- 3
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/17(水) 20:14:18.34 ID:b7NtEYhJ0
立ち上がり、弾かれ、また立ち上がり、弾かれる。
それを何度、繰り返しただろう。
あまりの事に現実味が沸かなかった。
いつしか僕らは呆けていた。
だから、気がついたら闘技場は静まり返っていて、観衆の見据える先では、
広場の中心に悠然と立ちすくむ母者の姿と、地にひれ伏す、ジョルジュさんの姿があった。
やや遅れて、歓声が轟き、ようやく僕は我に返った。
ふと隣を見ると、デレが肩を震わせ、唖然とした表情で固まっている。
そして、嘘、とだけ、誰にともなくぽつりと呟いていた。
【 第31会 「凄まじき戦士」 】
- 4
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/17(水) 20:17:10.51 ID:b7NtEYhJ0
宿のベッドの上、寝息を立てるジョルジュさんの傍らで、
僕らは黙ったまま、口を開くことなくただ俯き、あるいは窓の外を眺めていた。
命には別状はなかったけど、しばらくは動けないであろう怪我だ。
色々な意味で、ショックが大きすぎる。
負けるはずがない、そう思っていた。信頼していた。
特訓に明け暮れていたのは、敗北の悔しさをバネにしていたのはある、
だけど、それは逆に言えば、もう参加する必要はないと思っていたからだ。
なのに負けてしまった、それもあんなにあっさりと。
オーガ、と呼ばれていた管理者、いくらなんでもあれは強すぎる。
見ているだけでも、充分すぎるほどに伝わってきた、そして理解してしまった。
あれには、勝てないと。
- 7
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/17(水) 20:20:16.02 ID:b7NtEYhJ0
考えられるか、打ち付ければ地面にでっかい穴をあけるハンマーを片手で受け止めるなんて。
その威力だって、受けた衝撃で両足が地に沈み、大きなクレーターを作ったことで証明されていたのに。
だけど、それでも変化が起きたのは地面だけで、あの鬼は平然と殴り返した。
どんな力も、どんな速さも、それを凌ぐ圧倒的な力の前には無力だ、まさに力こそパワー。
( ^ω^)「……」
ζ(゚‐ ゚*ζ「……」
从 ゚∀从「……」
誰も、何も言えなかった。
いや……多分、言いたいであろう事は分かってる。
これからどうすればいいのか、それだけは明白だったから。
期間はまだある、とは言っても勝ち抜く時間を考えれば、これが最後のチャンスになる。
そしてこの状態では、ジョルジュさんはおそらく間に合わない。
だから、あとは僕次第。僕がやるしかもう手はないんだ。
だからこそ、二人ともそれを口にできない。
- 11
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/17(水) 20:23:32.22 ID:b7NtEYhJ0
あれほどの力を見せ付けられておいて、僕に頑張れなんて言えないのだろう。
きっと、僕がジョルジュさんに負けた事にも関係していると思う。
それはそうだ、負けた奴が勝てる道理はない、信用以前に不安が大きい。
確かに僕自身、勝機なんてまるで見えない。
けど、それが僕の非力さからくるのなら、悔しくも思う。
このままでいいはずがない。
何か言わなきゃ。
そう思うのに、どうしても、いつも通りに笑えなかった。
大丈夫だって、そう言えなかった。
- 13
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/17(水) 20:25:56.51 ID:b7NtEYhJ0
「……っ」
(;^ω^)「!!」
だけどその時、規則正しく聞こえていた寝息が乱れた。
見ればジョルジュさんが、うっすらと目を開けている。
ζ(゚‐ ゚;ζ「お兄ちゃん…!! 大丈夫!?」
_,
(メ-∀-)「……ああ」
そして、首だけをこちらに向けて僕の姿を確認すると、
少しだけ俯き加減に、口惜しさに表情を強め、やがてぽつりと言った。
「すまねぇ」
それで、覚悟は決まった。
- 14
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/17(水) 20:28:04.40 ID:b7NtEYhJ0
………。
(#・(エ)・)「クマ!!」
体格差から、クマの攻撃はほとんど上からななめに降ってくる。
しかし、結局のところ軌道は直線、振りも大きい、よく視れば見える。
(#゚ω゚)「なんとぉーーーー!」
打ち下ろしに合わせて、ベアクローの背を弾く、軌道がそれて風がすぐ横をかすめた。
本当は受け止めつついなしたいのだが、力の差がありすぎてそれも出来ない。
なのでひとまず、その風に接続、左腕に風を巻きつけて待機モードを維持。
避けつつ、狙うは関節の隙間、さらに力を集中させるべく柄を向け、叩き込む。
クマゴロウは痛々しくも奇妙な声を漏らす、その間に回りこみ背後から膝を蹴りつけ、
集めた風を剣に集めると、ふんばりをきかせる為にスタンスを広く、両腕をあげて切っ先を正面に。
(#^ω^ω)「『白刃一閃……!』」
(;・(エ)・)「!!」
- 16
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/17(水) 20:30:45.84 ID:b7NtEYhJ0
言葉と共に、纏った風を開放。
巻かれた風が僕を中心に外側へと広がり、粉雪が円状に吹き飛んだ。
「そこまで」
その一瞬を貫くように、凛とした声が響く。
飛び出そうとした瞬間に聞こえた声に、僕らは動きを止めた。
しばしの沈黙の後、ほどかれた風に赤い髪をふわりとなびかせ、彼女が言う。
ノパー゚)「勝負あり、ね」
(・(エ)・)「やれやれ、もう俺では歯がたたんか……大した奴だ
(;^ω^)「いや、ほら、今は神具使ってるから」
とは言っても、ここはいつも曇っているから、あまり力が出ないけどね。
でもだからこそ、神具を使ってもやり過ぎないとも言える。
(・(エ)・)「それでも、だ、初見と比べたらまるで別人のようじゃないか、
天賦の才とはよく言ったものだなぁ、内藤よ」
( ^ω^)「そんな褒めても何もでないお」
- 17
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/17(水) 20:34:18.94 ID:b7NtEYhJ0
(・(エ)・)「事実を言ったまでだ」
(*^ω^)「クマちゃん……」
ノハ;゚ー゚)「……もういいかしら?」
ヒートさんに教わった事は、はっきり言えばそう多くない。
何せ時間がそうある訳ではないから、どうしても限られてくる。
なので今の所、身ついた物といえば基本的な攻防の流れ。
もう嫌になるくらい、ある程度のパターンを身体に叩き込まれた。
それと、少しは度胸もついたのかもしれない。
ノパー゚)(人間ね、経験するか慣れてしまった恐怖にはあまり怯まなくなるのよ)
という言葉に習って、それこそ殺してくれと思うような恐怖体験もした。
クマゴロウとの模擬戦だって、何気に油断すると殺されるし。
- 19
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/17(水) 20:38:04.42 ID:b7NtEYhJ0
ああ、もう思い出すのはやめよう……。
そして最後に。八つの型からなる接続剣技。
いわゆる、新必殺技だ。
ノパー゚)「さっきのは二の型ね」
( ^ω^)「これが一番あってる気がしますお」
だけど、全てを習得することはできなかった。
時間が足りなくて覚えられない、というのもあるがそれ以上に、
これが接続を合わせた、魔法剣みたいな物である事が大きい。
ちなみに、さっきのは風接続を使用した複合技。
そして、八つの中には四種類の接続が当然ふくまれている。
だから接続を使わずも平気な物か、風以外のものは使えなかったりもする。
ノパー゚)「…さて、明日からはまたトーナメント参加ね」
( ^ω^)「ですお」
特訓はまだ途中だけど、そうは言っていられない。
なので僕は時間が無いことを告げ、参加することを伝えた。
- 23
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/17(水) 20:40:48.78 ID:b7NtEYhJ0
ノパー゚)「でも、休みはないわよ」
(;^ω^)「ひぃ…」
ヒートさんが、ひとまずの区切りを示すように、握手を求めてきた。
僕は迷うことなく、その手を取った。
ふと、手の方はそれほど真っ白ではないんだな、と気付く。
よくよく見れば、何だろう、顔だけが異様に白い気が……。
じっと見ていたら、不思議そうに問いかけられ、慌てて僕は誤魔化した。
こうして、その日は終了。
僕は疲れを癒しつつ、明日を待つのであった。
……。
- 25
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/17(水) 20:43:55.44 ID:b7NtEYhJ0
( ^ω^)「…さて、行くかお」
( ^^ω)(負けんなよ)
( ^ω^)「おー」
そんな訳で、ふたたび始まったヒルトの闘技場での戦い。
二回目だけあって、緊張も少ないけど、あの時と違って今は一人。
まだ瀬川が居るだけマシだけど、寂しさからか、不安になる。
( ^^ω)(で、どうすんだ? 使うのか?)
