2 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 06:53:25.44 ID:bXtdLoYo0

ミ,,゚Д゚彡「前回までの」

ノノ*゚∀゚)「あ・ら・す・じ♪」(゚ー゚*州

ミ,,゚Д゚彡「ドクオの活躍でどうにか無事に双国を抜け出たブーン達!」

ノノ*゚∀゚)「彼等はモララーが次に狙うと言った神具を守る為
      一路目指すは太陽の国、日陽国を目指し再び旅だったのでしたっ!!」


(゚ー゚*州「と、安心するのも束の間…内藤君は心中穏やかじゃないみたい」

ノノ*゚∀゚)「初めて知る負の想い、不思議な感情に彼の心は狂いだす」

(゚ー゚*州「一難さってまた一難、果たして彼等の行く末は…」

ミ,;゚Д゚彡「あれ…えーと…」


ノノ*>∀<)「それじゃあ開始!」

ミ,,゚Д゚彡「…」

ミ゚Д゚,,彡「…」



ミ,;゚Д゚彡「……だれ?」
4 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 06:54:40.65 ID:bXtdLoYo0

 【 第11会 「 太陽の剣 」 】




遠く見える山を背に、速度を全開に船は行く

ゆっくりと流れて行く遠景と近づくにつれ早く過ぎていく地面
双国を出てから…まだそう時も経っていない
けれど振り返れば、彼方にはまるでおもちゃの様な街並みが見える

もう結構な距離を来ている

ζ(゚ー゚*ζ「うまく行って良かったですねお爺様」
 
/ ,' 3 「うむ…しかし流石にあそこまでやれとは言ってなかったんじゃがのぅ…」

(;´・ω・`)「でも…なんか信じられないな、あのドクオが…ねえ」

从*゚∀从「いやいやマジ凄かったって、あれが破壊の剣の力ってやつか!」


話題はずっと同じ事の繰り返し



5 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 06:55:44.37 ID:bXtdLoYo0

( ゚∀゚)「wwww」

(;'∀`)「…!」

川 ゚ー゚)「……。」


ふと少し前を走る船に視線を移す、笑い合う3人が見えた
何を話しているのかは分からない、聞こえない

けど、何となく想像はつく
先のドクオの功績を褒め称えているんだろう


(  ω )「……」


楽しそうだ

あそこに居るのは…本当に彼なんだろうか


6 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 06:56:13.32 ID:bXtdLoYo0

自分が何をしたか分かっているのだろうか
あんなに沢山の人を殺した癖に気にした様子も無いじゃないか

あれは誰?

僕は知らない、あんな普通じゃない事をやってのける人間は知らない

ここは何処?

僕は知らない、こんな普通じゃない所になんで僕が居るんだ、訳がわからない


嬉しそうに笑っている…
そんなに幸せなら勝手にここに居ればいいじゃないか
何で僕までこんな見ず知らずの場所に居なきゃいけないんだ?

早く帰りたい、だいたい僕は最初からこんな所信じてなかった
来たいとも思ってない…

僕は彼等を非難してもいい立場のはずだ

そうさ、気を使って今まで言わなかったけど、もう僕に用は無いはずだ


はっきりと言おう…今度こそ…

9 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 06:57:52.12 ID:bXtdLoYo0

('A`)「…?」

(  ω )「っ…」


一瞬、ドクオと目が合った
気付かれないよう慌てて視線を外し、遠く景色を眺める

( ´ω`)(僕は…何を考えてるんだお)

ふと冷静さを取り戻す、気付けば胸にはどす黒い感情が渦巻いていた

自己嫌悪

僕は嫉妬しているだけだ
何も出来ないから、出来なかったから


(  ω )(嫌だお…)


自分がこんな考えを持っているのが嫌だ
聖人みたいな人間であるつもりはないけど、それでも…


10 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 06:58:57.67 ID:bXtdLoYo0

