- 2 :
◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
19:09:21.85 ID:6cFYfDVq0
('A`)と( ^ω^)は異世界でもう一度出会うようです
【 最終会 「消 光」 】
最終的には、自分よりも前に出ようとする事を許せなくなった。
そうでなきゃ、護れないから、戦い辛いから。
やめろ。
下がれ。
どけ。
あるいはそれに類似した言葉を、数え切れないほどに叫んだ。
- 3 :
◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
19:10:20.35 ID:6cFYfDVq0
代わりに、俺へと沢山の人々が襲ってくるけれど、
誰かを見殺しにする恐怖の方が、とうに勝っていた。
むしろ、何故来るのか。
勝てやしないって、わからないのか。
いいさ、そんなに死にたいなら、構わない。
焼け死ねばいい。
『――――ィ―アアアアアアアアア』
ほら。
だから言ったのに。
- 4 :
◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
19:12:11.68 ID:6cFYfDVq0
肌に纏わりつくような油ぎった匂い。
これにだけは、慣れる事はないと思う。
なるべく、口で息をしよう。
だけど。
そうやって、どんなに焼死体を作っても、
今もまた、誰か死んでしまった。
あ。
ああ。
- 5 :
◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
19:13:19.30 ID:6cFYfDVq0
【 最終会 「消えていく光」 】
ξ゚听)ξ「……ワタナベ、それで、お前は人間のつもりか?」
从;Д;从「そうだよ!
あなたがいったんじゃない!
それがにんげんだって!!」
腹部を抑え、その場で屈みながらワタナベは叫ぶ。
そんな彼女の周囲には、光球が漂い、今もまたその数を増やしていく。
从;Д;从「じぶんでかんがえてうごくのが!
そうなんだって!!」
次いで、ワタナベの叫びに応えるように、光球の一つがツン目掛けて飛来。
発射された光は細長い光線状になって飛ぶ、しかし、ツンはそれを容易く弾き落とす。
足元を見れば、窪んだ地面にはやはり煙を上げる石ころが埋まっていた。
そして続けざまに光球が飛来、二つ弾き、残りは走りながら回避。
いくつもの石が、ほぼ一歩分の間隔で地面に穴を空けていく。
- 7 :
◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
19:15:42.95 ID:6cFYfDVq0
が、徐々にその隙間は近くなっていく、ツンは身を翻し反転。
光線が腕を掠める、紙一重の回避と同時に。
振り向きざまの一閃、ワタナベへ向けて飛刃が向かう、
が、彼女の周りを漂う石が、ふたたびその刃を撃ち抜いた。
ξ゚听)ξ(……!)
从;ー;从「ツン、ひっしだね・・・でも、そんなじゃはなしにならないよ!!」
ξ;゚听)ξ(……この距離では向こうが上手か)
砕かれた刃が粒子となって消えゆく隙間を貫き、三つの光線が走る。
ツンは身体を後ろへと傾けながら、内の二つを弾く、だが三つ目、
連続した衝撃に耐え切れず、とうとう押し負け、斜めに走った光弾が足を撃ち。
ツンは苦痛に顔を歪め、膝をついた。
穴の空いた衣服を中心に、赤い染みが広がっていく。
それを見るなり、ワタナベは頬を紅潮させ、槍の切っ先を勢い付けて向けた。
屈んだままのツンへと走る光線、その直後、大きな割音が響いた。
- 8 :
◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
19:18:48.82 ID:6cFYfDVq0
……。
ならば、特に語る事はない。
ただ、人殺しに慣れていく自分が居て。
気が触れたように叫んでいないと、たまに怖くなる。
そうでもして、自分を保とうとしなければ、本当におかしくなりそうだ。
なのに、どうしてだろう、今までずっと、願うままに勢いを増していた筈の炎が、
どんなに激情を込めて叫ぼうとしても、青く、揺らぎの無い火にしかならないのは。
それ自体はいい。
常にこの状態を保てるのなら、それこそ役に立つ。
自分でもわかっている。
今、少しでも気を抜けば……剣は光となって輝くと。
現に今、止まらない炎がついに輝きを放ち、自分自身さえも焦がし始めたのだから。
- 9 :
◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
19:20:21.09 ID:6cFYfDVq0
……。
吐血した口から顎にかけて、赤い筋がいくつも流れ、
足元に広がる血溜りをさらに広げていく。
从 ー 从「………ごふっ」
ワタナベは虚ろな目で、ツンの居るであろう先を見る。
既に致命傷を負っているため、どのみち長くは無かった。
痛みも感じていないのか。
それでも笑みは崩さなかった。
从 ー 从「よく・・・とめたね」
二人の姿勢も、状況も、先から変化していない。
あれから数度にわたって光弾は放たれたが、ツンはそれを全て防いだ。
- 12 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
19:22:40.41 ID:6cFYfDVq0
从 ー 从「どうやったの・・・?」
言いつつ、風が鳴り、光弾が放たれる。
すると、ツンの前方に刃が浮かぶ、それも一つ二つではなく、
隙間を空けつつ、大量の刃が盾となって展開された。
カサナ
ガラスのような割れ音が、一斉に重鳴り。
勢いを殺された石は輝きも無くし、ツンはそれを素手で受け止めた。
ξ゚听)ξ(……もう二、三度が限度か)
从 ー 从「あ・・・なんか、わかっちゃった・・・」
从 ー 从「そんなにつかっていいのかな?
そろそろ、げんかいじゃないのかな?」
問われ、ツンは己が手にある剣を視野に納める。するとそこにあったのは、
半透明な刀身に大量の亀裂が走る、変わり果てた神具の姿であった。
- 15 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
19:25:16.75 ID:6cFYfDVq0
ξ゚ー゚)ξ「……そうだな」
从 ー 从「・・・ひとつ、きかせて」
ξ゚听)ξ「……?」
从 ー 从「さっき、にんげんのつもりかって、きいたよね・・・?
どうしてなの? わたしは、あなたがいうように、じぶんでかんがえて、
そのうえでこうして、あなたを――――」
ξ--)ξ「違うな、お前はやはり間違っているよ」
从 Д 从「だからどうして!!!
なんでなの!?」
ξ--)ξ「悩む事もせず、思いつきだけで我を通そうとする者は畜生と同じだ」
ξ゚听)ξ「苦悩というのは自分に都合の悪いことも考える事だ、お前はそれをしているのか?」
从 ー 从「わかんない・・・ツン、なにいってるのかわかんない・・・」
ξ--)ξ「……そうか、やはり…お前はあの時のままなんだな」
- 18 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
19:27:34.70 ID:6cFYfDVq0
从 ー 从「・・・・もう、いい」
ξ゚听)ξ「ああ、では次で決着をつけよう、ワタナベ」
从 ー 从「つぎ? つぎなんてないよ・・・だって」
从 Д 从「いますぐおわるんだから!!」
言うや否や、双方がほぼ同時に動いた。
ワタナベは最後の力を絞り、槍をかざす。
ツンは歯を食いしばり、再び地を蹴る。
从 ー 从「!?」
ぼんやりとしたワタナベの視界の中で、ツンは意外な動きを見せた。
決死の覚悟で突っ込んでくると思われたが、何故か見当違いの方向へ走っている。
けれど、もはや何をしても無駄だと、ワタナベは確信した。
- 20 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
19:29:20.40 ID:6cFYfDVq0
そして放たれたのは浮かんでいた残る全ての光球、数にして20を越え、
流れる光は尾を作り、いくつもの光線となって低空を走る。
対するツンは、自らへと迫る光を前に、再び盾を展開。
音と音と音と音と金属音が混ざっては甲高く響く。
从 ー 从「・・・は」
それに気付き、ワタナベは笑みを浮かべた。
数を従えた光弾は、その勢いを全く衰えさせない。
そればかりか、一秒にも満たないほんの一瞬で、刃は全て砕け散ってしまう。
ξ; - )ξ
消えていく欠片の向こうに、その姿があった。
加速する光線は、遮蔽物の消えた空間を抜け、そして、
一番先を走っていた光線が、ついにツンの胸部を捉えた。
- 24 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
19:31:33.31 ID:6cFYfDVq0
だがそれだけでは終わらない。
続けざまに、腕、足、顔面にまで、大きな穴を空けていく。
そして次の瞬間、ツンの姿は粉々に砕け散ってしまった。
从 д 从「……え?」
時が止まる、しかも砕ける音は、もう何度も聞いたあの割れ音。
そして視界の隅に、自分へと迫る姿を見つけたのは直後であった。
从; Д 从「うそ、な、なんで、なんで!?」
ξ#゚ー゚)ξ「知らんなら教えてやる、あの神具の名は、月鏡と言うのだ!!」
从; Д 从「…! でも、これだけのやいば、もうそのけんのきょうどは…!?」
既に互いの距離は無くなっている。
だからこそ、ワタナベは確認できた。
- 27 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
19:34:18.44 ID:6cFYfDVq0
ツンの手にあるのは、神具ではないと。
どこから拾ってきたのか、無骨な柄に、銀の刃を持つ、何の変哲もない、普通の剣。
変な方向へ走り出した時点で、最初から狙いは―――。
そんな思考は、自らの腕が斬りおとされた衝撃で、どこかへ飛んだ。
神具を握ったままの腕が、血を撒きながら落ちれば、
最早ワタナベは叫ぶ事もせず、ただ、力なく崩れ落ちる。
しばしの沈黙。
だが、やがてすすり泣く声が響き始めた。
- 29 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
19:36:27.33 ID:6cFYfDVq0
从;ー;从「こわい・・・こわいよぉ・・・」
ξ゚听)ξ「なら……すぐ楽にしてやる」
从;ー;从「やだ・・それはもっとやだ・・・ぁ!」
ξ゚听)ξ「そのままでは……苦しいだけだぞ」
从;ー;从「ち・・・が・・・おねが、い・・・ツン」
ξ゚听)ξ「……」
从;ー;从「さいご・・・だから・・・わか、るから・・・だから・・・
ツン・・・あいして、るって・・・わた、しを・・ねえ、お、ねが」
ξ--)ξ「断る」
从 ー 从「・・・・・・・・・・・・・・」
从 ー 从「・・・・・・ひどい、ひと」
ξ--)ξ「…………そう言う類の嘘は、嫌いだ」
- 31 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
19:39:30.19 ID:6cFYfDVq0
从 ー 从「・・・まっすぐで、ぶきよう・・・あなたなら・・・もっと
はなやかで・・・ひのあたるいきかたができた・・・・・・の・・・・に」
ξ゚听)ξ「……非道でも、愚かでも、私が、私の意志でこの生き方を選んだ
曲がる気も無ければ、折れるつもりも毛頭無い」
从 ー 从「・・・・・・」
ξ゚听)ξ「恨みたければ恨めばいい……だが、もう一度言っておく、
例えそれが誰であろうと、そこにどんな大儀があろうとも関係ない、
人は、自分で悩み、考え、自らの意思で動くことができる、だからこそ」
从 ー 从「にんげんだ・・・でなければ・・・ただの・・・にんぎょうとおなじ、
それで・・・おまえは・・・いきている・・・つもりか・・・?」
从; ー 从「あ・・・あれ・・・そういえば、どうして・・わたし・・・
そうよ・・・あのとき・・・あたまがわれそうに・・・・・あ・・・れ―――」
- 34 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
19:41:48.68 ID:6cFYfDVq0
こうして。
かの日に、とある精神支配の神具によって、
壊れてしまった一人の女性が、ついにその命を落とした。
ξ゚听)ξ「……」
ξ--)ξ「………………」
一つの決着を済ませると、深くため息を吐き。
遠い先を見据え、ツンはその場を後にした。
- 38 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
19:44:50.63 ID:6cFYfDVq0
…………。
雑草が茂っていた大地は、既に焦土と化していた。
山岳の合間に存在する荒野には、巨大な亀裂がいくつも口を開け、
遥か下では、激流が白波を上げながら、今も壁面を削り。
赤茶色の山々には、木々の類は存在せず、茂みばかりが続いている。
見果てぬ先まで続く荒野は、そんな山々に四方を囲まれる形で存在した。
そこに、人が群れを成し、相対しながらどこまでも広がっている。
だが、そんな景観の中に、一際大きな光を放つ場所があった。
広大な景色に対して、その存在はあまりに小さかったが、
その輝きは、周囲を満たして尚も、強く、眩い。
- 40 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
19:47:15.32 ID:6cFYfDVq0
(# A )「ッッ……!!」
ドクオは、必死に漏れ出した光を抑えようとするが、止まらない。
水による障壁を張り続けてどうにか堪えているが、大量の気泡があがり、
水蒸気を立ち昇らせながら、どんどん蒸発してしまう。
明らかに異常な事が起きているのだが、戦火はとまらない。
そんなドクオに対して、畏怖からか、攻撃の手は激しくなっていく。
だが発動した神具の一振りで発生した、三日月型の閃光によって、一瞬で消し炭と化す。
このままでは、敵も味方も関係なく、自分さえも同じ末路を辿る。
そんな恐怖と焦りが、更に火力を強めていく。
輝く刀身では、今も線状の炎が踊る。
- 43 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
19:48:48.20 ID:6cFYfDVq0
その時、こちらの異常に気付いた味方の人々がこちらへ近づくのが見えた。
慌てて近づかないようにと叫ぶ、だが、向こうも何かを叫んでいる。
(# A )(……なん、前?)
