425 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:13:34.80 ID:oyGyWOSX0
( ;ω;)「ひどいお・・・なんで、こんなことになるんだお・・・ひどいお・・・」

川*; -;)「どうしたんだ!?腕時計は、ギコは無事か!?」

( ;ω;)「悲しんでる場合じゃないお・・・ギコを、ギコを助けなきゃ・・・」

目覚まし時計は再び前進し始める。

( ;ω;)「ギコおおおお!!!無事だったら返事してくれお!!!」

だがどこからも返事は聞こえなかった。

428 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:14:57.29 ID:oyGyWOSX0
目覚まし時計の叫びが、静かな道路に響く。

川*; -;)「こんなときに見てるだけしかできないなんて・・・」

砂時計は己の無力さを呪った。
呪って呪ってやがては自分の存在さえも憎くなるくらいに呪った。

429 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:15:44.03 ID:oyGyWOSX0
( ;ω;)「ギコおおお!!!どこだお!!!」

目覚まし時計はそれでも前進する。

( ;ω;)「ギコおおおお!!!ギコおおおお!!!」

( ;ω;)「ギ・・・・・?あ、あれ・・・・」

目覚まし時計のベルと叫び声が、急速に小さくなっていった。


431 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:17:14.26 ID:oyGyWOSX0
川*; -;)「目覚まし!?電池だな!?電池がなくなるんだな!?無理しなくていい!!」

( ;ω;)「や、やめないお・・・ギコを助けるまでは・・・絶対・・・」

目覚まし時計は、ベルを止めることなくギコを探し続ける。

川*; -;)「もうやめろ!!やめるんだ!!そうでないとお前まで動かなくなっちゃうぞ!!」

( ;ω;)「ギ・・コ・・・を探すんだお・・・助ける・・・・・んだ・・・お・・・」

川*; -;)「目覚まし!!!」

434 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:19:33.86 ID:oyGyWOSX0
( ;ω;)「お・・・なんで・・・ベルが・・・・鳴らないんだ・・・お・・・おかしいお・・・変だ・・・・お・・・・・・」


目覚まし時計のベルは、夜の闇へ吸い込まれるようにして、静かに消えた。

そして目覚まし時計自身も動きをとめる。

川*; -;)「あああ・・・嘘だろう・・・」

砂時計だけが、ひとり取り残された。

435 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:21:03.85 ID:oyGyWOSX0
動きを止めた目覚まし時計のそばを、車が一台通り過ぎる。


――おい、いま時計が道路に転がってたぞ。

――なんで道路なんかに、時計があるんだよ。

――大方誰かが捨てたんだろ。

――そうだなあ、今時時計なんて安く買えるしな、昔みたいに大事にしなくなったな、今の奴らは。

――はは、なにじじくさいこと言ってんの。古くなったら、修理するより、買ったほうが安いし楽。常識でしょ。

――そんなもんかなあ・・・・・・。

436 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:22:03.95 ID:oyGyWOSX0
目覚まし時計は思い出していた。

ツンに買われた日のことを――

437 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:22:43.36 ID:oyGyWOSX0
ツンちゃんの顔を初めて見た。

ツンちゃんはまだ中学生だった。

ツンちゃんはやさしい手つきで、僕のネジを巻いてくれた。

なんだかとっても、くすぐったかった。

439 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:23:13.30 ID:oyGyWOSX0
その日から僕はツンちゃんの枕元で、毎朝ベルを鳴らし続けた。

ツンちゃんがどんなに眠そうにしていても、僕がベルを鳴らせば起きてくれる。

――自慢のベルだ。

441 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:24:32.00 ID:oyGyWOSX0
修学旅行の朝も、部活の試合のある朝も、受験の朝も、僕はツンちゃんのためにベルを鳴らした。

でもすぐには起きてくれない朝だってある。

ツンちゃん、早く起きないと、遅刻しちゃう・・・・。

僕は一生懸命にベルを鳴らす。

443 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:26:38.75 ID:oyGyWOSX0
――ツンちゃん、起きて、ツンちゃん・・・。

祈りこめながら、必死にベルを鳴らす。

――あ、ツンちゃんが目を開けた!

――もうひとふん張りだ!

