4 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/06/29(月) 23:35:12.95 ID:7Q4DU1660


声「      」



呼びかけられてから、どれだけの間があっただろう。
実際には数瞬、だけど反応が遅れてしまったことに焦燥感を覚える。

一応、話そのものは聞こえていたので、ちゃんと返事はした。
だけど今の微妙な間で、不審に思われたりはしなかっただろうか、不安になる。


一つの懸念が頭の中でぐるぐる回り続け、どうしても目の前のことに集中できない。


知られたくない、知られてはいけない、何故かそんな気がしていた。

例えれば、幼いころに犯した過ちのように、怒られたくない、という感情にも似て、
しかし漠然とした、あやふやで形のない何かに、僕はとにかく怯えていた。




    言えない。

7 :     こんなの        :2009/06/29(月) 23:37:36.00 ID:7Q4DU1660
    言える訳ない。


僕は取り繕うことすら誤魔化し、必死になって隠そうとしていた。
そして、皆もあまり言及はしてこない、それとも、気付いていない振りをしているのだろうか。

優しさか、それとも、現状の混乱ゆえに保留なのか。

わからない、わからないけど、今思う最大の不安要素は。
あの、ヒートさんとの戦いの直後から、いくら話しかけても、どんなに強く念じても、
返事どころか、その存在すら全く感じなくなってしまった、剣に宿っていた人格、瀬川。


それから、もう一つ。






ねえ、僕は今、ちゃんと笑えているのかな。
9 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/06/29(月) 23:39:16.92 ID:7Q4DU1660


  【 第32会  「来るべき日の為に」 】



様々な装飾や、いくつもの壁画がかけられた壁。
なんとも、上位階級という言葉をそのまま現したような部屋だった。

あまりにも自分には場違いで落ち着かない、だけど、それ以上の気疲れというものがあって、
おそらく寝床と思わしきベッドにすぐさま身を預けると、ぼんやりと天井を眺めた。
染みや汚れはあるけど、それさえも気品の一部に思えてしまうのは、この厳かな空気のせいだろうか。


(  ω )「………瀬川」

返事はなく、ふと呟いた言葉のあとには、耳鳴りさえも感じる静寂だけが残る。
すらり抜き放った剣を見れば、刀身の輝きはさらに鈍くなり、銀色はより灰色に近くなった。


(  ω )「…………瀬川、答えてくれお」

聞きたいことは山ほど無い、たった一つだけだ、あれは何だと、それを口にしたいだけ。
なのに、返事をしてくれない、まるで消えてしまったかのように。
それが何よりも心細くて、どうしようもない喪失感が胸に穴を開けた。

10 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/06/29(月) 23:42:26.92 ID:7Q4DU1660

結局のところ、僕は誰よりも彼を頼りにしていた。こうなって、それをはっきりと自覚した。
互いの考えが直接つたわる分、文字どおり、心から通じ合っていたんだから、それも当然か。

そう長い付き合いではなかったけれど、その分、どの記憶もはっきりと覚えている。
苦楽を共にした、命に関わることだって一緒に乗り越えてきた。


……いや、瀬川が居たから、どうにかやってこれたんだ。

ああ、そうか、そうなんだ。僕は一人で強くなった気でいたけれど。
どうやらそれは、一人じゃないから、という群集意識から来るものだったらしい。

迷っても、恐れても、それでも戦ってこれたのだって、きっと……。
だから、この不安を解消するまではいかずとも、唯一この思いを吐露できる相手だった。

その瀬川が居ない。もしこのままだったら、僕はどうすればいいんだろう。


ここに来て、僕は初めて、戦うことへの、あるいは明日への恐怖を心から知った。
そんな不安が、多々あるはずの疑問や想いを薄れさせる。


12 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/06/29(月) 23:44:53.35 ID:7Q4DU1660

あの、鳥肌が立つような異形の幻影も。
砕かれた筈の剣が、その刀身を蘇らせていることも。

心のどこかで。それら全ての欠片が繋がって、一つの結論を出しかけている事でさえも。


「入るわよ」

その時、ドア越しに響く聞きなれた声、そしてノックの音が聞こえてきた。
僕は同時に寂しさも感じていたようで、訪れた誰かの存在に、少しだけ胸が軽くなるのを感じた。

ややあって、返事をするとドアが開かれ、これまた馴染みの顔が見える。
そこにはヒートさんも含め、皆居た。どうやら昼間の話のつづきをしに来たようだ。


(;^ω^)「…、どうしたんだお?」

ノパー゚)「うん、こっちの子がどうしてもって」

ζ(゚ー゚#ζ「お疲れのところすみませんブーン様…しかしながらこのままでは眠れません故に、ゆえに!」
 _,
(;゚∀゚)「そろそろいい加減落ち着けマイシスター」

