2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 20:48:26.28 ID:7O4QzJtu0

第四話  黄昏る街 ―後編―
4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 20:50:34.76 ID:7O4QzJtu0


モララーとドクオは、並んで夜の街を駆け抜けます。
彼らの目の前には、第一の関門、警備の騎士が近づいていました。

( ・∀・)「おい」

モララーは走りながらドクオに話しかけました。

('A`)「・・・」

( ・∀・)「お前、ドクオっていったな?」

('A`)「・・・」

( ・∀・)「このままいけば、俺かお前、どちらかが警備に捕まることになるな」

('A`)「・・・捕まるのは、君かもしれない。僕はその隙に、岩に駆け登るよ」

( ・∀・)「いや、捕まるのはお前だ」

言い終わると同時に、モララーは隠し持っていた木剣をドクオに投げつけました。
勝負が始まる前に、ブーンにこっそり盗ませておいたのです。

(;'A`)「うわっ!?」

驚いたドクオは身を翻し、素早い動きで木剣を受け止めました。
その身のこなしを見て、モララーは目を細めます。
6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 20:53:03.31 ID:7O4QzJtu0
( ・∀・)「ふん」

(;'A`)「あ、危ないよ!何するんだ!」

ドクオの非難する声を無視し、モララーは大声を上げました。

(;・∀・)「・・・おい、そこの騎士!俺の連れがトチ狂って、あんたを殴り殺そうとしているぜ!」

(;'A`)「えぇ!?」

( 十)「何ィ!?」

少年の危機迫った声を聞いて、警備の騎士は身構えました。

(;'A`)「うぇっ・・・?そ、そんな・・・!」

(;・∀・)「こいつはもう駄目だ、完全にイカれてる!あんたのその騎士の剣で思い知らせてやってくれ!」


( 十)「・・・子供の分際で粋がりおって・・・返り討ちにしてくれる!」


騎士は腰を落とし鞘に手をかけ、木剣を握るドクオに向かって、歩み寄っていきました。
誇りをいたく刺激された騎士の目に、モララーの姿は映ってはいませんでした。

7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 20:55:47.91 ID:7O4QzJtu0
その隙に、モララーは騎士の横を駆け抜け、『黄昏る岩』に足をかけました。

(;'A`)「ちょっ・・・う、後ろ!岩に登ろうとしているやつがいますよ!」

( 十)「黙れ小僧!生意気にも私を討とうなど戯言を抜かしおって!子供とて容赦はせんぞ!」

(;'A`)「うう・・・くそっ!」

ドクオは怯みながらも、足を止めませんでした。
どうやらこの少年には、見た目以上の度胸があるようでした。


すでにモララーは、大人の背丈でも届かないほどの高さにまで登っていました。
岩の表面はごつごつとした取っ掛かりが多くあって、以外にも登りやすいものだったのです。


( ・∀・)「へっ・・・この俺が、どんな分野においても負けるわけがないんだ」

モララーは呟き、ちらりと下を見下ろしました。
下界に広がる地面は暗く、まるで黒い水で満たされた湖のようでした。

(;・∀・)「!」

モララーは目を見開きました。
その時、その漆黒の水面から、子供の上半身が這い出てきたのです。

8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 20:58:56.61 ID:7O4QzJtu0
('A`)「僕は・・・負けないぞ」

それは岩を登り始めたドクオでした。
岩肌の取っ掛かりを一つ一つ確実に掴みながら、体を上空へ進めていました。

モララーが地面に目を凝らすと、うつ伏せに転がる騎士の姿が見えました。
騎士の腰には、鞘に収まったままの剣が括り付けられています。


(;・∀・)「剣を抜くことすらできなかったのか・・・あの騎士は」

(;・∀・)「お前・・・やっぱり、ただの悪ガキじゃあないな?」

('A`)「友達が僕のことを信じてくれているんだ・・・負けるわけにはいかないんだ!」

( ・∀・)「・・・」

どんどん近付いてくるドクオを、眩しそうに見つめるモララー。
そしてモララーもまた、自分の体を岩の頂上へ運ぶ作業に戻りました。

( ・∀・)「トモダチ、か」

( ・∀・)「・・・・・アホくせえ」

冷たい夜の風が『黄昏る岩』の表面を撫で、少年の言葉を連れ去っていきました。

9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/19(日) 21:01:16.72 ID:7O4QzJtu0


(,,・д・)「くそ・・・ドクオ、負けるなでち」

(*゚听)「ドックン・・・気をつけて」

( ^ω^)「モララー・・・人の道を外れるなお」


『黄昏る岩』の麓で、勝負を見守る三人の少年少女。
彼らの視線の先には、小さな点にしか見えないようなモララーとドクオの影がありました。
ブーンには、その二人の少年がとても儚いものに思えました。

( ^ω^)「・・・」

( ^ω^)「・・・ちょっと聞きたいんだお」

(,,・д・)「なんでち、ブタ」

(*゚听)「なんだよ、ブタ」

ブーンは腕を組んで考え込みながら言いました。

( ^ω^)「こんなことをしているのがバレたら、大変なことになるんじゃないかお?」

( ^ω^)「騎士の見張りがいるんだお。そんな岩を登ったりしたら、捕まって牢に入れられちゃうお」

10 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 21:04:06.07 ID:7O4QzJtu0
(,,・д・)「そりゃあそうでち。あの岩は、この街の大切な観光資源なんでち。大変なことにならない方がおかしいでち」

