3 名前: ◆YW8tTr3Ies :2010/10/22(金) 21:50:49.53 ID:g0VFU49YO
僕らはトゥチャネラで、帰りの馬車が来る迄羽根を休めていた。

率いて来た100名の騎士達は先に首都ニュクスへと向かわせ、僕達は待機だ。
現在の領主であるフーサ・ルナファスは手厚い出迎えをしてくれていた。

しかし首都の防備とは言え、移動術式による侵入が出来ないのは些か面倒くさいなと思う。
その事を陛下に聞くと、戻る時に遅れる口実が出来るだろう、となんとも怠慢なお言葉を頂いた。

ここから馬車で一日かけて、首都へと帰還する。
早馬なら半日ほどだ。
流石に王の帰還となれば、それ相応の準備が必要となるようで、丸一日はこの街に滞在する事が確定した。

暗雲が拡がる空を、応接間の窓辺から見つめる。
僕の心を映した様などんよりとした空の色合いに、気分は更に下方へと向かって行った。

−−ブーン・ホライズン−−

落ちこぼれの僕は、次の旅に進むまでに、何度怒られるのかを指折り数える。

10を越えた辺りで嫌になり、議論する陛下達に混ざっていった−−

( ^ω^)は落ちこぼれのようです

−−第二章−−

第一話


4 名前: ◆YW8tTr3Ies :2010/10/22(金) 21:53:49.77 ID:g0VFU49YO
西の領地の一件から丸二日。

その間に次期領主が決まるまでの繋ぎとして、暫定的な地方自治会を発足した。

そこまでは良いのだが、その集まりに仕事を割り振るのが、手間取ってしまった。

ならば陛下だけでも先に戻ればと思えば、理由を付けて最後まで残ってしまい僕の頭痛の種が増えていった。

ギーコ・ルナファス生誕の地であり、首都防衛の要トゥチャネラ。

この街はルナファス家の封ずる土地であり、VIP国の国教とも言えるファウス教の総本山でもある。

街の至る所に、英雄神を奉った像が立ち並び、街の中央には大聖堂が建っている。
6 名前: ◆YW8tTr3Ies :2010/10/22(金) 21:57:27.17 ID:g0VFU49YO
その大聖堂で不思議なのは、管理者がルナファス家ゆかりの人物ではない事だ。

それにルナファス家が騎士として、VIP王家に仕えている事も謎である。
司祭として、教えを広めていてもおかしくないだろうに。

僕達はある程度見慣れた街並みに、惹かれる事はないが、初めての街にツンが興奮を隠しきれていない。
後で一緒に廻って見ようと思う。


街の中央の道を進んでいると、奥から馬車が向かって来るのが見えた。

馬車は僕達の前に止まり、中から見知った顔が現れる。

ミ,,゚Д゚彡「お久しぶりです。 陛下」
8 名前: ◆YW8tTr3Ies :2010/10/22(金) 22:01:01.62 ID:g0VFU49YO
この街の領主。
ルナファス家が嫡男、フーサ・ルナファスが陛下に挨拶を送りながら降りて来た。

ツンツンと跳ねた髪に、精悍な顔つき、引き締まった筋肉は服の上からでも解る。
偉丈夫と言った風貌を持った彼は、僕らを馬車へと促す。

僕達を乗せ馬車はゆっくり動き出す。
ちなみに団長さんは、御者と共に馬車の前方に座っていた。

フーサの寡黙そうな見た目に、ツンは落ち着かないようだ。
僕はフーサに話しかけ、ツンの緊張を解す様に促す。

( ^ω^)「良い加減キャラ作りやめろお」

ミ,,^Д^彡「辞め時解んない」
11 名前: ◆YW8tTr3Ies :2010/10/22(金) 22:04:53.92 ID:g0VFU49YO
フーサは恥ずかしそうな笑顔を見せ、頬をぼりぼりと掻いた。

ξ;゚听)ξ「……」

( ^ω^)「気にしちゃ駄目だお」

なんとも言えない空気が流れた所で、陛下が口を開く。

川 ゚ -゚)「フィレクが居るからと言って畏まる事はないだろうに」

フィレクとは団長さんの名前だ。
あの方は騎士の鏡とも言える。
まぁ頭が堅いと言うデメリットも、含めてだが。

ミ,,´Д`彡「だってあの人怖いんだから!」

( ^ω^)「相変わらずのへたれだおね〜」

川 ゚ー゚)「確かにwww」

12 名前: ◆YW8tTr3Ies :2010/10/22(金) 22:08:08.73 ID:g0VFU49YO
フーサを弄る。
やっぱりこいつが居ると、僕としても楽だ。

