- 8 :
◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
20:21:32.23 ID:R232kAWgO
- 昼食を食べたあと僕は、街の中を散策する事にした。
こっちに来てからと言うもの、尋問や調査と言った形でしか街を歩いて居なかった。
しかしこうやって歩くと、やはり土地勘の無い市街は、目的もなくぶらつくのが一番面白いと思う。
この街は貿易で栄えているだけあり、見慣れない物が数多く見られ、目にも鮮やかだ。
メガミ国のギヤマンの置物や小物などは、中央では出回らないような品物が数多く見られる。
特に目を引くのが、扇情的な女性を象った置物である。
この女性像は恐らくだが、メガミ国の国教の主神を象った物だろう。
メガミ国とVIP国には、それぞれ国教と言うべき物があり表立っては居ないが対立が見られる。
正直僕にはくだらないと思う事だが。
メガミ国の創造神話では、地母神とも言うべき神が世界を造ったとされている。
そしてVIP国の神話では旧神族から、−−英雄神ギーコ・ルナファス−−
が世界の覇権を勝ち取ったとされる。
メガミ国の神話で言う地母神は、VIP国の国教では旧神として扱われているために、長年邪教の類いとして扱われてきた。
こう言った観念に基づき、中央ではあまりメガミ国の宗教的題材は出回らないのだ。
- 9 :
◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
20:24:52.71 ID:R232kAWgO
- ちなみに旧神と言うのは魔族とは関係がないというのが、神学者の見解らしい。
旧神時代の人間や魔族に当たる者は、古代人もしくは、黄昏れに残りし者などと呼称されている。
現代でもその血筋は絶えておらず、数は少ないながらも人間や魔族と共に暮らしているそうだ。
メガミ国などは旧神を崇めているだけあり、古代人の血を色濃く残した者が多く住んでいるらしい。
しかし古代人には謎が多い。
絶対的な数が少ないのもあるが−−
やはり迫害の歴史が遭ったようで、魔力を扱えない事以外は何も解っていない。
恐らく迫害を逃れるために、人間や魔族に紛れ込めるように情報を遮断したのだろう。
魔力を扱えない魔族や人間も多数いるために、古代人と人間や魔族を見分ける術はもう無くなってしまった。
そのため200年程前迄は、魔力を扱えない者全てが古代人の疑いありとして、奴隷身分へと落としめられていた。
今でこそ大分改善されて来てはいるが、奴隷身分の全ての解放には至っていない。
- 11 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
20:27:29.36 ID:R232kAWgO
- やはり根底にあるであろう、古代人排斥の風潮を取り除かなければ、この問題は解決する事はなさそうだ。
−−ブーン・ホライズン−−
落ちこぼれとして生まれた僕は、少しだけ古代人の迫害に自分を重ね、共通した痛みを持つのであった。
( ^ω^)は落ちこぼれのようです
第四話
「嘘」
−−中編−−
- 13 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
20:33:40.28 ID:R232kAWgO
- 僕は夕刻頃まで、街で珍しいギヤマン製品などを見て回っていた。
夕刻に近付くに連れて、巨大な城の影が街を覆い始める。
僕が城へと帰りだした頃には鮮やかな西日が城の白壁を照らし出していた。
この時間を城の外で過ごすのは初めてで、赤と黒が白いキャンパスに映る姿は、素直に美しいと感じた。
−−城門に着くと、門兵が待っていた。
( ・3・)「おー! にぃちゃんお帰り!」
( ^ω^)「お! やっと馬鹿を抜いてくれたのかお?」
( ・3・)「ジョルジュさんに言われてな〜‘一応’お客さまだからってよ」
( #^ω^)「あーそうかお」
- 14 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
20:37:01.21 ID:R232kAWgO
- ( ・3・)「んでよ。
あんたにこれ渡しとけって頼まれたんだが……」
そう言うと門兵は、丸められた羊皮紙と、黒塗りの小箱を僕に差し出す。
( ^ω^)「なんだお? これ?」
( ・3・)「紙の方はジョルジュさんから、そっちの小箱は中央から、あんた宛てに届いた物さ」
