- 257 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 19:18:47.79 ID:L/viHKdd0
ドクオ家
('A`)「ただいま」
('A`)「……」
ボフン
('A`)「……」
( ФωФ)「やあ」
('A`)「……」
('A`)「どなたですか?」
( ФωФ)「杉浦様♪」
- 261 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 19:20:55.95 ID:L/viHKdd0
( ФωФ)「覚えてないのかな?」
('A`)「覚えてません」
( ФωФ)「そうか。ショックだなー」
('A`)「どなたですか?」
( ФωФ)「まぁ落ち着きなよ。えーっと、たぶんアレか。動力部分か?
あー、配線が千切れてるのね。把握」
( ФωФ)「ちょっと痛いよ」
('A`)「!?」
アビビビビッ!
- 273 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 19:38:38.98 ID:L/viHKdd0
ベルトコンベアに乗って流れてくるゴミを分別するのが俺の仕事だった。
人の手によって作られた俺には、親も兄弟もなく、人権も地位もない。
ただゴミを分別するだけの存在だった。
「おい、一台こっちのラインこい」
('A`) ワカリマシタ
法律によって定められているため、最低限の知識はあった。
だが、俺達、自律型雑用機01-Dタイプは、単純作業用として開発されたため
その能力のほとんどを制限されていた。
言葉は制限され、暴力は振るえず、逃げることも死ぬことも不可能だった。
('A`) ウツダシノウ
('A`) マタ ゴミヲブンベツスル シゴト
ガ ハジマル
('A`) ゲツヨウビ コワイ
残酷なことに、法律は感情を消すことを許さなかった。
俺達が望むのは、感情を消して欲しい。完全なロボットにしてほしいという願いだった。
- 276 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 19:43:34.93 ID:L/viHKdd0
唯一、煩悩だけは封じられた。
強姦対策として、すなわち脳内去勢されてしまうのだ。
自律型雑用機01-Dタイプは、皮肉をこめて『毒男』ドクオと呼ばれていた。
企業から製造の製造を請け負う『孫うけ会社』、その中堅である杉浦ファクトリーは
約百七十台のドクオを駆使し、ラインを動かしていた。
( ФωФ)「ええ? 今からラウンジ工場にですか?」
(`・ω・´)「そうだ。上の急な予定変更でな。三十台ほど飛行型0-Tで持っていってくれ」
( ФωФ)「仕方ありませんね。おーい、モラ。いってきてくれ」
( ・∀・)「マジスカ」
- 278 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 19:46:27.36 ID:L/viHKdd0
( ・∀・)「ワープ装置キボンヌ」
俺は同機と共に飛行型におしこまれ、ラウンジへ飛んだ。
ラウンジは座標NN38に位置する工場星だ。
運が悪かったんだろう。
飛行型の下部分が歪み、その隙間から俺は落ちた。
( ・∀・)「ひろうのめんどくせ」
そこが、ここ――地球だったというわけだ。
- 280 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 19:48:25.13 ID:L/viHKdd0
……
…
( ФωФ)「思い出した?」
('A`)「はい」
そうだ。俺は自律型雑用機01-Dタイプだったんだ。
( ФωФ)「じゃ、帰ろうか」
('A`)「……」
( ФωФ)「嫌そうね」
( ФωФ)「リミッターがいかれたから、制限が解けちゃったんだね。仕方ないね」
- 283 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 19:50:58.68 ID:L/viHKdd0
( ФωФ)「まあ、メモリデバイスを覗かせてもらったから、大体のことはわかるよ」
( ФωФ)「今まで制限してたぶん、はじけちゃったんだね。でもね」
( ФωФ)「やっぱり帰らないとダメだよ。ここは君がいていい場所じゃないんだから」
('A`)「無責任ですね。いきなりこんなの」
( ФωФ)「だから社長の私が直々にきたんだよ。悪い?」
('A`)「僕の人権は無視ですか」
( ФωФ)「自律型雑用機01-Dタイプに法律上人権はないの。
自律型雑用機02-Dタイプならあるんだけど、バージョンアップしないとね」
- 286 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 19:52:47.66 ID:L/viHKdd0
('A`)「これから、どうする気ですか」
( ФωФ)「戸籍やら君の痕跡やらは、すぐに警察……こちらのね。
方々がきて消してくれるそうだよ。罰金でうちの会社がマジヤバイ」
('A`)「じゃあ、ハインやクーは」
( ФωФ)「……」
( ФωФ)「死んでもらうしかないな」
- 292 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 19:57:30.14 ID:L/viHKdd0
('A`)「……!」
( ФωФ)「嘘よ。嘘」
( ФωФ)「まぁ君に関する記憶は全て消し去るよ。うん安心して」
('A`)「全てをですか?」
( ФωФ)「ぜんぶ」
('A`)「じゃあ、ハインさんやクーさんと描いた絵は……特訓の成果はどうなるんです?」
( ФωФ)「ぜんぶ、ぱあ」
( ФωФ)「まあいいじゃない。ささいなことじゃない」
( ФωФ)「そんなちっぽけなのはさあ、宇宙レベルで考えたら塵以下じゃない?」
- 296 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 20:00:23.48 ID:L/viHKdd0
ガッ!