( ^ω^)(しばらくはまた、あの棒を使うお)
そう、今回は剣をもってきた。陽が出てないから加減が利くと分かったのもあるが、
単純に負けるわけにいかないから、というのが大きい。
まあ、腰に下げてると動くのに邪魔というのはあるが、我慢だ。
ついでに前回の反省をふまえて、雷珠も外してしまった。
- 28
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/17(水) 20:47:02.62 ID:b7NtEYhJ0
なので、今度は完全に、僕の腕にかかっている。
暗い通路を、そんな事を考えながら歩いていく。
やがて先のほうに光が溢れ、歓声が押し返すように響いてくる。
負けじと進めば、すぐに広場に出た。ひときわ大きな歓声。
<゚Д゚#>「!!」
その先には、既に対戦相手が居て、僕を見るなり怒りをあらわにした。
何だろう、何か言ってるけど遠くてよく聞こえないぞ。
そしてついに、アナウンスが開始を告げる。
普通はその瞬間、互いに雄叫びをあげて駆け出すものだが、今度は静かなたちあがり。
互いに距離をとる、というか、既に距離が開いていて、見合ったまま動かない。
<゚Д゚#>「ここで会うとはな!!
こないだの屈辱、返させてもらうぜ…!!」
(;^ω^)「??」
誰だか知らないが、多分、前に僕が負かした誰かなのだろう。
よく分からないまま、互いに構えたまま、動かない。
- 31
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/17(水) 20:50:10.53 ID:b7NtEYhJ0
やがて観客から、早く戦えてきなブーイングが起こる。
それと同時、対戦相手が動いた、その手には赤い珠が握られている。
(;^ω^)「む」
<゚Д゚#>「燃え上がれ!!」
火の玉がいくつか、男の周囲に浮かび上がる。
それはみるみる膨れ上がり、身体の半分くらいになった。
<゚Д゚#>「おら、また踊れや!!」
叫びと共に、手を眼前にかざす。
炎の塊、なんかメラみたいなのが弧を描き、飛翔した。
それに合わせ。接続開始、心で唱え、姿勢を下げて大地を蹴る。
メラが迫る、もうすぐ目の前。
薙ぎ払うように手を振るう、迫る炎に向かって、真横から突風を叩きつける。
いくつかは、それだけで消えた。しかし残ったものは更に火力を増した。
- 33
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/17(水) 20:53:19.75 ID:b7NtEYhJ0
一つは避けた、でも二つ目は大きくて避けきれないっぽい。
なので斬った、目の前を塞いでいた炎が裂かれ、四散する。
<゚Д゚=>「はっ、馬鹿が」
視界が開くと、突っ込んでくるのを待っていたのか、男の周りには更に炎が見えた。
でも、問題はない、風の道はもうできている。
背後からの、叩きつけるような圧力に身を任せ、地を蹴る。
攻防は一瞬だった。
男はろくな反応もままならず、鋼棒をまともに喰らい、うしろに身体が浮き上がり、
そのまま弾き飛ばれ、緑茂る壁のきわに転がった。そして、そのまま動かない。
(;^ω^)(……しまった…加減を間違えたぞ…)
どうにも、クマゴロウを相手にしている時の気分が抜けていないらしい。
やや遅れて、歓声があがる。物足りないと示す声と、圧倒的な差を見せたことへの驚きか。
- 35
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/17(水) 20:56:36.41 ID:b7NtEYhJ0
僕自身も、あまりにも自然に体が動いたので驚いていた。
恐怖なんて微塵もなく、あるのはただ立ち向かう意思、あるいは勇気と呼ぶのかもしれない。
実感となって沸いてくる自分の成長。僕を拳をつよく握りしめた。
………。
そこからは、自分で言うのも何だけど、快進撃とでも言うのだろうか。
神具を使わずとも、とくに苦戦することもなく、僕は順調に駒を進めていく。
しかし、約束の三ヶ月まではもう少し。
果たして間に合うのだろうか。
そんな不安に駆られていると、まるでタイミングを見計らったように、
3連戦までならおkという、特殊なルールが何故か追加され、更に進む速度を上げていく。
- 38
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/17(水) 20:59:52.69 ID:b7NtEYhJ0
ここまでくると、流石に残っているのは勝ち抜いてきた強者ばかり。
何度かは苦戦を強いられるも、神具の使用によって何とか駒を進め、
とうとうその日、僕はトーナメントを勝ち抜いた。
明日からは、例の仮面4人組との戦いだ。
この頃にはジョルジュさんの怪我もだいぶ癒えて、今では元気に歩いている。
ひとまずは今日の勝利を祝いながら、僕は激励を受けた。
_,
( ゚∀゚)「内藤、決戦前には何より戦意高揚させるのが大事だ」
( ^ω^)「分かりますお」
_,
( ゚∀゚)「そして今、デレ達は風呂に行っている……あとは、分かるな?」
(*^ω^)「わかりますお…」
大事な決戦を控えた、その前日。
僕らは鼻の下を伸ばしながら、忍び足で脱衣所へ向かった。
とうぜん、いつかの様なハプニングを期待しながら。
その夜、宿には悲鳴が二つ、そして断末魔が二つ響いたそうな。
- 39
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/17(水) 21:03:07.90 ID:b7NtEYhJ0
…………。
(#0w0)「ウェーーーーーーーーーーーーイ!!」
(;^ω^)「っ!!」
流石に、選ばれた四人なんて大層な立場なだけあって、見た目に反して実力は本物だった。
一人目は、不思議な剣をつかう相手、名はブレイド。
