- 2 :
◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
20:03:14.45 ID:1ZmQqndT0
「お前さんたちはふたたび生きて帰れたのだ、深い水の中からね。
溺れ死なずにすんだんだから、服をなくしたことぐらいなんでもない。
喜べ喜べ、わたしの陽気な友達よ、
さあこの暖かい陽の光で、心も手足もあっためろ!
冷たいぼろは脱ぎ捨てろ!
裸で走れ草の上。その間にトムは一走り、探しもの!」
J・R・R・トールキン/指輪物語 「旅の仲間」より
- 4 :
◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
20:09:19.70 ID:1ZmQqndT0
第二話 ガラクタの街
- 6 :
◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
20:11:46.30 ID:1ZmQqndT0
- ( ´ω`)「モララー・・・」
( ・∀・)「なんだよ、ブタ」
( ´ω`)「僕らはどこへ・・・向かってるんだお?」
( ・∀・)「ブタが知る必要はない」
( ´ω`)「僕はもう、ダメだお・・・」
( ・∀・)「あっそ」
( ´ω`)「僕のことはいいから・・・先へいってくれお・・・僕はここで」
( ・∀・)「おk、わかった」
- 7 :
◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
20:15:23.51 ID:1ZmQqndT0
( ´ω`)「・・・」
( ´ω`)「・・・」
(;´ω`)「・・・」
( ;ω;)「嘘だお!置いてかないでくれお!一人は怖いお!」
( ・∀・)「だったら黙って歩け。屑」
鬼畜と家畜。
妙な関係の二人の少年がいました。
鬼畜はモララー、家畜はブーンという名前です。
二人は今、広大な平原をひたすら歩いていました。
- 8 :
◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
20:18:59.66 ID:1ZmQqndT0
( ・∀・)「・・・」
( ´ω`)「・・・」
( ・∀・)「・・・」
( ´ω`)「・・・モララー」
( ・∀・)「・・・」
( ´ω`)「おなか減ったお・・・」
( ・∀・)「・・・」
( ´ω`)「喉も乾いたお・・・」
( ・∀・)「・・・」
( ´ω`)「眠いお・・・」
( ・∀・)「・・・」
- 9 :
◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
20:22:27.69 ID:1ZmQqndT0
- ( ´ω`)「・・・疲れt」
(#・∀・)「あぁーっ!うるっせえなまったく!」
( ´ω`)「モララーも疲れてるお・・・イライラしてるお」
( ´ω`)「いや・・・いつものことだったお」
(#・∀・)「黙れ!なんかムカつくんだよ、その言い方!」
(#・∀・)「くそっ・・・・・確かに一週間も歩きっぱなしで体じゅうがいてえ・・・」
(#・∀・)「それにしても、なんかおかしいんだ・・・」
( ´ω`)「・・・お?」
- 12 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
20:26:54.66 ID:1ZmQqndT0
- 無実の罪を着せられ、疑いを晴らすために、『ドラゴンの眼』を盗んだ亜獣を追う旅に出たブーン。
父親からもらったという『ドラゴンの眼』を取り返すため、同じく亜獣を追うモララー。
信じられないほどに仲の悪い二人は、『ドラゴンの眼』を取り戻すという共通の目的で、一緒に旅をしているのでした。
二人ともまだ成人していない子供ですが、モララーは大人よりも鋭い頭脳を持っているのです。
(;・∀・)「いったいどうなってる・・・?この俺が間違うはずが・・・」
そのモララーが今、何もない平原に立ち尽くし、地図を片手に首を捻っていました。
(;・∀・)「これだけ歩いて、川の一本にもぶつからないなんて・・・」
( ´ω`)「どうしたんだお?ウンコでもしたいのかお?じゃあ見ないでいてあげるから、
早くあの草の陰でしてくるお。それよりここはどこなんだお?まだ風の平原なのかお?
森を抜けた日からちっとも風の匂いが変わってないお・・・」
(#・∀・)「ちょっとマジで黙ってろ・・・ケツからナイフ突っ込んで内臓引き裂いて口まで到達させるぞブタ・・・」
- 14 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
20:29:57.21 ID:1ZmQqndT0
- ( ´ω`)「もうどうにでもしてくれお・・・ブーンはもう一歩も動かないお」
( ・∀・)「ちっ・・・仕方ないな・・・」
( ・∀・)「・・・あそこの岩まで歩いたら、今日は休むぞ」
( ^ω^)「おっ!」
それを聞いた途端、ブーンは両手を広げて、岩に向かって走って行きました。
⊂ニニ( ^ω^)ニニ⊃「ブーーーン!」
(#・∀・)「・・・くそっ、まだ元気じゃねえかよ」
岩場に到着して腰をおろし、野宿の準備をしていると、すぐに暗くなってきました。
風よけのテントを張り、薪を集めて火を焚き始めると、もう日はとっぷりと暮れていました。
- 16 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
20:32:01.67 ID:1ZmQqndT0
- 二人は厚手の布にくるまり、星空の下、焚き火に体を寄せています。
焚き火の上には、もう残り少なくなった水の入った、ヤカンが乗せられていました。
( ^ω^)「・・・モララー」
( ・∀・)「・・・なんだよ」
( ^ω^)「・・・」
(#・∀・)「なんだよ!」
( ^ω^)「迷ったのかお?」
(;・∀・)「・・・う」
パチパチと音を立てて燃える火が、二人の顔を闇の中に浮かび上がらせていました。
( ・∀・)「・・・俺たちは今、森の中の村から一番近い街を目指して歩いてる」
モララーは地面に地図を置き、手近な石を拾って四隅に乗せました。
その地図の上を、モララーの白くて細い指が移動していきます。
( ・∀・)「ここが森の中の村。俺たちが住んでいた、クソみたいな村だ」
- 17 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
20:37:19.25 ID:1ZmQqndT0
- 地図には、横に長い大きな楕円形の大陸が描かれていました。
その大陸の一番東の位置に丸い森の絵があり、その中に小さな村があります。
『森の中の村』
モララーの指はそこから、南西の方角へつたっていきます。
( ・∀・)「そしてここが風の平原だ。ここを越えると、街がある」
モララーの指は、ある街の絵の上で止まりました。
その絵の下に、街の名前が記されています。
( ・∀・)「・・・ガラクタの街。ここへ向かっている。食糧の補給と、情報収集のためだ」
( ^ω^)「なんだお。そんなに森から離れてるわけじゃないお」
( ・∀・)「そうだ。予定ではもう三日前に着いているはずなんだ」
( ^ω^)「・・・じゃあなんで、一週間も歩いてるのに、まだ影すら見えないんだお?」
- 21 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
20:41:38.77 ID:1ZmQqndT0
- ( ・∀・)「・・・」
( ・∀・)「知らん。お前のせいかもな」
(#^ω^)「なんでだお!」
( ・∀・)「口を開くなよ。ブタくせえ」
(#^ω^)「・・・」
(#^ω^)「・・・ふんっ、もう寝るお!」
そう言って、ブーンは寝袋にもぐりこんでしまいました。
晩御飯も食べずに、焚き火に背を向けて、盛大にオナラを発しているブーン。
( ・∀・)「・・・ちっ」
モララーも熱いお茶を一口飲んだだけで、寝袋に入りました。
- 23 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
20:43:15.34 ID:1ZmQqndT0
- (#^ω^)「・・・」
( ・∀・)「・・・」
もともと仲が悪かった二人ですが、先の見えない不安と『ドラゴンの眼』が遠くへ行ってしまう焦りから、
ここ数日の雰囲気は最悪でした。
街にたどり着けない上に食料もどんどん減っていき、さらにいつ亜獣と遭遇するか分からない恐怖もあったでしょう。
やはり子供だけの旅は、無謀なものだったのでしょうか。
( -ω-)「・・・zzz」
( -∀-)「・・・zzz」
そんな彼らの気持ちをよそに、夜は更けていきます。
- 24 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
20:47:48.82 ID:1ZmQqndT0
- ( ^ω-)「zzz・・・お?」
ところで、ブーンはなかなかの臆病者です。
村で彼の臆病レベルに並ぶ者は、例え赤子でもいませんでした。
( ^ω^)「・・・なんだお?」
臆病者というのは総じて、危険を察知する能力に優れています。
特に今のブーンのように、静かな暗闇に身を置いた状況ではその能力は飛躍的に上昇します。
(;^ω^)「モララー・・・かお?」
何か得体のしれない気配を、この時ブーンは感じ取りました。
草木も眠るこの真夜中、まだかすかに音を立てている焚き火の向こう。
それはゆっくりと姿を現しました。
『グルルルル・・・・』
(;゚ω゚)「・・・」
亜獣。
ブーンがその生き物を目にするのは、生まれて初めてでした。
- 25 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
20:51:43.33 ID:1ZmQqndT0
『グルル・・・』
ギョロリと飛び出た眼孔。鋭く尖った牙と、四本の足に光る爪。
汚らしい涎を滴らせて近づいてくるそれを亜獣と呼ばず、何を亜獣と呼ぶのでしょうか。
( ;ω;)「・・・」
声を出したら駄目だと、ブーンは直感的に思いました。
それでも、そのあまりの恐怖から、溢れる涙を止めることはできませんでした。
( ;ω;)「・・・」
『グルルルル・・・・』
( -∀-)「・・・ん」
『グルル・・・』
- 29 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
20:53:47.91 ID:1ZmQqndT0
- ( ;ω;)「・・・!」
亜獣の目が、寝返りを打ったモララーに向きました。
彼はまだ夢の世界を漂っているようで、この危機的状況に気づいていません。
知らせるにしても、音を出すわけにもいかないのです。
そもそもこの状況を、子供二人でどうにかできるものではありませんでした。
( ;ω;)「・・・」
ブーンが恐怖に打ち震えている間に、亜獣はどんどん近付いてきます。
( ;ω;)「・・・っ!」
怖くても、目を瞑ることができませんでした。
