3 : ◆YW8tTr3Ies :2010/09/28(火) 22:48:18.75 ID:3F9wy/QDO
夜通し歩き続けて、僕は小川に辿りついた。
前日に起こった酷い別れで傷付いた心は、まだ癒えてはいない。
時刻はまだ日が登り始める頃だったために、僕は少し休む事にした。

川下の先の方を見つめるとテデベイアの街の外壁が見える。

西の大都市だけあり、名前すら思い出したくない前日の街とは違い広く立派な城塞都市となっている様だ。

火を焚き、小川の水を汲みあげ珈琲を煎れる。
旅の中で許された微かな楽しみとして、僕は珈琲を飲む事にしている。

やはり水に依って味が変わるらしく、今日のは少し苦みが強い……。

少し横になり、日が高くなった頃に僕は、テデベイアの街へと向かう準備を進めたのだった。

内政部署所属領地査察管理官

−−ブーン・ホライズン−−

としての職務のために。

( ^ω^)は落ちこぼれのようです

第三話

「名君アサピー」
5 : ◆YW8tTr3Ies :2010/09/28(火) 22:50:19.12 ID:3F9wy/QDO
昨日ゴミに塗れてしまった服は焚火で燃やし、旅行用のナップザックから絹製のタキシードを取り出した。
タキシードは木の枝に掛け、小川で軽く沐浴をする。

水から上がると、僕の全身はガタガタと震えていた。

((( ゚ω゚))「流石に春先じゃさみぃーお」
震えた指先で、珈琲に手を伸ばすとカタカタと器がなる。

ある程度身体が乾くと、僕はタキシードに着替え靴も履き変える。
普段はしない香水や 、懐中時計、少し目立つ髭を整えて、髪をオールバックに纏める。
如何にも紳士然とした身なりとなる。

( ^ω^)+「さーて準備完了だお♪」キラーン

この格好でナップザックを背負うのはなんとも不格好だが仕方ない。
そのまま二十分程革靴で歩くと、テデベイアの街の門に辿り着いた。

7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/28(火) 22:54:23.18 ID:3F9wy/QDO
門番はナップザックを背負うタキシード姿の僕に、目を丸くする。

( ・3・)「あるぇ〜? なんで貴族様がそんなもん担いでるだい?」

( ^ω^)「いやーお恥ずかしい話しですお。従者と逸れてしまったんだお」

( ・3・)「あーAV方面から来たなら、前にもあった事だよ」

( ^ω^)「そうなんですかお?」

( ・3・)「まぁこの前は、従者の方が来たんだけどな」

( ^ω^)「へぇ〜それで従者はどうしたんですかお?」

( ・3・)「お城に連れられてそのまま見てないね〜、魔法で送ってやったんじゃないかな?」

( ^ω^)「魔法ですかお? 移動術式を使える程の魔術師が此処には居るのかお?」

( ・3・)「と言うより領主のアサピー様が、魔術師なんだよ」

( ^ω^)「アサピー? あの屑が?」

( ;・3・)「おいおい! あんた身なりは貴族っぽいが言葉には気を着けなよ?」

( ^ω^)(おめーが言うなお)

12 : ◆YW8tTr3Ies :2010/09/28(火) 23:00:53.78 ID:3F9wy/QDO
アサピーと言えば、内政部署の三大貴族の一つゴシップ家の跡取りだった筈。

権力を盾に女を手籠めにしたり、或いは殺したり等の暴虐を行い地方に左遷されたとは聞いたが……。
まさか、この地の領主になって居るとはね。

( ・3・)「んでとりあえず、城下に入るなら身分証なりなんなら出してくれ」

( ^ω^)「はいこれ」

僕は、査察官任命書を渡す。

( ・3・)「あるぇ〜? あんたもしかしてお偉いさん?」

( ^ω^)「一応ね! あんたも言葉遣い気を付けろお!」

( ・3・)「あっそう。じゃあ通って良いよ」
( ^ω^)(何故こうも僕は、舐められるのだろうか?)