それは雷の接続を組み合わせた、僕が教わっていたものに近い剣技。
更には、そこに蹴りが組み合わされて、戦い辛いことこの上ない。
しばらくの剣戟を繰り返し、一度距離をとると、互いに技の姿勢に移る。
- 41
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/17(水) 21:06:18.55 ID:b7NtEYhJ0
ブレイドは、剣にカード状の何かを差し込んだ。すると響く声。
【ライトニングスラッシュ】
(#0w0)「ソウダ、ヒドゥオ愛シテイルカラタタカッテイルンダ!!」
(#^ω^)「…目も眩め、太陽の剣!」
わずかながら、光を集めた剣がまばゆく輝く。
対するは雷をまとった、いつかの僕と似たような攻撃。
駆けたのは同時。
(#0w0)「オンドゥルルラギッタンディスカーーーーーー!!」
バチバチと鳴る剣、触れれば痺れて大変だが。
その前に、手数で押し込む。
(#^ω^)「―――サンスラッシュ!!」
強化によって得た速度を全快に、とにかく叩く、叩く、叩く。
火花がいくつも散り、鼓膜を金属音が圧迫する。
まさに、目を眩ませるのを目的とした、剣戟の乱舞。
- 44
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/17(水) 21:09:26.61 ID:b7NtEYhJ0
(;0w0)「ナッ――――これは!」
仮面があるのでよくは見えないが、明らかに、ブレイドの姿勢が崩れる、
いや、それだけでない、今、何か別の事を言ったような。
(#゚ω゚)「隙ありぃいいい!!」
言うとおり、弾かれたバチバチしっ放しの剣がわずかに浮き上がる。
その脇を潜り抜けつつ、刃を返し、平な部位で殴りつける。
が、と声を漏らし、ブレイドはたたらを踏んだ。
今にも崩れ落ちそうな姿を前に、剣は構えたまま見据える。
すると、ブレイドは何故か抵抗しようと言うより、動揺を浮かべ。
(;0w0)「イ、イマノ、ハ……オウケノ、剣…?」
(;^ω^)「お?」
何故、とだけ言い残し、ブレイドは地に伏せた。まずは一人目。
歓声の中、最後の言葉が妙に気になって、僕は素直に喜べないでいた。
- 47
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/17(水) 21:14:10.60 ID:b7NtEYhJ0
それから残るは三人、同じく仮面を被った人達だった。
気になったのは、彼らが使う妙な技の数々と、先のブレイドの言葉。
ギャレンと言う仮面の男は、火の玉を打ち出す、銃みたいな武器を使っていた。
レンゲルとやらは、少ないながらも水で行動を阻害する、長い杖を使い。
やっぱりそれぞれ、接続を組み合わせた技を使っていた。
更に、最後のカリスという男に至っては、同じく風の接続者、
上下に刃がある妙な剣を使い、そして僕と似たような剣技を使った。
疑念が、段々と形を帯びていく。
勝ち進みながらも、なんとなく、何かが見えてきた気がしていた。
- 48
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/17(水) 21:17:17.28 ID:b7NtEYhJ0
やがて、響き始めるのはオーガコール、勝ち抜いたときの歓声なんかとはまるで違う、
衝撃めいた圧迫感が、ビリビリと全身の毛を震わせた。
自分が出てきた通路のちょうど反対、垂れ幕の下にある通路に視線がそそがれる。
(;^ω^)「……いよいよ登場かお」
( ^^ω)(さて、どんなもんかな)
その時、暗い通路にうごく影を見つけた。同時にアナウンスが何かを叫ぶ。
だけど緊張からか、それすら耳に入ることなく、僕はじっとその先を見据えていた。
おちつけ、おちつけ、大丈夫、きっとやれるさ。
付け焼刃とはいえ、これまでの戦いの中で少しは物にできた感はある。
自信は充分につけた、あとはそう、実行に移せるかどうかだ。
固唾を呑んで、迫りくる姿を見据えていると、やがて鬼が口を開く。
@@@
@#_、_@
( ノ`)「あんたが内藤ってのかい?」
- 51
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/17(水) 21:20:22.60 ID:b7NtEYhJ0
その声は、拍子抜けしてしまうくらい、軽い物だった。思わず変な声が出る。
威圧感なんてまるで無く、力を解いているのが目に見える。
(;^ω^)「…そうだお」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「ふぅん……しかし、こういうのが好みなのかねぇ」
(;^ω^)「…?? 何を言ってるんだお?」
母者はそう言うと、片手に持つとっくりを口に運び、ぐい、と飲む。
恐らくは酒なんだろう、なんかもう、見るからに鬼って感じだなぁ……。
@@@
@#_、_@
( ノ`)「あの子から聞いてるよ、しかしなるほど、管理者だっんかい」
(;^ω^)「あの子…?」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「ま、すぐに分かるさね……ああ、そろそろ始めようか、見せてもらうよ、あんたの力を」
- 53
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/17(水) 21:23:30.65 ID:b7NtEYhJ0
(;^ω^)「…!」
(;^^ω)(来るぞ、油断すんなよ!!)
母者が両手を広げ、見る分には無防備なまでの構えを取る。
その瞬間、息苦しいまでの圧迫感と、空間がねじまがるような錯覚を覚えた。
油断なんてしてる暇、あるわけが無い。
むしろ、怯えないよう自分を奮わせるのに精一杯だ。
(#^ω^)「瀬川」
( ^^ω)(なんだ?)
