- 7
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2007/07/10(火) 22:30:44.43 ID:vcCYzvVq0
【 第17会 「愛情と寂しさと」 】
(; ω )「……づぅ」
柔らかな輝きを放つ剣を地に突き立て、杖代わりに立ち上がった。
全身を貫くような痛みが脳に届き、身体の痙攣が止まらない
気を抜けば白く染まってしまいそうな視界は揺れて、それでも必死に耐える。
熱くて、寒くて、苦しい、辛い。
けれどそんな思いを全て吹き飛ばすほどに、負けたくないと心が叫ぶ。
遠い日を想い。
いつまでも変わらずに居られなかった事が悔しくて、自己を通せなかった自分が情けなくて
これはその罰なんだ、だからこの痛みも苦しみも、全て受け入れよう。
- 9
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2007/07/10(火) 22:33:20.52 ID:vcCYzvVq0
これがようやく手に入れた、僕だけでの苦しみ。
だから
(; ω )「ごふっ、、、ぜえっ…ぜえっ…!!」
口の中は鉄の味がする、それが気持ち悪くて残さず吐き出した。
ξ;゚听)ξ「なっ――!!」
ぼんやりと正面を睨めば、そこには驚愕した表情の人が居る
ザマアミロ、まるで余裕の無い筈の思考にそんな単語が浮かんだ。
(;^^ω)(お、おいおい、あんま無茶せずもう少し待っt)
(; ω )(それより…っ、瀬川!
さっきのは何だ!?)
( ^^ω)(あいつの剣か…)
(; ω )(そうだっ、くそ…受け止めたと思ったのに…!)
- 11
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2007/07/10(火) 22:35:21.84 ID:vcCYzvVq0
それは先の攻撃、僕が斬られる直前の事だ。
『戦う資格など無い!!!』
言葉と共に大きく振りかぶった上段からの一閃
だがモーションが鈍い、止められる、いや、慌てて剣を上に構え、実際に受け止めた。
あの時感じた衝撃と手の痺れは間違いようがない。
だが、気付けば頭上で交差する透明な剣が消失。
そして、視界の隅、真下には消えた筈の剣の姿
次の瞬間には、僕の腰の辺りを深く抉り込んだ剣が肉を引き千切りながら肩口までを斬り裂いていた。
(;^^ω)(恐らく…奴の持つ神具の力だろう…とは思う)
(; ω )(思うて、わ…からないのか?)
(;^^ω)(わからん…アロンダイトと言ったか…あの剣は何か変な感じがするホマ)
(; ω )(変な感じ…?)
(;^^ω)(ああ、上手く言えないが、なんだ…この感じは…)
- 12
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2007/07/10(火) 22:36:19.99 ID:vcCYzvVq0
(; ω )(…?)
ξ;゚听)ξ「貴様…まだ立てるか」
ツンは僕を凝視し更に表情を険しくさせる、何故なら
紅く染まる裂かれた衣服の奥にあるはずの傷は、既に存在しなかった。
ξ;゚听)ξ「それが、いやそれも太陽の力か」
驚きを隠せない様子で問いかける、負けじと僕も先の疑問を投げかけた。
(; ω )「はぁ、はぁ…そうだ、お前こそ、何だ、さっきの…は」
ξ゚听)ξ「…知りたいか」
(;^ω^)「…知りたいね」
ξ;゚听)ξ(…? なんだ、先とは雰囲気が…)
(;^ω^)「…?」
ξ゚听)ξ「…っ、ならばその身で知れ!」
- 13
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2007/07/10(火) 22:37:07.76 ID:vcCYzvVq0
そう告げ、再びツンが駆け出した
(;`ω´)「くっ!」
慌てて地に刺した剣を引き抜き、両手で腰溜めに構える。
ξ゚听)ξ「はっ!!」
瞬く間に距離は無くなり、繰り出されるは横薙ぎ一閃、それを下に構えた剣を打ち上げ弾き返す。
不思議と、さっきまであった苦痛感は消え去り
代わりに身体の奥底から溢れ出るような心地よい熱を感じていた。
( `ω´)「おおお!!!!」
ξ;゚听)ξ「!!」
返す刃を向け、そのまま上段から斬りかかる
ツンは咄嗟に身体を捻りながら剣を振るい、中間で衝突した剣が激しく音を打ち鳴らした。
ξ゚听)ξ「ちぃっ…」
( `ω´)「まだ!!」
思考は高速で回転を続ける、一瞬一瞬を捉え、理解する事で一秒は無限に広がっていく
その光景は決してスローでは無い、それはただひたすら反応速度により生まれる時間遅延現象