亜獣はモララーに襲いかかる準備をしているようで、体を屈めてその鋭い爪を地面にくいこませています。
そして亜獣がひと声おおきく叫び、モララーに跳びかかろうとした瞬間。
- 31 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
20:57:00.20 ID:1ZmQqndT0
- ( ;ω;)「・・・」
( ;ω;)「・・・?」
ブーンが涙を拭って亜獣を見ると、その眉間に一本の矢が刺さっていたのです。
( -∀-)「・・・」
( ・∀-)「ん・・・?」
(;・∀・)「うおっ!?」
そのうちに、モララーが目を覚ましました。
目の前に亜獣の顔があったせいか、彼は大声を出して飛びのきました。
(;・∀・)「あ、亜獣!?くそっ、俺としたことが・・・」
モララーは亜獣から距離を取って、ナイフを抜きました。
しかしその必要はもうありませんでした。
- 32 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
21:00:53.38 ID:1ZmQqndT0
「危なかったな」
どこからか、男の声が聞こえてきたのです。
(;・∀・)「・・・」
( ;ω;)「・・・お?」
(,,゚Д゚)「怪我はないか?少年たち」
薄暗がりのなかから現れた男。
彼は大きな弓を背中に戻し、二人に話しかけてきました。
少年たちは亜獣と謎の人物を交互に見やり、危機が去ったらしいことを理解しました。
(,,゚Д゚)「こんな時間にこんなところで眠るなんて、いくら子供でもやってはいけないことだ」
(,,゚Д゚)「どこから来た?見たところ旅人のようだが、あまりに幼いな」
(;・∀・)「・・・あんたが」
(,,゚Д゚)「ん?」
(;・∀・)「この亜獣を・・・殺したのか?」
(,,゚Д゚)「ああ、そうだ」
- 34 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
21:05:05.97 ID:1ZmQqndT0
- 気づくと、もう明け方でした。
東の空が薄らと明るくなり始め、彼らのいる岩場を照らしました。
(;^ω^)「おっ!?」
朝日にさらされた亜獣の眉間には、やはり細い矢が一本突き刺さっていました。
深々と埋め込まれた矢の根元から、赤黒い亜獣の血がだらだらと流れ出ています。
(,,゚Д゚)「まったく、偶然君たちを見つけていなかったら、今頃二人とも亜獣の腹の中だったぞ」
この男の人が、彼らの旅で出会った最初の大人でした。
長い髪を後ろにまとめ、日に焼けた顔を二人に向けています。
( ・∀・)「・・・あんたは何者だ?」
(,,゚Д゚)「俺の名前はギコ」
(,,゚Д゚)「王都の騎士だ」
見ると、彼は全身に鎖帷子を纏い、背中には先ほどの大きな弓と、矢筒を背負っていました。
腰にはダガーをくくり付けており、騎士と呼ぶにふさわしい出で立ちでした。
- 36 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
21:09:15.44 ID:1ZmQqndT0
- (;^ω^)「あ、ありがとうございましたお!助かりましたお!」
(,,゚Д゚)「いや、礼には及ばない。当然のことをしただけだからな」
(,,゚Д゚)「それより、少年たちはどこへ向かって旅をしているんだ?」
( ^ω^)「おっ、えーと、ガラクタの街ですお!この平原を越えたところにあるはずなんだけど・・・」
(,,゚Д゚)「迷ったのか?」
( ・∀・)「・・・」
(;^ω^)「・・・そうなんですお」
すると騎士は突然口笛を吹き鳴らしました。
甲高い口笛が朝日に消えていくとともに、遠くから一頭の白馬がこちらへ駆けてきます。
砂埃を舞い上げ、力強く地を蹴るその姿は、あまりに雄大なものでした。
- 38 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
21:10:46.12 ID:1ZmQqndT0
- ( *^ω^)「おっ・・・・・す、すごいお!白馬だお!本物の白馬だお!」
(,,゚Д゚)「さあ、小さな旅人たち。ここで会ったのも何かの縁」
(,,゚Д゚)「俺の相棒の背に乗れ。目的地まで、共に行こう」
こうしてモララーとブーンは、大急ぎで荷物をまとめ、親切な騎士の馬の背に乗ることになったのです。
ギコに抱えられるようにブーンが乗り、ギコを挟んで一番後ろにモララーが座りました。
荷物は馬の腹に縛りつけ、ギコが手綱を振るいました。
すると三人の人間と大きな荷物の重さなど気にせず、強靭なその白馬は走り出しました。
( *^ω^)「おお!はやいお!すごいお!かっこいいお!」
( ・∀・)「・・・」
(,,゚Д゚)「ははっ!はしゃぎすぎて落っこちるなよ!」
- 40 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
21:13:32.49 ID:1ZmQqndT0
- ブーンはもうおおはしゃぎです。
先ほどの亜獣の恐怖に比べたら、馬の背で揺られることなどぜんぜん怖くないのでした。
(,,゚Д゚)「ときに少年たち。名前は何と言うんだ?」
風を裂いて平原を走り抜ける中、騎士が聞きました。
ブーンは嬉々として答えます。
( ^ω^)「僕はブーンだお!森の中の村から来たんだお!」
(,,゚Д゚)「ほう、森の中の村・・・それで、後ろの少年は?」
( ・∀・)「・・・あ?」
( ^ω^)「そいつはモララーだお!同じ村の出身で、僕らは旅の仲間なんだお!」
(,,゚Д゚)「なるほど・・・なぜ子供二人だけで旅を?」
( ・∀・)「・・・」
( ^ω^)「それには深い理由があるんだお!『ドラゴンの眼』が―――」
( ・∀・)「ブタ、それ以上しゃべるな」
- 41 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
21:17:00.39 ID:1ZmQqndT0
- 突然モララーが口を挟みました。
その目は鋭く、声はいつも以上に冷え冷えとしていました。
(;^ω^)「な、なんだお?」
( ・∀・)「会ったばかりの人間に、そこまで話す必要はないって言ってるんだ、ボケ」
( ^ω^)「なに言ってるんだお!せっかく助けてくれたのに、失礼だお!」
( ・∀・)「そういう問題じゃねえんだよ!ブタのくせに人間の言葉をしゃべるな、この家畜が!」
(#^ω^)「・・・っ!」
(#^ω^)「・・・もう怒ったお!お前なんかもう仲間じゃないお!」
( ・∀・)「俺は最初からお前みたいなブタを仲間だと思ったことはないね!」
(#・∀・)「ただの盾だ!お前が死んだって、悲しむ人間なんかいないしな!
喜ぶ人間なら山ほどいるぜ!」
- 44 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
21:21:09.24 ID:1ZmQqndT0
- (#^ω^)「言っていいことと悪いことがあるお!頭にきたお!もうこんな旅はやめだお!
これ以上お前なんかと一緒にいられないお!」
(#・∀・)「そうか、せいせいしたよ!ようやくお前のブタ臭さから逃れられる!
お前の臭いを嗅いだ後じゃ、亜獣の血臭がフローラルの香りだぜ!」
(#^ω^)「モララーこそ死んじゃえお!モララーが死んだほうが、喜ぶ人はいっぱいいるお!」
(#・∀・)「んだと!ブタのくせに言いやがったな!」
二人の言い争いを黙って聞いていたギコは、突然馬をとめてしまいました。
鼻息荒くにらみ合っている少年たちは、言い合いをやめてギコの顔を見ます。
(,,゚Д゚)「ふむ、確かに」
彼はゆっくりと言いました。
(,,゚Д゚)「初対面の人間に全てを話すというのは、危険極まりないことだ。特にこの世界では」
- 46 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
21:29:14.96 ID:1ZmQqndT0
- (;^ω^)「お・・・」
(,,゚Д゚)「旅の理由は話してくれなくていい。話したくないのなら」
太陽は、もうずいぶん高い位置にありました。
彼らの周りを流れていく風たちを透かして、地面の草や花、
そびえる大きな木の葉に、その恵みが降り注いでいます。
雲はわが道をいき、その下の山々は青白くかすんでいました。
ギコはさらに言いました。
(,,゚Д゚)「だがそれでも、俺は君たちの味方だ。何があっても・・・」
(,,゚Д゚)「この命に代えてでも、君たちを目的地へ送り届ける。どんな理由があろうと」
( ・∀・)「・・・」
(,,゚Д゚)「君たちがピンチに陥っていたら、何もかも放り出して助けにいくさ」
- 49 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
21:32:17.86 ID:1ZmQqndT0
- (,,゚Д゚)「それが仲間。君たちだって、ここまで一緒に旅をしてきた仲間だろう?」
(,,゚Д゚)「違うか?」
(;^ω^)「・・・お」
(,,゚Д゚)「死んでいい人間など、いない」
どこか遠くを見るような目で、ギコは言います。
その様子はまるで、とても遠い過去の世界を見ているようでした。
(,,゚Д゚)「生きていてほしい人間が、死んでいく。そんな世界で、軽々しく人の生き死にを口にしてはいけない」
(,,゚Д゚)「君たちだって、その大切さは知っているはずだ。人を失う悲しみを」
( ・∀・)「・・・」
(,,゚Д゚)「だから今は、喧嘩はよせ。そんなこと、いつだってできるだろう?君たちは・・・」
- 50 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
21:36:35.41 ID:1ZmQqndT0
- (,,゚Д゚)「旅の仲間なのだから」
(,,゚Д゚)「分かったか?」
優しい声で二人を叱る騎士。
二人はその言葉にうなだれ、互いに一度、顔を見合わせました。
村では悪ガキで知られていて、大人たちにさえ嫌われ、疎まれていたブーン。
賢くて分別のある子供のふりをして、大人たちを騙していたモララー。
親のいない二人が、こんなふうに相手のことを思いやり、諭してくれる大人に出会ったのは初めてでした。
( ・∀・)「・・・わかったよ」
(;^ω^)「ごめんなさいお・・・」
(,,゚Д゚)「分かればいいんだ。君たちはまだ幼いし、世界のこともあまり知らない」
(,,゚Д゚)「だが、その心の奥には素直で純粋な、輝くものがまだ残っている。それだけで十分さ」
- 53 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
21:40:22.98 ID:1ZmQqndT0
- ギコは二人の頭を、荒っぽく撫でました。
そしてこう言ったのです。
(,,゚Д゚)「よし!歌を歌おう!」
( ^ω^)「お!?」
( ・∀・)「・・・はっw」
(,,゚Д゚)「街はもうすぐそこだ!声を張り上げろ!体を揺らせ!
