- 2 :
◆YW8tTr3Ies :2010/10/10(日)
19:39:06.98 ID:MOXx+QEjO
- 立ち竦んだ僕に対して、左右の部隊が挟撃により矢を放つ。
五月雨の様な空を覆い尽くす矢を受け、僕の纏う蒼炎は少しずつ目減りして行く。
アサピーを叩く事で終わる筈だった戦いは、一つの異分子により完全に勢いを削がれていた。
ただ速く駆け、一瞬で仕留める為に、
全ての事柄を無視し、力による暴走に依って、恐怖を植え付けるだけの存在の僕をその存在の瞳は−−
−−ただある事で、水面の如くその瞳を覗く者の姿を映すだけであった。
何故、君の持つ黒刃は僕に向かいその切っ先を伸ばしているのだろう?
−−ブーン・ホライズン−−
この憐れな落ちこぼれは、君の夜を映す瞳に敵と映るのだろうか?
( ^ω^)は落ちこぼれのようです
第五話
第一章完結編前編
「序章の終わり」
- 4 :
◆YW8tTr3Ies :2010/10/10(日)
19:44:35.29 ID:MOXx+QEjO
- 別宅でジョルジュを倒した僕はその場に居た数名の兵士を置き去りにし、市街へと駆け抜けた。
別宅からは、城を中心とした放射状のメインストリートの一つを南へ突き進む。
先程の、別宅での騒ぎを聞き付けてか野次馬が道の真ん中で立っていた。
焦げ臭い馨りが風に乗り通りに満たされて行くと、更に訝しがり南へ下れば下るほど野次馬の数は増えて行った。
僕はその人波をかい潜る様に進み、領主の城へと急いだ。
北からの道を来ると城の裏門があり、その門を潜ると領主子飼いの近衛兵等が訓練に使用する大きな平地がある。
アサピーが兵を集め、僕を迎え撃つならこの門だろう。
- 5 :
◆YW8tTr3Ies :2010/10/10(日)
19:47:40.75 ID:MOXx+QEjO
- 西の大門は行軍用の出口で防備は不十分。
南の正面通用門では、兵を伏せる事すら出来ない。
僕の体調の制限や、怠慢な性格が災いし、僕は迷わず北の裏口を火炎魔法で焼き払う事に決めた。
案の定、兵がずらりと配して在ったが、事前に軍務の出納帳を調べた通り100名の弓兵隊のみであった。
ゴシップ家の業名
ハンドレッドは百の弓兵で、魔族の進行を抑えた事により与えられたと聞く。
代々ゴシップ家の家長達の弓兵隊は、VIP全土でも指折りの統率力を発揮していると言われていた。
- 6 :
◆YW8tTr3Ies :2010/10/10(日)
19:51:44.25 ID:MOXx+QEjO
- ただやはり僕の慢心や、アサピーを見下した心情が判断を鈍らせていた。
僕は裏門を破壊し、平野に配した兵達の中に突出した形となった中央部隊に、アサピーが居るのを発見した。
即座に中央を孤立させ、一気にアサピーへと近付き火球の魔法を放った迄はよかったのだ−−
だがここで、一つのイレギュラーがあったのが問題だった。
このイレギュラーの為に、僕は百の弓兵に狙われながら、魔法使いの天敵とも言える者と戦う羽目になってしまったのだ。
そのイレギュラーの名はツン。
僕を世話してくれていた女中と同一人物とは思えない程、彼女は力強く舞っていた−−
- 7 :
◆YW8tTr3Ies :2010/10/10(日)
19:56:49.05 ID:MOXx+QEjO
- −−つい数十分前迄の愚行を、冷静に僕は振り返っていた。
敵はアサピーだけと思い逸る気持ちが、僕から慎重さや思慮深さと言った勝利の女神が愛する物を、失わせていた。
あまつさえ勝利の女神と言うべき切り札が、相手に握られていたのだから喜劇にしても悪趣味としか言えなかった。
( ^ω^)(派手に門をぶち壊したせいで、退路には野次馬が集まって来るし)
(ω^=^ω)(周りを見渡すとずらりと並んだ弓兵)
(^ω^)(んで正面には−−)
ξ#゚∀゚)ξ 「はぁー!」
( ^ω^)(ツンかお)
- 10 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/10(日)