分かっている、恐らく今のままじゃ、まだ歯が立たない。
付け焼刃が通じるのは、きっとここまでだ、現にさっきまでも苦戦していた。
行ける所まで行こう、そう思っていた。
だけど、それも足りなかったら、そうも決めていた。
長引けば不利。
ならば、する事は一つ。
- 54
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/17(水) 21:26:33.46 ID:b7NtEYhJ0
(#^ω^)「使うお!!」
( ^^ω)(…仕方ないか)
剣を眼前から、真上に掲げる。
雲っていたって、空は明るい。
この闘技場にだって、中を照らす光がある。
更に前へ進むために、今こそ化かわる時。
迷うことなく、僕は叫んだ。
(#゚ω゚)「サン、バーストォオオオオ!!」
同時に、腕の先から熱が流れ込んでくる。
ちくちくと針が刺すような痛みが、全身に駆ける。
(# ω )「う、ぁあああああああああああああ!!!!」
漏れたのは、悲痛な声にも、咆哮にも取れる叫び声だった。
@@@
@#_、_@
( ノ`)「……これは」
- 57
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/17(水) 21:29:44.76 ID:b7NtEYhJ0
熱い、体が熱い、その熱は、そっくりそのまま心にまで宿る。
その反面、頭はすっきりしていて、周りがよく見えてくる。
ほどよい熱と、軽くなる体、すぐに手足が羽のように感じはじめた。
(#゚ω゚)「ぐ、ぎぎ……」
(# ω )「うがああああああああああああああぅ!!!」
行けと、促す声に突き動かされ、僕は一気に地を蹴った。
対する母者は、構えはそのまま、迎撃の姿勢を取る。
@@@
@#_、_@
( ノ`)「やれやれ、まるで獣だねぇ」
(#゚ω゚)「振り仰げ、天空の光!!」
駆けながら、切っ先を向ける。
そのままの勢いで斬り込むと、母者はひらりと身をかわす。
しかし、剣戟は一度ではなく更に続く。
@@@
@#_、_@
( ノ`)「サンスラッシュ、かい」
(;゚ω゚)「!!」
- 59
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/17(水) 21:33:12.25 ID:b7NtEYhJ0
しかし、それらは全て受け止められて終わる。
それも手甲だけで、容易く、正確無比にこちらの剣を叩き落していく。
神具らしき剣は持っているが、抜こうともしない。
というか、抜かずにあしらわれている。
そんな、これは無いだろう。
いくら何でも、こんなに差があるなんて、そんな。
(;゚ω゚)「くそ…!!」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「ほら、ちゃんと避けな」
繰り出された拳が空を切る、轟と、掠めただけで身体が浮き上がるような威圧感。
知らず冷や汗が伝い、気付けば僕は逃げるように距離を取っていた。
(;゚ω-)「はっ…はっ……!」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「おやおや、もう息切れかい?
若いのに、だらしないねぇ」
- 60
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/17(水) 21:36:26.02 ID:b7NtEYhJ0
あんなの喰らって、下手すれば気絶じゃ済まないぞ。
そんな恐怖感からか、息が妙にあがり、鼓動もうるさい。
母者が前進、合わせて僕は後退した。
(;^ω^)「……っ」
はっきり言おう、近づくのがどうしようもなく怖い。
あの人には、何をしても通じないんじゃないか、そう思えてしまう。
負けたらどうなる…怪我をする?
そんなの問題じゃない。
負けたら……ぼくは、負けられないのに。
一撃でも喰らえばアウトって、こんなのありか。なしだろ。
管理者だから、そんな問題じゃない、この人はそういう次元じゃない。
- 61
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/17(水) 21:39:32.18 ID:b7NtEYhJ0
@@@
@#_、_@
( ノ`)「……」
怯む僕を、母者はなぜか立ちすくみ、見定めるように見つめている。
すると、何を思ったのか、やがてぽつりと語りかけてきた。
@@@
@#_、_@
( ノ`)「何を恐れる」
(;^ω^)「!」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「痛い目をみる事かい?
それとも敗北かい?」
(;^ω^)「……」
答えられなかった。
沈黙。
しかし母者は続ける。
- 62
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/17(水) 21:42:55.69 ID:b7NtEYhJ0
@@@
@#_、_@
( ノ`)「内藤、お前はなぜ戦う」
(;^ω^)「目的が……守りたいものがあるから、だお」
その理由だけは、すぐに浮かんだ。
何故なら、これは何度も自問自答してきた物だから。
どうしてこの世界に残ると決めたのか、どうして戦おうと思ったのか。
@@@
@#_、_@
( ノ`)「その為なら、命を賭けられるかい?」
( ω )「命は、賭けない」
- 66
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/17(水) 21:46:10.50 ID:b7NtEYhJ0
@@@
@#_、_@
( ノ`)「何故だい」
( ω )「…命に代えられる物なんて、絶対に無いから」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「つまり死ぬのが怖いと?」
(; ω )「そりゃ怖いお、だけどそれだけじゃない、僕は、自分の命を軽く見たりしないだけだ、
そのせいで、誰かが悲しむって知ってるから…………あ」
ああ、そうだ、思い出した。
僕は何を怖がっているんだろう、その為に必要なことは、怯える事でも、
気に入らないことに不貞腐れる事でも、やけを起こすことでも無いのに。
僕が守りたいものは、そんな事で得られる物ではないから。
僕が守りたいものは、英雄の条件とは、みんなの笑顔を最後まで守り続けることだ。
- 70
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/17(水) 21:50:11.34 ID:b7NtEYhJ0
( ω )「…」
すぅ、と息を深く吸い込んだ。そしてゆっくりと吐き出す。
( ^^ω)(落ち着いたか?)
それでようやく、脳内に響いていたはずの声が聞こえてきた。
どうやら僕は相当てんぱっていたらしい、そりゃ不安にもなる。
やるべき事は決まった、もういい、とにかく今は。
(#^ω^)「もっぺん、今度は全力全開で行くお……!!」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「お、じゃあ見せてもらおうかね」
今の僕にできる、一番のこと。
思い浮かんだのは、付け焼刃のあれではなく、それ以前。
今の状態でどれほどの風が起こせるか不明だけど、もう、これしかない。
(# ω )「エアロバリア……"フル"チャージ…!」
- 73
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/17(水) 21:53:21.86 ID:b7NtEYhJ0
もう後先考えるのはやめだ、ペース配分なんか考えて、どうにかなる相手じゃない。
ヒュ、と吹き始めたそよ風が渦をまき、瞬く間に小さな竜巻が巻き起こる。
その風は遥か上にまで届き、屋根代わりになっていた風をも巻き込み、激しさを増していく。
(#゚ω゚)「マックス……」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「……これは中々」
暴風を前にして、母者がようやく警戒の姿勢を取る。
(#゚ω゚)「シュウトォォーーーーーーーーーーーーー!!!」
これが通じなきゃ、もうお手上げだ、そんな覚悟をもって放たれたのは、
突風、あるいは単純に、擬似的な衝撃波とも言える。
- 75
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/17(水) 21:57:48.68 ID:b7NtEYhJ0
@@@
@#_、_@
( ノ`)「む」
叩きつけるような風が、身動きを封じ、息を詰まらせ、怯ませる。
これほどの物を起こせば、使用後には動けなくなる、だからこれが最大の賭け。
(# ω )「う、ら、あ、ああああああああああああああああああ!!!」
己が身をも風に任せて、更に地を蹴り加速する。
そして、その勢いと、何よりも速度をもってして、渾身の一撃を叩き込む。
遅れて、その跡を追うように砂埃が巻き上がり、その姿を隠した。
- 77
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/17(水) 22:00:59.93 ID:b7NtEYhJ0
(;-ω゚)「……ぅ、く」
やがて、煙が晴れた先に現れたのは、地面に膝をつき、気を失う寸前の僕と。
@@@
@#_、_@
( ノ`)「……」
同じく、地面に膝と、片手をつける、オーガの姿だった。
そう、それだけ。
結局、倒すことはできなかった。
そりゃそうだ、ジョルジュさんのあれを喰らっても平気なんだから。
そう思いながら、ふらつく身体をどうにか起こそうと、剣を杖代わりに立ち上がる。
すると、母者もゆっくりと立ち上がり、僕を見据え、やがてこう言った。
@@@
@#_、_@
( ノ`)「参った、勝負はここまで、あたしの負けさ」
- 83
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/17(水) 22:05:00.96 ID:b7NtEYhJ0
(;^ω^)「……へ?」
思わず、すっとんきょうな声が出た。
周囲の反応も似たようなもので、声を失っている。
@@@
@#_、_@
( ノ`)「聞こえなかったのかい、内藤の勝ちだよ」
(;^ω^)「勝ち……って、え?」
なんで? これは多分、その場に居るみなの気持ちだったと思う。
しかし、母者はもう戦う気はないとでも言いたげに、腰を下ろすと、また酒を飲む。
ややあって、アナウンスが声を若干震わせながら叫んだ。
『 な、なんと、オーガ、まさかの敗北宣言ーーーー!!