( ^ω^)「ふーん。 ありがとうお。部屋で確認するお!」
( ・3・)「そーしてくれ」
門兵は手をひらひらさせると、門を開けてくれた。
僕は荷物を受け取り、与えられた自室へと戻っていく。
( #^ω^)「いつか、頭下げさせてやるお!」
- 16 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
20:41:20.43 ID:R232kAWgO
- ( ^ω^)「さ て と中身を確認しますかお〜」
僕は部屋のテーブルに荷物を拡げた。
( ^ω^)「まず羊皮紙に関しては、魔術書で間違いないだろうね」
羊皮紙を縛る糸を緩め、それを拡げる。
羊皮紙は案の定、40cm四方の紙に、魔法陣が描かれた魔術書であった。
魔法陣を見る限り転移魔法のようだ。
( ^ω^)(まぁこれで抜け出せって事だろうね)
概ね予想通りだった羊皮紙は懐へしまい、黒塗りの小箱へと注意を向ける。
( ^ω^)(まぁ多分陛下からなんだけど、開けたくねーお)
- 17 :>>15あえて特に意味はないとは言えない……
◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
20:46:51.62 ID:R232kAWgO
- 大体今回見たいに、情報が少ない査察の時は決まって、あとから追加指令が降るのだ。
そしてこの黒塗りの箱は、魔法によるロジックが組まれており、特定の人物。
つまり僕と陛下しか開けられない魔法の箱だ。
( ^ω^)「まぁ開けなきゃならないんだけどおね……」
僕は心底嫌な気持ちで、ため息を着くと左腕の封呪の腕輪を箱に近付けた。
そして解呪の呪文を唱える。
( -ω-)「我は王の目 王の耳 王の一部 王の憂いを払う者なり 王の秘密を守りし箱よ 我に王の御心を教え賜え」
( ^ω^)「詠唱術式発動! コード!」
−−カチリ。
- 18 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
20:55:01.07 ID:R232kAWgO
- 腕輪と呪文をキーワードにした、特殊な魔法を発動すると箱全体が薄暗い青に光り、鍵が開く。
蓋を開けると、中には一枚の紙が入っていた。
( ^ω^)「手紙かお?」
僕はそれを手に取り、内容を読む−−
−−
その手紙を見ると、笑いが込み上げてくるのを禁じ得ない。
思ったよりもゲスい奴らを相手にしているらしい−−
( ゚ω゚)「ははw 相変わらず、無茶苦茶な指令だおね!」
僕は手紙を見終わると、直ぐに燃やす。
内容は胸糞悪くなる様な事が、ひたすらに綴られていた。
胸から込み上げた不快感に触発されてか頭が酷く痛む−−
- 19 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
20:57:45.20 ID:R232kAWgO
- 僕は鞄を漁り、痛み止めの丸薬を取り出して、水差しへと手を伸ばした。
( ゚ω゚)「水が……ないおね」
水差しの中身は空になっていた。
枕元にあった鈴を振り、ツンを呼ぶ。
だがいつもは、直ぐに来る筈のツンがどういう訳が来る気配がない。
( ゚ω゚)「あっ……あぁ!」
頭が割れそうだ。
ズキズキと痛む頭を抑え、僕はベッドの縁で蹲る。
周りの音が遠くなっていった。
−−僕はそのまま目を閉じた。
- 20 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
21:00:22.06 ID:R232kAWgO
- −−ユサユサ
⌒*リ´・-・リ「あのぅ……」
−−ユサユサユサユサ
⌒*リ´・-・リ「大丈夫でございますか?」
( -ω-)「お……おぅ?」
−−ユサユサ
⌒*リ´・-・リ「起きて下さいませ。ブーンさま」
( とω^)「お……解ったお〜」
どうやら、あのまま眠ってしまった様だ。
まだ少しボーっとする。
( ^ω^)「ところで君は?」
気がつくとツンと同じ給仕服を着た少女が、傍らにいた。
後ろで縛った髪が、ぴょこぴょこと動いてなんとも可愛らしい。
⌒*リ´・-・リ「あっえっと私、リリと申します。
領主さまから用事を申し遣った、ツンさんの代わりにブーン様のお世話をする様に言われております」
そう言うとリリは、深々とお辞儀をしてきた。
- 21 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