失礼な門番の元をあとにして、先ずは適当な宿に荷物を置く事にした。
必要な物だけ皮張りのトランクケースに詰めて、領主アサピーの居城へと向かう。
15 : ◆YW8tTr3Ies :2010/09/28(火) 23:03:16.12 ID:3F9wy/QDO
城へと向かう道すがら、僕は町並みを観察する。

( ^ω^)「へぇ〜随分と栄えているおね」

メガミ国との貿易拠点だけあり、物が良く集まっている様だ。
砂糖等の高級品、海産物等は中央の三割安と言った所か。
だがそれだけに、アサピーが領主と言う事に納得がいかない。
中央に居た頃など、まさに貴族の面汚しと言った感じで無能の極みであった。

( -ω-)(つーか完全に身から出た錆じゃねーかお。
誰だよこんな所に犯罪者送ったの)

恐らく中央としても、内々に事を済ませたいからなのだろう。
だから騎士団では無く、文官に分類される内政部に仕事を寄越したと見える。

( ^ω^)=3(これ以上面倒な事が増えないでくれお〜)

ため息を吐くと幸せが逃げると言うが、不幸が押し寄せて来なければ何でも良いと思える様な状況だ。

仕事が終わったらこのまま、海外にでも脚を伸ばそうかと考えて気を紛らわす。

( ^ω^)(はぁーめんどくさい……)
17 : ◆YW8tTr3Ies :2010/09/28(火) 23:06:25.93 ID:3F9wy/QDO
街の中心に領主の城は建っていた。
白い外壁に、グリフォンをあしらえた屋根飾り、五階建てのその建物は高い外壁に囲まれ、荘厳な見た目だ。

外壁の一角に門を見つけると、僕はそこへと向かう。
そこには衛兵が立っていた。

( ^ω^)「失礼しますが……、てあんたさっきの門番じゃねーかお!」

( ・3・)「あーん? あぁボルイチの事かい?」

( ゚ω゚)「ボルイチ?」

( ・3・)「そうだよ? あいつは俺の兄貴さ」

( ^ω^)「そうなのかお〜びっくりしたおっお」

( ・3・)「んで? 馬鹿面の貴族のあんちゃんが、何のようだい?」

( ^ω^)(てめーもど失礼なやつかお)
黙って査察官任命書を渡す。

( ・3・)「へぇーあんた見たいなやつでも、お偉いさんに成れるんだねぇ」

( ゚ω゚)(Fuck You! ぶち殺すぞ! ゴミめら!)

19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/28(火) 23:09:57.81 ID:3F9wy/QDO
失礼な門番に取り付いで貰い、城の中庭に入ると高い石段が待っていた。

( ^ω^)「うげぇ……これ登んのかお?」

すると石段の脇から、少女が現れる。

ξ゚听)ξ「あっ! あんたがお客様ね?」

( ^ω^)「多分そうだお」

少女はメイド服を着ていた。
ゴシックタイプと言うのだろう。
歳の頃は15歳ぐらいか?

鮮やかな金髪に、グレーの瞳と、何処か人形の様な顔立ちだが……。

如何せん言葉遣いは最悪である。

24 : ◆YW8tTr3Ies :2010/09/28(火) 23:12:25.32 ID:3F9wy/QDO
( ^ω^)(この街は、貴族相手に礼を尽くすって作法は無いのかお?)

そう考えていると、少女は更に僕を問い詰める。

ξ゚听)ξ「多分って何よ? お客様なの? 違うの? はっきりしなさいよ!」

( ^ω^)(うっぜー)

( ^ω^)「はいはい。 お客様ってのは僕の事だお」

ξ゚听)ξ「あっそう! ならさっさとそう言いなさいよね!」

( ^ω^)(何故怒られなければならない)

少女はつかつかと石段を登って行く。

すると急に立ち止まる。

ξ゚听)ξ「さっさと来なさいよ! てかあんた名前は?」

( ^ω^)「ブーンだお! 君は?」

ξ゚听)ξ「なんであんたに教えなきゃならないのよ?」

(#^ω^)(良い加減にしろお! このクソアマ……)


25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/28(火) 23:14:35.96 ID:3F9wy/QDO
黒い感情に包まれながら移動すると、謁見の間に通された。

ξ゚听)ξ「アサピー様、査察官のブーン様がお出でなられました」

(   )「お入り頂いてくれ」

ξ゚听)ξ「畏まりました。ではブーン様お入り下さい」

(#^ω^)(さっきまでと態度が全然ちげー!)

