354 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 21:36:03.01 ID:7rVCYidG0
 
(´・ω・`)「…………」
 
ξ;゚听)ξ「ここは……?」
 
 ラストスノーの空間から転移された二人が見た景色。
 広い空間が後方に拡がり、長く続く石段が眼前にあった。
 
(´・ω・`)「人の気配はないな」
 
ξ゚听)ξ「そうですね……」
 
 敵の気配がないと知ると、ショボンは視線を階段へ移した。
 城内に明かりは設置されておらず、その先には闇しかない。
 
ξ゚听)ξ「階段の目の前に飛ばされたってことは……」
 
(´・ω・`)「まぁ、上れということだろうな」
 
ξ゚听)ξ「ですよね……」
 
(´・ω・`)「行くか」
 
ξ;゚听)ξ「え、わ、罠とか、大丈夫でしょうか……?」
 
(´・ω・`)「ないとは言い切れんが、今更小細工を弄するとも思えん」
 
360 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 21:38:39.29 ID:7rVCYidG0
 
(´・ω・`)「フィレンクトを倒したことで、向こうの目的は達成されたはずだ」
 
ξ゚听)ξ「……なるほど」
 
(´・ω・`)「それに、考えているだけでは、先には進めないさ」
 
 そう言って、ショボンが先陣を切った。
 慌ててツンが、後に続く。
 階段は、長さもさることながら幅が広く、二人並んでも壁に手がつかない程だ。
 
(´・ω・`)「どうやら、最初にいた廊下と、同じ城のようだ」
 
ξ;゚听)ξ「えっ?」
 
(´・ω・`)「素材の石と、造りが似ている。随分と堅牢な城のようだな」
 
ξ;゚听)ξ「お城に、詳しいんですか?」
 
(´・ω・`)「そこまでじゃないさ。俺の世界にも、似たような城はあるが」
 
ξ゚听)ξ「……へぇー……」
 
 歩を進めながら、ツンは問いかける。
 階段の終着点は、夜目を鍛えたショボンにも、未だ見えてはいなかった。
 
ξ゚听)ξ「ショボンさんの世界って、どんな所なんですか?」
 
(´・ω・`)「ん? 俺の世界か」
 
364 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 21:41:10.52 ID:7rVCYidG0
 
 闇を見つめたままで、ショボンが口を開く。
 
(´・ω・`)「そうだな……もう、何十年も戦を続けている世界だ」
 
ξ;゚听)ξ「いくさ……戦争ですか」
 
(´・ω・`)「そうだ。覇権を争う国の一つ、ヴィップという国で大将をしている」
 
ξ゚听)ξ(ヴィップ……VIP、かぁ……こういう所も、似てるのね)
 
 ツンの世界でのヴィップは、彼女が敵対する存在だ。
 人だけではなく、名称にもどこか接点があるのかと、ツンは漠然と考えていた。
 
ξ゚听)ξ「大将って、いわゆる戦で一番偉い人ですか?」
 
(´・ω・`)「まぁ、そうだな。戦以外でもすることは多いが」
 
ξ゚听)ξ「戦だとやっぱり、指揮とかしてるんですよね」
 
 ラストスノーとの戦いを通じ、ショボンの洞察力にはツンも舌を巻いていた。
 尤もツンは、最近まではただの女子高生だったのだ。
 戦いにおける観点自体が、根本から違っている。
 
(´・ω・`)「指揮が主だが、時には最前線でも戦う」
 
(´・ω・`)「こいつを使って、な」
 
 Zを、分離させずにツンの前に取り出して見せた。
 
368 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 21:43:14.88 ID:7rVCYidG0
 
ξ゚听)ξ「アルファベットZ……でしたっけ」
 
ξ゚听)ξ「ラストスノーも簡単に斬ってたし、すごい武器ですね……」
 
(´・ω・`)「お前が造ったんだ」
 
ξ;゚听)ξ「え?」
 
(´・ω・`)「俺の世界の、お前がな」
 
ξ;゚听)ξ「ショボンさんの世界の、私ですか……」
 
(´・ω・`)「ツン=デレートという、女ながら世界一のアルファベット職人と称される人だ」
 
ξ;゚听)ξ「せ、世界一……」
 
(´・ω・`)「見た目もよく似ている。お前は多少、幼さを感じるが」
 
ξ;゚听)ξ「あ、あはは……」
 
ξ;--)ξ(思ったこと、ずばっと言う人ね……)
 
(´・ω・`)「恐らく、美人になるんだろうな、お前も」
 
ξ;゚听)ξ「えっ?」
 
(´・ω・`)「ツンさんが、そうだからな」
 
ξ*゚听)ξ「あ……そ、そうですか……ありがとう、ございます……」
375 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 21:45:50.20 ID:7rVCYidG0
 
ξ*゚听)ξ(はっ!)
 
ξ゚听)ξ「えと……私の世界のショボンは、ショボンさんにはあまり似てないかも」
 
ξ;゚听)ξ(な、なんだかすごくややこしい……)
 
(´・ω・`)「そうか。まぁ、色々あるんだろうな」
 
ξ゚听)ξ(ショボンが体を鍛えたら、ショボンさんみたいになるのかな……?)
 
ξ;゚听)ξ(身長自体違うし、そんなことはないか……)
 
(´・ω・`)「……そういえば」
 
ξ゚听)ξ「あ、はい」
 
(´・ω・`)「ペルソナについてだが、少し訊きたい事がある」
 
ξ゚听)ξ「私に分かる範囲なら……」
 
 ニャルラトホテプの思惑によって、ショボンはペルソナ能力を開花させた。
 慣れない力に、少しでも理解を深めようと、切り出したのだ。
 だが、ツンも能力に目覚めて数日しか経っていない。
 
 少し不安に思いつつ、ショボンの言葉を待っていた。
 
(´・ω・`)「俺のペルソナがどんな力を扱えるのかは、なんとなくわかる」
 
ξ゚听)ξ「そう、ですね。不思議ですけど、私も最初からそうでした」
378 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 21:48:06.93 ID:7rVCYidG0
 
(´・ω・`)「連続使用は、戦闘中のお前を見るに避けた方が良さそうだが、これは合っているか?」
 
ξ゚听)ξ「はい。体力……精神に負担がかかると、教えられました」
 
(´・ω・`)「やはりか。戦いの後、今まで感じた事のない気怠さがあった。酷使すれば、戦いに支障が出るだろうな」
 
(´・ω・`)「だが、ペルソナを喚んでいた時は、力が溢れてくるようだった」
 
(´・ω・`)「体も少し、軽くなった気がする。本当に自分の体かと思うほどに」
 
ξ゚听)ξ「ペルソナを降魔している時は身体能力が上がったり、そういうことがあるみたいです」
 
ξ゚听)ξ「ショボンさんのペルソナがそうさせている事は、間違いないです」
 
(´・ω・`)「ほう……それは助かるな。無駄に力を使わないだけでも、恩恵が得られるか」
 
 もう一つ。身体能力の向上以外にも、ショボンが気が付いている事があった。
 それは武器を、アルファベットを持たぬツンには分からないだろうと判断し、聞かずにいた。
 秘めたこの疑問は、後に大きな力を発揮することとなる。
 
(´・ω・`)「最後に……使用する時なんだが」
 
ξ゚听)ξ「はい」
 
(´・ω・`)「ラストスノーと戦っていた時は、俺も必死で特に気に留めてはいなかったが」
 
(´・ω・`)「力の名称を叫ぶことに、意味はあるのか?」
 
383 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 21:50:17.37 ID:7rVCYidG0
 
ξ;゚听)ξ「あ、それは……」
 
(´・ω・`)「初見なら問題ないだろうが、二撃目以降は攻撃方法を敵に報せる事になると思うが」
 
ξ;゚听)ξ「それは、そうなんですけど……」
 
ξ゚听)ξ「攻撃をする時、掛け声とか、出すじゃないですか?」
 
(´・ω・`)「まぁ、そうだな」
 
ξ゚听)ξ「それと同じで……その時の感情次第ですけど、そうした方が威力が増すような」
 
ξ;゚听)ξ「すみません……上手く説明ができないですけど……」
 
(´・ω・`)「いや、なんとなくは分かった」
 
(´・ω・`)「どうやらペルソナというものは、感情に強弱が左右されるようだな」
 
ξ゚听)ξ「そうみたいです。私も、私の仲間達も、そんな場面が何度かありました」
 
ξ゚听)ξ「ショボンさんなら、すぐに私よりも使いこなせるようになると思います」
 
(´・ω・`)「どうだろうな。戦闘経験がお前よりあるといっても、やはり異世界の力だ」
 
(´・ω・`)「うまく扱えるかはわからんが、出来るだけやってみるとしよう」
 
(´・ω・`)「気を緩めて、また操られでもしたら大事だからな」
 
ξ;゚听)ξ(あれは……正直ほんとに怖かったなぁ……)
386 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 21:52:05.64 ID:7rVCYidG0
 
(´・ω・`)「なんにせよ、この力は有用だ。戦いが有利に進むよう、努力しよう」
 
ξ゚听)ξ「……ショボンさんの世界には、こういう力はないんですよね?」
 
(´・ω・`)「そうだな。個人が戦で使う物は、基本的にアルファベットと馬くらいだな」
 
(´・ω・`)「お前達を見ていると、羨ましくもあり、恐ろしくもある」
 
(´・ω・`)「俺の世界でも扱えれば便利だが、敵も使うとなると、多大な障壁になる」
 
ξ;゚听)ξ「それは……そうですね……ブーンさんの銃器とか特に……」
 
ξ;゚听)ξ(でも、ショボンさんに懐に入り込まれたら、どんなペルソナでも対処できなさそう……)
 
(´・ω・`)「複数の自分に、異世界の力、か。全く、ややこしい事この上ない」
 
ξ゚听)ξ「はい……頭がこんがらがっちゃいます」
 
(´・ω・`)「最初に俺の世界へ来たクーを見た時は、何事かと思ったが……」
 
(´・ω・`)「まだ分からないことは多いが、幸い目的は、明瞭だ」
 
(´・ω・`)「終わらせて、帰らないとな。それぞれの世界へ」
 
ξ゚听)ξ「……はい」
 
 二人の視界には、階段の終着点が見えていた。
 突然、何者かが襲ってくるかもしれない。更に警戒を強め、二人はまた、歩き出した。
 
390 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 21:55:08.02 ID:7rVCYidG0
 
(´・ω・`)「…………」
 
ξ゚听)ξ「ここ……」
 
 階段を上り切った場所。そこは。
 
(´・ω・`)「……どうやら、当たりだったみたいだな」
 
 全員が集い、“ラストスノー”の空間へと飛ばされた場所。つまり元の場所だった。
 周りに注意を払い、廊下の中間点まで歩くと、二人は同時に奧の扉に視線を投げた。
 
(´・ω・`)「……今なら感じる。あそこから滲み出る、異様な気を」
 
 ペルソナ能力を得たショボンは、それを感じ取っていた。
 アンノウンが発する禍々しい力と、威圧感を。
 
ξ゚听)ξ「……最初に来た時はこんな感じ、しませんでした」
 
 それは決して、ツンが察知能力においてショボンよりも劣っているというわけではない。
 あの時はブーンのレーダーにも、ショボンの鋭敏な感覚にも、クーの悪魔召喚師としての勘にも。
 アンノウンの気配が触れる事は、なかったのだ。
 
(´・ω・`)「つまり、いよいよ戦う気になったということか」
 
ξ;゚听)ξ「……」
 
394 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 21:58:02.25 ID:7rVCYidG0
 