故郷の人々が振り向くほどに!潜む亜獣が躍りだすほどに!」
ギコは馬をゆっくりと走らせ、大きな澄んだ声で歌い始めました。
白馬は蹄でリズムをとり、風が楽しげに舞いました。
・・・灰色の山の麓に、宿屋があってさ、
それは愉快な、古旅籠だったさ。
そこのビールは茶色で、のみごろ。
そこである晩、月の男が、
存分のもうと、降りて来たとさ・・・・・♪
- 56 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
21:46:41.79 ID:1ZmQqndT0
ある陽気な、風の平原でのことです。
白馬の背で揺られる二人の子供と一人の大人。
彼らは手を叩き、口を大きく開いて歌いました。
(,,゚Д゚)「・・・♪」
( ^ω^)「・・・♪」
( ・∀・)「・・・♪」
旅の仲間の歌声を、平原の風たちが遠くまで運んで行きました。
この歌声を聴いたものたちは皆、わけもなく楽しい気分になりました。
空を飛ぶ鳥も、地を這う獣も、蜜を吸う虫も、先を急ぐ人も、風に揺れる草でさえも。
- 57 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
21:51:08.99 ID:1ZmQqndT0
(,,゚Д゚)「ヘイ!」
( ^ω^)「ディドル!」
( ・∀・)「ディドル!」
三人で笑いながら最後の手拍子を叩き、歌は終わりました。
(,,゚Д゚)「・・・ふぅ、なかなか上手いな、二人とも!」
( ^ω^)「おっ!」
( ・∀・)「つかディドルってなんだよw」
(,,゚Д゚)「これは古い歌だ。君たちと同じ、小さな旅人がどこかの旅籠で歌ったものさ」
(,,゚Д゚)「さあ、見えてきたぞ」
ブーンが前を見ると、馬の頭の向こうに、街の影が見えました。
彼が今までに見たことのない建物が建ち並んでいます。
- 59 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
21:56:12.60 ID:1ZmQqndT0
- ( ^ω^)「お!」
今のブーンは、それさえも見ただけでワクワクしてしまうのでした。
(,,゚Д゚)「風はいろんなものを運んでくる」
ギコは言いました。
(,,゚Д゚)「良いもの、悪いもの、不思議なもの。実に様々なものたちを」
(,,゚Д゚)「君たちはきっと、そのなかの何かに惑わされ、道に迷ってしまったのだ」
( ・∀・)「・・・ふうん」
(,,゚Д゚)「世界を甘く見ないほうがいい。世界には、良いものよりも悪いもののほうがずっと多くあるからな」
彼らはもう、街の門の目の前まで来ていました。
けだるそうな門番が白馬に乗った彼らを胡散臭そうに一瞥し、鼻を鳴らして目をそらしました。
- 61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/22(日) 22:04:00.00 ID:1ZmQqndT0
- (,,゚Д゚)「この街もそうだ。決して綺麗なものではない」
(,,゚Д゚)「だが、君たちなら大丈夫だろう」
そう言ってギコは馬をとめ、その背から降りました。
そして二人が降りるのを手伝い、馬に付けた荷物を外しました。
荷物を少年たちに渡し、屈んで二人を見つめます。
(,,゚Д゚)「ここでお別れだ。俺は君たちと一緒には行けない」
(;^ω^)「お!?な、なんでだお?せっかくここまで来たのに・・・
僕らの旅についてきてくれお!」
(,,゚Д゚)「やらなければならないことがある。俺は王に仕える騎士だからな」
ブーンはそれを聞いて、うなだれてしまいました。
泣き虫のブーンは、また泣いてしまいそうになります。
- 64 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
22:13:57.34 ID:1ZmQqndT0
- それに気づいたモララーは、面倒くさそうに言います。
( ・∀・)「おい、ブタ」
( ;ω^)「・・・お」
( ・∀・)「こんなところで泣いたら、今日も晩飯抜きだからな」
( うω^)「・・・」
( ^ω^)「・・・お!」
(,,゚Д゚)「ははっ、なに、きっとまたどこかで会えるさ」
( ^ω^)「・・・そうだおね!」
( ・∀・)「あんたは珍しく、使えそうな大人だったからな。惜しい気もするが・・・」
( ・∀・)「まあ、仕方無いな。一応、助けてくれた礼を言っとくよ」
- 66 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
22:16:15.85 ID:1ZmQqndT0
- それを聞いたギコは優しく微笑み、再び白馬に跨りました。
その姿は改めて見ると実に凛々しく、騎士の威厳を感じさせました。
(,,゚Д゚)「この大通りをまっすぐ行けば、十字路に宿屋があるはずだ。
だがさっきも言ったとおり、この街はあまり安全とは言えない」
(,,゚Д゚)「悪いものに惑わされないよう、充分に気を付けて行動するんだ。小さな旅人たち」
( ^ω^)「助けてくれてありがとうだお!」
( ・∀・)「じゃあな」
(,,゚Д゚)「ブーン、モララー。旅の仲間に、神の加護があらんことを」
(,,゚Д゚)「・・・さらばだ!」
王国の紋章が描かれた赤いマントを翻し、騎士は白馬の手綱を引きました。
あっという間に遠ざかって見えなくなってしまったギコ。
- 69 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
22:20:03.46 ID:1ZmQqndT0
- ( ^ω^)「・・・」
( ・∀・)「・・・」
二人はしばらく彼の消えた風の平原を眺め、立っていました。
それからモララーは荷物を背負いなおし、街のほうを向いてブーンに言いました。
( ・∀・)「よし」
( ・∀・)「いくぞブタ、ついてこい」
( ^ω^)「・・・おっ!」
ガラクタの街。
それは名前の通り、ガラクタでできたような街でした。
どこかから剥がしてきた板を接ぎ合わせ、なんとか形を保っている建物。
上に行くにつれて大きくなっていく、デコボコした建物。
そんなようなものが雑然と立ち並んでいました。
- 71 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
22:23:00.99 ID:1ZmQqndT0
- ( ^ω^)「不思議な建物がいっぱいあるお・・・」
( ・∀・)「ここには、世界じゅうにある使えない物やいらないものが集められるらしい」
( ・∀・)「あれをみろ」
モララーが歩きながら指したものは、ある出店でした。
( ^ω^)「お?なにを売ってるんだお?」
ブーンはそこへ小走りに近寄り、広げられた商品を覗き込みました。
それは本だったり、杖だったり、コンパスだったり。
見た限りではなんの共通点もないものばかりが売られていました。
<_プー゚)フ「よう少年!買っていくかい?」
- 72 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
22:26:22.05 ID:1ZmQqndT0
- 店主に声をかけられ、ブーンは戸惑いながらも聞き返しました。
( ^ω^)「なんで折れた杖なんか売ってるんだお?」
<_プー゚)フ「なんでって、使えないからさ!他に何を売れっていうんだ?」
(;^ω^)「意味が分からんお・・・この本は何の本だお?」
<_プー゚)フ「そんなの知らんよ。血がべったりついて干からびてるから、開けないんだ」
(;^ω^)「・・・うわぁ」
<_プー゚)フ「さあ、買っていきな!」
(#^ω^)「買わねえお!」
そそくさと出店から離れるブーン。
きょろきょろと辺りを見回しながら、モララーのあとをついていきます。
- 74 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
22:29:31.25 ID:1ZmQqndT0
- (;^ω^)「モララー・・・」
( ・∀・)「あ?」
(;^ω^)「ここの住人は、みんな頭がおかしいのかお?」
( ・∀・)「お前が言うな、脳無し」
(;^ω^)「だって、どの店も使えないものばかり売ってるお・・・だれがあんなもの買うんだお?」
( ・∀・)「ここの住人だろう」
( ^ω^)「・・・やっぱりみんな頭がおかしいんだお」
(;^ω^)「って、うわっ!?」
足元をよく見ていなかったブーンは、何かに足を引っかけて転んでしまいました。
(;^ω^)「痛いお・・・なんだお?これ・・・」
それは太いホースのようなものでした。
きっとどこかから運ばれてきたガラクタでしょう。
それは街の地面を這うように伸び、いたるところに顔を出していました。
- 76 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
22:32:00.15 ID:1ZmQqndT0
- (;^ω^)「なんなんだお、この街・・・・・お!?」
視線の向こうには、ブーンのことなど目もくれずに先を歩くモララー。
(;^ω^)「待ってくれお!モララー!」
ブーンは慌てて立ち上がり、彼を追いました。
二人は疲れた足を引きずりながら、ようやくたどり着いた宿屋に入りました。
もうすでに、空は薄暗くなってきていました。
(;^ω^)「・・・お」
(;・∀・)「やっと着いたか・・・ずいぶん遅れたな・・・」
- 79 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
22:34:53.44 ID:1ZmQqndT0
- 宿屋の一階は酒場になっていて、アルコールや食べ物の匂い、人々の話し声に満たされていました。
店主が中をめまぐるしく動き回り、親しげに話しかけてくる客の冗談に笑いを返したり、
泡のこぼれるビールをテーブルに届けたり、注文を聞き返したりしていました。
壁のあちこちに備え付けられた蝋燭に火を灯し、酔っぱらった男の頭にバケツの水をぶっかけたあと、