謁見の間には、眼鏡を掛けた20代半ば程の貴族が豪奢な椅子に座っていた。

その男は僕が入ると、立ち上がり寄ってくる。


26 : ◆YW8tTr3Ies :2010/09/28(火) 23:17:53.33 ID:3F9wy/QDO
(-@∀@)「これはこれは、査察官殿! 私は領主のアサピーと申します」

想像したアサピーの姿とは全然違う。
屑野郎と評判だった中央の頃とは違い、知的で明るい見た目だ。

( ^ω^)「私はブーンと申します。抜き打ちで、査察を行う様に言われて来ました」

(-@∀@)「ほう? 抜き打ちとは?」

( ^ω^)「たまにあるんですお。私の様に普段は仕事してない者に、仕事をさせるために」

(-@∀@)「またまたご謙遜を」

はっはっはっと笑いながら、アサピーは僕の手を取る。

(-@∀@)「まぁ私共には、疚しい事はございませんのでご自由にお調べ下さい」

( ^ω^)「はい。では明日から城の会計書等に目を通させて頂きますお。
申し訳ありませんが、少し騒がしくなります」
28 : ◆YW8tTr3Ies :2010/09/28(火) 23:22:53.31 ID:3F9wy/QDO
(-@∀@)「はっは、なんのなんの。国にしっかりと貢献してる証を、見て頂くだけですからね。
何も悪い気は致しませんよ」

( ^ω^)「そう言って頂けると、私も気が楽になりますお」

(-@∀@)「そういえば宿は如何なさるのですかな?」

( ^ω^)「城下の宿に部屋を取りましたお」

(-@∀@)「それでは不都合もありましょう?
良ければ我が城の一室にお泊り下さい」

( ^ω^)(うーん逃げ道が無くなるから、遠慮したいお)

( ^ω^)「荷物を置いてありますので、あちらに泊まる事にしますお」

(-@∀@)「荷物でしたら、私の兵に持って越させましょう。ささっ遠慮なさらずに」

( ^ω^)(下手に遠慮するのも、不味いかお?)


29 : ◆YW8tTr3Ies :2010/09/28(火) 23:25:02.18 ID:3F9wy/QDO
( ^ω^)「解りましたお。ではお邪魔させて頂きます」

僕は一礼して、領主の提案を受け入れる事にした。

(-@∀@)「どうぞどうぞ。ではツンおいで!」

すると先程の少女が入ってくる。

ξ゚听)ξ「はい? なんでしょう? アサピー様」

(-@∀@)「査察官のブーン様を客室にご案内してくれ。くれぐれも粗相が無いように」

ξ゚听)ξ「畏まりましたわ。では参りましょうかブーン様」

( ^ω^)「よろしく頼むお」
31 : ◆YW8tTr3Ies :2010/09/28(火) 23:28:53.86 ID:3F9wy/QDO
(-@∀@)「何かありましたら、そこに居るツンにお申しつけ下さい。
食事の支度が済みましたら、お部屋までお呼びしますのでそれまで適当に寛いで下さいませ」

( ^ω^)「解りましたお。何から何までありがとうございます」

僕は挨拶を終え謁見の間を出ると、ツンと言う名前の少女は、先に出て待っていた。

僕は懐中時計が止まっている事を確認してから、ツンに話し掛ける。



32 : ◆YW8tTr3Ies :2010/09/28(火) 23:31:07.22 ID:3F9wy/QDO
( ^ω^)「えーとツンだったかお? 部屋まで案内してくれお」

ξ゚听)ξ「気安く呼ばないでくれる?」

そう言いながらつかつかと、歩き出す。

珍しく僕もカッとなってしまう。

(#^ω^)「んな……良い加減にしろお! 一応客だお!」

ξ゚听)ξ「私が仕えるのはアサピー様だけ。
あんたにかしづく義理はないわ!」

(#^ω^)「貴族相手にそんな態度許される訳ねーお! 君は使用人だお!」

ξ--)ξ「あんたも屑みたいな貴族の一員ね。アサピー様と大違い」

( ゚ω゚)「屑? 屑ってのはアサピーみたいなやつの事を言うんじゃねーかお?」

ξ#゚听)ξ「はぁ? あんたにアサピー様の何が解るのよ! 腐敗した前の領主を排して、街を豊かにしてくれた英雄よ!」
( ^ω^)(英雄?)


