292 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/11(金) 20:58:43.84 ID:6rh99YNW0
時計たちが空き地に捨てられて30分が経過した。

( ^ω^)「このままだと電池が切れちゃうお・・・」

(´・ω・`)「そうか、目覚まし時計は昨日ベル鳴らして、結構電池使っちゃったもんな」

川*゚ -゚)「乾電池系にとって、電池切れは死活問題だからな。まあ私には関係ない話だが」

( ^ω^)「困ったお・・・」

(´・ω・`)「はあ・・・」

293 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/11(金) 21:00:24.29 ID:6rh99YNW0
ミ,,゚Д゚彡「そりゃお前、あんだけうるさく鳴らせば電池も切れるわな」

( ^ω^)「お? 知ってたのかお?」

ミ,,゚Д゚彡「当たり前だ、何年あの部屋にいたと思ってるんだ」

(´・ω・`)「知ってたのなら、手伝ってくれればよかったのに」

ミ,,゚Д゚彡「俺様は無駄な体力を使いたくない主義なんだ」

川*゚ -゚)「そんなことより、お前、歩けるなら電池調達して来い」

ミ,,゚Д゚彡「なんだとゴラァ!そん中の砂ぶちまけるぞ!」

295 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/11(金) 21:01:54.87 ID:6rh99YNW0
川*゚ -゚)「お前もそのうち電池系なんだろ?そのうち切れる。ぞうなったら困るだろ」

ミ,,゚Д゚彡「たしかにそうだが・・・」

( ^ω^)「お願いしますお!」

(´・ω・`)「よっ!ギコ様日本一!」

ミ,,゚Д゚彡「ん?そうか、そこまで言うなら探してきてやるが」

( ^ω^)「やったお!ギコ様ありがとだお!」

(´・ω・`)「恩に着るよ」

川*゚ -゚)(乗せられやすい性格なんだな・・・覚えておこう)

296 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/11(金) 21:03:46.26 ID:6rh99YNW0
ミ,,゚Д゚彡「だがわざわざ戻ってくると、余計な体力使うからな・・・そうだ、お前らも来い」

( ^ω^)「僕たちは歩けないんだお・・・」

(´・ω・`)「こういう時にはまったくの無力なんだ」

川*゚ -゚)「動けたら自分達で探しにいくんだがな」

ミ,,゚Д゚彡「そんなこと、とっくに知ってるぞゴラァ。ここに入れてやるから」

そう言うとギコ猫は地面に背中をこすりつけ、背中に付いてるファスナーを器用に開けた。
そして時計たちを前足で挟んで、そのファスナーの中へと入れる。

297 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/11(金) 21:04:46.49 ID:6rh99YNW0
( ^ω^)「お?フカフカだお!」

(´・ω・`)「これは気持ちいい・・・まるでネコバスのようだ」

川*゚ -゚)「なんでこんなスペースがあるんだ?」

ギコ猫は背中に時計たちを入れると、トコトコ歩き出した。

ミ,,゚Д゚彡「俺はもともとティッシュケースだったんだぞゴラァ」

( ^ω^)「ティッシュケースって何かお?」

299 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/11(金) 21:07:21.08 ID:6rh99YNW0
(´・ω・`)「ティッシュっていう、ふわふわした紙を入れておくための容器みたいなものだよ」

ミ,,゚Д゚彡「それを俺の持ち主だった奴が、俺にからくり仕込んで、彼女にプレゼントしたんだ」

川*゚ -゚)「ほう・・・かなり精密にできているようだが・・・」

ミ,,゚Д゚彡「そいつはからくり人形の職人だったのさ。器用な奴だったよ」

川*゚ -゚)(・・・いつか私もからくりを仕込んでもらえないだろうか・・・そしたら・・・)

301 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/11(金) 21:08:13.09 ID:6rh99YNW0
( ^ω^)「ともかく、ツンちゃんの彼氏たんに感謝だお!」

(´・ω・`)「さすがは、僕たちのツンちゃん、見る目があるう!」

( ^ω^)「ツンちゃんサイコー!!」

(´・ω・`)「ツンちゃん!ツンちゃん!」

( ^ω^)「ワッショイ!ワッショイ!」

(´・ω・`)「ワッフル!ワッフル!」

川*゚ -゚)(こいつらなんでテンション上がってんだ?)



