- 4
名前: ◆YW8tTr3Ies
:2010/10/08(金) 20:44:46.06 ID:/cI9ZeMIO
- あまり使わないであろう別宅の応接室で、僕とジョルジュ、アサピーは睨みあっていた。
中央にはアサピーとジョルジュ。
北側の壁に近い側には、マホガニィの机と本棚が置かれ、その間に僕と言う構図だ。
アサピーの呟きに反応してからの、ジョルジュは機敏だった。
指だけで、器用に山刀の向きを変え、刃を僕へと向ける。
先程までの激情は嘘の様に−−
実際嘘なのだろうが、僕に冷たい視線を向け横凪に凶刃を奮う。
- 5
名前: ◆YW8tTr3Ies
:2010/10/08(金) 20:46:09.50 ID:/cI9ZeMIO
- この一瞬の出来事を知覚出来たのは、単純に防衛本能といった所だろう。
刃から放たれた赤い剣閃が、僕へと迫る。
だが身体を低くし、右に寝そべる様な形で飛ぶ事でなんとか回避した。
後ろにあった本棚は吹き飛び、中の蔵書が僕へと降り懸かる。
−−ブーン・ホライズン−−
やっとの事でのやつとの対峙に、落ちこぼれの僕は、仕事の終わりへと繋がる確かな手応えを感じていた。
( ^ω^)は落ちこぼれのようです
第四話
「嘘」
−−後編−−
- 6
名前: ◆YW8tTr3Ies
:2010/10/08(金) 20:49:36.65 ID:/cI9ZeMIO
- (-@∀@)「あまり壊さないでくれよジョルジュ?」
( ゚∀゚)「はっ! 文句言うな。 しかし良く避けるねぇ」
二人は、勝ち誇った笑みを浮かべている。
( メ^ω^)「いててっ!」
僕はよろよろと、埋もれた本の中から立ち上がった。
最近こんなんばっかりだ。
(-@∀@)「中々不信がられないで、殺すチャンスがありませんでしたので、罠を張らせて頂きましたよ」
アサピーが悪戯が成功した子供の様に、はしゃぐ。
( ^ω^)「罠?」
- 7
名前: ◆YW8tTr3Ies
:2010/10/08(金) 20:52:27.25 ID:/cI9ZeMIO
( ゚∀゚)「仲間が出来れば、飛び付くと思ってな?」
(-@∀@)「だからジョルジュに情報をちらつかせた上で、女中達が消えたから私を疑っていると言わせました」
( ^ω^)「へぇ〜随分と回りくどい事するおね」
(-@∀@)「仕方ないでしょう? 私達も必死なのですよ」
( ^ω^)「僕が中央に、連絡を取る事は考え無かったのかお?」
( ゚∀゚)「そりゃ考えたがな」
(-@∀@)「闇市などいくらでも握り潰せるのですよ」
( ^ω^)「まぁそうだろうね。
僕もその可能性があるから、“一人”で乗り込んだ訳だお」
(-@∀@)「くっくw 無策、無謀、無価値なヒロイズムですね。
そんな物は、お伽話で十分です」
- 10
名前: ◆YW8tTr3Ies
:2010/10/08(金) 20:59:31.90 ID:/cI9ZeMIO
- ( ^ω^)「まぁヒロイズムってのは、総じて無価値なもんだお」
(-@∀@)「はぁーはっはっはぁ! 貴方がそれを言いますかw」
面白くて堪らないと言った態度で笑い続けるアサピー。
少々自己主張が儡だな。
( ^ω^)「別に僕は一度でも、そんな大層な倫理を振りかざした覚えはないお」
(-@∀@)「ではなんだと言うのです?」
( ^ω^)「仕方無く最善で、最速で、最良な方法を取っただけだお」
(-@∀@)「そしてその結果がこの窮地と言う訳ですか? やはり貴方は落ちこぼれのようだ! 愚考しか行えぬと見える!」
( ^ω^)「黙れ儡が」
アサピーの動きが止まる。
繰り糸が引っ掻かった人形のように同じ間隔で行ったり来たりを繰り返す姿は、あまりに惨めだ。