21:04:08.36 ID:R232kAWgO
- その仕草に僕は感極まる。
( ;ω;)「おっおっ……やっとまともな扱い受けたお」
⌒*リ´・-・リ「えっ……何故泣いておられるんですか?」
不意の出来事にリリは動揺している。
( ;ω;)「気にしないでくれお……」
僕は久しぶりに、客人に対する礼を尽くした態度を見て、胸が熱くなってしまった。
やはりこれが、客人に対する、正しい対応の在り方だ。
このぐらいの幼子の方がツンや門兵達よりも、礼儀を弁えていると言うのはどういう事だ。
何か納得がいかねー。
- 22 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
21:08:55.43 ID:R232kAWgO
- というかこれが普通だろ。
ひとしきり感動の涙を流すと、僕はリリにツンの事を尋ねた。
( ^ω^)「それで? ツンはいつから居ないんだお?」
⌒*リ´・-・リ「お昼を食べてすぐでしたねぇ」
( ^ω^)「そうかお……通りで鈴を鳴らしても来なかった訳だお」
⌒*リ;´・-・リ「もっ申し訳ありません! その時には私が担当でしたのに気付かずに!」
リリは待たしても、深々と頭を下げる。
どっかの金髪貧乳ロールにも、見習って貰いたい物だ。
( ^ω^)「良いお良いお! 気にしないでくれお〜」
⌒*リ´・-・リ「はい……ありがとうございます」
- 23 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
21:10:58.32 ID:R232kAWgO
- ( ^ω^)「それで? 君は何しに来たんだお?」
⌒*リ´・-・リ「あ! そうでした! お食事のご用意が出来ましたのでお呼びしに来たんです」
( ^ω^)「解ったお。
着替えてすぐに行くお〜」
⌒*リ´・-・リ「解りました。では部屋の外でお待ちしておりますので」
そう言うとリリは、また頭を深く下げてから部屋を出て行った。
僕も急いで着替え、リリに続く。
リリはドアの横で手を前に置き、行儀よく澄ましていた。
だが後ろ髪だけは、ふわふわと踊っているのが実に可愛らしい。
- 24 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
21:13:48.21 ID:R232kAWgO
- リリは僕が出て来るのに気が付くと、少し慌てた様子で声を掛けて来る。
⌒*リ;´・-・リ「申し訳ございませんが、少し屈んで頂けますか?」
( ^ω^)「?」
僕は少々訝しがりながら、リリの言葉に従う。
⌒*リ´・-・リ「ちょっと失礼しますね……」
すると、少女の華奢な腕が僕の首筋に伸びてくる。
香水などの強い香りではないが、少し甘い香りが鼻腔をくすぐる。
恐らくはまだ12歳前後の少女だが、柔らかい香りが僕を慰めてくれる様だった。
ぶっちゃけ、滾る。
⌒*リ´・-・リ「襟が、曲がってらっしゃいますよぉ」
- 25 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
21:16:37.61 ID:R232kAWgO
- ( -ω-)(平常心平常心平常心平常心平常心平常心)
リリは僕の葛藤に気付かず、襟を正すのに夢中だ。
⌒*リ´・-・リ「よし! 直りましたよぉ」
( -ω-)(落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着けよし!)
むりやり心臓を落ち着ける。
⌒*リ´・-・リ「どうかなさいました?」
( ^ω^)「いや! なんでもないお! さぁ行こうか!」
僕は大袈裟な動きで手を拡げる。
リリは少し怪訝な表情だ。
⌒*リ´・-・リ「? はい畏まりました。ではご案内致します」
( ;^ω^)(あっぶね〜)
- 27 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
21:21:36.62 ID:R232kAWgO
- 犯罪一直線の欲望をなんとか抑えつけ、僕は食堂へと向かった。
( ;^ω^)(マジやべぇ! その内欲望に負けない事を祈るしかねーお)
僕は今後の自分の理性に不安を感じつつ、食堂の前に立った。
⌒*リ´・-・リ「それではブーン様、アサピー様がお待ちですのでどうぞ」
リリが食堂を開けると、やはり領主のアサピーが待ち構えていた。