ようやくブーンたちのもとへやってきました。
(´・ω・`)「ようこそ、バーボンハウスへ。旅の方かい?」
( ・∀・)「ああ。部屋と食事が欲しいんだ」
(´・ω・`)「わかった。まずはこの店の名物、テキーラを飲んで落ち着いてもらいたい・・・
おや、君たちはまだ子供じゃないか?」
( ・∀・)「見ればわかるだろ。それに酒なんかいらねえよ」
(´・ω・`)「子供二人で旅を?これは珍しい。わかった、すぐに部屋と食事を用意しよう」
- 81 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
22:39:00.74 ID:1ZmQqndT0
- 店主は気のいい、中年の男でした。
二人は酒場の喧噪に耳を塞ぎながら店主と話をします。
( ^ω^)「部屋に荷物を置いたら、またこの酒場に戻ってきてもいいですかお?」
(´・ω・`)「こんなやかましくてむさくるしい場所でよければ・・・」
店主は顔をしかめて、酒場を見回しました。
_
( ゚∀゚)「おい、ショボン!こいつをみてくれ!どう思う?」
(´・ω・`)「すごく・・・小さいです。てめえ、俺の店の中できたねえモノ出してんじゃねえ。
ぶち殺すぞゴミ虫」
_
( ゚∀゚)「フゥウーハァー!酒場は地獄だぜぇー!」
(#´・ω・`)「殺してやる・・・一人でこの店のバーボン全部飲みやがって・・・」
- 84 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
22:46:23.42 ID:1ZmQqndT0
- ズボンから実に小さくて汚らわしい一物を出している男をひと睨みした店主は、
また二人に向きなおりました。
(´・ω・`)「・・・まあ、こんなゴミ溜めみたいな場所でいいなら、僕は構わないよ」
(´・ω・`)「さっきの害虫は僕が駆除しておくとしよう・・・おーい、いよぅ!お客様を部屋へ案内してくれ!」
ショボンが手招きすると、この店唯一の店主の使いがこちらへ来ました。
(´・ω・`)「こちらのお二人だ。お疲れのようだから、荷物をお持ちしろ」
若い使いは二人を見て、手を腰巻きで拭いて頷きました。
(=゚ω゚)ノ「それではおふた方!こちらへどうぞだよぅ!」
(´・ω・`)「ごゆっくり・・・さて」
- 87 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
22:51:42.18 ID:1ZmQqndT0
- そう言うと主人は、騒いでいる客のもとへ行ってしまいました。
_
( ゚∀゚)「ぎゃははwwwwショボンwwwテキーラ持ってこいwwwっておまwwwそれションベンwww」
(´゚ω゚`)「オラァ!飲め!吐いたらぶち殺すからな!」
_
(; ∀ )「ゴフッ、がはっ・・・!ちょ、ゴメッ・・・謝る・・・謝るから・・ゴフッ!」
(´゚ω゚`)「許されると思っているのか!?お前のようなウジ虫が!許されるとっ!本気で思っているのか!?」
_
(; ∀ )「がっ・・・オェ・・・!」
(´゚ω゚`)「クソがっ!死ね!お前のようなクズにも値しないカス野郎は!死ね!腐れ!滅べ!」
( ・∀・)「・・・」
( ^ω^)「・・・」
- 89 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
22:59:55.25 ID:1ZmQqndT0
- (=゚ω゚)ノ「・・・ここがおふた方の部屋ですよぅ。鍵を渡しておきますので、
ここを出て行かれる時に返してくれれば嬉しいですよぅ」
案内されたのは、廊下に並ぶあまり多くない部屋のひとつでした。
二人の荷物を床に下ろした使いは言いました。
(=゚ω゚)ノ「お食事は、下の酒場に行ってショボンさんに言ってもらえればすぐに出しますよぅ」
( ^ω^)「ありがとうございますお!大丈夫ですお!」
( ・∀・)「もう行っていいぜ。あとは勝手にやる」
(=゚ω゚)ノ「困ったことがあったら言いつけてくださいよぅ。それでは、ごゆっくりお過ごしくださいよぅ」
そう言い残して、若い使いは酒場の方へ戻っていきました。
ドアを閉めたモララーはため息をつき、荷物の横に座り込みました。
- 91 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
23:03:14.82 ID:1ZmQqndT0
- (;・∀・)「ふう・・・さすがに疲れたな」
( ゚ω゚)「おぉぉぉ!?」
そうしていると、突然ブーンの叫び声が聞こえました。
(;・∀・)「なんだよ!?」
( ゚ω゚)「ぉぉぉおお・・・も、モララー」
( ・∀・)「・・・なにしてる?」
( ゚ω゚)「ベッドが・・・壊れてるお・・・底がないお」
見ると、部屋に置いてあるベッドに、ブーンが埋まっていました。
( ゚ω゚)「上に毛布が掛けられてるだけで・・・中はからっぽだお・・・跳び込んだら」
( ゚ω゚)「・・・はまっちゃったお」
( ・∀・)「馬鹿が・・・」
( ゚ω゚)「た、たすけてくれお・・・」
- 92 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
23:07:35.37 ID:1ZmQqndT0
- ブーンの訴えを無視し、モララーは備え付けてある暖炉に近づきました。
しばらくそれを観察して、それから部屋を見渡してみました。
( ・∀・)「暖炉も使えない。そもそもこの宿屋に煙突はついてなかったからな」
(;゚ω゚)「いてえお・・・体が曲がってはいけない方向に曲がってるお」
( ・∀・)「テーブルも椅子も、脚が足りてない。物を置いたり座ったりしたら、倒れちまう」
( ・∀・)「結局寝袋で寝るしかないな・・・まあ、屋根と壁があるだけマシか」
モララーは呟いて、ドアに鍵をかけてみました。
そしてノブを回し、引いてみます。
( ・∀・)「・・・開いた」
- 94 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
23:09:49.88 ID:1ZmQqndT0
- またドアを閉め、鍵をかけ、ノブを回し、引いてみます。
ドアはなんともスムーズに動きました。
(#・∀・)「鍵も使えねえじゃねえか。ふざけやがって・・・」
(#・∀・)「おい、ブタ」
( ゚ω゚)「お?」
(#・∀・)「下に行くぞ。腹ごしらえと情報収集と、文句つけに」
( ゚ω゚)「じゃあここから出してくれお・・・」
(#・∀・)「ったく・・・面倒くせえな」
空っぽのベッドの中にはまったブーンを引っ張り出すモララー。
変形した体を直すブーンと共に、モララーは部屋を出て酒場へ向かいました。
- 95 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
23:15:12.39 ID:1ZmQqndT0
- (=゚ω゚)ノ「いよぅ!お食事ですかよぅ!?」
さっきと変わらない酒場の喧噪。
手に料理を持った使いは二人をみて、急いで近づいてきました。
( ・∀・)「ああ・・・それと」
( ・∀・)「店主を呼んでくれ。言いたいことがある」
(=゚ω゚)ノ「わかりましたよぅ!それじゃ、ショボンさんを呼んでくるので、ちょっと待っててくださいよぅ!」
そう言って彼は、店の奥へ引っ込んでいきました。
この部屋の隅にも、暖炉がありました。
二人が近づいて見てみると、それも使えない暖炉で、火は燃えていません。
- 97 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
23:18:47.89 ID:1ZmQqndT0
- ( ・∀・)「話には聞いていたが・・・」
酒場を見回してみて、モララーは言います。
( ・∀・)「これほどだったとはな・・・たしかに、ガラクタの街だ」
壁についている蝋燭立ては傾き、溶けたロウがその下で寝ころんでいる男の口の中に、
ぽたぽたと滴り落ちています。
窓はすべて割れており、木の板を乱雑に打ちつけてありました。
傾いだ椅子に座っている者は一人もおらず、テーブルは誰かが支えていないと
すぐに倒れてしまうような代物でした。
酒を注いだコップには例外なく穴が空いていて、客は皆びしょ濡れになりながら笑い合っていました。
( ^ω^)「みんな、楽しそうだお・・・なんでだお?」
( ・∀・)「・・・さあな」
( ^ω^)「やっぱり頭がおかしいんだお・・・」
_
( ゚∀゚)「ガラクタが好きなのさ」
- 100 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
23:23:26.72 ID:1ZmQqndT0
- 声のしたほうに視線を移すと、一人の男が、壁に背を預けて床に座り込んでいました。
まだ若い印象を残した顔に無精髭とにやけ面を浮かべて、彼は言いました。
_
( ゚∀゚)「使えないもの。いらないもの。余計なもの。この街の人間はそういうものが好きなんだ」
( ・∀・)「・・・」
_
( ゚∀゚)「だから笑っていられる。使えないものに囲まれて、笑い合っていられるのさ」
_
( ゚∀゚)「まあ聞けよ、旅の方。俺はジョルジュって者だ」
( ^ω^)「おっ・・・僕はブーンだお」
( ・∀・)「・・・」
モララーは品定めするような目でジョルジュと名乗った男を眺め、それから言いました。
( ・∀・)「・・・俺はモララーだ。あんた、この街の人間じゃないな?」
するとジョルジュは乾いた笑い声を上げました。
- 101 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
23:27:01.61 ID:1ZmQqndT0
- 彼は懐から煙管を取り出して葉を詰め、マッチで火をつけて一口吸いました。
一呼吸おいて煙を吐き出し、彼は言います。
_
( ゚∀゚)「よく分かったな、子供のくせに」
( ・∀・)「分かるさ。店主と親しげにしていたが、あんたはよそ者だ」
_
( ゚∀゚)「なぜそう思った?」
