- 251 名前:1
◆piEfblYWC. :2006/08/11(金)
20:08:12.42 ID:6rh99YNW0
- ( ^ω^)「ふう、みんなありがとだお」
(´・ω・`)「いや君が一番の功労者だよ」
川*゚ -゚)「まったくだ。あの音のでかさには、こっちまで驚いたぞ」
( ^ω^)「ちょっと張りきり過ぎちゃったお。でへでへ」
(´・ω・`)「砂時計もお疲れ。あの砂粒マシンガン、凄かったよ」
( ^ω^)「ゴルゴ13も真っ青なスナイパーぶりだったお」
(´・ω・`)「あれにはびっくりだったよホント」
- 252 名前:1
◆piEfblYWC. :2006/08/11(金)
20:09:26.33 ID:6rh99YNW0
- 川*゚ -゚)「運がよかっただけだ。腕時計の的確かつ素早い指示もよかったぞ」
( ^ω^)「本当だお。何で僕の体の構造まで知ってたんだお?」
(´・ω・`)「いやあ、ツンちゃんと色んなとこ行ってるからね、それで偶然知っただけさ。まあほんのかじった程度だけどね」
川*゚ -゚)「やはり外の世界を知ってるやつは違うな」
( ^ω^)「腕時計さまさまだお」
(´・ω・`)「いやあ、照れるなあ」
('A`)(・・・あ、俺だけなんもしてないや・・・どうしよう・・・話しに入っていけない・・・)
- 254 名前:1
◆piEfblYWC. :2006/08/11(金)
20:10:38.22 ID:6rh99YNW0
- その夜遅くにツンは帰ってきた。
ツンはおぼつかない足取りで靴を脱ぐと、ふらふらと玄関にへたり込み、そのまま寝息を立て始めてしまった。
どうやら、相当酔っ払っていたようだ。
(´・ω・`)「ち・・・新参の野郎、しっかりと腕にからみついてやがる。どっかに置き去りにされればよかったのに」
( ^ω^)「おかえりだお」
(`・ω・´)「ん? おっす舎弟。元気に留守番してたか?」
( ^ω^)「お留守番も色々大変なんだお」
- 255 名前:1
◆piEfblYWC. :2006/08/11(金)
20:11:50.39 ID:6rh99YNW0
- (`・ω・´)「そうか・・・まあこれからもずっとツンちゃんと一緒にいる俺には縁の無い悩みだがな」
(#´・ω・)(ビキビキッ)
(`・ω・´)「おい、それはそうと、ツンちゃん引っ越すらしいぞ」
( ^ω^)「ほんとかお!?」
(`・ω・´)「ああ、今日はツンちゃんの送別会だったんだ。ツンちゃん実家に帰るって言ってた」
('A`)「・・・うはキタコレ」
(´・ω・`)「へえ・・・・」
川*゚ -゚)「それは楽しみだ」
- 257 名前:1
◆piEfblYWC. :2006/08/11(金)
20:16:52.78 ID:6rh99YNW0
- ずっと同じ部屋の同じ場所にいる置き時計たちにとって、新しい場所に移動できる引越しは、最高のイベントだった。
例えば、人類が宇宙へ旅するように、それは未知への空間への移住なのである。
( ^ω^)「それで、それでいつ引っ越すんだお!?」
(`・ω・´)「それは、しらねえなあ・・・でもだいぶ荷物もまとめてるみたいだし、もうすぐなんじゃねえの」
('A`)「ワクワクしてきたぜ」
川*゚ -゚)「はやく引っ越さないかしら」
(´・ω・`)(もしあいつの話が本当だとしたら、僕は荷物としてダンボールの中へ閉じ込められるんだろうか・・・
それとも、ツンちゃんと・・・)
- 259 名前:1
◆piEfblYWC. :2006/08/11(金)
20:21:43.20 ID:6rh99YNW0
- 引越しの日は、時計たちの予想よりも早く来た。
翌日、引越しの業者がやって来ると、部屋中の荷物を慣れた手つきでパッキングし、あっというまにトラックへと積み込んだ。
ξ゚听)ξ「さてと、忘れ物はないわね・・・掃除はしたし、カギは大家さんに返したし」
ξ゚听)ξ「はあ・・・この部屋で色んなことがあったな・・・」
ツンは名残惜しそうに、部屋をぐるっと見渡してから、ドアをそっと閉めた。
<ヽ`∀´>「コンビニでアイス買って来よっとニダー」
ちょうどその時、隣の住人が部屋から出てきた。
- 261 名前:1
◆piEfblYWC. :2006/08/11(金)
20:24:25.18 ID:6rh99YNW0
- ξ゚听)ξ「あっ・・・・」
<ヽ`∀´>「ニダダッ!?」
ξ゚听)ξ「あの・・・」
<ヽ`∀´>「おまえ、引越しするニダか?」
ξ゚听)ξ「ええ」
<ヽ`∀´>「やったニダ、これでやっと静かに生活できるニダ、とっとと出て行ってくれニダ」
- 263 名前:1
◆piEfblYWC. :2006/08/11(金)
20:26:38.96 ID:6rh99YNW0
- ニダーの放ったその一言に、ツンの額に血管が浮き出る。
ξ#゚听)ξ「はあ?お言葉を返すようですけど、あなただって夜中に大音量でゲームしてましたよね!?」
<ヽ`∀´>「ふん!そんなこいちいち気にするなんて小さい人間ニダ。もっとウリみたいに大きなハートの人間になった方が『いい』ニダ」
