、
なかなか旨い、とわたしは彼に頷いて見せた。
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/26(土) 16:48:11.66 ID:3C+Ps/fx0
 あまりの旨さに食べるのに夢中になってしまった肉まんのターンは
終わりを告げ、空腹もだいぶ落ち着いたわたしたちの前には
ピザまんがひとつずつ置かれている。

川 ゚ -゚)「興味本位で訊きたいんだけど、良いかな」

 ピザまんを手にとりながら、わたしはブーンにそう言った。
わたしの抽象的な質問にどう答えれば良いのかわからないようで、
ブーンは曖昧な笑みを浮かべて頷いた。

川 ゚ -゚)「なんでこんな店でピザまんを食べようと思ったんだ?」

 わたしの手の中でふたつに割られたピザまんからは、
トマトとチーズの匂いが溢れ出していた。

 ケチャップではないな、と考え一口かぶりついてみると、
『バーボンハウス』で出されるピッツァ・マルガリータの味が
わたしの舌を包み込み、
トマトとバジルの風味が食道からダイレクトにわたしの鼻腔を刺激した。

 その素晴らしさにため息をついていると、
ノボリが立っていたからですお、とブーンの返事が耳に聞こえた。

( ^ω^)「コンビニで買おうと思ってたら、売り切れだったから」

 ピザまんは縁起が良いんですお、と彼は言った。
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/26(土) 16:51:03.60 ID:3C+Ps/fx0
 ピザまんは縁起が良いとは初耳だった。

川 ゚ -゚)「それは、朝の占いコーナー的な意味での話かな」

 わたしがブーンにそう訊くと、彼は首を横に振った。

( ^ω^)「違いますお。
      前に得点を決めた日の前日に、ピザまんを食べてたから。
      ゲン担ぎみたいなものですお」

川 ゚ -゚)「得点?」

 何のだ、とわたしはピザまんを楽しみながらブーンに訊いた。
『ほっぺが落ちる』が比喩表現であることに今日ほど感謝したことはない。

( ^ω^)「サッカーですお」

 自分のピザまんをすっかり平らげ、ブーンは私にそう言った。
足元のスポーツバッグを見せてくる。

 そこには『United Vippers』と、ここVIP市をホームタウンとする
サッカークラブの名前が印刷されていた。
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/26(土) 16:54:02.54 ID:3C+Ps/fx0
 わたしはピザまんの最後の一口を飲み込むと、
ウーロン茶をすすってブーンを簡単に観察した。

 ブーンは平均よりはやや高い程度の身長をしている。
サッカー選手としては低い方だろう。
少なくとも、身長を武器とはできないタイプである。

 覗き込むようにしてブーンの足に目をやると、
長ズボンの上からでもしっかりとした太ももをしていることがわかった。
座っている様を見るに、ボディバランスも悪くなさそうだ。

川 ゚ -゚)「君はUVの選手なのか?」

 ただのサッカー好きではなさそうで、わたしは彼にそう訊いた。

( ^ω^)「ユースから、Bチームに上がるかどうかってとこですお」

 ウーロン茶を飲み干したブーンはそう答える。
ほう、と小さな声がわたしの口から漏れ出した。

川 ゚ -゚)「すごいじゃないか」

 わたしはこの少年に、また少し興味をもった。
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/26(土) 16:56:08.19 ID:3C+Ps/fx0
 簡単に説明すると、ブーンの所属するユナイテッドヴィッパーズは
3つのカテゴリーに分けられる。
Aチーム、Bチーム、そしてユースチームだ。

 Aチームは『上』と呼ばれる、
公式リーグやカップ戦に臨む者たちのカテゴリーである。

 それに対してBチームは、通称『下』と呼ばれるカテゴリーだ。
Aチームの予備人員、あるいは故障明けのリハビリや
フォームを崩している者たちの調整に使われるもので、
有望な若手の育成にも用いられる。

 サッカー選手を志す者にとって、このBチームが大きな壁となる。

 なぜならこのカテゴリーからがフルタイム契約となるからであり、
パートタイム契約であるユースチームに属する選手たちは、
上限である20歳までにBチームを目指さなければならないからだ。

 サッカー選手は狭き門であり、ユースチームにも入れない者がほとんどである。
仮にユースチームに入れたとしても、
さらにBチームに召集される者となると数がぐんと減る。

 つまり、フルタイム契約をしている者は、皆一様に化け物なのだ。

 わたしの前には、その化け物候補がひとり座っている。
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/26(土) 16:58:28.41 ID:3C+Ps/fx0
川 ゚ -゚)「ポジションは?」

( ^ω^)「フォワードですお」

 フォワードなら、得点を欲しがるのも頷ける。

川 ゚ -゚)「なるほど。試合前には必ずピザまんを食べるわけだ」

 納得してそう言うと、ブーンはそれを否定した。

( ^ω^)「いや、そういうわけではありませんお」

川 ゚ -゚)「なぜ」

( ^ω^)「別に理由はありませんお」

川 ゚ -゚)「じゃあ、どうして今日はピザまんを食べたんだ?」

 それは、とブーンは言葉を詰まらせた。
訊いてはいけないことだったのかもしれない。

 ブーンは大きくひとつ息を吐き、
最近点が取れないんですお、と窓の外を眺めながら呟いた。

 外の世界では風がやんでいるようで、ノボリは無気力にうなだれていた。
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/26(土) 17:00:07.88 ID:3C+Ps/fx0
 そうか、と相槌をうったきり、わたしたちの間に沈黙が漂った。
音がしたので顔を上げると、
ショボンさんがわたしたちのカップにウーロン茶を注ぎ足していた。

(´・ω・`)「それなら、クーさんに見てもらうのも良いかもしれないね」

 どうだろう、とショボンさんは小さく微笑んだ。

(´・ω・`)「これも、何かの縁だし」

川 ゚ -゚)「わたしはコーチではありませんよ」

 わたしは首を振ってそう言った。
ウーロン茶を一口すすると、ブーンに見つめられているのに気がついた。

( ^ω^)「クーさんは、サッカーに詳しいんですかお?」

川 ゚ -゚)「まあ、どちらかというと」

(´・ω・`)「どちらかというと、専門家だよね」

川 ゚ -゚)「そんな大層なものではありませんよ」

 わたしは笑ってそう言った。

川 ゚ -゚)「わたしはサッカー雑誌の記者なんだ」

 駆け出しだけど、とわたしはその後に付け足した。

戻る

inserted by FC2 system