( ・∀・)「この店の名物は、バーボンなんだろ?自分の街の名物なんか頼む奴、滅多にいないさ」
_
( ゚∀゚)「ははっ」
ジョルジュはまた笑い、煙を吸いました。
_
( ゚∀゚)「お前の言う通りだよ。俺はこの街の人間じゃない。お前らと同じような旅人だ」
- 102 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
23:32:17.83 ID:1ZmQqndT0
- ( ^ω^)「おっ!ジョルジュも旅をしているのかお!今までに、どんなところへ行ったんだお?」
_
( ゚∀゚)「いろんなところさ。とても俺の頭じゃあ覚えきれないほどにな」
ジョルジュは話し始めました。
自分がしてきた冒険。
危機一髪で亜獣から逃れたことや、遠くの街で出会った愉快な人々。
おいしい食べ物や、あやしい飲み物。
目を疑うような魔法の数々。
目にしただけで涙が溢れてしまうほど美しい景色。
彼の話はたちまちブーンを魅了しました。
( ^ω^)「すごいお・・・ツンの気持ち、今なら分かるお」
_
( ゚∀゚)「ツン?なんだ、お前の恋人か?まったく、マセガキめ!この、この!」
( *^ω^)「そ、そんなんじゃないお!ツンはただの友達だお!」
_
( ゚∀゚)「そうかい・・・?ところで・・・」
- 104 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
23:35:46.74 ID:1ZmQqndT0
- _
( ゚∀゚)「お前たちは、どこから来たんだ?」
( ^ω^)「おっ・・・」
ブーンは口をつぐみました。
自分たちのことを知らない人に話すのは、危ないことだと思ったからです。
これだけ楽しい話をしてくれたジョルジュに悪いと思いながらも、
ギコの忠告は決して忘れるわけにはいきませんでした。
(;^ω^)「・・・」
_
( ゚∀゚)「・・・なるほどな。わけありか」
_
( ゚∀゚)「まあ、いいさ。誰にだって言いたくないことはある」
(;^ω^)「・・・ごめんお」
窓に打ちつけられた板の隙間から見える外は、もう暗闇で覆われていました。
その暗闇で、何かが光りました。
おそらく誰かが、窓の外でマッチを擦ったのでしょう。
- 106 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
23:39:18.44 ID:1ZmQqndT0
- もうあれからずいぶん時間が経ちました。
ブーンとモララーの晩御飯は、まだできないのでしょうか。
ショボンは、まだ来ないのでしょうか。
_
( ゚∀゚)「・・・ところでモララー」
ジョルジュは立ち上がり、少年に言います。
_
( ゚∀゚)「部屋の鍵、使えなかっただろ?」
( ・∀・)「あ?」
_
( ゚∀゚)「この街では、盗みは日常茶飯事。空気を吸うことと同じくらい当たり前なんだよ」
( ・∀・)「・・・!」
_
( ゚∀゚)「一人が獲物を惹きつけて、もう一人が盗む。盗人の常套手段だ」
モララーはそこで気付きました。
鍵のかかっていないあの部屋に、道具をすべて置いてきてしまったことに。
- 108 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
23:42:58.24 ID:1ZmQqndT0
- (;・∀・)「しまった・・・」
窓の外でのさっきの光は、何かの合図だったのでしょうか。
例えば、「これ以上時間をかせぐ必要はない」という―――
( ^ω^)「お?どういうことだお?ジョルジュはもう帰っちゃうのかお?」
ブーンは相変わらず状況を把握できていません。
ジョルジュはというと、すでに酒場を出るところでした。
(;・∀・)「くそっ・・・おいブタ!」
( ^ω^)「はい、ブタのブーンです」
(;・∀・)「今すぐあのジョルジュとかいうクズ野郎を追え!今なら間に合う!急げ!」
( ^ω^)「おっ?なんだお、急に」
(;・∀・)「金を盗まれたんだ!あの野郎の仲間に!」
- 109 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
23:47:03.49 ID:1ZmQqndT0
- (;^ω^)「え・・・」
(;・∀・)「いいから急げよ!お前の方が足が速い!俺もすぐに追うから!絶対逃がすなよ!」
(;^ω^)「わ、わかったお・・・」
ブーンは急いで酒場を出て行きました。
外は暗く、ブーンは目を凝らしてジョルジュを探します。
彼が大通りから路地裏へ入って行くところをなんとか見つけ、ブーンは急いで追いました。
(;^ω^)「ジョルジュー!どこにいくんだおー!待ってくれおー!」
- 110 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
23:50:28.80 ID:1ZmQqndT0
(;・∀・)「・・・やっぱりか、やってくれたぜ」
部屋へ戻ったモララーは呟きました。
床に置いていた荷物から、金目のものだけが全て取られて、無くなっていたのです。
彼はお金を入れた袋までここに置いていた自分の無防備さに、腹を立てました。
(#・∀・)「くそったれ・・・絶対ゆるさねえ」
唯一彼が持っている金目のものは、村長の家から持ってきた魔法のナイフだけです。
これだけは、いつも腰にくくりつけていたのでした。
(´・ω・`)「やあ、小さな旅人さん。どうかしたのかい?」
声のしたほうを見ると、この店の店主、ショボンが戸口に立っていました。
さっきと変らず、人の良さそうな表情でモララーを見ています。
- 111 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
23:55:06.41 ID:1ZmQqndT0
- ( ・∀・)「てめえ・・・あいつが盗人だって、知ってたんだな?」
(´・ω・`)「ああ、そうだよ。このあたりでアイツを知らないやつはいない」
( ・∀・)「・・・教えてくれたって、よかったんじゃないのか?」
(´・ω・`)「・・・」
ショボンは何も言わず、ただモララーを見つめます。
廊下にある傾いた燭台の、その上のロウソクから発せられる光が、部屋の中を不透明に照らしていました。
( ・∀・)「わかったぜ・・・変だと思ってた。いや、こんな街を変だと思わない奴はいない。けど・・・」
( ・∀・)「ガラクタだけじゃあ、生きてはいけないもんな。物は使えなくたっていい。
だけどガラクタを食うわけにはいかない」
- 113 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/22(日)
23:57:37.19 ID:1ZmQqndT0
- ( ・∀・)「食料がなければ、人間は生きていけない。この街は」
( ・∀・)「・・・盗むことで、動いている。やっとわかったぜ」
(´・ω・`)「・・・」
( ・∀・)「この街で金を手に入れる方法は二つだけ」
( ・∀・)「食料を売るか、金を盗むか。あんたは食料を売る方を選んだ。
そして盗む奴らの手助けをしている」
ショボンは何も言いません。
( ・∀・)「ガラクタを売っていたのは、街で窃盗を合法化していることを、カモフラージュするためだろう?
この街の住人は、ガラクタを売買して喜んでいる頭のおかしなやつらだと。
俺たちみたいな旅人に、そう思い込ませるためだ」
( ・∀・)「ガラクタなんて、普通に生活してりゃあ自然と出てくるものだからな。
冷静に考えれば、この街の住人だってガラクタなんか買うわけがない」
(´・ω・`)「・・・」
- 114 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
00:01:34.68 ID:vLJpiLJQ0
- ( ・∀・)「じゃあ、ガラクタを売って生きているわけじゃないんだとしたら。
この街の住人はどうやって金を手に入れている?
どうやって食料を手に入れている?」
( ・∀・)「・・・その答えが窃盗なんだ。違うか?」
(´・ω・`)「・・・」
( ・∀・)「ガラクタで欺き、盗んで生きる。そんなゴミみたいに汚らしい方法で回る街」
( ・∀・)「それが、ガラクタの街だ。そしてお前も、その一部なんだな」
(´・ω・`)「・・・キミは頭がいいな」
ようやく、ショボンは口を開きました。
その声は静かで、どこか寂しげでした。
- 117 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
00:05:56.23 ID:vLJpiLJQ0
- (´・ω・`)「そのとおりだよ。酒場にいる奴らは、ほとんどが盗人だ。そして君たちのようなやつをカモにして、金を稼いでいる」
( ・∀・)「俺たちの晩飯をいつまでも出さなかったのは・・・」
(´・ω・`)「どうせ金を盗まれて払えないだろうからね。作らなかった」
( ・∀・)「・・・ふん、ふざけた人間ばかりだな」
(´・ω・`)「何が分かる」
ショボンの声色が変わりました。
その静かな声の中に、赤い色のついた怒りの感情が込められているのを、はっきりと感じることができました。
(#´・ω・`)「この街の住人はみんな貧しいんだ。救いようもないくらい。
それでも頑張って、汚くなりながらも笑い合って生きている。
盗み、盗まれ、そうやってこの街は動いている」
(#´・ω・`)「お前みたいなガキが、分かったような口を聞くんじゃない!」
- 119 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
00:09:19.12 ID:vLJpiLJQ0
- ( ・∀・)「はっ、盗人の集まりが何をしようと、愚かなことでしかないさ」
(#´・ω・`)「なんだと!」
ショボンはモララーにつめ寄り、その胸ぐらをつかみ上げました。
モララーの身体は簡単に宙に浮き、ロウソクの光がそれを影にして床に映し出しました。
(#´・ω・`)「ガラクタの街だなんて、本当は呼ばれたくないんだ!バーボンが有名な、綺麗な街になってほしい!