そうやって祈りを込めて、ベルを鳴らせば、ツンちゃんは必ず起きてくれた。

――祈りは通じるんだ。

僕は思う。

強く、強く、祈れば、絶対に通じるんだ・・・。

445 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:28:25.11 ID:oyGyWOSX0
だから僕は、最後に祈る。

どうか、どうかツンちゃんが、これからもちゃんと起きれますように。

僕がいなくなっても、毎朝時間通りに起きれますように・・・。


長い間、僕を使ってくれて、ありがとう。

さようなら、ツンちゃん。
574 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 19:55:39.98 ID:U6oeBA280
/ ,' 3「さっきまでこの辺りで、なにやらベルが鳴っていたんだがの・・・・」

懐中電灯の明かりが道路を照らした。

川*; -;)「誰だ・・・・?」

初老の男は目をこらしながら、音のしたほうへと明かりを向ける。

/ ,' 3「おや・・・・・?時計だ」

男は道路の隅で、目覚まし時計を見つけた。

/ ,' 3「なんでこんなところに・・・」

川*; -;)「・・・・・」

575 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 19:57:49.04 ID:U6oeBA280
/ ,' 3「ははあ、壊れてベルが鳴っていたんだな・・・。どれどれ」

男は目覚まし時計を手に取り、目を細めながら壊れている箇所を探した。

/ ,' 3「見たところただの電池切れかな・・・こんな所に捨てられて、寂しくて泣いていたのかもわからんの」

/ ,' 3「ちょうど家の目覚まし時計が壊れたとこだった・・・電池を入れ換えて、使わしてもらうかの」

目覚まし時計をポケットに入れた男は、懐中電灯で足元を照らしながら、元来た道を戻っていった。

川*; -;)「目覚まし・・・」

576 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 19:58:41.40 ID:U6oeBA280
男は『からくり記念館 荒巻』と書かれた看板が表に立つ、ログハウスへと入っていった。

入ってすぐの十畳ほどのスペースに、からくり人形がところ狭しと陳列されている。

茶を運ぶ盆を持った人形、太鼓を持った人形、馬に乗り、今にも矢を放たんとしている人形。

そのほかにももたくさんの人形たちが、オレンジ色の照明を浴び、きちんと手入れをされて飾ってあった。


577 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 19:59:59.09 ID:U6oeBA280
/ ,' 3「さてと、電池はどこだったかの」

男は部屋の中を進んで、奥にあるドアに入り、引き出しのたくさんついているタンスの中をゴソゴソと漁る。

/ ,' 3「あったあった」

よく日に焼けた手のひらで乾電池を一本つかみ、目覚まし時計へと入れた。

579 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 20:01:55.41 ID:U6oeBA280
( ^ω^)「・・・・お?」

目覚まし時計の針が、再び時を刻みだす。

/ ,' 3「やっぱり、ただの電池切れだったか。ベルは鳴るかな・・・・?」

( ^ω^)「ジ・・・ジジジジ・・・ガガ・・・」

/ ,' 3「ふむ・・・ベルがいかれとるな・・・ちょっと待っとれよ」

男は引き出しから細々とした道具を取り出した。

580 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 20:04:11.64 ID:U6oeBA280
/ ,' 3「あかんのう・・・前の持ち主がよっぽど酷使したんじゃろか・・・完全にいかれとる」

男はふうっと息を吐き道具をしまうと、目覚まし時計を作業台の上へと置いた。

/ ,' 3「さて、夕飯でも食ってくるとするかの」

男は椅子の背にかかっているシャツを羽織ると、ログハウスを出て、入り口の脇に停めてあるジープへと乗り込んだ。

581 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 20:05:23.07 ID:U6oeBA280
ジープのエンジン音が遠ざかると、やがてひぐらしの鳴く声が聞こえてきた。

( ^ω^)「・・・ここはどこだお・・・・みんなはどこいったんだお・・・」

(*‘ω‘ *)「ここはからくり記念館だっぽ」

( ^ω^)「!他に、他に時計がいるのかお!?」

(*‘ω‘ *)「ここだっぽ」

582 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 20:06:31.17 ID:U6oeBA280
目覚まし時計が声のしたほうをを向くと、大きな柱時計が目覚まし時計を見下ろしていた。

( ^ω^)「うわあ・・・大きい時計だお。こんな大きな時計は初めて見たお」

(*‘ω‘ *)「世の中にはもっと大きな時計だってあるんだっぽ」

柱時計はチクタク、チクタクとゆっくりと時を刻む。

583 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 20:08:11.72 ID:U6oeBA280
( ^ω^)「いつか見てみたいお」

(*‘ω‘ *)「そんなことよりお前さん、他の時計達はどうしたんだっぽ?」

( ;ω;)「あっ・・・そうだったお・・・事故に遭って・・それで、腕時計とギコが・・・」

(*‘ω‘ *)「ギコ・・・猫のからくりっぽか・・・。確か砂時計もいたっぽ?」

( ;ω;)「いたお・・・でも砂時計は動けないんだお」

(*‘ω‘ *)「わかったっぽ。からくりたちに言って迎えに行ってもらうっぽ」

そう言うと柱時計はボーンボーンと大きく振り子を鳴らした。

すると、それまで無表情でショーケースの中にいた人形達がぞろぞろと出てきた。

585 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 20:10:07.65 ID:U6oeBA280
( ´∀`)「ぽっぽさん、呼んだモナか?」