从 -∀从「けどまあ、そんなわけだから、話つけとこうじぇ」

13 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/06/29(月) 23:46:42.04 ID:7Q4DU1660

とりあえず分かっているのは、ヒートさんの婚姻、および王の座については、僕次第らしい。
既にヒルト全土にわたって優勝者の宣言はされており、トーナメント自体も幕を閉じ、闘技場も役目を終えた。

そして、それがヒートさんの目的でもあった。

ζ(゚ー゚;ζ「で、では……本当に、表向きって事でよいのですか…?」

ノハ--)「そうだ」

ちなみに、内情についてを語る彼女は、あの穏やかなお姉さま雰囲気から打って変わり、ぴっと凛々しく。
更には正装なのだろうか、白地に赤のラインが走る、和服にも似た民族衣装を羽織っている。
その姿はまさに女王様、これには、さっきまで鼻息荒くしていたデレもしり込みしていた。


ノパ听)「先にも話した様に、これは建前で構わない、王が決まったと言う事実さえ在ればそれで良い、
    どちらにしても、統治などは我等が管轄だ、実際は誰であろうと構わないのだ」

从 ゚∀从「それで内藤に白羽の矢が立った、って訳かい」

ノパ听)「うむ、一目見て、只者ではないという事は分かっていた、そして様子見の果てに確信となり、
    共に過ごした中でその本質、そして大衆が願うであろう正義と、それに見合うだけの力を見た」



14 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/06/29(月) 23:49:10.34 ID:7Q4DU1660

それが闘技場について教えた理由、それゆえに全てを仕組んだ。
とは言え、流石に周りを納得させる事は必要であり、実際に力が必要だった。

そのために手っ取り早いのは、勝ち抜いて母者に勝つことだが、それは至難を極める。

というか、無理。

なので母者さんに勝てずとも、僕の実力を見せつけなければいけない。
つまりそれが最後のヒートさんとの戦いだった、そして、結果的には成功した。
僕にしてみれば暴走の結果だったが、逆にそのおかげで、充分な結果を見せられたはずだと言う。

ノパ听)「だから、貴方が気に病むことはない」

でも、あの時、僕はこの人を……。
そんな負い目がどうしてもあって、気付けば問いかけていた。


(;^ω^)「……でも、だからって、なんで僕?」


16 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/06/29(月) 23:51:39.14 ID:7Q4DU1660

言い分は理解はできるけど、自分で言うのも何だか、僕はぽっと沸いた相当な不審者だ。
何せ、よそからやってきた神具を操る管理者で、何が狙いか分かったものじゃない。

あの暴走にしたって、今は自分が自分で信じられないくらいなのだ。
しかし、ヒートさんはそんな問いに、迷うことなく口を開き。

ノパ听)「先に見定めたからだ、と言ったはずだが……まあ、そうだな、敢えて言うならば」

しばし溜め。

ノハ--)「王の権限はあらゆる事に適応される、そして、我が身も心も、王である貴方の物だ」

(;^ω^)「や、それは分かったけども…」


ノパー゚)「つまり内藤君が望んだことなら、例えどんな事でも、私はそれを決して拒むことはできない、
    欲望のままに、何をしても許される、その上で、貴方はどうする? 今夜にでも私を抱いてみる?」

从;゚∀从 ζ(゚Δ゚;ζ「!!」

(;゚ω゚)「ちょ、な、何をそんなどエロ、じゃない、どえらい事を…!」


17 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/06/29(月) 23:53:49.70 ID:7Q4DU1660

ノパー゚)「あら……それは魅力を感じないってこと? 私じゃ不満かしら?」

(*^ω^)「いやそんな、滅相もないですお」

ζ(゚ ゚#ζ

ちょっと前かがみに答えると、もの凄い勢いで悪寒を感じて、冷や汗が吹き出る。
ついでに血の気が垂直降下を始めたので、僕はよくある台詞をフル活用して否定した。

するとヒートさん、何だかその答えを見透かしていたとでも言わんばかりに微笑み。


ノパー゚)「だから、貴方なのよ」

どうにも信用なのか見下しているのか、判断に困ることを御言いになられる。
でもあまり悪い気もしなくて、僕はあいまいに返事した。

  _,
( ゚∀゚)「なめられてんなぁ、おい内藤、何ならちょっとリアルで舐め返したほうガッ!!」

そして、何かを言いかけたジョルジュさんが、頭から煙をもくもくさせながら倒れた。

何が起きたのか分からなかったけど、デレの表情にやたら影が落ちてて、言及をやめた。
ついでにハインが怯えた表情で固まっていた、僕はついぞ目をそらす。


19 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/06/29(月) 23:56:10.43 ID:7Q4DU1660