 この有り得ぬ現象を生み出した根源。世界を滅亡せんとしている、強大な敵。
 アンノウンが、ついに明確な戦意を表したのだ。
 ショボンの言葉を受け、ツンは緊張に体を強張らせた。
 
(´・ω・`)「……」
 
 そんなツンを一瞥した後に、ショボンは周囲の床に目を落とした。
 最後に見た風景から二人が除かれただけで、なんの変化もない。
 切り落とされた石像の首やブーンが破壊した彫刻の残骸が、転がっているだけだ。
 
 数秒の思考の後、すぐにまた視線を上げた。
 
ξ゚听)ξ「どうしたんですか?」
 
(´・ω・`)「いや、あいつらがどうなったのかと思ってな」
 
 “あいつら”とは、ブーンとクーの事を指していた。
 ツンが黒い穴に吸い込まれ、それを助けようとし、ショボンも飲み込まれた。
 その後二人がどうなったのかは、当然二人が知る由もない、が。
 
ξ;゚听)ξ「二人は、どうしたんでしょうか」
 
(´・ω・`)「ブーンが乗っていた巨大な機械。あれがあった床に、僅かだが車輪の跡がついている」
 
(´・ω・`)「あれが動いたのなら、同じ様な跡が扉まで続いているはずだ」
 
(´・ω・`)「しかし、それがない。少なくとも、ここから動いてはいないんだと思う」
 

395 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 22:00:07.50 ID:7rVCYidG0
 
ξ゚听)ξ「ということは……」
 
(´・ω・`)「あぁ。恐らくは、俺達と同じ様にどこかへ飛ばされた可能性が高い」
 
ξ;゚听)ξ「…………」
 
(´・ω・`)「フィレンクトは、俺達を試すと言っていた。まぁ、目的は同じだろうな」
 
(´・ω・`)「扉の先の気配も、交戦中のものとは思えん。とすれば、脱出を計っている最中だろう」
 
ξ;゚听)ξ「……大丈夫でしょうか……」
 
 不安げな視線を投げるツンを見て、ショボンは一つ息を吐いた後に、続ける。
 
(´・ω・`)「あいつらも俺達と同じく、選ばれた存在だ。俺達が無事なら、きっとあいつらも無事さ」
 
ξ゚听)ξ「…………」
 
(´・ω・`)「実際に戦った二人を見たわけじゃないが、そんな気がする。信じてやれ」
 
 安心させる為の気休め、ではなかった。
 ショボンにしては珍しい事だったが、彼自身、純粋にそう思えていたのだ。
 
 同じ様に、ツンにもそんな予感は確かにあった。だが、不安の方が大きかった。
 ショボンの言葉に、不安は縮小し、予感が勝る事となった。
 
399 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 22:02:32.30 ID:7rVCYidG0
 
ξ゚听)ξ「そう、ですね」
 
(´・ω・`)「だが、悠長に待っているわけにもいかないだろう」
 
 言い、前方の扉へと再び視線を向けた。
 長躯のショボンですら楽に通り抜けられる程に巨大な扉だ。
 BLACK DOGでも通れるだろう。まるで、予めそれを想定されて造られているようだった。
 
 姿が見えなかった敵が、ついに敵意を剥き出しにして待ち構えているのだ。
 ここに留まり、また後手に回ることこそ、愚策と言えた。
 
(´・ω・`)「征こう。この戦いを、終わらせる為に」
 
ξ゚听)ξ「……はい」
 
 ショボンが先を行き、すぐ後にツンが続く。
 アンノウンが現れる前は人が、遥か昔には魔族が、それぞれ踏んだ石畳が靴音を反響させている。
 扉に近づくに連れて、アンノウンの覇気が強まっていくのを、二人は感じていた。
 
ξ゚听)ξ「あっ」
 
(´・ω・`)「どうした?」
 
 ふと、ツンが声を上げ胸のポケットから生徒手帳を取り出した。
 挟まれていたボールペンを持ち、メモ用の白紙ページに先を滑らせている。
 書き終えてそれを破ると、数歩下がって静かに床へと置いた。
 
403 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 22:04:53.72 ID:7rVCYidG0
 
 『先に行っています。ツン・ショボン』
 
 紙には、そう書かれていた。
 
(´・ω・`)「書き置き、か」
 
ξ゚听)ξ「はい。もし二人が後からきたら、安心するかと思って……」
 
(´・ω・`)「あぁ、良い判断だと思う」
 
 言って、書き置きを見つめながら、ショボンがある疑問を投げ掛けた。
 
(´・ω・`)「……墨がなくても文字が書けるのか?」
 
ξ゚听)ξ「え? あ、はい。ボールペンっていって……」
 
(´・ω・`)「ほう。便利な物だな」
 
 ショボンの世界には、存在しない物だ。
 アルファベットという特異な武器を除き、文化レベルはツンの世界よりも遥かに劣る。
 いかにも興味ありげに、ツンの手にある金属製のボールペンを見つめていた。
 
407 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 22:07:10.60 ID:7rVCYidG0
 
ξ゚听)ξ「……持っていきますか?」
 
(´・ω・`)「いいのか?」
 
ξ゚听)ξ「はい。インクが切れたら使えないですけど、ほとんど新品ですし、結構保つと思いますよ」
 
(´・ω・`)「いいのなら、遠慮なくもらっておこう」
 
ξ゚ー゚)ξ「どうぞ」
 
(´・ω・`)「この上の部分を押せばいいのか?」
 
ξ゚听)ξ「はい。使わない時はまたそこを押せば、芯が引っ込んでインク……墨が乾きません」
 
(´・ω・`)「……良く出来ているものだ」
 
 ショボンは不思議そうな顔をして、カチ、カチと数回芯を出し入れしていた。
 
ξ゚ー゚)ξ「ショボンさんの手には、ちょっと小さいかも」
 
(´・ω・`)「問題ない。竹でも巻き付けて使おう」
 
410 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 22:09:45.44 ID:7rVCYidG0
 
ξ゚听)ξ(ボールペンが珍しいなんて……そういえばショボンさんの格好、昔の中国の武将みたいな……)
 
ξ;゚听)ξ(昔の中国……武将……三国志? アルファベットで戦う……三国志……?)
 
 ショボンは満足したのか、無造作にボールペンを懐に仕舞い、扉と逆方向に歩き出した。
 
ξ゚听)ξ「……?」
 
 ショボンは床に転がっていた石像を拾い上げると、また踵を返し、戻る。
 そして切断面を下にして、書き置きが見えるように、静かにその上に置く。
 元居た場所を、首だけの石像が見つめている形となった。
 
(´・ω・`)「これで目立つだろう。あいつらも、気が付くはずだ」
 
ξ゚ー゚)ξ「……そうですね」
 
(´・ω・`)「さて────」
 
 三度、扉を向く。
 既に手を伸ばせば、届く距離にあった。
 短く息を吐き、ショボンが重く冷たい鉄の扉に、手を添える。
 
413 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 22:13:15.73 ID:7rVCYidG0
 
(´・ω・`)「…………」
 
 力を込める、直前。
 
(´・ω・`)「ツン」
 
ξ゚听)ξ「?」
 
(´・ω・`)「アンノウンを倒すぞ。必ずだ」
 
 この世界のクーに言った言葉だった。
 あの時のクーの返事は、力無い呟きのようだった。
 ショボンは早々に休息を取り、別段気にしてはいなかったのだが。
 
(´・ω・`)(いま思えば、あれはこの状況を案じていたのか……)
 
 そう考えれば、あの時の口調にも納得がいった。
 小さな予感は掬い取れない程だったが、確かに、散りばめられていたのだ。
 クーだけではない。ブーンも、ツンも、ショボンもそうだ。
 
 彼らは大切なものを語った。夢を語った。
 出会ったばかりの、異世界の人間に。
 噛み締めるように、覚悟を決めるように、託すように。
 
 それに応える為、ショボンは同じ言葉を、ツンに発したのだった。
 
416 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 22:16:05.22 ID:7rVCYidG0
 
 二度目の言葉は、クーの覚悟を聞いた後の感情を籠めて、更なる誓いを立てるように。
 声色こそ違わずとも、言葉に籠められた意思は、より堅固な形となって。
 
 特別な想いを乗せられ紡がれた言葉……言霊は、ツンの胸懐深くまで伝わっていた。
 
ξ゚听)ξ「……私も、この世界のブーンと、出会った人達に、言われました」
 
(´・ω・`)「ッ……」
 
 ショボンは決して、そんなつもりで、意図を伝えるつもりで言ったわけではなかった。
 全ては自身の決意を再認識する為であり、それを汲み取られるとは、毛ほども思ってはいなかった。
 だが、ツンはそう切り出したのだ。
 
(´・ω・`)(……戦いを重ね、自覚したということか)
 
 明らかな成長を感じさせるツンの言葉に、ショボンも向き直り、互いの目を見つめ合う。
 彼女の決意を、確実に、堅実に受け止めるために。
 
ξ゚听)ξ「そして、約束しました。この世界を、護るって……」
 
(´・ω・`)「…………」
 
418 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 22:18:49.61 ID:7rVCYidG0
 
ξ゚听)ξ「倒しましょう。アンノウンを、必ず」
 
 敢えて、同じ言葉を紡いでいた。
 その決意と約束が籠められた言霊は、これ以上ない程にショボンに伝わった。
 
(´・ω・`)「あぁ。征こう」
 
ξ;゚听)ξ(わ……ショボンさんが……初めて笑った……)
 
 ツンは驚きつつも、すぐに決意の表情へと戻り、二人同時に頷く。
 
(´・ω・`)「ッ」
 
 ショボンが手に、力を込める。石と鉄が、擦れる音がした。
 暗闇に支配されていた床に一筋の光が伸び、扉が開く幅に比例して、線となり、柱となり、太さを増していく。
 やがて扉は、完全に口を開けた。
 
 回廊から差し込む灯りだけでは、暗い部屋全体を照らすには至らない。
 
(´・ω・`)「…………」
 
ξ゚听)ξ「…………」
 
 だが、二人が見つめる一点は、闇の奧。
 扉を開ける以前から、“それ”が居る事は、既に解っている。
 
 揺らぐ真紅の瞳を力強く睨み、二人は遂に、対峙した────
 
422 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 22:21:14.53 ID:7rVCYidG0
 
 
 
 
 
 
 .物語のページが────
 
 
 
 
 
    ( ^ω^)ξ゚听)ξ(´・ω・`)川 ゚ -゚)
 
 
        【Cross part:Confluence】
 
 
 
 
 
                  ────応えるようです
 
 
 
 
426 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 22:23:44.76 ID:7rVCYidG0
 
爪 ゚W〉
 
 謎深き破壊者────アンノウン。
 崩れかけた玉座に座り、ショボンとツンを見下ろしている。
 
 視線を外さずに、二人が部屋へと歩み入る。
 数歩進むと、待っていたように鉄の扉が耳障りな音を発しながら、ゆっくりと口を閉ざした。
 閉ざされた“王の間”を照らす灯りは、この世界のツンが残した戦いの爪痕から漏れる、星光だけだ。
 
爪 ゚W〉
 
 鎮座したままのアンノウンが手首を返し、指を鳴らした。
 直後、部屋中の燭台に火とも思えない光が灯る。
 魔力で生み出された灯は、風に揺らぐ事もない。一定の光量を保っていた。
 
 視界が明瞭になったことで、二人は闇に紛れたアンノウンの全身を視認することができた。
 この世の闇を、黒き感情をまさに体現した破壊者を包む衣は、黒一色。
 袖から覗く肌も、仮面と髪の隙間にある顔も、人とはかけ離れた異色の黒に染められている。
 
 玉座の横には、同じ様に漆黒の聖剣が、立てかけられていた。
 
(´・ω・`)「……お前が、“アンノウン”か?」
 
爪 ゚W〉《…………》
 
ξ;゚听)ξ(やっぱり……人間じゃ……ない……?)
 