( ^ω^)「じゃあ、なんでこんな勝負の方法を選んだんだお?」

(,,・д・)「伝統でち」

(;^ω^)「だ、だからって・・・」

(,,・д・)「不良たちに自慢できるでち。俺の仲間が、あの『黄昏クライム』をやってのけたって。それに・・・」

(,,・д・)「勝負をしているのは、ドクオでち。俺じゃないでち」

( ^ω^)「お・・・?」

(,,・д・)「被害をこうむるのは、どちらにせよドクオだけ。この騒ぎがバレても、俺たちは知らん顔でち。
     罰を受けるのはドクオだけでち」

(;^ω^)「・・・何を言ってるんだお?」

ブーンは青ざめた顔を少年に向け、思わず聞き返しました。

11 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 21:07:02.12 ID:7O4QzJtu0
(,,・д・)「ドクオは剣も強いし、度胸もあるでち。でもそれだけ。俺のような頭のいい人間に利用されるだけの奴でち」

(,,・д・)「ドクオの剣を壊されたのは本当に頭にきたでち。いつか売っ払って金にしようと思ってたのに」

(;^ω^)「・・・」

(,,・д・)「まあ、ドクオが勝てばあのナイフと金が手に入るでち。だからドクオには勝ってもらわないと困るでち」

(,,・д・)「せいぜいあいつは、俺のために頑張ればいいんでち」


( ^ω^)「・・・」

君だけじゃなかったよ、モララー。

ブーンは心の中で、そっと呟きました。
13 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 21:10:29.05 ID:7O4QzJtu0



―――まるで深い思考の闇に沈みこんでいる人のような、足元の草を観察している人のような。
そんな形をした巨大な岩山の、背骨に沿って登り続ける二人の少年。


( ・∀・)「・・・」

('A`)「・・・」


彼らが『黄昏クライム』を始めて、ずいぶんと時間が経ちました。

指からは血が滲み、爪は割れ、靴のつま先は削れていきます。
それでも二人は登るのをやめようとしません。

( ・∀・)「・・・おい」

('A`)「・・・」

モララーは、自分の少し下から続くドクオに言いました。

( ・∀・)「あの剣・・・俺が台無しにしたお前の剣だ。あれ、父親の形見なんだって?」

('A`)「・・・それが、どうしたっていうんだよ」

( ・∀・)「俺のナイフも、父ちゃんの形見だ。もっとも、お前のとは比べ物にならない上物だが」

('A`)「・・・」
15 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 21:13:14.84 ID:7O4QzJtu0
( ・∀・)「お前は腹が立たないのか?形見を壊されたんだぞ?」

('A`)「・・・別に」

('A`)「剣なんて、武器屋に行けばいくらでも売ってるよ。それより僕は、チビたちが怒ってくれたことの方が嬉しかったんだ。
    物なんかより、友達の方が大切さ」

( ・∀・)「・・・」

('A`)「君と一緒にいた・・・君がブタって呼んでた彼・・・」

( ・∀・)「ブーン・・・だったか。よく覚えてねえけど。それに、俺の名前はモララーだ」

('A`)「ブーン・・・彼も、君の・・・モララーの友達だろう?大切にした方がいい。友達は何にも代えがたい財産だから」

二人はすでに『黄昏る岩』の全長の中間地点を過ぎ、傾斜がいくぶん緩やかになってきた岩肌を這い進んでいました。
月は低い位置で彼らを眺め、その役目をもうすぐ終えようとしていました。

( ・∀・)「お前は、本気でそう思っているのか?」

('A`)「え?」

( ・∀・)「あいつらが、お前を本当に友達として見ているのか」

('A`)「・・・何が言いたいんだよ」

( ・∀・)「俺にはとてもそういう風には見えなかったな」
17 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 21:15:32.46 ID:7O4QzJtu0
('A`)「・・・自分の友達をブタと呼ぶような君に、そんなこと言われたくないよ」

( ・∀・)「あいつは友達なんかじゃない」

モララーは少しの間をあけ、こう言いました。

( ・∀・)「あいつは・・・・・盾だ。つまり、道具さ」

(;'A`)「な・・・!」

ドクオはその言葉に絶句し、動きをとめました。
何を言われても心を乱さなかった彼が、顔を真っ赤にしてモララーを見つめます。

( A )「どうして・・・そんなことが・・・」

( ・∀・)「おい、手が止まってるぜ。そんなんじゃあ負けちまうぞ」

( A )「人のことを、道具だなんて・・・!」

( ・∀・)「なんだよ、お前、そんなに動揺してると落ちるぜ。この高さから落ちたら―――」

(#'A`)「モララー!君は・・・!」

モララーは気づきました。
ドクオの手が掴んでいる岩の出っ張りの根元に、太いヒビが走っていくことに。

(;'A`)「うっ!?」

ドクオが声を上げると同時に、彼の右腕が宙を舞いました。
重力に引き寄せられた岩の欠片が、遥か下方に音もなく消えていきました。

18 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 21:18:31.55 ID:7O4QzJtu0


( ^ω^)「・・・」

(,,・д・)「・・・なんでち?ブタ、俺の言い分に文句があるでち?」

( ^ω^)「・・・」

( ^ω^)「・・・あるお」

(,,・д・)「ほう?」

( ^ω^)「ドクオくんが・・・誰のために剣を振ったと思ってるんだお。誰のために臭い目に遭ったと思ってるんだお」

(,,・д・)「それは、俺たちのためでち」

( ^ω^)「だったら・・・そんな言い方するなお」

(,,・д・)「俺の言っていることは全部事実でち。少しもおかしなことは言ってないでち」

(,,・д・)「それに、お前みたいなブタにドクオの何が分かるでち」

( ^ω^)「・・・」

(,,・д・)「お前の仲間の毒舌野郎だって、そういう奴でち?あいつは俺と同じ匂いがするでち。気に食わないけど」

(,,・д・)「あいつだって、お前のことを道具か家畜くらいにしか思ってないでち。そういう奴は、雰囲気で分かるでち」
20 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 21:20:32.85 ID:7O4QzJtu0