- 11
名前: ◆YW8tTr3Ies
:2010/10/08(金) 21:01:36.89 ID:/cI9ZeMIO
- (-@∀@)「今なんと?」
あぁ何度でも言ってやろう。
他人の絵図を講釈する憐れな人形はそろそろご退場して頂きたいのだ。
( ^ω^)「儡と言ったのだお。
繰り糸が切れれば、物言わぬ人形と化す憐れな領主よ」
(;-@∀@)「貴様……愚弄するのか私を?」
( ^ω^)「喋るなと言ったろう? 主人に良く喋る様にしつけられた様だな」
僕は、世にも奇妙な喋る人形に嘲笑を浴びせる。
( ゚∀゚)「……」
- 13
名前: ◆YW8tTr3Ies
:2010/10/08(金) 21:07:20.39 ID:/cI9ZeMIO
- さぁて答え合わせと行こう。
欠伸が出るほど簡単な問題だが、出された問題は答えねばならない。
( ^ω^)「まずは、どこから行こうかおね?」
(-@∀@)「何がです?」
儡よまだ喋るのか−−
僕は顔をしかめるが、無視して話しを進める事にした。
( ^ω^)「まぁ先ずは、AVの所からかお?」
( ゚∀゚)「はっw 好きにしな! 末期の言葉だ聞いてやろう」
ジョルジュが、話しを促す。
ありがたい儡の相手は疲れるのだ。
- 14
名前: ◆YW8tTr3Ies
:2010/10/08(金) 21:09:21.08 ID:/cI9ZeMIO
- ( ^ω^)「僕はAVに着いて、すぐに闇市の存在を知ったお」
( ^ω^)「そこで−− 西の領主が絡んでいる可能性を示唆されたんだお」
( ゚∀゚)「まぁ歩いて来たなら、耳にする確率は高いだろうな。
あの街は昔から非合法がまかり通る街だ」
( ^ω^)「まぁついでに、あの街で術士に襲われたんだけどお前らの差し金かお?」
( ゚∀゚)「それは知らん。
大方商人側だろうな」
( ^ω^)「そうかお? まぁそんな物は些細な事だお」
少々酷い目にあったが−−
( ^ω^)「まぁそのあとは急いでこの街に入ったお。
そして、お前達は歩いて来た僕を警戒し始めたんだおね?」
- 16
名前: ◆YW8tTr3Ies
:2010/10/08(金) 21:14:45.01 ID:/cI9ZeMIO
- ( ゚∀゚)「まぁな。 魔術でこの街に来たなら、闇市など噂にすら上らないからな」
( ^ω^)「その点は、中々巧妙だったと思うお。
そう言えば話しはそれるけど、前に来た貴族の従者はどうしたんだお?」
( ゚∀゚)「あーあいつか? 主人の元にお帰り願ったよw」
さもどうでも良い笑い話の様に、ジョルジュは答える。
どうせ殺したのだろう。
口汚い言葉の一つでも投げなければ、気が済まない。
( ^ω^)「下種がッ!」
( ゚∀゚)「あっひゃっひゃw 仕方ねーだろ? いろいろと知っちまった可能性があるんだから」
- 17
名前: ◆YW8tTr3Ies
:2010/10/08(金) 21:16:56.64 ID:/cI9ZeMIO
- ここで言い争う事で生まれる物はないだろう。
ここは素直に引く事にする。
( ^ω^)「まぁ過ぎた事はどうしようもないおね。
さてこの街に来てからの事からだお」
( ゚∀゚)「そりゃ俺も気になるな」
( ^ω^)「まぁぶっちゃけて言えば、偶然が大分重なってくれたお」
( ゚∀゚)「はっw そりゃまた運が良いこってw」
( ^ω^)「まず第一の幸運は、お前が僕を罠に嵌めようと懐を開いた事だお」
( ゚∀゚)「ほぅ?」
( ^ω^)「正直手詰まりだったんだお〜w たまたまツンに別宅の存在を聞かされて、調べたくても証拠がないし」