よって、ここ、この勝負!! 』
『 内藤ホライゾンの勝利、そしてこの瞬間!!
ついに優勝者が決定したーーーーーーーー!!!! 』
- 85
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/17(水) 22:09:41.44 ID:b7NtEYhJ0
歓声だが、ブーイングなんだか、とにかく色々な野次が混ざり合った物が、
地鳴りと見まごう程の怒号となって、闘技場を震撼させた。
しかし、その気持ちは理解できた。
これで勝ちと言われても、僕だって納得できない。
(;^ω^)「ちょちょ、ちょっと待ってくれお!!
どういうことだお!!」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「うるさいねぇ…ほら、そこの二人に詳しくは聞くといい」
(;^ω^)「二人…?」
母者は顎でとある方向を示した。
言われるままに、僕もそちらを見る、と。
そこに、意外な姿を見つける事になる。
- 88
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/17(水) 22:11:56.35 ID:b7NtEYhJ0
……。
_,
(;゚∀゚)「おいおい、こいつはどうなってんだよ……」
从;゚∀从「わかんねぇ、あれ、攻撃が効かなかったんじゃねえのか?」
ζ(゚ー゚;ζ「分かりませんけど、とにかく……勝ったん、ですよね?」
从;゚∀从「ん、あれ、誰か出てきたぞ?」
優勝した、という喜びよりも疑惑に包まれる客席、そこへ新たに現れた謎の二人組みと、ただならぬ空気。
これはどういう事なんだ、と困惑するジョルジュ達だったが、ちょうどそこで、隣に居た観客がはやしたて始めた。
「お、出たよ女王様が」
「あいかわらず、顔は見せねーんだな」
それも、彼らは揃って女王という単語を口にしていた。
- 91
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/17(水) 22:15:34.01 ID:b7NtEYhJ0
- _
(;゚∀゚)「なあ、あんたら、女王とかって、どういう意味だ?」
「ん? どういうも何も……何言ってんだあんた?」
_
(;゚∀゚)「ああ、すまねぇ、あそこに居るのが女王様…って、そうなのか?」
「なんだ、知らんのか? んー、まあ見たところ他所から来たっぽいし、しょうがねぇか」
「そう、何を隠そう、あそこで仮面つけてる変なのが、ここヒルトの女王さまだよ」
从;゚∀从「女王!?
なんでそんなもんが!?」
「何でって、そりゃ来るだろ……これでヒルト王の誕生なんだから」
ζ(゚ー゚;ζ「王の誕生って……え? それ、あの、どういう…?」
「なに言ってんだ?」
男は、その問いに首をかしげ、心底不思議そうに言った。
「だから、空席の王の座を決めるのが、この大会だろう?」
- 94
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/17(水) 22:18:57.66 ID:b7NtEYhJ0
「聞いてたか?」慌ててジョルジュが訪ねると、
残る二人はそろって首を左右に勢いよく振った。
「そうそう、勝ち抜いて、あの女王に認められれば即婚姻、そしてそいつが新たな王だ」
ζ( Δ ;ζ「こ、ここ、ここここ、婚姻んんn!??」
「ああ、だが噂によればあの女王様、あんまりに顔が醜いもんで隠してるって話だ」
「それを考えると、いくら国一つ手に入るっても嫌だよなwwwww」
「だなぁ、けどついに今日はその酷い面を拝めるってわけか」
「実はそれが結構楽しみな件wwwwww」
「よう俺wwwwwwwwwww」
ζ( Д ;ζ「あ、あぁ……ぁ…」
_,
(;゚∀゚)「勝者はこの国の全てを得る……って、なるほどなぁ、そういう事かい」
从;゚∀从「お、おいおい、じゃあ内藤があれに勝っちゃったら……」
ζ(;Д;*ζ「い……!!!」
「いやーーーーーーーーっ!!!!」
- 106 名前:
◆6Ugj38o7Xg :2009/06/17(水)
22:56:07.31 ID:b7NtEYhJ0
……。
ノハ#゚ ゚)「我が国の掟は、強きに従え……よって、内藤ホライゾン、お前にはこの私とも戦ってもらう」
(;^ω^)「……」
現れたのは、仮面をつけた赤い髪の女性。
そして、僕の前に立つなり、剣を向けてそう言った。
状況がいまいち分からなくて、僕はあとずさる。
ていうか、仮面をしているけど、明らかにこの声を僕は知っている。
(;^ω^)「ヒートさん……かお?」
ノハ#゚ ゚)「あら、まあばれちゃうわよね」
そう言うと仮面を外し、見慣れた顔があらわれた。
同時に、何だかすごいどよめきが起こった。
おいなんだあれ、とか、嘘、とかそんな声だった。
ノパー゚)「おめでとう、よく勝ち抜いてきたわね」
- 108 名前:
◆6Ugj38o7Xg :2009/06/17(水)
22:58:15.74 ID:b7NtEYhJ0
(;^ω^)「あの、これは一体…」
ノパー゚)「うん……何から話せばいいかしら」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「むかしある所に、代々伝えられた神具と、かよわい皇女さまが居たとさ」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「本来、管理者にはその皇女がなり、強き王を選定せねばならなかった、
けれど、その者はまだ未熟に加えて、民衆は日をおうごとに強くなっている、
このままでは、危険な人間が王の座につくことになりかねない」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「その事に悩んでいた皇女さまは、ある日、妙なクマに襲われかけた所をある人に助けられたそうな、
んで、その際、その人間の強さを見込み、とある願いを申し出た」
ノパー゚)「私に代わり、管理者となって、この国を助けてもらえませんか……母者さん、と」
- 110 名前:
◆6Ugj38o7Xg :2009/06/17(水)
23:00:32.45 ID:b7NtEYhJ0
@@@
@#_、_@
( ノ`)「報酬は、衣食住と、酒と戦いの場さ……ま、見ての通り、あまり不自由はないよ」