(;'A`)「うぐっ・・・!」

何とか左腕一本で、自分の体を岩肌につなぎ止めるドクオ。
しかし一度足場を失った体は思い通りには動かず、岩の表面を擦るだけでした。

(;'A`)「く、くそう・・・」

ドクオの額に、脂汗が滲みます。
左手からは力が抜け、胸の内に絶望が広がっていきました。

死の恐怖が、ドクオの体じゅうの感覚を奪いました。

(;'A`)「・・・」

そしてついに、ドクオの左手が岩から滑り落ちました。
指の爪が剥がれ、鋭い痛みが襲います。

もう、彼の体を支えるものは残っていませんでした。
あとは、固い地面に向けて真っ逆さまに落ちていき、ぺちゃんこになって死ぬのを待つだけ。

少年の目に、口を開けて待っている死の姿が映りました。

21 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 21:23:10.27 ID:7O4QzJtu0


( ^ω^)「・・・君こそ」

(,,・д・)「ん?」

( ^ω^)「君こそ、モララーの何が分かるお」

(,,・д・)「・・・」

( ^ω^)「確かにモララーは嫌な奴だし、ずる賢いし、喧嘩ばっかりするお。でも・・・」

( ^ω^)「それだけじゃないんだお。モララーは」


(,,・д・)「・・・いつもは嫌な奴だけど、本当は良い奴だとか、そんなことが言いたいでち?」

( ^ω^)「違うお。モララーは本当に嫌な奴なんだお」

(,,・д・)(ひっでえ・・・)

( ^ω^)「でも、それだけだったら、僕はとっくに旅をやめてるお」

( ^ω^)「・・・モララーは、君なんかとは違うお」

22 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 21:26:07.04 ID:7O4QzJtu0


(;'A`)「・・・え?」

ドクオは自分の目を疑いました。
視線の先に、彼の左腕を強く握りしめる、子供の手があったのです。

(;'A`)「・・・モララー?」

(;・∀・)「くっ・・・」

右手で岩を掴み、左手でドクオを支えるモララーが、そこにいました。

(;'A`)「ど、どうして・・・」

23 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 21:29:01.87 ID:7O4QzJtu0



―――少しだけ、昔のことです。

『黄昏る街』に、ある一人の少年が暮らしていました。
彼の父親は王に仕える騎士で、とても優しい人でした。
彼は幼い息子に、剣の使い方と道徳を教えました。


「剣は、殺すための道具じゃない。守るための道具だ。わかるか?ドクオ」

「うん」

「守るんだ。自分の大切な人たちを。私にとってのそれは、お前だよ。ドクオ」

「うん」

「お前のためなら、私は命だって投げ出すよ。だからお前も、強く生きてくれ」

「うん!」


そして少年の父親は、騎士としての任務中に命を落としました。
仲間を庇って、亜獣に殺されたということでした。
父親らしい最後だと、少年は涙をこらえながら思いました。

24 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 21:31:43.87 ID:7O4QzJtu0
少年は父親の形見の剣を抱えて、一人路頭に迷いました。
孤独と空腹に打ちのめされ、それでも力強く街を歩きました。


「お前、ここは俺たちの縄張りでち」

「きゃはははは!きったない格好!」

「高そうな剣を持ってるでち。お前の剣でち?」


やがて彼は、自分と同じような境遇の少年少女に出会い、行動を共にするようになります。
不良たちの仲間とみなされ、危険も増えました。

だから彼は父親の形見の剣で剣術を鍛え、仲間を守ろうと努力しました。


「ドクオの剣は強いでち!大人にだって勝てるでち!」

「ドックン、すごいよ!」


仲間の称賛する声を聞き、彼はその度に喜びを感じました。
自分の存在を必要とされることは、人が生きる上で、とても大きな意味を持つのだと。
少年は悟っていました。

25 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 21:34:03.38 ID:7O4QzJtu0
彼は頭の良い子供でした。
それでいて繊細で、しかし自分の感情を隠すことに長けていました。


そう、幼いドクオは、どこか深い心の底で、気づいていたのです。

自分は彼らに使われているだけなのだと。
本当の友達として、見てくれていないのだと。

ただ、認めたくありませんでした。
そして心優しい少年は、自分がそのことに気づいている事をまた、彼らに気づかれたくなかったのです。


「ど、ドクオ!あとは頼むでち!捕まっても、俺たちの名前は出すなでち!」


危険な目に遭うたび、いつも仲間たちはドクオを置いて逃げて行ってしまいました。
それでも彼は構いませんでした。


「大丈夫・・・友達のためだから」

「友達の・・・」


手を差し伸べてくれる人など、どこにもいませんでした。
どんなに辺りを見回しても、救ってくれる人など現れませんでした。
27 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 21:37:16.38 ID:7O4QzJtu0
だから強くなったのです。
幻の友情にすがりつき、父の教えを心に刻んで。