だけどそれは無理なんだ!金がない!ガラクタばかりが集まってくる!そんな街が生きていくには、盗むしかないんだよ!」
( ・∀・)「・・・」
(#´・ω・`)「ふん!お前は連れの奴にジョルジュを追わせたようだが、無駄なことだ。
ジョルジュには追いつけやしないさ」
( ・∀・)「あいつは・・・本当の旅人か?」
(#´・ω・`)「ああ。あいつは数年前ここにやってきて、馬鹿みたいに金を盗みまくり、使いまくった。
流れの盗人。剣術と体術も、相当のものだ」
(#´・ω・`)「それからふらりとこの街に現れては、盗みと無駄遣いを繰り返すようになった。俺のバーボンを飲むためだと言ってな。
あいつのおかげでまだ街が生きていると言っても、言い過ぎじゃあない」
- 121 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
00:11:38.93 ID:vLJpiLJQ0
- (#´・ω・`)「お前らには分からないだろうな。自分の望む生き方ができない苦しみは」
( ・∀・)「分かるさ」
モララーはぽつりと言いました。
(#´・ω・`)「なに?」
モララーは間髪入れずに腰に手を伸ばし、鞘からナイフを抜き取って、
自分の胸ぐらを掴むショボンの腕を切りつけました。
(;´・ω・`)「ぐあっ!?」
モララーから手を放して腕を押さえるショボン。
床に降りたモララーは、ナイフを鞘に戻し、言いました。
( ・∀・)「追いつけやしない、とか言ったな、あんた」
- 124 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
00:15:11.71 ID:vLJpiLJQ0
- (;´・ω・`)「・・・!」
( ・∀・)「あいつは追いつく。絶対に」
そこでショボンは、ナイフで切られたはずの自分の腕が、全く傷ついていないことを知りました。
そして聞きました。
(;´・ω・`)「・・・あんなブタみたいなガキに、なぜそんな自信が持てる?」
( ・∀・)「俺が命令したからだよ・・・」
( ・∀・)「逃がすな・・・ってな!」
そう言い捨てて、モララーは駆け出しました。
- 126 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
00:19:10.97 ID:vLJpiLJQ0
_
(;゚∀゚)「くそっ・・・なんてしつこいガキだ」
息を切らして、ジョルジュは月明かりが照らす路地裏に立っていました。
周囲に人影はなく、使えない街灯がひとつ、立っているだけです。
ブーンとジョルジュの二人は、はガラクタの街の迷路のような路地を、ひたすら走りまわっていたのです。
時には屋根にのぼり、時には物陰に隠れ、見つけ、叫び、転がり、跳びはね、また走り。
それを繰り返していました。
_
(;゚∀゚)「・・・もう、諦めたか?」
と呟いた瞬間。
「みつけたおー!ジョルジュー!」
少年の近所迷惑な叫び声が聞こえてきました。
- 128 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
00:24:27.31 ID:vLJpiLJQ0
- _
(;゚∀゚)「マジかよ・・・ちくしょう」
ジョルジュはお腹を押さえ、すぐ近くから聞こえてくるブーンの声から逃げるように、また走りだします。
_
(;゚∀゚)「腹がいてえ・・・ショボンのションベン飲んだせいだ・・・あの野郎」
「待つおー!逃げるなおー!」
_
(;゚∀゚)「うるせえな・・・なんでそんなに体力があるんだ・・・ガキのくせに」
- 130 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
00:30:13.64 ID:vLJpiLJQ0
夜の街。
ガラクタが溢れるこの街には、いたるところにわけのわからないものが積み重なっています。
(;^ω^)「・・・」
ブーンがうずくまっている場所には、用途の分からない太いパイプのようなものが集まっていました。
この街を歩いた時、ブーンが躓いたものと同じ種類のものでしょう。
(;^ω^)「うまく向かってるかお・・・?」
最初は、ジョルジュと終わりのない追いかけっこをしていたブーン。
しかしブーンはこのところ、まともにご飯を食べていません。
育ち盛りの少年に、それは酷なことでした。
もちろん、長時間走る体力など、もうありませんでした。
そこで、このパイプが街じゅうでつながっているのを発見し、最後の力を振り絞って、ある作戦に出ることにしたのです。
- 131 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
00:33:33.21 ID:vLJpiLJQ0
- ( ^ω^)「そろそろかお・・・」
ブーンはイタズラが大好きでした。
暇さえあれば、人を驚かせたり困らせるようなイタズラを考え、実行していました。
( ^ω^)≪ジョルジュー!待ってくれおー!≫
ブーンはパイプの口に向かって声を張り上げます。
これも、村でやったことのあるイタズラでした。
長い筒状のものの片方の切り口で音を出すと、もう片方の切り口からその音が聞こえてくる。
その仕組みを知ったブーンは、それを使って大いに村人たちを困らせました。
夜、トイレのどこかから声がする。一瞬は怯える村人でしたが、その声はどこからどう聞いてもブーンのものだったので、
ξ゚听)ξ「またブーンね!明日会ったら血祭りにあげてやるわ!」
そう考えたものでした。
- 133 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
00:37:16.23 ID:vLJpiLJQ0
- ( ^ω^)≪逃げるなおー!止まってくれおー!≫
この、ガラクタの街にちらほらと見られるパイプを使い、
ブーンは動かずして、離れた場所にいるジョルジュを動かしていたのです。
そして。
( ^ω^)「うまくあそこを通ってくれるかお・・・?」
呟いた瞬間、鈍い打撃音がガラクタの街に響き渡りました。
その音は、いつか森の中の朝に聞いた、モララーの目覚ましの音にそっくりでした。
- 135 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
00:41:33.85 ID:vLJpiLJQ0
- _
(; ∀ )「ぐっ・・・いってえ・・・」
ガラクタの街に広がるダウンタウンの中、ある広場の入り口で、
ジョルジュは仰向けに転がって頭を押さえていました。
頭の横に落ちているのは、ひん曲ったフライパン。
_
(; ∀ )「あのガキ・・・やりやがったな・・・」
痛む頭とお腹を押さえ、息も絶え絶えで呟きます。
_
(; ∀ )「トラップかよ・・・しかしフライパンを仕掛けることはねえだろ・・・」
ジョルジュが空き地に足を踏み入れた直後、足元に感じた違和。
地面に平行に張られた細い糸を引っ掛けたのだと気づいた時には、すでに彼の頭を、轟音と激痛が襲っていました。
_
(; ∀ )「・・・悪質ってレベルじゃねえぞ・・・」
_
( ゚∀゚)「・・・なあ?・・・ブーン」
(;^ω^)「・・・お」
- 40 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
00:59:24.23 ID:vLJpiLJQ0
- 忍び足で近づいていたブーンに、ジョルジュは気づいていました。
しかし体を起こす気力もなく、彼は倒れたまま少年に話しかけます。
_
( ゚∀゚)「お前、子供のくせにやるじゃねーか」
(;^ω^)「あ、ありがとうだお・・・イタズラは得意なんだお・・・」
_
( ゚∀゚)「これがイタズラねえ・・・けど、残念だなあ」
(;^ω^)「お・・・」
_
( ゚∀゚)「お前らの金を持っているのは、俺じゃないんだ」
(;^ω^)「分かってるお・・・仲間がいるんだお?」
_
( ゚∀゚)「ああ」
( ^ω^)「どこにいるか、教えてくれないかお?それに、盗んだ物も返してほしいお・・・」
( ^ω^)「僕らは、旅を続けなくちゃならないんだお・・・それには、お金が必要なんだお」
- 143 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
01:01:21.11 ID:vLJpiLJQ0
- ブーンは続けます。
( ^ω^)「ジョルジュだって、旅人なんだお?なのになんで、こんなことをするんだお?」
_
( ゚∀゚)「・・・」
( ^ω^)「ジョルジュの話、面白かったお。世界にはまだ僕の知らない世界がたくさんあるんだって・・・」
( ^ω^)「初めてだったお。知らない土地へ行ってみたいって思ったのは。なのに・・・」
_
( ゚∀゚)「・・・はっ」
盗人は笑い、言いました。
_
( ゚∀゚)「教えてやるよ」
( ^ω^)「お?」
_
( ゚∀゚)「友達のためだ。俺は友達のために、盗んでいるんだ」
( ^ω^)「友達・・・?」
_
( ゚∀゚)「俺が盗んで金を使わなきゃ、友達の店もこの街も、全部なくなっちまう」
ジョルジュは頭を起こし、ブーンの瞳を見やります。
- 146 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
01:04:52.82 ID:vLJpiLJQ0
- 月明かりに照らされた二人。
周囲はガラクタがうず高く積み上げられていました。
_
( ゚∀゚)「盗人の俺は、誰からも嫌われていた。誰からも疎まれ、蔑まれ、憎まれた。
あげくに街を追い出され、行く場所もなくなった。まだ俺が、お前くらいのガキだった頃の話だ」
ジョルジュの言葉に、ブーンの心は揺り動かされました。
ジョルジュの過去。
それが、今のブーンの姿にそっくりだったからです。
_
( ゚∀゚)「そんな俺にも、手を差し伸べてくれた奴がいた。ソイツの手には、テキーラの入ったコップが握られていた」
( ^ω^)「ショボンさんかお・・・」
_
( ゚∀゚)「友達のピンチを、見過ごすわけにはいかねえんだよ」
ジョルジュのセリフを聞いて、ブーンの頭の中に、あの騎士の言葉が蘇りました。
- 147 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
01:07:57.46 ID:vLJpiLJQ0
(,,゚Д゚)『君たちがピンチに陥っていたら、何もかも放り出して助けにいくさ』
(,,゚Д゚)『それが仲間。君たちだって、ここまで一緒に旅をしてきた仲間だろう?』
(,,゚Д゚)『違うか?』
( ^ω^)「・・・」
_
( ゚∀゚)「だから俺は盗む。友達のために。この街のために」
( ^ω^)「そうかお・・・」
_
( ゚∀゚)「そうだ、ブーン。お前、もう一つ知りたがってたことがあったよな」
( ^ω^)「お?」
- 149 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
01:11:12.40 ID:vLJpiLJQ0
- _
( ゚∀゚)「お前らの金を持ってる、俺の相棒だよ」
( ^ω^)「・・・どこにいるんだお?」
_
( ゚∀゚)「はっ」
_
( ゚∀゚)「・・・お前の後ろだよ!」
ブーンが振り返るより早く、少年の首に太い腕が巻きつきました。
それは力強く、子供の力で何とかできるものではありませんでした。
そう、ブーンはいつの間にか、盗人の仲間に背後をとられていたのです。
(;^ω^)「おっ・・・く、苦しいお!」
_
( ゚∀゚)「おせーよ、ニダー」
<ヽ`∀´>「悪かったニダ。このガキがどこにいるのか、さっぱり分からんかったニダ」
ジョルジュはゆっくりと立ち上がり、そしてにやりと笑いました。
- 151 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
01:15:23.27 ID:vLJpiLJQ0
- <ヽ`∀´>「お前が誘い出してくれなかったら、今頃逃げられていたかもしれないニダ」
ニダーと呼ばれた男はブーンの首をがっちりと片手で絞めたまま、ジョルジュに話しかけました。
ブーンは浮き上がった足をバタバタと振り、自分の首を絞める盗人の腕から逃れようと、必死になっていました。
_
( ゚∀゚)「おい、あんまり強く締め過ぎるなよ。俺たちは盗人であって、強盗じゃねえんだ」
<ヽ`∀´>「分かってるニダ」
(;^ω^)「おっ・・・!」
_
( ゚∀゚)「悪いな。はめさせてもらったよ」
(;^ω^)「な、何をいってるんだお!?」
_
( ゚∀゚)「さっき酒場で話して気づいたんだが・・・」
_
( ゚∀゚)「お前ら、何か隠してるよな?」
- 152 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
01:18:25.50 ID:vLJpiLJQ0
- (;^ω^)「・・・!」
_
( ゚∀゚)「何か大きな秘密を隠してる。お前らからそんな匂いがしたのさ。要するに」
_
( ゚∀゚)「金のにおいだ・・・俺たちはそれを知る必要がある。
だからお前を路地に誘い込んだんだ。誰もいない所で、口を割らせるためにな」
<ヽ`∀´>「だけどお前は、声はするけど姿は見えなかったニダ」
<ヽ`∀´>「おかげでジョルジュは頭に一発喰らっちまったニダ・・・それもフライパンで。
信じられんニダ!」
<ヽ`∀´>「お前にも一発くらわせないと、気が済まんニダ!」
「だったら・・・」
(#・∀・)「お前もフライパンだっっ!!」
- 153 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
01:22:07.25 ID:vLJpiLJQ0
- 再び街に響き渡る無慈悲な金属音。
ガラクタが積み上げられた高台から降ってきた少年の、唐突で容赦のない一撃は、
ニダーの後頭部を確実にとらえました。
<ヽ ∀ >「あばばばば・・・」
モララーが着地して数秒後。
目から星を出してふらついていたニダーは、力を失ってブーンを放し、
そして顔面から地面に倒れこみました。
_
(;゚∀゚)「ニダー!?」
(#・∀・)「ブーン!こいつを受け取れ!」
モララーは握っていたフライパンをブーンに投げ渡し、自分は魔法のナイフを抜きました。
- 155 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
01:27:00.85 ID:vLJpiLJQ0
- _
(;゚∀゚)「くっ・・・モララー・・・!」
ジョルジュを挟み打ちにする形で、二人の少年は武器を構えました。
(#・∀・)「この街の話は聞いたぞ。てめえの話もな。まったく、反吐が出るような内容だったぜ!」
_
(#゚∀゚)「・・・クソガキ共が・・・大人を舐めやがって」
_
(#゚∀゚)「二人掛かりなら勝てるとでも思ったか!?いつまでも調子に乗るんじゃねーぞ!」
鬼も怯むような形相で、モララーを睨むジョルジュ。
しかしモララーは、そんなもので怯えるような子供ではありませんでした。
そうしている間にジョルジュはモララーにつめ寄り、彼の胸ぐらをつかみました。
モララー、本日二度目の宙ぶらりんです。
- 157 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
01:30:24.79 ID:vLJpiLJQ0
- それでも少年は落ち着いた声で、ブーンに問いかけました。
( ・∀・)「おいブタ。まさか一つだけ、なんてことはないよな?」
(;^ω^)「お・・・」
_
(#゚∀゚)「あ?なにがだ!?」
( ・∀・)「どこにある?」
(;^ω^)「・・・」
_
(#゚∀゚)「なんの話をしてやがる!?お前らは・・・」
( ^ω^)「足元にある、ロープだお」
ブーンの言葉が終わるが早いか、モララーは行動に移っていました。
素早く服を脱ぎジョルジュの拘束から逃れ、地面に両端の埋まったロープをナイフで切断しました。
( ^ω^)「頭を下げるお!」
風を切る音がしたかと思うと、屈んだモララーの頭上を、鉄の塊が高速で横切って行きます。
- 159 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
01:32:50.93 ID:vLJpiLJQ0
- _
( ゚o゚)「はうっ!?」
塊はジョルジュの下腹部に直撃。
それは、男性にとって命の次に大切な部分に当たったのです。
( ^ω^)
ブーン の トラップ!