20:06:15.39 ID:MOXx+QEjO
- 全く冗談としか思えない。
助けようと思っていた相手に、追いかけ回されるとは思いもしなかった。
ツンはその華奢な体格を物ともせず、身体ごとたたき付ける様に黒い大剣を奮う。
打ち込んだ跡に残る大地のひび割れは、尋常ならざる力を指し示していた。
ただの大剣なら大して気にも留めないのだが、先程からその通常では考え難い怪力と、特殊な材料で造られたであろう大剣に僕は苦しめられていた。
先程から度々飛んでくる風の魔力を纏った矢の威力は、大木を穿つ程の威力が優にある。
- 12 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/10(日)
20:12:53.46 ID:MOXx+QEjO
- だがそれは身に纏う蒼炎の魔力を削りはするが、気を抜かなければ僕の身に届く事はない。
僕の纏うこの蒼い衣は僕の身体から、流動的に流れる魔力が洩れだした物であり、絶えず循環している。
そもそもが不定型の、水の様な物であり川の中に矢を射るような物なのだ。
しかし、ツンの持つ黒剣は違った。
魔力と言う存在を弾き、生身の人間としての僕に切り掛かって来ているのだ。
魔力を使い、物理的な衝撃を上下させる事によって戦う魔族。
そして僕の様な類似の戦闘法を行う者に取って、この武器は最悪の相性と言えた。
- 13 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/10(日)
20:17:25.70 ID:MOXx+QEjO
- ( ^ω^)(しかも、相手はどうも勘違いしてる節があるから、下手に攻撃出来ないおまけ付きかお)
そう。
これが一番の問題だったのだ。
ツンが僕に向かって来る理由が、罪の無いアサピーを僕から護ろうと言うのだ。
ξ゚ー゚)ξ 「さっきから逃げ回ってるけど大丈夫? アサピー様を陥れる愚かな貴族さん?」
土埃を巻き上げながら、剣を振り上げツンは言う。
( #^ω^)「人の話しを聞けっつーの! わりぃのはあっちだお!」
ξ#゚听)ξ「聞く耳もたん! 貴族の言葉は信じない!」
振り上げた剣を右肩に担ぎ、ツンはそのまま一足飛びで間合いを詰めてくる。
僕は魔力を吹き上げ、遠く高く距離を取りアサピーの居場所を横目で確認する。
- 14 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/10(日)
20:26:25.69 ID:MOXx+QEjO
- ( #^ω^)(あんにゃろう!)
アサピーは城下にある崖から、城内に続く細い階段の麓まで中央の軍を下げ、その最後方に陣取っていた。
(-@∀@)「www」
その顔には、たっぷりの皮肉を張り付けた笑みが浮かんでいた。
しかも更に悪い事に、体調にも異変が現れて来ていた。
( ;^ω^)(頭痛が治まりつつあって、発汗が増えてるお)
僕の魔力は、恐らくホライズン家歴代でも異常と言える許容量を誇る。
ただし無限と言う訳でもないのだ。
魔力が減り肉体への負荷が減れば、頭痛は自然と治まり、またその逆に肉体の疲労が増す。
- 16 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/10(日)
20:31:37.72 ID:MOXx+QEjO
- 有限には終わりが付き物だが、僕の場合常時漏れ出してる蒼炎に問題がある。
基本的に属性魔法の中でも、ベクトルの指向に苦労しない物、火や雷の属性に関しては困らないのだが、その他の魔法は一部を除いて制御が全く効かない。
そしてこの蒼炎は、ただの流動体のエネルギーだ。
当然制御なんか効く筈も無く、常に垂れ流しになっている。
多少蛇口を捻り、強弱は指定出来る物の、タイムリミットの引き延ばしが限界と言った所。
つまりどう言う事かと言うと−−
( ;^ω^)(ただの落ちこぼれまで、あと十分かそこらって所かお?)