ζ(゚−゚*ζ「…ブーン様?」


( ゚ω゚)「!?」

ζ(゚−゚*ζ「大丈夫ですか?」

(  ω )「…何の事だお?」

ζ(゚−゚*ζ「いえ、なんだか思いつめた顔をしてらしたので…」

心配そうに僕を覗き込む彼女
胸の奥にどんどん嫌な感情が膨れ上がっていく、なんて惨めなんだろう
…こんな情けない感情で人に迷惑をかけて、場の調律を乱している

(  ω )「…」

何も言えない、口を開けば言葉が出てしまいそうで何も言えない


11 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 07:00:07.66 ID:bXtdLoYo0

(´・ω・`)「ブーン、いったいどうしちゃったのさ、こないだから…なんか変だよ?」

ζ('ー`*ζ「なにか悩んでるなら何でも話してください
      掃除洗濯お料理せっ…」

ζ(//−//ζ「あなたの為なら何だってしますよ、ブーン様…」


(  ω )「………本当かお?」


 待て


ζ(゚ー゚*ζ「もちろんですっ」

(  ω )「…じゃあ」


 僕は何を


(;´・ω・`)「ちょ、ちょっと待」


12 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 07:01:45.96 ID:bXtdLoYo0



 言うな



(  ω )「僕は…」



体の震えが止まらない
同時に、溢れる感情も止まらない


(;´・ω・`)「ブーン!!」


僕は一息ついて、ゆっくりと口にした


(  ω )「僕は帰りたい…元の世界に、帰してくれお」

ζ(゚−゚ ζ「え…」


彼女から 笑顔が消えた



13 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 07:03:14.47 ID:bXtdLoYo0

(;´・ω・`)「な、何を言ってるんだよいきなり!」

(  ω )「いきなりじゃないお、僕はずっと前から思ってたお」

(;´・ω・`)「だからってこんな時に言う事じゃないだろ?」


( `ω´)「じゃあどんな時ならいいんだ!!」


(;´・ω・`)「な…っ」


( `ω´)「ずっと我慢してきたんだお、何度も危ない目に合わされて
       何度も辛い思いさせられて! それでも何も言わずに堪えてきた!」


ζ( − ζ「…」


(;´・ω・`)「分かってる…分かってたよ、君が帰りたがってる事は、でも…!」


(  ω )「わ か っ て た ぁ !?」


14 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 07:05:42.25 ID:bXtdLoYo0

感情のままに口が動く
      
…僕だってそこまで馬鹿じゃない

ショボはずっと、僕に『この言葉』を言わせない様にしていた
だからずっとドクオに賛成的な事ばかり言っていたんだ

それくらい…ずっと前から気付いてたさ


(;´・ω・`)「…っ…ごめん、でも聞いてブーン」

(  ω )「なんで、何でショボはそうやって平然としてられるんだお」

(;´・ω・`)「…え?」


(  ω )「さっきだってあんな沢山の人が僕等を襲いに来て
       殺されるかもしれなかったんだお?」


(;´・ω・`)「いや、だって言ってたじゃない、連中の狙いは神具だって
       だから殺される事はないだろうって思ってたし」


15 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 07:06:58.78 ID:bXtdLoYo0

(´・ω・`)「それに、僕も友達を信じる自分を信じてるから」


ショボはまっすぐに僕の目を捉え、言う

信じてる?

どこの誰だ、そんな戯言を言えるのは?


そう思いつつも、ふと感じたデジャヴ
けれど感情の波はすぐにその思いを押し流し、消した

僕は違う

ただ脅えて震えていただけだ
何もしてない、何を信じてもいなかった

どうしてそんな奇麗事を言えるんだ


……これじゃあ、本当に僕だけ……



16 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 07:08:31.20 ID:bXtdLoYo0


(♯ ω )「…もう…いい加減にしろお!!」


逃げるように叫んだ


ζ( − ζ「…!」


微かに彼女の体が震え上がる


从;゚-从「…」

/ ,' 3 「…」


皆の視線が僕を貫く
もう…後戻りは出来ない、止まれない

18 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 07:10:15.18 ID:bXtdLoYo0

(♯`ω´)「何で僕までこんな事に付き合わされなきゃいけないんだお!?」

(;´・ω・`)「…ブーン、ちょっと落ち着いて」


(♯`ω´)「だいたい、ここに来たのだってそうだお…
       ショボが無理矢理僕を引っ張ったせいだお、来たくて来た訳じゃない!!」

(´・ω・`)「…」

(♯`ω´)「教えてくれお、いつなら帰っていいんだお?
       こんな時も何も、これから危ない目に遭う事くらい僕だって分かる!
       なら今言わないでいつ言えって言うんだお!?」