ノパ听)「無論、それだけではない」

そんな一連のドタバタも何のその、ヒートさんはまた凛々しくなって、話を続けた。
何だろう、実はこういう雰囲気にはちょっと弱いんだよね、何故なら僕は年上のほうが…。

その、あれだ。うん。


ノパ听)「昨今の世界情勢についても理解しているつもりだ、我がヒルトでも亡命者は数多く抱えている、
    ゆえに、今は体裁だけでも保たねばならない、もはや国内のゴタゴタを続けるわけにはいかないのだ」

(;^ω^)「あ、でもそれって、それこそ余計に問題なんじゃないのかお…?」

ちなみに、僕等の事情についても話してある、ここに来た目的やその素性などね。
だからそのカインドならぬキングの権限を持ったなら、やはり、それだけはお願いしたい所なのだ。


ノパ听)「だからこそ構わないのだ、我が国の蛮勇なる戦士たちが、試合と言う存在をただ失うことになれば、
    それは一種のストレスとなり、現在の平和も、人の活気さえも失われてしまうだろう」

ノパ听)「戦いの場は、我等にとって必要な事であり、臨むべき物……故に内藤よ、貴方はただ告げれば良い」



20 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/06/29(月) 23:58:10.89 ID:7Q4DU1660

そう言って。
ヒートさんは腰に下げた剣を抜き、高く、そして誇らしく掲げた。

ノパ听)「戦士よ武器を取れ! 培いし己が力、集いて揮え! 今こそ、真成る闘いの時であると!!」

よく響く声が、衝撃となって四肢を奮わせる。
僕はおもわず息を飲んだ、僕等はそろって圧倒されてしまう。

そしてそんな時、足元から声が聞こえてきた。



 _,
(メ゚∀゚)「……ほう、こっちも赤白のストライプか」

はっと何かに気付いたのか、ヒートさんが両手で膝上、つまりスカートの裾を押さえる。
やや遅れて、デレが付近にあった椅子でその後頭部を殴りつけ、床にめり込ませていた。



…………べ、別に、うらやましくなんか……っ。
22 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/06/30(火) 00:00:13.19 ID:4ahWLTpu0


そんなこんなで、本日の日程は終了しまして、各自解散、みな部屋を出て行った。
(ただし、一人はひきずられていたが)

本当はそっとしておいてとか思っていたけど、この騒がしさは少しだけ、胸の不安を和らげる。
げんきんな者だと苦笑しつつ、やはり剣に触れてしまう癖が出て、なんとも言えない気分になった。

静かな場所でため息を吐き、再びベッドに腰掛けると、すぐに疲れが沸いてくる、
そうして、けだるい手足を投げ出し横になると、僕はまどろみに沈んでいった。


幸い、あの幻覚が夢に出ることはなかった。





………。





 おかしいとは、思わなかった?



24 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/06/30(火) 00:03:30.03 ID:4ahWLTpu0

  こうまで多種に渡る神具の中で、そこに至る経緯はともかく、まったく同じ能力を秘めた物がある事をさ


  …まあ、それを言えばそれまでだけど


  じゃあもう一つ、君たちは神具についての文献を持っていたね
  なのに、なぜ君たちはあの剣についての情報を、全く持っていないのかな?



話し合いの末、部屋を出たジョルジュ達はその場で解散した。
しかし、一人その場にたたずみ、しばし扉の先に思いを馳せる者が居る。


( ゚∀゚)「……結局、頼っちまったなぁ」

まとまらない考えは頭の中を白くさせる、悔やんでいるのか、自嘲しているのか、
それさえ分からないまま、ジョルジュは一人、眉を寄せた。


26 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/06/30(火) 00:06:45.14 ID:4ahWLTpu0

実際、内藤はいたらぬ自分の尻拭いをしてくれた。
おかげで、ひとまず目的は果たせそうだし、文句はない。

けれど、それより頭の中を支配するのは、彼の人間が残した言葉だった。

あの時ろくな反論もできず、背中を向けて去っていく姿にさえ、何もできなかった。
だがもしあの言葉を信じるなら、このままでは本当に取り返しのつかない事になるかもしれない。