ミ,,;Д;彡「一応君らより僕年上だよ?」

('、`#川「歳の話しはすんなへたれ」

ミ,,;Д;彡「ひぃ!」

( ^ω^)(こいつ本当良くなくな〜w)

フーサは名家ルナファスに生まれ、その騎士としての剣才はギーコ・ルナファスの生き写しとまで評されるのだが……。

如何せん性格は神話に語られる英雄の様にはいかず、へたれ、馬鹿、意気地無しと散々に評される。

落ちこぼれと言われる僕とはウマが合うようで、強制された旅で立ち寄って以来の仲だ。

13 名前: ◆YW8tTr3Ies :2010/10/22(金) 22:12:14.87 ID:g0VFU49YO
クーには昔から、出先の二号さん的なおもちゃとして扱われていたようだ。

もちろん本妻的なおもちゃは僕なので、その苦しみについても傷を舐め合う様に仲良くなっていった。

−−正直情けなくなって来た。

(ヽ´ω`)「はぁ〜」

僕がため息を吐くと、横からツンが話しかけてくる。

ξ゚听)ξ「どうかした?」

(ヽ´ω`)「なんでもないお〜」

ケンが取れてみれば優しい娘だ。
みんなこうなら、どんなに良い物か……。
どうにも僕の周りには、自分が世界の中心だと思っている女性が多い気がする。

14 名前: ◆YW8tTr3Ies :2010/10/22(金) 22:16:28.77 ID:g0VFU49YO
そんな事を思っていると、馬車は正門をくぐり城内へと入っていた。
僕らはそのまま馬車を降り、応接間へと通される。

僕としてはコーヒーブレイクと行きたいのだが、どうも紅茶党しか居ない様である。
そのため応接間での優雅なティータイムへと相成った。

僕は薫り高いアールグレイの風味を味わいながら、窓際で景色を眺める。

( ^ω^)(たまには紅茶と言うのも良いおね)

僕は感想を胸の内で述べてから、今後について語る輪の中に入っていった。

16 名前: ◆YW8tTr3Ies :2010/10/22(金) 22:19:07.07 ID:g0VFU49YO
川 ゚ -゚)「それでフーサお前はどう見る?」

ミ,,-Д-彡「うーん……難しい所だねぇ」

(#‘_L’)「はっきりしろと前にも言っただろう!」

ミ,,;Д;彡「ひぃ! 怒鳴らないで欲しいんだから!」

あーあーこれじゃ、フーサが喋れない。
僕は少し助け船を出す事にした。

( ^ω^)「フィレク団長。 フーサは一応階級は貴方より上ですお一応」

ミ,,゚Д゚彡 「一応って二回も言わなくても……」

(‘_L’)「まぁそうなのですけどね。 トラギ殿には厳しく接する様に言われて居るのですよ」

トラギとはフーサの父親だ。
現在のルナファス家の頭首で、騎士団全体を指揮する将軍である。

17 名前: ◆YW8tTr3Ies :2010/10/22(金) 22:22:40.10 ID:g0VFU49YO
将軍の地位は魔術省の長官とは違い世襲制ではないため、16年前の戦争で武勲を立てての出世である。

( ^ω^)「それでも、フーサの意気地無しの性格を考慮しないと妙案が消えさってしまうかもしれませんお?」

川 ゚ -゚)「そうだぞフィレク。 火急の時だ。 へたれの意見も馬鹿には出来ないだろう?」

団長さんは一度フーサに眼をやり、仕方ないと言った表情で引き下がった。

ミ,,;Д;彡「なんかいろいろ言われてる気がするが、気にしないんだから!」

フーサは泣きながら、今回に付いての考えを述べ始める。

ミ,,;Д;彡「まず、西には行動力がある人物を送るべきだと思うんだ」

川 ゚ -゚)「具体的には? つーか泣き止め」

18 名前: ◆YW8tTr3Ies :2010/10/22(金) 22:26:30.59 ID:g0VFU49YO
陛下は、ハンカチを投げつけフーサの話しに聞きいる。

ミ,,;Д゚彡「あでぃがどうございまずぅ」

川 ゚ -゚)「良いから喋れ」

( ^ω^)(どっちだよw)