(-@∀@)「やぁやぁブーン殿。
お待ちしておりました」
( ^ω^)「またしてもお待たせして、申し訳ありませんお」
(-@∀@)「いやいや結構結構! お仕事に励まれているのですから仕方ない事です」
( ^ω^)「こちらこそご協力感謝いたします」
- 29 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
21:24:51.56 ID:R232kAWgO
- 形式的な会話。
この数日の間、夕食は決まってアサピーと食べるが、腹の探り合いになってしまい食事どころではない。
(-@∀@)「ささ、お疲れでしょう。 お座り下さいませ」
( ^ω^)「失礼しますお」
アサピーに促され、席へ座る。
−−パンパン。
アサピーが手を叩き給仕を呼ぶ。
運ばれる料理。
(-@∀@)「して査察の具合は?」
( ^ω^)「やはり、特に問題は見当たりませんおね」
(-@∀@)「では、そろそろ終わりの目処が?」
- 32 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
21:30:51.93 ID:R232kAWgO
- アサピーは値踏みするかの如く、僕に尋ねてくる。
腹の中に居る蟲をさっさと、叩き出したいと見える。
( ^ω^)「それはなんとも言えません」
(-@∀@)「左様ですか……」
アサピーが、僅かに表情を曇らせて終わるお決まりの会話。
会食後に出る高級な葡萄酒を、お互いに酔わないペースで静かに呑み。
この重い空気の会食は僕が懐中時計を確認して、八時を回った頃に暇を切り出すまで続く−−
( ^ω^)「申し訳ありませんが、明日も早いのでこれで失礼致しますお」
(-@∀@)「そうですね。ではリリを呼びましょう」
−−チリンチリン。
アサピーは鈴を鳴らし、笑顔のまま僕を食堂から送り出す。
これが連夜に渡って続く、探り合いの終わりである。
お互いが腹の底が見えず、神経を擦り減らしていた。
- 34 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
21:36:44.71 ID:R232kAWgO
- ⌒*リ´・-・リ「お疲れですか?」
( ^ω^)「いや大丈夫だお」
僅かに暗い内心を悟られてしまったようだ。
僕はあまり若いメイドに、心配掛けぬ様に自室へと急いで戻った。
⌒*リ´・-・リ「では何かありましたら、お呼び下さい」
( ^ω^)「うん。解ったお〜」
リリは、最後まで深々と頭を下げ部屋をあとにした。
( ^ω^)(良い娘だおね)
- 35 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
21:41:03.53 ID:R232kAWgO
- 幼い給仕に僅かばかり、癒された僕は今後の事を考える。
( ^ω^)(陛下からの手紙を読む限り、アサピーは黒だお)
陛下はいつも唐突だが、情報だけは正確だ。
( ^ω^)(ただ問題は、どうやって証明するか……かお?)
ジョルジュの出方が読めないため、なんとも言えないが、先ずはジョルジュの出方を窺うのが先決だろう。
( ^ω^)(最悪、手持ちの魔術書を使って脅すかお?)
こればかりは最後の手段だ。
−−ズキン。
また頭に痛みが走る。
( ;^ω^)(間隔が短くなって来たおね……)
僕は慢性的な頭痛持ちだ。
普段はあまり気にならないが、ここ最近はストレスにより痛む間隔が短くなって来ていた。
- 37 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
21:46:09.21 ID:R232kAWgO
- 素早く丸薬を取り出し、口に含む。
新しく代えてくれたのであろう水差しから、水を汲み僕は丸薬を飲み干した。
しばらくすると痛みは治まり始める。
( ^ω^)(ふぅ……出来れば長居はしたくないおね)
ジョルジュには時間を指定されなかったため、僕は城が静かになるのを待った。
ある程度自室から見える範囲の、部屋の明かりが消えるのを待った。
時計が十時を過ぎた頃、僕は転移魔法で城から抜け出す事に成功した。
- 39 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
21:47:39.61 ID:R232kAWgO
- 僕は転移魔法の光が目立たぬ様に、昼間の店の裏口を転移先へと指定した。