ξ;゚听)ξ(デレのペルソナ……たしか、アカ・マナフ……翼はないけど、あれに似てる……)
 

427 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 22:26:27.94 ID:7rVCYidG0
 
 全ての世界に影響を与え、破壊しようと目論む程の存在だ。
 人ではないかもしれないとツンは以前から考えていたが、実際に目の当たりにすると、やはり戸惑いを隠せない。
 姿こそ人のそれであろうとも、それだけだ。人間とは、あまりにも違いすぎた。
 
爪 ゚W〉《我に名はない》
 
 その声も、地を這うように重く、鈍く、低い。
 
爪 ゚W〉《だが、この世界の者どもは、我をそう呼んでいる》
 
(´・ω・`)「……そうか」
 
 一歩、ショボンが前に出た。
 既に両手には、分離させたアルファベットZが握られている。
 
(´・ω・`)「一つだけ訊く。この世界のクー達が消えたのは、お前の仕業か?」
 
爪 ゚W〉《…………》
 
 ショボンの質問に、アンノウンは返事とは違う動きを見せた。
 赤い瞳を細め、表情を歪ませて。
 
 嗤っていた。
 
431 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 22:28:50.19 ID:7rVCYidG0
 
(´・ω・`)「答える気がないのなら、それで構わん」
 
 アンノウンが浮かべた蔑むような笑みに、ショボンは回答を諦めた。
 元より期待はしていなかったのだ。更に一歩、間合いを詰めていく。
 ツンもショボンに続く。握る拳に、力を籠めて。
 
爪 ゚W〉《クク……いいぞ。静かに燃える胸奥の火。即ち、怒り》
 
爪 ゚W〉《よくぞそこまで、成り果せた。“主人公格”として、申し分ない》
 
(´・ω・`)「……?」
 
 歩みを、止める。
 
爪 ゚W〉《異世界から降り立ち、異なる舞台にも拘わらず……この短期間で、見事だ》
 
(´・ω・`)「何を言っている? 主人公格とはなんだ」
 
爪 ゚W〉《クク……質問が増えたな》
 
(´・ω・`)「…………」
 
 この世界に訪れてから、彼らは戦い通しだった。
 アンノウンがどれほど危険な存在であるか、漠然と伝えられ、そしてそれを止めなければいけない。
 彼らが知っているのは、大雑把にそれだけだった。
 
 アンノウンの動機も、聖剣に関しても、実の所何も知らないと言っても過言ではない。
 語られる中の“鍵語”一つ、理解することができないのだ。
 
433 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 22:30:58.61 ID:7rVCYidG0
 
(´・ω・`)(こいつを倒すことに、必要な情報ではないと思うが……しかし……)
 
 どうしても、主人公格という言葉が、ショボンの胸に残っていた。
 何か重大な言葉ではないのか。そしてそれは、クー達が消えたことと関係しているのではないのか。
 アンノウンを打倒することこそが最優先なのは、今も変わらない。
 
 それでも、釈然としない何かが痼となって、彼の心に留まり続けている。
 
爪 ゚W〉《……残りの二人を待っていてもいいのだぞ?》
 
 実際、ショボンが迷った仕草を見せたのは、一瞬だった。
 アンノウンはそれを見逃さず、余裕を見せつける為にそんな提案をしたのだ。
 
ξ#゚听)ξ「二人を……どうしたの!?」
 
 ツンがそれに、声を荒立てて噛みつく。
 
爪 ゚W〉《貴様らにした事と同じだ。主人公格として相応しいかどうかを、見極めている》
 
 アンノウンが右手の手の平を上に向けると、その上の空間が揺らいだ。
 突然の変化に、咄嗟に二人は構え直し、臨戦態勢に移る。
 しかし生まれたものは、攻撃の為に生み出されたものではなかった。
 
 アンノウンの手の上に浮んだ小さな四角形の中で、何かが蠢いている。
 
436 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 22:32:56.59 ID:7rVCYidG0
 
ξ゚听)ξ(なに……? テレビの画面みたいな……)
 
爪 ゚W〉《かつてこの世界を支配しようとした魔……それと、戦っている》
 
爪 ゚W〉《見物でもするか?》
 
 ショボン達の位置からでは、ヴィジョンに何が映っているか見ることができない。
 だが、無事であることが立証されたのは、二人にとって有り難かった。
 
ξ゚听)ξ(二人が来るまで、このまま喋らせて時間を稼ぐこともできる……)
 
ξ゚听)ξ(でも、先に手の内を探ることも……!)
 
ξ゚听)ξ(ラストスノーの時と同じ様に、弱点を探っていくだけでも、有利にはるはず……!)
 
(´・ω・`)「……随分と余裕のようだが」
 
爪 ゚W〉《……?》
 
(´・ω・`)「確かに、訊きたい事は多くある」
 
(´・ω・`)「だがやはり、お前を討つことが、最優先だ」
 
439 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 22:35:24.15 ID:7rVCYidG0
 
爪 ゚W〉《……勇むのも構わんが、仲間がくるまで大人しくしていた方が得策ではないのか?》
 
爪 ゚W〉《世界を越え、邂逅を経たのだ。全員揃って滅してやらんこともない》
 
(´・ω・`)「心遣いとして、受け取っておこう」
 
 Zを握る手に、力を籠める。
 
(´・ω・`)「だが、残念だ。二人が着いた時には、お前の首は胴から離れているだろうからな」
 
 ショボンが長駆を前に倒し、駆けた。
 
爪 ゚W〉《…………》
 
 聖剣を持ち、ショボンを迎え撃たんと立ち上がる。
 同時に、アンノウンも地を蹴った。
 
 王の間の中央で、長大な武器が重なり合い、甲高い音が鳴る。
 眩い閃光が煌めいたと、ツンが錯覚してしまう程に高い音で。
 
(´・ω・`)「それが、聖剣か」
 
 ショボンが繰り出したのは、上方から振り下ろされる右のZ。
 アンノウンは聖剣を水平に寝かせ、交差させるように受け止めていた。
 すかさずショボンは、左のZを脇腹目掛け切り上げる。
 
442 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 22:38:02.04 ID:7rVCYidG0
 
爪 ゚W〉《ッ!》
 
 アンノウンは大きく後方へ跳び、Zを避けた。
 聖剣の刀身も長大である。それでもリーチでは少し、Zに分があった。
 
ξ#゚听)ξ『ブフダイン!!』
 
 好機と読んで、アンノウンの着地点へツンが氷柱を叩き込む。
 着地と同時に対象へ触れる程の、絶妙なタイミングであった。
 異形と化したドクオをも貫いた氷柱が、アンノウンを貫かんと降り注ぎ────
 
爪 ゚W〉《…………》
 
 意に、介さず。
 
 聖剣の一振りで、人の胴ほどもある氷柱は、まるで薄氷のように、粉砕された。
 
ξ;゚听)ξ「────!?」
 
 これ以上無い、追撃だった。
 実際にアンノウンは避けることが出来ず、聖剣を使い迎撃した。
 だが、ツンが驚いたのは迎撃されたこと自体ではなく、別の事だ。
 
ξ;゚听)ξ(なんで……まるで力を入れずに、振ってた……それだけで……)
 
 砕かれた氷柱は力を失い、文字通り空間に溶け、消えて行く。
 
446 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 22:40:10.59 ID:7rVCYidG0
 
 直後。
 
爪 ゚W〉《!!》
 
 聖剣を、垂直にかざした。
 盾にして、身を守る為だ。
 
(´・ω・`)「…………」
 
 強く睨むショボンの手には、アルファベットW。
 超至近距離からのFは惜しくも聖剣に弾かれ、音を立てて地に落ちた。
 すぐさまショボンは、Zを構え直す。
 
(´・ω・`)(なるほど……反応速度も、常人とは比べものにならん、が……)
 
(´・ω・`)(この距離からのWを、剣を立てただけで防いだ。あんな真似は恐らく、Zでも不可能だ)
 
(´・ω・`)(間違いなく、破壊されるはず……となると、強度はZよりも上と見て間違いはないか……)
 
 また、間合いを詰める。
 アンノウンは受け身に回らず、今度は斬撃を放った。
 水平に、ショボンから見て右から刃が迫る。
 
 狙いは、首だ。
 ショボンは右のZで、易々とそれを受け止めた。
 
449 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 22:42:36.30 ID:7rVCYidG0
 
(´・ω・`)「…………」
 
 交差した、聖剣とZ。ショボンはそこへ、更に左のZを見舞う。
 初撃と同じく、金属が交わる甲高い音が鳴る。
 
(´・ω・`)「……?」
 
 ふと、ショボンに違和感が走る。
 それを弾くように、ショボンは左足でアンノウンの腹を蹴り上げようと、
 
爪 ゚W〉《ッ……》
 
 しかし、瞬時に間合いを見切り、アンノウンは小さく後方へ跳ぶ。
 
 ツンの追撃は、ない。
 
 ショボンが再び斬り込んだからだ。
 二合、三合と、ショボンは何かを確かめるように剣撃を見舞う。
 その悉くを聖剣で防ぎ、或いは避け、アンノウンも剣を振るう。
 
ξ;゚听)ξ(ショボンさん……何かを、探ってる……?)
 
ξ゚听)ξ『……スアデラ』
 
 ショボンの意図を察し、ツンは以前のペルソナを喚ぶ。
 スアデラでしか扱えない言霊を、紡ぐ為だ。
 
452 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 22:45:42.09 ID:7rVCYidG0
 
ξ゚听)ξ『ラクカジャ!』
 
 交戦中のショボンの体を、青い光が包み込んだ。
 
ξ゚听)ξ(気休め程度だけど……ないよりは……)
 
 物理防御力を上昇させる力だ。
 剣撃を防ぎきることは叶わないだろうが、致命傷は避けられるだろうと判断しての補助だった。
 
 尚も剣戟は、続く。
 
(´・ω・`)(……隙がないな)
 
 アンノウンの斬撃は、速く、鋭い。
 巨大な剣にも拘わらず右腕一本で振り回し、双剣のZを防ぎ、或いは避け、的確に反撃を繰り出していた。
 
爪 ゚W〉《貴様の世界、知っているぞ》
 
(´・ω・`)「…………」
 
爪 ゚W〉《アルファベットZ。なるほど、確かに強力な武器だ》
 
 ショボンがアンノウンの胸元へ、左のZを突き出す。
 横へと流れ躱したところへ、それを追うように横へ薙いだ。
 聖剣を重ね、Zを受け止める。
 
 アンノウンの左のガードが、空いた。
 
455 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 22:47:48.80 ID:7rVCYidG0
 
(´・ω・`)「ふッ!」
 
 先のアンノウンとは、逆。今度はショボンが首を狙い、右のZを薙ぐ。
 アンノウンは逆に間合いを詰めた。左のZと聖剣の刃が不快な音を立て、滑る。
 懐に入り込んだアンノウンは、ショボンの右手首を掴み、右のZを止めた。
 
爪 ゚W〉《それを扱う貴様も、よく訓練されている》
 
(´・ω・`)「お前と戦う為に鍛えたわけじゃないんだがな」
 
 ショボンの右手と、それを掴むアンノウンの左手。
 両者の腕は小刻みに震え、均衡を保っていた。
 
爪 ゚W〉《ショボン=ルージアル。ヴィップの大将として尽力し、天下統一の為に戦う》
 
(´・ω・`)「ッ……」
 
 左のZも、右腕も、アンノウンを押し切る事はできない。
 アンノウンも声色こそ変わってはいないが、ショボンの手首を握る力は、相当なものだ。
 単純な力は、ほぼ互角と言えた。
 