( ゚∀゚)「まぁ俺も、事情があってお前が目障りだったからな。
少々強引にでも殺す算段をつけたんだが、懐に入られる心配は多少したよ」
- 19
名前:荷物が地震で崩れた為に治しながら投下します……
◆YW8tTr3Ies :2010/10/08(金)
21:20:15.08 ID:/cI9ZeMIO
- ( ^ω^)「まぁ実際、こうなると僕の粘り勝ちだけど、お前の言う事情と言うのがラッキーだったお♪」
( ゚∀゚)「なに勝手に勝った気で居るんだ?」
ジョルジュに焦りは無いようだが、何か引っ掻かっている様だ。
僕に対して、緊張感を強めているのが見て取れる。
( ^ω^)「あーごめんお。
まだ話しの途中だったおね」
( ゚∀゚)「まぁ良い続けろよ」
( ^ω^)「りょーかいw まぁ二つ目の幸運は置いとくとして、また話しが脱線するお」
( ゚∀゚)「ちっ! もう少し手短に話せってんだ」
( ^ω^)「まぁ焦るなお? 小物に見えるお?」
( #゚∀゚)「挑発と講釈だけはうめぇな……」
- 20
名前: ◆YW8tTr3Ies
:2010/10/08(金) 21:22:17.75 ID:/cI9ZeMIO
- 僕はけらけらと、笑いながら答える。
( ^ω^)「良く言われるお!
さて、まぁ脱線した話しだけど、最初にそこの儡の女中の話しを聞いた時、少し焦ったお」
(;-@∀@)「……!」
アサピーが少しだけ反応を見せるが、口は閉ざしたままだ。
( ^ω^)「正直、想定外だったお。
人質を取られる可能性や、新たな犠牲者を出さないために危急性が増したんだお」
( ゚∀゚)「まぁただの裏切る理由付けだったんだがなw それで焦ったのなら僥倖だ」
- 22
名前: ◆YW8tTr3Ies
:2010/10/08(金) 21:25:08.09 ID:/cI9ZeMIO
- ( ^ω^)「それが嘘だと解ったのは、ついさっきだったお」
( ゚∀゚)「もう少し引っ張りゃ、焦ったお前が見れたかもなw」
( ^ω^)「だおだお! 残念だったおね」
お互いにニヤニヤと、笑みを貼付ける。
今更気付くが、僕らは似た者同士なのかも知れない。
( ゚∀゚)「さて? ここで質問だ」
( ^ω^)「なんだお?」
( ゚∀゚)「いつからだ?」
どちらの意味でだろうか?
少し、勿体付けてみる。
- 23
名前:積み重ねてた本が倒れてひっどい事にw
◆YW8tTr3Ies :2010/10/08(金)
21:27:53.81 ID:/cI9ZeMIO
- ( ^ω^)「何がだお?」
( ゚∀゚)「絵図を引いてるのが俺と気付いたのだよ」
( ^ω^)「あーそっちかお?」
( ゚∀゚)「他に何があるんだ?」
( ^ω^)「まぁ惚けるなら良いお! 質問の答えは、二つ目の幸運の時だお」
( ゚∀゚)「へぇ……その幸運ってのは?」
( ^ω^)「たまたまツンが、この屋敷に出てた事だお」
( ゚∀゚)「んだそりゃ?」
( ^ω^)「たまたま昨日、僕宛に手紙が届いたんだお。
中央からね」
( ;゚∀゚)「中央からだと?」
( ^ω^)「手紙や、荷物ってのはツンが管理してあったんだお?」
- 25
名前: ◆YW8tTr3Ies
:2010/10/08(金) 21:33:36.58 ID:/cI9ZeMIO
- ( ゚∀゚)「あぁそうだ。
つかしくじったなぁ! ツンにはどんな荷物も一度アサピーか俺に報告する様に言ったが、門兵にはなんも言ってねぇ!」
( ^ω^)「そのおかげで、僕は全ての線が繋がったお」
( ゚∀゚)「へぇ? 闇市や闇貿易に関してかい?」
−−まだ隠し通せると、思ってるのかジョルジュ?