- 15
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2007/07/10(火) 22:38:33.50 ID:vcCYzvVq0
身体は思い通りを超越し、理想通りに動く。
この感覚、これを言葉にすれば力、全身に力が沸きあがり
今なら何だって出きる気がして、喜びにも似た感情が僕を支配していた。
ξ♯゚听)ξ「おのれがぁ…図に乗るな!!」
怒りを顕にツンが声を張り上げ、大きく剣を振り上げる
今度ははっきりとそれを知覚できた。
(;゚ω゚)「!!!!」
咄嗟に反応すべく思考が回るが、生まれたのは混乱だった
捉えたのは、上段から円を描く斬撃と、同時に右方向から迫る横薙ぎの一閃。
それは、二つの剣が別方向より同時に襲い来る、有り得ない現象。
(; ω )「くっ…!?」
わけがわからない、避けれない、捌ききれない
けどやるしかない、咄嗟の決断が僕に与えたのは恐怖と、更なる熱情。
まず横の一閃を柄で叩き落し、上段から襲い来る剣戟は受け止めずに線を逸らすと
勢いもそのままに剣が地に突き刺さった。
- 16
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2007/07/10(火) 22:40:25.09 ID:vcCYzvVq0
( ^^ω)(よし!!)
ξ;゚听)ξ「!!」
そうして生まれたのは完全な隙。
( `ω´ω)「『もらった!!』」
ξ゚ー゚)ξ「甘い!!」
無防備な姿を晒す奴へと流れるように剣を向ければ、そこに新たに現れる透明な剣
次いでかち鳴る金属音、更には左から4つ目の剣戟が襲い来る。
(;`ω´ω)「んなっ!? 『こなくそおっ!!』」
体制も気にせず、力任せに剣を左へ合わせれば
それだけで容易く弾き返す事が出来た。
( `ω´ω)「『甘いのはお前だ!!』」
ξ゚听)ξ「だから甘いと言ったろう!!」
続けて半ば体制を崩した僕へ向け、今度は下方向から斬り上げる一撃。
(;`ω´ω)「やばっ…『飛べ!!』」
その場で地を蹴り飛ばし、傾く体を無理矢理に横へ移動させると
刃が腕の辺りギリギリを掠めた。
- 17
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2007/07/10(火) 22:42:20.65 ID:vcCYzvVq0
ξ;゚听)ξ「…ふぅ」
(; ω )「はー…」
再び距離を取り、互いに息を整えつつ視線を交わし睨みあう。
今度は奴の瞳を直視しても平然と居られた、いや、むしろ、不思議な感覚が湧き上がった
身体は熱く、心は音を無くし、ぞくぞくと寒気に似た物が背中を走る。
その感情の正体を自分自身で理解する間も無く
ξ;゚听)ξ「…貴様、何を笑っている」
僕は唇の端を持ち上げ、自分でも判るほどに歪んだ笑みを浮かべていた。
収まらない、興奮が収まらない
先の攻防を思い浮かべる度に鳥肌が立つ。
ξ;゚听)ξ「…」
「ツン様!!」
ξ゚听)ξ「?」
- 19
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2007/07/10(火) 22:46:34.60 ID:vcCYzvVq0
と、そこへ何処かへ去っていった筈の敵兵がぞろぞろと現れた。
ξ゚听)ξ「何をしている、破滅は見つかったのか!」
湖鏡兵「いえ…ですが、ああも苦戦しているのは見ては放って行けません!」
湖鏡兵「我々が援護します!」
ξ゚听)ξ「何を言っている、いいから行け!」
湖鏡兵「奴にはもう仲間が何人も殺られてる、あいつらの敵討ちだ!」
湖鏡兵「そうだそうだ! いくら管理者と言え、所詮子供一人、袋にしてやんよ!!」
そうして敵兵達が僕の前に意気揚々と並び立つ。
( ω )「…」
彼等は一様に憎しみの篭った瞳でこちらを睨んでいる
僕はそんな様子を見つめながら、物思いに耽っていた。
- 20
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2007/07/10(火) 22:48:01.37 ID:vcCYzvVq0
目の当たりにした人の思いの連鎖、世界が違うとは言えそれは変わらないらしい
人を殺す事は悪い事、やってはいけない事だと僕は知っている。
けれど…当然の様に行われるその矛盾。
きっと、彼等にとってのそれは人を殺める行為を求めた行動では無く、別の何かの為
それぞれがそれぞれに、何かを願った上での行動なんだ。
そこに善悪はあるのかさえ分からない、いや、そもそも善悪は誰が決める物だ?