最近はめっきり勝ち上がってくる奴が居なくて、退屈だったが。
そう付け加えると、母者は再び酒を片手に立ち上がった。
(;^ω^)「え……ええと……それはつまり?」
( ^^ω)(…最初から、お前は試されていたって訳か)
そして、母者は僕らに背を向けた。
@@@
@#_、_@
( ノ`)「ま、そういう訳だから、あとは当人同士が決めておくれ」
(;^ω^)「決めるって、な、何を!?」
ノパー゚)「さっき言ったでしょう、この国の掟は強さが全て、そして、それは管理者である私が決める」
(;^ω^)「か、管理者!? だってあれ、オーガは」
- 111 名前:
◆6Ugj38o7Xg :2009/06/17(水)
23:02:57.83 ID:b7NtEYhJ0
ノパー゚)「オーガじゃないわ、それは母者さんに名乗ってもらった別の名前よ」
現に、神具なんて使わなかったでしょう、とヒートが続けた。
確かにそうだけど、そういう問題じゃなくて、僕はまだ状況に追いつけていない。
ノパー゚)「本当の管理者の名はコウガ、それが管理者たる私が背負うべき名よ」
(;^ω^ω)「で、えーと…『お前と戦って、勝てばいいって話か?』」
ノパー゚)「そういう事ね、でも、生憎、普通に戦っても私に勝ち目はない、それは分かってるの」
(;^ω^)「そ、そうなのかお…?」
ノパー゚)「ええ、知識はあっても、私にはそれを使いこなせる力がない……
この細い腕も、華奢な体躯も、戦いにはどうしても向かない代物だから」
(;^ω^)「……」
- 113 名前:
◆6Ugj38o7Xg :2009/06/17(水)
23:06:38.73 ID:b7NtEYhJ0
ノパ听)「だから、今から貴方に10秒あげる、それで決着をつけよう」
(;^ω^)「へ…? どういう意味だお?」
ノパー゚)「いった通りの意味よ、あなたに残された時間は今から10秒、
それまでに私を倒すか、これから放つ攻撃を避けられたらあなたの勝ち」
(;^ω^ω)「『避けられたら…だと?』」
(;^ω^)「ていうか、戦ったら勝ち目がないとか言ってなかったかお?」
ノパー゚)「ええ、その通りよ、だからこそ10秒なの」
(;^ω^)「いやヒートさん、ますます分からんお」
そう、と間を置き。ヒートさんは構えを下げ、剣を腰構えに切っ先をこちらへ向けた。
気のせいか、先ほどよりも剣が大きくなっているように見える。
ノパ听)「どうせこれが最後だから教えてあげるわ、この剣、神具には三つの名がある
一つは4種の接続を操る魔法剣、ノートゥング、二つ目は身体強化の剣バルムンク、そして……」
- 115 名前:
◆6Ugj38o7Xg :2009/06/17(水)
23:08:10.15 ID:b7NtEYhJ0
ああ、なるほど、あの接続剣技ってのは、この神具のためにあったのか。
とか思ってる間にも、剣はみるみる長さを増し、その分だけ分厚く肥大していった。
そして、何事かと驚いている間にとうとう剣は身の丈を越え、斬艦刀とも呼べる大きさと成る。
ノパ听)「そして……一撃必殺の破壊力を持つこの形態を、グラムと」
(;^ω^ω)「攻撃特化ってやつかお…『それにしたって極端な』」
ノパ听)「前者二つは、私の身体がもたないから使えない……だから、これが私の全力」
ノパ听)「そして、この一撃に私は全てを込める」
( ^^ω)(だとよ、どうする内藤)
( ^ω^)(そりゃ……勿論)
深呼吸してから、剣を正眼に構え、まっすぐに対する彼女を見据えた。
しずかに聞こえ始めたカウント、遠くから降り注いでくるような歓声。
高鳴る緊張感、この熱気から来るほどよい興奮、集中力が増していくのが分かる。
- 116 名前:
◆6Ugj38o7Xg :2009/06/17(水)
23:10:35.24 ID:b7NtEYhJ0
ノパ听)「9……何のつもり?」
( ^ω^)「受けて立つお、だって全力で来るっていうなら、受けなきゃ失礼じゃないかお」
残り8。
ノパー゚)「……そう」
残り7、ヒートさんは薄く微笑み。
その表情を、冷たく敵意のある物に変えた。
ノハ#゚听)「折角の忠告を無下ににするとは、どこまでも甘い人間だ」
ガラリと変わる空気、怒りすらも感じる言葉。
その威圧感に思わず緊張が走る。
残り6。
(;^ω^)「……!」
ノハ#゚听)「ならばいいだろう、我が全力の剣、受けられる物なら受けるがいい」
- 117 名前:
◆6Ugj38o7Xg :2009/06/17(水)
23:12:26.21 ID:b7NtEYhJ0
残り5。
ノハ#゚听)「だが、我がグラムの重量操作、人の身で耐えられる代物では無いと知れ!!」
宣言と共に、下に触れていた大剣が地面にめり込み、大きな亀裂を走らせた。
ここに来てようやく、僕の中に危機感が芽生える。
脳内に響く声が告げている、これから繰り出されるであろう一撃を、その衝撃を受け切ることはまずできない。
それはあの剣のサイズからも見て取れる、避けるしかない、だが彼女はこうも言った、重量操作と。
ここからは可能性、あるいは攻撃予想図に過ぎないが、もしもあれが一から十まで自在に重さを操れるなら、
重さの犠牲となる速度を維持したまま、たやすく人をすり潰す衝撃を与えられる、まさに一撃必殺の剣。
そして、あの10秒というのが、いわゆる力溜めのカウントだとしたなら。
息を飲む、もしかして僕は、選択肢を思い切りミスったのではないか。
ノハ#--)「3、2…」
( `´ω)(内藤! ぼさっとするな!!)
(;^ω^)「わ、かってるお!!」
- 120 名前:
◆6Ugj38o7Xg :2009/06/17(水)
23:15:28.94 ID:b7NtEYhJ0
怯んでしまった心を瀬川が引き戻し、ようやく手足の緊張がほどけた。
とにかく今分かるのは、ここで負けたら全部終わりって事だ。
だけど、いけない。避けなきゃいけないと思うほど、体が重くなる。
もうあまり時間がない、ここで負ければまた最初から、何ヶ月もかけなきゃいけなくなる。
そんな事してたら間に合わなくなってしまう、そうしたら皆が、
ジョルジュさんにも約束したんだ、絶対に勝つって、何とかしてみせるって。
口だけで何も守れないなんて嫌だ、僕が、やらなきゃ、いけないんだ。
さっきまでの戦いで、手足は既に重く、身体に力もあまり入らない。
(♯`ω´)「……行くぞ瀬川!!」
( `´ω)(…!)