33 : ◆YW8tTr3Ies :2010/09/28(火) 23:35:45.73 ID:3F9wy/QDO
相手が怒りだした事により冷静になれた。

ξ#゚听)ξ「なんとか言いなさいよ!」

ここは情報を得るために、頭を下げる事にした。

( ^ω^)「すまんかったお。 てか英雄ってどういう事だお?」

ξ#゚听)ξ 「んな……知らないのあんた?」

( ^ω^)「無学ながら」

ξ--)ξ=3「どうせあんたも、中央でのアサピー様の噂を信じてる口ね」

( ^ω^)「まぁそーだお」

ξ゚听)ξ「あの方は酷い噂のせいで、こっちに左遷されたけど、それでも腐らずに前の領主を糾弾してくれた方なの!」

( ^ω^)(へぇーまぁた複雑になって来たお)



34 : ◆YW8tTr3Ies :2010/09/28(火) 23:38:29.31 ID:3F9wy/QDO
ξ゚听)ξ「それ以来、ピンク民達はアサピー様に尽くし、他の貴族からアサピー様をお護りしようと決めたのよ」

( -ω-)「そうだったのかお。本当にすまんかったお。」

ξ゚听)ξ「解れば良いのよ!」

( ^ω^)「僕もアサピーさんの疑いを晴らせる様に、しっかり調べさせて貰うお」

ξ゚听)ξ「そうして頂戴。てかあんた他の貴族と違って頭が柔らかいわね」

( ^ω^)「まぁ、いろいろ見て歩いてるからお」

ξ゚听)ξ「ふーんそうなんだ。まぁアサピー様を貶める気はないみたいだし普通に接して上げるわよ」

35 : ◆YW8tTr3Ies :2010/09/28(火) 23:41:37.82 ID:3F9wy/QDO
( ^ω^)「それは助かるお、えーと……」

ξ///)ξ 「ツンって呼んで良いわよ!」

( ^ω^)「解ったお! ツンよろしくだお」

ξ゚听)ξ「はいはいよろしくブーン」

( ^ω^)「いや敬語使えよ」

ξ゚听)ξ「うっさい大体あんた、業名がない時点で平民と大差ないじゃない?」

( ^ω^)「なんでそれお……」

ξ゚听)ξ「査察官任命書」

( ^ω^)「……あぁ」

ξ゚听)ξ「アサピー様に書類を渡す前に私がチェックするからね。驚いたわよ? 業名の無い貴族なんて」

( ´ω`)「ほっといてくれお……」

ξ;゚听)ξ「そんな落ち込まないでよ! ほら! もう部屋に着いたから私は行くわよ?」

( ´ω`)「解ったお。 一人にしてくれお」

ξ;゚听)ξ「荷物は後でくるから、それまで適当に休んでて!なんかあったら鈴を鳴らせば来るから、じゃまたね!」

それだけ言うと彼女は廊下を戻って行った。


36 : ◆YW8tTr3Ies :2010/09/28(火) 23:45:19.33 ID:3F9wy/QDO
僕は客間に入ると、ソファーに座った。

胸元を緩め、先ずは懐の懐中時計を取り出す。

懐中時計はまだ時間が止まったままだ。

( ^ω^)「異常は無しかお」

この懐中時計には、ある細工がしてある。

これで監視されていない事を確認すると、皮張りのケースからいくつかの魔術書を取り出す。

( ^ω^)「先ずは、防音呪文に封心呪文、後は荷物を見られない様に封印呪文で良いかお?」

小声で幾つか呪文を唱えると、紫色の光りが空中に拡がり、すぐに消える。

これを行う為にさっさと、ツンには行って貰ったのだ。
ちょっと気を遣わしてしまったかもしれない。

( ^ω^)「さってと、これでとりあえずは安心だお」

先程取り出した魔術書は、簡易術式を記した書で、僕の様にその魔法が使えない者でも使える様にした物だ。
効力は変わらない物の、高価で一回しか使えないため、貴族でもあまり持たない代物である。