('A`)「・・・あいつら、一体どこに詰められたんだ?なかなか出てこないな・・・」

307 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/11(金) 21:14:10.12 ID:6rh99YNW0
時計たちを背中に収納したギコ猫は、やがて空き地を出て、道路までやってきた。

ミ,,゚Д゚彡「・・・どうやら、相当遠くまで連れて来られたみたいだな」

川*゚ -゚)「電池は持ちそうか?」

ミ,,゚Д゚彡「まあ・・・俺様は省エネ設計だからな・・・まだ大丈夫だとは思うが・・・」

川*゚ -゚)「いざとなったら、こいつらの電池を外して使え」

(;^ω^)「恐ろしいことを、さらっと言っちゃってくれてるお・・・」

(;´・ω・)「どっちが先に犠牲になるんだ・・・」

川*゚ -゚)「ふふふ・・・」

308 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/11(金) 21:14:49.43 ID:6rh99YNW0
ミ,,゚Д゚彡「おっと車には気をつけないとな」

ギコ猫のそばを車が通り抜ける。

( ^ω^)「車ってなんだお?」

(´・ω・`)「ん・・・乗り物さ。ものすごいスピードで、行きたいところへ連れて行ってくれる」

( ^ω^)「すごいお!」

川*゚ -゚)(ぜひ乗ってみたい・・・!)

309 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/11(金) 21:15:54.85 ID:6rh99YNW0
ミ,,゚Д゚彡「ふう・・・だいぶ歩いたぞ・・・」

( ^ω^)「ちょっと暗くなってきたお」

(´・ω・`)「夜がやってくる」

川*゚ -゚)「ギコ、平気か?」

ミ,,゚Д゚彡「さすがにちょっときついな・・・これだけ歩いたのははじめてだし・・・それより部品に負担がかかってないか心配だ」

川*゚ -゚)「少し、休め」

ミ,,゚Д゚彡「わかった」

ギコ猫は道路から離れた茂みに、腰をおろした。
395 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 03:54:57.37 ID:oyGyWOSX0
(;'A`)「おっかしいなあ・・・ツンちゃん全部荷物開けたのに、なんでみんないないんだ?」


396 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 03:55:55.94 ID:oyGyWOSX0
( ^ω^)「キゴ猫様・・・」

ミ,,゚Д゚彡「なんだゴラァ!今疲れてんだ!話しかけるなゴラァ!」

( ^ω^)「さっきから、僕たちの上をカラスの群れが旋回してるんだけどお・・・」

(´・ω・`)「あ、ほんとだ。でもよくカラスってわかったね」

( ^ω^)「テレビで観たんだお。ついでにそのテレビでカラスは、光モノを好んで巣に持って帰るって言ってたお」

(´・ω・`)「そうそう、例えば宝石とかブローチね」


397 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 03:56:16.12 ID:oyGyWOSX0
川*゚ -゚)「あと・・」

(;^ω^)「腕時計も・・・」

(´・ω・`)「ん?」

川*゚ -゚)「腕時計も光りモノだな」

(´・ω・`)「・・・・」

(;^ω^)「あっ!カラスが一羽こっち来たお!」


399 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 03:56:49.87 ID:oyGyWOSX0
川*゚ -゚)「ギコ、走れるか?」

ミ,,゚Д゚彡「まかせろゴラァ!!」

ギコ猫はそう叫ぶなり、一直線に走り出した。

それに気付いたカラスが上空から追ってくる。

(;´・ω・`)「僕か!?狙いは僕なのか!?」

(;^ω^)「どう考えても腕時計だお!サイズも手頃だしお!」

川;゚ -゚)「やばいな。どう見ても、向こうのほうが速い」

400 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 03:58:22.10 ID:oyGyWOSX0
いかに精巧なカラクリとは言え、所詮はカラクリ。
風を巧みに味方につけるカラスの敵ではなかった。

(;^ω^)「ああ追いつかれたお!!」

(;´・ω・`)「もうすぐ日が暮れるだろ!?大丈夫やつらは鳥目だから、夜になれば――」

川;゚ -゚)「きた!!」

急降下したカラスは、ギコ猫の背中にあるファスナーの中に足を突っ込み、腕時計をつかんだ。

川;゚ -゚)「ギコ!とまれ!」

ギコ猫が急ブレーキをかけ止まる。

が、時すでに遅く、カラスは腕時計をガッシリとつかむと、そのまま空へと舞い上がった。

403 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 03:58:50.42 ID:oyGyWOSX0
川;゚ -゚)「間に合わなかったか!」

(;´・ω・`)「うわあああ!!なんだよ!!離せよ!!!」

(;^ω^)「腕時計!!!」

川*゚ -゚)「ギコ追え!!」

ミ,,゚Д゚彡「ゴラァ!!」

再び加速しだすギコ猫。

404 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 03:59:27.47 ID:oyGyWOSX0
腕時計をつかんだカラスを全速力で追う。

川;゚ -゚)「それ以上、高く飛ばないでくれ!」

砂時計は祈りを込めながら、砂つぶてをカラスめがけて撃つ。

(;^ω^)「当たってくれお!」

目覚まし時計の祈りもむなしく、つぶてはカラスをかすりもしない。

川;゚ -゚)「まだまだ!」

続けざまに1発、2発、3発と打ち込む。

407 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:00:04.16 ID:oyGyWOSX0
(;´・ω・`)「ダメだ・・・あさっての方向へ飛んでいってる・・」