(`・ω・´)「…」


(♯`ω´)「ショボも、ドクオも、ここに居たければ居ればいいお!
       でも僕には関係ない!! 僕は帰りたいんだ!!!」


静寂、聞こえてくるのは走る船が大地を転がる車輪の歌
誰もが言葉を発する事無く俯く

いや、ショボだけが僕を睨んでいる


19 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 07:12:15.94 ID:bXtdLoYo0


(;`ω´)「…はぁ……はぁ」


声を張り上げ続けたせいか、息が切れる

全身に感じる虚無感

血の気が一気に退いていく
今…僕は取り返しのつかない事を言ってしまったんじゃないか?
そんな不安が一気に押し寄せてきた

(`・ω・´)「…なら、はっきり言ってやるよ」

ショボはそんな僕を睨み、低い声で言った

心臓が破裂しそうな程に鼓動を繰り返し
足はガクガク震えている

それでも僕は負けじと睨み返す

( `ω´)「…言ってみろお」


ζ( − ζ「…待ってください」

(´・ω・`)「…?」
23 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 07:14:28.64 ID:bXtdLoYo0

ζ(゚−゚*ζ「ブーン様」

(;`ω´)「な、んだお?」

彼女は赤く染まった眼を向ける
初めて見る表情だった、曇りの無い瞳が真っ直ぐに僕を射抜く


ζ(゚−゚*ζ「…」


整った口元がゆっくりと開く
僕を見つめたまま少し掠れた声で言葉を綴る


ζ(゚−゚*ζ「すいませんけど、あなたは帰せません」


( ゚ω゚)「…っ!?」


ζ(゚−゚*ζ「絶対に帰しません…恨むなら私を恨んでください
      でも何をしようとあなたは帰らせない」


「それだけです」



24 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 07:16:47.80 ID:bXtdLoYo0

そう言って彼女は背を向けた

絶句、と言うのだろうか

咄嗟に言葉が浮かばない

…わけがわからない

なんだよそれ、帰さないって…なんで

(´・ω・`)「ブーン」

( ゚ω゚)「…」

呆然とする僕に追い討ちをかけるようにショボが続く
27 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 07:18:12.23 ID:bXtdLoYo0

(´・ω・`)「さっき言ってた事、ドクオの前でも言ったら…」

向けられる視線
僕は眼を背けた

正面から彼の目を見られない

それでも言葉は続き


「僕は、君を絶対に許さない」


冷たく、そう宣告された


僕はもう何も言えず
立ち尽くし、遠く山の彼方を見つめていた



………。




28 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 07:20:13.72 ID:bXtdLoYo0

それからしばらく経っても船内は無言だった
誰も口を開かない、重いムードのまま時間は少しずつ流れていく


(  ω )「……」


どうして…こんな事になってしまったんだろう


僕のせいだ、あんな事言ったから

いや、僕は悪くない…


自分の肯定と否定を繰り返す
ずっとそんな事を考えていた

僕が悪いのは分かってる…だけど、辛いんだ

後悔してる、言わなきゃ良かった

本当に、何であんな事を言ってしまったんだろう
自分がよく分からない…あんなの言うべきじゃ無い事なんて分かってるのに
30 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 07:22:54.38 ID:bXtdLoYo0

でも…言ってしまった…

逃げたい、ここから逃げ出したい

思考に明け暮れていると、ふと風が吹いた


( ゚∀゚)「飯にしようぜー!」

前方からこちらを呼ぶ声が届き
船は速度を緩めていく
景色が流れを止めていく


(  ω )「…ぁ…」


止まらないで

そう願った

当然の様にそんな僕の思いは叶う筈も無く、船は停止する

皆が降りて行く
また当然の様に誰も僕には声をかけない

33 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 07:24:19.87 ID:bXtdLoYo0