指を向けるジェスチャー、その方向を見れば、
敵の集団がこちらへ迫っていた。それを教えていたようだ。
走ってくる。
早くどうにかしなければ。
もし斬りあいにでもなったら終わりだ。
恐らくこの状態で刀身爆発を起こせば、あの時と同じ事が起きる。
それだけは避けなくては、だけど、敵はもうすぐそこ。
下手に動く事さえ、危なく感じて動けない。
だけど動かないと、何とか、何とかしなきゃ、と。
- 44 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
19:49:37.92 ID:6cFYfDVq0
(; A )(あ……)
その時、接続にも限界を感じ始め、立ち眩みが襲う。
これはもう、いよいよもって、駄目かもしれないと思う。
身体中の力が抜けていくのを感じて、熱が肌を焦がす痛みが走る。
同時に、不思議に思う。
水の接続は解けた、なのに、どうして、生きているのだろうと。
まだどうにか握ったままの剣が、徐々にその光を失くしていくのは?
さっきから、俺を呼んでるこの声は?
この、目も開けられない程に吹き荒れる、風は?
- 50 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
20:01:50.05 ID:6cFYfDVq0
(;^ω^)「…クオ!! しっかりしろドクオ!!」
(;'A`)「…………?」
なんだこれは、とうとう自分は壊れたのかと。
その横に立つ姿を、呆然と見つめていた。
(;^ω^)「大丈夫かお!?」
(;'A`)「え……え!? ブーン!?」
(;^ω^)「ただいま、てか、遅れてごめんお」
(;'A`)「ほんとに…おま、」
(;^ω^)「あばば、話はとりあえず、置いておいて!」
まだ力が入らないのか、ドクオはへたり込んだまま動かない。
しかし、言われるままに前を見れば、さっきの集団がもう目の前に。
- 52 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
20:02:53.74 ID:6cFYfDVq0
(;^ω^)「ちょっと待っててお、すぐに」
( ωナ)「片付く」
言って、ブーンは視線を外し、迫る集団に身体ごと向けた。
だが、そこに小さな違和感を覚える。
(;'A`)(……え? 今、目の辺りに何か……)
そして、その宣言どおり、数人の集まりをブーンは瞬く間に斬り伏せる。
傍目にはほぼ、横を通り抜けながら剣を振り回しただけにしか見えなかった。
そんなブーンに追随するように、味方の雄叫びが轟くと、
均衡していた一部が、一気に押し返していく。
(;'A`)「ブーン!!」
(;^ω^)「お? もう大丈夫なのかお?」
(;'A`)「お前、どうしてここに? 何がどうなって!?」
- 54 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
20:04:40.43 ID:6cFYfDVq0
(;^ω^)「あ、てか、それは僕も聞きたいお」
こうして、ひとまず二人は戦線を離れ、互いの事情を話した。
ブーンが言うには、ドクオ等がエッダの地を出てから、割とすぐにブーン達は戻ってきていた、
そして残った人々から事情を聞き、とにかく大急ぎで追いついてきたらしい。
(;'A`)「それで、ブーンだけって事はヒルトの方は……」
(;^ω^)「いや……そ、それが……その……」
(;'A`)「?」
(;^ω^)「協力自体は得られたんだお、一緒に戦ってくれるって、だけど……」
それを果たせたのが、期限ギリギリであった事。
こうまで早く、戦いが始まっているとは思わなかった事。
そして、国を挙げての事だ、その移動には相当な時間がかかる、つまり。
(;'A`)「そっか……間に合わなかったのか」
(;´ω`)「ごめんお……だから、せめて僕らだけでもと思って…」
- 57 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
20:07:13.00 ID:6cFYfDVq0
(;'A`)「そんな、それで、ジョルジュさんは?」
(;^ω^)「こっちに来るとき、何かみんな二手に別れてたから、僕らも…と、
だから今、ここに居るのは僕だけだお」
(;'A`)「そっか……」
( ^ω^)「それで、どうすりゃいいんだお?」
(;'A`)「えと、それは、そうだ、ショボンにも教えなきゃ」
(;^ω^)「ショボ? ショボはどこに居るんだお?」
(;'A`)「わからない、もっと前の方だとは思うけど……」
( ^ω^)「じゃあ行こう」
と、促され、駆けだそうとするが、
ブーンは何か思い出したように、あ、と声を上げ。
( ^ω^)「……そういえばまだ聞いてなかったお」
- 60 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
20:10:02.92 ID:6cFYfDVq0
(;'A`)「何を?」
(;^ω^)「いや、これがまた、ほんとに今更なんだけど……
何かもう、今聞いておかなきゃいけない気がするから」
(;'A`)「…?」
( ^ω^)「……ドクオは、どうして戦ってるんだお?
その理由、ちゃんと知っておきたいんだお」
(;'A`)「それは…」
本当に今更と言えば今更だ。
でも確かに考えてみれば、しっかりと宣言みたいな事はしていなかった。
どうして戦うのか、これに類似する問いに応えたのは何度目だろう。
だけど、今はかつての事なんて頭にはなくて、ただ、あるのは、
向こうが襲ってくるから、みんなを護るために。
沢山のヒトが死んだ、殺された。俺はそれが許せない、
だから俺が戦って、みんなをまもらなきゃって、そう思ったから。
そう、思ったから……なのか……?
- 63 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
20:12:14.84 ID:6cFYfDVq0
('A`)「………それは」
( ^ω^)「……僕は」
('A`)「……?」
( ^ω^)「僕は……弱虫だから、本当につい最近までずっと迷っていたお、
いつも、問われても上辺だけの答えで、確固たる物なんて何もなかった」
(;'A`)「な…」
( A )「…んな事、ないよ」
仮に迷っていたのが事実だとしても、現にブーンは沢山の人を助けてきたじゃないか。
こっちに最初に来た時も、管理者になった時も、争いに介入して止めた時も。
俺とは違う、誰かを見殺しにしてばかりの俺なんかとは……違う。
分かっている。いざ事が起きた時、足を止めてしまうのが俺なら、
一度は止めても、すぐに走り出せるのがブーンだ。
( A )「ブーンは、強いよ」
羨ましいくらいに。
- 65 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
20:14:36.42 ID:6cFYfDVq0
( ^ω^)「…」
ブーンは目を伏せて言葉を濁した。
その間にも、一人、また一人、俺たちの傍を人が駆けて行く。
視野の中で、遠く小さな光が弾けた。
すっかり耳に馴染んでいた混濁した叫び声に、一際大きな声が混ざる。
こうしている間にも、また、誰かが傷ついていく。
こんな所で留まっている場合じゃない。
なのに、俺は次の言葉を待つことを選んだ。
どうしても、親友が今、言わんとする事を知りたかったから。
( -ω+)「……」
(;-ω+)「……これ、恥ずかしい上に、失礼な話なんだけど」
('A`)「…?」
(;^ω^)「…僕、実は、ずっとドクオの事が羨ましかったんだお」
- 67 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
20:17:40.02 ID:6cFYfDVq0
(;'A`)「へ? えーと、それはまた……なにが?」
(;^ω^)「その、僕には……壁を乗り越えてきたっていう実績ていうか……
そういう過去っていうか、何か背負っている物、みたいなのが無いから、
それを持つ誰かっていうのは、それはすごく、強く見えたからだお」
ブーンは伏し目がちに、どこか自嘲するように言葉を続ける。
(; ω )「まるで、物語の登場人物みたいに……何かを成せるのは、やっぱり、
何かを背負って、それでも前を向ける強さなんだって、憧れた」
( ω )「だから、せめて強がっていたかった…そうでなきゃ同じ位置には居られない気がして、
いつも誰かに優しくできて、誰かを励ませたなら、少しは、マシな自分になれるんじゃないかって」
でも、それは強さって言うんじゃないのか。
( ω )「違うお…そうする事で、僕はきっと、自分を少しでも優位にしたかっただけで……」
そうなのかもしれない。
それは事実なのかもしれない。
だけど違う、ブーンは間違っている。
- 72 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
20:20:13.58 ID:6cFYfDVq0
確かに何かを背負えば、人は強く生きられるのかもしれない。
だけど、言ってしまえばそれは、間違いを繰り返した回数が人より多いというだけ。
勿論、全てがそうでは無いだろう。
少なくとも、俺の場合は、だけど……。
それでも、いま思い返せば、全ては行動一つで変えられた事だったと思っている。
我慢する努力はする癖に、捜し求める努力はしなかった。
捨てられた、と言って全てを放棄していたのは、俺の方だった。
全ては、その手が差し出される時まで、気付こうともしなかった、俺の……。
……本当の意味で前を向いて、そして、いつも笑っていられたらよかったんだ。
そう思える様になった事を、背負っている、というのかもしれない、
だけど実際には、後悔があって、ようやく人並みになった、これはそういうお話。
どんな苦労も、どんな幸福も、時が経てば全ては薄れていく。
たった、それだけのお話。
- 75 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
20:22:31.11 ID:6cFYfDVq0
だから俺は思う。
( A )「嘘つけ、それはいくらなんでも自虐し過ぎだ……
それくらい分かるぞ、ただの虚栄心で、こうまで体張れるもんか」
心に、明確な強さなんて無いんだって。
人それぞれに、強さにも、弱さにも取れる見方、方向性があるだけで、
自分が思う何かをそこに当てはめているだけで、決定付ける物は存在しない。
だからこそ、自分を弱いと思ってしまったとき、抜け出すのは本当に難しい。
( A )「そんなの、後悔だらけの俺からしてみればさ、
何も持たずに誰かに優しくできる、ブーンの方がよっぽど凄いよ」
(; A )「しかも、お前が強く見えたって言う俺は、そんなブーンが居たからこそで…おかげで」
遅かれ早かれ知ることであったとしても。
それを教えてくれたのは。
そして今、ここに居られる事も、全ては。
- 78 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
20:25:31.28 ID:6cFYfDVq0
(;'∀`)「……そうだ、俺、もうずっと前から、お前に……救われてたんだ」
(;'∀`)「ありがとうなブーン、何度も俺を救ってくれて……
それと、居てくれてありがとう、こんなの、ずっと前に言うべきだったのに」
(; ω )「…!!」
あ、でも状況が状況だし、今のうちに言えて良かったのかもしれない。
大事な親友に、せめてこれぐらいは伝えておかなきゃ……。
と、その時、正面から鼻をすする音がした。
ふと見れば、何故かブーンは隠すように涙を拭っていて。
(;'A`)「へ?」
俺はその理由が分からなくて、しばし固まってしまう。
けど、すぐにいつも通りの笑顔になって、こっちを向いた。
と言っても、その目はまだ少し赤かったけど。
( ω )「僕こそ……ありがとうだお」
- 80 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
20:28:05.88 ID:6cFYfDVq0
( ω )「ほんとは今、ちょっと、いや、かなり不安な事があったんだお……
でも、おかげで何かもう、僕、大丈夫……」
けど、何だかそれを聞くに聞けなくて。
俺は追及もせず、ただ頷いていた。
と、そんな空気を察したのだろう。
( ^ω^)「そういえば、もう一つ…みんなに言えなかった事があるお」
('A`)「?」
( ^ω^)「瀬川が前に言ってたんだけど……この神具の力、進化を繰り返せば、
いつか…そう遠くないうちに、僕は死ぬんだって」
(;'A`)「おまっ…!」
(;^ω^)「あ、いや…と言っても、まあ、それ本当かどうかは分からないんだが」
(;'A`)「何だそれ?」
( ^ω^)「うーん、今のところそんな感じはしないっていうのと……」
(;'A`)「また微妙な……それと?」
(;^ω^)「えーと……何となく?」
- 83 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
20:30:18.59 ID:6cFYfDVq0
('A`)「何となく…」
(;^ω^)「…勘だけども」
('A`)「勘か…」
(;^ω^)「だああ、なんだおその反応!