僕は覚悟を決める。
ツンとやり合う覚悟だ。
- 18 :>>17荷物置いてた一カ所が、崩壊しただけだったので大丈夫
◆YW8tTr3Ies :2010/10/10(日)
20:36:57.90 ID:MOXx+QEjO
- ( ゚ω゚)「おい! ツン!」
ξ゚听)ξ「何よ?」
( ゚ω゚)「鬼ごっこはやめだお! 怪我したく無かったら引けお!」
ξ゚听)ξ「……」
ツンの表情が変わる。
ξ゚∀゚)ξ「待ってました♪」
( ;^ω^)「まさかこいつも戦闘狂とは……」
ツンは斜めから斜めへとジグザグに、僕へと近付いてくる。
恐らく先程から見た限り、とりあえず一発ぶち当てると言うなんとも猪的な戦い方だ。
そして僕は、そういう手合いが一番嫌がる戦い方を選んだ。
- 19 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/10(日)
20:42:35.69 ID:MOXx+QEjO
- それは遠距離からの集中砲火だ。
( ^ω^)「剣を楯に凌いでくれお♪」
火球をひたすら作り、片っ端から撃ちまくる。
その間に移動し、アサピーとの距離を縮める。
( ^ω^)「ジョルジュ相手にして疲れてんだお! 初心貫徹! とりあえず頭抑えりゃなんとかなんだろ!」
アサピーは狙いに気付き、防御魔術を展開するが、こちらはそれを突き抜けるだけの魔法を詠唱するだけだ。
ジョルジュとの戦いで、使った魔法だ。
詠唱が終わり、アサピーの少し後方に着弾するよう地獄の業火を撃ちだそうとするが−−
ξ ∀ )ξ「がぁーうざったい!」
−−だが、弾幕を抜けて来たツンに、阻害される。
- 21 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/10(日)
20:49:26.52 ID:MOXx+QEjO
- ( #゚ω゚)「ざっけんな! この分からず屋の馬鹿女!」
ξ゚∀゚)ξ「それ? 私に撃って見なさいよ?」
空中で剣を振り上げ、ツンは挑発する。
( #^ω^)「もうしらね! あーしらね! 喰らって見ろお? 熱いじゃすまねーから覚悟しろお?」
僕は半ばやけくそ気味に、ツンに向け上級の火炎魔法を放つ。
そしてその赤黒く燃える火炎は、ツンを飲み込んだ。
( ;^ω^)「やっべ……」
僕は撃ってから冷静になった。
( ;^ω^)(流石にやり過ぎかもしらんね)
- 23 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/10(日)
20:56:31.60 ID:MOXx+QEjO
- 一応敵とは言え、本来なら戦う必要がない相手に撃つ様な魔法では無い。
だが僕に取っては幸か不幸か、その心配は杞憂に終わった。
赤黒い火球が、突然上下に開き爆発した。
そしてツンが降りてくる。
軽い火傷の跡は見られるが、致命傷は特に無いようだった。
着地したツンに、僕は疑問を投げ掛ける。
( ^ω^)「ツン。君は何もんなんだお?」
ξメ゚听)ξ「さぁね? 昔から魔力を扱えず、異常な程魔術に耐性を持ってて、馬鹿みたいに力が強かったのよね〜」
( ^ω^)(だから防音魔法が掛かった部屋でも、音が漏れてたんだおね。
魔術の影響が少ないから……)
防音魔法が掛かって居る事を忘れて、鈴を鳴らした際もツンは反応していた。
今まで気付かない程、些細な事だったが確かに可笑しい。
- 24 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/10(日)
20:59:50.41 ID:MOXx+QEjO
- 魔力を扱えないツンが、魔術に耐性があり、魔族と同等の腕力を持ち合わしている。
そしてこの要素を持つ、種族など存在しない。
そうなると考えられる物はただ一つ、
( ^ω^)「君は……古代人の末裔なのかもしれないお」
ξメ゚ー゚)ξ「へぇ……あんま嬉しくは無いけど、何と無くルーツに近付いた気がするわ。
ありがと! じゃあ−−」
ξメ゚∀゚)ξ「続きやろっか?」
( ^ω^)「それは無理な相談だお」
- 26 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/10(日)
21:03:27.42 ID:MOXx+QEjO
- ξメ゚听)ξ「なんでよ?」
( ω )「時間切れだお」
僕の周りには、纏っていた魔力が消えていた。
すっからかんになった身体に襲うのは倦怠感。
蒼剣を杖に倒れ込むのを防ぐが、膝をついてしまう。
ξメ゚听)ξ「たくっ! だらし無いわねぇ」
( ´ω`)「まぁ君の勝ちだお」
ξメ゚听)ξ「はん! 無傷の相手に言われても、納得行かないわよ!」
( ´ω`)「まぁ、仕方ないおね」
ξ゚听)ξ「アサピー様も、素直に謝れば命だけは助けて下さる筈よ?」
( ´ω`)「そんなんが相手なら、こんなやる気出さな(ry」
( ∀ )「全軍放て!」
( ^ω^)「ほらね?」
- 27 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/10(日)
21:07:22.93 ID:MOXx+QEjO