ドクオは信じていました。
自分を救えるのは、自分しかいないのだと。
自分が他人を助けることはあっても、他人は自分を助けてなどくれないのだと。




(;'A`)「モララー・・・」

自分の腕を握りしめる少年の眼差しは冷たくて、それでも、その奥には何か違った感情を灯しているようでもありました。

(;'A`)「なぜ君は僕を、助けてくれるんだ・・・?」

(;'A`)「敵なのに・・・」

(;‐∀・)「ぐっ・・・勘違いするなよ」

モララーの両腕は千切れんばかりに伸び切り、彼の額から一滴の汗が滴り落ちました。
それでもモララーは、強い意志のこもった手でドクオをつなぎ止めながら、言いました。
29 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 21:40:29.77 ID:7O4QzJtu0
(;‐∀・)「・・・聞き忘れていたことがあるんだよ」

('A`)「え・・・?」

『黄昏る岩』に登り始めたときから、ずいぶんと時間が経ちました。
東の空から昇り始めた太陽が、岩山の半分を照らしだしています。

(;・∀・)「おら、さっさと俺の背中にしがみつけ・・・早くしないと落とすぞ」

('A`)「い、いいの・・・?」

(;・∀・)「爪の剥がれたその手で、この岩を登るつもりか?」

('A`)「・・・」

ドクオは恐る恐るモララーの腕を手繰り寄せ、彼の背に乗りました。
モララーの服は汗でじっとりと湿っていて、それでも彼はゆっくりと、岩の頂上へ向けて登り始めました。

('A`(;・∀・)「ぬあっ・・・けっこうキツイな・・・」

('A`(;・∀・)「だけどこれしき・・・俺にとっては何の障害にもならないけどな」


それからしばらくの間、二人は喋りませんでした。
真新しい風が吹き抜ける音とモララーの息遣いだけが、空気を震わせていました。

30 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 21:43:11.54 ID:7O4QzJtu0
(;・∀・)「・・・」ザッ・・・ ザッ・・・

('A`)「・・・」

(;・∀・)「・・・」ザッ・・・ ザッ・・・

('A`)「・・・」

(;・∀・)「・・・ぅおっ」ザッ・・・ ガクッ

('A`)「!」

(;・∀・)「・・・っと、危ねえあぶねえ・・・」

('A`)「も、モララー・・・」

(;・∀・)「・・・んだよ」

('A`)「君は旅人だろう・・・?」

(;・∀・)「・・・ああ」

('A`)「なぜ旅をしているんだい?」
32 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 21:45:30.81 ID:7O4QzJtu0
(;・∀・)「・・・」

(;・∀・)「聞きたいか?」

('A`)「え?」

顔を上げたドクオの視線の先に、岩の頂上が見えてきました。
『黄昏クライム』が、いよいよ終わりを迎えようとしていました。


(;‐∀・)「よっ・・・っと」

『黄昏る岩』の頂上に手を掛け、モララーは最後の力を振り絞って体を引き上げました。

(;・∀・)「へっ、この勝負・・・俺の完全勝利だな」

('A`)「・・・」

ドクオを地面に降ろして、少しの間モララーは座りこんで息を整えました。

(;・∀・)「あー・・・疲れたぜ。もう朝じゃねーか」

(;・∀・)「長旅のあとに休み無しでロッククライミングなんて、ハード過ぎるだろ・・・常識的に考えて」

('A`)「・・・」

(;・∀・)「さて・・・ドクオ」

(;・∀・)「俺の質問に答えてもらおうか」

33 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 21:48:40.06 ID:7O4QzJtu0
モララーは汗を拭って立ちあがり、周囲を見渡しました。

('A`)「質問?」

( ・∀・)「聞き忘れていたことがあるって、言っただろう」

目を下に向ければ、建物の屋根やその隙間を這う石畳の道、早起きして店を開く人や、煙突にとまって休む鳥、様々な物が見下ろせました。
街を守る塀の向こうには平原が広がっています。

それは、実に雄大な景色でした。


( ・∀・)「お前らは、この勝負に何を賭ける?」

('A`)「・・・?」

( ・∀・)「俺たちはナイフと金を賭けた。お前たちはこの勝負に、何を賭ける?」

('A`)「・・・」

('A`)「・・・僕には決められないよ。僕たちは、賭けに使えるほど価値のある物を持ってないから」

('A`)「ごめん・・・」
36 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 21:51:07.30 ID:7O4QzJtu0
東の方角には、緑の山脈が南から北へ向かって伸びているのが幽かに見えました。
その向こうから朝陽が顔を出し、大地に光の恵みを与え始めています。


( ・∀・)「・・・なら、俺に決めさせてもらうぜ」

('A`)「え?」

( ・∀・)「そうだな・・・道具を渡してもらおうか」

('A`)「道具・・・?」

( ・∀・)「価値があるのか、価値がないのか、俺が決める」

('A`)「・・・」

( ・∀・)「道具だよ。仲間という名前の道具・・・」

モララーは目を細め、言いました。

( ・∀・)「ドクオ」


( ・∀・)「お前に、俺たちの旅の仲間になってもらうぜ」
38 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 21:53:52.58 ID:7O4QzJtu0


モララーが『黄昏る岩』の頭頂部を踏みしめた頃。
街に射し込む朝の光は、女性に囲まれた一人の盗人を照らしだしていました。
  _
(* ゚∀゚)o彡「おっぱい!おっぱい!」