人を殺さない事が本当に善?人を殺す事が本当に悪?
確かに僕の元の世界では悪だった、けど今、この世界でも悪なのか?
こんなにも当たり前のように人の生死が懸かる世界で、それでもそれは悪い事なのか?
もう、分からない。
もう何が駄目な事なのか分からない
けれど、今のままじゃ駄目だって事だけは気付いた
――なら
- 23
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2007/07/10(火) 22:50:08.83 ID:vcCYzvVq0
湖鏡兵「行くぞ!!!」
ξ;゚听)ξ「待て! どうも様子がおかしい、退け!!」
――僕は…悪でいい。
眼前に立ち並ぶ男達はそれぞれ色の違った球状物体を手に、言葉を告げる。
不意にこの世界に訪れた時の事を思い出した
恐ろしいまでの強烈な違和感、周囲の至る所に居る何かの存在感
辺りを包む、風の流れ、それを今 はっきりと認識できる。
湖鏡兵「 !!」
何か、怨念めいた言葉と共に目の前に炎が溢れ、地を抉るような空気の塊が走った
遅れて数名の男が武器を手に駆け出す、それらは僕目掛けて一直線に迫る。
- 24
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2007/07/10(火) 22:51:51.94 ID:vcCYzvVq0
( ω )「…………」
目を閉じ、黙ったまま、強く剣の柄を握り締め、正面に構えた
同時にイメージする、周囲に流れる風が僕を取り巻き、吹き荒ぶ光景。
揺れる木々が騒ぎ、砂煙が巻き上がり、草葉が舞い飛ぶ。
目前まで迫った炎が目の前で見えない壁に遮られるように勢いを止め
襲い来る突風も同様の風に煽られ、消え失せた。
想像は今、現実となり、風が僕を包むように踊り狂う
耳元を掠める空気がヒュウと高い音を響かせ
すぐ先では轟々と唸り声を上げる。
そんな惨状を目撃した兵達は一度足を止め、驚きの声を上げた。
湖鏡兵「な、風の壁か!?」
湖鏡兵「ええい、あんな物がそう長く持つものか!!