なんとか泣き止んだフーサが続ける。

ミ,,゚Д゚彡「親父が適任だけど、あの人は東に進みたがるだろうし……」

ミ,,-Д-彡「神官連から、派遣するのが良いんじゃないかな?」

川 ゚ー゚)「なるほど! ペニサス! お前西に戻れ」

('、`*川「はい?」
20 名前: ◆YW8tTr3Ies :2010/10/22(金) 22:31:56.47 ID:g0VFU49YO
今まで蚊帳の外に居たペニサスに、唐突に陛下は命令を下す。

('、`*川「なんで私なんですか!」

ミ,,゚Д゚彡「まぁそうなるよね〜」

('、`*川「どういう事か説明しなさいよ!」
ミ,,゚Д゚彡「貴族階級に対して不信感の払拭と、メガミとの貿易関連の調査」

フーサは簡潔に説明した。
宗教対立の激化をちらつかせた脅しの神官を送り、メガミの出方を見るのだ。

そうやって多少強引にでも、情報を引き出す方が手っ取り早い。
22 名前: ◆YW8tTr3Ies :2010/10/22(金) 22:34:37.23 ID:g0VFU49YO
それに神官は貴族の中でも特殊な階級なので、領民を刺激しづらいのも利点だ。

そして行動力と権力共に、そこそこ持ち合わせて居るのがペニサスで、ぶっちゃけこの場に居るから丁度良い。

('、`*川「あの私ぃ中央に未練があるのですが……」

川 ゚ー゚)「どうせ叶わぬ恋だ。 諦めろ」

('、`#川「解んないじゃないですか!」

ペニサスは特殊な性癖のため、恋愛とは縁遠い。
てか、ガチショタコン。犯罪。

( ^ω^)(無理だってガチショタは……)

結局喚き散らすも、ペニサスは西へと強制送還されて行った。

これで少しは静かになった。

後は−−

23 名前: ◆YW8tTr3Ies :2010/10/22(金) 22:37:06.11 ID:g0VFU49YO
(‘_L’)「勝手に決めてよかったのですか?」

−−この御仁だけだ。

川 ゚ -゚)「構わん。 あいつも少しは働かせないとな」

何とも最もらしい、口煩いのを減らしただけの癖に。

ミ,,゚Д゚彡「所で? 戦争はいつ始まりそうなのです?」

川 ゚ -゚)「分からん……、とりあえず首都に帰ってからだな。 そういえばフィレク? お前先に戻って、会議の準備を進めてくれないか?」

(‘_L’)「えーとそれはつまり?」

川 ゚ー゚)「今すぐに早馬を使い行ってこい」
26 名前: ◆YW8tTr3Ies :2010/10/22(金) 22:40:25.10 ID:g0VFU49YO
( ^ω^)(邪魔なやつを、一気に排除しに掛かりやがった)
川 ゚ -゚)「断るつもりか?」

クーは、少ない言葉数で相手を追い込んで行く。

(;‘_L’)「その様な事はありませんが……、ちゃんと帰って来ますか?」

川 ゚ -゚)「犬猫じゃああるまいし、ちゃんと帰るよ」

(;‘_L’)「解りました先に戻ります。 明朝には馬車が着く筈ですので、くれぐれも寄り道せずお帰り下さい」

団長さんはそう言うと、応接間から出て行く。
なんとも微妙な表情だ。

( ^ω^)「あんまり、虐めんなお?」

川 ゚ -゚)「口うるさいのが居ると、面倒でな」

ミ,,゚Д゚彡「ペニさんまで巻き添えにする事は無かったんじゃない?」

27 名前: ◆YW8tTr3Ies :2010/10/22(金) 22:44:29.17 ID:g0VFU49YO
( ^ω^)「ペニサスは西に戻るのを嫌がってない筈だお」

ミ,,゚Д゚彡「どういうこと?」

川 ゚ -゚)「あれで中々、働き者なんだよペニサスは」

( ^ω^)「恐らく、ニュクスに着いたらいつでも会議が開ける状態だお」

ミ,,゚Д゚彡「そうなの? じゃあフィレク騎士団長は?」

川 ゚ー゚)「むだ足www」

クーは悪戯っ子の笑みを浮かべていた。
まぁ僕も気楽な人物だけになり、少しほっとする。

ツンに声を掛けると、談笑へと話の毛色が移り変わった。
29 名前: ◆YW8tTr3Ies :2010/10/22(金) 22:47:24.99 ID:g0VFU49YO
ミ,,;Д;彡「随分大変そうだね。 可愛そうに」

ξ;゚听)ξ「はぁ……」

( ^ω^)「引いてるから泣き止めへたれ」

フーサの提案で、ツンの身の上話を聞く流れになっていた。
しかしフーサはどうして、すぐに泣くのか?