ほんとに大丈夫だってばお!!」
(;'A`)「だったら少しは信用できる部分を見せろよ……」
( ^ω^)「……」
('A`)「……」
(;;^ω^)「……………」
(;'A`)(……無いのか)
(;^ω^)「そ、そうだ、それ言ったらドクオだって!」
(;'A`)「そこで俺にふるのか!? 俺は別になにも…」
- 87 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
20:32:15.55 ID:6cFYfDVq0
(;^ω^)「さっきなんてもう【やっべー、これ死んだ】みたいな顔してたじゃないか!!」
(;'A`)「う……いやまあ、そんな軽い状況でもなかったけど」
(;^ω^)「…そこには突っ込まなくていいお、あ、いやいや、だから、
ドクオだって、そういう危ない真似をしてるわけじゃないかお?」
('A`)「だから、自分も危ない真似をしてもいい、と?」
( ^ω^)「それも違う」
即答した。
( ^ω^)「当然ですお、何故ならば」
ブーンが俺から視線を外し、姿勢を正した。
その目が見据えるのは、ずっと先。
俺もそれに倣って、立ち上がった。
( ^ω^)「死んでも構わないって命を賭ける事と、生き続ける為にこの身を賭ける事は違うからだお」
- 89 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
20:34:36.45 ID:6cFYfDVq0
そんな無茶な…。
( ^ω^)「無茶でもなんでも、石橋なんか叩いてないで、一気に走り抜けりゃいい、
それが無理でも、全力で飛び越せばいいし、落ちても昇ればいいんだお」
こんなのは心構えでしかない、ただの屁理屈に過ぎなくて、
現実から目をそらした、ただの理想論なんだと思う。
我侭、それとも、考えが幼稚だからそう思うのか?
まで考えて、違うと自嘲した。
ブーンはきっとそれを理解してる。
これが、いかに楽観的な考えであるか分かってはいるんだ。
そして分かった上で言っている。
先の言葉を借りれば、何となくそう思った。
- 92 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
20:36:29.86 ID:6cFYfDVq0
ブーンが今まで何を見て、何を思ったのか、
どんな経験があって、どんな経緯で、その結論に至ったのか、とか。
そんなのは到底 "俺には" 分からない。
もし、これまでのブーンをずっと見てきた人が居るとしたら、何か分かるのかもしれないけど。
……それは俺の知る所じゃない、だから分からない。
分からない、けど、納得する事はできる。
これからを生きるために、あらゆる最善を尽くすという事。
例えそれが自殺行為でも、それがどれほど矛盾を抱えた物だとしても。
自分がそう決めたから。
俺が、ギコさん達の…居亡くなってしまった人達の想いを継ぐ為だけに、
破壊と災いを呼ぶ、炎の剣を手にしたように。俺と、同じように。
何か一つの意思の下。そうしたいと願い。しようと思い。すると決めた。
- 94 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
20:39:17.81 ID:6cFYfDVq0
だから命を捨てるつもりなんて、これっぽっちも無くて。
そもそも、俺が戦おうと決めたのだって
あ……。
ああ、大事なことを忘れていた。
いや、忘れていたんじゃない、ただ、それを原因にはしたくなかったから。
川 - )
あの日、縛りたくないと言った、あの言葉を本物にしたくて。
今の辛さや苦しさを、彼女にせいにだけはしたくないから。
('A`)(…でも)
ふと俯けば、風が頬をすり抜けていく。
もう一度、ブーンへと向きなおした。
お互いに、物騒なものを手にしていると思い。
同時に、なぜか昔の景色が脳裏をよぎり、全てが色あせて見えた。
- 97 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
20:41:38.37 ID:6cFYfDVq0
浮かぶのはセピア色、川沿いの道、朝、自転車、校舎、それはもう毎日がエブリデイ。
ああ本当に遠くまで来たなぁ、と、それを懐かしみながら。
自分の中で、それはとうに思い出になっていると知る。
('A`)「……俺が、戦う理由、は」
(;^ω^)「……お」
俺がそう切り出すと、ブーンはハッと何かに気付いたような素振りを見せる。
……言いたい事をもう言ったもんだから、忘れてたな……。
少し言うのよそうかな、という気持ちが芽生えたけれど、やっぱり言うべきだ。
何故なら、本当は元より、これを言うのは躊躇う気持ちがあったから。
だってブーンは、元の世界に帰りたがっていた。
俺がいきなり巻き込んでしまったような物だし、当然だ。
- 100 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
20:43:46.81 ID:6cFYfDVq0
そして、本当なら、その手段を探すなり何なりするべきだった、
友達なら、ちゃんと、そうすべきだったんだ。
なのに俺は、それを嫌がっていた、だから何もしなかった。
謝る事さえ、それを知られてしまうのが怖くて、負い目にも感じていた。
それが、今の今まで、はっきりと伝えられなかった理由。
だけど、もう何度も、出会いと別れを繰り返したであろうこの親友は、
この異世界で、同じように何かと出会い、誰かと出会い、変わっていったのだろう。
もう一度出会うたびに、俺はそれを見てきたから。
その変化が本当に正しい事だったのか、それはわからない、けど、
…以前、俺は誰かと出会うことが人の生きる意味だと言った。
でも今は少しだけ違くて。
誰かじゃない、人や街並み、状況や場景、世界と心。
それらの出会い全てが、人を変えていく要因で。
それらの出会い全てが、生きるという事の意味なんだ。
- 104 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
20:46:30.61 ID:6cFYfDVq0
だから今はもう、躊躇わずに言える。
('A`)「俺は、ずっと続いてきた願いを叶えたいと思ってるから…かな」
(;^ω^)「む……もうちょっと詳しく」
誓約、クーを守るという誓いもそうだけど、それだけじゃない。
そこに足りない人たちを加えるなら。それだけにはならない。
ある人は、もっと素直に生きろと、幸せになってもいいんだと言った。
だけど、今もクーは自分を殺している。
俺を縛りたくないと言った事もそうだ、だけどそれ以前。
クー自身の願いが、押し殺されたままなんだ。
そしてその願いはきっと、今の、こんな世界では到底叶えられるものじゃない。
特に、エッダについてからと言う物、それが少し見え隠れしている。
- 106 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
20:48:40.83 ID:6cFYfDVq0
これはもう、完全に想像なんだけど……。
国という独裁ではなく、村という仕組みが、彼女の想いを膨れさせたんじゃないかって。
これなら、いや、この形こそ、クーが好きだと言った、あの城下の日々なのではないか。
だから急に世界についてなんかを調べるようになって、
いつの間にか、昔の雰囲気を取り戻し始めた理由なのではないのか。
(;^ω^)「えーと……つまり、ドクオが戦う理由って……」
('A`)「……もしも、クーが本気でVIP再興を目指すつもりなら、
俺は、例えどんな事だってそれを手伝いたいと思う、
そして、それが叶うように、安心して目指せるように」
( A )「もう……もう、クーをあんな目に合わせないように」
(;'A`)「この世界を変えてしまいたいって、そう思っ……て?」
(;^ω^)「……ぁー」
(;'A`)「ちょ、な、何? その目は?」
(;^ω^)「…話、でかっ」
- 110 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
20:51:00.00 ID:6cFYfDVq0
(;'A`)「わ、わかってるよ……! さすがに俺一人でどうこうするとか考えてるんじゃないよ、
ただ、何だろう、ええと、その為ならどんな事だってする意思表示というか…!」
(;^ω^)「それはわかるけど……まさかガチで世界規模を繰り出してくるとは……」
(;^ω^)「あー……でも、女の為に、とかわりとよく見かける話でもあるような……
そういえば、コードジブリ反逆のルージュとか、そんな……」
(;'A`)「それは知らんけど、だから俺が直接どうとか、そういう話じゃ……」
(;'A`)「……じゃあ、そういうブーンはどうなんだ?」
( ^ω^)「僕かお」
(;'A`)「そうだよ」
( ^ω^)「僕は、まあ僕も理想論ではあるんだけど……」
( ^ω^)「僕が守りたいと思った、全ての物を守って、そしてその上で、
この先もずっと、その人達と笑いあえる事……今を生きていくこと」
( ^ω^)「それが、きっと本当の意味での誰かを救うって事だから……だお」
(;'A`)「おい……それ、人の事言えないぞ」
- 112 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
20:53:35.17 ID:6cFYfDVq0
お前は何を言ってるんだ、そんな事できる訳ないじゃないか。
ブーンが言ってるのは、ただ普通に生きていくだけでも、それを叶えるのは難しいのに、
なのに、こんな次々に誰かが傷ついていく状況で、夢物語もいいところだ。
(;^ω^)「いや、別に僕は全ての人の幸せを〜なんて言うつもりはないお?
ただ……周りに居る誰かとか、そういう小規模な」
('A`)「それを言うなら、厳密には俺もそうだって」
ついでに言えば、ぜんぜん小規模じゃない。
共に生きていくって事は、その誰かの繋がりや、営み、それら全てが対象じゃないか。
それが積み重なったら、果たしてどれほどの規模になると思っているのだろう。
普通それくらいわかる、普通そんな考えにはならない、この世界の現状を知れば、きっと考えもしない。
あまりにも突飛な理想で、夢やら何やらの類になるのだろう。
だからこそ、それを考えてしまえる俺たちが特異なのだろうと思う。
- 116 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
20:56:16.10 ID:6cFYfDVq0
本気で願ってしまえる。
だけど仕方ない、だって、知っているのだから。
小競り合いは続き、そこに様々な問題点は多々あるとしても、それでも、
人が手を取り合って社会を造る平和な世界が、ここではない何処かに存在する事を知っているから。
それに…。
例えどんな妄言だってさ、それを理想とする事はきっと、間違いなんかじゃない。
(;^ω^)「そ、それに正直……それ以外の人は、というか、守るという事はその、
敵対する物があるわけで、それは全力で駆逐する心でして…」
('A`)「なんかそれ……もう悪役みたいだな」
(;^ω^)「おお悪役、なるほど、それいいお!
うん、そう、逆らう者は許さん的な勢いで!」
(;'A`)「なにそのダークサイドフラグ!?