なら、自分がどうにかしなければ、それについてを皆に伝え、剣を奪うべきだ。


しかしこの考え自体、上手く生きられない自分が、華やかな結果に嫉妬しているだけなのでは、
あの言葉を言い訳にして、自分に都合のいいように現実の見方を変えているだけなのではないか。

程度の軽い尊敬と嫉妬は、この世で最も近しい感情の一つ。
それは容易く裏返り、または一つとして認識される。


ただでさえ確証の無い不安事であるに加え、伝えてきたのは敵である。

それを信じるべきか、仲間を信じるべきなのか。

ジョルジュは未だ、いや、この状況になって余計に、その判断をつけられずに居た。


27 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/06/30(火) 00:09:36.06 ID:4ahWLTpu0

…………。


翌日、いきなりだけど式典ってのに参加させられた。
つまりは王が決まったお祭りみたいな物だ。

城の展望から見える街並みには、雪景色のなかに早くも色鮮やかな飾り付けが目立つ。
そして行き交う人波も、早朝だと言うのにまったく途切れることなく、あっちへこっちへ。


(;^ω^)「……これは」

まだ王になるとか、そういうのは言ってないのに……。
何だか、既に逃げ場はなくなっている気がする。

いやまあ、どっちにしてもそれを認めないと、ここに来た意味がなくなっちゃんだけど。
それにしたって、どこが僕次第なのだろうとか、少しは待ってくれとか、悩みは多い。


もう少し落ち着く暇を、誰かプリーズ。

そう思っているそばから、実は今現在テラスでかくれんぼ中だった僕を見つけた鬼が、
「こんな所に居たんですか!」と叫び、強制着替部屋(リカチャンハウス)へと連行していく。


28 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/06/30(火) 00:12:22.62 ID:4ahWLTpu0

されるがままにしていると、黒白の生地に、金の装飾がされた重たい衣服に着替えさせられ、
通路で鉢合わせたハイン達から、指をさされての笑い者にされた。

ああ、ゲラゲラという単語はどうしてこうも便利なのか。

その後は、薄暗い中にろうそくの明かりがぼんやりと灯る、怪しい広間にやってきた。
よく見るとろうそくの光が何かに反射している、誰かのハゲ頭だった。

おかげで、この馬鹿みたいに広い広間に、これまた沢山の人が居るのがわかった。


ろうそくの光をいくつもの頭が反射して、綺麗な夜景みたいな光景になっているから分かる。
昔から謎だったんだけど、どうしてハゲって光を反射するんだろう、普通の皮膚はしないのに。


そう思っていると、一番奥に通された。

歩いて人垣の中央を歩くのは、中々息のつまる思いだった、すごい緊張感。
さらに最奥には、大きな祭壇を、天井にあけられた穴からのぞく光が照らし出していた。



29 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/06/30(火) 00:14:32.51 ID:4ahWLTpu0

余計に緊張が高まり、喉が鳴る。

あまりに静寂なおかげで、やたら大音量に感じる。

こうして聞かされた偉そうな人の難しい話を、名前を呼ばれた時だけ返事して、
あとは右から左へ聞き流し、うつらーっとしかけた所で、拍手が起こってびっくりした。

その後もいろいろとあったけど、とりあえず、着替えてばっかりだった。

してきた事はよく分からないし、そもそもこう行った場合に何をすべきなのか、
筆者も当然ながらそんな知識持ってないので、各自で脳内保管してほしいそうだ。


(;^ω^)「……そろそろ、疲れてきたお」

ノパー゚)「もうちょっとだから」

(;^ω^)「五飛、僕等はあと何回、もうちょっとを繰り返せばいいんだお……」

ちなみにその間に、婚姻の儀という魅惑的かつ逃げ出したい衝動を呼ぶものもあったけど、
誓いのキスみたいなのは無く、同じ杯の水を飲むだけだった、ああ、安心と落胆の味がする。


そして、肌寒くも快晴だった陽が落ちかけるころ、ようやく最後のお勤めの時間。



30 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/06/30(火) 00:17:15.16 ID:4ahWLTpu0

いくつもの階段を登り、へとへとになりながら辿り着いた先には、ジョルジュさん達が居た。
更にはヒートさんを筆頭に、母者さんや仮面の4人組も勢ぞろいしている。

と言っても、仮面の人たちも今は仮面をつけていない。
ただ気になったのは、赤い仮面、確かギャレンって人。

実は戦った時もそうだったんだけど、顔がでかい。
このサイズで、どうやって( 0M0)に収まっていたのか謎である。

ちなみに。


    /\___/ヽ   ヽ
   /    ::::::::::::::::\ つ
  . |  ,,-‐‐   ‐‐-、 .:::| わ
  |  、_(o)_,:  _(o)_, :::|ぁぁ
.   |    ::<      .::|あぁ
   \  /( [三] )ヽ ::/ああ
   /`ー‐--‐‐―´\ぁあ