ビッA゚ー゚)チ「いや〜ん、ジョッくん」

ビッB゚ー゚)チ「あなた、ずっと腕振ってるわね」
  _
(* ゚∀゚)o彡「おっぱい!」

ビッB゚ー゚)チ「あら、腰に付けたこの筒はなに?」

ビッA゚ー゚)チ「きゃ〜卑猥!」
  _
(* ゚∀゚)「それは遠見眼鏡っていうんだぜ!旅には欠かせない道具だ!」

ビッA゚ー゚)チ「へぇ〜、ジョッくん旅人なんだ〜」
  _
(* ゚∀゚)o彡「おっぱい!」

ビッB゚ー゚)チ「どうやって使うの?」
  _
(* ゚∀゚)「レンズを覗き込むのさ!やってごらん!」

ビッB >ー)[ニ三]「・・・・・わお、『黄昏る岩』がこんなに近くにみえるわ」
   つ

39 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 21:56:56.84 ID:7O4QzJtu0
  _
(* ゚∀゚)o彡「どんなに遠くにあるおっぱいも、俺は見逃さないぜ!」

ビッA゚ー゚)チ「きも〜い」
  _
(* ゚∀゚)o彡「おっぱい!おっぱい!」

ビッB >ー)[ニ三]「・・・あら?」
   つ
  _
(* ゚∀゚)o彡「おっぱい?」

ビッB >ー)[ニ三]「『岩』のてっぺんに、誰か立ってるわ」
   つ

ビッA゚ー゚)チ「ほんとだ〜、ここからでも見えるね〜」
  _
(* ゚∀゚)「頭のおかしな奴もいるもんだな!そんなことよりおっぱいの話しようぜ!」

ビッB >ー)[ニ三]「あそこに立ってるの、子供だわ・・・子供が二人。危ないわね、警備は何をしているのかしら」
   つ
  _
(* ゚∀゚)o彡「おっぱい!」

ビッB*゚ー)[ニ三]「あの子、頭の良さそうな顔してるわねぇ・・・けっこうかわいいじゃない・・・ふふっ」
   つ
41 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 21:59:24.35 ID:7O4QzJtu0
  _
( ;∀;)o彡「おっぱい・・・」

[三ニ]⊂ビッB゚ー゚)チ「ほら、いじけてないであなたも見てごらんなさい」
  _
( ;∀;)つ[三ニ]「・・・グスッ」
  _
( う∀;)つ[三ニ]「・・・」

  _
(  >∀)[ニ三]「・・・どれどれ?」
   つ
  _
(  >∀)[ニ三]「ほうほう・・・」
  _
(  >∀)[ニ三]「確かにガキが二人・・・」
  _
(  >∀)[ニ三]「・・・岩の頂上に・・・」
  _
(  >∀)[ニ三]「立って・・・」

42 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 22:04:04.72 ID:7O4QzJtu0
  _
(  ∀)[ニ三]「・・・」
  _
(  ∀)[ニ三]「・・・」
  _
(  ∀)[ニ三]「あの・・・」



    _
[ニ⊂(#゚Д゚)つ三]「クソガキめええええええ!」
  
   バキィッ!


脱兎の如く、盗人は『黄昏る岩』に向かって走りだしました。
45 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 22:08:02.69 ID:7O4QzJtu0
( ・∀・)「俺たちが旅をしている理由は、お前にとって何の関係もない」

( ・∀・)「親父の形見を、亜獣に盗まれたんだ。そして、俺はそれを取り戻すために旅をしている」

('A`)「・・・ブーンは?」

( ・∀・)「あいつは・・・実にマヌケな事情があって、故郷を追い出された。大した旅の理由じゃあない」

('A`)「それじゃあ・・・なぜ僕を仲間にしようと思うんだ?」

( ・∀・)「使えるからさ。お前の剣は強い」

('A`)「・・・」

( ・∀・)「ブーンは盾、お前は剣」

( ・∀・)「そういうことだ」

('A`)「・・・」

('A`)(どういうことだ・・・?)

46 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 22:11:41.36 ID:7O4QzJtu0
モララーは少し、思い出していました。
ブーンと共に旅を続ける理由。父親との約束。これからの事。
しかしそれは一瞬だけ頭の中を過っただけで、一瞬の黄昏は霞んで消えていきました。


( ・∀・)「・・・時間をやるよ」

('A`)「え?」

( ・∀・)「今日の正午に、俺たちはこの街を出る。それまでに旅の支度をして、西の門に来い」

('A`)「・・・もしも、僕が正午までに来なかったら?」

( ・∀・)「置いていくさ。引きずって連れて行っても、足手まといになるだけだからな。
      次の日には、お前のことなんか綺麗さっぱり忘れてる。もう一生会うこともないだろう」


('A`)「・・・」


モララーは歩き出しました。
『黄昏る岩』の背中側から地面を見下ろし、大きく息を吸います。

47 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 22:14:02.54 ID:7O4QzJtu0
( ・∀・)「それじゃあ、降りるか」

('A`)「え・・・どうやって?」

( ・∀・)「滑るんだよ」

そう言うと、モララーはドクオの襟首を掴み、急角度の岩山の斜面に放り投げました。

(;゚A゚)「うわあああ!」

ドクオに続いてモララーも、岩の頂上から身を投げました。
二人の少年は両足で斜面に着地し、『黄昏る岩』の頂上から滑り降りていきました。


( ・∀・)「ヒャッホウ!」

(;゚A゚)「ヒィィィィィィ!!!」



50 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 22:16:57.26 ID:7O4QzJtu0


( 十)「ぬ・・・?」

ある一人の騎士が、『黄昏る岩』の麓で目を覚ましました。

( 十)「今は・・・朝か?」

なぜ自分がこんなところで眠っていたのか、彼には思い出せません。

( 十)「・・・?」

彼の視線の先に、三人の少年少女が立っていました。


( ^ω^)

(,,・д・)

(*゚听)