ちょっと落ち着け!」
( ^ω^)『「いや落ち着いてる、ガチ名案っていうか、そもそも僕らが言ってるのって、
結局は理想の押し付けなわけで…実際それって悪者っぽいだろ?」』
(;'A`)「それは…そう、だけど、って……あれ?」
ふと、ブーンの雰囲気が変わった。
それどころか、声色そのものが違う。
- 119 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
20:59:10.71 ID:6cFYfDVq0
瀬川が喋っているのかと思ったけど、何だろう、何か違うような……。
( ^ω^)『「それとも、ドクオは自分が善い事をしているつもりか?」』
('A`)「……いや」
まあ何にせよ、言っている事はわかる。
ずっと前に、俺も同じ事を考えたから。
……そういえばいつの間にか、俺が何とかしなきゃと思っていた。
自分が管理者で、他の人は普通の人だから。
そうやって勝手に格付けして、勝手に責任を感じていた。
そこに生まれるのは、他者を護っているという勘違い正義感。
自然と、苦笑が漏れた。
もやもやしていた胸中の黒い部分が、少し、軽くなったような気がして。
- 121 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
21:02:19.53 ID:6cFYfDVq0
('A`)「…そうだな、ぜんぜん善い事してないもんな」
( ^ω^)「そうだお、おれたちゃ悪者だお」
('A`)「…ああ、んじゃ、いい加減さぼってないで働かないと、悪者らしく」
( ^ω^)「そうするお、んで、こうなったら世界征服でも目指してさ」
互いの視線を外し、身体ごと向きなおす。
荒野の先には、膨大な影が蠢く巨大な砂煙、その中では今も戦いは続いていた。
並び立つ二人の手には、互いの変化を表すように剣がしっかりと握られている。
一歩。
一つは、陽炎が空気を歪ませる赤熱の剣。
一つは、陽を受け全てを映した白銀の剣。
- 124 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
21:04:19.91 ID:6cFYfDVq0
また一歩。
徐々に歩みは早まっていく。
続けて、砂塵を巻いて風が吹き、亀裂から水流が立ち昇れば、
行こう、と行動を促す声が二つ重なり、どちらともなく地を蹴る。
互いが互いに勇気を与え。
そこに迷いも畏れもなく。
時を経て。
『炎と風』が今、再び、戦場を駆ける。
………。
- 126 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
21:06:29.19 ID:6cFYfDVq0
……。
その反対側の最奥。
どこまでも深い崖が続く、渓谷の道なり。
戦地からはまだ遠く離れたその場所を、悠々と歩く姿があった。
ただ一人、武器も持たず。
両腕を黒に染め。
顔面には、二つの大きな痣を持つ男だった。
…。
………。
- 128 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
21:09:10.47 ID:6cFYfDVq0
中枢、すでに講じられたあらゆる手は尽き、
その戦いはついに、正面からの混戦と化した。
「なんじゃこりゃー!?」
(`・ω・´)「…?」
ショボンはフレイを宙に浮かべたまま、普通の剣を握っていた。
当然ながら、神具の自動防御に任せている為だ。
「ず、ずるいぞ!!」
(`・ω・´)「後ろから襲っておいてよく言う!」
しかし、これ以上ない護衛手段であった。
だが、それはあくまで自己防衛に過ぎず、次々に味方が削られていく。
こちらもそれ以上に奮闘はしているが、そもそもの規模が違う、
そして今もまた、味方の一人が剣を弾かれ。
返す刃がその身へ向けられ、切っ先が円を描きながら迫る。
- 130 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
21:11:29.40 ID:6cFYfDVq0
「!!」
だが、その刃は届くことはなく。
その横を影が疾風のようにすり抜けると、剣は音を立て砕け散った。
(´・ω・`)「……やれやれ、やっと来たのか」
ショボンはそれを見るなり、驚いたように表情を緩ませたが、
すぐにまた正面を見据え、浮かんでいた神具を手に取り、更に一人を切り伏せた。
だが、通り抜ける影はそれよりも早く、一人、また一人と討ち倒して進む。
ある者は気付く間もなく。
またある者は気付きながらも、どうしようもなく。
「なんだこの…黒くて素早いアレっぽいのは!?」
(#^ω^)「誰がゴキブリだ!!」
「くそ、また管理者か!!」
すると敵側に動きがあった、見れば密集体系を取っており、
彼らの手にはそれぞれ、珠と思わしき球体が握られていた。
- 133 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
21:14:09.54 ID:6cFYfDVq0
(;^ω^)「む?」
「いつまでも好き勝手やれると思うな化物ども!!」
「そっちがそう来るならこっちもだ!!」
「行くぜおめーら、合わせろよ!!」
そして、一斉に接続を行使。
まず放たれたのは、地面を抉るほどの圧力が込められた協力な風嵐。
方向性のない風の塊は、小さな石ころから塵までを問答無用で巻き上げ、
まるで津波のようになってブーンへと放たれた。
周りに居た味方勢も、それを見るなり大慌てで後退。
「よし! 次だ!! 続け!!」
しかも、相手は手を休める事無く、更に接続を行使。
今度は炎、風に混じられた炎は姿こそ保てないが、熱だけは残していく。
熱風が、じりじりと肌を焼く。
- 135 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
21:16:45.67 ID:6cFYfDVq0
(;^ω^)「あ、あれ……!? いつの間にか僕しか居ねぇ!?」
すぐさま対抗して、風に接続するも、流石に多勢に無勢。
その勢いは衰えることもなく、更に勢いを強めていく。
(;^ω;)「いてて、目に砂が……」
ついに吹き飛ばされた砂塵は、叩きつけるようにブーンへと降りかかる。
軽く吹き飛ばされそうになりながらも、踏ん張りをきかせて手を正面に。
一か八か、こっちからも風圧を叩きつけるが、案の定、意味は無かった。
(;^ω^)(やっべ、どうしよう……)
色々と巻き上がってる中には、刃物も混ざっている。
あれに巻き込まれたら、ちょっと酷い事になるなと思う。
そして、どうしようも無いので、諦めて風の圧縮作業を始めた。
しかし、特に危機感を感じる必要はなかった。
(;'A`)「早いってお前!!」
(;^ω^)「それより前! 前!!」
- 137 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
21:19:36.66 ID:6cFYfDVq0
(;'A`)「わかってるよ…!」
ドクオは深く息を吸い、腹に力を入れつつ吐きだす。
真上に掲げる赤熱した剣に、青い炎が揺らぐことも無く灯る。
剣を包む円筒のような青い炎は、その先端にのみ、燃え盛る紅蓮を宿していた。
(;^ω^)「え、その剣ってなんか……前からそんなだっけ?
あれ?」
(;'A`)「いや……それよりブーン、多分、これちょっと凄い事になりそうだからさ」
(;^ω^)「把握した! エアロバリア…オン!!」
二人の周囲に、そよ風が吹き、続けて竜巻となった。
更に、ブーンの前に出たドクオは、大きく掲げた剣を数度振る、
すると、その剣線をなぞる様に炎が広がっていく。
眼前に展開されたのは、X字を描きながら、空中にて揺れる青い炎。
(;^ω^)「おお、これはFAR龍騎!」
- 139 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
21:21:20.13 ID:6cFYfDVq0
驚いたように声を荒げるブーンを他所に、
今度は大きく後ろに振りかぶり、
(#'A`)「龍舞斬!!」
一歩を踏み出し、薙ぎ払う。
炎は爆発めいた音を上げ、ブーンの張った風を突き破り、
その規模を数倍にまで膨れさせながら飛翔すると、熱風帯域へと向かった。
一見して正面からのぶつかり合い、だが衝突と呼べる物にさえならなかった。
青い炎は、吹き荒れる風域に突入すると、その風をも巻き込み膨れ上がり、全てを吹き飛す。
その余波か、凄まじい風圧が一帯を襲い、戦場にしばしの静寂が訪れる。
たったそれだけで、壁のように存在した熱風の嵐は消え去ってしまった。
「…嘘だと言ってよバーニィーーー!!!」
「えー、たった二人にあんた……」
「おい、お前ら手抜きしたろ!!」
「してねーし! ふざけんなし!!」
「ああーーもう!! じゃあどうしろっつーんじゃああああ!!!」
- 141 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
21:24:16.04 ID:6cFYfDVq0
しばしの混乱が起こり、一部の動揺が全体に広まり戦いは中断。
そして途切れたまま、どちらも一時休止の姿勢を取る。
ショボンは、未だ立ちすくむ二人の下へと駆け寄った。
( ゚ω゚)「……」
(;'A`)「……」
(´・ω・`)「二人とも、ちょっと話が……って、あれ?」
(;^ω^)「……正直、ドクオがやった事のほうが怖かったお…」
(;'A`)「……ごめん、ってショボン?
なんだ?」
(;´・ω・`)「あ、えと、とりあえずブーン、それで、どうなってるの?
ジョルジュさんは?
それにヒルトの方は?」
そして、ブーンから事の顛末をあらかた聞き終えると、
しばし黙ったのち、ショボンは小さくため息をついた。
(;´・ω・`)「それじゃ、成功も失敗もないじゃないか……戦力は今すぐ必要だってのに」
(;´ω`)「だ、だって! いきなりこんな状況になってるなんて・・・…
…でも確かにごめんだお……せっかく、協力を得られたのに…」
- 143 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
21:25:49.49 ID:6cFYfDVq0
(;´-ω-`)「…いや、まあ、この状況でいきなり大群連れてこられても、
はっきり言って混乱が起きるだけで、事態がよくなるとも思えないからいいんだけど…」
(;^ω^)「そ、そうかお?」
(´・ω・`)「うん、残念だけど、敵味方の識別だってわからないだろ?
それに今はもう、君らが居ない事を前程にして動いてるからね」
(;^ω^)「それもそれで、なんか複雑な気分だお……」
(´・ω・`)「まあとにかく、今はできる事だけを考えよう、という訳で……
もう一度、戦いが始まったら……ここはもういいから、二人は先へ行ってほしい」
(;'A`)「先に…それはまた、どういう?」
(´・ω・`)「うん、今はこうして止まってるけど…向こうは多分、待ってるんだと思う、
今居る彼らの後ろから来るであろう、もう一つの本隊を」
(;'A`)「…本隊? じゃあ、ってことは、今までのは?」
(´・ω・`)「まだまだ、ほんの一部だと思ったほうがいい、
恐らくはこれで合流して、総攻撃でもかけるつもりなんじゃないかな」
(;'A`)「………」
- 145 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
21:28:27.20 ID:6cFYfDVq0
(´・ω・`)「つまり長引けば長引くほど不利……だから」
( ^ω^)「ピンときた、つまり僕らでこの先に居る、敵の親玉を討てって事かお?」
(´・ω・`)「そういう事」
( ^ω^)「おk、把握」
(;'A`)「いやいやいや! ちょっと待て、少しは疑問を持って!?
この先って、どこに居るかもわからないのにどうしろと!?」
(´・ω・`)「うん、それも大丈夫」
言って、ショボンは相向かいの人波よりも、更に奥へと指を向ける。
煙がかった遠い先には、背の低い茂みだけが広大に広がる、赤茶色の山々が続いていた。
(´・ω・`)「この先には、ちょっと大きな崖が続いてる渓谷があってね、
今居るこの場所に来るためには、どうしてもその場所を通る必要があるんだ」
そして渓谷というだけあって、下は大きな川が流れているのもあって、降りるのも困難。
同時に下から来る、という事もまずありえない。
- 150 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
21:31:09.93 ID:6cFYfDVq0
(;^ω^)「そういえば……なんか場所だけ聞かされて、すぐに飛んで来たけど、
場所がここなのは、何か意味があっての事だったのかお?」
(´・ω・`)「勿論、ここは山岳沿いの道が、蟻の巣みたいに広がっててね、
しかもそれぞれ、あまり大きくないから全体の行進はどうしても遅くなる」
(´・ω・`)「そして、あらかじめ一番通りやすい道ってのを造っておいたんだ」
正確には、他の道を通り辛くしたの方が大きいけど、と加え。
つまり、どんなに相手の数が膨大なものだとしても、通路が狭くては意味が無い。
加えてルートも二つに分け、大きく『ト』の字を描く形になっている。
うまく事が進めば、ツン率いる側が列に割り込む形になり、
あわよくば、そのまま敵の頭を叩き、この場での戦闘は終わる。
(;'A`)「……そんな事まで狙ってたのか」
(;^ω^)「って、ドクオも知らんのか」
(´・ω・`)「ずっと上の空だったからねぇ」
- 153 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
21:34:36.52 ID:6cFYfDVq0
だが、それも上手く行くとは限らない。
ただでさえ、向こうの状況が把握できないのに加え、
こちらが押しても、引きすぎても駄目なのだから。
それゆえに、少数精鋭による一点突破。
(´・ω・`)「それにどうせ君らは……いや、むしろ下手に味方が居ると」
逆にこっちにまで火害が、と言いかけて、
(´・ω・`)「……いや、戦い辛いだろう?」
(;'A`)「……もしかして、今まで前に出るなって言ってたのはそういう……」
(´・ω・`)「…それで、なるべくなら、あの人達に合流してほしい、
ジョルジュさんも、向こうに行ったなら多分、居るんだろうし」
(;'A`)「やっぱそうなのか!?