川 ゚ -゚)「しかし古代人の可能性って言うのもな……」

( ^ω^)「やはり問題あるのかお?」

川 ゚ -゚)「奴隷解放が始まって200年、古代人同和政策と言う名目での動きが、何一つないのは何故だと思う?」

確かに聞いた事がない。

( ^ω^)「なんでだお?」

川 ゚ -゚)「異能だからだよ」

( ^ω^)「と言っても、魔力が扱えないぐらいしか特徴は解ってない筈じゃ?」
31 名前: ◆YW8tTr3Ies :2010/10/22(金) 22:53:26.97 ID:g0VFU49YO
川 ゚ -゚)「なら、何故お前はツンを古代人だと思った?」

( ^ω^)「それは……。 人間や魔族との、あからさまな違いがあったからだお」

川 ゚ -゚)「だろう? そして嘆かわしい事に我が国民達は、古代人を差別したがる者が多い」

ξ゚听)ξ「……」

少し話し過ぎてしまった。
ツンの前で話す話題では無かったなと反省する。

( ^ω^)「すまんおツン。 別に君を傷付ける為の話しじゃないんだお?」

ξ゚听)ξ「うん。 解ってる」

彼女は無表情で、呟いた。


32 名前: ◆YW8tTr3Ies :2010/10/22(金) 22:55:57.22 ID:g0VFU49YO
−−少し話題を変えよう。

( ^ω^)「おいフーサ! クーの事頼むお?」

ミ,,゚Д゚彡「えっ? 僕一人で?」

( ^ω^)「ツン! 街に行くお!」

ξ;゚听)ξ「えっ?」

( ^ω^)「行きたくないかお?」

ξ;゚听)ξ「そんな事ないわよ!」

後ろでクーの視線が痛い。
僕はそれを無視する。

( ^ω^)「じゃあ決まりだお。 夕方までいろいろ見て廻るお〜」

ξ*゚听)ξ「う、うん!」

やっと笑ってくれた。

−−フーサとクーを残して僕らは城外へと出た。

最後までクーの視線が痛かったが仕方ない。
恐らく今頃、フーサに当たり散らして居る事だろう。
僕はそっとフーサに黙祷を捧げた。
34 名前: ◆YW8tTr3Ies :2010/10/22(金) 22:59:04.45 ID:g0VFU49YO
ξ゚听)ξ「クーさん達置いて行ってよかったの?」

( ^ω^)「と言うより、あの二人の会話を邪魔したく無いんだお」

ξ*゚听)ξ「え? まさか……」

( ^ω^)「違う違うw 今後の対応についてだお」

ξ゚ー゚)ξ「なーんだ期待して損した!」

ツンは少し、かしましい所があるようだ。

( ^ω^)「色恋沙汰とか、クーには無縁だおw」

ξ;゚听)ξ「あんたもしかして気付いてないの?」

( ^ω^)「何が?」

ξ--)ξ「あっきれた……」

35 名前: ◆YW8tTr3Ies :2010/10/22(金) 23:02:33.86 ID:g0VFU49YO
ツンが被りを振り、ため息を吐く。
意味が解らない。

( ^ω^)「まぁあいつらは、好きにさせとけば良いお!」

ξ--)ξ「なんかクーさん可愛そうね」

後ろでツンが呟いていた。

僕達はまず、街の唯一にして一番の見所とも言える聖チャネラ大聖堂へと向かう。

着工は我が国の暦−−ファウス暦によると、紀元1058年、今から約600年も前になる。

完成したのは紀元1425年。
当時の建築技術の粋を集めた大聖堂は、300年以上の年を重ねて造られた。

ルナファス城よりもその建物は大きく、我が国に置ける信仰の中心として、その大聖堂は存在していた。

36 名前: ◆YW8tTr3Ies :2010/10/22(金) 23:05:17.50 ID:g0VFU49YO
外観は獅子が空に昇る意匠が施された釣鐘塔を中心に、灰色の石壁が積み上げられている。