もう一度だ!!!」
- 25
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2007/07/10(火) 22:53:27.50 ID:vcCYzvVq0
この世界の常識で考えたならば、兵の一人が言った言葉は正しい。
本来、風を操る接続の力に殺傷力を持たせるには長い持続時間を必要とする
理由としては炎や雷などと違い、それ自体に殺傷力は無いからだ。
更に延々と流れる物である事と、接続を止めればすぐさま弱まってしまう事が挙げられる
その辺りについては水の接続と似通った物ではあるが
質量の違いから接続情報は風の方が遥かに少なく、扱いやすい物となっている。
逆に水はその分膨大な情報が発生するため、一般に戦闘においては役立たずな力であり
使用するには大量の情報を受け入れる尋常ならざる容量を必要とする。
との事から風は扱いやすい、とは言え、それは微量の風に接続した場合の話だ。
先のブーンのそれは、相当なレベルまで集約された風壁である
それには多量の風を圧縮させねばならず、一瞬起こす事は可能にしても、それを長時間となれば話が違う。
本来そんな真似はできよう筈も無い、それはこの世界の到達時にブーンが倒れた事からも伺える
あの時、確かにブーンは周囲を吹く風と所構わず繋がった、だが実際にしたのはそれだけの事で
現在の様にそれら全てを操る真似はしていない、それでも倒れてしまう程に大変な行為なのだ。
- 26
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2007/07/10(火) 22:54:58.69 ID:vcCYzvVq0
湖鏡兵「…な、こんな馬鹿な事が…」
何度目かの攻撃、それが通じていない事の確認を繰り返し、狼狽する彼等は流石に恐怖を覚えた
幾度と無く放たれた炎は全て風に遮られ
幾度と無く風を風で止めようとすれど、それは弱まる素振りすら見せない。
ただ、変わらず轟々と唸り続ける風の障壁。
ならば何故その様な行為が出来得るのか、それは単に神具の恩恵。
ただでさえ太陽の神体強化を受け、接続情報を受ける容量も跳ね上がっていた
そこへ更に己が寿命と引き換えに肉体の細胞を作り変え、再結合をも果たす二度目の進化を果たした
故に彼の身体能力と容量、共にあらゆる意味で常人のそれを遥かに凌ぐ、その姿は正に――
湖鏡兵「ば…化物め…!」
湖鏡兵「こうなれば直接…!」
やがて痺れを切らした湖鏡の兵達はそれぞれ剣を構え、雄叫びを上げながら駆け出した。
- 28
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2007/07/10(火) 22:56:58.15 ID:vcCYzvVq0
( `´ω)(来るぞ…!)
( ω )「…」
内何名かの風の接続者が後方に残り、僕を覆う風を少しでも緩和させようとしている。
好きにすればいい、どうせもう手遅れだから。
( `ω´)「エアロバリア…チャージ!!」
ξ;゚听)ξ「!!」
瞬間、ざわめく木々が静まり返り、周囲にまで吹き荒れていた風がピタリと止んだ。
後方に残った何名かは驚きと疑問を込めた表情を浮かべたが
既に駆け出した者達は気にも留めず、ひたすら声を張り上げ僕へと駆けてくる。
あいつらは、僕の夢を見つける為の障害。
救いたいと願う人達を殺そうとする、邪魔者だ。
- 31
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2007/07/10(火) 22:58:06.73 ID:vcCYzvVq0
ならば、僕のすべき事は一つ。
(♯ ω ω)「消えろ…!!『マックス、ストオオオオオオオオム!!!!』」
咆哮と共に、構えた剣を振り上げ、何も無い空間を切り裂く。
「「!!」」
「な――――!!」
自分の周りに集約し、圧縮され、質量のレベルにまで成った風の解放
同時に前方へ向けその全てを放たれた。
木々がしなり、地面が削られ、断末魔にも似た悲鳴を上げる声さえ掻き消す暴風が吹き荒れた。
巻き込まれた数名は吹き飛ばされ
ある者は体をおかしな方向に曲げつつ地を転がり
またある者は付近の木に激しく打ちつけられた。
- 32
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2007/07/10(火) 22:59:35.53 ID:vcCYzvVq0
圧力空間の中、それでも尚耐え続ける者も居たが
風の中を駆ける一つの影により無駄な行為となった
人の横を過ぎ去り際に刃が走り、腕を、首を、胴体が千切られ、血が宙に舞い上がり、風に煽られ吹き飛んだ。