そうなんだな!?」
(;^ω^)「それはわかったけど……あの人たち?
って、さっきから誰の事なんだお?」
- 156 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
21:37:34.03 ID:6cFYfDVq0
(´・ω・`)「………会えばわかるよ」
ショボンはそう言うと、人差し指を立てて口に当てた。
そんな仕草を見て、ドクオは苦笑いしながら頷きかえす。
(´・ω・`)「さ、そろそろ来るよ……覚悟完了したかい?」
(;^ω^)「……もし、僕らが失敗したら?」
(´・ω・`)「そんなの決まってるだろ?」
(´-ω-`)「何もかも、終わりだよ……他に打つ手も無いし」
当然だと、何ともなしに言う言葉だった。
しかし、二人の言葉を失わせるには充分な台詞だった。
その時、やや遠くで雄叫びが響き。
ビリビリと痺れるような空気が流れる。
ショボンは固まる二人を他所に、味方の中心へと足を向け、
しかし、一度だけ振り向き。
(`・ω・´)「まあ、こっちもこっちで遣り通して見せるからさ」
(;^ω^)「……ショボ」
- 158 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
21:40:35.66 ID:6cFYfDVq0
(`・ω・´)「多分だけど……この先に居るであろう相手は、唸響の管理者だ」
( ^ω^)「……あの、槍の」
(;'A`)「……ルファウスの王、だっけ」
(`・ω・´)「そう、あれについて考えてみたんだけど、多分、あの神具の能力は―――――」
………。
断末魔が響くたびに、撒かれた血飛沫が水溜りの上を漂う。
二つの道の合流地点では、すでにツンを置いて先行した集団が、
道なりの敵を蹴散らし、ついにはその本陣深くにまで切り込んでいた。
<_プ∀゚)フ「ちょwwww誰かwwwwww剣くれwwwww」
(1凸)「おまwwwwwwwまた折ったんかwwwwww」
<_プ∀゚)フ「ヤバスwwwwwwwマジ死ぬんですけおwwwwwwwwwww」
(2凸)「いい加減にしろwwwwwwwwwwwww」
(以下、個別数字無し)
- 159 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
21:42:51.09 ID:6cFYfDVq0
山肌にそって造られた、石畳の大きな架け橋の中心には、巨大な石が転がっている。
薄茶色がかった瓦礫が崩落するこの場所は、ここにかつて砦が存在した事を表していた。
それ自体は相当に古く、誰の記憶にも残っていないが、おかげで身を隠すには事欠かない。
更には、要塞跡地というのもあってか、後ろに逃げるのは容易く、
向かい側から攻める場合には窮屈極まりない、という、有利な位置づけを得ていた。
しかし、多数が押し寄せてくる訳はないとは言え、まさに次から次へと人波は途絶えない。
澁澤たちも巧いこと逃げ回りながら、嫌がらせのように攻撃を続けているが、
休む暇なく迫る勢いに押され、徐々に後退をよぎなくされていた。
_、_
( ,_ノ` )「ほらよ星の!」
<_フ;゚ー゚)フ「おおう、助かった!
って旦那、これ刃こぼれが酷いんだけど……」
_、_
( ,_ノ` )「じゃあ自分で奪え! そこまで面倒見切れるか!」
<_プー゚)フ「くそっ、しょうがねぇな!」
<_プー゚)フ「………」
<_フ;゚Д゚)フ「カービィじゃねえよ!!!」
- 161 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
21:45:24.08 ID:6cFYfDVq0
( 凸)「しかし応援は誰も来ないなー、ツン様どうしたんだろう」
<_プー゚)フ「まーさかやられちまったんじゃ…」
ξ゚听)ξ「呼んだか?」
<_フ;゚Д゚)フ「出たあああああああああああ!!!」
(;凸)「ぎゃああああああああああああああああ!!!」
「居たぞ!! あそこだー!!」
「よし、いぶりだせーーー!!」
ξ#゚听)ξ「おい、バレたじゃないか…この阿呆ども」
<_フ;゚ー゚)フ「あんたが驚かすからだよ!!」
ξ゚听)ξ「…ッ」
<_フ;゚ー゚)フ(舌打ち!?)
_、_
( ,_ノ` )「ちときついが、気張れよ接続チーム!」
( 凸)「「「おおーーー!!」」」
- 164 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
21:48:24.20 ID:6cFYfDVq0
………。
ポタポタと瓦礫から水滴が落ち、いくつもの水溜りに波紋を浮かべた。
ひとまず、敵の進行をその場で食い止めることに成功。
今は相手方と離れ、ちょっとした膠着状態に陥っている。
そして遠くで、大きな爆発音。
( 凸)「それで、ツン様! あの変な女は!?」
ξ゚听)ξ「死んだ」
(;凸)「ですか……って、ツン様!?
怪我を!?」
ξ゚听)ξ「ああ、まあ、問題ない……それより来るぞ」
ツンの右足と腹の辺りには、乱雑に千切られた布が巻きつけられており、
そしてその周辺には、大きな赤い染みが浮かんでいる。
事実として、相当な激痛が襲っていたが、
この場の緊張感からか、ほぼ麻痺状態に近く、
今のところは支障はきたしていない。
- 168 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
21:50:15.51 ID:6cFYfDVq0
ξ゚听)ξ(そう……動くには動くが、やはり鈍いな)
ξ--)ξ(……そして、管理者はまだまだ残っている、か……?)
ふと、目を伏せ。
―――ソウイエバ ヤツラハ ドウシテ?
<_プー゚)フ「あー? なんだって?」
ξ゚ー゚)ξ「いや……中々、愉快な状況だなと思ってな」
<_プー゚)フ「ほお、それは何か名案が浮かんだと見ても?
それともこっからツン無双タイム?」
ξ゚听)ξ「ふむ? そうだな……むしろお前が脅威の1000人斬りを達成する、というのはどうだ?」
( 凸)「素晴らしい」
( 凸)「カービィ無双」
_、_
( ,_ノ` )「よし頑張れ」
<_フ;゚Д゚)フ「くそ…最近の流行は俺いじめか!!」
- 174 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
21:52:48.62 ID:6cFYfDVq0
<_フ#゚Д゚)フ 「いや、つーかさ、そういうのは言いだしっぺがやれやコノヤロー!!!」
ξ#゚听)ξ「喧しい!騒ぐな!!」
<_フ;゚д゚)フ「お、怒んなくてもいいじゃん!!」
_、_
( ,_ノ` )「だが、実際どうすんだい大将?
このままって訳にもいかんだろう?」
ξ゚听)ξ「そうだな……」
どこか遠くで、再び大きな爆発音。
( 凸)「そういえば、さっきから何の音だこれ?」
( 凸)「向こうでやりあってんだろ」
( 凸)「でもさぁ……気のせいかな、なんか近づいてるような…」
しかし、それは気に留めず、ツンは思考する。
ξ゚听)ξ(……)
本来なら、このまま敵陣を突っ切ってしまいたい所ではあった。
だが地の利を得た代償か、逆にこちらからも攻め辛い状態だ。
- 177 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
21:56:20.59 ID:6cFYfDVq0
これから、応援が訪れる、などの進展があるなら別だが、
そんな話は聞かされていないし、大体、人が増えてどうこうなる話でもない。
考えれば考えるほどに、打つ手が無いという事実がのしかかる。
幸い、この位置よりも先に進んだ連中は、この背後に気付いていないようだが、
もしも感づかれて戻ってきたなら、挟み撃ちにあってしまう。
下に降りて、こっそりと回り込むのも考えたが、それには多くの危険が伴う上に、
何よりも今必要とされる、時間を大幅に使うことになってしまう。
降りて登ってを繰り返してる間に、味方が全滅してしまえば意味がないのだ。
それに、考えようによっては、ここは足止めには非常に有効だ。
ξ゚听)ξ「……ここに留まるか、下に降りるか、それとも……」
<_プー゚)フ「カミカゼ特攻だな?」
ξ゚听)ξ「許可する」
( 凸)「行ってらっしゃい」
<_フ;゚ー゚)フ「くっそ、流行が廃れねぇ…俺マジトレンド」
- 179 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
21:58:46.79 ID:6cFYfDVq0
そこで再度、爆発音。
(;凸)「……ツン様? あの?」
ξ゚听)ξ「なんだ?」
(;凸)「さっきから何か、この後ろの方から聞こえてくるのは…」
<_プー゚)フ「DB改のOPみたいな音だな」
ξ;゚听)ξ「そういえば、随分と近……ッ!?」
と、振り向いた先にて、ツンを含むその場の全員が、表情を強めた。
幾つもの瓦礫と、とがった岩肌が連なる先の、およそ遠くない位置だった。
音がしたと思われる先で、黒煙が立ち昇っている。
何かが焼けた跡だろう。
だが、何が来るというのか。
これでも相当な数が向こうへ行っていた。
もしこれが味方だと言うのなら、それを打ち倒して来た事になる、
だが、そんな事がありえるのかと、彼らは一様に身構えた。
- 181 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
22:01:29.56 ID:6cFYfDVq0
<_フ;゚ー゚)フ「……なんか、嫌な予感しかしねぇ」
ξ゚听)ξ「やはり、選り好みしている余裕は無かったのだな」
そして、ついにそれは現れた。
切り立った崖の上から、辺りを見下ろすように。
_、_
( ,_ノ` )「あれは……」
そこに居たのは、昇りきった太陽を背景にして、二つの輝く剣を持った二人組み――――。
(;'A`)「ブーン! これ道、違うんじゃないのか!?
こんな絶壁、どうやって降りろと!」
(;^ω^)「いや、逝ける…! こう、よじ登るの逆、つまりよじ降りればどうにか!」
- 185 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
22:03:32.08 ID:6cFYfDVq0
(;'A`)「別によじは要らな……」
('A`)「ん? あ、ブーン見ろ、あそこ!」
(;^ω^)「お? 誰か居る……? って、あれは……」
(;゚ω゚)「……!!! ショボが言ってたのって……まさか!?
…ドクオ、降りるお! 急いで!!」
(;'A`)「え、マジで!?」
<早く!
<ちょ、ちょっと待って……まだ心の準備が…
<<うわーーーーー!!
そして二人は傾斜の崖を、半ば滑るようにして降り始めた。
ツン達はその姿をしばし呆然と見据え、やがて笑みをこぼす。
(;凸)「あれ、ドクオだろ? もう一人は……誰だ?」
( 凸)「あー、そっか…あんたらは知らないんだよな」
ξ゚听)ξ「………」
- 189 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
22:06:07.19 ID:6cFYfDVq0
<_フ;゚ー゚)フ「はっ―――おいおい……あれって……」
_、_
( ,_ノ` )「管理者二人とはね、また豪華な応援だ」
ξ゚ー゚)ξ「……」
最後にバランスを崩し、転がるように転倒した二人だったが、
一人は転がる勢いそのままに、一回転ついでに立ち上がり、そのまま駆けて行く。
(*゚ω゚)「うわ、うわーーーー!!
おおーい!!」
<_プー゚)フ「おう内藤久しぶり、元気そうじゃん」
(*^ω^)「なんで、なんでこんなとこに居るんですかお!?」
<_プー゚)フ「あれ? ショボンって奴か、まだこけてるあれに聞かなかった?」
( ^ω^)「じゃあやっぱり、ショボンが言ってたのってエクストさん達かお!
