98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 23:13:47.39 ID:kOcRyRAwO










          ひとりめ:泣き虫な狐











100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 23:19:48.78 ID:kOcRyRAwO


 朝になった。

 今日も、ツンと学校に行く。

ξ゚听)ξ「おはよー」

(*゚ー゚)(´・ω・`)('、`*川「おはよー」

(*゚ー゚)「ゼアも、おはよ」

( ∴)「おはよう」



*****



( ^ω^)「んじゃ、ショボン、7の段を言ってくれおー」

(´・ω・`)「はあい」

 算数の授業。退屈。
 落書きも飽きちゃったな。

( ∴)「ツン」

 小さい声で、ツンを呼ぶ。

101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 23:28:03.61 ID:kOcRyRAwO

ξ゚听)ξ「ん?」

( ∴)「ちょっと、学校探険してきていい?」

ξ゚听)ξ「いいよ。放課後までに戻ってきてね」

( ∴)「うん」

( ^ω^)「――はい、そこのおしゃべりさん。8の段いってみよー!」

ξ;゚ -゚)ξ「むっ!」

 頑張ってね、ツン。

 僕はツンの机から下りて、教室を出た。


*****


 廊下を歩く。
 色んな教室で、色んな人が勉強してる。
 どこも、人数は5人ぐらいか、それより少ない。

104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 23:34:10.27 ID:kOcRyRAwO

 時たま、教室を覗き込む僕と目が合う人がいるけど、
 ちょっと驚いた素振りを見せるだけで、大きな反応をとる人はいない。

 本当に、みんな、こういうのに慣れてるらしい。



*****



 しばらく歩いていると、まったく人の気配がしない所に辿り着いた。
 多分、特別なときに使う教室が集まった場所なんだろう。
 「家庭科室」とか「理科室」って書かれたプレートが下がっている。
 読めないけど。


( ∴)

 ちょっと寂しいな。
 誰かいないかな――


( ∴)「……?」


 あれ? 声が聞こえる、気がする。

107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 23:45:34.22 ID:kOcRyRAwO

( ∴)

 声のする方へ向かう。
 曲がり角。

 そこを曲がると、少し埃っぽい階段があった。
 そして――下の踊り場に、誰かがいた。

 大人の男の人っぽい。
 でも膝を抱えて顔を伏せているせいで、よく分からない。

 ただ、「変なとこ」を二つ、見付けた。

 まず一つが、着物姿であること。
 今まで僕が見てきた人はみんな洋服だったのに、
 彼は、とても綺麗な着物を身につけている。

 もう一つは、耳。
 頭のてっぺんに、猫とか犬みたいな耳が付いているのだ。

( ∴)「ねえ」

爪;ー;)「……ぅえ?」

 僕が声をかけると、その人は顔を上げた。


109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/13(月) 23:54:56.70 ID:kOcRyRAwO

( ∴)「そこで何してるの?」

爪;ー;)「……誰だよ、お前」

( ∴)「ゼアフォー。君は?」

爪;ー;)「……フォックス……」

 フォックスと名乗った着物の人。
 顔が涙と鼻水でぐしゃぐしゃだ。

( ∴)「もう一回訊くけど、何してるの?」

爪;ー;)「見て分かんねえのかよ」

( ∴)「泣いてる」

爪;ー;)「そうだよ、泣いてんだよ」

( ∴)「どうして泣いてるの?」

爪;ー;)「悲しいからだよ」

( ∴)「どうして悲しいの?」

爪;ー;)「……居場所が無いからさ」

112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/14(火) 00:13:41.96 ID:oCXz0maLO

( ∴)「居場所?」

爪;ー;)「俺の寝床が壊れちまったんだ。帰る場所が無いんだ」

( ∴)「へえ……大変だね」

爪;ー;)「で……見ての通り、俺は人間じゃない。
     だから人間の暮らしに混ざることも出来ない」

( ∴)「あらら」

爪;ー;)「……だから泣いてるんだ……」

( ∴)「……ちょっと、いまいち分かんないなあ」

爪;ー;)「だろうな。相槌適当すぎだから」

( ∴)「寝床ってどこ?」

爪;ー;)「……」

 フォックスは立ち上がり、

 ――右側の壁を指差して。

( ∴)「あ」


 消えた。
132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/14(火) 04:52:04.72 ID:oCXz0maLO

( ∴)

 フォックスは、どこに行ったんだろう。
 フォックスは、一体何者なんだろう――


*****


ξ゚听)ξ「ゼア、おかえり」

( ∴)「ただいま」

 僕が教室に戻るのと同時に、チャイムが一日の授業の終わりを告げる。
 ツンは僕を見付けると、抱えて、頭の上に乗せてくれた。



 学校を出る。
 僕は、ツンに訊ねた。

( ∴)「ツン」

ξ゚听)ξ「ん?」

( ∴)「フォックスって人、知ってる?」



133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/14(火) 04:56:34.87 ID:oCXz0maLO