僕は動けなかった、足が根を張って一歩も踏み出せない

皆の後ろ姿を直視する事さえ出来ない

怖いんだ…どんな顔をすればいいのか分からない
足が動かない、胸の少し下の辺りに何かが流れ込む様な、気持ちの悪い感覚

苦しくて、泣きたくて、それを堪えて尚辛かった


(  ω )「…!?」


俯く僕の肩に誰かの手が触れる
思わず体が震えた


从 ゚∀从「おい、寝てんのか? ご飯ですよ!」

(;´ω`)「…え」
36 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 07:26:02.74 ID:bXtdLoYo0

从 ゚∀从「喜べ! 今日はギンギーだ!!」

(;´ω`)「…」

从 ゚∀从「んー? どうした、暗いぜ」

(;´ω`)「…ハイン【空気】←これ読めるかお?」

从 ゚∀从「ああ、読める、だからこうしてるんだ、ほら…行こうぜ」

彼女は僕の手を取り、引っ張る

自然と足が前に出た
あんなに重く感じていた全てが少しだけ軽くなった気がした


从 ゚∀从「あれだろ、獣拳使いが放つ力の源」

(;´ω`)「…それはゲキ、その読み方は流石にありえないお」


……。

39 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 07:29:28.29 ID:bXtdLoYo0

( ゚∀゚)「さーて、とりあえず火を起こすか!」

(´・ω・`)「ブーン、薪を探しに行こう」

( ´ω`)「あ……うん」

('A`)「あ、火ならこいつを使えば…」

( ゚∀゚)「あぁ、そうだった! 流石は破壊の剣、肉焼くのもお手の物か!」

ζ(゚ー゚;ζ「…流石にそれはどうかと思う」


皆、さっきの事は無かった様に振舞ってくれている
それが…少しだけ、寂しかった

気を使われてるのは分かる、ありがたいとは思う
だけど、それはつまり聞かなかった事にしているってことだから

結局の所、僕は単に場の空気を乱しただけで…
こうして気まずい思いをしている


40 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 07:31:30.70 ID:bXtdLoYo0

( ´ω`)「……」

(´・ω・`)「……」

普通に接しようとは思えど、やはりどうにもまともに顔を向けられない
ショボもそうなのか…僕の方をあまり見ないようにしている

('A`)「お前等…なんかあったのか?」

流石にそんな僕等の様子を察したらしいが


(´・ω・`)「ん、祭りのせいでちょっと疲れちゃってね」

(;´ω`)「え…と、過激なうpがあっただけだお」

(;'A`)「なんだそりゃ…」


適当に誤魔化し、微妙な亀裂を残したまま…数日が経った


話に聞いた太陽の国とやらは、その名の通り常夏の国、とにかく非常に熱いらしい
現に目的地に近づくにつれ気温はどんどん上昇し、額には常に汗が浮かぶ有様

照りつける太陽は嫌がらせと言わんばかりに眩しく輝いている
43 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 07:33:12.54 ID:bXtdLoYo0

(;´ω`)「うう…」

(;´・ω・`)「こんな中ずっと居たら日射病になるよ…」

从 ゚∀从「ははは、安心したまへ
     ハ印の安心設計は皆様のご要望にはとってもリーズナブルなんだぜ」

(;´ω`)(わけわからん)


从 ゚∀从「んじゃ手伝ってくれ、えーと、まずここの紐を…」


よく分からない物言いはともかく、あっという間に布で出来た日除けが完成
船の横と、帆の柱に引っ掛けるだけの簡単な物だ

だが無いよりは遥かにマシ…かと思えば

从 ゚∀从「お?」

同時に気候も中々に不安定、雨も多い、それも豪雨
雨が落ちる音が声をかき消す


44 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 07:34:19.68 ID:bXtdLoYo0

从;゚∀从「…!…………!」(うわ! 水が入ってきやがった! )

(;´ω`)「…?……!! 」(え? 何言ってるか全然聞こえないお!!)


「………!」(アッー荷物がー!)


「………!!」(こらいかん、ドクオを呼べ!!)


「……!」(だから聞こえないってば!)