( ^ω^)「ちなみに、ツンがこっち来てるって聞いてマジで焦ってたお」
( ゚∀゚)「おいおい! 話しが繋がってねぇぞ?」
( ^ω^)「あんまりお前がしらばっくれるからだお」
( ゚∀゚)「あっ?」
( ω )「78名」
- 26
名前: ◆YW8tTr3Ies
:2010/10/08(金) 21:35:49.62 ID:/cI9ZeMIO
- ジョルジュがピクリと、身体を反応させ低い声で、呻く様に呟く。
( ゚∀゚)「続けろ」
( ^ω^)「これはAVの先月の失踪者の数だお」
僕は一度ため息を吐き、話し続ける。
( ^ω^)「先月以前は解らんけど、ある一定の共通点があったお」
( ゚∀゚)「なんだ?」
( ^ω^)「一つ、20代の術士。
二つ、戦闘でも十分に使える魔力。
三つ、男女が一対ずつ」
( ゚∀゚)「随分と、規則的だな」
( ^ω^)「そうだおね。
そしてこれは恐らくここに来た貴族の従者か、その主が調べた事だお」
- 27
名前: ◆YW8tTr3Ies
:2010/10/08(金) 21:41:00.15 ID:/cI9ZeMIO
- ( #゚∀゚)「ったく! 使えねぇ奴らだ! 漏れる前に始末つけろってんだよ!」
ジョルジュが今までに無いほどの、激情を見せる。
やっと、こちらの舞台に上がって来た様だ。
自然と口許がにやける。
( ^ω^)「こっちの件も、認めんのかお?」
( ゚∀゚)「はっ今更隠す事じゃねーよ! そこまで解ってりゃてめぇをぶっ殺して、トンズラこくしかねぇからな!」
ジョルジュは殺気立ち、山刀を構える。
僕はそれと同時に懐から一枚の魔術書を取り出し、言霊を発す−−
( -ω-)「簡易召喚術式発動!」
- 29
名前:やっと元に戻った支援トンクス
◆YW8tTr3Ies :2010/10/08(金)
21:43:32.24 ID:/cI9ZeMIO
- ( ^ω^)「来たれ! 蒼剣!」
魔術書は蒼い焔に包まれ、一気に燃え上がる。
そして刹那の発光のあと、僕の右手には
、蒼い刀身を持つ細身の剣が握られていた。
僕はそれを軽く振るうと、一陣の風を巻き起こす。
そしてその風は、ジョルジュの山刀を払い落としたのだった。
( #゚∀゚)「てめぇ……! 加減しやがったな?」
( ^ω^)「まぁだ話しは終わってねーんだお」
( ゚∀゚)「ちぃ……解ったよ。
まだ聞いてやるよ! 同じ錬気の使い手とは思わなかったが、この状況じゃ俺様が不利だからな」
( ^ω^)「同じ? 馬鹿言うなお? 紛い物が粋がんなお?」
- 33
名前: ◆YW8tTr3Ies
:2010/10/08(金) 21:47:30.83 ID:/cI9ZeMIO
- ( ゚∀゚)「ほう? どこが違うってんだ?」
( ^ω^)「てめぇのは、魔力が混ざってんだお。
威力は変わらんけども、本質的には違うもんだろお?」
( ゚∀゚)「あっちゃあ! ばれてた?」
( ^ω^)「色で解るお」
錬気と言うのは高潔な騎士を連想させる
様に本来は、無色透明なのだ。
ジョルジュの様に紅く染まった物は、紛い物もしくは別物となる。
( ^ω^)「てかな、もう全部バレてんだお。
あんまり、おちょくるなお?」
( -∀-)「はぁ……まぁだろうな。 俺も諦めるわ。
さぁていつから−−
−−いつから魔族だと気付いてた?」
- 34
名前: ◆YW8tTr3Ies
:2010/10/08(金) 21:50:01.77 ID:/cI9ZeMIO
- やぁっと素直になった様だなジョルジュ。
答えをはぐらかすのはもうやめてくれよ?