その無骨な見た目は、英雄神の寡黙で高潔な精神を表しているようだ。

虚栄心が見えるほどでかく作る事もないだろうにとは、僕は思う。

( ^ω^)「しっかし無駄にでかいおねー」

僕は聖堂を見上げ、大袈裟に呟く。

ξ*゚听)ξ「ほぇー」

横に居るツンは、感嘆の声を漏らしていた。

( ^ω^)「気に入ったかお?」

ξ*゚听)ξ「うん」

こくこくと頷きながら、ツンはいつまでも聖堂を見上げていた。

一般の入場は出来ないため、ツンをその場に待たせて、観光用の露店で僕は少し値の張る金細工のお守りを買ってきた。
38 名前: ◆YW8tTr3Ies :2010/10/22(金) 23:10:02.76 ID:g0VFU49YO
僕はそれをツンに渡す。

ξ*゚听)ξ「良いの?」

( ^ω^)「まぁ初めての旅の記念だお」

ξ*゚ー゚)ξ「ありがと」

そのお守りは獅子と十字をあしらった、ネックレスだ。

ネックレスを首に掛けてやると、ツンはとても喜んでくれた。
こういうのは初めてで、少し照れ臭い。


( ^ω^)「さぁて少し小腹が空いたおね」

ξ*゚听)ξ「そうね 」

ツンはネックレスを大事そうにいじっていて、上の空と言った様子だ。

39 名前: ◆YW8tTr3Ies :2010/10/22(金) 23:13:25.20 ID:g0VFU49YO
ファウス教の根本的な教えは騎士道に近く、礼節を重んじる物だ。
そのため街全体も、酒場などの享楽的な場所以外は、厳かな佇まいを見せる。

ξ;゚听)ξ「なんか入りにくい店ばかりねぇ」

(;^ω^)「だおだお」

仕方なく裏路地に入り、カフェを見つけたのは僥倖だった。

すかさず店に入り、僕はコーヒーと、ハムと入り卵のサンドイッチ。
ツンは紅茶と同じ物を頼む。

店は昼時を過ぎたばかりで、僕らの他に客の入りはまばらだ。
41 名前: ◆YW8tTr3Ies :2010/10/22(金) 23:16:25.41 ID:g0VFU49YO
全体的に落ち着いた雰囲気ではあるが、表通りの小洒落たレストランよりは幾分気が楽である。

ツンは注文を待つ間、僕に疑問を呟いた。

ξ;゚听)ξ「ここの人達って、いっつもあんなピシッとしてるのかな?」

( ^ω^)「住んでる人間ってのは、他の街と案外変わんないもんだお」

ξ゚听)ξ「そうなの?」

( ^ω^)「そうだお? いくら入れ物が変わっても、中に居るのは人間なんだから当たり前だお」

ξ゚听)ξ「じゃあ、旅をしての出会いって、あんまり変わらない物なのかな?」

( ^ω^)「それが全然違うから、不思議なんだお」

ξ゚听)ξ「良くわかんないわね」
45 名前: ◆YW8tTr3Ies :2010/10/22(金) 23:21:54.79 ID:g0VFU49YO
( ^ω^)「まぁ文化が違えば、ルールが変わるからだと思うお」

ξ゚听)ξ「ルールねぇ……」

まぁそのうち解るおとだけ僕は言い、話題を変える。

( ^ω^)「ところでツン? 当分僕は中央から出れないかも知れないけど、それでも良いかお?」

ξ゚听)ξ「まぁ仕方ないんじゃない? ただ私、中央でどうしてたら良いのかしら?」

( ^ω^)「その辺は大丈夫だお。 客人として我が家で預かる様にするから」

ξ--)ξ「ごめん。 押しかけるみたいになっちゃって」

( ^ω^)「気にすんなお。 約束した事だしお」

ξ*゚听)ξ「ありがと」

46 名前: ◆YW8tTr3Ies :2010/10/22(金) 23:26:08.21 ID:g0VFU49YO
なんだか気を使わしてばかりで、少し申し訳なく感じる。