…………。


そんなこんなで慌しいまま時は流れ
僕等は無事、日陽国へ足を踏み入れた
55 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 10:16:08.64 ID:bXtdLoYo0

そんなこんなで慌しいまま時は流れ
僕等は無事、日陽国へ足を踏み入れた

  _
(;゚∀゚)「…あっちいぃぃぃんこ」

ζ(゚ー゚;ζ「…お兄ちゃん?」

(;゚∀゚)「正直すまんかった」


照りつける太陽は一段と強さを増し、ギラギラと輝く
幸い空気は乾燥していてるので、まだマシなのだが

なんせ昨日の雨上がり後はそれはもう湿度が凄く、死ぬかと思ったのだ


从;゚∀从「僕も流石にここまで熱いと…思わず性格も変わってしまいますよ」

(;゚∀゚)「性格ってレベルじゃねーぞ!」

从;゚∀从「うるさいやい! 最近色んなハインを見てるせいで時折自分を見失うんだ!」
  _,
(;-∀-)「そんなの知らねーっての…」
57 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 10:17:31.70 ID:bXtdLoYo0

(;´・ω・`)「…ああ、二人とも熱さで頭が…」

(;゚∀゚)「ちょ、こら! 俺も入れるんじゃねえ!!」


……。


ζ(゚ー゚;ζ「なんか…静かですね」

誰に言うでもなく、彼女が呟いた

窓が存在しない石造の家々が並び立ち
その前には出店の様な物が点々と続いている
けれど出歩く人はほとんど見ない

今まで賑やかな所に居たせいもあるのだろうが
その後景には酷く違和感がある

(  ω )「…」

僕は、そんな後景に物悲しさを感じると共に
どこか奇妙な安堵感を覚えた


58 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 10:19:47.14 ID:bXtdLoYo0

从;゚∀从「…まあ、紛争地帯なんてこんなもんさ
     とっとと行こうぜ、もう暑くてたまらにょ」


(;´・ω・`)(噛んだ…)


ζ(゚ー゚;ζ「ですね、私も身体中ベトベトで…」

川;゚ -゚)「私もだ…いい加減沐浴でもしないと堪らないな」

(;'A`)「それで…どこに行けばいいの?」

从;゚∀从「えーと、とりあえず川を探そう、確かその先だったはずだぜ」

('A`)「川…か………あっちにありますね」

从;゚∀从「さっすが! んじゃ行くぜ」


そうして連れられて行った先には、他よりも一際大きな建物があった
なんというか……神殿を連想させた


59 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 10:21:13.70 ID:bXtdLoYo0

門前と思われる場所に並ぶ石柱
その奥には巨大な入り口

どこもそうだったけど…この国は扉や窓は存在しないのか、どこにも見かけない

「止まれ」

僕等が近づくと、建物の正面に立つ数人が僕等を囲うように歩み寄ってきた
この国の兵士さん達なのだろう、不審に思う態度を隠さず
威圧するような態度を見せた

「何者だ貴様等…見た所この国の人間じゃないな?」

从 ゚∀从「連絡は来てないか? デンオウからの使者なんだが」

「…む、ならばパスを見せてもらおうか」

从 ゚∀从「ああ、これでいいだろ?」

「これは…っ……失礼しました、お通りください博士」

从 -∀从「……」

兵士の方々が道を開ける
…あの態度の変わりよう、実は彼女は本当に凄い人物なんだな…
なんて、今更ながらに思う

61 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 10:23:09.21 ID:bXtdLoYo0

ハインは一度だけ頷くと静かに歩き出した

「あ、お待ちください!」

と、それを兵士の一人が引きとめた

从 ゚∀从「…なんだ、まだ何かあるのか?」

「はっ、申し訳ございませんが、武器の持ち込みはご遠慮頂きたいのですが…」

そう言って彼女の後方に視線を移す、その先には…

(;'A`)「……俺?」

どうやらドクオの腰に下げられた剣について言っている様だ

「はい、お渡し願えますか? 謁見の間はこちらで丁重にお預かりしますので」

(;'A`)「え、と…は、はい、その…いいですよね?」

挙動不審っぷりを発揮しながらドクオは皆に伺う
荒巻さんだけがそれに静かに頷き答えていた


62 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 10:25:51.46 ID:bXtdLoYo0