(ヽ´ω`)「おぇ……相変わらず、慣れねーお」
転移魔法による移動は僕はちょっと苦手だ。
どうしても酔ってしまうのだ。
吐き気が治まるのを待って、僕は店の正面へと向かった。
ボロボロの看板は相変わらず。
小さな窓からは微かな光りが洩れているが、開いてるのかどうかは疑わしい。
( ^ω^)(まぁ昼間もこんな感じだったし大丈夫かお)
僕は意を決して、店の戸口を開ける。
やはり予想通りと言うべきか−−昼間と変わらず、店は閑散としていた。
だが奥のテーブルを見ると、ジョルジュが酒を片手につまみを突く姿があった。
- 42 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
21:51:39.66 ID:R232kAWgO
- ( ^ω^)「待たせたお」
( ゚∀゚)「首尾よく出れたか?」
( ^ω^)「転移魔法のおかげでね」
( ゚∀゚)「そりゃあ何よりだ。 葡萄酒で良いか?」
( ^ω^)「炭酸で割ってくれお」
( ゚∀゚)「はっw 女みてぇな飲み方だなw」
( ^ω^)「ほっとけw」
僕は不気味な店員が居るであろう奥に、注文をして席に着いた。
すぐに酒が来る。
( ゚∀゚)「まぁとりあえず飲もうぜ!」
そう言うと、ジョルジュはコップを合わせて来た。
- 43 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
21:55:19.67 ID:R232kAWgO
- −−カツッ
木製のコップ同士がぶつかり合う、乾いた音が店内に響いた。
お互いに酒を一気に煽り、テーブルに置く。
しばしの沈黙の後に、ジョルジュが話し出す。
( ゚∀゚)「単刀直入に言おう。
お前闇市について調べてるだろう?」
( ^ω^)(腹の探り合いは無し、かお)
正直に言って、領主だけで辟易していたので有り難い。
- 47 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
22:01:00.58 ID:R232kAWgO
- ( ^ω^)「あぁ、その通りだお」
( ゚∀゚)「ほぉ……じゃあ城の女中が別宅に行かされてる件は?」
( ^ω^)「ツンから聞いたお。
しかしそれがどうかしたかお?」
( ゚∀゚)「そいつら、全員が連絡が取れないらしい……」
( ゚ω゚)「! マジかお?」
それは初耳だ。
中央のアサピーの噂を顧みるに、少々きな臭い話しだ。
( ゚∀゚)「正直に言やぁ、俺はアサピーだと思ってる」
僕は手紙の件を伏せて答える。
( ^ω^)「中央の話しは濡れ衣だって、聞いたお?」
( ゚∀゚)「そりゃあ解らんが、日の無い所に煙りは起たずだ」
( ^ω^)「それで? ジョルジュ。
君は僕に何をさせようって言うんだお?」
( ゚∀゚)「……」
光りの加減で、ジョルジュの表情は窺えしれない。
- 49 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
22:04:40.88 ID:R232kAWgO
- 押し黙るジョルジュだが、何か納得がいったのか首を縦に振る。
そして−−
( ゚∀゚)「アサピーを捕まえるのに、力を貸してくれないか?」
ジョルジュは、溜めに溜めた言葉をぶつけてきた。
( ^ω^)「でも、アサピーはこの街の英雄じゃないのかお?」
( ゚∀゚)「そうかも知れない。
だがそれ以上に、罪もない者が殺されている可能性がある」
( ^ω^)「うーん。 仮にそれが本当だとしてどうやって証明するんだお?」
( ゚∀゚)「そこで闇市さ」
( ^ω^)「話しが見えてこねーお?」
( ゚∀゚)「闇貿易や、闇市の裏帳簿は恐らく、別宅にある」
( ^ω^)「まぁ多分そうだけど。
踏み込むために必要な手続きを、用意する前に全部消されるお?」
- 53 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
22:07:28.82 ID:R232kAWgO
- ( ゚∀゚)「ほらよ」
ジョルジュは、何かの紙束をテーブルに出す。
僕はそれを受け取り目を通した。
( ^ω^)「これは……?」
( ゚∀゚)「商人側の帳簿さ」
( ^ω^)「なんでこんなもんあるんだお?」
( ゚∀゚)「AVにツテがあってな! 盗み出して貰った」
( ^ω^)「確かにこれがあれば、別宅を調べられるお」