爪 ゚W〉《全ては祖国のために……そうだな?》
 
(´・ω・`)「!!」
 
 アンノウンの瞳が、歪んだ。
 それが意味するのは、笑みだ。
 笑みか、言葉か、そのどちらかに、ショボンが一瞬の動揺を見せた。
 

456 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 22:50:07.36 ID:7rVCYidG0
 
 そこへ。
 
ξ#゚听)ξ『ブフダイン!!』
 
 再度放たれた、アルテミスの一撃。
 ショボンを巻き込むことを危惧してか、生まれた氷柱は一つだけだった。
 均衡状態のアンノウンの頭上目掛け、先端を尖らせた氷柱が迫る。
 
爪 ゚W〉《ッ!》
 
 屈み、また後方へ跳んだ。
 堰を失った左右のZが、鋏のように交差する。
 何もない空間に空しく落ちた氷柱を両断し、ショボンはそこで手を止めた。
 
ξ#゚听)ξ『これなら……! ダイアモンドダスト!!』
 
 ツンはブフダインを避けられることを、読んでいた。
 これこそが本命の一手。高密度の冷気と氷の礫が、後方に下がったアンノウンに迫る。
 
爪 ゚W〉《こんなもの……!》
 
 迫り来る吹雪を、聖剣を振り下ろして迎え撃った。
 普通であれば、そんな動作で止められる事象ではない。
 
ξ;゚听)ξ「えっ……!?」
 
 聖剣によって生まれた剣圧がダイアモンドダストに触れるや否や、
 絶対零度の嵐は掻き消えてしまっていた。
 
458 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 22:53:09.60 ID:7rVCYidG0
 
爪 ゚W〉《……涼風よ》
 
 冷気の余韻が、アンノウンの長髪を揺らした。
 しかし、それに浸ることはない。アンノウンはすぐに動いた。
 
 再び駆けた先は、ツンの眼前だ。
 
ξ;゚听)ξ「ッ!」
 
 咄嗟に間合いをとろうと、後方へ下がりつつ、
 
ξ;゚听)ξ『ペルソ────』
 
爪 ゚W〉《……遅い!》
 
 アンノウンの間合いから完全に逃れることは、できなかった。
 聖剣を振り下ろし────彼女の頭上直前で、聖剣は止まる。
 
(´・ω・`)「俺を忘れてもらっては困るな」
 
 横合いから左のZで、止めていた。
 すぐに右のZで追撃を計る。アンノウンは大きく跳躍することでかわし、同時に距離を取った。
 
ξ;゚听)ξ「す、すみません……」
 
(´・ω・`)「いや、俺も少し、反応が遅れた」
 
462 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 22:55:06.97 ID:7rVCYidG0
 
 アンノウンの言葉で動揺した所為、ではなかった。
 ツンを助ける為にWを使う事を、躊躇していたのだ。
 
(´・ω・`)(残りのFも、後二本……あのタイミングでは、結局また防がれていただろう)
 
ξ;゚听)ξ「……ショボンさん」
 
(´・ω・`)「なんだ?」
 
ξ;゚听)ξ「アルテミスの力を止めたのは……聖剣の力を使ったんでしょうか……?」
 
(´・ω・`)「聖剣か……」
 
 ショボンも、ツンも、それぞれがこの世界のクーとブーンから聞いていた。
 しかし、二人が話し、二人が聞いたことも、同じ内容だったが。
 
(´・ω・`)「聖剣には、願いを叶える力は残っていないと聞いている」
 
ξ;゚听)ξ「……私もです」
 
(´・ω・`)「それをどうやって知ったのかは分からんが、この情報は多分、間違ってはいない」
 
ξ;゚听)ξ「……どうして、そう言えるんですか?」
 
(´・ω・`)「力を扱うには、別の力……対価が必要だと、クーは言っていた」
 
(´・ω・`)「だとすれば、防御に使うような無駄なことには、使わないはずだ」
 
465 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 22:57:28.86 ID:7rVCYidG0
 
ξ;゚听)ξ「……でも、それほど力を必要としないのかも……」
 
(´・ω・`)「絶対とは、言い切れん。だが、俺は他の可能性が高いと見ている」
 
ξ;゚听)ξ「他の可能性……?」
 
 ショボンはアンノウンを睨み、Zを構えたまま、続けた。
 
(´・ω・`)「聖剣自体に、他に特殊な力がある可能性だ」
 
(´・ω・`)「十数合、干戈を交えた。打ち合う数を重ねる度に、それが明確に見えてきた」
 
ξ;゚听)ξ「…………」
 
(´・ω・`)「あいつは全ての攻撃を、“片手”で持った聖剣で、防いでいた」
 
(´・ω・`)「あの巨大な剣を片手で振り回すのは、ただの怪力であるとすれば、まぁ、納得はできる」
 
(´・ω・`)「しかし、さっき奴と組んだ時、力は俺と然程変わらなかった」
 
ξ;゚听)ξ「そ、それが……?」
 
(´・ω・`)「武器を扱わないお前には解らんかもしれんが、それでは辻褄が合わないんだ」
 
ξ;゚听)ξ「……?」
 
468 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 22:59:38.25 ID:7rVCYidG0
 
(´・ω・`)「長い物……例えば、旗だな。末端を持つと、重いだろう?」
 
ξ;゚听)ξ「あっ……!」
 
(´・ω・`)「同じ力で打たれた剣撃を、長大な剣で防いだ場合、受ける側の負担は大きい」
 
(´・ω・`)「そのはずなのに、聖剣は微動だにしなかった。片手で柄……末端を持っているのに、だ」
 
(´・ω・`)「斬撃どころか、至近距離からのWですら剣を立てただけで、止められた」
 
(´・ω・`)「そして……お前のペルソナも、聖剣の一振りで力を失っている」
 
ξ;゚听)ξ「…………」
 
(´・ω・`)「もし、アンノウン自身が何らかの力を使っているのなら、氷柱を避けることもしなかったはずだ」
 
(´・ω・`)「だから、恐らく────」
 
 刃を交えたショボンだからこそ、そこに辿り着いた。
 そしてその結論は、この世界の戦士達が敗北した原因にも、繋がっている。
 この世界のツン最強の雷撃も、ブーン達決死の禁呪をも打ち破ったのも、その不可視の能力こそが、全てであった。
 
爪 ゚W〉《談合は、もう良いのか?》
 
(´・ω・`)「あぁ、構わんさ」
 
 二人の会話は、アンノウンに届いてはいなかった。
 何かを講じているようだ。彼が考えていたのは、たったのそれだけだ。
 
474 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 23:04:07.95 ID:7rVCYidG0
 
 アンノウンにとって、二人の力量がどれほどあろうとも、関係はない。
 上等な主人公格、つまり聖剣の糧として、ショボンとツンは現れた。
 後は聖剣を突き立て、力を補充するのみだ。
 
 この世界を消し去った後に、残った力を使い別世界へと飛ぶ。
 彼にとって思い描いている未来は予定ではなく、確定事項なのだ。
 もとより、四人が揃った時に纏めて始末するつもりである。
 
 二人を試した時と同じく、愉しんでいるのだ。
 
爪 ゚W〉《……ククッ……主人公格との戦いというものは、かくも我を滾らせる》
 
ξ;゚听)ξ「……?」
 
爪 ゚W〉《小娘よ。我は愉しんでいるのだ。得た肉体を使い、力を使い、相剋の中に立つ》
 
爪 ゚W〉《結果は見えているが……それでも、躍動する悦びは我を奮い立たせる》
 
爪 ゚W〉《そしてその先にあるものが……同時に待ち遠しいのだ》
 
 左腕を挙げ、拳を強く握った。
 昂ぶった気が、そうさせていた。
 
爪 ゚W〉《聴かせろ! 貴様達の断末魔を! 夢半ばで途切れる絶望の血涙を降らせてみろ!》
 
爪 ゚W〉《我を愉しませる事が……貴様達の使命なのだから!!》
 
476 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 23:06:17.27 ID:7rVCYidG0
 
(´・ω・`)(……どうにも、とらえ所のない奴だが……)
 
(´・ω・`)(油断してくれているのなら、こちらとしては有り難い)
 
 悦に浸るアンノウンを無視して、ショボンが駆ける。
 アンノウンは眼を細めたまま、聖剣を構えた。
 右のZを振り下ろす。聖剣を掲げ、それを防いでいた。
 
(´・ω・`)(俺の予想は、的を射ているとは思うが……)
 
(´・ω・`)(……もう一つ……)
 
 防がれた右のZを引くと、またすぐに水平に薙ぐ。
 今度は聖剣を縦に構え、アンノウンは余裕を持って防いだ。
 
(´・ω・`)(この動き……やはり……)
 
 二度の斬撃で、ショボンはもう一つの違和感を膨らませた。
 そして三度、またも右のZを振るう。
 同じ様に、聖剣で防いだ。そこへ、今度は左のZで突きを見舞う。
 
爪 ゚W〉《ッ》
 
 右へと跳び、それを躱す。ショボンの間合いからも、完全に脱していた。
 ショボンもツンの位置まで下がり、十数歩の距離を置いて、再び対峙する形となった。
 

477 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 23:08:56.69 ID:7rVCYidG0
 
(´・ω・`)(右腕しか、使えないのか……?)
 
(´・ω・`)(いや、俺の手首を掴んだ手は、左手だったな)
 
 ショボンが右のZを繰り出せば、アンノウンから見れば、左方からの攻撃となる。
 だがアンノウンは聖剣を持ち替えることをせず、不自然な体勢で聖剣を右手に持ったまま、防いでいた。
 今の三合だけではない。今までの攻撃を、全てそうして防いでいたのだ。
 
(´・ω・`)(持ち替えないにしても、両手で握ることすらしないのは……どういうことだ?)
 
(´・ω・`)(片手で余裕を見せつけている……考えられんこともない、が)
 
 思考に費やすは、数瞬。
 
(´・ω・`)(……まぁ、仕掛けてみるか)
 
 ショボンが少し、首を動かす。
 聖剣の能力を語った後に、次の手は既に話し終えていた。
 
ξ゚听)ξ(……はい!)
 
 それは、ツンへの合図だった。短い時でも、共に戦い死線を越えた二人である。
 一言で全てを汲み取るまではいかないが、急造の域は充分に脱していた。
 それは開戦時にツンが放った追撃を見れば、明らかだ。
 
(´・ω・`)「ッ!」
 
 短く息を吸い込み、ショボンが地を蹴った。
 
482 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 23:11:40.63 ID:7rVCYidG0
 
爪 ゚W〉「ッ!?」
 
 長駆のショボンが、アンノウンの眼前から突如として、消えた。
 実際には、消えたように見えただけだった。疾駆しながら限りなく低く、身を屈めただけだ。
 注視していれば、アンノウンでなくともすぐに気が付く。
 
 はずだった。
 
ξ#゚听)ξ『クレセントミラ────ッッ!!』
 
 それに気が付けなかったのは、ショボンが屈んだ直後に、ツンの姿が見えたからだ。
 
 ショボンの頭上を、アルテミスが放った金色の矢が通り過ぎていく。
 “力”の通過を感じ取ったショボンはすぐに上体を戻し、矢に続く。
 
爪 ゚W〉《チィッ!!》
 
 クレセントミラー。ツンが扱う中で、最強の一撃だ。
 アンノウンもそれを知っていたが、よもやこんなに早い局面で使用してくるとは、思っていなかった。
 これまでのアルテミスの力を迎撃したように、光矢を断たんと聖剣を振り上げた。
 
 そして矢の先端は、聖剣の刃を受け、断たれる。
 
ξ;゚听)ξ(っ……やっぱり……)
 
 対象に触れれば発動するはずの球体は、生まれることなく。
 光の矢は細かな黄金の粒子を撒きながら、無に溶けていった。
 
486 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 23:13:56.02 ID:7rVCYidG0
 
ξ゚听)ξ(ショボンさんの、読み通り!)
 