僕が勝った時に仮面が外れてしまい、こんな風に叫んでいた。
32 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/06/30(火) 00:19:32.32 ID:4ahWLTpu0


    /\___/ヽ
   /''''''   '''''':::::::\
  . |(●),   、(●)、.:|
  |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
.   |   `-=ニ=- ' .:::::::|
   \  `ニニ´  .:::::/
   /`ー‐--‐‐―´\

でも、今はやたらキリッとしている。
あと中の人の名前は、コウセイ・アマノと言うらしい。

まあ余談である。



ふと耳を澄ますと、地鳴りのような震えと、大気が揺れるような痺れを覚えた。
奥に見えるのは、光が漏れる大きな大きなカーテンというか、幕というか。

なんとなく、この状況が何なのか、理解できた。


33 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/06/30(火) 00:22:27.68 ID:4ahWLTpu0

ノパ听)「皆、そろそろいいな」

 @@@
@#_、_@
 (  ノ`)「やれやれ……めんどくさいねぇ」


ζ(゚ー゚;ζ「うぅ……なんか、こっちがドキドキしてきますね」

从 ゚∀从「ああ、そうだな」

ζ(゚- ゚;ζ「すごく……嘘くさいです」

( ゚∀゚)「お? どうしたんだ内藤? なんで挙動不審じゃないんだ?」

(;^ω^)「オドオドしてるのがデフォみたいに言わんでくれお」

緊張する場面なんだろうけど、少し状況に慣れてきたのと、疲れて飽和状態だ。
おかげで、鼓動は響けど、さほど緊張はしていない。



34 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/06/30(火) 00:24:51.69 ID:4ahWLTpu0

やがてヒートさんが先導し、幕の方へと向かう。
厚くて何枚にも重なった幕が開かれ、最後にガラス張りの扉が開かれた。

差し込む光の先にて、まず見えたのは一面の空。

近づくに連れて広がり、次に見えたのは雪を載せた街並みの頭。


そして、地上を埋めつくす、人の群れ。


(;^ω^)「……!!」

隙間無く蠢くちいさな群衆は、家屋の屋根から橋の上やら木の上にまで見える。
それはもう、とんでもない数だった、流石に圧倒され、立ち止りそうになってしまう。

ノパ听)「立ち留まるな、進め」

その背を押され、僕はまた踏み出した。いくつもの歓声が重なっては、やまびこのように反響する。
更に後ろの壁からも跳ね返ってくるもんだから、あっちこっちから聞こえてくるようだ。

なんていうかもう、5,1チャンネルサラウンド、あるいは映画館のそれのよう。



35 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/06/30(火) 00:27:08.11 ID:4ahWLTpu0

おかげでジョルジュさんに言われた通り、結局、僕は挙動不審な行動をとることになった。

どうしていいのか分からず、というか変に動くのもいけない気がして、その場に体を固定して、
首だけをギギギ、とかすかに動かして周りを見回した。

すると、誰かが「答えてやれ」と言った。

手でも上げればいいのだろうか、しかし、体がちょっと言うことを聞きません。
音だって、肌では感じるけど耳に聞こえるのはどこか遠い。

ああ、果たしてこの歓声は、受け入れる声なのか、ブーイングなのか、あるいは両方なのか。



こうして、様々な不安を散りばめながら、当初の目的である王への謁見、
そして協力の願いを、どうにか無事に……無事か知らないけど、果たすことができたのであった。

37 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/06/30(火) 00:29:29.95 ID:4ahWLTpu0

しかし、その数日後。

 _,
(;゚∀゚)「……おい、それは間違いないのか? マジなのか?」

ノパ听)「事実だ、それも…一度や二度ではないと聞いている」

僕等は、ヒートから驚くべき事を聞かされた。
それはドクオ達が居る地、エッダが既に襲撃を受けているという話だった。


(;^ω^)「そんな、だってショボは平気だって…!」

ζ(゚Δ゚;ζ「そ、それで、どうなったんですか?」

ノパ听)「今のところ、それ以上の事は分かっていない、恐らくは失敗したという事だろうな」

ζ(゚ー゚;ζ「そ、そう……ですか?」

ノパ听)「ああ、それに恐らくはまだ脅迫の段階だろう」

(;^ω^)「脅迫って……まだ本気じゃないって事かお?」


38 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/06/30(火) 00:31:51.93 ID:4ahWLTpu0