- ツンは僕の前に立ち、アサピーに意見する。
ξ;゚听)ξ「ちょっちょっとアサピー様! 相手は戦意を失ってます! どうかご容赦を!」
(-@∀@)「ならん! どけツン!」
ξ゚听)ξ「退きません! 何か理由がある筈です! せめてお話だけでも!」
(-@∀@)「所詮、愚民か……、ツンごと始末せよ! その後、街に火を焚き、我らはメガミ国へと帰順する!」
ξ゚听)ξ「今なんて? 何故街を燃やすんですか?」
( ^ω^)「こいつに何言っても無駄だお! とりあえずツン! 君は街から逃げだせお!」
- 28 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/10(日)
21:10:52.83 ID:MOXx+QEjO
- ξ;゚听)ξ「えっ?」
ツンは何を言われて居るのか、理解していないようだ。
( #^ω^)「うろたえんなお! 君は屑を信じたが、屑に裏切られた! ただそれだけだお! 屑の言葉に耳を傾ける必要はねぇんだお!」
弓兵達の攻撃が始まる。
身体を捻り躱すが、そう持ちはしないだろう。
まだ攻撃が緩い内に、ツンには逃げて貰いたい。
そう考えて居ると、矢がツンに飛来する。
ツンはうなだれたままだ。
( ^ω^)(ちっ!)
僕は最後の気力を振り絞り、正面からツンを吹き飛ばす。
矢は運良く外れたが、新しく矢が飛来する。
- 29 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/10(日)
21:13:58.03 ID:MOXx+QEjO
- 僕はそれからツンを護るため、倒れこんだツンに飛び込む−−
−−腹部に嫌な痛み、そして背中に衝撃。
一時的な簡易防壁の魔術書を使い矢の一撃は防げたが、ツンの持つ黒い大剣が僕の腹部を貫いていた。
- 32 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/10(日)
21:19:41.29 ID:MOXx+QEjO
- 内臓に傷がついたのか、口元からは血が滴る。
ξ;;)ξ「何してんのよあんた!」
ツンは泣き出し、僕に抗議していた。
( ゚ω゚)「なんとか、速く中……央に、アサ、ピーの事を伝えてくれお……」
僕は痛みをこらえ、ツンに言葉を托す。
ξ;;)ξ「そんな事言ったっ(ry」
(-@∀@)「無理ですよ!」
アサピーは僕達から、10メートル程までの距離に近付いていた。
矢の雨はやんでいる。
- 33 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/10(日)
21:22:44.56 ID:MOXx+QEjO
- (-@∀@)「やはり、自分の手で殺さないと気が済まなくてね」
ξ;;)ξ「アサピー様辞めて下さい! 貴方はこの街の英雄だったじゃないですか!」
(-@∀@)「……」
アサピーは押し黙る。
そして−−
少女の信頼を打ち砕いた。
(-@∀@)「ヒャハはははwww 馬鹿じゃーねーの? 上手い話しがあったから食いついただけで、名声まで手に入るなんてなw」
ξ;;)ξ「……!」
- 34 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/10(日)
21:26:25.39 ID:MOXx+QEjO
- (-@∀@)「前の領主は確かに無能だったが、俺よりは間違いなくマシだったよw」
ξ;;)ξ「この嘘つき! 屑野郎!」
こいつはやはり屑だ。
生かして置けば、後世の災いとなる−−
(#-@∀@)「あーうるせぇ! 拾ってやっただけ感謝しろよな!」
−−僕が死ぬ時は、お前も道連れにしてやる。
( ゚ω゚)「ツン……屑の話しなん……か聞くんじゃねーお。
あと……」
僕は覆い被さる態勢で、ツンに耳打ちをする。
最後の博打だ。
ツンは黙って頷いてくれた。
(-@∀@)「まぁ良い! とりあえず死ねよ!」
アサピーが呪文を唱えると、光の弓矢が出来上がった。
そしてしっかりと僕らに狙いを定めている。
- 35 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/10(日)
21:29:19.55 ID:MOXx+QEjO
- 僕はツンに合図を送る。
それに呼応しツンは僕を抱え立ち上がった。
一生に一度の最後の大博打。
命を張ってツンだけは守ると決めた。
ツンは腹部の剣を勢い良く引き抜く−−
ぶちぶちと筋繊維を引き裂きながら黒剣が、僕の身体から弾け飛ぶと。
僕はそのまま、地面に倒れ込んで行く。
−−だが脇目も振らず、ツンは駆け出した。
( ゚ω゚)(それで良いんだお! 僕の事は構わず行ってくれお)
(-@∀@)「はっ! 間に合うか馬鹿がぁ!」
アサピーは光弓を構え、僕らを嘲笑う。
ツンは真っ直ぐにアサピーへ走り続ける。
ξ゚∀゚)ξ 「はぁぁぁぁ!」
- 36 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/10(日)
21:34:10.81 ID:MOXx+QEjO
- アサピーの意識は完全にツンに向かっていた−−
−−今だ!