 ツンは首を傾げる。
 慌てて、ツンの髪にしがみついた。

ξ゚听)ξ「知らない」

( ∴)「そっか」

ξ゚听)ξ「それ、誰?」

( ∴)「僕も分かんない」

ξ゚听)ξ「変なゼア」







*****




134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/14(火) 05:08:17.11 ID:oCXz0maLO





 次の日。
 またまたツンと学校に来た僕は、今日も教室を抜け出した。



爪;ー;)



 そして、昨日と同じところに、フォックスはいた。



( ∴)「フォックス」

爪;ー;)「……ゼアフォー……」

 階段を下りて、フォックスの隣に移動する。
 想像してたより、老けてる。
 子供みたいに泣きじゃくっているから、てっきり若い人だと思ってた。

137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/14(火) 05:21:26.61 ID:oCXz0maLO

( ∴)「ねえ、フォックス、君は何なの?」

爪;ー;)「ああ?」

( ∴)「君は、どんな人なの?」

爪;ー;)「……」



爪;ー;)「――……神様」



 ぽつり、答えて。
 フォックスは、消えた。





*****



139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/14(火) 05:33:10.60 ID:oCXz0maLO



( ^ω^)「神様?」

( ∴)「そう言ってた」

 休み時間、教室に戻って、先生にフォックスのことを話した。
 先生なら知ってるかな、と。

 でも、先生も知らないみたいだ。

( ^ω^)「神様って、君を作ったっていう……?」

( ∴)「んーん、違う人」
  _,
( ^ω^)「?」

( ∴)「ううん……」

('、`*川「――ゼアの言う神様と、その神様は違うでしょ」

(;^ω^)「わっ」

 ひょっこり、ペニサスが入り込んできた。



140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/14(火) 05:40:02.41 ID:oCXz0maLO

( ∴)「違う?」

('、`*川「神様って、いっぱいいるの」

( ∴)「?」

('、`*川「お米一粒にも神様はいるんだよ」

(;^ω^)「マジ!? 僕どんだけ神様食ってきたの!!」

('、`*川「……」

( ^ω^)「ごめん」

('、`*川「だからね、そのフォックスって人も、神様の1人なんじゃないかな」

( ∴)「……へえ……」

 先生より、ペニサスの方が頼りになるのを理解した。

('、`*川「で、フォックスは何で泣いてたんだっけ」

( ∴)「――寝床が無くなった、って言ってた」

142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/14(火) 05:52:28.25 ID:oCXz0maLO

('、`*川「寝床かあ……」

ξ゚听)ξ「何の話ー?」

( ^ω^)「ツン、お米一粒一粒に神様がいるらしいお!」

ξ゚听)ξ「それ常識じゃない?」

( ^ω^)

('、`*川「神様の寝床……うーん」

ξ゚听)ξ「ねーねー何の話ー」

( ∴)「かくかくゼアゼア」

ξ゚听)ξ「しかじかツンツン。へー、そんなのがいたんだあ」

( ^ω^)







( ^ω^)



143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/14(火) 06:01:56.72 ID:oCXz0maLO

('、`*川「あ!」

 みんなでうんうん唸っていると、ペニサスが大きな声をあげた。
 何か分かったらしい。

ξ゚听)ξ「どうしたの?」

('、`*川「祠があるのかも」

( ∴)「ほこら?」

('、`*川「神様が住んでるお家」

ξ゚听)ξ「そんなのあるんだ」

('、`*川「もしかしたら、それが壊れちゃったんじゃないかな」

( ∴)「……そっか」


 じゃあ、昨日、フォックスが指差した方向は――


('、`*川「見に行こう!」

ξ゚听)ξ「うん! ゼア、乗って」

(;^ω^)「ちょっと君達!? これから楽しい国語の時間だお!!」
147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/14(火) 06:18:02.39 ID:oCXz0maLO

(*゚ー゚)「どこ行くの? 私もついてくー!」

(´・ω・`)「僕も!」

(;^ω^)「いやあああああ学級崩壊ぃいいいいいい!!」



*****



 昨日と今日フォックスが居た踊り場に、みんなを案内する。
 もしかしたらまた居るかもと期待したけど、フォックスは戻ってきていなかった。

( ^ω^)「結局僕もついてきてしまった……」

( ∴)「寝床はどこなのって訊いたら、こっちを指差したんだ」

 右側に手を向ける。
 そこにあるのは壁。祠らしきものは見当たらない。
 と、いうことは。

('、`*川「外だね」

ξ゚听)ξ「外行くぞー!」

( ^ω^)「もう好きにしたまえ」
150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/14(火) 06:44:25.71 ID:oCXz0maLO