(●・`д・)「おうおう出陣だ出陣だ」

(=゚ω゚)「今回は何すればいいんだよう?」

( ><)「腕がなるんです!」


(*‘ω‘ *)「二合目あたりの道路に、砂時計がひとり取り残されているらしいっぽ。それをここまで連れてきてほしいっぽ」

(;^ω^)「あの、あと猫のぬいぐるみと、壊れた腕時計もいるんだお」

(*‘ω‘ *)「それも一緒に連れてきてもらいたいっぽ」


586 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 20:11:31.72 ID:U6oeBA280
( ´∀`)「了解したモナー」

(●・`д・)「そうとわかれば、さっさと出陣だ!!ついてこい!!」

(=゚ω゚)「時計の捜索かよう」

( ><)「腕がなるんです!」

からくりたちがカタカタと体を震わせ行ってしまうと、柱時計は満足げに振り子をボーンと鳴らした。

588 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 20:13:17.56 ID:U6oeBA280
(;^ω^)「ここにはたくさんからくり人形がいるお」

(*‘ω‘ *)「ここは玉屋5代目継承者の荒巻さんの仕事場兼作品展示場なんだっぽ。たくさんいるのは当たり前だっぽ」

( ^ω^)「玉屋ってなんだお?」

(*‘ω‘ *)「日本で唯一のからくり人形師の名門のことだっぽ」

( ^ω^)「なんだかわかんないけど、すごい人そうだお」

(*‘ω‘ *)「あの人形達の生みの親なんだっぽ。荒巻さんの技術力は世界一だっぽ」

589 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 20:14:18.72 ID:U6oeBA280
( ^ω^)「あっ、ところで、どうして僕のほかにも時計がいるって知ってたんだお?」

(*‘ω‘ *)「この辺のことは、人形達を通して全部把握してるっぽ」

(*‘ω‘ *)「お前さんたちが、この変をウロウロしてるって聞いて、捜してたんだっぽ」

( ^ω^)「そうだったのかお・・・」

(*‘ω‘ *)「もうちょっと早く見つかれば、みんな無事で済んだかもしれなかったっぽ。すまなかったっぽ」

( ^ω^)「柱時計さんのせいじゃないお。みんなを連れてきてくれるだけでも、ありがたいお」

その時、ジープのエンジン音が聞こえてきた。

591 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 20:15:56.73 ID:U6oeBA280
(;^ω^)「あっ!おじいさんが帰ってきたお!人形達がいないことがバレてしまうお!」

(*‘ω‘ *)「平気っぽ。荒巻さんは人形達が自分達で動けることを知ってるっぽ」

(;^ω^)「そんな人間がいるのかお・・・世界は広いお・・・」


/ ,' 3「ちと天ぷらは重かったの・・・胃がもたれるわい」

/ ,' 3「ん・・・?またあいつら勝手にどっか行きよって・・・」

荒巻は部屋の電気をつけ、人形達がいないことを確認すると、ぶつぶつ言いながら、目覚まし時たちがいる部屋へ戻ってきた。

/ ,' 3「さて、さっさとこいつを完成させてやるか・・・もう少しだからな、まっとれよ」

そう言うと荒巻は人形作りに没頭し始めた。


593 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 20:17:16.41 ID:U6oeBA280
( ´∀`)「なかなか見つかんないモナー」

(●・`д・)「夜だからな!しっかりと目ん玉ひんむいて捜せよ!」

(=゚ω゚)「無茶言うなよう」

( ><)「あっ!あれじゃないですか!?」




川*゚ -゚)「なんか変な奴らがきたぞ・・・」


595 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 20:19:35.55 ID:U6oeBA280

( ´∀`)「やっといたモナー」

(●・`д・)「おいおまえ!!助けにきてやったぞ!!」

(=゚ω゚)「目覚まし時計が待ってるよう」

( ><)「見つかってよかったです!」


川*゚ -゚)「お前ら、目覚ましのことを知ってるのか!?」

596 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 20:21:42.58 ID:U6oeBA280
( ´∀`)「知ってるモナー。ベルが壊れた目覚まし時計は、記念館で保護してるモナー」

(●・`д・)「あ!!腕時計もいたぞ!!」

(=゚ω゚)「猫のからくりもいたよう」

( ><)「どっちもボロボロになってます!早く荒巻さんに直してもらうんです!」

598 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 20:26:47.36 ID:U6oeBA280
川*゚ -゚)「なんかしらんが助かったみたいだな・・・」

(●・`д・)「3つとも俺の背に乗せてやる!!」

馬に乗ったからくり人形の背に、砂時計、ギコ猫、腕時計は乗せてもらい、人形たちはからくり記念館へと引き返していった。
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