血飛沫舞う追い風を背中に受け、驚異的な加速度を以って真っ直ぐに前進
向かう線上の先には向かい風の中、背にした樹を支えに剣を構えるツンの姿があった。
ξ;゚听)ξ「…っ」
三 `ω´)「これで終わりだ!!」
既に飛ぶ様に駆ける足が地に触れるや否や、渾身の力を込めて蹴り
同時に後ろ手に構えた刃を横に向け、更なる加速度を以って狙いを定める。
ξ♯゚ー゚)ξ「どうかな…っ!」
暴風の中で退く事もたじろぐ事もせず、大きく剣を振り上げ迎撃の姿勢を取ると
上半身を捻り、最大の力を込めたまま迫り来る影に狙いを定めた。
- 33
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2007/07/10(火) 23:01:13.38 ID:vcCYzvVq0
次の瞬間には両者の距離は零と成り。
(♯`ω´)「行くぞ…! ハリケーン・ソニックッ!!」
叫ぶ声と共に、二つの剣撃が同時に放たれた。
ξ♯゚听)ξ「来てみろ…鏡面刹!!」
風を纏う横一文字、文字通り音速の速度を持った一閃が走り
それを大量に現れた剣が同時に受け止め、一瞬にして連続した金属音が響いた。
(; ω )「っ!!!」
押される風に流され、止まらぬ前進
通り抜け様いくつかの刃に身を裂かれ、熱に似た痛みがそこら中を襲う。
ξ; )ξ「ぐ…ぅ!!」
押し潰す様な風を受けた全身の骨が軋み、悲鳴を上げ
やがて耳の奥に鈍い音が響き、堪らず顔をしかめ呻き声が漏れた。
- 36
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2007/07/10(火) 23:02:52.08 ID:vcCYzvVq0
ξ; )ξ「!」
頬に何か温かい物が触れ、嫌な匂いが周囲に満ちた。
それは、無惨に斬り殺された自国の兵達の血
衝突よりやや遅れて、風に煽られ飛ばされる赤い雨が到着し
降り注ぐ液体がびちゃびちゃと嫌な音を立てながら周囲を赤く染めていく。
更には衝突の余波でツンが背にしていた樹が、メキメキと激しい烈音を響かせ折れ曲がり
中心より白い部位をあらわにしながら地に倒れ、世界中に響くような轟音を立てた。
そして。
一過した風が収まり、先までの轟音が嘘の様に静寂に包まれた。
握っていた剣がゆっくりとこぼれ、地に落下し甲高い音を立てる。
ξ; )ξ「ぅ…う」
ツンは呻き声を上げながら右腕を抑えている
その腕はだらしなく下げられ、指はそれぞれあらぬ方向へ曲がっていた
- 37
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2007/07/10(火) 23:04:07.17 ID:vcCYzvVq0
ξ; 听)ξ(…これほど、とはな…油断したつもりは無かったが)
そうして周囲を見渡すも、その惨状に思わず息を飲んだ。
辺りはまるで嵐が通過した後の如く様々な物が無残に散らばり
パーツを欠き、動かない人の形をした物も転がっている。
ξ )ξ「全滅、か…」
他人の血で赤く染まった身体を見直し、憎々しげに呟いた
そうして、苛立ちを隠さず奥歯を噛み締め、深く息を吸い込みその名を叫んだ。
……。
- 38
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2007/07/10(火) 23:06:10.09 ID:vcCYzvVq0
( ゚ω゚)「ぎゃあああああああ あ」
あれから風に流されるままに、木々が茂る林の中を駆け続けていた
迫る木を避けつつ、何度も躓きながら勢いを殺していくも…
( ω )「あ ぶっ!!!」
流石に言う事を聞かなくなってきた足の力が抜け
思い切りすっ転んだ勢いもそのままに、ちょうど目の前にあった木に顔面から突っ込んだ。
(li ω )「――――あだだだっ!!!〜〜!!っっ!!
ぬおおおおおおぉ…っ!!」
あまりの衝撃に思わずその場でのたうちまわる
痛い、とんでもなく痛い、痺れて触った感覚は無いのに激痛が止まらない
あ、鼻血が出てる。
いや、まあそれ以前に、さっき斬られたせいで肩とか腕とか、よく見なくても血だらけだけどね。
(;´ω`)「ひぃ、ひぃ…」
(;^^ω)(だ…大丈夫か? その、色々…)
- 41
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2007/07/10(火) 23:10:06.75 ID:vcCYzvVq0
(メ;ω;)「すっげえ痛い」
(;^^ω)(そうか…)
(メ`ω´)「あ! そ、そうだ、あいつは!