ノパ听)「本気であると見せるため、と言うべきかもしれないし、あるいは……」

いきなり力で捻じ伏せるような事をすれば、どこかで反発を生む。
それは相手側の人数だけではなく、思想が多種に渡ることからも慎重になると言う。

だから今回のそれも、実際には内部分裂による物である可能性もあるそうだ。

けど、なら尚の事、こっちが慎重になっている場合じゃない。
何が起こるか分からないって事は、何があるか分からないって事だ。


……ん? なんか変だな。

とにかく、エッダに居る皆が心配だ、せめて連絡を取るか、それとも。

 _,
(;゚∀゚)「……どうやら、ここに留まってる訳にはいかねえみたいだな」

(;^ω^)「そうですお…急いで戻らないと!」

从;゚∀从「それはそうなんだが、内藤、お前は大丈夫なのか?」

(;゚ω゚)「大丈夫って何が……はっ!?」



39 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/06/30(火) 00:34:12.34 ID:4ahWLTpu0

そうだ、一番大事なことを忘れてた、ていうかまず考えるべきだった。
表向きとか言うから、すっかり失念していたけど、僕って今カテゴリーキング。

果たしてヒルトから出て行っても ノパ听)「その心配はいらない」 平気らしい。


(;^ω^)「え、いいのかお?」

ノパ听)「うむ、行って構わない」

从;゚∀从「いやいや! そんな地の文削るほどあっさりでいいのかよ!」

ノパ听)「話を聞いた時点で、こうなる事くらい予想できた事だ、
    いつその時が来てもいいように、影はとうに用意してある」

从;゚∀从「え、まじか……」

ノパ听)「流石に二度と帰って来ない、なんて事になられては困るが……」

从;゚∀从「が?」


40 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/06/30(火) 00:36:29.19 ID:4ahWLTpu0

ノハ--)「……」

だが、と言葉を溜めると、ヒートさんはふと表情を和らげ、笑みを浮かべた。


ノパー゚)「自分の命を軽んじない、自分が死んだせいで誰かを悲しませたくないと言った、
    内藤ホライゾン、私は君の言葉を信じよう、そして――――」


その時が来れば、必ず、我等は共に、同じ戦場を駆けよう。
ヒートさんはそう告げると手を差し出し、僕はお礼と共にその手を取った。

しかし、ふと視界の隅に違和感を覚えた。

ハインだった、何となく元気がないというか、表情に影を落としている。
そういえば、さっきも少し様子が変だった気がするし、どうしたんだろう。

とか思っていると、急に真面目な顔で、こっちを見た。
視線が真っ直ぐに貫き、不意を突かれた僕は思わずたじろいでしまう。


42 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/06/30(火) 00:38:45.64 ID:4ahWLTpu0

すると、ハインは僕から視線をはずし、この場の皆へと視線を向かわせ、



从 ゚∀从「……悪い、ちょっと俺、ここに残らせてもらう事にしたからさ」

一緒には行けそうに無い、そう言った。

え、と固まったのは僕だけだった。
そして一番先に反応したのは、デレだった。


ζ(゚Δ゚;ζ「残るって……何でですか!?」

从 ゚∀从「……ここの珠の活用法と、接続を使用した技術力は他を見渡しても郡を抜いている、
     そういうのを見ててさ、俺も色々考えたんだけど、ちと考えがあってな」

(;^ω^)「ていうかヒートさんは、聞いてたのかお?」

ノパー゚)「…ええ、聞いていたわ」



43 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/06/30(火) 00:41:28.13 ID:4ahWLTpu0

ζ(゚Δ゚;ζ「それで、考えって…?」

从 -∀从「悪いが、それも今は言えない…まだ、実現可能かも分かってないんだ、これは」

ζ( Δ ;ζ「そ、それは……でもそんな……」


( ゚∀゚)「……分かってやれよ、寂しいのは分かるが」

ζ( ー ;ζ「……そういうわけじゃ…ない、けど」

( ゚∀゚)「必要な事なんだろう?」

从 ゚∀从「ああ、絶対に……必要な時が来る」

( ゚∀゚)「じゃあいいじゃねぇか、そうするべきだ、そうだろ?」

ζ(゚- ゚;ζ「………」

从 ゚∀从「つーわけで、一旦お別れだぜ内藤」



44 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/06/30(火) 00:43:34.55 ID:4ahWLTpu0