爪 ゚W〉《ッ!?》
 
 クレセントミラーの、すぐ後方。金色の軌跡を、滑走するように。
 光の矢に隠れる形で、もう一つの矢が既に放たれていたのだ。
 気付かれぬように、光に紛れるように、巧妙に。
 
 
 その矢の名。アルファベット、F。
 
 
(´・ω・`)

 
 構えられたWは、既に弦から手を離した後だ。
 
爪 ゚W〉《お……おおおおぉぉぉぉッッ!》
 
 アンノウンの目に、Fはひどくゆっくりと、流れていた。
 同じ様に、自身の体も重くなったような錯覚に見舞われる。
 Fの軌道は、体の中心線を見事に狙い撃たれていた。
 
 アンノウンは体を捻り、決死の回避を試みる。
 
491 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 23:17:06.39 ID:7rVCYidG0
 Fが、貫いた。
 
 アンノウンの左肩を掠め、遥か後方の、石壁を。
 
ξ;゚听)ξ「ッ……!」
 
 ツンの一撃に間に合わせる為、Fを影矢とする為に、速射を要求された。
 加えて、体勢も万全ではなかった。ショボンは弦を充分に引き絞ることができなかったのだ。
 威力はともかく、Fの射出速度においてそれは致命的であった。
 
 結果、Fは避けられてしまう。
 
 
 彼にはそれが、わかっていた────
 
 
(´・ω・`)「はぁッ!!」 
 
 
 わかっていたから、こそ。
 
 
 己が放った一撃が緩慢であったからこそ、ショボンは更なる追撃に、移行していた。
 Wは無造作に床に置かれていた。Wを背に仕舞う間すら、惜しかったからだ。
 両の手には勿論、最強のアルファベットZがそれぞれ握られている。
 
 アンノウンは聖剣を振り上げた体勢のまま、身を捩っている。
 万が一の聖剣の迎撃を防ぐため、ショボンは左のZを水平に頭上へと掲げた。
 
 そして右のZを、がら空きの胴目掛け、振り下ろした。

492 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 23:19:23.77 ID:7rVCYidG0
 
(´・ω・`)「…………」
 
 頭上を覆うようにして掲げた、左のZに交差する、聖剣。
 
爪 ゚W〉《…………》
 
 胴を断つ、と確信を持って振り下ろした、右のZは。
 アンノウンの脇腹の、本当に一歩手前で、止められていた。
 
(´・ω・`)「……絶好の機、と思ったんだが」
 
 右のZを止めたもの。
 アンノウンの左手に握られていたもの。
 長さは、約五尺。紫電纏う────いや、全てが雷で創られた雷剣。
 
 この世界のツンが使っていた、召喚術を応用して生み出された、雷剣だった。
 
 それを逆手に持ち、その先端を石の床に突き立て支えにして、Zを受け止めたのだ。
 
爪 ゚W〉《残念だったな。今のは、惜しかったぞ》
 
(´・ω・`)「左手に何かあるとは見ていたが、なるほどな。異能の力、か」
 
 交えた獲物と同じ様に、言を交える。
 
ξ;゚听)ξ(そんな……あと少しだったのに……)
 
495 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 23:21:28.70 ID:7rVCYidG0
 
 聖剣を弾き、ショボンは後方へ下がる。
 Wを拾い上げた後に、アンノウンと再び向かい合った。
 
(´・ω・`)「…………」
 
 ショボンは右手に、少しの痺れを感じていた。
 Zを通しての雷剣の感触は、彼に明らかな質量を思わせる。
 中に芯があり、それが紫電を纏っている。そう創られていると、ショボンは感じていた。
 
 当然、彼が雷を斬ったことなどはない。初めての感覚に、少しの戸惑いを見せる。
 極々微量な静電気を幾重にも受けた。右手の痺れは、例えるならそれだ。
 
(´・ω・`)(左手に、奥の手を隠していた……)
 
(´・ω・`)(だが、両手で聖剣を持たない理由にはならない)
 
(´・ω・`)(加えて……)
 
 痺れの他に、確かな感触を思い出す。
 アルファベット同士を、物質と物質を交えた、確かな感触。
 聖剣との剣戟では、感じ得なかったものだった。
 
(´・ω・`)(単純に、聖剣とは重量が違うということか……)
 
(´・ω・`)(あの雷剣の方が重いとは、到底思えないが……)
 
498 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 23:23:31.69 ID:7rVCYidG0
 
(´・ω・`)(もしかすると、俺が思っている以上に聖剣は厄介なのかもしれん)
 
(´・ω・`)(しかし、攻める度に確実な手応えがある……それが、逆に……)
 
 ショボンが抱いた疑問について、ツンも同じ事を思っていた。
 戦い始めて、あまり時間は経ってはいない。
 その中で、討つことこそ叶わなかったが、好機と呼べるものは何度もあった。
 
ξ゚听)ξ(追いつめてる……確実に……)
 
ξ゚听)ξ(でも、なんで……わからない事もある、けど……)
 
ξ゚听)ξ(これなら、まだ……)
 
(´・ω・`)(まだ、ラストスノーの方が、手強かった)
 
 決死で糸を辿り、ショボンがペルソナを得て漸く打倒に至ったラストスノーの方が、間違いなく。
 攻撃の熾烈さも、規模も、この戦いの比ではなかった。
 人型と人外、という差はあるものの、黒幕たるアンノウンが劣っているということは、如何にも不自然だ。
 
 あの時程に攻め倦ねている状況でもない。単純に攻めるだけで、勝利への道が見えてくる。
 決め手には欠けるが、それでも二人は、勝てないという事は微塵も感じなかった。
 且つ、未だ二人には最高の奥の手が残されている。
 
 自身達と同じく、この世界に導かれた仲間達だ。
 
 ここにブーンとクーが加われば、もはや勝利は必至とも思えるほどに。
 

499 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 23:25:59.96 ID:7rVCYidG0
爪 ゚W〉《…………》
 
 左手に持たれた雷剣が、消えた。
 
(´・ω・`)「!!」
 
 そのまま、アンノウンは左腕を振り上げる。
 頭上でピタリ止められた手の形は、手刀。
 
 蛇のような形をした炎が、ショボンに迫る。
 不意を突いたわけでもなく、Wで放たれたFのように鋭くもない。
 ショボンは難なく躱した。
 
 しかしその炎には、見覚えがあった。
 
(´・ω・`)(今のは……クーが扱っていた召喚術……)
 
爪 ゚W〉《ククク……》
 
 ショボンの思考を読んだのか、アンノウンの目が満足げな笑みに歪む。
 そのままゆっくりと左手を下ろし、手首を返した。
 手の平を上に向け、その上に生まれたのは人の頭ほどの火球だった。
 
ξ;゚听)ξ「あれは……ブーンの……!」
 
 そのままそれを、ツン目掛け投げつける。
 ショボンはアンノウンから視線を外さずに、動かなかった。
 あの程度なら避けられるとショボンが判断した通り、ツンはそれをあっさりと躱す。
 
 火球は後方の壁に激突し、派手な音を立ててその力を失った。
501 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 23:28:12.35 ID:7rVCYidG0
 
 壁に穴は空いていない。
 放射状に広がった黒い焦げ目と、小規模なクレーターが生まれていた。
 威力もさることながら、この城の造りは相当頑丈なようだ。
 
 そんなことは、二人には関係はないのだが。
 
(´・ω・`)「ツン」
 
ξ;゚听)ξ「は、はい」
 
(´・ω・`)「今の火球に、見覚えがあるのか?」
 
 ツンの発言を、ショボンは聞き逃していなかった。
 
ξ;゚听)ξ「この世界のブーンが、同じ様な魔術を使ってました」
 
(´・ω・`)「なるほどな……その前の蛇のような炎も、クーが使っていたものだ」
 
ξ;゚听)ξ「それって……つまり……」
 
(´・ω・`)「確定付けるには情報が少ないが、恐らく奴も、クー達のような召喚術を扱える」
 
ξ;゚听)ξ「…………」
 
504 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 23:30:28.73 ID:7rVCYidG0
 
爪 ゚W〉《……いいぞ……懸命に端緒を探れ……もっと我を愉しませるのだ》
 
 今回の二人の会話は、アンノウンに届いていた。
 
(´・ω・`)「……手の内を晒すことは結構だが、後で痛い目を見ても知らんぞ」
 
爪 ゚W〉《その威勢、どこまで保つか楽しみだ》
 
(´・ω・`)「…………」
 
(´・ω・`)(正にこちらの台詞、と言いたいところだが……)
 
ξ゚听)ξ(さっきのショボンさんの攻撃……アンノウンが追いつめられてたとしか思えない)
 
ξ゚听)ξ(でもなんで、なんでここまで余裕でいられるの……?)
 
ξ゚听)ξ(なにか強力な召喚術が……ある……?)
 
(´・ω・`)(全ての召喚術を見たわけじゃない……)
 
(´・ω・`)(聖剣を持つ奴には通じなくとも、俺達にとっては剣呑と言える力があるのかもしれない)
 
(´・ω・`)(……そうだ。未だ奴の力が未知数であることに変わりはない)
 
 二人同時に、考えを改めた。
 普通に考えれば、ラストスノーを使役していた存在が、それより劣るという事は考え難い。
 しかしそれでも、ショボンが放ったあの一手に、アンノウンは確実に追いつめられていた。
 
 その事実が、逆に二人を迷わせている。

505 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 23:32:53.51 ID:7rVCYidG0
 
爪 ゚W〉《どうした? 攻めてこないのか?》
 
(´・ω・`)「…………」
 
爪 ゚W〉《残りの二人を待っても良い、とは言ったが、辿り着く保障はないのだぞ。
     辿り着くことができなかったのなら、その程度だったということだ》
 
ξ゚听)ξ「…………」
 
 二人は黙って、アンノウンの言葉に耳を傾けていた。
 何か勝利に繋がるヒントが飛び出すかもしれない。
 その余裕から、打倒に至るものを示唆する言葉を漏らすかもしれない。
 
 それを逃すまいと思慮深く、静聴していた。
 
爪 ゚W〉《それはそれで興醒めだが……その時お前達に訪れる絶望を味わうのもまた、一興と言えよう》
 
 分断されたブーンとクーについて、今の二人は然程気にかけてはいなかった。
 同じく選ばれた存在である者同士が感じ得ていた予感、だけではない。
 BOON-D1が誇る超火力兵器に、クーが操る仲魔達。相当な戦力であることは、容易に想像がつく。
 
 実際に戦った姿を見たわけではないが、とショボンは言った。
 だが、戦いに慣れた二人とあの武器達を鑑みるに、自分たちよりも総合的な戦力は恐らく、上だ。
 そう考えていたショボンがそれを言わなかったのは、ツンの気を殺がないようにする為だった。
 
 ツンも勿論、そのことは充分に理解している。
 ショボンの懸念は、杞憂だった。
 
509 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 23:35:07.49 ID:7rVCYidG0
 