そこで、騎士はようやく思い出しました。
『岩』を見張っていたら、突然二人の少年が走ってきたこと。
その片方の少年が、木剣を持って自分を討とうとしてきたこと。

返り討ちにしてやろうと思い、剣を抜こうとした瞬間、少年の姿が消え。
突然腹部に激痛が走り、そのまま意識を失ってしまったこと。

51 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 22:19:43.64 ID:7O4QzJtu0
( 十)「屈辱だ・・・」

( 十)「ちくしょう・・・あの餓鬼めら・・・」


(,,・д・)


( 十)「・・・そうか・・・あいつらも仲間なんだな・・・見たことがあるぞ」

( 十)「悪さばかりして、この街の治安を荒す・・・この街のゴミ溜めみたいな、孤児どもの集団なんだな
    ・・・グルになって、私を討とうと」

( 十)「・・・」


(#十)「キエェェェェェ!!!」

突如として燃え上がった怒りの炎に身を焦がし、騎士は剣の柄に手をかけました。
視界に映る子供たちを斬り捨てようと、走りだします。
53 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 22:22:01.45 ID:7O4QzJtu0


(*゚听)「そろそろ頂上に着いたかな・・・」

(*゚听)「・・・どっちが勝つかなぁ」

(,,・д・)「ドクオに決まってるでち」

( ^ω^)「モララーが負けるところを想像できないお」

(#,,・д・)「なんでち!」

(#^ω^)「おっ!」


(*゚听)「・・・」

(*゚听)「・・・?」

(*゚听)「なんか・・・変な声が聞こえる」



「・・・・・ェェエエエ!!」


(,,・д・)「ホントでち」

54 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 22:25:00.03 ID:7O4QzJtu0



(#十)「キエエエエエエ!!!」

(;^ω^)「おぉっ!?」



(;゚A゚)「ヒィィィィィィィ!!!」

(,,・д・)「でち!?」



(;・∀・)「どけえええええええ!!!」

(;゚听)「ぅえ!?」


  _
(#゚∀゚)「ごるあああああああああ!!!!!」

(,,・д・)(;゚听)(;゚ω゚)「「「ええええええええ!!!??」」」

55 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 22:28:04.54 ID:7O4QzJtu0
ブーンたちに向かって駆けてくる騎士。
その頭上にドクオとモララーが着地し、肉片が飛び散り。
鬼の形相で突進してくるジョルジュがそれを粉塵と共に舞い上げ。

  _
(#゚∀゚)「―――!」


わけが分からないまま一列に並ばされ、盗人の説教を受け。


(;^ω^)

(;・∀・)

(;'A`)

(,,・д・)

(;゚听)

(;十)



―――こうして、一晩続いた子供たちの『黄昏クライム』は、幕を閉じました。
57 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 22:32:31.50 ID:7O4QzJtu0


(#,,・д・)「どういうことでち!」

(;'A`)「・・・ごめん」

(#,,・д・)「お前に謝られても、何の意味もないでち!」

(;'A`)「・・・ごめん」

ここは『黄昏る街』の片隅に佇む、小さな空家の中。
この街に住む三人のストリート・チルドレンのアジトです。

カーテンのついていない割れた窓から差し込む朝陽が、ボロボロのソファーやテーブル、少年少女の顔を照らしていました。

(#,,・д・)「剣を台無しにされて、勝負にも負けて、どうやって落とし前をつけるでち!」

(;゚听)「・・・い、言い過ぎだよ」

(#,,・д・)「口出しするなでち!」

(;゚听)「うぅ・・・」

(#,,・д・)「その上、あいつらの旅についていくだなんて、寝言は寝てから言うでち!ドクオは俺たちを裏切るつもりでち!」

(;'A`)「・・・」

59 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 22:34:44.06 ID:7O4QzJtu0
ドクオは汚れた椅子に俯いて座り、口を開こうとしませんでした。
彼の頭の中では、モララーが『岩』の頂上で言った台詞が何度も反響していたのです。

この街から出て、初対面の子供たち(それとついさっき説教してきた見知らぬ大人)の旅についていく。
いくら勝負に負けたからといって、あまりにも難しい要求でした。

(,,・д・)「・・・ふん、もういいでち」

(;'A`)「・・・」

(,,・д・)「そうそう、覚えてるでち?ドクオ」

(;'A`)「・・・え?」

(,,・д・)「お前を仲間にした日のことでち。お前は汚いボロを着て、剣を抱えて道端にうずくまってたでち」

('A`)「・・・うん。覚えてる」

(,,・д・)「なんで俺たちがその時、お前を仲間にしたと思うでち?」

喋りながら、少年は立ち上がって出口へ向かいました。

(,,・д・)「・・・それはお前が、剣を持っていたからでち」

(;゚听)「チビ!やめて!」

60 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 22:37:26.55 ID:7O4QzJtu0

(,,・д・)「もしもお前が今みたいに、何も持っていなかったら、声なんかかけなかったでち」

(,,・д・)「・・・そしてお前はとっくに飢え死にしていたでち」

言い捨てて、少年はアジトを出ていきました。
古い蝶番が扉にしがみつき、耳障りな音をたてました。

ドクオはそれでも何も言わず、ただ黙って彼を見送りました。

(;゚听)「・・・ど、ドックン・・・ごめんね」

('A`)「・・・」

(;゚听)「チビは・・・本気で言ってるわけじゃないんだ」

(;゚听)「・・・ただ、悔しくて・・・」

('A`)「違うよ」

(;゚听)「え?」

('A`)「本気で言ってるんだ。僕には分かる」

(;゚听)「そ、そんな・・・」

61 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 22:40:02.55 ID:7O4QzJtu0
テーブルの上に置かれた、盗品の懐中時計。
その短針が、11時を過ぎたところを指しています。