ツンは!!」
(;^^ω)(わからん)
(メ`ω´)「…戻ろう、今度こそ息の根を止めてやる」
( ω)(……お前、そ)
瀬川が僕に何かを言いかけるも、それは遠く聞こえてくる声によって遮られた。
「 太陽!! 聞こえているだろう!! 」
( ゚ω゚)「この声…」
木々の間を木霊するように聞こえてくる声は紛う事なきツンの声
そして響く声はこちらの返事を待たずに続く。
「 今日の所は退いておく! だが次は無いと思え!! 」
- 42
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2007/07/10(火) 23:12:19.31 ID:vcCYzvVq0
(;`ω´)「この、逃がすk…か…あ?」
勢いよく立ち上がると同時に、視界が大きく歪んだ。
(; ω )「????」
突然、貧血にも似た強烈な眩暈が襲う
体が重く、視界の上半分を白色がゆっくりと包んでいく
身体の感覚が薄くなり、真っ直ぐに立ってもいられず膝をついた。
懸命に意識を保とうとする僕の耳には、更に声
「 次は、次こそは必ず破滅は返してもらう!! 同時にそれが貴様の最後だ!! 」
(; ω )(…は、めつ?)
何処かで聞いたようで、けど意味が分からない
いや、それよりも、言いたい事がある。
あれだけ好き勝手言われて、黙って逃がすもんか
せめて、せめてこれだけは…
- 45
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2007/07/10(火) 23:13:49.17 ID:vcCYzvVq0
(li`ω´)「…僕は、僕は戦う!! 僕の願いはみんなを救う事だ!!
お前等みたいな、みんなの平穏を犯す奴から守るんだ!! ぜったいに!!」
(li ω )「だ、から!! お前等がみんなを殺しに来るって言うならああ!! 僕がお前等みんな殺してやる!!」
(li )「そうだ、僕の願いを邪魔するやつは!! みんな! 全て! ぼくが……!!」
「…こ……ろ…し…」
既に逃げたのか、答える気は無いのか、木霊する声に返事は無いまま
言うだけ言って満足した僕の意識はゆっくりと暗闇に落ちて行く
深く、深く、自分が 堕ちていく
その過程に、僕へと問いかける声があった。
- 46
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2007/07/10(火) 23:16:08.45 ID:vcCYzvVq0
( ω)「 それで、いいのか? 」
・・・一つだけ分かった事があるよ
( ω)「 なんだ? 」
奇麗なだけじゃ、理不尽な事の前では、誰かを守る事も、誰かを救う事も出来ない・・・いや、それ以前に
・・・・自分を守る事さえ、出来ないんだ、って
( ω)「 …かもな 」
僕は弱くて、小さくて、無知で、駄目な奴だ・・・・・そんな奴が自分の理想を叶えようって言うんだからさ
・・・自分が汚れる事を気にするような、そんな・・・何の犠牲も無くして望んでいい物じゃないんだ
( ω)「 だから…自分を捨てる、か? 」
・・・・・・手段を選んでちゃ、駄目なんだ・・・だからその為なら、僕は・・・僕なんか、どうなったって
( ω)「 … 」
- 48
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2007/07/10(火) 23:18:07.74 ID:vcCYzvVq0
決めたんだ・・・みんなの平穏を乱す奴等は、僕が・・・全て消してやる
そうしたらきっと、最後には・・・・みんなが、楽しく暮らせるようになって・・ぼくも・・・・・
( --ω)「 今はもう、何も考えるな 」
( --ω)「 それよりも、前に俺が言った事を憶えているか?」
・・・なんだ?
( --ω)「 進化の代償、それを他言するなと言った事だ 」
・・・・憶えてる・・・理由は、なんとなく分かるよ、みんながそれを知ったら、きっと僕を止めようとする・・・
そうしたら、僕にも、他の誰かにも、きっと迷いになる、だから、誰にも言うなと言ったんだろ・・・?
( --ω)「 ああ 」
それなら・・・大丈夫だよ、僕はこの想いも、苦しみも、誰にも話すつもりは無いから・・
そうしたら、きっと、彼の様になれる・・・・強く、なれる、そんな気がするんだ
( --ω)「 なら注意することだ 」
・・・・? 何を?