( ^ω^)「まぁ最初からだお−−」
そう言って僕は、懐中時計を見せる。
( ^ω^)「−−この時計には、僕以外の人間が使った魔力を感じて正しい時間を指し示す様な呪いが掛かってんだお」
( ゚∀゚)「へぇ……便利なもんだ」
( ^ω^)「んで、お前からは常に魔力が放出されてたんだお」
( ゚∀゚)「もしかしたら、ただの魔法かも知れないじゃねーか?」
- 35
名前: ◆YW8tTr3Ies
:2010/10/08(金) 21:54:30.34 ID:/cI9ZeMIO
- ( ^ω^)「まぁお前の、中途半端な錬気術を見て核心したんだけどお」
ジョルジュが吹き出す。
( ゚∀゚)「それもたまたまじゃねーかw」
( ^ω^)「まぁそうだおねw」
( ^ω^)「−−ただ手紙の失踪者、魔族、お前達の張った罠。
これらを総合して考えた結果、お前らの隠してる事の真相が解ったお!」
( ゚∀゚)「まぁ……ここまで来たら、聞かせろよ?」
僕は一息吐いたあと、一気に最後の答えを放つ。
( ^ω^)「魔族による人間を利用した人体実験か、魔術の生贄か若しくは両方の確保。
そして今まで、表沙汰にならなかった理由は−−
最終的な必要数を一度に確保して、お前はもう魔族の地に帰るつもりだったんだろ?」
- 36
名前: ◆YW8tTr3Ies
:2010/10/08(金) 21:58:10.17 ID:/cI9ZeMIO
- 手を叩き感嘆の声を漏らすジョルジュ。
その乾いた音は、人の少ない館に響き渡る。
表情は清々しいと言った顔を、貼付けている。
( ゚∀゚)「ご明答! 闇市に関しては補足があるか?」
( ^ω^)「まぁ人間の輸送ルートを押さえるついでってとこだお?
恐らく前領主を排斥したのも、お前の差し金。
闇市を押さえた莫大な富を餌に、そこの屑を傀儡に利用した。
なんか補足する所はあるかお?」
( ゚∀゚)「パーフェクトだ! ブーン!」
更に大きな、拍手を僕に浴びせジョルジュは声高らかに宣言を始める。
- 39
名前: ◆YW8tTr3Ies
:2010/10/08(金) 22:04:12.04 ID:/cI9ZeMIO
- ( ゚∀゚)「本当によくやったよ! ブーン! お前は誇って良い! さぁでは、最後に俺はお前に聞こう?