僕は一通り準備が終えたので、疲れを癒すために少し眠りに着く事にした。


37 : ◆YW8tTr3Ies :2010/09/28(火) 23:48:56.41 ID:3F9wy/QDO
−−謁見の間

(-@∀@)「ジョルジュは居るか!」

( ゚∀゚) 「はっ! ここに」

ジョルジュと呼ばれた男は、部屋の中心に音も無く現れる。

(-@∀@)「客人の荷物を宿から持って来てくれ」

( ゚∀゚) 「荷物ですか? なら私に頼まずとも」

(-@∀@)「ついでに、客人に挨拶をしておいてくれ、ツンだけでは粗相があるかもしれないしな」

( ゚∀゚)「あーそうですねぇ。ではお任せ下さい」

そう言うとジョルジュは、闇の中に消えていった。
ジョルジュが消えると、領主アサピーは窓に向かい一人呟く。

(-@∀@)「ホライゾン家が出てくるとはね。これは厄介かもしれんな」

領主の間は静寂に包まれていた。


38 : ◆YW8tTr3Ies :2010/09/28(火) 23:52:52.68 ID:3F9wy/QDO
−−ドガッ

大きな音で僕は目を覚ます。
懐の懐中時計は、十七時を指していた。
僕は寝ぼけ眼を擦り、譫言を呟いた。

( -ω-)「うーん幼女が起こしてくれたのかお?」

( ;゚∀゚)「なに? お前ロリコン?」

( ^ω^)「……」

( ゚∀゚)「……」

( ^ω^)「……なにあんた?」

( ゚∀゚)「荷物届けに来た
幼女じゃないけどイカした
ジョルジュ・ローズコション様さ!」

( ゚ω゚)「勝手に人の部屋入ってくんなお!」

あぁまたしてもロリコン疑惑が……、僕はロリコンじゃないと言うのに……。

39 : ◆YW8tTr3Ies :2010/09/28(火) 23:54:55.19 ID:3F9wy/QDO
( ゚∀゚)「まぁ気にすんなよ! おれぁロリコンの気持ちはわかんねーが、男はみんな女好きなもんさ!」

( ´ω`)「そっとしといてくれお……」

ジョルジュと名乗る男は、からからと笑い僕を慰める。

( ゚∀゚)o彡゜「まぁでもロリも良いが、おっぱいが一番さ! ツンみたいな貧乳じゃ萎えるだろ?」

ジョルジュは高らかに叫びながら、左手を上下に振り回す。

( ^ω^)(こいつ慰めるとか考えてねぇ、ただ単に変態なだけだお)
41 : ◆YW8tTr3Ies :2010/09/29(水) 00:00:50.38 ID:6Fs8paWAO
そう物思いに耽ていると、突然部屋のドアノブが−−がちゃりと回る。

ξ#゚听)ξ「誰が貧乳じゃごらぁ!」

( ゚∀゚)∴・.「ぶほっ!」

ドアが勢い良く開くと、ツンが入ってきた。
そのままの勢いで、ジョルジュの腹に強烈なレバーブローが炸裂する。

そのまま、ツンは身体を無限の軌道に揺らして、目一杯ジョルジュの身体に拳を打ち付けた。

これが後に世界を取った都弟櫑蝋流である。

(ブーン系書房刊 あんたなんか好きじゃないんだからねより抜粋)

( ^ω^)「まっくのーうち! まっくのーうち!」
43 : ◆YW8tTr3Ies :2010/09/29(水) 00:05:14.65 ID:6Fs8paWAO
適当にジョルジュをボロ雑巾にすると、ツンは僕に話し掛けてくる。

ξ,゚听)ξ 「夕食の支度が出来てるわよ」

( ^ω^)「解ったお〜着替えたら直ぐに行くお〜」

ξ,゚听)ξ「早くしなさいよね。ロリコン」

( ゚ω゚)「うわぁー!」

防音魔法の効きが悪いのか、会話はだだ漏れだったようだ。

死にたい。

軽蔑した視線を僕に送ると、ツンは肉塊と化したジョルジュを引きずりながら部屋をあとにした。
45 : ◆YW8tTr3Ies :2010/09/29(水) 00:09:20.93 ID:6Fs8paWAO
ツン達が出て行ったあと、僕は懐中時計に目をやる。