いやショボもドクオも、なんか会えばわかるって教えてくれなくて!!」
<_フ;゚ー゚)フ「あー……言いそうな顔してるわ」
- 193 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
22:08:48.46 ID:6cFYfDVq0
( ^ω^)「でもよく無事で…」
(;'A`)「いてて……無茶するなぁ……って、なんでここ、こんなにビショビショなんだ?」
(;凸)(…よく怪我せんかったな)
( 凸)「しかしまあ、無事っても何度か死に掛けたが…」
(*゚ω゚)「って……え、えええ!?
ツン!? ツンじゃないかお!!」
ξ - )ξ「……」ピク
(*^ω^)「よかった、ツンも無事だったの…」
::ξ - )ξ::「……………」
(;^ω^)「って、あれ……ツン?」
_,
ξ゚听)ξ「……貴様……今、我らの事は知らされていないと言ったな?」
- 197 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
22:10:46.05 ID:6cFYfDVq0
(;^ω^)「お? そうだけど、それが……?」
ξ#゚ー゚)ξ「……なら何だその態度は、何故私を疑おうとしない……?」
(;^ω^)「なんでって……だって、こうして一緒に居るから…」
ξ#゚听)ξ「だとしても、私は貴様の敵だぞ!?
なら、まず他に言うべき言葉があるだろう!!」
(;^ω^)「敵……? いや、でも……休戦って」
ξ#゚听)ξ「一時、と言ったぞ、それに次に会った時には決着をつけるとも言った筈だ」
(;;^ω^)「……だったかお? で、でも、やっぱり助けられたし…その、
そ、そうだ、あの時のお礼だってまだでした、ありが」
ξ#゚ー゚)ξ「会って早々仲間気分とはな……私は……貴様のそういう所が気に食わん」
(;´ω`)「ツン……なんでそんな」
ξ#゚听)ξ「ええい、馴れ馴れしく呼ぶな!」
- 200 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
22:13:16.57 ID:6cFYfDVq0
ξ#゚ー゚)ξ「言っておくが…妙な勘違いをするなよ、貴様との決着はいずれ必ずつけ……」
ξ;-听)ξ「ッ……」
(;^ω^)「…? もしかして、その足、痛むのかお?」
ξ#゚听)ξ「何を馬鹿な、これしきの傷…!」
言って、ツンは地団駄を踏むように、数度地面を蹴る。
すると案の定、緩んだ神経はダイレクトに激痛を走らせ、
ツンは全身の毛を逆立て、涙目で声にならない悲鳴を上げた。
ξli Д )ξ「――――――ッッ!!!!」
(;゚ω゚)「ちょ、ごめんだお! ほんと変な事言った!
だからやめて!!」
::ξ#;听)ξ::「ち、近寄るな!! 私に触るな!!」
<_フ;゚ー゚)フ(……?…? なあ、なんで大将はあんなに怒り気味なんだ?
- 204 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
22:16:56.76 ID:6cFYfDVq0
( 凸)(フレンドリーなのが嫌とか?
<_プд゚)フ(えー? そしたら俺らどうなっちゃうのさ?
_、_
( ,_ノ` )(あー……そりゃまあ、あれだろ?ライバルだと思ってたから
<_プー゚)フ(なーる、殺伐とした再会がしたかったのにって?
<_プ∀゚)フ「つまり片思いだってと?
ワ、ワロ、ワロスwwwwwww」
(;凸)「しーっ! 声がでかい!!」
その時、彼らの合間を風切音が通り過ぎた。
ξ#゚ー゚)ξ「何か言ったか?」
<_フ;゚ー゚)フ「何も申しておりません!
サー!!」
- 206 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
22:19:39.95 ID:6cFYfDVq0
ξ--)ξ「……ふん、まあいい、それより前を見ろ」
(;^ω^)「お? …うわ……」
橋の先から、人の群れが押し寄せてくる。
だが、不思議とその歩みは遅く見えた。
(;^ω^)「? なんか、警戒してるのかお?」
<_プー゚)フ「ああ、ここは今、接続封じのバリアが張ってあるからな」
(;^ω^)「なにそれすげぇお!?」
_、_
( ,_ノ` )「いや……まあ、要は珠を設置してあるだけだがな」
彼らが居る場所には、複数の珠がそこかしこに仕込まれている。
ちなみに、接続の種類は水である。
<_プー゚)フ「水ってのはうまく使えば最高の防御手段になる…
誰かさんのおかげで、それを知れたからな」
- 208 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
22:22:43.22 ID:6cFYfDVq0
ξ゚听)ξ「と言っても……数人がかりでやっと、と言った所だがな」
(;'A`)「俺手伝いますよ…!」
ξ゚听)ξ「そうしてくれ」
( ^ω;)「……うう、でも本当に…また会えてうれしいですお」
_、_
( ,_ノ` )「まあ、お前のおかげさまでな」
(;^ω^)「え、僕の…?」
_、_
( ,_ノ` )「ああ、お前がこっちの親切と好意を裏切ってくれたおかげさ」
(;^ω^)「……ぁー」
<_プー゚)フ「……ま、本当にあの戦いに介入してくれちゃったおかげで、
結局はどっちも疲弊して、普通に降伏しろって話になったもんだから、
あれ以上の争いが起こることなく決着したんだよねぇ」
- 211 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
22:25:39.26 ID:6cFYfDVq0
( ^ω^)「……お、って事は……日陽の国自体は…?」
<_プー゚)フ「ああ、徴兵されて人不足ってのを除けば、平和そのものさ、
……お前が世話になったっていう、あの院もな」
( ^ω^)「!」
_、_
( ,_ノ` )「けどまあ……うちの元大将だけは、無事とは言い難いがな」
(;^ω^)「………今は?」
<_プー゚)フ「わかんねぇ、ほら、向こうじゃ悲劇の管理者扱いだったし、
基本的に俺らとは待遇が違うからなぁ、どうなってんのかさっぱりさ」
(;^ω^)「ですかお……」
(;^ω^)「……? あれ、ていうことは、日陽の人たちもまだ、敵のまま…?」
そんなブーンの問いかけに対して、誰もが顔を伏せた。
しばしの沈黙が、そのまま答えを表していた。
- 213 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
22:28:45.08 ID:6cFYfDVq0
_、_
( ,_ノ` )「俺たちは、裏切り者だ」
耐えかねたブーンは何かを問おうと口を開く、だが、それを遮る声があった。
_、_
( ,_ノ` )「んで、敵対する以上、相手が誰であろうと容赦はしねぇさ…なぁ、大将?」
ξ--)ξ「当然だ、確固たる意思の下にて、自身が決めた事、
如何なる怨鎖や確執が生じるとしても、曲がるつもりは無い」
(;^ω^)「…でも、渋沢さん達がここに居るのは、本当のことを知ってるからだお…?
なら、皆がそれを、真実を知ればまた同じように」
理解はしていても、納得はできない、と言わんばかりに、
ブーンは俯き加減に、呟くように言葉を繋げた。
ξ--)ξ「違うな」
だがそんな言葉は、凛とした否定の声によって途切れてしまう。
- 215 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
22:31:48.89 ID:6cFYfDVq0
ξ゚听)ξ「個人の意思による行動である以上、そこに他を含めようと言うのがおこがましい、
……それに真実がどうあれ、今在る事実から反逆した者の声に平然と応えられる輩は信用できん」
ξ--)ξ「信用できるとすれば、芯を持ち、自らの意志で動ける生きた人間だけだ、
だがしかし、生きた人間ならば逆賊の声などに耳を傾けはしない、
……それ故に、如何を問う事こそ愚の骨頂」
( ω )「……ダケド」
ξ--)ξ「……」
ξ゚听)ξ「更に言えば、どのような立場、いかなる条件下であろうと私怨は生まれる、
ならば真に畏れるべきは、自らの思想理想が半ばに果てる事と知るべきだ」
ξ゚ -゚)ξ「…少なくとも、我らに敵対する人間は、それを理解しているのだからな」
( ^ω^)「……理想…」
言葉に反応したのか、ブーンはふと顔を上げる。
そしてしばし考えるような素振りを見せ、やがて小さく頷いた。
_、_
( ,_ノ` )「おーし、んじゃ腹ぁ決まったな?」
<_プー゚)フ「そろそろ向こうも本気出してくるぜ?
どうすんだい?」
ξ゚ー゚)ξ「ふん……管理者が三人も揃っているのだ、なら、決まっているだろう?」
<_プー゚)フ「はいはい予定通りの強行突破ね」
- 217 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
22:34:33.19 ID:6cFYfDVq0
……。
こうして、ブーン達の進撃は始まった。
当初こそ、何があろうと立ち止まることなく、先を目指せと考えていたが、
三つもの神具の力は、もはや彼らを足止めをする事さえ適わない。
正確無比に放たれる飛刃が道を示し、凛とした声が彼らの士気を更に高め。
接続を行使しても防ぎようが無い蒼炎は、立ちはだかる物全てを燃やして道を造り。
風を纏った白銀の剣使いは、この戦場で誰よりも速く、誰よりも先にその道を駆けた。
だが、それもついに綻びが見え始める。
ξ;-听)ξ「……ッ」
(;凸)「ツン様、やはりその足では…」
ξ;゚听)ξ「わかっている……そうだな、もういいだろう……お前達は先へ行け」
- 220 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
22:37:34.42 ID:6cFYfDVq0
(;'A`)「え!?」
<_フ;゚ー゚)フ「おいおい、何諦めてんだ!?