- 37 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/10(日)
21:35:21.20 ID:MOXx+QEjO
- ( ゚ω゚)「ツン伏せろぉ!」
僕はツンに合図を送る。
僕から意識を外していたアサピーは、驚愕している。
(;-@∀@)「なっ何をするつもりだ!」
アサピーの持つ光弓の像が、心の動揺を表す様にぶれていた。
そして僕は血溜まりに倒れ込みながら、僕の中に巣くう牙を呼び出した。
( ゚ω゚)「食い散らかせ! 蛇よ!」
血を媒介に生まれた無数の頭を持つ蛇がアサピーへと向かって行く。
- 39 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/10(日)
21:38:52.94 ID:MOXx+QEjO
- (;-@∀@)「馬鹿な! 魔力は枯渇していた筈だろ!」
アサピーは光弓を黒いヒュドラに向け放つが、ヒュドラはそれを無視して、アサピーへと喰いついて行く。
(;-@∀@)「うぉぉ! やめろぉぉ!」
( ^ω^)「闇の禁術だお……、一度食いついた敵を放す事はない」
・.∵∀@)「あっ……うぁあぁ……」
アサピーの身体は半分以上、この魔性の怪蛇に喰われていた。
それにより、少しばかり僕の身体に力が戻って行く。
- 41 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/10(日)
21:41:43.19 ID:MOXx+QEjO
- この魔獣は、正に僕の頭痛の種として存在していた。
僕の魔力で抑えられている内は良い。
だが魔力が枯渇した状態になると、無理にでも外へ出ようとするのだ。
こいつが抵抗するために、魔力が常に放出する事になり、普段は魔力ごと腕輪で封印している。
奪った命の数だけ宿主の傷を治していく様は、余りに醜い上に一度外に出すと際限無く命を喰らうため、この魔獣は禁術として扱われて来た。
だがこの魔獣を強引に鎮める方法が一つだけある−−
( ^ω^)「ツン! そいつごと僕を貫いてくれお!」
ξ;゚听)ξ 「何言ってんのよ!」
( #^ω^)「早くしろお! 僕は大丈夫だから!」
ξ゚听)ξ「本当に? 信じるわよ?」
- 42 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/10(日)
21:44:54.36 ID:MOXx+QEjO
- アサピーを喰らった蛇は、少しずつ動き出す。
( ゚ω゚)「早くしろお!」
ξ )ξ「一つ約束してよ?」
( ゚ω゚)「解ったから、早くしろお!」
ξ゚ー゚)ξ 「私を旅に連れてくって約束して?」
( ω )「解ったお−−
だから早く」
ξ;ー )ξ「嘘付かないでよ?」
ツンは魔獣に身体ごと突っ込む。
そして勢いを止めずに、ツンは僕と魔獣を貫いた。
黒い大剣の魔力を封ずる力を嫌がり、魔獣は僕の身体へと溶けていく。
- 43 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/10(日)
21:47:20.68 ID:MOXx+QEjO
- 僕の身体からは血が、少しずつ流れて行く。
僕はそのまま仰向けに倒れ込む。
ツンが剣を抜こうとするが、手を押さえ征した。
封じの呪文を唱える体力が無いため、今抜けば再度暴れ出すだろう。
僕が死ねば、魔獣も死ぬ。
それまで抜かぬ様に頼んだ。
今の出来事に呆気に取られていた兵が主を失った事実を受け入れ騒ぎだすが−−
ξ゚听)ξ「動くな! 動けばこの剣を抜くわよ!」
−−ツンの一喝により、場は静まり返った。
( -ω-)「すまんお。 約束護る事が出来んお」
ξ;;)ξ「出来ない約束なんかしないでよ! てかあんた回復術は使えないの?」
( -ω-)「残念ながら−−!」
僕は回復用の魔術書がある事に気付いた。
- 44 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/10(日)
21:50:13.13 ID:MOXx+QEjO
- ( -ω-)「ツンちょっと来てくれお」
ξ;;)ξ「何よ!」
僕は回復術を使いツンの火傷を治してやる。
ツンの火傷は、見る見ると塞がる。
ξ;;)ξ「なんで私に使うのよ!」