( ^ω^)「あれ? 止まってるお」

さっきは動いてたと思ったが、気のせいだろうか?
でたらめな時刻を指して、懐中時計は止まっていた。

一応防音魔法を張り直し、着替えると鈴を鳴らす。

すぐに、ツンが迎えに来た。

ξ゚听)ξ「あんた髪撥ねてるわよ?」

( ^ω^)「まじかお?」

ξ゚听)ξ「仕方ないわねーちょっと貸しなさい!」

( ^ω^)「すまんおー」

ξ///)ξ「領主様にみっともない物を、みせらんないだけなんだからね! 勘違いしないでよね!」

( ^ω^)「はいはい。解ったお」

ξ゚听)ξ「本当に?」
ツンは急に僕に顔近付けてくる。



46 : ◆YW8tTr3Ies :2010/09/29(水) 00:11:44.55 ID:6Fs8paWAO
( //ω/)「本当だお!」

僕は気恥ずかしくなり、目を背ける。

そんな僕を見て彼女はクスクスと笑う。

そして一言。

ξ゚听)ξ「ロリコンが、うぶって本当ね」
( ゚ω゚)「ふざけんな!」

ξ><)ξ「キャーロリコンが怒ったー」

そんな寸劇のあと、寝癖を治して僕は食堂に向かった。
48 : ◆YW8tTr3Ies :2010/09/29(水) 00:16:00.47 ID:6Fs8paWAO
食堂へ向かうと、もうアサピーは着席していた。

(-@∀@)「お待ちしておりましたよブーン殿」

( ^ω^)「お待たせして申し訳ありませんお」

僕は頭を下げる。
形式的な物だ。

僕はアサピーと反対側の席に着席する。

アサピーが手を叩くと、料理が運ばれて来た。

やはり領主の食事とあって中々に贅が凝らしてある。

適当に会話をしつつ、料理を口に運び続ける。

デザートを食べ終えると、アサピーは料理の感想を聞いて来た。

(-@∀@)「如何でしたかな? ブーン殿」
( ^ω^)「この様な豪華な料理をお出し頂いて真に恐縮ですお」

(-@∀@)「はっはっはっブーン殿はご謙遜がお上手だ!
でも謙遜もほどほどに致しませんと嫌みになりますよ?」


49 : ◆YW8tTr3Ies :2010/09/29(水) 00:18:59.89 ID:6Fs8paWAO
( ^ω^)「嫌み?」

(-@∀@)「そうですとも。最初は業名が無く訝しりましたが、ホライズンの家名を見て驚きましたよ」
( ^ω^)(まぁバレるのは仕方ないおねー)

( ^ω^)「はぁ家督も継げない、落ちこぼれの身分ですお」
(-@∀@)「と言っても、貴方の家系は魔術の大家。
魔術とは遺伝によって才能を開花させる物でしょう?」

51 : ◆YW8tTr3Ies :2010/09/29(水) 00:25:38.60 ID:6Fs8paWAO
( ^ω^)(まともに魔術が使えねーから落ちこぼれなんだよ!)

( ^ω^)「まぁ私は落ちこぼれと言う名に恥じず−− と言うのも可笑しいですが、殆ど使えないのですお」

(-@∀@)「ほほう……」

( ^ω^)「それに……」

僕は左手を掲げて袖を捲る。
そこには金色の腕輪が煌めいている。

(-@∀@)「それは……封呪の腕輪ですか?」

( ^ω^)「そうですお。これで僅かばかり使える魔法も封印されていますお」

(;-@∀@)「それは随分と……失礼致しました。プライベートな事に口を挟んでしまい」

( ^ω^)「良いんですお。それに今は政務省の内政部に所属してますから、魔術省とは関係が無いんですお」

(-@∀@)「そうだったのですね。
確かにホライズン家は代々魔術省の長官を勤める家系。
内政に口を挟めば越権行為となってしまいますしね」

( ^ω^)「そうですお。今回はたまたま僕が来ただけで、ホライズン家は関知していない事ですお」
53 : ◆YW8tTr3Ies :2010/09/29(水) 00:31:39.99 ID:6Fs8paWAO
(-@∀@)「しかし申し訳ない。持てなす立場が不快な気分にさせてしまい」

アサピーは会食の場の最期に、頭を下げて来た。

( ^ω^)「頭を上げてください。私は気にしてませんので」

(-@∀@)「はっお気遣いありがとうございます。どうですこの後? お酒を酌み交わしながらチェスでも」

( ^ω^)「申し訳ありませんが、ご遠慮させて頂きますお」
(-@∀@)「そうですか……ではまた明日にでも」

( ^ω^)「そうさせて頂きますお。本日は少々疲れましたお」

(-@∀@)「ではツンに、お部屋まで案内させましょう」

またアサピーが手を叩くと、ツンが食堂に入ってきた。

ツンは一礼すると

ξ゚听)ξ「それではお部屋まで、ご案内致します」

と言い扉を開けて待っている。
55 : ◆YW8tTr3Ies :2010/09/29(水) 00:35:52.18 ID:6Fs8paWAO
僕はさりげなく懐中時計を確認する。