話しをしていると、注文の品がすぐに来た。
味はそこそこと言ったところで、特に印象には残らなかった。

少し食休みをして、観光を再開する。
見所と言っても、大聖堂と同じ石灰岩の町並みぐらいしかない街だ。
結局、すぐに飽きて散歩がてら露店を廻った。

色々見て廻るとどんよりとした雲の切れ間に西日が射して来た。
そろそろ帰途に着く時間だ。

( ^ω^)「ツン帰るおー」

ξ*゚听)ξ「はーい」


ツンは終始、上機嫌だった。

−−よかった。

47 名前: ◆YW8tTr3Ies :2010/10/22(金) 23:29:24.65 ID:g0VFU49YO
城に帰ると、客間へと向かわされた。
使用人であろう初老の男性は、晩餐会があるのでお支度を、と言っていた。

それに従い、部屋で用意されていた服に袖を通す。

ツンはどうするのだろう?
部屋は別に用意されていたからは解らないが、晩餐会には参加するのだろうか?

作法等を心得て居るかは怪しい所だ。

支度が出来た所で、丁度良くドアがノックされる。

( ^ω^)「今行くおー」

使用人に付いて行き、食堂へと向かう。
食堂にはフーサとクーが待っていた。

空いた席は二つある。
ツンの分だろう。

48 名前: ◆YW8tTr3Ies :2010/10/22(金) 23:32:26.29 ID:g0VFU49YO
僕はフーサの向かいに座った。
左手の上座には、クーが座って居る。

手を伸ばせばお互いに触れ合える程の、小さなテーブルは親愛の証だろう。

( ^ω^)「ツンは?」

ミ,,゚Д゚彡「もう少しで来ると思うよ?」

しばし待つと、扉が開かれる。

ツンは何やら扉から顔を出して、中々入って来ない。

川 ゚ -゚)「どうした? 早く入るがいい」

ξ///)ξ「いやなんか恥ずかしいと言いますか……」

ツンは俯きながら、食堂へと入ってくる。
彼女は赤いドレスにスパンコールをあしらった、華やかなドレスに身を包んでいた。
50 名前: ◆YW8tTr3Ies :2010/10/22(金) 23:35:07.78 ID:g0VFU49YO
ミ,,゚Д゚彡「よくお似合いだよ!」

フーサがツンに声を掛ける。

恐らくこいつが選んだのだが、昔からこういった物のセンスは良い。
ツンの金色の巻き毛に良く似合っていた。

ξ///)ξ「ありがとうございます」

( ^ω^)「まぁ座るお」

扉の近くで立ち尽くすツンに、着席を促す。

晩餐会の始まりだ。

ツンは一通りのテーブルマナーは仕込まれて居た様で、心配した様な事にはならなかったのだが……。
むしろクーが、酷かった。
52 名前: ◆YW8tTr3Ies :2010/10/22(金) 23:38:06.95 ID:g0VFU49YO
酒をがぶ飲みし、挙げ句の果てには椅子の上に立ち鼻唄を歌いだす。

そしてその姿に、僕達は笑い出すのだった。

川*゚ -゚)「ひつれーな奴らだな。 しょこに直れ説教しちゃりゅ!」

( ^ω^)「うるせぇお! 舌が回ってねぇんだお!」

ミ,,^Д^彡「wwwww」

ξ^∀^)ξ「あははwww」

馬鹿騒ぎは夜遅くまで続いた。
久しぶりに肩肘張らない食事を楽しめた僕は、少し飲み過ぎな程浮かれていた。


翌日−−


(ヽ´ω`)「飲み過ぎた……」

ミ,,´Д`彡「同じく」

53 名前: ◆YW8tTr3Ies :2010/10/22(金) 23:40:04.44 ID:g0VFU49YO
僕達は酷い二日酔いで死んでいた。

酒を飲んでないツンと−−


川。O゚ -゚)+「だらし無いなお前達」


−−こいつを除いて。

なんで一番飲んだお前が元気なんだ。
おかしいだろう……。

首都ニュクスからの馬車が来ていた。
お別れの時間が来てしまったのだ。
56 名前: ◆YW8tTr3Ies :2010/10/22(金) 23:41:43.74 ID:g0VFU49YO
軽く挨拶を交わしたあと、死にかけの顔をしたフーサの見送りで僕達は街を出発した。

ごとごと揺れる馬車の中、吐き気を抑えながら一路ニュクスへと向かう。

気を抜ける時間もそろそろ終わりに近付く。
街へと着くまで僕は思い出に浸りながら、空を眺めていた−−

( ^ω^)は落ちこぼれのようです

−−第二章−−

第一話

 了

戻る

inserted by FC2 system