あんたらしくない!!」
ξ;゚听)ξ「馬鹿、そうじゃない、お前たちは私と残るんだ、
そしてこの先へ行くのは……太陽、貴様と、ドクオの二人だ」
(;^ω^)「…? ツン?」
_、_
( ,_ノ` )「一気に駆け抜けてきたのはいいが、後ろの警戒を怠るなって話さ」
<_プー゚)フ「ああ、そういう話ね……」
ξ--)ξ「恐らくもうじき体勢を立て直し、こちらへ戻ってくるだろう、
我らはそれを食い止める、だからその間に、お前たち二人は奴を…ロマネスクを討て」
(;^ω^)「だけどツン…やっぱり怪我が」
ξ゚听)ξ「……ああ、口惜しいが、これでは管理者相手にすれば足手まといになりかねん、
だからこそ、私はここで足止め役をしようと言っている」
ξ゚听)ξ「迷うな、行け、そして奴の首を以って、この戦争を終結させろ」
- 223 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
22:40:34.24 ID:6cFYfDVq0
何かを探すような叫び声が、後方にて響く。
そして前方からは、警戒する呼び声。
( ω )「……じゃあ、最初から、そのつもりで………」
(;'A`)「……ブーン」
<_プー゚)フ「いやいやwwww驚き合戦に一般ピープルの俺らが最初から混ざるわけねえだろwwwwww」
(;^ω^)「ああ……納得した」
<_プー゚)フ「…おい」
( 凸)「でも、流石は悪名高い破壊の剣だよなぁ……ここまで一気に来れたし」
(;'A`)「あ、悪名……?」
( 凸)「正直、お前が居れば負ける気がしねーわwwww」
(;'A`)「はあ……」
- 226 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
22:43:38.35 ID:6cFYfDVq0
( 凸)「それに、我らが太陽の剣、もう見違えるくらい強くなってまあ」
_、_
( ,_ノ` )「これであの片目傷野郎を倒したら、世界最強の剣使いって呼んでやるよ」
ξ#゚听)ξ「何だと……?」
(;^ω^)「えと…それは、どうかと…」
前後の声は、どんどん近づいている。
のんびりしている暇はもう無い。
('A`)「………行こう、ブーン」
( ^ω^)「……把握、それじゃあ…」
結構な窮地とは思えないノリで、誰もが二人を後押しする。
まるで歓声のように二人へと声援を送る。
<_プー゚)フ「勝てよーい」
_、_
( ,_ノ` )「死ぬなよ」
( 凸)「「がんばれよーーー!」」
ξ゚ー゚)ξ「…また会おう」
- 228 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
22:46:47.32 ID:6cFYfDVq0
それを受けて、ドクオとブーンは顔を見合わせ、力強く頷きあうと、
返事を言葉にすることなく、勢いよく走り始めた。
そして風が吹く。
駆ける背を風が押して、足を速めていく。
………。
正面に、再び人の群れが現れた。
( ^ω^)「……ドクオ、こっからは」
('A`)「ああ、一人だって通さない…!」
ここに来て、考えは一つ。
あれをこの先へ通してしまえば、後ろで挟み撃ちになってしまう。
だから、ここからは全てを蹴散らして進む必要がある。
- 230 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
22:49:25.94 ID:6cFYfDVq0
残った彼らがそれを望むかどうかはともかく、もう決めていた。
('A`)「それに…」
( ^ω^)「?」
(;'A`)「この剣の、何だろう、もうちょっとで何かが見えそうなんだ……」
この炎が、自分の心、あるいは精神状態に合わせている事はわかる。
だけどそれだけでは無いと思っていた。
まず燃える赤い炎。
接続不能の青い炎。
そして輝く金の炎。
これらも気にはなるが、おおよその見当はついている。
恐らくは、接続が不可能なのでは無く、難しいのだ。
水の接続が、情報量が多く、あまりに使い勝手が悪い為に最弱とよばれたように。
単純な熱量が膨大になったぶん、扱いが難しくなっている。
もしもこの考えが正しいとしたら、最大の違和感の原因もわかる気がした。
実際、以前から使用していて、それを思い返せばおかしい点も在る、だから、
この神具の能力とは、本当は―――。
- 233 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
22:51:45.01 ID:6cFYfDVq0
( ^ω^)「……僕もちょっと不安な事があったんだお」
('A`)「?」
( ^ω^)「……実は」
瀬川が居ない、という事。
それに対して、戦う前までは、怯えるほどに不安を覚えていた筈だった。
だが、いざ戦いが始まれば、自分でも驚くほどに、手足が軽い、身体が動く。
そしてそれ以上に、一つの感覚に後から気付き、寒気がした。
僕は……人を斬る事に、高揚感を覚えていたんだ。
……。
- 245 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
23:20:39.88 ID:6cFYfDVq0
沢山の屍を乗り越えて、彼らはついに、その場所へと辿りつく。
そこで待っていたのは、ドクオの思い描いていた人物とは、また違う男だった。
(;^ω^)「……? あれが、ロマネスク…?」
(;'A`)「……あれ?」
( ・ωФ)「………」
男は寡黙で、二人の姿を見ても何も反応せず。
その周囲の人間たちが殺されても、表情の一つも変えない。
だが、手には確かに、いつか見た神具、グングニルと呼ばれた槍が握られている。
と。
( ・ωФ)「……!」
男が動いた、やや離れた位置から、およそ何の感情の無い瞳を向ける。
そして、手にした神具を振りかざすと、甲高い音が響き始めた。
- 249 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
23:23:09.24 ID:6cFYfDVq0
(;^ω^)「音…?」
(;'A`)「ブーン、来るぞ…!」
二人は揃って身構えた、ショボンに聞かされた事が正しければ。
あの神具は、絶対に避けられない槍。ではなく。
絶対に避けてはいけない槍、なのだと言う。
細身に、刃も小さく、確かに殺傷力はあまり感じられない、
しかしあの神具は音を操る、唸り響く槍という名は、そこから来るのだろう。
所謂、ガイル。
……訂正、ソニックブームだ。
特にそれが最大の効果を発するのは、恐らく通り過ぎた時。
もし下手に避けてしまえば、その音波と、衝撃波をまともに喰らう事になる。
だからそれを防ぐには。
(`・ω・´)(さっき見せたように、君らがひっつけばいいんだよ)
- 251 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
23:29:08.89 ID:6cFYfDVq0
(#^ω^)「しゃ、ドクオ! 行くおーーーーー!!」
(#'A`)「おう!!」
話は単純明快。
一度発生してしまったエネルギーは防ぎ様が無い。
止めるためには。
それ以上のエネルギーを持ってして、吹き飛ばすしかないのだ。
(#^ω^)「エアロバリア…チャージ!」
(#'A`)「……こっちはいつでも!」
男が、槍をこちらへ向け、腕をふりしぼる。
ブーンは風を巻き上げ、ドクオは剣を赤から青へ、
そして、青から、白金の光へ。
(;^ω^)「うおっ、まぶしっ!」
- 253 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
23:32:26.30 ID:6cFYfDVq0
(;'∀`)「……やっぱり、そうか、そうなんだ…!」
(;^ω^)「な、なんか危なそうな匂いが……」
(;'∀`)「ブーン、防御、よろしく……」
(;^ω^)「うへぇ……」
悪態吐く間に、ロマネスクは槍を放つ。
大気の弾ける音が一度、大きく鳴り。
低空を翔ける跡に、半円のクレーターを残す。
転じて。
('A`)(そうだ、今までも……炎は思ったように燃えていた)
そして心に応えて火力を上げる。
魔法のようだと、思った。
- 256 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
23:35:31.55 ID:6cFYfDVq0
- 時には、遠くに伸びて、その場に残す事もできた。
使い慣れていく果てに、気付けば炎を畏れなくなった。
これが当然なのだと、そう当たり前のように思うようになった。
だからもう、この心も、炎も、揺らがない。
だから…もしかして、と。
この剣の本質は、炎を生み出す剣では無く。
炎を、操る剣なのではないか、と――――。
- 257 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
23:42:16.55 ID:6cFYfDVq0
- ('A`)(……行くぞバカ剣)
不思議と、発光する輝きは熱ばかりか、眩しさすらも感じない。
揺ぎ無い意思と、揺ぎ無い心が、炎すらも真っ直ぐに象る。
結果として、まさに完璧な形での光の剣がここに。
と、ふと気付けば、剣から溢れた光が、球状になって目の前に浮かんでいた。
(#'A`)「全てを滅する、光と成れ」
振り上げ。
(#'A`)「ロストフォン―――――ドライブ!!」
浮かぶ球体に向けて、剣を落とす。
と、放たれたのは、巨大な光線。
それ以外に例えようの無い、身の丈よりも大きな光の塊であった。
- 262 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
23:51:51.49 ID:6cFYfDVq0
図太い光線と、地を抉る衝撃が、両者の宙域でぶつかり合う。
そこに透明な壁が存在するように、見事なまでに半分弧。
だが、拮抗はそう長いものでは無かった。
光は線状に、やがて消え入り。
槍は宙を回りながら、持ち主の下へと返っていく。
しかし、何を確認するよりも先に、二人は飛び出していた。
( ・ωФ)「…!」
(#^ω^)「……遅せぇお!!」
まず、ブーンが斬りかかった。
男は長い柄をまわし、それを受けると、柄を蹴って弾く。
遅れて、ドクオが更に横から、男は弾いた反動で槍を向ける。
触れ合った光の剣と、槍の長柄。
ブーンはそれを見て軽い悲鳴をあげた。
だが爆発は起きない、代わりに、触れた槍の柄が赤く染まる。
- 266 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/07(月)
23:57:41.03 ID:6cFYfDVq0
男は慌てて飛びのいた。
ブーンはそれを追う。
そこから早送り再生、斬り、弾き、突き、落とす。
ドクオは遠距離から、再び半円の光を放つ。
だが、男が音をかち鳴らした槍を振り回すと、光は容易くかき消された。
(#^ω^)「そうだお、それでいいんだお!!」
そしてそれが、男ができた最後の抵抗であった。
打ち消されるのを予想していたのか、ブーンは既に距離を詰めている。
男はろくな反応もできぬまま。
一閃の下に、その首を刎ねられた。
- 268 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/08(火)
00:02:28.79 ID:ZEfigHTn0
回転しながら、楕円を描いて落ちていく頭。
残った体は、奇妙に揺れながら、痙攣を繰り返し、
ビクリと跳ねるたびに、血が勢いよく噴出した。
横にかざした剣から、血が滴り落ちる。
何故かブーンは、奇妙な頭痛を感じた。
( ω )「……?」
ぐらり、と視界が揺れる。
だけど、これで終わり。
約束は果たした、これで、戦いは終わるのだと顔を上げた先に。
( ФωФ)
その男は、立っていた。
- 269 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/08(火)
00:04:15.23 ID:ZEfigHTn0
(li'A`)「そんな……馬鹿な……」
(;゚ω゚)「な、何で…?」
思わず、付近に転がる死体を見比べてしまう。
( ФωФ)「む? 何を驚いているのだ?」
その声は、威圧するでもなく、馬鹿にした物でもなく、
ただ、心からの疑問を問いかけるように放たれた。
( ФωФ)「おお、そうか! 神である我に再び出会えた事がそんなに光栄か!」
たった今、倒したはずの管理者、ロマネスクと瓜二つの姿をした男であった。
男は微かに笑みを浮かべながら、片手を広げ、ゆっくりと近づいていく。
- 270 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/08(火)
00:05:53.47 ID:ZEfigHTn0
その手には、身の丈よりも大きな、無骨なまでの金属の塊が握られている。
( ФωФ)「さあ、担い手よ、我が為に尽くせる事を歓喜し、
そしてその鍵によって、この……鍵を開くのだ」
(;'A`)「鍵…? それにエアって…」
( ФωФ)「知らぬのか? 災いの杖レーヴァテイン、その真なる用途は開放、
同じ神具でさえ、この世から消し去ってしまう究極の鍵」
( ФωФ)「さあ見せてみよ、眩き光を」
( ФωФ)「そして示せ、我が道を」
図太い鉄の棍棒を、男は軽々と振り回し、ドクオへと向けた。
しかし、あまりの事に二人は動けず、ただ警戒するばかり。
すると、二人目のロマネスクは口元を歪め。
( ФωФ)「ふむ、それとも、こう言えば、お前はその気になるのか?」
(;'A`)「…?」
- 271 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/08(火)
00:08:11.95 ID:ZEfigHTn0
( ФωФ)「まだ幼いモララーという子供を攫い、管理者に仕立て上げ、
そして、彼奴を裏で動かし、VIPを崩壊に導いたのは、この我であると」
( A )「…………は?」
( ФωФ)「そうそう、本当に、お前たちはよく働いてくれたぞ、褒めてやろう、
神として、戯れに試練を与え続けたが……よくぞここまで到達した」
(; A )「…………何、言って…」
(; ω)(こいつ……は…?)
(;゚ω゚)(……瀬川? え!? 瀬川かお!!??)
(;'A`)「何、言ってんだ、お前…VIP国のって…」
( ФωФ)「何? ああ、民を皆殺しにした事か?
気にするでない、あれはほんの施しだ、
ああでもしなければ、お前たちはすぐに見つかっていただろう?
流石に、何も始まる前に終わっては、こちらとしても詰まらんからな」
あの時は、VIP側も、神教側も、それぞれ何者かの介入があった。
そして、現に神教側はそれを警戒したからこそ、神具の捜索に遅れを取った。
でなければ、ジョルジュ達は早々に発見されていたのだから。
- 272 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/08(火)
00:10:26.67 ID:ZEfigHTn0
そう、ロマネスクは続ける。
ドクオはしばし、呆然とその言葉を聴いていたが。
( ФωФ)「それと、安心するが良い、戦いが始まるより前にVIP国を出た民共も、
我らが一人残らず始末しておいたからな」
(; A )「………」
( ФωФ)「当然だ、お前たちに関する事が、いつどこに漏れるかもわからんからな」
その言葉で、ドクオは気付いてしまった。
口にはしなかったが、以前よりおかしいとは思っていたから。
確かにあの時、VIP国から沢山の人が逃げ出していた。
なのに、その亡命したであろう、VIPの人間の噂は、
これまでの旅の最中、一度も耳にする事は無かったのだ。
その、理由が。
- 276 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/08(火)
00:12:46.30 ID:ZEfigHTn0
(# A )「お前が……やったのか…」
ドクオが前に出る、その手にある剣は早くも輝きを放つ。
(;^ω^)「ドクオ、駄目だお!!」
(#'A`)「大丈夫……いいから、ブーンは離れて…こいつは、こいつだけは……!」
(#'A`)「俺と、この剣が討つんだ!!」
叫び、レーヴァテインは眩く光を放つ。
だが既に扱いの要領を得ているのか、ドクオ自身を焼くことはなかった。
それを見て、ブーンは一歩下がった、確かにこれならと、そう思ったからだ。
(; ω)(やめろ、おい内藤、止めろ!!