……。


从 ゚∀从「おじゃましまーす!」


声が反響し、響いていく

建物の中は意外にも明るかった

広く、奥には水溜りが見え、そこから四方に排水溝が伸びている
どこから湧き出ているのか…その中心には水が盛り上がり、小さな噴水を作っていた

外に居た時からは信じられないくらいに中は涼しく
歩く度に空気が身体を撫で、火照りを冷やす

見れば周囲には光の筋が揺れている

不思議に思い、見上げると天井には大きな穴が見えた

その穴には……なんだろう、何か変だ…

(;'A`)「あれ…水だよ」

川;゚ -゚)「水…? ん、そうみたいだな」

(´・ω・`)「あの排水溝から繋がってるみたいだね…」
67 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 11:04:56.52 ID:bXtdLoYo0

ζ(゚△゚*ζ「…綺麗」


太陽の光を天上の水が受け、乱反射した輝きが静かに彩る
思わず呆けてしまう様な美しさに皆しばらく立ち止まり、魅入っていた

そこへ

「綺麗でしょ? 今の時間が一番凄いんだよ」

静まり返る中に一つ、澄んだ声が響いた

从;゚∀从「!?」


(゚ー゚*州「この度は遠路遥々ありがとうございます」


見れば、そこには純白の装束を羽織った二人の女の子
動揺する僕等を見て面白い物を見るかのように

…いや、優雅に微笑み

彼女等はゆっくりと足音を響かせながらこちらへ近づいてくる



68 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 11:06:40.47 ID:bXtdLoYo0

从 ゚∀从「…ああ、初めまして、かな? 日陽の巫女様」

ノノ*゚∀゚)「うん、会うのは初めてだよね!」

(゚−゚*州「ヒノ、挨拶が先でしょ…」

ノノ*>∀<)「いっけねっ」


ノノ*゚∀゚)「では…初めましてっ、日陽国が日の巫、ヒノです高岡博士」

(゚ー゚*州「同じく陽の巫、ユウと申します、以後お見知りおきを」

光の線が煌く中で、二人は衣服の裾をつまみ、深々とお辞儀をする

思わず鳥肌が立った、その光景があまりにも幻想染みていて
何やら感動して見入ってしまう…こういうのを絵になるって言うんだろうな


ノノ*゚∀゚)「呼ぶ時はヒーちゃんでいいよっ」


…現実なんて嫌いだ
71 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 11:17:01.09 ID:bXtdLoYo0

从;゚∀从「お、ああ、分かった…と、とりあえずいいか?」

ノノ*゚∀゚)「うん、なあに?」

从 ゚∀从「…できればその高岡博士ってのをやめてほしいんだが…」

ノノ;゚∀゚)「えー? どうして?」

(゚ー゚*州「……わかりました、では何と?」


从 ∀从「ハインリッヒ…ハインで頼む」


(゚ー゚*州「かしこまりました、ハイン様ですね」

ノノ*゚∀゚)「んー、よくわかんないけど…りょーかいだよ!」


(゚ー゚*州「では、立ち話も何ですから…どうぞこちらへ」


そうして僕等は奥へと案内され
しばらく進むと、何やら広々とした一室に着いた

長机と長椅子、先の二人はいち早く角に座り
僕等にも座るよう促した
88 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 14:41:12.01 ID:bXtdLoYo0

僕等が席に着くと、遅れて大きなお盆を手に現れる一人の女性

…メイドさんktkr?


('、`*川「どうぞ」


一言付けて目の前に白いコップが置かれた

そうして同じ様に机に並べていく
中身は薄い赤茶色、蒸気が淡く上り、室内に良い香りが立ち込める

(´・ω・`)「…アップルティーか」

('ー`*川「はい…自慢の紅茶です、きっとお口に合うと思いますよ」

(´・ω・`)「…うん、おいしい」

(;'A`)(あつっ…俺、猫舌なんだよなぁ…)


89 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 14:42:03.32 ID:bXtdLoYo0