 みんな、内履きのまま外に出た。
 方向を確認しながら進んでいく。
 ――すると、校舎の端っこに着いた。

 雑草がぼうぼうに生い茂っている。
 校舎からは、こちら側を向く窓が無い。
 草の生え具合から見るに、ここは滅多に人が来ないようだ。

(*゚ー゚)「ホコラを探せばいいの?」

(´・ω・`)「どんな形?」

('、`*川「形はそれぞれだから分かんないけど……」

ξ゚听)ξ「何か壊れてるのを見付ければいいんだね!」

 草を掻き分け、祠を探す。
 ゴミとか、石とか、ぼろぼろの本とかは見付かるけれどなかなか祠が出てこない。

( ^ω^)「うわエロ本だ。仕方ないなー子供達が見たら大変だしなー。
       僕が拾っておかなきゃなーいや別に欲しくはないけどー」

(´・ω・`)「あっ!!」

(;^ω^)「ひゃわぁああ!? 違う、違うお! 本当に欲しいわけじゃっ」

(´・ω・`)「ペニサス! これ、祠ー?」
153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/14(火) 07:00:49.24 ID:oCXz0maLO

 ショボンが大声でペニサスを呼んだのは、
 草が他よりもちょっとだけ少ない場所だった。

 全員がショボンのもとに駆け寄る。
 彼の足元へ目を向け、「あ」と、みんなが気の抜けた声をあげた。

 地面から、一本の、木で出来た何かが真っ直ぐ立っていた。
 先端がぽっきり折れていて、触ったらトゲが刺さってしまいそうだ。

 そして――その隣。
 地面に転がる、小さな家みたいな箱。

 真四角の箱に、屋根がくっついたものだ。
 箱は端っこの部分が割れて、大きな穴があいている。


 その穴から零れたのだろうか。
 これまた木で出来た、小さな小さな狐が、土に塗れて横たわっていた。



156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/14(火) 07:13:59.51 ID:oCXz0maLO

('、`*川「これかも」

(*゚ー゚)「狐さん、かわいそう」

 しぃは木の狐を拾い上げると、
 ポケットから取り出したハンカチで汚れを拭ってあげた。

( ∴)「君がフォックス?」

 問い掛けるも、狐は、何も答えちゃくれなかった。

ξ゚听)ξ「これ、直さなきゃね」

(´・ω・`)「先生、出来る?」

(;^ω^)「え? 僕? た、多分、くっつけるぐらいなら」

('、`*川「じゃあ直そう! ほら、道具とか持ってきて!」


*****


 結局、放課後まで僕らは祠の修理に時間を費やした。

 ツンとしぃが木の狐を綺麗にして、
 先生とショボンが釘や板を使って祠を建て直す。
 ペニサスは、どこかの教室から持ってきた布を切って、飾りを作っていた。
 僕は――何も、出来なかった。役立たずだ。
158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/14(火) 07:29:18.82 ID:oCXz0maLO

ξ*゚听)ξ(*^ω^)(*゚ー゚)(*´・ω・`)('、`*川「出来たー!」

 ちょっと形は歪んじゃってるけど、祠の修復が終わった。
 古い木材と新しい木材が継ぎ接ぎされていて、見映えはちょっと悪い。

 でも、ペニサスがくくりつけた赤い布や白い紙のおかげで、
 それも何とか誤魔化せていると思う。
 祠には、こういうのが付いているのだとペニサスが教えてくれた。

ξ*゚听)ξ「で、狐さんを入れて、と」

 正面の扉を開き、ツンは、すっかり綺麗になった狐を中に入れた。
 ペニサスは、狐にも赤い布を結んでいた。
 首元に垂れ下がる、逆三角形の赤色が似合っている。

 ぱたん。

 扉を閉じると同時に、みんなで再び歓声をあげた。





*****


161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/14(火) 07:38:11.82 ID:oCXz0maLO





( ∴)


爪;ー;)





 次の日。
 踊り場に行くと、フォックスが泣いていた。

 おい何でだよ。




163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/14(火) 07:47:17.86 ID:oCXz0maLO

( ∴)「……君の寝床、直したと思うんだけど」

爪;ー;)「ああ……」

( ∴)「何で、まだ泣いてるの」

 嫌だったのかな?
 せっかく、みんな頑張ったのに。

爪;ー;)「……嬉しくて」

( ∴)「え?」

爪;ー;)「嬉しくて、泣いてるんだ」

 ――何だ。
 良かった。

爪;ー;)「ありがとう。……ありがとう……」

 よく見ると、フォックスの首に赤い布が結ばれている。
 やっぱり、あの狐はフォックスだったんだ。

( ∴)「みんなに伝えておくよ」

爪;ー;)「ああ……」



164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/14(火) 07:48:29.00 ID:oCXz0maLO

 ぐすぐす、鼻を啜りながら、フォックスは消えた。


 ……神様のくせに、泣き虫な狐だなあ。










*****




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