川;゚ -゚)「くっ・・・揺れがあると狙いが定まらない・・・!」

ミ,,゚Д゚彡「揺れずに走るっては、到底無理な注文だぞゴラァ!!」

その間にもカラスは徐々に上昇していく。

(;^ω^)「腕時計!!!」

(;´・ω・`)「くそっ!こんな形でお別れがくるなんて・・!!」

408 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:00:46.65 ID:oyGyWOSX0
川;゚ -゚)「そんなことさせるもんか!イチかバチかだ!とまってくれギコ!」

ミ,,゚Д゚彡「さっきから注文の多い時計だぜまったく!」

ギコ猫は体を横に向け、空気抵抗を上手く利用し止まる。

カラスはどんどん遠ざかっていく。

川;゚ -゚)「一発が当たらないなら、まとめて撃ってやる・・・!」

砂時計は慎重に狙いを定め、残りの砂時計を一気に放射した。

412 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:02:21.73 ID:oyGyWOSX0
砂つぶてはショットガンの弾丸のように、一直線にカラスへと飛んだ。

そしてその何発かは、確実にカラスの体や翼を直撃した。

カラスはたまらずに腕時計をつかんでいた足を離す。

真っ逆さまに落下していく腕時計。

(;^ω^)「ああっ!下はコンクリートだお!!」

川;゚ -゚)「ギコ!!」

砂時計の声を聞く前に、ギコ猫は飛び出していた。

ミ,,゚Д゚彡「ゴラアアアアアア!!!!!」

全力疾走でかけていくギコ猫。

413 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:03:23.78 ID:oyGyWOSX0
(;^ω^)「間に合ってくれお!!!」

川;゚ -゚)「頼む!!」

(;´・ω・`)「だめだ・・・さよなら・・・みんな・・・」

腕時計が死を覚悟した瞬間、ギコ猫の背中が見事に腕時計を捕らえた。

( ^ω^)「やったお!!!」

川*゚ -゚)「よおおしっ!」

(;´・ω・`)「助かったのか・・・!?」

ミ,,゚Д゚彡「どんなも――」

ギコ猫が得意そうな笑みを浮かべて、振り返った瞬間――

猛スピードでやってきた一台の車がギコ猫をはね飛ばした。

416 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:05:23.24 ID:oyGyWOSX0
宙高く舞ったギコ猫は、空中で一瞬停止したかのように見えた。

が、次の瞬間ギコ猫は激しくコンクリートに叩きつけられ、ネジや歯車があたり一面に飛び散った。

( ;ω;)「ああああああ!!!」

川;゚ -゚)「ギコ!!!!!」

418 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:06:33.56 ID:oyGyWOSX0
あたりはすでに暗くなっていた。

虫の鳴き声にまじって、遠くのほうから車のエンジン音が聞こえてくる。

419 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:07:27.84 ID:oyGyWOSX0
( ;ω;)「どうして僕たちは、こんなときにすぐ動くことさえ、できないんだお!?ねえどうしてなんだお!?」

川*; -;)「今私に動く能力を与えてくれれば、もう動くことなど二度と叶わなくてもいい・・・!」

川*; -;)「だから、頼むから、お願いだから私を動けるようにしてくれ・・・!」

( ;ω;)「ギコおお!!腕時計いい!!返事してくれお!!!」

目覚まし時計は必死に叫びながら、体を震わせ少しづつ前進していく。

420 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:08:20.34 ID:oyGyWOSX0
( ;ω;)「お願いだから返事してくれお!!!」

うす暗い道路に、目覚まし時計のベルが悲しくこだまする。

(´・ωー)「目覚まし時計か・・・?僕は・・・なんとか・・大丈夫だ」

( ;ω;)「どこだお!?腕時計どこだお!?」

(´・ωー)「ここだ・・道路の脇の・・・白い花が咲いてるところの・・・」

( ;ω;)「今いくお!!!」

421 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:10:05.67 ID:oyGyWOSX0
川*; -;)「腕時計いるのか!?平気か!?」

( ;ω;)「ああ・・・・腕時計・・・」

目覚まし時計が見つけた腕時計は、見るも無残な姿になっていた。
文字盤がグシャグシャにめくれ上がり、針は根元から折れながら、ピクピクとかすかに動いている。


422 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:12:14.01 ID:oyGyWOSX0
(´・ωー)「はは・・・これじゃあもう、ツンちゃんの腕には、付けてはもらえないね・・・」

( ;ω;)「そんなことないお!ちゃんと元通りに修理して――」

( ;ω;)「腕時計!?どうしたんだお!?返事してくれお!?」

腕時計は静かに動きを止めた。

渇いた大地が一滴の水を飲み込むように、それはあっけなく、ほんの一瞬の出来事だった。

壊れてしまった腕時計は、二度と動こうとはしなかった。
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