(#'A`)「……」
( ФωФ)「あら、怒った。でも暴言は吐けないよ。リミッター解除しないと」
(#'A`)「記憶を消さないで下さい……! 入部試験はもうすぐなんですよ!」
( ФωФ)「小さい小さい。そんな小さい物の為に隠蔽とか無理すぎだろjk」
(#'A`)「あなたにとっては、宇宙にとっては本当に小さな記憶かもしれませんが」
(#'A`)「僕にとってはかけがいのない思い出なんです」
( ФωФ)「綺麗な言葉、うまく使えるじゃないの」
- 299 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 20:03:26.21 ID:L/viHKdd0
ひょ−い
( ФωФ)「いやはや、オジサン感動しちゃうね」
( ФωФ)「まー、でもあれだ。記憶を消さないってのは無理だけどさー」
( ФωФ)「その入部試験とやらの後……でもいいよ。消すの。
まだ通報してないし」
('A`)「じゃあ……!」
( ФωФ)「ただし、その間、君はこの星との接触を禁ずるぅー」
( ФωФ)「僕ちんのステルス船の中で過ごしてもらうよ」
- 301 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 20:05:47.32 ID:L/viHKdd0
('A`)「わかりました。それで十分です」
( ФωФ)「はいはい。んじゃ、しばらくの間」
( ФωФ)「眠っててもらうよ」
('A`)「……」
背中のパッチを開けられ、コードをいじられる。
俺はゆっくりと眼を閉じた。
从 ゚∀从「入部試験が終わったら――」
川 ゚ -゚)「返事はまた入部試験の後に――」
脳内で、二人の声が反響する。
ごめんな、ハインさん、クーさん。こんな宙ぶらりんのまま逃げるなんて。
俺は本当にずるいな。
ごめん。
ごめんな……。
……。
- 305 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 20:09:55.56 ID:L/viHKdd0
ざわざわざわ……。
川;゚ -゚)「結局、ドクオはずっと休みのままだったな」
从 ゚∀从「……ああ」
川;゚ -゚)「メールも通じない。何かあったのだろうか。
やはり、先生に――」
从 ゚∀从「……ちょっとやそっとでくたばるようなヤワな男じゃねーよ」
川 ゚ -゚)「ハイン……」
从 ゚∀从「ここでよー、ドクオの事が気になって全力出せなかったらよお」
从 ゚∀从「後悔すんのは自分だぜ?」
川 ゚ -゚)「後悔……」
从 ゚∀从「俺は、失敗した時にドクオを言い訳にしたくない。だから全力でやる。
……ドクオも、絶対そう言うはずだ。あいつ、意外とキツイからさ」
- 308 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 20:11:58.50 ID:L/viHKdd0
川 ゚ -゚)「そうだな。私達は、今やるべきことをやろう」
从 ゚∀从「そうだよ。それにあいつ、言ってたしな」
从 ゚∀从「絵の上手い女が好きだってよ」
ξ゚听)ξ「それでは、準備はよろしいですか?」
ξ゚听)ξ「今から、入部試験を始めます。スケッチのテーマは――」
- 310 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 20:14:58.15 ID:L/viHKdd0
From ドクオ
今夜7時
VIP公園にて待つ
午後7時。VIP公園。
从;゚∀从「うおおおおっ!」ギギギギッ!