だからこそ、勝機があるとしたら、至近距離。
構えを取り、すぐさま駆けるが時は既に遅し。
呼吸を整えるかのような言葉、そして見る見る持ち上げられていく巨大剣におもわず我が目を疑う。
あの細い腕で、どうして自らの数倍はある鉄塊を軽々ふりあげ、ブォン、と風を切りさく事ができるのか。
- 121 名前:
◆6Ugj38o7Xg :2009/06/17(水)
23:17:21.92 ID:b7NtEYhJ0
(li゚ω゚)(ど、どこが非力だっーーーーーー!!!)
ノハ#゚听)「バサルトォォォォ……」
更に、その刀身に金色の稲光がはしる、ジジジジ、と電撃のような線状光だった。
その跡を追うように、金色の装甲のような物が付属されていく、見るからに分かりやすい強化。
こんな事はとうに慣れた筈なのに、それでも、現実離れした光景に恐怖がめばえる。
同時に、背負っている物の重さ、見慣れた相手という戦い辛さ、陽の出ていない事への不安。
すべてが胸を焦がし、息が上がり、ついには視界までもどこか遠く見えてしまう。
(♯ ω )「ぅ、おぉおおおおおおおっ!!!!」
それらを払うべく、僕はやけくそめいた雄叫びをあげ、更に前へ。
不意に、それを見たヒートさんが少しだけ、悲しそうな目を向けた気がした。
ノハ#゚听)「バスタァアァアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」
だがその直後、向かい来る僕へと向かって、大剣が横薙ぎに放たれた。
それも尋常ならざる速度、大剣ゆえの回転の遅さなど微塵も感じさせない、
- 123 名前:
◆6Ugj38o7Xg :2009/06/17(水)
23:19:39.74 ID:b7NtEYhJ0
狙いは胴体、避けにくいことこの上ない剣線、だからこそ、こうくる事を願っていた。
ここしかない、突っ込む勢いを殺すことなく、振るわれた大剣が軌道を追っている今。
(♯`ω´)「白刃一閃…!!」
足元から砂埃を舞い上がらせ、一瞬で現れた竜巻が僕を包む。
ジジッ、ジ、ジ、ジジジジッ、金色の稲光はなおも続く。
その埃の影を、わずかに遅れて輝く大剣が切り裂き、砂埃がまとめて吹き飛ばされた。
だが、吹き飛ばされた影の中に人影は無く、代わりに地面に影だけが残る。
ヒートは上目遣いに、その姿を確認した。
大剣はまだ軌道を終えていない。
捉えた、僕はそう確信する。
- 125 名前:
◆6Ugj38o7Xg :2009/06/17(水)
23:22:04.72 ID:b7NtEYhJ0
そう、横からの直線的な軌道ならば、飛び上がれば済むだけの事。
しかしそれで終わりではない、このまま間髪入れずに近距離戦に持ちこむ必要がある、
倒せないまでも、そうすれば大剣では対応できない、それでこの攻防は終わる。
(#^ω^)「スカイ…!!」
(な、なんだっ!?)
(;^ω^)「でぃば…お?」
しかし、そこで頭に響くのは、驚きと危険を告げる声。
斜めに滑空するように飛び上がった僕は、すでに前しか見えていない、
だが、それでも違和感に気付いた。
まず右から放たれた剣戟、振りぬく彼女の腕は、左手が上になっていた。
にも関わらず、今、目の前に居る彼女は手首をかえし、右手を上にしている。
一瞬、時が止まったような錯覚が、悪寒となって全身を駆ける。
どう考えても、このタイミングでそんな状況になる筈がない、ないのだが、
剣の軌道をわざわざ見るまでも無い、左足にかけた比重、体のひねり、それら全てが教えている。
- 127 名前:
◆6Ugj38o7Xg :2009/06/17(水)
23:24:23.91 ID:b7NtEYhJ0
慣性も何もかもを無視して、すでに剣の軌道は、返されているのだと。
ノハ#゚听)「で や ぁ あ、あ あ あ あ あ あ っ!!!」
いつからか、耳が馬鹿になっていたんだろうか、ヒートの声がやけにはっきりと聞こえた。
ついでに気付いたんだけど、体が横に引っ張られている、先の剣が起こした風圧だろう。
ああ、そうか、どっちみちもう駄目だったんだ。
彼女がくれた10秒、あの間に何とかしなきゃいけなかったんだ。
(# ω )「く、しょ…」
体が傾く、迫る大剣へと引き寄せられるように。
それでもあがこうと、身をよじり、剣を突き出す。
同時に、大剣がぶつかっtttttttttわせdrftgyふじこlp;。@。
- 128 名前:
◆6Ugj38o7Xg :2009/06/17(水)
23:25:38.12 ID:b7NtEYhJ0
ブツンッ
<―――――――ザザ――――>
ピシッ
尋常じゃない衝撃。 一瞬で世界が暗転。
- 133 名前:
◆6Ugj38o7Xg :2009/06/17(水)
23:44:31.18 ID:b7NtEYhJ0
上下が分からない。
訳が分からないまま景色が流れる。
音がしたのかも分からない。
呼吸が止まる。意識が飛ぶ。強烈な耳鳴り。
耳鳴りが、また何かが飛んだ。
頭の中に奇妙な、それでいて小気味よい音が響く。
あるいはゴキだか、ミシだか。
身体の中で、大きな木が倒れるような音だった。
腕が吹き飛ばされたような錯覚。腕の感覚が無い。
真っ白になった視界の中に、自分の腕らしき姿が見える。
まだ繋がっている。
- 135 名前:
◆6Ugj38o7Xg :2009/06/17(水)
23:46:34.68 ID:b7NtEYhJ0
その腕の先に剣があった、色あせ、輝きを失った剣の姿。
大きくえぐられ、はこぼれというより、もはやあれは 欠けている。
剣に 次 つぎにひびが はしり。
じきに くだける。
それにしても うるさい。
う る さ い 。
耳 鳴 り が うる さ い 。
それに なんだ あれは。
- 137 名前:
◆6Ugj38o7Xg :2009/06/17(水)
23:48:59.67 ID:b7NtEYhJ0
たくさんの まっ くろ い うで ?
( Ф Ф)
かお に おおきな あざ ?
<----―――――-----――――-ザザ---->
ごうごうと。
み み な り が 。
- 139 名前:
◆6Ugj38o7Xg :2009/06/17(水)
23:51:44.99 ID:b7NtEYhJ0
< ―――ザザ―-−−衝げk―−の――--―sy――-ザー―― >
- 140 名前:
◆6Ugj38o7Xg :2009/06/17(水)
23:53:29.57 ID:b7NtEYhJ0
(あ、あぐっ…!!)