(;^ω^)「……」

从 ゚∀从「なんだ辛気臭いな、別にもう会えない訳じゃないって、
    ちょっちやりたい事が終わったら、すぐに合流するさ」

色々と気になることも聞きたいこともあるが、僕はひとまず頷き、
できる限り自然に、よし頑張れ、と言ってみた。


从 ゚∀从「あ…でも、代わりに一つ、私の頼みを聞いてくれないか?」

すると続いたのは、頼みごと。
僕は何でも聞こうと、そう思った。

( ^ω^)「いいお、なんだお?」

从 ゚∀从「この城に、私を正式な技術者として迎え入れてほしいんだ」

(;^ω^)「……………は?」

从 -∀从「勿論、王としてだ、できればお前の印書も欲しい、とりあえずそれがあれば、
     ここで色々開発したりなんだりできるよな? 女王ヒート」

ノパ听)「可能だ」
45 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/06/30(火) 00:45:57.82 ID:4ahWLTpu0

从 ゚∀从b「てな訳で、権限フル活用でよろしく」

(;^ω^)「ちゃっかりしてるお」

思わず苦笑してしまう。

ふと、そこで一つ気がついた事がある。だから、本気なんだと、
想像もできないが、何か凄い事をしようとしているんだなと、そう思った。

从;゚∀从「だからそう言ってるだろうに」

(;^ω^)「ごめんお、じゃあ……」


なので僕は、一つ呼吸を置いて、こう言う事にした。


( ^ω^)「こっちの方は、よろしくお願いするお、高岡博士」

从 ゚∀从「おう、任されとくよ」




46 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/06/30(火) 00:48:17.65 ID:4ahWLTpu0

その後、印書だかの用意や、出立ちの準備に追われて忙しかった。
けどそのおかげもあって、どうにか明後日には出発できそうだ。

ちなみに陸船はしばらく放置していたせいで、氷漬けになっていて溶かすにも一苦労。


というか、そのせいで一日遅れる事になったんだけど…。

こうして翌日、僕らは城の皆に別れを告げて、こっそりと隠れるように城を出た。
あと見送りは無いので、ほんの少し、寂しいと言うか、夜逃げみたいというか。

僕の代わりを用意したとは言え、姿を目撃されては元も子もないからしょうがないのだけど。


ついでに城から出る前。

ノパ听)(これを使うといい)

そう言って渡されたのは、ダンボールだった。
これを頭から被って、見つからずに城を出ろと言うのだ。


47 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/06/30(火) 00:50:36.21 ID:4ahWLTpu0

一見無茶にしか思えない行為だったが、驚いたことに、ばれなかった。
どんな状況でも「気のせいか」で済むとかどんだけ。

そんなこんなで抜け出し、船に乗り込むと急ぎつつ、自然にふるまい、
明らかに陸船のせいで目立ってるけど、あせあせとヒルトの国を出た。


それからしばらく。


( #゚  ゚)「うーむ……本当にばれずにすんだお」

遠ざかっていくヒルトの入り口、僕らは雪に覆われた道を、ふたたび船で行く。
そろそろいいだろう、僕は仮面を外して一息ついた。

ちなみに、この仮面はもし見つかった時や、船に乗った時を考えて、
ヒートさんがダンボールと一緒にくれた物だ。



考えてみれば、最初からこれだけで良かったんじゃないだろうか……。



48 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/06/30(火) 00:53:01.46 ID:4ahWLTpu0

そう思いながらふりむき、もう遠景となったであろう街の方を見た。
すると、船の最後尾にはデレが背中を向けていて、その隣にはジョルジュさんの姿がある。

( ゚∀゚)「ちょっと離れるだけじゃねーか、またすぐ会えるさ」

「……ん」

( ゚∀゚)「だから泣くなって」

「……泣いてない」

ジョルジュさんが、デレの頭に手を置いた。
ふと、デレの横顔が見えた、言葉とは裏腹に涙が頬をつたっている。

ζ(;- ;*ζ「……やだもう、なんでこんな……」

拭う仕草を見せるが、それでもなお零れる。
その肩をジョルジュさんが抱き寄せ、デレは肩を震わせてしがみついた。

ふと、出立ち前に言われた事が反復される。

(デレにとって、生まれて初めての友達なんだよなぁ……)