( ゚∀゚)「んで…支援ってのはどういう話なんだ?
     細かい事は日陽で聞いてくれとしか聞いてないんだが」


(゚−゚*州「では……正直こう言うのは心苦しいのですが、単刀直入に言います
     破壊の管理者の名を正式にお借りしたいのです」


(;'A`)「!!」

  _,
( ゚∀゚)「…もうちょい詳しく話してくれるか?」

(゚−゚*州「…はい、ご存知かとは思われますが
     以前よりこの国は湖鏡との小競り合いが続いています
     そして先日、ある情報が届きました」


( ゚∀゚)「…というと?」

(゚−゚*州「…神具の持ち手…管理者が現れた、と」
  _,
( ゚∀゚)「湖鏡にか…? そりゃおかしいな、神具があるってのは知ってたけどよ」
91 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 14:44:19.26 ID:bXtdLoYo0

/ ,' 3 「……ルファウス、あの国との同盟の件か?」

(゚−゚*州「そうです…もう長い間
     あの国に管理者は現れていなかったにも関わらず
     こうも急に現れるとしたら……考えられるのはそれくらいかと」

  _,
( ゚∀゚)「…なるほどな、つまりそれで湖鏡に管理者が現れた以上
     いつ本格的に攻めてくるか分からない…だから
     日陽に破壊が味方するって話を流して牽制したい訳か」


(゚−゚*州「突き詰めればそういう事です……どうでしょうか?」


(;'A`)「…………」

  _,
( -∀-)「…んー、まあそれは俺がどうこう言う事じゃねえな」

(゚−゚;州「…と、仰いますと?」

/ ,' 3 「ドクオ、おぬしが決めるがよい」

(;'A`)「お…俺が、ですか?」

/ ,' 3 「そうじゃ、巫の願いを聞いた場合…あらゆる危険がぬしを襲う事になろう
    じゃから自分で決めるのじゃ、どの選択を選んでも構わぬ」


92 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 14:46:11.21 ID:bXtdLoYo0

(;'A`)「……」

川;゚ -゚)「…」

/ ,' 3 「安心せい、断るにしてもそこの馬鹿がおる
    どちらにしても日陽に管理者の存在を置く事は出来る」

(♯゚∀゚)(くそじじい…)


(;'A`)「………か…考えさせてもらっても、いいですか?」


(゚ー゚*州「はい、もちろんです、これは私共の身勝手なお願いですから」

(;'A`)「ありがとうございます…」

(゚ー゚*州「それでは、今日の所は話はこれくらいにしましょう
     長旅でだいぶお疲れでしょうし、部屋の用意はしてありますので」


从 ゚∀从「ああ、助かるよ」

(゚ー゚*州「いえいえ」

94 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 14:48:48.43 ID:bXtdLoYo0

ノノ*゚∀゚)「ねえねえ、君!」

(;'A`)「うぇ!?」

ノノ*゚∀゚)「あははっwww何今のwww」

(;'A`)「あの…何か?」

ノノ*゚∀゚)「君が、破壊の管理者さん?」

(;'A`)「…一応、はい」

ノノ*゚∀゚)「ふ〜〜ん…」

……。

( ´ω`)「……」

何故だろう

こんなに近くに居るのに、こんなにも遠い

何やらどこかの会話を覗き見ている様な気分だった
話にさっぱりついていけない

人に囲まれた中で感じる孤独

分からなくなってしまった、どうして…
どうして僕はこんな思いをしながら、ここに居るんだろう

95 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 14:49:46.61 ID:bXtdLoYo0
  _
(;゚∀゚)「ふぅ…しかし、流石に疲れたよ俺は…今日は各自ゆっくり休もうぜ」

ζ(゚ー゚*ζ「デンオウ出てからずっと慌しかったもんね…」


从 ゚∀从「んで、さ…お風呂とかあるか?」

(゚ー゚*州「ありますよ、先にご案内しましょうか?」

从 ゚∀从「ああ、頼む」

(゚ー゚*州「はい、じゃあ…ペニサス、お願いね」

('、`*川「かしこまりました、それではご案内させて頂きます」


从 ゚∀从「デレ、クー! 行こうぜ!」

川;゚ -゚)「む、いや私は…」

ζ(゚ー゚*ζ「いいじゃないですか、いい機会ですし
      たまには女同士…ゆっくりお話でもしませんか?」


川;゚ -゚)「……」


川 ゚ー゚)「そう……そうだな」


96 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 14:50:40.74 ID:bXtdLoYo0