−−本気になった俺から、どうやって切り抜けるのか?」
- 40
名前: ◆YW8tTr3Ies
:2010/10/08(金) 22:06:26.06 ID:/cI9ZeMIO
- その瞬間周りの空気が弾ける。
紅い魔力が部屋を覆い尽くし、そして収束する。
その大気を震わせる程の振動は、上級の魔族の証であり、今の僕にはどうする事も出来ない、絶望である事を示していた。
僕は腕で顔を守りつつ、ジョルジュを見遣る。
魔力の中心に立つジョルジュは、不敵に笑っていた−−
この場の支配者である事を、ただただ誇示していた。
魔力を解放した事により破けた衣服は野性的な風貌を際立たせ、周りで爆ぜる紅い魔力は狼の堅い毛並みを連想させていた。
獣の王は驕らず、ただ事実だけを述べる。
( ゚∀゚)「さて、騙しあいはお前の勝ちと認めてやろう! 実に愉しかったよ。
さてお前の事だ! まだ何か愉しませてくれるんだろう?」
僕は想定外の化け物を相手に、畏縮してしまう。
( ;^ω^)「予想以上の化けもんだおね……」
( ゚∀゚)「あぁ? もしかして、もう少し小物かと思ってたか?」
( ;^ω^)「正直に言えばそうだお」
- 41
名前: ◆YW8tTr3Ies
:2010/10/08(金) 22:10:20.18 ID:/cI9ZeMIO
- 予定と大分違う。
この時点でなんとか終わらせたかったが、そうもいかないようだ。
( ゚∀゚)「あんま白ける事は言うなよ? 一応その手に持ってるもんで抗ってみろや!」
ジョルジュには悪いが僕は観念して、諦めの言葉を紡ぐ。
( -ω-)「悪いけど、無駄な事はしない主義でお」
( #゚∀゚)「なんだつまんねぇな! んじゃさっさと死ねや!」
ジョルジュは四つん這いの体勢になり、両脚に力を込めている。
このまま一撃で僕を殺すつもりだろう。
だがその前に一つ、ジョルジュに聞いて置きたい事がある。
( ^ω^)「一つ聞いて良いかお?」
- 42
名前: ◆YW8tTr3Ies
:2010/10/08(金) 22:13:38.39 ID:/cI9ZeMIO
- 魔力の弾ける音が唸りを上げる狼の様に、獰猛に威嚇を続ける。
そんな中僕はジョルジュに問い掛ける。
( -∀-)「騙しあいはお前の勝ちだと言ったろう? これ以上俺を失望させるな」
( ω )「まぁそういうなお。
これで最後だお。
僕が何故ホライズンを名乗って居るか気にならないかお?」
( ゚∀゚)「はぁ? それがどうした?」
( ω )「言い方を変えるお。
−−何故“落ちこぼれ”がホライズンを名乗れるか気にならないかお?」
( ;゚∀゚)「……!?」
- 43
名前: ◆YW8tTr3Ies
:2010/10/08(金) 22:15:54.47 ID:/cI9ZeMIO
- ( ^ω^)「家族愛だとかそんな、生優しい事を言う家名じゃねーお?」
( ゚∀゚)「はぁーはっはっはっw お前良いよ! 凄く良い! 教えてくれよ? 理由を今すぐに!」
ジョルジュは愉快そうに笑う。
僕も釣られて笑みがこぼれる。
野性の狼と、忠義の牙を持つ狗。
さぁ、嘘に塗り固められた仮面を剥ぎ取ろう。
- 46
名前: ◆YW8tTr3Ies
:2010/10/08(金) 22:18:31.67 ID:/cI9ZeMIO
- 僕は己の内なる牙を解き放つ言霊を発する。
( ω ) 「我が名は蒼牙 戒めの鎖よ解き放ち賜え 我が内なる力を解き放ち賜え」
その言霊と共に、左腕の腕輪が金色に光り輝いた。
頭がずきずきと痛む。
歓喜の産声をあげるが如く、光が強くなると共に痛みは更に増していく。
−−構うな、引き千切れ!
内なる牙が吠える。
ただ僕はその言葉に身を委ね、最後の言霊を発する。
( ^ω^)「詠唱解呪術式発動! 蒼牙の咆哮!」
右手の剣を、腕輪に触れさせる。
かしゃりと甲高い音が、辺りに響き渡ると腕輪が外れる。
頭の痛みは増していくが、それ以上に解放された力の躍動が気分を高揚とさせる。
蒼き魔力は僕の周りを駆け抜け、ジョルジュの魔力と打ち消し合う。
−−さぁ、始めようかジョルジュ?