( ^ω^)「……」

僕は手をかざし、風の接続を強めた、彼女が残したこのヒーターの熱がより強くまわるように、
そして弱々しく震えるあの姿が、もっと凍えてしまわぬようにと。


49 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/06/30(火) 00:55:40.90 ID:4ahWLTpu0

…………。


ブーン達がヒルトへ旅立ってから、そろそろ三ヶ月になる。
まだそんなに経っていないと言うのに、随分な時間が経った気がしていた。

何せ時折、一緒に居たのが夢幻の類だったようにすら感じるのだ。
それほどに、色々な事があって、それほどに濃い時間だった。


('A`)「……今頃どうしてんだろ、どうにかなったのかなぁ」

(´・ω・`)「何とかなって貰わなきゃ困る」

だから、こうして口にしないと、はっきりとその存在を認識できない。
希望を持ち続けるには、あまりにもブーン達の情報が無さ過ぎる。

いざという時のことも考えなければならない。


52 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/06/30(火) 01:06:50.43 ID:4ahWLTpu0

そう、もしも間に合わなかった時、あるいは失敗していた時、
俺たちだけでこの場を、どうにかしなければならないのだ。

出来ることなら、信じたい、信じて帰りを待ちたい。
だけどそれで、何もできずに終わるのだけは在ってはならない。

ショボンが言った、俺も…それに頷いた。


(´・ω・`)「あと、あの人の言い分が確かなら、そろそろ向こうも本腰入れてきそうだしね」

そんな話が出た直後だった、まるでタイミングを見計らったように報せが届く。
またしても、このエッダに進行する集団があると、遠方より連絡がきた。

(´・ω・`)「方角は?」

「ドレイク村、サソード村の方角からかと」

(´・ω・`)「ふぅん…両側か、数は?」

「確認中です」


53 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/06/30(火) 01:08:42.61 ID:4ahWLTpu0

ふと、視界の隅に影がちらつく。

(;'A`)「……あ」

「それで、どうするんだ?」

いつの間にか入り口に佇んでいる、あの人に問われ。
ショボンはしばし考える素振りを見せて、その方向を見た。

(´・ω・`)「じゃあ、サソード村の方をお願いできますか、手筈は前に話した通りに」

「本当に二手かも分からないんだろう? それでいいのか?」

(´・ω・`)「大丈夫ですよ、その辺りについても各村に報せてありますし」

(´・ω・`)「だから、そちらこそお願いしますね……」

名を呼び、確認するように尋ねると、あの人は不敵に笑い。
やがてこっちを物色するように見据えて、言った。

ξ゚ー゚)ξ「いいだろう、お前達こそヘマするんじゃないぞ」

腰に下げられた透明な剣の柄がきらりと反射し、その人は背を向ける。

名をツン、かつての湖鏡国の管理者であり敵であった相手が今、
今の俺たちにとって、不安だが、それでも頼るしかなかった人だった。


55 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/06/30(火) 01:11:41.83 ID:4ahWLTpu0






        【 次回予告 】ダカラワスーレナーイーデーアノヒアノートキーミーターニージノー






56 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/06/30(火) 01:13:16.33 ID:4ahWLTpu0
ミ,,゚Д゚彡「ゲストお願いしますです>>57

57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 01:15:54.73 ID:IXtC9skkO
(´・ω・`)
59 : ◆6Ugj38o7Xg :2009/06/30(火) 01:29:32.96 ID:4ahWLTpu0
ミ,,゚Д゚彡『というわけで、次から次へとやってくる問題の嵐のなか、次回のお話は』

(´・ω・`)『しばしブーン達から視点は外れ、前作主人公だから出番が控えめなドクオへと移る』


 (;'A`)「あれ? 今、何で? あれ?」


(´・ω・`)『つまり、後半にはお約束の活躍が』
ミ;゚Д゚彡『ほんとかなぁ……』

ミ,,゚Д゚彡『続く防衛戦、その中でドクオは一つの変化と、その理由に気付く』

(´・ω・`)『そしてそれは、かつての使用者が感じた不安と、同じ物だった……』


 ξ゚听)ξ「出来すぎている、おかしいとは思わないのか?」


ミ,,゚Д゚彡『更に、ブーンと敵対していたツン、まさかの参戦、果たして彼の心境は…!』

(´・ω・`)『うん、彼ね、彼、あくまでも』

ミ,,゚Д゚彡『そんな訳で、次回! 異世界でもう一度 第32会 「心写すは鏡炎花火」 』

(´・ω・`)『読んでくれなきゃ……何だっけ? 忘れちゃったなぁ』

ミ;-Д-彡『……言いたくないならいいってばさ』
                             つづく、、、I

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