ノノ*>∀<)「あたしもー!!」

(゚ー゚;州「駄目よヒノ、邪魔になっちゃうでしょ!」
  _,
ノノ*゚∀゚)「えぇー!?」


……。


(´・ω・`)「……行っちゃいましたね」

( ゚∀゚)「そうだな…まあそれより俺等も休もうぜ」


(´・ω・`)「…まだ場所とか聞いてないんですけど」

(;゚∀゚)「…」


……。


97 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 14:52:16.32 ID:bXtdLoYo0

そうして各自、旅の疲れを癒すべく、早めの就寝


やがて日も暮れ辺りは暗く染まっていく、そろそろ…皆気付いたりするのかな


( ゚∀゚)「にしても、おせーな…」

(´・ω・`)「その内来るんじゃない? どうせまだ寝てるよ」

('A`)「…俺、ちょっと起こしてくるよ」


僕は何がしたいんだ
こんな事をして何になる?

完全に沈んでしまった夕日、僕はそれを見届けた



98 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 14:53:59.98 ID:bXtdLoYo0


  _,
( ゚∀゚)「…居たか?」

ζ(゚−゚;ζ「駄目、どこにも居ないよ…っ」


(゚−゚;州「今この中は兵士の人間に探させていますが…
     ここまで見つからないのではやはり外に出て行ったとしか」


/ ,' 3 「……この辺りは安全なのか?」

(゚−゚;州「ええ、まあ…特に危ないって事はないはずですけど…」



どうにもならない、そうだ…もうどうにもならないんだ

だからもう…帰らない

どこにも帰れない

僕の帰る場所は無くなってしまった


99 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 14:56:05.70 ID:bXtdLoYo0


(;'A`)「いったい…どこ行っちゃったんだよ…」

(´-ω-`)「……」


もう自分で自分の事が分からない
ぐちゃぐちゃな頭の中で…思うのは一つ

これでノコノコ帰ったら…
僕はただ構って欲しいだけの、心配されたいだけの甘えん坊
そんなのは嫌だ、これ以上惨めに、情けなく思われるのは嫌だ



(`・ω・´)(なんで……)

ζ(;−;*ζ「うっ……」

  _,
(;゚∀゚)「お、おい泣くなっての、平気だって!
     あいつもそんなガキじゃねえんだから、その内帰ってくるさ」


ζ(;−;*ζ「ちが…ちがう…わ…た…のせいで…」


(`・ω・´)(……なんで…分かってくれないんだ……馬鹿野郎…)
101 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 15:00:12.87 ID:bXtdLoYo0


だから、決めたんだ


ただ意地になってるだけかもしれない
やけくそになってるだけかもしれない


それでも…決めたんだ



( ;A;)「…なんで、何で何も言わずに…なんでだよぉ!!」


「ブーーーーーーーン!!!」




どのみち…これでもう完全に皆に会わせる顔が無い

だから僕はもう…
103 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 15:03:26.04 ID:bXtdLoYo0


「………さよなら、だお」


これは自分で決めて、覚悟した事だ


なのに…なんでかな


(;ω; )



僕の頬を流れる熱い何かは


いつまで経っても…乾いてくれなかったんだ




前編 終
105 名前: 建設作業員(栃木県) :2007/03/26(月) 15:05:05.59 ID:bXtdLoYo0
(,,゚Д゚)「これにて第11会、前編終了だゴルァ」


ミ,;゚Д゚彡「……ええー…?」


(,;゚Д゚)「…なんだよ、その反応は」

ミ,;゚Д゚彡「だって…出てっちゃったよ? いいのかこれ!? どうする気なの!?」

(,,゚Д゚)「知るか」


ミ,,゚Д゚彡「だいたいブーンも情けないぞ!そんなくらいで凹でる場合か!!
      もっと男らしく生きろブーン!!」


(,,゚Д゚)「お前に言われちゃお終いだな…可哀想に…」

ミ,,゚Д゚彡「われえ、どういう意味じゃこらぁ?」


(,,゚Д゚)「……」


ミメメ;Д;彡「ごめん、やめて、分かり辛いから無言で殴るのやめて」

(,,゚Д゚)「それじゃ、引き続き、後編」
ミ,,゚Д゚彡「始まるよ! …明日までには」

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