( ゚∀゚)「だろ? 多分アサピーが殺した女は屋敷の近くか、屋敷の敷地内に埋めてある筈だ」
- 55 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
22:12:09.27 ID:R232kAWgO
- ( ^ω^)「この帳簿で屋敷に踏み入って、闇市と殺されたかもしれない女中達の件を調べるって事で良いのかお?」
( ゚∀゚)「そうだ。 協力してくれるか?」
( ^ω^)「もちろん! 僕としても、有り難い申し出だお」
( ゚∀゚)「交渉成立だな!」
ジョルジュは右手を僕に差し出す。
( ^ω^)「だお!」
そして僕は、その手をがっちりと握り返した。
力強い武器を得て、久しぶりに美味い酒を汲みかわせる事が何よりも嬉しい。
ありがとう。ジョルジュ。
−−翌朝
僕は昨日ジョルジュと、話しあった事のために準備をしていた。
- 56 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
22:15:04.06 ID:R232kAWgO
- 昨晩−−
( ゚∀゚)「良いか? とりあえずこの帳簿を、先ずはアサピーに突き付けろ」
( ゚∀゚)「そしたら、後は俺が別宅に行けるように仕向けてやる」
( ゚∀゚)「別宅に着いたら、いろいろ調べてくれ。俺はアサピーを見張る」
( ゚∀゚)「武器や魔術書は忘れずに持って行けよ?」
−−
( ^ω^)「さて、とりあえず準備完了だお!」
僕はジョルジュに言われた通り、戦闘に使える魔術書とナイフを懐に仕舞い部屋を出た。
恐らくアサピーは食堂に居るだろう。
僕は真っ直ぐに、食堂へと向かった。
- 59 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
22:18:07.99 ID:R232kAWgO
- 食堂へ向かう途中でリリと出会った。
⌒*リ´・-・リ「あっブーン様! 今お呼びしようとしておりました」
リリはそう言いながらいつも通り深々と、頭を下げた。
( ^ω^)「あれ? ツンはまだ帰ってないのかお?」
⌒*リ´・-・リ「ツンさんですか? 恐らく昨日は別宅に泊まられたんじゃないでしょうか?」
( ゚ω゚)「別宅!?」
僕は予想外の返答に大声を上げてしまう。
⌒*リ´・-・リ「は……はい」
僕は更に怒鳴りつける。
( ゚ω゚)「何故それを言わなかったんだお!」
⌒*リ´;-;リ「はっ……すっすいません」
リリが泣き出してしまい、はっと我に帰る。
- 61 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
22:22:22.82 ID:R232kAWgO
- ( ´ω`)「ごっごめんお。 ちょっと大事な用事があったんだお」
⌒*リ´;-;リ「ひっひっぐぅ……」
ふさぎ込んだままリリは泣き続ける。
( ´ω`)(すまんおリリちゃん)
( ^ω^)「リリちゃん。 後でいっぱい謝るお。だから−−
今はごめんお!」
僕は後ろ髪を引かれつつも、ツンの命が無事な事を祈り食堂へと走りだした。
- 65 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
22:25:00.82 ID:R232kAWgO
- −−バタン!
僕は扉を勢いよく開け放ち、食堂へと入って行った。
アサピーはいつもの様に、テーブルの奥で座っている。
(-@∀@)「おや? そんな慌てて如何なさいました?」
( ゚ω゚)「はぁはぁはぁ……ふぅー」
僕は深呼吸して、息を整える。
( ^ω^)「失礼。アサピー殿。急ぎの用だったのでつい……」
(-@∀@)「そうですか?
して? 急ぎの用とは?」
( ^ω^)「これですお」
僕は昨日ジョルジュから渡された帳簿を、テーブルに置く。
それを見て、アサピーは明らかに動揺している。
(;-@∀@)「これは……」
( ^ω^)「AVの闇市に関する商人の裏帳簿ですお」
- 67 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
22:27:13.26 ID:R232kAWgO
- アサピーは動揺を悟られまいと、すぐに平静な声で答えてきた。
だが今更無駄だ。
僕はここで追い詰めると、決めていた。
(-@∀@)「それは遺憾ですな、ですがAVは中央の管轄です。 私には関係がありませんよ?」
( ^ω^)「そうですか?
