5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 17:50:31.27 ID:VBgadrkxO
外は止まぬ雨が続く。

魔族の進行も続く。

涙を流す人々の嘆きも続く。



前線の砦で最後の作戦の前に、僕らは休んでいた。

立ちはだかる魔族を、切り伏せ、潰し、焼き払う。

いつまで続くのだろう?

ふと、日記に目が留まる。

あぁ旅人だった頃に点けていた物か……。

懐かしくなり僕は、それに手を伸ばした。
7 名前:>>6訂正;:2010/09/26(日) 17:59:45.64 ID:VBgadrkxO
−−プロローグ−−

「初めから、終わりの間」

ぽつぽつと現れる中世の面影が残るレンガ壁の家と、牧歌的な田園風景。

僕はそんな田舎道を春の麗らかな陽気に誘われ、口笛を吹き吹き気ままな放浪を続けていた。

ただ今回は仕事で旅をしているために、少々時間が圧している。

これでは気軽な旅烏を楽しめずにいた。


8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 18:03:33.31 ID:VBgadrkxO
普段慣れない時間の束縛に、僕は愚痴を零した。

( ^ω^)「全く、西国の果てに査察とは面倒な事を押し付けてくれたお」

−−内政部署所属領地査察管理官−−

この仰々しい役職が、僕の仕事である。
まぁかい摘まんで仕舞えば、国が管理している領地の実態を調査するのが目的なのだ。

人の出入りや、奴隷身分の待遇。

領主が納める国への税金の過不足の調査。

それらを洗いだして叫談する。

諸因、身内を売る仕事、嫌われ者。


10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 18:07:43.09 ID:VBgadrkxO
まぁそんな事は大して気にはしてないのだけど。

家に居ても仕事がないし、旅は好きなので自分としては合っていると思う。

指令がなければ適当に国内をぶらつく。

そして顔見知りの領主が居れば適当に寄生する。

この厚かましさで、生まれてから20年間生きてきた。

意外とどうにかなるものだ。

11 名前:>>9やってみる:2010/09/26(日) 18:13:23.23 ID:VBgadrkxO
ちなみに、家系的には中々格式が高い。

それだけに僕みたいな落ちこぼれは、本家の業名を名乗る事を禁止されている。
そのため僕は、ブーン・ホライズンと言う平民と同じ性名の二つだけしか名乗れず、

『貴族の落ちこぼれです』

と宣伝して居るような物のため少々具合が悪い。

家督は妹が継ぐようだ。

なので新しく爵位を陛下から承らなければ、僕は一生平民と同じ名を名乗るのである。

でもそれに危機感を持たないのだから、やはり僕は落ちこぼれなのだろうね。



僕は、日記を閉じる。
15 名前:改行エラー出るか……:2010/09/26(日) 18:16:28.94 ID:VBgadrkxO
僕の古い日記には少々、自分語りが長く書かれていた。

正直に言えば恥ずかしい。

僕はこの日記の後も

“落ちこぼれ”

として生きると思っていた。

だが輝かしい栄光への、苦難の道へと変える出来事に遭遇する。

だがこの先は、日記などでは、現せないだろう。

そして、ツンデレ−− 

君に出会ってからの事を、僕は忘れる事はない。

僕は、壁際で休んでいる君に話掛ける。

−−最後の刻まで、時間はあまりないけどお願いがあるんだお−−

−−なぁに? ブーン−−

−−ツン、昔話をしないかお?−−

日記で干渉に浸るよりも君と思い出を語る方が、何倍も楽しいだろう。



16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 18:18:52.49 ID:VBgadrkxO
君はふっと笑い僕の隣に腰掛ける。

それが合図となり、僕は語り掛ける。

−−僕は君に会う迄は退屈で、死んでいたお−−

−−私は、あんたと出会って生傷耐えなくて散々よ−−

−−うっ…… ごめんお−−

−−ふふ、でもあんたが居なきゃ私も退屈で死んでたかもね−−

−−ツンありがとうだお−−

−−ありがとうブーン−−

僕らはその刻が来るまで語りあった。

そして誓い合う、また昔話をしようと−−

プロローグ

「始まりから終わりの間」


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