('A`)「・・・」

(;゚听)「私、チビを連れ戻してくるから・・・待っててね!」

(;゚听)「どこにもいかないでね!」

そう言って、少女もドクオの前から去りました。
残されたのは、黄昏に沈む小さな少年、ただ一人でした。


('A`)「・・・」


やがて彼も、アジトを出ました。
旅の支度など、する必要はありませんでした。
なぜなら彼には形見の剣も、仲間も、何も残っていなかったからです。

お別れを言う必要も、ありませんでした。
63 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 22:43:44.67 ID:7O4QzJtu0



三人の旅の仲間は荷物を地面に降ろし、街の西にある門の前に立っていました。
ジョルジュが言いました。
  _
( ゚∀゚)「おいモララー」

( ・∀・)「あ?」
  _
( ゚∀゚)「いつまで待つんだよ」

( ・∀・)「・・・正午までだ」
  _
( ゚∀゚)「本気であの子供・・・ドクオってやつを仲間にするのか?」

( ・∀・)「ああ。あいつは使える。剣術だけなら、あんたにも引けを取らないだろうぜ」
  _
( ゚∀゚)「お前がそう言うなら・・・そうかもしれないが」

( ^ω^)「ドクオは強いお!騎士を一撃で倒したんだお!」
64 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 22:46:12.60 ID:7O4QzJtu0
  _
( ゚∀゚)「まったく・・・なんでガキばっかり集まるんだろうなぁ・・・俺は巨乳の女格闘家が欲しいぜ」
  _
( ゚∀゚)「それより、俺のヘソクリが無くなってるんだが、お前ら知らないか?」

( ・∀・)「知らん」

( ^ω^)「おっ」

  _
( ゚∀゚)「・・・やれやれ」
66 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 22:48:53.25 ID:7O4QzJtu0




(*゚听)「チビ!待ってよ!」

(,,・д・)「・・・なんでち」

路地裏を歩く少年に、少女が駆け寄って声をかけました。
不機嫌そうな面持ちで、振り返りもせずに少年は返事を返しました。

(*゚听)「あんな言い方しないでよ!ドクオだって悲しいんだよ!」

(*゚听)「誤って、仲直りして・・・それでまたいつもみたいに一緒に暮らそうよ・・・」

(,,・д・)「・・・」

(,,・д・)「ドクオは・・・この街を出ていくと思うでち?」

(*゚听)「そんなわけないよ。ドックンは私たちの仲間だもん。あんな奴らの旅についていくわけないじゃん!」

少年はゆっくりと歩く足を止め、呟きました。

(,,・д・)「・・・俺は、そうは思わないでち」

(*゚听)「え?」

67 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 22:52:50.85 ID:7O4QzJtu0
(,,・д・)「俺だって、薄々気づいていたでち・・・あいつは、すごい能力を持ってるでち。
     こんな小さい不良グループの一員で、収まる器じゃないでち」

(*゚听)「・・・」

(,,・д・)「確かに最初は、あいつの持っていた剣が欲しくて、仲間にしたんでち・・・でも」

(,,・д・)「あいつは・・・すごい奴だったんでち・・・」

(,,・д・)「両親の顔すら知らない俺たちは、子供離れした力を持つドクオに、いつの間にか依存していたんでち」

(,,・д・)「そうでち・・・俺だって・・・」


(*゚听)「・・・」

(,,・д・)「俺だって、ドクオにいなくなって欲しくないでち・・・」



( 十)「見つけたぞ・・・」

68 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 22:54:50.86 ID:7O4QzJtu0
低い声が聞こえ、少年の体が浮き上がりました。

(,, д )「うぐっ!?」

(;゚听)「きゃあ!」

少年の首に、音もなく忍び寄っていた騎士の大きな手が巻きついていました。

( 十)「ククク・・・この街に巣食う疫病共め・・・」

昨夜ドクオに打ちのめされ、クッションにされ、なぜかジョルジュに説教された騎士。
彼は血走った目を兜から覗かせ、少年の命を奪おうと手に力を込めていきます。

(,, д )「うぁ・・・!」

(;゚听)「チビ!」

( 十)「さて・・・トドメを刺してやろう」

そう言って、騎士は腰の剣を抜き取ろうとしました。
その時です。

(#'A`)「止めろ!このクソヤロ―!!」

69 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 22:57:11.69 ID:7O4QzJtu0
街中に聞こえるかと思うほどの怒鳴り声。
騎士が驚いて振り返った先に、一人の子供が立っていました。

(#'A`)「その手を放せ!お前の相手は僕だ!」

( 十)「貴様は・・・昨日の餓鬼・・・」

(,,・д )「ぅ・・・ドクオ・・・?」

( 十)「こいつらの仲間か・・・」

(#'A`)「違うね!そいつらは仲間なんかじゃない!」

叫び続けるドクオ。
彼は何かを堪えるように、手を固く握りしめていました。

( 十)「仲間じゃない? そうなのか?」

(,,・д・)「え・・・ち、ちが」

(#'A`)「そうだ!そいつらはいつも僕を馬鹿にする嫌な奴らだ!」

(;゚听)「ドックン・・・?」

(#'A`)「そんな奴らが、僕の仲間のわけがあるか!僕には仲間なんていない!仲間も、友達も、親も、なにも!」
71 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 23:01:13.62 ID:7O4QzJtu0
(,,・д・)「・・・ドクオ・・・」