( --ω)「 何時からお前はそんな口調で喋るようになったんだ? 」
- 51
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2007/07/10(火) 23:21:29.96 ID:vcCYzvVq0
え?
・・・・あ
( --ω)「 そんな事じゃすぐに全部ばれるぞ 」
う・・・気をつけるよ・・・お
( --ω)「 それと、忠告しておく、進化の力を行使できるのは後1度が限度だ 」
ど、どうして・・・だお?
( --ω)「 どうしても何も、本当ならお前は既に2回死んでいたんだ、それを覆したんだぞ?
もうとっくに限界だ、後は細胞が急激に崩壊していく事になる 」
・・・・・・
( --ω)「 だから…いや、むしろもう二度と進化の言霊は唱えるな 」
・・・・・・したら、唱えたら、どうなるんだ…お?
- 52
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2007/07/10(火) 23:23:55.33 ID:vcCYzvVq0
( --ω)「 言わなきゃ分からないか? 」
・・・でも、それでも、僕は――――――。
僕は、堕ちて行く自分を、まるで人事の様に感じていた。
暗闇に向けて歩き始めている事を理解しながらも、進むと決めたから。
自分で自分の心を引き裂いて、痛む心を冷たく凍りつかせて、願うのはもう二度と負けない事。
ただ、それだけだった。
……。
- 53
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2007/07/10(火) 23:25:44.45 ID:vcCYzvVq0
場所は変わって日陽の神殿内部、迎撃に出たジョルジュやドクオ達
そして襲撃の知らせを聞き飛び出したブーンの身を案じながら待ち続ける人々が居た。
(´・ω・`)「…大丈夫かなぁ」
/ ,' 3 「まあ管理者としての力を奮える者達じゃ、そう易々とやられはすまいて」
(´・ω・`)「そんなもんですかね」
/ ,' 3 「そうじゃとも、…まあお主には納得できんかもしれんがの」
まだこの世界に訪れてから日も浅く、戦いのたの字も知らないのだから仕方ないと荒巻は言う。
管理者が持つ人ならざる力を持ってすれば普通の人間には太刀打ちならない
要は人間が生身に素手で戦闘機にでも挑もうとしている様な物らしい。
(´・ω・`)「とは言っても…ねえ」
それは事実なのかもしれないが、戦いに向かったのは自分が良く知る人間だ
特にブーンに至っては…とてもじゃないが命をかけた戦いの場には似つかわしくない
むしろあうあう逃げ回ってる方が余程しっくり来ると言う物だ。
- 54
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2007/07/10(火) 23:27:31.95 ID:vcCYzvVq0
(´・ω・`)「僕、ちょっと外の様子でも見てきますね」
それにしても…場の空気が重くて、どうにも落ち着かない
ひとまず外で風にでも当たって来ようと立ち上がった。
/ ,' 3 「うむ」
ζ(゚‐゚*ζ「あ、気をつけてくださいね…」
从 -∀从「…いってら」
去り際に、ちらりと座り込む一人を盗み見る
そこには俯き、長い黒髪で表情を隠すように佇む彼女の姿があった。
川 - )
(´・ω・)「…」
(´-ω-`)(どんびしゃ、か…)
何となく、いつかはこうなるだろうと思っていた。
ドクオは彼女が寄り添う度に、笑顔の影に酷く辛そうな表情を覗かせていたから
だから、きっと今のあの弱々しい様子はドクオが想う彼女じゃ無いのだろうと考えていた。
- 55
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2007/07/10(火) 23:29:22.36 ID:vcCYzvVq0
そんな無理をする関係がいつまでも続く訳が無い、きっと何時かボロが出る。
(´・ω・`)(でも…この様子だとドクオはちゃんと気付いているみたいだし)
なるようになる、能天気な友達が言っていた言葉を思いだした
それに当人同士の問題に口を挟む必要も無いだろう、と扉に手をかけその場を後にした。
そうして、何処か幻想的な大広間を一人歩いていた
天井は張られた水に太陽の光が反射して煌き、足音は壁に反響して遠く続く。
誰の目も無くなった所為か、ざわざわと胸の奥から嫌な感情が溢れてくる
それを吐き出すべく、握った拳で壁を叩いた。