(どうして!?)
誰かが目の前から弾き飛ばされた。
誰かはよろけて片膝をつき、驚きに目を見開いている。
斬りこんだ。誰かは手にした剣で受け止める。
その数は三度。
一度で誰かは苦悶に表情を歪め、二度で体勢が崩れる。
そして三度目、ついに誰かの持ってた剣は弾かれ、宙を舞う。
その表情には、明らかな恐怖が浮かんでいた。
見知った顔が、泣きそうなくらいに歪んでいる。
その肩を、別の誰かの足が蹴りつけ、地面にひれ伏せた。
真下に彼女が居る、あれ、踏んでいるのは……。
おかしいぞ、どうして僕はこの人を踏みつけているんだ?
- 141 名前:
◆6Ugj38o7Xg :2009/06/17(水)
23:55:29.01 ID:b7NtEYhJ0
彼女は、どうにかどけようと、僕の足を掴んでいる。
だけど僕の足は、更に全体重をかけて華奢な身体を踏みつけた。
歯を食いしばっている、その頬を血が伝った。
赤い髪を、もっと赤い血が染める。
あれ、何で僕はこんな事を?
その時、眼前に白銀に輝くなにかが見える、言うまでもなく剣だった。
刃先は下を向いている。
当然だ、両腕を掲げて、垂直に構えているのだから。
いや、そんなことしたら……
抵抗が激しくなった。
そうだろう、この手が降りれば、ちょうど目玉のあたりに突き刺さるだろうから。
- 147 名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2009/06/18(木) 00:09:10.88
ID:3+HGvm1P0
誰の?
ヒートさんの?
まて、だめだ
大きく掲げた腕に、更に力がこもる。
ヒートが苦痛に目を閉じた。
やめろ、なにしてんだ、やめろって
そして、真下へ向かって、切っ先が落とされ――――。
待。
―――剣は、深く地面に突き刺さった。
- 149 名前:
◆6Ugj38o7Xg :2009/06/18(木)
00:11:56.09 ID:3+HGvm1P0
(; ω )「っ!!!」
ノハ;゚-)「っっ……え?」
(li゚ω゚)「………ぷはっ!! ぜえっ!!
ぜえっ!!」
全身を冷や汗だかなんだか分からない汗が伝う。
心臓が割れ鐘を打つように鈍く胸を叩き、息が上がる。
剣は、ヒートの顔面のすぐ横に突き立っていた。
だけど今はその安堵なんかより、得も知れない恐怖に駆られていた。
(li゚ω゚)(なんだ、なんだお今のは!??
僕は何を!?)
ノハ;゚-)「……内と…う?」
声のする方を見れば、見上げる彼女の姿があって、僕は慌てて飛びのいた。
同時に脱力感、腰が抜けたように足元がおぼつかず、たたらを踏んでから尻餅をつく。
『なんということでしょう、誰一人として叶えられなかったリーグを勝ち抜き』
『エースを! オーガを! そして女王ヒートまでも下し、今ここに―――』
- 151 名前:
◆6Ugj38o7Xg :2009/06/18(木)
00:14:19.82 ID:3+HGvm1P0
両手を見る、意思とは関係なく、震えていた。
そんな僕を不思議そうにヒートが見つめている。
(li ω )「あ、あ……」
動揺と恐怖が混ざり合い、何がなんだか分からない。
あれは何だったんだ、今の、あの変な感覚は何なんだ。
『新たなる、ヒルト王の誕生だーーーー!!!』
困惑に震える僕をよそに、アナウンスは祝福の言葉を並べる。
だけど何一つあたまに入ってこない。代わりに血の気が引いていく。
無常にも、この状況を理解できるものは少なく、観衆のどよめきはやがて。
大歓声となって大気に轟き、闘技場を揺らした。
- 153 名前:
◆6Ugj38o7Xg :2009/06/18(木)
00:16:58.43 ID:3+HGvm1P0
おぞましい異形の姿だった。
何かが僕の流れ込んでくるような、そんな感覚があった。
それが今にも僕を消してしまいそうで、怖くてたまらなかった。
そうして鳴り響く喝采の中、僕は呆然と自分の手のひらを見つめていた。
怖くて、ただ怖くて、周りを見ることすらできなくて。
そして何より、悲痛に歪む彼女の顔が目に焼きついて、どうしても離れなかった。
- 155 名前:
◆6Ugj38o7Xg :2009/06/18(木)
00:19:25.54 ID:3+HGvm1P0
………。
暗い通路の奥から、その一部始終を眺める姿があった。
母者はしばし静観し、やがて溜息を吐くと、こぼすように呟き、そして―――。
@@@
@#_、_@
( ノ`)「間違いない、か……まだ蠢いていたのかい、あれは」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「……刃を失くした亡霊……あの子もまた、厄介なのを選んだもんだねぇ」
"は"を失くした亡霊と、確かに、そう言っていた。
- 156 名前:
◆6Ugj38o7Xg :2009/06/18(木)
00:21:27.55 ID:3+HGvm1P0
【 次回予告 】
- 159 名前:
◆6Ugj38o7Xg :2009/06/18(木)
00:22:29.33 ID:3+HGvm1P0
- ミ,,゚Д゚彡「ゲスト安価、お願いしますね」
>>160
- 160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/18(木) 00:22:53.84 ID:ro8hhS5PO
- ひーと
- 167 名前:
◆6Ugj38o7Xg :2009/06/18(木)
00:39:05.94 ID:3+HGvm1P0
- ミ,,゚Д゚彡『さーて次回のお話は!』
ノパー゚)『チャンピオン…文字通り、王座を得た内藤君だけど、心ここにあらず、その理由とは』
( ω )「……瀬川、答えてくれお」
ミ,,゚Д゚彡『暴走する最中に見えた幻に、ブーンの心は戸惑うようです』
ノパー゚)『少しくらい野性的な方がいいのだから、気にしなくていいのに』
ミ;゚Д゚彡『……野性的って……あんな目にあったのに』
ノパー゚)『全ては戦いの中で起きた事、許容範囲、ですわ』
ミ,,゚Д゚彡『寛大ですねぇ、でも野性的とはまた違うと思うよ』
_,
(;゚∀゚)「……どうやら、ここに留まってる訳にはいかねえみたいだな」
ミ,,゚Д゚彡『やがて届いた報せには、エッダが既に攻められているという事実』
ノパー゚)『そして、ハインリッヒは何かを決断する』
ミ,,゚Д゚彡『という訳で、次会! 異世界でもう一度 第32会 「来るべき日の為に」 』
ノパ听)「ちゃんと読まねば、泣いてしまうぞ!!」
つづく、、、I
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