(#'A`)「仕返しをするなら、僕を狙え!愚かな騎士め!腰の剣は飾りものか!?」

(#十)「なんだと・・・調子に乗りおって!貴様、今度こそ叩き斬ってくれる!」

騎士は少年の首を握っていた手を放し、剣を抜きました。
もう、彼にはドクオの姿しか目に映っていませんでした。

(,,-д・)「う・・・ごほっ、げほっ! ・・・ドクオ!」

(;゚听)「チビ! 大丈夫!?」

(,,-д・)「ど、ドクオ・・・待つでち!」

その時にはすでに、ドクオは走り出していました。
街の出口へ向かって、振り返らずに。

そのあとを、剣を掲げた騎士が追いかけていきます。
残された少年と少女は、視界から消えていく彼らを、黙って見つめていました。
73 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 23:04:30.54 ID:7O4QzJtu0


(,,・д・)「・・・」

(*゚听)「・・・いっちゃった」

(,,・д・)「・・・」

(*゚听)「ドックンが・・・いっちゃった」

(,,・д・)「・・・でち」

(*゚听)「でも・・・」

(,,・д・)「うん・・・ドクオは帰ってくるでち」

(*゚听)「・・・そうだよね。私も、そんな気がする」


(,,・д・)「いつか・・・必ず、帰ってくるでち」
75 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 23:07:06.29 ID:7O4QzJtu0



懐中時計を手に、ジョルジュが言いました。
  _
( ゚∀゚)「正午だ。行くぞ、二人とも」

( ^ω^)「まだドクオが来てないお・・・」

( ・∀・)「・・・」
  _
( ゚∀゚)「あのガキが、来ないと決めたんだろう。いつまでもここにいたら、また日が暮れちまう」

( ・∀・)「・・・そうだな。行くか」

(;^ω^)「お・・・」

( ・∀・)「ブタ、さっさと荷物を持て。先は長いんだ」

( ^ω^)「・・・」


(* ^ω^)「・・・おっ!?」

街中へ続く道をじっと見つめていたブーンが、不意に声を上げました。
彼の視線の先に、こちらへ向かってくる少年の姿があったのです。
77 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 23:10:02.14 ID:7O4QzJtu0
(* ^ω^)「ドクオが来たお!」
  _
(;゚∀゚)「マジで!?」



 三(;゚A゚)ヒィィィィィィィィ!!


  _
( ゚∀゚)「おおー・・・来たきた」



 三(#十)キェェェェェェ!!!    三(;゚A゚)ヒィィィィィィィィ!!



 _
(;゚∀゚)「げえっ!面倒くせえことになっとる!」

(^ω^;)「ぶ、ブーンは先に出発してるお」
  _
Σ(゚∀゚;)「てめっ!」
79 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 23:13:23.00 ID:7O4QzJtu0
ドクオと騎士は、もう彼らの目の前にまで迫っていました。
掴み合うジョルジュとブーンを尻目に、モララーはある物を手に持って進み出ました。

( ・∀・)「ドクオ!受け取れ!」

モララーがドクオに向かって放り投げた物。
それは、ジョルジュのヘソクリをちょろまかして武器屋で買った、新品の剣でした。

それは放物線を描いて飛び、ドクオの伸ばした手に収まりました。


(#'A`)「ドラァッ!」


手に持った剣の鞘を抜きもせず、ドクオは急停止して背後に一閃しました。
その一振りは見事に騎士の腹部をとらえ、彼の纏った鎧すらも砕きました。


( 十)・∵.「ウボァ――――」


その憐れな騎士は反吐をまき散らしながら宙に浮き、
たっぷり三秒間空中浮遊を堪能したあと、ぐしゃりと音を立てて地面に落ちました。

ピクピクと痙攣を繰り返す騎士の目には、もはや光は宿ってはいませんでした。
81 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 23:16:08.76 ID:7O4QzJtu0
(;'A`)「危なかった・・・」


  _
(;゚∀゚)「・・・」

(;・∀・)「・・・」

(;^ω^)「・・・」



('A`)「あ・・・」

('A`)「あの、僕はドクオです。これから皆と一緒に・・・」


  _
(;゚∀゚)))「え? あ、ああ・・・」

(;・∀・)))「・・・」

(;^ω^)))「よ、よろしくだお・・・」
83 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 23:20:16.27 ID:7O4QzJtu0
('A`)「え・・・なんで引いてるの・・・?」

(;・∀・)「いや・・・べつに・・・」

(;^ω^)「お・・・」
  _
(;゚∀゚)「よ、よし、行こうぜ。目的地まで、もう少しだ」

(;'A`)「ちょ・・・待って」

(;゚ω゚)「ヒィッ!」

(;・∀・)「寄るな!悪魔め!」

('A`)「ちょwww」


一斉に走り出す旅の仲間たち。
彼らはドクオと追い駆けっこをしながら、『黄昏る街』を出ました。
86 : ◆qgx/y7SlMM :2009/04/19(日) 23:23:24.33 ID:7O4QzJtu0


     マッテーーー!       ケンヲ コッチニ ムケルナ!!   オマッ ハエエ!!          ブーーーン!!
                           _          
    三(;'A`)つニニニ>    三(・∀・;)  三(;゚∀゚)         三⊂( ^ω^)⊃   



強力すぎる仲間を得たブーンたちの進む道の先には、まだまだ、たくさんの関門が待ち構えているはずです。
果たして彼らは、『ドラゴンの眼』を手に入れることができるのでしょうか。


彼らの旅はまだまだ続くようです。








第四話  黄昏る街 ―後編―   終わり

戻る

inserted by FC2 system