( -ω-)「僕に使っても手遅れだおー。
怪我させたお詫びだお……」
僕の意識は遠くなる。
−−薄目を開け、最後にツンの姿を見る事にした。
ξ;;)ξ「−−! −−−−!」
あんま泣かないで欲しい。辛くなる。
あぁ瞼が重い。
これが死ぬって事か、案外呆気ないもんだ。
爪先から、指先から、少しづつ死の気配が近付いてくる。
もう身体が動かない。
−−僕はゆっくり目を閉じた。
- 45 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/10(日)
21:52:21.15 ID:MOXx+QEjO
- ξ;;)ξ「この嘘つき!」
私はこの嘘付きに助けられた。
少しづつ弱くなる彼の心臓の音に反比例し、罪の意識が増幅して行く。
ξ;;)ξ「お願い起きてよぉ! 約束守りなさいよ!」
川 - ) 「そうだぞブーン! 約束を破る様なやつは最低なんだ」
ξ;;)ξ「へぇ?」
上空から声が聞こえる。
上を見上げると、上から何かが落ちて来るのが見えた。
そしてその何かは−−
−−ブーンの傷口に降り立った。
( ゚ω゚)∴・ 「ぐがぁは!」
- 47 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/10(日)
21:55:36.99 ID:MOXx+QEjO
- ξ;;)ξ「えっ? え?」
理解が追いつかない。
いきなり落ちて来たのは、白いドレスを纏う黒髪の女性だった。
川 ゚ -゚)「全くだらし無いな君は?」
彼女はぐにぐにとブーンの傷口を踏み付け、詰る様にブーンへと問い掛ける。
踏み付けられる度に、ブーンの身体は酷く痙攣した。
川 ゚ -゚)「ふん! 私を無視するのかい? ならその身体一片たりとも許しはしない! 塵となって後悔しろ!」
この女性は、私には理解出来ぬ行動倫理を持っている様だ。
- 48 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/10(日)
21:57:50.54 ID:MOXx+QEjO
- 死に掛けている人間に、返事を強要するとは正気の沙汰ではない。
そして女性は何やら右腕に光を集めている。
そしてブーンから一度降りると、右手を振り上げた。
そこで私は気付く−−
−−この女性は本気でブーンを塵にするつもりだ。
私は止めに入ろうとするが、間に合わない。
ξ;;)ξ「ブーン!」
大地が裂け、ブーンを中心に空へと光の柱が昇る。
私は、この事態に、ただ泣き崩れる事しか出来なかった。
しばらくすると光柱が消えた。
その跡を見ると大きなクレーターが出来上がっていた。
その中心には先程の女性、そして−−
−−ブーンが立っていた。
- 50 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/10(日)
22:01:14.02 ID:MOXx+QEjO
- その瞳は先程と違い、生に満ちていた。
怒りの炎を宿して−−
( ゚ω゚)「あのさぁ! もうちょっと普通に治してくれても良いんじゃね?」
川#゚ー゚)「治して貰ってその態度かいブーン?」
( #゚ω゚)「普通に治せばキレねーよ! 死に掛けてる人間の傷口踏むとか何してくれてんの? 馬鹿なの?」
川#゚ -゚)「そんな事で怒るとは見損なったぞ!」
( ゚ω゚)「おめぇの行動の方が見損なうわ! つーか蛇を封印すっから、ちょっと待ってろ!」
こいつはいつもそうだ。
昔からぎりぎりまで悪ふざけをする。
しかも本人が開き直るから質が悪い。
回復術の腕は確かなのだが、底意地が悪すぎるのだ。
- 51 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/10(日)
22:04:32.01 ID:MOXx+QEjO
- なんとか、こいつのおかげで一命を取り留めたが釈然としない。
僕は、暴れだした魔物を抑えるために左手に腕輪をつけると、封印を施す。
そして振り返り、このクソ女もとい−−
−−クール・ビップ・スナオ女王陛下に、事のあらましを説明し始めた。
( ^ω^)は落ちこぼれのようです。
第五話
第一章完結編前編
「始まりの終わり」
了
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