ですがこの帳簿には、貴方に支払われる報酬が記載されてますお」
(#-@∀@)「言い掛かりだ! 貴公も私を侮辱するつもりか!」
アサピーは猛然と立ち上がり、僕に詰め寄ってくる。
だが僕はそれを、毅然とした態度で制する。
- 68 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
22:31:59.99 ID:R232kAWgO
- ( ^ω^)「まだ確定ではありませんお。
ただこれについては、別宅の方を調べさせて頂きたいと思ってますお」
その言葉に続き、タイミングを見計らったかの如くジョルジュが食堂へと現れる。
( ゚∀゚)「領主様、私も別宅の捜査を行って、身の潔白を証明した方がよろしいかと思います」
(#-@∀@)「なっ!」
( ^ω^)「よろしいですおね?」
(#-@∀@)「くっ……好きにしろ」
アサピーは逃げ道がないと悟ったのか、すんなりと別宅の捜査を許可した。
- 69 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
22:35:24.02 ID:R232kAWgO
- 僕とジョルジュ、アサピー、そして数名の兵士はすぐにアサピーの別宅へと向かった。
ジョルジュが言うにはアサピーの別宅は、街の北にあるらしい。
アサピーがこの街に来た時に使っていた屋敷らしく、彼が領主になってからは、数名の使用人以外は住んでいない。
僕らはその屋敷に、着いた。
城に比べれば地味な佇まいだが、隅々まで手入れは行き届いているようだ。
(-@∀@)「ふん! ここだ。好きに調べるが良い。
小差な功を逸る貴族崩れが!」
いつもとは違い不遜な態度で毒突くアサピーを、僕はうっすらと見遣る。
( ^ω^)(やっと地が出て来たおね)
- 70 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
22:37:54.34 ID:R232kAWgO
- ( ^ω^)(さ て
とここからどう動くかおね〜)
僕は、どうやってやつを追い詰めるか考える。
姿の見えないツンも心配なので、手早く事を進めたい。
まずは屋敷に入り、2階の応接室に通される。
兵達は屋敷の外で待機している。
部屋に入ると−−
( ゚∀゚) 「俺らはここにいよう。何かあれば呼んでくれ」
ジョルジュはそう口を開いた。
そしてソファーに座ろうとする。
だが僕はそれを右手で制する事にした。
( ^ω^)「待ってくれおジョルジュ」
( ゚∀゚)「あぁん?」
( ^ω^)「はっきり言って、屋敷を調べる必要なんかねーんだお」
(-@∀@)「ははw 随分と横暴な事を言う様だな!」
( ^ω^)「ジョルジュ。 少し黙らせてくれお」
今は邪魔なアサピーを、黙らせるためにジョルジュに指示を出す。
- 71 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
22:40:04.80 ID:R232kAWgO
- ( ゚∀゚)「あー良いのか?」
( ^ω^)「構わんお」
( ゚∀゚)「あいよぉ!」
ジョルジュは気のないセリフを吐くと、一瞬で左腰に差した山刀を、アサピーの首筋に押し当てる。
(;-@∀@)「ぐっ……やはり繋がってたのかお前達」
アサピーは冷や汗を流し、絶望の表情を浮かべる。
( ^ω^)「さぁね♪」
僕はそれに対し肩を竦めて答えた。
- 73 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
22:43:37.26 ID:R232kAWgO
- ( ゚∀゚)「んで? どうすんだ?
拷問でもするのか?」
( ^ω^)「んな事はしねーお。 まぁ話しを聞いてくれお」
( ゚∀゚)「? まぁ良いが……」
そして事の全容を知った経緯を、やつに話し始める。
( ^ω^)「まずそもそもは偶然にも、AVに立ち寄った事で僕は闇市の存在を知ったお」
(-@∀@)「……」
( ^ω^)「そして領主が絡んでいる事もね」
(-@∀@)「言い掛かりだと言って……」
( ゚∀゚)「……」
アサピーが喋ろうとするが、ジョルジュの山刀が鈍く煌めき言葉を握り潰す。
( ^ω^)「続けるお」
(;-@∀@)「クソが……」
- 76 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
22:46:30.38 ID:R232kAWgO
- ( ^ω^)「まぁAVで僕は何者かに襲われたんだけど、そのせいで逃げるので精一杯だったお」
(-@∀@)「……」
( ^ω^)「そして僕は、テデベイアに着いた。 しかし着いて見たら驚きだお! クソ犯罪者が英雄と慕われてるんだからお」
僕は身振りを交え、おちょくる様に話し続ける。
( ^ω^)「さて、ここからが本題だお」
(#-@∀@)「……」
( ^ω^)「僕は城内には元々見切りを付けてたんだお」