正常に動いてる。

( ^ω^)「では今宵は失礼致しますお」
僕は、頭を下げて食堂を後にした。

中々の好青年って言った所か、礼儀を弁え、非礼を詫びる精神を持つ。

( ^ω^)(まぁずっと、何かしら魔法を掛けてたみたいだけどね)

やはり油断がならない。
恐らく心を読む呪文だろうが、封心呪文のおかげで内心は悟られてはいないだろう。
57 : ◆YW8tTr3Ies :2010/09/29(水) 00:38:51.54 ID:6Fs8paWAO
多分口ぶりを見る限り、やつはビビっている。

−−ホライズン家−−

我が家は魔術省長官を代々勤めている。

軍務警察を司る騎士達を中心とした防衛省。

内外の政治を担当し、貴族や有産市民を中心とした政務省。

国王の身の周りの世話や、祭事を司る神官を中心とした神官連。

これら三つの大元の政治権力は、数年単位で長官が入れ代わる。

但し、司法を司り魔術士を中心とした魔術省は違う。
魔術省は我がホライズン家が、このVIP国が建国されて以来ずっと勤めてきた。

どんな貴族も我が家名の前には、霞んでしまうだろう。

何故魔術省だけ、一家独占なのか?
答えは簡単だ。

ホライズン家以上の魔力を持つ家系が無いのだ。

ただそれだけの理由で500年以上、魔術省のトップに君臨している。


58 : ◆YW8tTr3Ies :2010/09/29(水) 00:43:35.46 ID:6Fs8paWAO
( ^ω^)(まぁ僕は、ただの一貴族と大して変わんないけどお)

ξ゚听)ξ「着いたわよ!」

( ^ω^)「あっごめんお。ありがとう」
気が付くと、僕は与えられた自室に着いていたようだ。

軽く礼を述べて、部屋を開けると人影が見える。

( ゚∀゚)「ようロリコン!」

( ^ω^)「うわぁ」

僕は部屋の前で固まる。
人影は先程の変態だった。

ξ゚听)ξ「どうしたの? ってジョルジュ! なんで客人の部屋に居んのよ!」

( ゚∀゚)「うるせー貧乳!」

ξ#゚听)ξ「んだと? 殺すぞごらぁ!」


59 : ◆YW8tTr3Ies :2010/09/29(水) 00:47:11.61 ID:6Fs8paWAO
僕は慌てて、ツンを押さえ付ける。

( ;^ω^)「どうどう!」

( ゚∀゚)「はっはっはっ! どうした貧乳! 洗濯板!」

ξ゚゚听゚))ξ 「がるるる〜殺す! マジで殺す!」

( ;^ω^)「落ち着け! その顔はなんか不味そうだお! つーか煽んな変態!」

なんとか部屋の外に、ツンを置いてドアを閉めると急いで内鍵を掛けた。

ドンドンと煩い。

60 : ◆YW8tTr3Ies :2010/09/29(水) 00:48:14.41 ID:6Fs8paWAO
しばらくすると諦めたのか、音が止んだ。

こつこつと足音が遠退く。

( ;^ω^)「ふぅーやっとかお。 で?」

( ゚∀゚)「で? とは」

( ^ω^)「何しに来た? 変態」

( ゚∀゚)「酒飲み行かねーか? ロリコン」
( ^ω^)「……」

( ゚∀゚) 「……」

( ^ω^)+「やるな」

( ゚∀゚)+ 「お前もな」

僕らは固く握手した。
性癖を暴露しあった中に、争いはないのだ。

マジエロ&ピース

領主の酒を断った手前、見つかるのを避ける為に迅速に動く事にした。
ジョルジュは部屋のドアを開ける。

するとジョルジュは急に倒れこんだ。

倒れた目の前には鬼が……。

61 : ◆YW8tTr3Ies :2010/09/29(水) 00:49:58.86 ID:6Fs8paWAO
いやツンが居た。

ξ゚゚听゚))ξ「お前何も見てない。 OK?」

(( ;ω;))「Yes,Mam!」ガタガタ

ξ゚゚听゚))ξ「ならよい! 無駄な命を散らすなよ」

(( ;ω;))「はいぃ!」

鬼は、憐れな犠牲者を担ぎ闇へと消えて行った。

先程、離れた足音はフェイクだった。
知恵を付けた獣に、人が抗う術などないだろう。

僕は一人残された部屋で、神に祈るだけであった。

第3話

「名君アサピー」


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