- 47
名前: ◆YW8tTr3Ies
:2010/10/08(金) 22:24:33.69 ID:/cI9ZeMIO
- ( ゚∀゚)「はっ! 俺を化け物扱いしといて、てめぇはこれかよ?」
痛みを悟られぬ様に、笑いを作り応える。
( ^ω^)「お気に召さないかお?」
( ゚∀゚)「いーや? 最高だぜ? まさか人間が視覚化させる程の魔力を持つとはね」
( ^ω^)「まぁこんだけ馬鹿でかい魔力だと制御仕切れなくて、戦闘以外じゃ魔法が使えないんだけどお」
( ゚∀゚)「さぞ不便だろうなぁ! しかもそんだけの魔力−−ちから−−だ。
どっか調子わりぃだろ?」
やっぱバレてる。
魔力を使う間は、頭痛が止まらない。
さっさとケリを付けないと、身が持たないのは過去の経験で把握済みだ。
( ^ω^)「まぁね♪ 悪いけどお遊び抜きで行かしてもらうお!」
- 48
名前: ◆YW8tTr3Ies
:2010/10/08(金) 22:27:14.53 ID:/cI9ZeMIO
- 僕が身構えると、ジョルジュが手で制する。
( ゚∀゚)「まぁちょっと待て。
おい! アサピー!」
部屋の端で、傍観していたアサピーにジョルジュは声を掛ける。
(;-@∀@)「はっはいぃ!」
( ゚∀゚)「とりあえず下の兵士共に城へ戻り、逃げる準備を進めとけ! こいつを片付けたらすぐに行く!」
(;-@∀@)「解った!」
アサピーはそれを聞くと一瞬で、部屋を出て行った。
( ;^ω^)「予想以上に小物だおね〜」
そんなアサピーに別な意味で頭を抑えつつ、ジョルジュを見遣る。
- 50
名前: ◆YW8tTr3Ies
:2010/10/08(金) 22:30:57.10 ID:/cI9ZeMIO
- ( ゚∀゚)「まぁ邪魔者はもういねぇ! さっさとやんぞ?」
そういうと、またしてもジョルジュは四つん這いの形になる。
そして僕も、仕込んである簡易術式のために、魔力をチャージする。
そして剣を身構え、戦いの準備を整えた。
( ^ω^)「来いよ? ジョルジュ」
−−僕らは睨み合う。
そして、同時に駆け出した。
初撃はジョルジュだった。
爪を模した紅い魔力で、僕を切り付ける。
それを僕は剣でいなし、火炎の術式を叩き込んだ!
- 51
名前: ◆YW8tTr3Ies
:2010/10/08(金) 22:34:24.12 ID:/cI9ZeMIO
- 猛烈な焔に飲み込まれたジョルジュは南向きの窓を突き抜け、地面へと落下していく。
−−このくらいじゃ、どうって事ないんだろう? ジョルジュ!
僕は直ぐさま、下へ飛ぶ。
まだアサピーは下に着いて居ないのか、下に居た兵達はざわついていた。
僕はそれを無視し、焔に包まれ、落下中のジョルジュに今度は雷槌を振り落とす。
霆によって造られた、巨大な槌はジョルジュへと直撃する。
激しい衝撃で、焔が掻き消えたジョルジュを僕は見る。
多少の傷は見えるが、致命傷には至ってはいないだろう。
なにより−−
- 53
名前: ◆YW8tTr3Ies
:2010/10/08(金) 22:38:54.42 ID:/cI9ZeMIO
−−目が死んでない。
( #゚∀゚)「舐めんなクソが!」
ここで僕は一つ、致命的なミスを犯した事に気付いた。
先に地上に下りたジョルジュが、待ち構える形になっていたのだ。
( ^ω^)(やっべ……)
ジョルジュは、魔力を大量に集め、紅い狼の顎を造りだしていた。
僕は身構え、上級呪文の詠唱を行う。
詠唱が間に合うかどうかは、微妙な所だ。
- 55
名前: ◆YW8tTr3Ies
:2010/10/08(金) 22:42:35.06 ID:/cI9ZeMIO
- ( ゚ω゚)「極地の覇者 炎獄の魔神 総ての野を焼き払う 我は欲す 汝の力を」