川;゚ -゚)「もっと安全運転で頼む……酔ったぞ」
从 ゚∀从「バーロー。それも作戦のうちだっての」
川 ゚ -゚)「本当は早く会いたかっただけのくせに。白々しい」
- 312 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 20:16:54.25 ID:L/viHKdd0
从 ゚∀从「で? 肝心のあいつはどこだよ。どこに隠れてドッキリ狙ってんだよ」
川 ゚ -゚)「姿が見当たらないな」
从 ゚∀从「ったくよー。何で音信不通になったのか思いっきり問いただしてやるぜ。超やるぜー」
川 ゚ -゚)「……足が震えてるぞ」
从;゚∀从「はあ?」
川 ゚ -゚)「今ホッとしているだろ。ドクオがまだ到着していなくて」
从;゚∀从「な、なんだよ。別にこわくねーし! 振られたらそこで諦めるし!」
- 313 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 20:18:52.77 ID:L/viHKdd0
川 ゚ -゚)「……ハイン」
从 ゚∀从「ん?」
川 ゚ -゚)「お前は、ドクオのどこに惚れたんだ」
从 ゚∀从「うん? うーん、どこだろうなー」
从 -∀从
从 ゚∀从「最初はさー」
从 ゚∀从「変な奴だなーってくらいの印象しかなかったんだけど」
从 ゚∀从「あたしのこと、色眼鏡なしで見てくれるっていうか……」
从 ゚∀从「よーするに、全部だな! 好きになるって、そういうことだろ?」
- 316 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 20:20:04.07 ID:L/viHKdd0
川 ゚ -゚)「そうか。それを聞いて安心――」
('A`)
从 ゚∀从
川 ゚ -゚)
从 ゚∀从「ドクオ」
('A`)「こんばんは」
从 ゚∀从「こんばんはじゃねーよ」
从 ゚∀从「こら」
('A`)
从 ゚∀从「いきなり音信不通になってんじゃねーよ!」
- 318 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 20:21:24.12 ID:L/viHKdd0
从 ゚∀从「あれか」
从 ゚∀从「ユーフォーにさらわれたか」
('A`)
从 ゚∀从「バーカww冗談だよww」
从 ゚∀从「で、ほんとのとこ何よ? どうしたわけよ?」
从 ゚∀从「何か重大なことでもあったわけ?」
('A`)
从 ゚∀从
('A`)
川 ゚ -゚)「ドクオ。教えて欲しい」
从 ゚∀从「黙るのはずるいよ」
- 320 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 20:23:05.25 ID:L/viHKdd0
从 ゚∀从「……そういやよー」
从 ゚∀从「受かったよ、入部試験」
从 ゚∀从「俺もクーも」
川 ゚ -゚)「無事にな」
从 ゚∀从「今年のテーマはさー」
从 ゚∀从「自分の好きなものを描けってテーマだったんだよね」
- 322 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 20:25:14.63 ID:L/viHKdd0
从 ゚∀从「だからさ。俺、描いたよ」
从 ゚∀从「ドクオには秘密で、ずっと家で練習してたからうまくかけたよ」
川 ゚ -゚)「私のだって、ハインに負けないくらいの出来だぞ」
『('A`)』
从 ゚∀从「どーよ、似てるべ」
('A`)「……」
从 ゚∀从「でもよ、両方受け取るんじゃあ芸がねえ」
从 ゚∀从「どっちか一つを」
('A`)「僕」
グッ・・・!