あれは…!)
(;^ω^)(……で、でも…ていうか瀬川?
いつから起きてたんだお…?)
(; ω)(馬鹿! ならせめてお前も混ざれ!
何してるんだ!!)
- 277 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/08(火)
00:15:32.16 ID:ZEfigHTn0
(#'A`)「行くぞ!!」
( ФωФ)「来るがよい」
ドクオは剣を構え、ロマネスクへと向かって駆ける。
あの神具、グングニルすらも焼きかけた、今のこの剣ならばと。
距離が詰まり。
ドクオは光の剣を振りかざす。ロマネスクは動かない。
続けて、薙ぎ払いの一閃。ロマネスクは鉄塊で受け止める姿勢。
次いで衝突。
爆発はしない、レーヴァテインはより輝きを増し、
鉄塊と接触した部位を赤熱させながら、沈み込んでいく。
そして、鉄塊に大きな亀裂が走る。
同時に、ありえない何かが見えた。
それを見て笑ったのは、ロマネスクの方であった。
( ФωФ)「今、万の時を越え、鍵は開かれた……」
- 280 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/08(火)
00:17:55.22 ID:ZEfigHTn0
(;'A`)(なんだ…今何か…!?)
鉄塊に走るひび割れは、すぐに至る所へ広がっていく。
そしてその度に景色が歪む。
それも揺らぐ形ではなく、線だ。
何も無い空間に線があって、その上下の空間がずれている。
(*ФωФ)「これは……おお、素晴らしい……伝え通りだ、
これが、割断の線……これが、全ての空間を侵食し、断絶する究極の神具」
(;'A`)「……ッ!!」
何か、得体の知れない悪寒が背筋を凍らせた。
このままでは、何か良くない事が起きると、否応なしに感じさせる。
ドクオは、両腕に更なる力を込めた。
だが、剣はそれ以上動かない。
そうしている間にも、亀裂が増えていく。
鉄塊に、そして空間にまで及んでいた黒い線が、やがて。
( ФωФ)「さあ目覚めよ、我が真なる力、侵断の剣――――エア」
- 281 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/08(火)
00:20:30.67 ID:ZEfigHTn0
その言葉に反応したかの様に、外部を覆っていた鉄塊が一斉に剥がれ落ちる。
現れたのは、大剣。
刀身には幾つもの黒い線が走り。
切っ先は大きく膨らみ、返しのような刃が見えた。
だが何より異様なのは、刀身からはみ出すように蠢く黒線。
( ФωФ)「うむ、大儀であったぞ、やはり人は試練の果てに強きを得る、
お前は我が神の試練を乗り越え、鍵の担い手となった、
そしてついに我が願いを叶えた……誇りに思え」
(#'A`)「ふ、ふざけ…!!」
恍惚の目で、自らの手にある剣を眺めるロマネスク。
ドクオは激情のままに、その姿へ斬りかかる。
だが。
- 283 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/08(火)
00:23:09.86 ID:ZEfigHTn0
(;'A`)「!?」
剣を振り上げた瞬間、ロマネスクの姿が消え、
ふと気付けば、やや離れた位置でドクオを見据えていた。
もっとも、消えたと言うのは、実際には間違いだ。
見えてはいた、見えてはいたが、それでもドクオは反応できなかった。
それほどに。
( ФωФ)「無礼な」
( ФωФ)「だが、そうだな…確かに興味深い……世界を断つ剣と、世界を焼く剣…」
「果たして」
(;'A`)「っ……!?」
言葉も途中に、ロマネスクの姿がその場で掻き消え、
代わりにドクオは、真横から響く声を知る。
それほどまでに、ロマネスクの速さは、人智を超えていた。
- 290 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/08(火)
00:36:13.96 ID:ZEfigHTn0
( ФωФ)「どちらが上か」
ロマネスクはやはり穏やかな声色で、何ともなしに告げると、
手にした神具、エアをゆっくりと後ろへと向け、停止。
黒い線は、やはりその跡をなぞるように走っては、ずれを造る。
(#'A`)「この…!!」
(;゚ω゚ω)「『や、やめろ!! ドクオ、そいつから離れろ!!!』」
( ФωФ)「ふ…」
まるでドクオが反応するのを待っていたように、ロマネスクは目を細め、
次の瞬間、大振りだが、目にも留まらぬ速度で大剣を薙ぎ払う。
ドクオはそれよりも早く、ロマネスクへと斬りかかっていた、
にも関わらず、互いの剣は、互いの中間で衝突。
同時に二人を中心とした位置から衝撃波が生まれ、周囲の大地が削られていく。
咄嗟に近づこうとしていたブーンも、その余波で吹き飛ばされてしまう。
- 291 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/08(火)
00:39:01.97 ID:ZEfigHTn0
そして、二人の放った剣戟は、その場で留まったまま、
金に輝く光の中を、多重の黒線が飛び交う、異様な光景を作っていた。
(#'A`)「ぐっ……う、ううう…!!」
( ФωФ)「む…」
余波は更に続く。
大地には亀裂が生まれ、衝撃が周囲に存在を許さない。
……だが、傍目に見るそれは、決して拮抗してはいなかった。
明らかに限界が近いドクオに対し。
ロマネスクは未だ片手で、見定めるように剣を見つめている。
そして、ふと、笑みを消した。
( ФωФ)「やはり……この力、放置はできんな」
(;'A`)「っっっ!!!!」
- 295 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/08(火)
00:43:13.52 ID:ZEfigHTn0
( ФωФ)「神の持つ剣に対抗し得る存在は、もはや余分」
ロマネスクが、空いていた片手を添える。
( ФωФ)「嗚呼、長きに渡る役目、大儀であった、光栄に思うがよい」
ずい、と突き出し。
同時に大剣が放つ、黒い線が広がっていく。
そして、それはついにレーヴァテインの光さえも包む。
まるで縛るように、一箇所を、黒線が。
( ФωФ)「お前の働きによって、今、我は完全なる神となる!!」
(;゚A゚)「!!!」
触れ合っていた刀身に、重なった。
- 297 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/08(火)
00:45:41.88 ID:ZEfigHTn0
そして、ドクオの持つ剣、レーヴァテインは。
その目の前で。
音も無く。
その、輝く刀身を断たれた。
- 298 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/08(火)
00:47:51.35 ID:ZEfigHTn0
同時にそれは、一つの希望が絶たれた事を示し。
夜が訪れるように、光が消える。
( A )「―――――――」
そんな光景を、ドクオはただ見つめていた。
未だ握ったままの剣と、折れてしまった刀身から光が消えていく様を。
自らへと迫る刃さえ気に留めず。
ただ、消えいく光を見つめていた。
- 302 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/08(火)
00:51:15.80 ID:ZEfigHTn0
―――。
( ФωФ)「さらばだ、大恩有る我が友よ」
(;゚ω゚)「!!!!!!!!!」
そしてブーンの目に飛び込んできたのは。
ドクオの身体が浮かびあがり、先の衝撃波にまきこまれたその瞬間。
離れていても分かるほどに、胴体から大量の血を噴出させて、吹き飛ぶ姿。
( ω )「う」
とにかく考えられるのは、あの場所へ行くことだった。
だが、衝突から開放された衝撃は先よりも強く、足が前に出ない。
(; ω )「――――あ」
そんな圧力に押され、ドクオの身体もより遠くへ向かう。
やめろ、まて、だめだ、と瞬間的に心が叫ぶ。
何故なら、その先にあるのは闇のような亀裂。
下が見えない程に巨大な崖だった。
- 303 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/08(火)
00:53:30.13 ID:ZEfigHTn0
(#゚ω゚)「ドクオ!!!ドクオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」
ブーンは何度も転等しかけながら走った。
だが、無常にもその姿は、吸い込まれるように落下していく。
手を伸ばした、だが、それよりもずっと先で、
伸ばした手の中指の間を、小さな姿がすり抜けていく。
そしてついに地面にさえ触れることなく、その身は亀裂の底をめざし、
静かに、あっけなく沈み、その姿はどこまでも、落ちていった。
( ゚ω゚)「お……?」
同時にブーンはその場で膝をつく。
力なく肩を落とし、呆然とそれを眺めていた。
- 306 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/08(火)
00:56:03.11 ID:ZEfigHTn0
( ω )「う、うそだ……」
肩を震わせ、首を横へと小刻みに振るい。
呼吸を荒くしていき。
そして。
(# ω )「うそだ、嘘だああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
絶叫。
(#゚ω゚)「そんな筈ない!!?
こんなの嘘だ!!!嘘だ!嘘だ嘘だ嘘だあ!!!!!!」
(# ω )「ぅ、うぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
怒りとも絶望とも取れる叫びを上げながら、ブーンは涙を流す。
片目から、それも、透明な水ではなく赤い、血の涙だった。
その原因は、額から頬にかけて浮かぶ、大きな蚯蚓腫れ。
聖痕のように赤く浮かび上がった筋から、血が滴る。
- 309 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/08(火)
00:58:26.01 ID:ZEfigHTn0
(# ω )「う、ううう………!!!!!!」
( ФωФ)「神とは、何か、知っているか?
まだ、ナイトウホライゾンである者よ」
それを見据えて、ロマネスクは何処か嬉しそうに語る。
( #゚ωФ)「…お、お前…!!!そこ動くなよ!
殺す、殺してやる!!!!!」
ブーンはすぐさま立ち上がり、気が触れそうな程の狂気に身を委ね、
その身にかつてない程の力が沸くのを感じつつ、地を蹴った。
怒りが溢れる、同時に、凶悪なまでの剣との一体感。
自分では無い意思が、思考が、一つに混ざっていく。
( ФωФ)「神と語れる存在は、総じて人の姿をしている、それは何故か、
それは、元が人間であるからだ、そう、神とは人間なのだ」
( #゚ωФ)「あああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
( ФωФ)「ならば、何が人を神とたらしめるのか、それこそが神具だ、
神具を扱うものは人を越え、神の域にまで到達させる、だが中には、
人を、神と成す程の力が存在する、お前もよく知っているのではないか?」
- 312 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/08(火)
01:01:05.30 ID:ZEfigHTn0
相対する二人の距離が近づく。
その姿は、どこか、鏡に映したように。
( ФωФ)「そう、それが、今のお前の姿こそが――――究極の神化」
( ゚ωФ)「―――――――――――――――――!!!!!!!!」
その時、ロマネスクへと向かっていた足が、徐々に勢いを弱めていく。
内藤だった人間の表情は、いつしか呆然とした物に変わっていた。
( ゚ωФ)「………………?」
( ФωФ)「だが、完全ではない…刃を失くし、不完全な神具による進化では、
こうなる事はわかっていた、わかっていたのだ」
それでも、何か目的があった事だけは覚えているのか。
彼は確かめるように、ロマネスクの下へと歩いていく。
- 313 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/08(火)
01:03:50.62 ID:ZEfigHTn0
( ФωФ)「なあ、は瀬川よ、もっとも……お前は我の事など覚えてはおるまいが」
これまで内藤ホライゾンは、幾度と無く、剣に宿る意思との疎通を行ってきた、
時には同調し、一体となる時もあった、だがそれを送受信する一つのシステムと見た場合、
送信と受信、そのどちらか、あるいは壊れていたとしたら。
( ゚ωФ)「……僕は…」
送信され続けた人格が、一つに混ざり合ったとしたら。
それはかつての言葉。
内藤ホライゾンの死、そのものではないか。
( ゚ωФ)「――――――誰だ?」
- 319 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/09/08(火)
01:07:08.92 ID:ZEfigHTn0
こうして。
( ФωФ)「教えてやろう、お前は我が半身、名は――――」
「ロマネスクだ」
世界はこの日、語り手を失くした。
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