きゅうしょ に あたった!
_
( ゚o゚)
こうか は ばつぐん だ!
ジョルジュ は たおれた!
- 165 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
01:39:44.32 ID:vLJpiLJQ0
- _
( ゚〜゚)「・・・ん〜っ、ん〜っ!・・・」
股間を押さえて地面に沈むジョルジュ。
口から泡を吹いて、白目をむいて悶えます。
(;・∀・)「・・・」
(;^ω^)「・・・」
(;・∀・)「お前・・・」
(;^ω^)「お・・・」
(;・∀・)「これはやりすぎだろ・・・常識的に考えて」
予想よりも遥かに残酷だったブーンの仕掛けに、モララーは若干引いていました。
(;^ω^)「使う予定はなかったんだお・・・こんなことになるなんて」
(;・∀・)「まぁ・・・こんなやつ」
( ・∀・)「どうなったっていいか。それより」
- 167 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
01:43:56.40 ID:vLJpiLJQ0
- 服を着たモララーは、近くでいまだに気を失っているニダーのもとへ行き、しゃがみ込んで彼の持ち物を調べました。
しばらくすると、見覚えのある金貨の入った袋、その他の旅に欠かせない細々とした金目のものが盗人の服の中から出てきました。
それらは全て、少年たちのものでした。
( ・∀・)「やっと取り返したぜ。まったく」
( ^ω^)「おっ、こんなところで一文無しになってる場合じゃなかったおね」
( ・∀・)「そうだな・・・」
( ・∀・)「・・・」
緊張が解けたからでしょうか、それとも、あまりに疲れていて、自分が何を言っているのか分かっていなかったのでしょうか。
その時、モララーらしからぬ言葉が、彼の口からこぼれたのです。
( ・∀・)「・・・助かったよ」
- 170 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
01:48:26.86 ID:vLJpiLJQ0
- ( ^ω^)「おっ?」
( ・∀・)「お前のトラップ、上出来だったぜ?」
( ^ω^)「・・・」
( *^ω^)「・・・・・おっ!ありがとうだお!」
足りない頭でモララーの言った言葉の意味を何とか理解したブーン。
それはブーンにとって、何よりも嬉しい言葉でした。
( *^ω^)「この街にはイタズラを仕掛ける道具がいっぱいあって、ブーンもやりがいがあったお!
こんどモララーにも教えてあげるお!実はあんがい簡単なんだお!」
今までイタズラを仕掛けて、褒めてもらったことなど一度もありませんでした。
怒られるか、悲しまれるか、離れられるか。
それがなんと、あのモララーから褒められたのです。
ブーンはなぜか、他の誰に褒められたとしても、ここまで嬉しい気持にはなれないと感じていました。
- 172 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
01:51:42.77 ID:vLJpiLJQ0
- しかし。
( ・∀・)「調子に乗るなよ、クソブタが。俺はお前を、道具として褒めただけだ。
このナイフはよく切れるとか、この家畜の肉はいい味出してるとか」
( ^ω^)「お・・・」
( ・∀・)「お前が喜んでる姿が、俺は世界一嫌いなんだ。不快なもの見せやがって。
道具は何も言わず、ただ馬鹿みたいに使われてりゃいいんだ、このカス」
( ^ω^)「・・・」
( ・∀・)「余計なこと言わなきゃよかったぜ。吐き気がする。まったく、胸糞わりい」
(#^ω^)「・・・」
やっぱコイツ嫌いだ、と、ブーンは改めて思いました。
- 173 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
01:56:35.52 ID:vLJpiLJQ0
- (#^ω^)「・・・」
_
(;゚∀゚)「おふっ・・・おふっ・・・」
( ・∀・)「さて・・・」
_
(;゚∀゚)「・・・おふっ・・・・・お、お前ら」
うつ伏せに地面に倒れ、お尻を突き上げるような恰好で、盗人が話しかけてきました。
彼の顔からは大量の脂汗が流れ出ており、視点も定まっていませんでした。
それでも必死に少年たちに顔を向けています。
( ・∀・)「へぇ、生きてたか?あれを喰らって正気を保ってられるなんて、あんたもタフだな」
_
(;゚∀゚)「はっ、これ、くらい、今までけ、経験してきた、苦しみに、比べれば・・・」
( ・∀・)「そうか。それじゃあ、もう苦しまなくていいところに送ってやるとするか」
_
(;゚∀゚)「・・・」
( ^ω^)「モララー、ちょっといいかお?」
( ・∀・)「あ?」
- 175 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
02:00:30.21 ID:vLJpiLJQ0
- ブーンはジョルジュのそばに屈んで、言いました。
( ^ω^)「ジョルジュ」
_
( ゚∀゚)「・・・なんだ、イタズラ小僧」
( ^ω^)「『ドラゴンの眼』を、知ってるかお?」
_
( ゚∀゚)「・・・」
( ^ω^)「なんでも、すごく貴重なものらしいんだお。旅する盗人のあんたなら、聞いたことがあるんじゃないかお?」
(#・∀・)「おい、ブタ!お前何言って―――」
_
( ゚∀゚)「ああ・・・知ってる。噂で聞いたことがあるだけだけどな」
_
( ゚∀゚)「それがどうした?」
( ^ω^)「僕らは森の中の村から来たんだお。盗まれた『ドラゴンの眼』を追って」
- 176 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
02:04:31.33 ID:vLJpiLJQ0
- 自分たちの旅の目的を盗人に打ち明けることの危うさを、ブーンは充分理解していました。
しかし、少年は続けました。
( ^ω^)「銀色の亜獣が盗んだらしいんだお。心当たりがあるかお?」
(#・∀・)「・・・」
_
( ゚∀゚)「残念だけど、今のところはないな。俺が知らないくらいだから、この街で他に心当たりのある奴もいないだろう」
_
( ゚∀゚)「・・・だが」
( ^ω^)「おっ?」
_
( ゚∀゚)「盗人たちには、独自の広いコミュニティがある。他の街の知り合いに、心当たりのあるやつがいるかもしれない」
( ^ω^)「本当かお?」
_
( ゚∀゚)「確実じゃあない。だが、物はあの『ドラゴンの眼』だ。期待はできる」
( ^ω^)「・・・わかったお」
( ^ω^)「それじゃあ、ジョルジュ」
そう言って、ブーンはジョルジュに、手を差し出しました。
小さな子供が、這いつくばった大人に手を差し出す光景は、少しおかしなものでした。
- 178 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
02:08:03.93 ID:vLJpiLJQ0
- ブーンは言います。
( ^ω^)「一緒にきてくれお。『ドラゴンの眼』を盗んだ亜獣を、捕まえるんだお!」
(#・∀・)「・・・ブタ、ちょっとこっち来い」
( ^ω^)「お?」
手招きするモララーに、ブーンは歩み寄ります。
彼を睨みながら、モララーは聞きました。
(#・∀・)「どういうつもりだ?」
( ^ω^)「なにがだお?」
(#・∀・)「あんなクズ野郎を仲間に引き入れることがどれだけ危ないか、分かってんのか!」
(#・∀・)「勝手なことしやがって!このボケ!ギコの言葉を忘れたのか!?」
( ^ω^)「・・・」
( ^ω^)「ジョルジュは世界をよく知ってる、強い大人だお」
- 180 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
02:12:01.25 ID:vLJpiLJQ0
- 月は明るく光り、街の隅々まで照らしています。
それはまるで、下界を見下ろす神の目のようでした。
( ^ω^)「僕は今回のことで分かったんだお。子供だけで旅をするのはすごく難しいことだって」
( ・∀・)「・・・」
( ^ω^)「今日だって、ギコが助けてくれなかったら、僕らは死んでしまっていたお」
( ・∀・)「・・・ギコとジョルジュが、同じだとでも言いてえのか?」
( ^ω^)「違うお。でもジョルジュだって物知りだし、強い大人だお」
( ・∀・)「子供相手に玉潰されてひれ伏してる奴がか?」
( ^ω^)「・・・」
( ^ω^)「ジョルジュは・・・」
( ^ω^)「友達思いなんだお・・・だから」
- 182 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
02:16:01.06 ID:vLJpiLJQ0
( ・∀・)「・・・」
( ・∀・)「ふん、くだらねえ」
( ・∀・)「おい、盗人」
振り返ったモララーは、ようやく立ち上がったジョルジュに言いました。
( ・∀・)「これからどうするつもりだ?」
_