(-@∀@)「ほぅ?」
- 77 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
22:50:10.29 ID:R232kAWgO
- 僕は話しを続ける。
( ^ω^)「そして、これまた偶然にもツンから別宅の情報が得られたんだお。 なんだかんだで僕はツイてるおねw」
(#-@∀@)「ツンめ! 余計な事を!」
( ゚∀゚)「うるせぇ!」
またしてもジョルジュが、山刀に力を篭める。
( ^ω^)「まぁ落ち付けお。
この時点ではまだ手札は揃ってなかったんだから」
(-@∀@)「この時点では?」
( ^ω^)「そうだお。 場所は解っても踏み込む証拠がなかったんだお」
( ゚∀゚)「まぁそれは俺が解決したんだがな!」
ジョルジュはにやにやと、アサピーを挑発する。
( -ω-)「ただ一つジョルジュは最悪のプレゼントも、持って来てくれたお」
( ゚∀゚)「……」
(-@∀@)「それは不運だな。 どうしたんだね?」
( ゚ω゚)「アサピー! お前が城の女中を手に掛けている可能性だお!」
- 79 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
22:53:46.39 ID:R232kAWgO
- (-@∀@)「くくく……」
アサピーの雰囲気が変わる。
( ^ω^)「何がおかしいんだお?」
(-@∀@)「全部お見通しって訳かw 落ちこぼれと侮るべきでは無かったな!」
( #゚∀゚)「てめぇ!」
(-@∀@)「闇市。女中の殺害。全部認めよう!」
( ^ω^)「随分素直だおね。まだ証拠は見つかってねーお?」
(-@∀@)「ははw 君ならいずれ見つけるだろう?」
まぁその通りだ。アサピーを吊るし上げる手札は揃っている。
後はツンの安否が気になるだけだ。
これ以上被害者を増やしたくはない。
- 82 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
22:57:17.77 ID:R232kAWgO
- ( ^ω^)「ツンはどうしたお?」
(-@∀@)「さーてねぇ?
今日は休みを与えて居るから、屋敷のどこかで休んでいるんじゃないかな?
もっとも永遠にかもしれんがね!」
( ゚ω゚)「てめぇ!」
僕は激昂して、身を乗り出す。
(-@∀@)「どうかしたかい? 君なら予想していた事だろう?」
挑発を続けるアサピーに、僕はすぐにでも駆け寄りたい気持ちになるが−−
( #゚∀゚)「お前マジで、いい加減にしろよ!」
- 84 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
23:00:13.29 ID:R232kAWgO
- −−ジョルジュの勢いに踏み止まる。
ジョルジュの山刀は、そろそろタガがハズレ掛けていた。
わなわなと震えた刀身は、アサピーの首へと触れかける。
不味いアサピーに飲まれ掛けている。
僕まで冷静さを失う訳には行かない。
そして不意にアサピーは、後ろに一歩下がりいつもの笑みを張り付け言い放つ。
(-@∀@)「さて、この余興も飽きたね。そろそろ終演と行こうか?」
( #゚∀゚)「てめぇ! 動くんじゃねぇ!」
アサピーはジョルジュの威嚇を意にかえさず深々と頭を下げ、ボソリと何かを呟いた。
−−なぁ? ジョルジュ
( ^ω^)は落ちこぼれのようです
第四話
「嘘」
−−中編−−
了
- 89 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
23:08:19.28 ID:R232kAWgO
- ( ^ω^)……ブーン・ホライズン
魔術の大家ホライズン家の落ちこぼれ
業名を持たず、ただいま気ままな放浪中。
にやけ顔だが腹黒、しかもロリコン。
作者的には落ち担当。
ξ゚听)ξ……ツン・セイレン
西の領主アサピーに仕える女中。
アサピーに心酔している。
見た目は良いが、口は最悪。
影が薄いのが悩み
( ゚∀゚)……ジョルジュ・ローズコション
西の領主の懐刀
明るく元気な変態。
ちなみに作者はうなじフェチ
- 91 : ◆YW8tTr3Ies :2010/10/06(水)
23:10:45.26 ID:R232kAWgO
- (-@∀@)……アサピー・ハンドレッド・ゴシップ
西の領主。業名はハンドレッド
ゴシップ家の長男
中央では犯罪者、西では英雄。
はたして真相は?
lw´‐ _‐ノv……シュール・サンライズ・スナオ
南の領主。業名はサンライズ
変人。ブーンの幼なじみ。世界唯一の米神信者。
シュー様に濡れる!って言わすのが野望
⌒*リ´・-・リ……リリ
リリちゃん可愛いよリリちゃん
*(‘‘)*……ヘリカル
実は作者的には嫌い
以上5分で作ったキャラ紹介でした。
うん今度真面目に作るよ
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