その呪文に構わず、ジョルジュは僕に向かい跳んでくる。
( #゚∀゚)「かみ砕いてやらぁ! 赤狼の大顎ぉぉぉ!」
狼の牙は僕を包む。
だがその地獄の大門は閉まる事はない。
( ゚ω゚)「喰らえお! 上級詠唱術式発動−−大公の焔虐!」
紅い牙の隙間から、焔が洩れる。
閉じようとする力をはねつけ、焔が荒れ狂っていた。
( #゚∀゚)「そう簡単に! やられるわきゃ居かねぇんだよぉぉぉぉぉ!」
ジョルジュは無理矢理顎を閉じようとする。
僕も展開した魔術を崩さぬ様に、精一杯の抵抗をする。
- 58
名前: ◆YW8tTr3Ies
:2010/10/08(金) 22:47:03.17 ID:/cI9ZeMIO
- そして−−
限界までの力のぶつかりあいは、引き分けに終わる。
だが、お互いの限界に近い削りあいは纏っていた魔力を一時的に剥ぎ取りあっていた。
- 60
名前: ◆YW8tTr3Ies
:2010/10/08(金) 22:49:26.66 ID:/cI9ZeMIO
- ( ゚∀゚)「ちくしょう俺の完敗だな」
ジョルジュは爆風に吹き飛ばされながら、心底悔しそうな表情を僕に向けたあと−−
( ^∀^)「やれよ」
−−笑った。
僕はその姿を遠くから見下ろし空中で蒼剣を構え、全力で振り落とした。
- 64
名前: ◆YW8tTr3Ies
:2010/10/08(金) 22:55:49.82 ID:/cI9ZeMIO
- 僕は戦いのあと直ぐさま、アサピーの姿を探したが、兵を残したまま城へと逃げたらしい。
数人の兵は僕らの戦いに、恐怖から逃げ出したが、残った兵は僕を捕らえようと向かって来た。
どうやらジョルジュには人望があったようだ。
僕はそれらの兵を、軽く威嚇すると、城へと駆け抜けた。
頭の痛みが更に酷くなる。
( ゚ω゚)(速くしねーとやべぇかもね)
魔法を使い、城の裏門をぶち壊すとアサピーと西の精鋭100名程が待ち構えていた。
それぞれが弓を持ち、弓には風の魔法陣が解こされている。
( ^ω^)(マジック・アローとは厄介なもんを……)
僕は高範囲火炎術式を二回撃ち、アサピーが居る中央の軍以外の指令系統を分断する。
そして焔に挟まれた中央を強襲する事で、アサピーの喉元に牙を突き立てる事に成功する。
- 68
名前:>>62( ^∀^)皆さんが静かになるまでから拾った満面の笑みなんだぜw
◆YW8tTr3Ies :2010/10/08(金)
23:01:21.23 ID:/cI9ZeMIO
- ( ^ω^)「終わりだおアサピー!」
僕はアサピーに向かい、火球を放った。
(;-@∀@)「ひぃ!」
焔は直撃し、粉塵が上がる。
周りの兵達は浮足立ち、僕の事を見つめるだけだ。
そして土煙が晴れていく。
−−煙の先の影は、あい変わらず立っているようだ。
僕は身構え、追撃の準備を開始する。
- 70
名前: ◆YW8tTr3Ies
:2010/10/08(金) 23:04:40.74 ID:/cI9ZeMIO
- 次は、簡易では無く詠唱の強力な一撃を叩き込むためだ。
−−だが、
僕はここに来て最大の、驚愕に詠唱を中断した−−
土煙の先に有り得ない者が待っていた。
- 71
名前: ◆YW8tTr3Ies
:2010/10/08(金) 23:06:51.45 ID:/cI9ZeMIO
- ( ゚ω゚)「なんで、お前が?」
\\听)ξ「……」
そこには黒い大剣を盾に、アサピーを庇うツンの姿があった。
その左眼の灰色は、深く澄み切っていた。
( ^ω^)は落ちこぼれのようです
第四話
「嘘」
−−後編−−
了
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