( ゚∀゚)「・・・決まってるだろ。俺も『ドラゴンの眼』を追う。
盗人として、彷徨う宝を見過ごすわけにはいかねえからな」
_
( ゚∀゚)「・・・だが人手と情報が少なくてな。お前らが協力してくれれば、宝に手が届くかもしれんぜ」
(;・∀・)「・・・くそっ」
_
( ゚∀゚)「仲間になってやってもいい。いやだって言うなら、お互い、同じ宝を追うライバルだ。
次に会ったときには、もう一度戦うことになる」
( ・∀・)「『ドラゴンの眼』を先取りされるより・・・仲間にしたほうが得策、か」
( ・∀・)「・・・・・仕方ないな」
- 185 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
02:21:10.20 ID:vLJpiLJQ0
- ガラクタの街の、ある夜のことでした。
盗人と二人の子供。
共通の目的を持った、旅人たち。
( ・∀・)「条件がある」
_
( ゚∀゚)「なんだ?」
( ・∀・)「仲間になるのは、お前だけだ」
( ・∀・)「ニダーとかいう奴や、他の盗人仲間共とまで、一緒に旅をするわけにはいかない」
_
( ゚∀゚)「・・・まあ、そりゃそうだろうな。分かったよ」
( ^ω^)「おっ!」
( ・∀・)「それと」
( ・∀・)「裏切りは許さない。もし旅の途中で俺に危害を加えたら・・・」
( ・∀・)「今度こそ、その汚い玉を擦り潰す」
- 187 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
02:25:27.99 ID:vLJpiLJQ0
- _
(;゚∀゚)「・・・」
_
( ゚∀゚)「分かってる。そんなことはしねえよ」
_
( ゚∀゚)「それに、俺相手にここまでした奴は久しぶりだ。お前らのこと、気に入ったよ」
_
( ゚∀゚)「俺たちは、旅の仲間だ!」
( ^ω^)「おっ!」
( ・∀・)「・・・ったく」
_
( ゚∀゚)「ははっ!仲良くやろうぜ!小さな旅人さんたちよ!」
ブーンは嬉しそうに、ジョルジュは快活に、モララーはしぶしぶ、握手を交わしました。
( ^ω^)「よろしくだお!」
( ・∀・)「けっ」
_
( ゚∀゚)「よし、ブーン、モララー!宿に戻って酒を飲もう!酔っ払って、床で眠ろう!
それが旅の仲間ってやつさ!」
ジョルジュはニダーを起こし、肩に背負って歩き始めました。
その様子はまるで、酔っているかのように上機嫌でした。
- 189 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
02:28:19.15 ID:vLJpiLJQ0
- _
( ゚∀゚)「よう!ショボン!酒はまだあるか!?」
酒場にたどり着き、入り口を開け大声で聞くジョルジュ。
後ろを歩いていたブーンとモララーが店の中を覗くと、
そこではまだ多くの大人たちが酒を飲んで、料理を食べていました。
(=゚ω゚)ノ「あ、ジョルジュさん!ショボンさんはいないですよぅ!」
店の使いが答えました。
頭と両肩、両腕と片足にまで料理の皿やコップを乗せ、とても忙しそうでした。
(=゚ω゚)ノ「僕に何も言わずに、どこかへ行ってしまったんですよぅ!」
_
( ゚∀゚)「そうかそうか!ならタダ酒飲み放題ってわけだな!ひゃひゃひゃwww」
(´・ω・`)「ふざけんな、ぶち殺すぞ」
_
(;゚∀゚)「うおっ!?い、いたのかよ!?」
突然ブーンたちの後ろから現れたショボン。
その手に、膨らんだ袋を持っていました。
- 192 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
02:31:30.23 ID:vLJpiLJQ0
- (´・ω・`)「・・・」
(;^ω^)「おっ・・・」
(´・ω・`)「・・・君たちの話は聞いていたよ。ジョルジュと旅を続けるそうだね」
( ・∀・)「ふん・・・それがどうした。覗き魔野郎」
(´・ω・`)「少ないが・・・これを持って行くといい」
ショボンから、袋を手渡されました。
モララーが慎重に中を見てみると、パンや肉、保存のきく仕込みがされた魚などが入っていました。
( ^ω^)「おっ・・・僕らにくれるのかお?」
(´・ω・`)「ああ、旅の餞別だよ」
そう言って店の中へ入っていこうとするショボン。
そんな彼に、モララーが聞きました。
( ・∀・)「・・・なぜだ?」
(´・ω・`)「なぜって」
(´・ω・`)「友達と、その仲間のためだよ。他になにがある?」
(´・ω・`)「さあ、中に入ろう。一緒に騒ごうじゃないか」
- 195 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
02:35:51.80 ID:vLJpiLJQ0
- その夜。子供も大人も盗人も、酒場の主人やその使いまで。
皆で飲み、食べ、騒ぎました。
ここはガラクタの街。何も変わりません。
明日もこの街の人々は、盗み、盗まれ、酒を飲み、笑うのでしょう。
ブーンとモララーは久しぶりに、満腹になってぐっすり眠りました。
朝日が昇り、ジョルジュに起こされるまで、
二人は幸せそうな顔で夢の中を泳ぎました。
_
( ゚∀゚)「よし、行くか!」
荷物をまとめ、準備を整えた三人は街の西側の出口に立ちました。
風の平原と接している東側と違い、穏やかな空気の流れでした。
( ^ω^)「おっ!」
( ・∀・)「どこへ向かう?」
目の前に続くのは、地面の起伏が多い丘陵地帯でした。
太陽の光を跳ね返し、白く輝く丘。
- 197 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
02:39:02.35 ID:vLJpiLJQ0
- 右を向けば、街の北にある緑の山脈が北東へ続いているのが見えました。
いつも村から見ていた山々を、別の場所から見ていることに、ブーンは旅の趣を感じました。
_
( ゚∀゚)「この街のずっと西のほうに、地獄耳な俺の知り合いがいてな。
『ドラゴンの眼』を盗んだっていう亜獣のことを、何か知っているかもしれない。
そいつの家を目指すぜ!」
( ^ω^)「遠いのかお?」
_
( ゚∀゚)「まあな。途中には白の丘陵や、誘いの沼地がある。途中で他の街に寄ったとして、10日以上かかるだろうな」
( ・∀・)「時間をかけすぎだ。『ドラゴンの眼』を盗んだ亜獣が、手の届かない所に行っちまうだろ」
_
( ゚∀゚)「仕方ねーだろ!馬もないんだからよ!」
(;^ω^)「亜獣もいるのかお・・・」
_
( ゚∀゚)「なに、俺がいれば大丈夫!かっこよく亜獣を倒す俺を見て、下の口から涎を垂らしてな!」
( ・∀・)「・・・」
( ^ω^)「・・・」
_
( ゚∀゚)「まあ聞けよ」
- 201 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
02:42:16.82 ID:vLJpiLJQ0
- ジョルジュは語り始めました。
_
( ゚∀゚)「一度、巨乳の女旅人を助けたことがあってな」
_
( ゚∀゚)「それはそれは巨乳だったんだ。アゴが外れるほどに。
外れたアゴを直した俺は、自慢の蹴りで亜獣を撃破。髪を整えてポーズを決めた。
『フッ、またつまらぬ物を蹴ってしまった・・・』ってな。
そんな素敵な俺を見た女はこう言ったんだ」
从;'ー'从『変態!』
_
( ゚∀゚)「と。なぜだと思う?それは俺が・・・」
( ・∀・)「・・・」
( ^ω^)「・・・」
- 207 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
02:48:04.04 ID:vLJpiLJQ0
- _
( ゚∀゚)「何も穿いてなかったからだよwwwウンコしてる最中だったっつーのwwww
まだ切れてないクソがケツからぶらさがっててよwww前と後ろがプーラプラってなwwwやかましいわwwww」
_
( ゚∀゚)「俺のウンコの臭さから逃げた亜獣がwwww女を襲ったんだよwwwwなにこれ俺のせいwww?」
_
( ゚∀゚)「ふざけんなwwwひゃひゃひゃwww」
( ・∀・)「いくぞ」
( ^ω^)「おっ」
前だけを見て歩き始める少年たち。
先はまだまだ長いのです。
こんなところで時間を無駄にするわけにはいきません。
- 210 : ◆qgx/y7SlMM :2009/02/23(月)
02:51:47.04 ID:vLJpiLJQ0
- _
( ゚∀゚)「お前ら安心汁www俺がウンコしてる時はww襲われないからwww」
_
( ゚∀゚)「っておいwwwお前らww」
( ^ω^)「・・・」
_
( ゚∀゚)「まってちょwww」
( ・∀・)「・・・」
_
(;゚∀゚)「ちょ、待てよ!聞けって!マジで!おーい!」
陽気な盗人、冷徹な賢者、悪戯好きな臆病者。
三人の旅の仲間は、西へ向かいました。
第二話 ガラクタの街 終わり
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