爪 ゚W〉《…………ふむ、興、と言えば》
 
(´・ω・`)「……?」
 
 自身の言葉に、アンノウンが何かを閃いたようだ。
 
爪 ゚W〉《こういうのは、どうだ?》
 
 手の平を前方へ向けて、腕をあげた。
 何かを放出する、と二人は案じたが、その予想は外れることとなる。
 
 アンノウンの手から生まれた物は、先と同じく、雷だった。
 異なるのは、その形。頭ほどの大きさの紫電を纏う、人型をした雷が創られていた。
 
ξ;゚听)ξ「……?」
 
 更にアンノウンが、そのまま左手の指を曲げる。
 それに呼応して、地に落ちたままのアルファベットFが浮き上がった。
 人型の雷とFが、並び浮かぶ形となった。
 
(´・ω・`)「何をする気だ」
 
爪 ゚W〉《興趣を添える、というだけだ》
 
 左手が強く握られ、拳となる。
 同時に、雷とFが強い光を放ち、膨れ上がった。
 
511 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 23:37:17.00 ID:7rVCYidG0
 
(´・ω・`)「ッ……」
 
 光のサイズには、差異があった。
 雷だった方はFの側よりも、少し小さい。
 
爪 ゚W〉《さっき、我はお前に言ったな》
 
 視線は、ショボンに向いている。
 
(´・ω・`)「……?」
 
爪 ゚W〉《我は、お前の世界を知っている、と》
 
(´・ω・`)「…………」
 
爪 ゚W〉《そして勿論、小娘よ。お前の世界も、知っているぞ?》
 
ξ;゚听)ξ「……それが……なによ……」
 
爪 ゚W〉《……ならば、この者達に見覚えはないか?》
 
 二つの物体から発せられていた光が、弱まる。
 その中に生まれていた物は、人程の大きさをしていた。
 
爪 ゚W〉《媒体は我の魔力と、異世界の武器。悪くは無いと思うがな》
 
爪 ゚W〉《我を知るなどと不遜な振舞をした老骨が編み出した力……。
     セカンドウィルスといい、なかなかどうして、役に立つではないか》
 
515 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 23:40:19.96 ID:7rVCYidG0
 
 この世界のショボンと、異世界のクーはそれを目にしていた。
 
爪 ゚W〉《さぁ、殺し合え》
 
 全知全能を手にした、賢王フォックスが生み、溺れた力。
 
 即ち、異世界の存在を具現化する力────
 
 二つの光が、溶けた。
 その後に佇むものは、二人の人間。
 
 
(`∠´)
 
 
ζ(゚、゚*ζ
 
 
 二人にとって、見覚えがあるどころではなかった。
 具現化された二人の姿は、心に根強く残りついている者だ。
 
(´・ω・`)(ベル……)
 
ξ;゚听)ξ「デレ……」
 
519 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 23:43:48.80 ID:7rVCYidG0
 
 稀代の英傑、ベル=リミナリー。
 ツンに真の恐怖を味わわせた、デレ。
 
 その二人が、アンノウンの力によって、眼前に現れた。
 
(´・ω・`)「今更何が起こっても不思議はないが……なるほどな。
       フィレンクトもお前の興趣とやら、だったわけか」
 
爪 ゚W〉《その通りだ。残念ながら、お前には意味がなかったようだがな》
 
(´・ω・`)「いくら姿形を模していようと、所詮は偽物だ。斬り伏せることに、迷いはない」
 
 アルファベットZを握る手に、力を籠めた。
 
(´・ω・`)「このまやかしも、同じだ」
 
(´・ω・`)「しかし」
 
 追懐に駆られた事は、間違いない。
 だが、それをショボンが想ったのは、一瞬のことだ。
 


520 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 23:44:48.61 ID:7rVCYidG0
 
 今は別の感情が、彼の胸懐に燻っていた。
 
(´・ω・`)「俺の世界でアルファベットを握る者たち全てが仰ぐ存在」
 
(´・ω・`)「それが、ベル=リミナリーだ」
 
(´・ω・`)「お前如きが愚弄していい相手ではない」
 
 ショボンは右のZをベルに、左のアルファベットをアンノウンに向けた。
 
(´・ω・`)「唯一無二の英傑を弄んだ罪、万死に値する」
 
 心に燃えた怒りは言葉だけにではなく、表情にまで表れている。
 ショボンがこの世界にきてから、最も感情を露わにしている瞬間だった。
 彼にとってベル=リミナリーとは、それ程の男なのだ。
 
 
523 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 23:47:10.17 ID:7rVCYidG0
 
 一方の、少女は。
 
ξ゚−゚)ξ「……」
 
 かつての友は、豹変してしまった。
 嫉妬と、それからくる殺意を、ツンは叩きつけられた。
 前方に佇む、ツンと瓜二つの顔、姿をした少女、デレにだ。
 
 異なるものは髪型と、そして────
 
(´・ω・`)「ツン」
 
 ベルへの視線は外さずに、ショボンがツンに声をかける。
 しかしツンは、ショボンが予想した言葉を発しなかった。
 
ξ゚−゚)ξ「大丈夫です」
 
 正に、射貫くような視線。
 デレを見据える姿は、凛として矢の如く。
 言葉にも、口調にも、そしてその姿にも。覚悟の色は、浮き出ていた。
 
(´・ω・`)「……そうか」
 
 フィレンクトと対峙した時にも、ショボンは同じ懸念を抱いた。
 見知った者の姿をしている事で、ツンが力を出し切れない可能性がある。
 彼はそれを案じたのだが、それが杞憂だったと知り、それ以上は言わなかった。
 
526 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 23:49:35.54 ID:7rVCYidG0
 
 二人が眼前の敵に持つ因縁は、異なる。
 だが、目にした時に生まれた怒りは、同じだった。
 
 ショボンは尊び、ツンは救うと誓った相手だ。
 それを傀儡とし、敵として嗾けるなど、愚弄以外の何物でもない。
 憤怒の炎を滾らせることは、必然と言えた。
 
 それもやはり、アンノウンの心算であるのだが。
 
 
爪 ゚W〉《クク……怒れ。もっと、もっとだ》
 
 
 愉悦。      . モト
 ただ、それだけを欲め。
 
 主人公格が黒き感情を、憤怒を、嫉妬を、殺意を募らせる事が、
 アンノウンにとっての、愉悦であった。
 
 己が抱いた感情を、主人公格達に味わわせる。ただ、それだけの為に。
 
(`∠´)
 
ζ(゚、゚*ζ
 
 この二人は、生み出された。
 
528 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 23:51:45.19 ID:7rVCYidG0
 
爪 ゚W〉《さて…………》
 
 しん、と、刹那の間をまた切り裂いて。
 
爪 ゚W〉《────いけ》
 
 その声に、二人の傀儡が疾駆する。
 
(´・ω・`)「ツン。一人でいけるか?」
 
ξ゚听)ξ「やります。いえ、やらせてください」
 
(´・ω・`)「……わかった。アンノウンにも注意を払え」
 
ξ゚听)ξ「……はい!」
 
 左右に跳躍し、展開。互いの距離を拡げる。
 交戦の余波を及ばせない為だ。
 
 続き、ベルがショボンを、デレがツンを、それぞれ追う。
 
 広い王の間の左側に、アルファベットを携えた二人が。
 右側に、ペルソナ能力を操る二人が、対峙する形となる。
 
 アンノウンは静かに、真紅の眼でそれを見つめていた────
 
532 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 23:54:08.32 ID:7rVCYidG0
 
──左方・アルファベット──
 
 感情的になっている。
 ツンの言葉は、そう思わされるものだった。
 逡巡するということは、どうやらなさそうだ。
 
 だが、勇みすぎている。
 新たに生まれた懸念は、それだった。
 
 目の前に立ち塞がる男は、真っ直ぐにこちらを見つめていた。
 自分の世界で武に生きる者なら、知らぬものはいない。
 アンノウンに発した言葉は、決して過言ではなかった。
 
(`∠´)
 
 ベル=リミナリー。
 大国ラウンジの礎を築いた、歴史に名を刻む程の英傑。
 軽々しく形容する言葉ではないが、彼になら誰もが最強の武将と声を揃えるだろう。
 
 その男を、例え姿形を模しただけであっても、ただの手先として扱った。
 戦の、将の、アルファベットの象徴とも言える、誉れ高き男を。
 
 ツンと同じく、自分も感情的になっているのが分かる。
 一瞬、頭に血が昇りかけたが、今は冷静さが欠如していないことを自覚できていた。
 

533 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 23:56:16.66 ID:7rVCYidG0
 
 ツンに向かっていった女は、自分は心当たりがないが、少なからず因縁がある相手なのだろう。
 自分に対してベルを出してきたことを鑑みるに、それは間違いないはずだ。
 
 だとすれば、ツンが自分と同じ感情を抱いたことは、充分に合点がいく。
 だからこそ冷静さを欠いていないかが、気懸かりだった。
 
 ラストスノーの空間に落ちた時、ツンよりも優れた者がいるのかと訊いた。
 勿論だと、ツンは答えた。あの女がそうなのかは、分からない。
 
(´・ω・`)(……もし、そうだとすれば……)
 
 ツンは今、非常に危険な状況にあると言える。
 
 大丈夫と、ツンは自ら言い放ち、戦いに臨んでいる。
 普通に考えれば、勝算のない戦いに臨むことはしない。
 だが、感情的になっているが故に、判断力が欠如している可能性は大いに有り得る。
 
 懸念は、それが全てだった。
 
(`∠´)「……ショボン=ルージアル」
 
(´・ω・`)「ッ……」
 
 重い声が、耳に触れた。
 自分の意識が、急速に引き付けられる。
 
535 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/19(日) 23:58:30.95 ID:7rVCYidG0
 
(`∠´)「ラウンジの天下の為に────」
 
 ベルが背に、右手を伸ばす。
 次に戻った手には、刃が中間で屈折した特徴的な武器が、握られていた。
 
(`∠´)「────貴様を、討つ」
 
 向けられる、アルファベットV。
 そして、もう一つ。
 背に背負われた、翼のように見える物。
 
(´・ω・`)(W……アルファベットも同一、か……)
 
 全てが、ベルだった。
 憎らしいほどに。
 
 こいつが自分に向かってきたのは、間違いなく計略による物だろう。
 アンノウンが何を考えているか、未だ掴めていない。
 だがそう考えれば、この二人を生んだ事の筋が通る。
 
 自分を狙ってくれるのは、好都合だった。
 ツンがペルソナを駆使すれば、アルファベットだけのこいつでは一溜まりもない。
 それはそのまま、自分にも当てはまる。
 
 こいつが何らかの能力を付加されている可能性も、捨てきれない。
 それでもこの偽物は、自分の手で、アルファベットで、討ちたかった。
 
 とても効率的と言えない、感情が生んだ意地だった。
 
539 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/20(月) 00:01:08.41 ID:10asvdzI0
 
 しかし、ツンの事を考えると出来るだけ早く片付ける必要がある。
 
(´・ω・`)「その姿で俺の前に立たれると、不愉快だ」
 
 一歩、踏み込んだ。
 握る双剣に、力を込める。
 奧に見えるアンノウンは、微動だにしていなかった。
 
 自分はZ。相手はVだ。
 何もなければ、優位は変わらない。
 Wを使う隙も、与えるつもりはない。
 
 驕りも、油断も、ない。
 アルファベット以外の力を使われようが、備えは充分にある。
 極力ペルソナは使いたくないが、状況次第ではそれも仕方がない。
 
 
 ベルが、駆けてきた。
 
 
(#`∠´)「はぁッ!!」
 
(#´・ω・)「ふんッ!!」
 
 頭上から振り下ろされたVを、右のZで、敢えて真正面から受け止める。
 この世界にきて初めての、純粋なアルファベット同士の邂逅。
 
 それが、ひどく懐かしいもののように思えた。
 
541 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/20(月) 00:03:24.48 ID:10asvdzI0
 