(´ ω )「…っ」
無性に苛立ちが止まらない、あのブーンでさえ戦いに出ていると言うのに自分は何をしているのか
そうは思えど、あくまでも冷静な自分の思考は何も出来ないのだからこれが最良だと告げる。
そんな自分に腹が立つ、何故こんな考えしか持てないのか、変わろうと望んでいたのに
どうして何も変わらないのか、ここは自分がずっと望んでいた場所なのに
もしも違う世界に行けたなら、そこでの自分は違う自分になれると思っていた
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名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2007/07/10(火) 23:32:18.00 ID:vcCYzvVq0
なのに、何も変わらない
最後にもう一度、今度は思い切り壁を殴りつけた
けれど鈍い音が体内に響くだけで何も変化は無い、無駄な事をしていると理性が言う
ただひたすら、そんな自分に嫌気が差していた。
……。
ショボンが立ち去ってからすぐの事
その場に残った者達は相変わらず静寂と重い空気の中に居たが、急にハインが立ち上がった。
从 ゚∀从「さーてと」
ζ(゚‐゚*ζ「…どうしたんですか?」
从 ゚∀从「あー、風呂にでも入ろうかと、つーか行こうぜ」
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名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2007/07/10(火) 23:36:39.21 ID:vcCYzvVq0
ζ(゚‐゚;ζ「え…そんな、こんな時に…」
从 ゚∀从「だからこそだよ」
ζ(゚‐゚*ζ「?」
そうしてふらふらと歩き出し、デレの後ろに回りこむと
ζ(>Δ<;ζ「きあ! ちょちょちょ!」
両手で双胸を鷲掴み、いやらしく揉み始めた。
ζ(>Δ<;ζ「やめ、あ、ちょ、痛いです!」
デレはじたばたと抵抗するが一向に蠢く指は離れない
対する手の主は、当初は笑顔を浮かべていたが徐々に怪訝な表情に変わっていく
从;゚∀从「…やっぱでかいな」
ζ(゚Δ゚;ζ「はっ! これは終りの気配!」
ζ(>Δ<;ζ「…もしかして次回までこのま、きゃっ」
从♯゚∀从「ほーら、ここがええのんかーええのんかー」
ζ( Δ ;ζ「…」
「いーーーーーーーーやーーーーーーーーーーー!!!」
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名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2007/07/10(火) 23:38:12.36 ID:vcCYzvVq0
【次回予告】ユーケーダイチユルガセーザムジードー
テキヲブットバセー
- 62
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2007/07/10(火) 23:47:47.56 ID:vcCYzvVq0
ミ,,;Д;彡『さーて次回のお話は!』
(,,゚Д゚)『うざい、泣き止め』
ミ,;゚Д゚彡「ひでえ」
(,,゚Д゚)『尺が足りなくなって削った分と、ドクオサイドのお話だ』
ミ*゚∀゚彡『シャク?』
ミ,;゚Д゚彡『なんでもござんす!あー、あっちはどうなってるのかしらー』
( ゚∀゚)「唸響…」
ミ,,゚Д゚彡『次々と現れる管理者の存在、ぞんざいには出来ませんね』
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名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2007/07/10(火) 23:48:33.70 ID:vcCYzvVq0
- (,,゚Д゚)(うるさいなぁ)
(,,゚Д゚)『それより、そこの子供は…』
ミ,,゚Д゚彡『フー』
(,,゚Д゚)『お前、分かってんの?』
ミ,;゚Д゚彡『何が?』
(,,-Д-)『……いや、なんでもねーよ』
ミ,,゚Д゚彡『? そ、それじゃあ…』
ミ*゚∀゚彡『ジカイ イセカイデモウイチド』
(,,゚Д゚)『第18会 「おかえり」 』
ミ,,゚Д゚彡『読んでくれなきゃ泣いちゃうぜ!』
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