('A`)「転校することになったから」
- 323 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 20:26:30.45 ID:L/viHKdd0
从 ゚∀从
('A`)
川 ゚ -゚)
从 ゚∀从「は?」
川 ゚ -゚)「転校……?」
('A`)「うん」
从 ゚∀从「そっか」
从 ゚∀从「冗談だよな?」
- 329 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 20:28:19.13 ID:L/viHKdd0
从 ゚∀从「ハハハ。何だよその冗談」
从 ゚∀从「面白くねーぞ」
('A`)「……」
川 ゚ -゚)「ハイン」
从 ゚∀从「いや、だって無いだろ常識的に考えて」
从 ゚∀从「先生からも何も言われてないし」
从 ゚∀从「つーか、俺、聞いてないし」
('A`)「急なことだたから。それに……お」
('A`)「教える必要はないと思いました」
川 ゚ -゚)「……」
从 ゚∀从「……」
- 332 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 20:30:08.16 ID:L/viHKdd0
从 ゚∀从「どゆこと?」
('A`)「……」
从 ゚∀从「黙るの禁止。はっきり言えって」
从 ゚∀从「頼むから、うやむやにしないで」
川 ゚ -゚)「ドクオ。私も同意見だ」
('A`)「ぼ・・・お、俺は」
('A`)「嫌い……なんだよ」
从 ゚∀从「え?」
(#'A`)「ハインもクーも、嫌いなんだよ!」
- 338 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 20:32:46.21 ID:L/viHKdd0
从 ゚∀从「嫌い?」
('A`)「な、なれなれしいんだよ。二人とも、彼女みたいにふるまっちゃってさあ」
('A`)「お、俺は別に好きじゃねーのにさ!」
川 ゚ -゚)「……」
从 ∀从
从 ∀从「いや、でも、俺、スケッチ手伝って」
('A`)「暇潰しにきまってんだろあんなもん!!勘違いすんな!!バーカ!!」
('A`)「クーさんは嫌いだ。でもハインは」
('A`)「も、もっと嫌いd」
バシーン!!
- 343 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 20:34:59.66 ID:L/viHKdd0
(#)'A`) ……
从 ∀从「そうかよ」
从 ∀从「せいせいするぜ。転校前に幻滅できてよ」
ビリビリ
川 ゚ -゚)「……ドクオ」
川 ゚ -゚)「私はお前の絵を描いた。だが、これは破かせてもらう」
川 ゚ -゚)「二重の意味でな」
川 - )(ハインのほうが、もっと嫌い……か)
- 346 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 20:37:34.51 ID:L/viHKdd0
ぽいっ
('A`)「これは?」
从 ∀从「いちおー、美術部に入れたのはお前のおかげな部分もあるからよー」
从 ∀从「俺の描いた絵。選別だ」
从 ∀从「……じゃあな」
ザッザッザ
川 ゚ -゚)「さよなら、ドクオ君」
ザッザッザ
('A`) ……
- 350 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 20:40:23.80 ID:L/viHKdd0
( ФωФ)「よかったの? あれで」
('A`)「……いいんです」
('A`)「僕は所詮、ドクオですから。今回はたまたま、リミッターが外れていただけの事で」
('A`)「嫌われるのには、慣れてますから」
( ФωФ)「あっそー。まあ、記憶消えるから意味ないけどね」
( ФωФ)「本当にもういいのね? 帰っちゃうよ」
('A`)「ええ。ここは僕の居場所じゃない。少しの間、夢を見られてよかったです」
('A`)「僕はドクオ。工場にしか求められない」
('A`)「雑用型ですから」
- 355 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 20:45:25.69 ID:L/viHKdd0
( ФωФ)「じゃ、行くよー」
('A`)「……」
宇宙船が音も無く飛び立ち、俺がいた場所はどんどん小さくなっていく。
空から見下ろす街並みは綺麗で、
やっぱりここは俺のいる場所じゃないんだと
痛感した。
雑用型として製造され、初めて他人に好かれた。
俺を雑用以外で必要としてくれた。
異国同士の王子と姫様は、最後は必ず引き離される。
それが今回、たまたま人造人間と地球の女の子だっただけの話だ。
これはきっと、定められた結末。
('A`)「さよなら」
僕はドクオ。
工場で働く、もてない男。
これからも、ずっとそれは変わらないのだろう。
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