──右方・ペルソナ──
 
 ほんの数日前に会ったばかりなのに、数ヶ月も経っているような錯覚を覚えた。
 それがなんなのかはよくわからないけれど、今、私の目の前に居るのは、どうみても。
 
ζ(゚ー゚*ζ「ひっさしぶり〜」
 
 デレ、本人だ。
 私と同じ制服を着て、あの時のままで、私を見ていた。
 
ξ゚听)ξ「…………」
 
ζ(゚、゚*ζ「なによ〜。挨拶くらいしなさいよね」
 
 口調も態度も、あのままだった。
 つまり、ペルソナを得た後の、まま────
 
ξ゚听)ξ「……久しぶりね」
 
 アンノウンの魔力によって生まれた、“偽物”のデレ。
 それに対して「久しぶり」というのも、何か違和感がある。
 
 加えて、本物のデレとはもう一つ違うものが、ある。
 
ζ(゚、゚*ζ「ていうか何? この埃臭いとこ……」
 
ξ;゚听)ξ(……相変わらずだなぁ……)
 

542 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/20(月) 00:05:32.22 ID:10asvdzI0
 
ζ(゚、゚*ζ「ま、どうでもいいわ」
 
ξ゚听)ξ「…………」
 
ζ(゚、゚*ζ「とっととアンタを、殺してあげる」
 
ξ゚听)ξ「ッ!」
 
 膨れ上がる、ペルソナの共振。
 デレの影が、私へ向けて静かに伸び上がる。
 這い寄るように、ゆっくりと。
 
ζ(゚ー゚*ζ『ペルソナ』
 
 影が、立ち上がった。
 ショボンさんよりも、少し大きい。
 その色は影のまま、アンノウンよりも深い漆黒に包まれていた。
 
 背中には、一対の翼がある。ペルソナも、あの時の姿のままで現れた。
 
ζ(゚ー゚*ζ『お願い、アカ・マナフ』
 
 邪神、アカ・マナフ。
 あれを呼ぶには、黒きトラペゾヘドロンが必要と言っていた。
 でも今デレの手には、それがない。
 
 何故喚び出せるのか、アンノウンの力が関係しているのか、理由はわからない。
 しかし、どうでもいいことだった。
 
544 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/20(月) 00:07:19.49 ID:10asvdzI0
 
ξ゚听)ξ(…………やっぱり)
 
 違う。
 
 違和感が、はっきりと形を成していく。
 デレのペルソナを前にして、確信した。
 
 あの時程の恐怖も、威圧感も、何も感じなかった。
 
 アルテミスを得て、力が幾らか増したおかげなのか、少なからずそれに理由があるのだろう。
 それだけではなく、あの箱がない所為か、アンノウンの力が不完全だった可能性もありうる。
 
 冷静さを欠いていて、ショボンさんに啖呵を切ってしまった。
 なんにせよ、そんなことをした手前、ここは一人で戦わなくてはいけない。
 足を引っ張ってしまうわけにはいかないのだから。
 
 でも、これならきっと、なんとかなりそうだ。
 
ξ゚听)ξ『アルテミス!』
 
ζ(゚、゚;ζ「ッ!?」
 
 デレの顔に、明らかな驚きが見えた。
 現れた月女神は、アカ・マナフを正面から見据える。
 向こうを見れば、ショボンさんもまだ相手と対峙したままだった。
 
 アンノウンは、動いていない。
 
547 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/20(月) 00:09:19.71 ID:10asvdzI0
 
ζ(゚、゚;ζ「なによ……そのペルソナは……」
 
ξ゚听)ξ「あなたには関係ないわ」
 
ζ(゚、゚#ζ「随分……強気なのね」
 
ξ゚听)ξ「デレほどじゃないわよ」
 
ζ( 、 #ζ「ッ…………!」
 
 ギ、と、奥歯を噛み締める音が聞こえた。
 あのペルソナを前にして怯えない私が、気に食わないのだろう。
 でも私だって、いつまでも畏縮しているだけじゃない。
 
ζ(゚、゚#ζ「気安く名前を呼ぶなッッ!」
 
 大きく声を出した、直後。
 
ζ(゚、゚#ζ『アカ・マナフ! マハラギオンッッ!!』
 
 デレのペルソナが呼応し、両の手がこちらに向けられた。
 同時に放たれた炎の波が迫り来る。
 
 ジョルジュが決死で受け止めた炎が、今は、あまりに。
 
 あまりに、弱々しい。
 
ξ#゚听)ξ『ダイアモンドダスト!』
 
550 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/20(月) 00:11:14.02 ID:10asvdzI0
 
ζ(゚、゚;ζ「なっ!?」
 
 炎と氷嵐がぶつかったが、力の押し合いにはならなかった。
 アカ・マナフが放った業火は、アルテミスの力を受け凍り付き、砕け散った。
 炎が凍るとは、なんとも不思議な現象だ。私が思ったのは、その程度だった。
 
ζ(゚、゚;ζ「何よ……それ……なんで……」
 
 信じられない、と言った表情で首を左右に振る。
 思った通り、この偽物は私の世界のデレよりも遥かに力が劣っている。
 ならばきっと、ショボンさんの相手もそうだろう。
 
 やはり、違うのだ。
 
 このデレは、倒すべき障害なのだ。
 奧に控えるアンノウンを倒し、戦いを、終わらせる為に。
 
 そして自分の世界へ戻り、本当のデレを救わなければいけない。
 
ξ゚听)ξ「……偽物だけど、デレ」
 
ζ(゚、゚;ζ「……!」
 
ξ゚听)ξ「────ありがとう」
 
 本来の、目的を。
 私の世界のことを、思い出させてくれて。
 
553 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/20(月) 00:13:18.67 ID:10asvdzI0
 
ζ(゚、゚;ζ「なん……っ……!」
 
ξ#゚听)ξ『ペルソナッ!』
 
 この偽物は、単に創り出されただけだ。
 倒す事にも、迷いはなかった。
 
 
 
──左方・アルファベット──
 
 
(;`∠´)「ぐっ……ぬんッ!」
 
(´・ω・`)「…………」
 
 剣撃を、こいつのVをZで受ける度に。
 怒りが、蓄積されていくような感覚を覚える。
 
 弱い。あまりにも。
 
 Fを媒介にした所為なのか、具現化が不完全だったのか。
 それともこれが、力の限界なのか。
 
 何にしても、自分の世界のベルとは比べようもなかった。
 アルファベットも、Vを模った下位かと思える程だ。
 
556 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/20(月) 00:15:35.88 ID:10asvdzI0
 
 ツンも戦い始めたようだが、すぐに有利と分かった。
 こいつと同じく、あちらの力も大したことはないようだ。
 ならば、恐らくは不完全な力しか持たせられないのだろう。
 
(´・ω・`)「…………」
 
 VよりもリーチのあるZで、敢えて攻撃を受け止めていた。
 憤慨しつつも、心のどこかでベルの剣を求めていたのかもしれない。
 
 だが、これ以上はもう、見るに堪えなかった。
 
(´・ω・`)「やはりお前は、即座に消えるべきだ」
 
 振り下ろされたVを、下から強く斬り上げ、弾いた。
 
 それだけでVが、砕け散る。
 
(;`∠´)「なっ……!?」
 
 狼狽えたベルの脇腹に、右足で蹴りを叩き込む。
 まともに受けたベルが、盛大に吹き飛んだ。
 
 アンノウンの、側方まで。
 
爪 ゚W〉《…………》
 
(#`∠´)「おのれ……!」
 
559 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/20(月) 00:17:31.78 ID:10asvdzI0
 
ζ( 、 ;ζ「きゃあっ!」
 
 ベルが起き上がると同時に、ツンの相手も敵側へ倒れ込んでいた。
 
 ツンが静かに、自分の隣に立ち並ぶ。
 
(´・ω・`)「とんだ児戯だったな」
 
ξ#゚听)ξ「アンノウン……許さない!」
 
爪 ゚W〉《…………》
 
 しかし、見えない。
 こいつの目的が、分からないのだ。
 
爪 ゚W〉《ふん……やはり、所詮は老骨の力か……》
 
(´・ω・`)(……老骨?)
 
 アンノウンの呟きは、自分の耳にも届いた。
 如何にも期待外れだった、という思いが深読みの必要もなく受け取れる。
 だが、自分に見えた真意は、そんなことではなかった。
 
 あのとき見せたクーの炎と、ツンが見覚えがあると言った火球。
 加えて、偽物を生み出す時の言葉と、今の言葉で、理解した。
 
 クー達のような召喚術を扱える、だけではない。
 アンノウンは、この世界の力を全て使用できるのだ。
 
563 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/20(月) 00:19:33.57 ID:10asvdzI0
(´・ω・`)(しまったな……)
 
 ここへ来る前に、クーにこの世界のことをもう少し訊いておけば良かった。
 今更悔いても、やらなかったことは仕方がない。考えを、改めるしかない。
 
 クー自身も、アンノウンの力は未知数だと言っていたのだ。
 この思考に辿り着く前に、敗北を喫したのだと想像がつく。
 不確定な情報を得て先入観を持つよりは有利に働くだろう、と今は考えるべきだ。
 
 そして、もう一つ。
 
 アンノウンは、全ての力を出しきってはいない。
 出し惜しみしているのか、はたまた余裕だからなのかは分からないが。
 恐らくは、間違いないはずだ。
 
 しかし、その理由が見出せない。
 
 力を見るという目的は、フィレンクトで終えたはずだ。
 アンノウンは戦う意思を見せた。それが何よりの証拠になる。
 
 自分で推し量る、という理屈は考え難い。
 最終的にそうするならば、刺客を放つことなどはしない。
 
 この疑問を解決するものは、間違いなく、あの言葉だ。
 
 
 "主人公格"。
 
 
 それは、一体────
567 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/20(月) 00:21:53.00 ID:10asvdzI0
 
──中央──
 
(;`∠´)「…………」
 
ζ(゚、゚;ζ「…………」
 
 力の差に、偽物たちがたじろぐ。
 なまじ記憶を受け継いでいたことが、恐怖を植え付けた。
 記憶の中の二人よりも、遥かに強力な力を持っていた二人に。
 
(´・ω・`)
 
ξ#゚听)ξ
 
 具現化は、不完全だった。
 だが、フォックスが具現化したドクオ達よりは、完全に近かった。
 それは、記憶と自我である。
 
 実力までは、再現することができなかった。
 そのことに、ベルとデレは気が付いていなかったのだ。
 
 今の力量が己の全てであると疑わず、結果、圧倒された。
 力の矛先こそは記憶の継承により、理解していたのだが。
 
爪 ゚W〉《貴様ら……》
 
 それ以上に、生み出された者としての、本能。
 
569 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/20(月) 00:23:59.84 ID:10asvdzI0
 
(;`∠´)「ッ!」
 
ζ(゚、゚;ζ「……っ」
 
 後方から二人に聞こえた重い声に、身を固くする。
 当然二人にアンノウンの記憶などはない。
 
 記憶や自我よりも、もっと深いもの。
 創造者がもたらす絶対的な力に、畏怖したのだ。
 
爪 ゚W〉《どうした? 我は殺し合えと言ったのだが……》
 
(;`∠´)「ぐ……」
 
ζ(゚、゚;ζ「う……」
 
 焦燥を浮かべた表情で、互いの標的へと視線を投げる。
 当初の剣幕は、微塵も見られない。
 
ξ゚听)ξ「操られてる……?」
 
(´・ω・`)「というよりも、絶対的な服従を基に、生み出されたんだろう」
 
ξ゚听)ξ「なるほど……」
 
(´・ω・`)「まぁ、どうでもいい。これ以上は遊んでいられん」
 
570 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/20(月) 00:26:00.95 ID:10asvdzI0
 
 一歩、間合いを詰めた。
 偽物の二人は、後ずさることはなかったが、無意識に顎を引く。
 
 下がれば、確実な死が待っているのだ。
 アンノウンという、驚異によって。
 
(#`∠´)「ショボン=ルージアルッ!!」
 
 覚悟を、決めた。
 偽のベルは吼えると同時、背からWを取り、すぐさまFを番える。
 
 それに触発され。
 
ζ(゚д゚#ζ『アカ・マナフッ!!』
 
 偽のデレも、ペルソナを降魔する。
 対する二人は表情を変えずに、迎撃の構えを見せた。
 
 ショボンはWにFを番え。
 
 ツンはアルテミスを降魔する。
 
 自身の敵は、自身の武器で。
 
 ショボンも、ツンも。想いは、同じだ。
 己が知る偉大な男を、救うべき友を、これ以上侮辱されることは、許せないのだ。
 
572 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/20(月) 00:28:11.63 ID:10asvdzI0
 
 引き絞られるWの弦が、軋む音を立てる。
 ショボンに並ぶように、アルテミスも金色の弓を湾曲させる。
 デレのペルソナ、アカ・マナフは漆黒の両腕を前方へ伸ばし、機を窺っていた。
 
爪 ゚W〉《……いいのか? その二人は、我が貴様等の世界から喚んだ、本物なのだぞ》
 
(´・ω・`)「下らない嘘は不愉快なだけだ、アンノウン」
 
(´・ω・`)「本物のベルがこの程度なら、あの大国ラウンジを築けるはずがない」
 
(#`∠´)「ぐぬっ……!」
 
ξ#゚听)ξ「デレだって、もっと強いんだから!」
 
ζ(゚д゚#ζ「なっ……調子に乗ってんじゃないわよ!」
 
 流石にその言い種には、偽物達も憤慨したようだ。
 自身の力がオリジナルよりも劣っている事を知らぬのだから、当然と言えよう。
 
爪 ゚W〉《ククッ……》
 
(´・ω・`)「惑わしも意味はない。お前の言葉が、全てを示唆していた」
 
 否定した理由は、実力だけではない。
 ショボンならばアンノウンが老骨の力と呟いた言葉から、容易に辿り着ける答えであった。
 
 アンノウンの偽言は、結果的に偽物を煽る事態を招き、畏縮を軽減させるに至る。
 そう言った意味では、もしかしたら効果的だったのかもしれない。
 
576 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/20(月) 00:30:20.62 ID:10asvdzI0
 
 
 もはや、何人も邪魔立ては許されず。
 
 
(#`∠´)
 
 
(´・ω・`)
 
 
 渾身の一撃を、放つのみ。
 
 
ζ(゚、゚#ζ
 
 
ξ#゚听)ξ
 
 
 彼らを包む静の空間が、ゆっくりとその体積を縮めていく。
 
 
 やがてそれが、最小限にまで縮小された時。
 
 
 
 静が、弾ける。
 
578 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/20(月) 00:31:09.12 ID:10asvdzI0
 
(#`∠´)「おおおおぉぉぉぉぉおおおおッッ!!」
 
 ベルが渾身を込めた手を、Fから放した。
 Wと弦は刹那の時を切り裂いて、その身を戻す為にFを射出しようとする。
 弦に押され、Fが射られる、寸前。
 
(´・ω・`)「ふッ!!」
 
 一息で、ショボンもFから指を離す。
 
ζ(゚д゚#ζ『不滅の、黒!!』
 
 デレも言霊と共に、力を解き放つ。
 アカ・マナフの影が伸び、黒い波となってツンに向かう。
 彼の仲魔も犠牲になった、生きとし生けるもの全てを呑み込む闇の影だ。
 
 それも見ても、ツンに恐れの色が浮かぶことはない。
 むしろ、確実に自分へ向かうように、誇示するように。
 
ξ )ξ『デレ……私は、ここよ』
 
 ぽつり、呟いた。
 意思に同調。アルテミスが金色の矢を放つ。
 
 三つの矢と、一つの闇が、互いの境界で交錯した────
 
583 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/20(月) 00:33:07.14 ID:10asvdzI0
 
 Fが胸を、貫いた。
 
(´・ω・`)「…………」
 
 ショボンはその様を、ただじっと見つめていた。
 
(;`∠´)「馬鹿……な……」
 
 溢れ出る鮮血に、激流となり全身を駆け巡る痛み。
 ショボンのFが、ベルの胸を貫いていた。
 
 敢えてショボンは、ベルよりも後手でFを放った。
 目線とFの切っ先から、Fの軌道を予測する為だ。
 結果、ショボンが放ったFはベルのFを破壊し、穿つことに成功する。
 
(´・ω・`)「お前が本物のベルだったのなら、よくて相打ちだったかもしれんが」
 
(´・ω・`)「力も、アルファベットも、不完全だったということだ」
 
(´・ω・`)「さぁ、もういいだろう。消えろ」
 
 言葉を突き付けられた後に、偽のベルはがっくりと膝を折った。
 
 傷の痛みと、心の痛みに。
 
(;`∠´)「……無念……」
 

584 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/20(月) 00:35:10.29 ID:10asvdzI0
 
ζ( д ;ζ「あ……ぁ……」
 
 声すらも、閉ざされた。
 デレもアカ・マナフも、クレセントミラーが生んだ球体に、閉じ込められている。
 アルテミスの光矢はアカ・マナフの闇を容易く破砕し、デレに届いていた。
 
ξ゚听)ξ「さよなら、偽物」
 
ζ( д ;ζ「────!」
 
 球体の内部が、光の帯に覆われていく。
 もはやデレの姿を目視することは、不可能だった。
 
 膝をついたベルが、前のめりに倒れる。
 光球と化したクレセントミラーがその身を縮め、狭まり、線となって消えていった。
 
 後には何も、残らない。
 偽のベルも姿を消し、後には砕けたFの破片だけが散らばっている。
 
 それが、傀儡達の最期だった。
 
爪 ゚W〉《……なかなかの、余興だったな》
 
(´・ω・`)「ふざけるな。こんな遊びをずっと続けるつもりか?」
 
 フィレンクトにも向けた言葉だ。
 だがあの時は、力を見るという理由あってのことだ。
 それは考え難いという推測が、また同じ言葉を言わせていた。
 
587 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/20(月) 00:37:15.52 ID:10asvdzI0
 
ξ;゚听)ξ「……はぁ……はぁ……」
 
 ラストスノー戦から絶えずペルソナを行使していたツンに、疲労の色が浮かぶ。
 ペルソナは使用するだけで体力と精神を消耗させるのだ。
 
(´・ω・`)「ツン。大丈夫か?」
 
ξ;゚听)ξ「だ、大丈夫です……まだ、戦えます」
 
 少し休めば一時的に回復するが、完全までとは言えない。
 消耗戦が不利なのは、ショボン達の方だ。
 
(´・ω・`)(俺達の消耗が目的……いや、それはないか)
 
(´・ω・`)(まだ、あの二人がいる。長期戦が目的なら、そんな状況でするはずがない)
 
爪 ゚W〉《…………》
 
(´・ω・`)(しかし、思惑もそうだが、決め手も見えない)
 
(´・ω・`)(ツンにも疲労が見える……正直、厳しくなってきたが……)
 
(´・ω・`)(…………ん?)
 
爪 ゚W〉《見えてきたか? 己の絶望が》
 
爪 ゚W〉《諦めるも、足掻くも、自由だ。踊って見せろ。滑稽に》
 

588 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/20(月) 00:39:27.44 ID:10asvdzI0
 
(´・ω・`)「悪いが」
 
 ツンを守るように、立ち塞がる。
 幾多の死線を越えてきたショボンの瞳は、未だ燃えていた。
 
(´・ω・`)「俺に見えるのは、お前が倒れ伏している未来だけだ」
 
爪 ゚W〉《…………》
 
(´・ω・`)「……いや」
 
 
(´・ω・`)「俺たちに見えるのは────……だな」
 
 
 轟音。
 
 
 一瞬、城全体が揺れたような音が響いた。
 それとともに吹き飛んだのは、巨大な鉄の扉だった。
 ツンは驚き、振り返る。ショボンが後ろを見ることは、なかった。
 
 
 音を発した主を、既に気配で、察知していたからだ。
 
 
 王の間の入り口には、薄煙が立ち上っている。
 ツンが確認したのは、そこに浮かぶ四人の人影だった。
 その中の一人が、動く。
595 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/20(月) 00:41:48.32 ID:10asvdzI0
 
 薄煙を切り裂き、飛行機雲が一直線に伸びる。
 線を描く弾丸は、超速度でアンノウンへと向かっていく。
 
爪 ゚W〉《ッ!》
 
 それを、聖剣で叩き落とした。
 
 石と石が重なる音が、盛大に反響した。
 弾丸だったものはそのまま数回転して、止まる。
 
 停止した、それは────
 
 
 ショボンがZの威力を見せるために斬り落とした、石像の首だった。
 
 
川 ゚ -゚)「おお、流石ノーマン。ボテボテの投ゴロだ」
 
ノ)) - 从「…………」
 
( ^ω^)「ちっと派手にやりすぎたかお?」
 
( ФωФ)(ふむ……あの二人が仲間、か)
 
 現れたのは、ショボン、ツンと同じく、異世界から召喚された戦士達。
 千年の封印を解かれ、アンノウンとの因縁を紡がれた、古き魔王。
 
 全ての力が、集結した。
 
601 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/20(月) 00:44:54.52 ID:10asvdzI0
 
ξ;゚听)ξ(あの二人は誰だろう……? 味方っぽいけど……すごく悪魔的というか……)
 
ξ゚听)ξ(クーの仲魔……かな? 一緒にいるなら大丈夫だよ……ね)
 
(´・ω・`)「あいつらが来る前に、お前の首を飛ばしたかったが」
 
爪 ゚W〉《…………》
 
 ショボンの言葉にも、自身の状況にも、アンノウンは黙殺を貫いている。
 焦燥も、余裕も、ショボンは彼から読み取ることはできなかった。
 
(#^ω^)「アンノウン……!」
 
( ФωФ)「ふむ……あれがか」
 
川*゚ -゚)「なんだあいつwwwwww全身真っ黒だぞwwwwwww
     日焼けか?wwwwwwwウナギなのか?wwwwwww
     ウナノウンに改名しろwwwwwww」
 
(#^ω^)「ちっと黙っててくれねーかお?」
 
ノ)); - 从「…………」
 
川*゚ -゚)「すまんwwwwwwおまえらも黒かったなwwwwww」
 
(´・ω・`)(やれやれ……)
 
ξ;゚听)ξ(一気に騒がしくなった……)
 
608 : ◆iAiA/QCRIM :2010/12/20(月) 00:48:51.41 ID:10asvdzI0
 
(´・ω・`)「まぁ、とにかくだ」
 
 右手のZを振り上げ、切っ先をアンノウンに向けた。
 
(´・ω・`)「終わらせるぞ。この戦いを」
 
ξ゚听)ξ「はいっ!」
 
(#^ω^)「オーケー! そんでもってとっとと帰るお!」
 
川 ゚ -゚)「うむ。大人しく殺されろ、妖怪ウナギ男め」
 
ノ)) - 从「…………」
 
( ФωФ)「一度は落とした命だ。余も協力してやろう」
 
 
 それぞれが、自身の世界の為に。
 世界の命運を双肩に乗せ、集いし主人公格たち。
 
 
 時を越え、世界を越えて、遂に全てが、出揃った。
 
 
 決戦が、始まろうとしていた。
 
                      【Cross part:Confluence⇒end】
 
                      【Next⇒Cross part:Unknown】

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