ξ#゚听)ξ「あんたのどこが大きなハートの人間よ!このニートが!」
<#ヽ`∀´>「ファビョッ!!ウリはニートじゃないニダ!プー太郎ニダ!」
ξ#゚听)ξ「同じだろ!働けよ!」
<#ヽ`∀´>「黙れニダ!この肉便器が!」
- 265 名前:1
◆piEfblYWC. :2006/08/11(金)
20:29:51.86 ID:6rh99YNW0
- ニダーがそう言った瞬間、ツンの体がくるっと円を描いたかと思うと、ものすごいスピードでツンの踵がニダーの顔面めがけて飛んできた。
#)`∀´>「はぶょっ!!!!」
ニダーは吹っ飛び、後頭部から思い切りドアに叩きつけられた。
ξ#゚听)ξ「このトンガリほっぺが!ペッ!」
<ヽ`∀´>「ひいいいいいい!!」
ツンはそう言い捨てると、痛みでうずくまるニダーに唾を吐きかけた。
そしてさっときびすを返すと、アパートから出て行った。
- 267 名前:1
◆piEfblYWC. :2006/08/11(金)
20:34:26.36 ID:6rh99YNW0
- (´・ω・`)「・・・・」
川*゚ -゚)「・・・・」
( ^ω^)「・・・・・」
(´;ω;`)「うう・・・」
川*゚ -゚)「泣くな」
( ^ω^)「僕たちがついてるお」
- 268 名前:1
◆piEfblYWC. :2006/08/11(金)
20:35:28.65 ID:6rh99YNW0
- (´;ω;`)「くそう・・・僕はこんな狭いところにいるのに、あいつは、あいつは・・・」
川*゚ -゚)「ここもそうは悪くはないぞ」
( ^ω^)「そうだお、この体に巻いてあるぷちぷちしたの気持ちいいお」
(´;ω;`)「それは、クッション材って言うんだ・・・」
川*゚ -゚)「ほう。さすが物知りだな」
( ^ω^)「それはそうと、腕時計、あのもふもふしたのはなんだお?」
(´・ω・`)「ん・・?ああ、あれはぬいぐるみって言うんだ。ツンちゃんが19才の誕生日に彼氏さんからもらったものさ」
- 269 名前:1
◆piEfblYWC. :2006/08/11(金)
20:36:12.77 ID:6rh99YNW0
- 川*゚ -゚)「変な顔したぬいぐるみだな」
( ^ω^)「あの形は猫っていうんだお。それぐらいは僕でも知ってるお」
(´・ω・`)「そうだね、さらに詳しく言うと、ギコ猫っていう名前のぬいぐるみなんだけどね」
川*゚ -゚)「ぎこ・・・?名前も変だな」
( ^ω^)「のこぎりみたいな名前だお」
(´・ω・`)「言われて見ればそうだね、ハハハ」
- 271 名前:1
◆piEfblYWC. :2006/08/11(金)
20:37:48.16 ID:6rh99YNW0
- 'A`)「おい・・・なんで俺だけ別の箱に入れられてんだよ・・・」
('A`)「しかもこの箱、隙間だらけで、揺れるたびに体ぶつけて痛てーし」
('A`)「あーあ暇だ・・・」
('A`)「あ・・・揺れた・・・イテッ」
('A`)「今頃、みんな俺の心配してくれてんだろうな・・・・」
- 272 名前:1
◆piEfblYWC. :2006/08/11(金)
20:38:51.25 ID:6rh99YNW0
- ポワワァァァァン
( ^A^)「おっおっ!?壁時計はどこへ行ったんだお!?」
('ω`)「本当だ!彼がいないと不安でしょうがないよ」
川*'A`)「まったくだ。あいつは私達の精神的支柱だからな」
( ^A^)「壁時計に早く会いたいお!」
('ω`)「彼がいないと元気がでないや・・・」
川*'A`)「今頃どうしてるんだろうな、あいつ」
(*'A`)「・・・・・うへへもう少しの辛抱だぜ、みんな」
- 275 名前:1
◆piEfblYWC. :2006/08/11(金)
20:42:41.96 ID:6rh99YNW0
- ツンの実家まであと1時間を切ったころ、時計たちを乗せたトラックは、高速を降り、一般道に差し掛かっていた。
運転手「すいません、ちょっと次のコンビニでトイレ行ってもいいですか?」
ξ゚听)ξ「ええ、どうぞ。私もちょうど喉が渇いたし」
運転手「それでは、あのコンビニでとまりますね」
トラックはコンビニに駐車場に停車し、運転手とツンはトラックを降りた。
田んぼに周りを囲まれた、のどかなコンビニである。
- 276 名前:1
◆piEfblYWC. :2006/08/11(金)
20:45:09.60 ID:6rh99YNW0
- そんなトラックに、車の中から目を光らせる集団がいた。
集団の名はABIRU窃盗団。
从゚∀从「引越し屋か?」
( ´ー`)「みたいだな」
( ;゚∀゚)「今日はまだ収穫ゼロだ・・・。手ぶらで帰ると首領に半殺しの目に合うからな・・・行け」
- 277 名前:1
◆piEfblYWC. :2006/08/11(金)
20:45:43.81 ID:6rh99YNW0
- 窃盗団はすばやく車から出ると、トラックの後部にあるドアを開け、慣れた手つきでダンボールを運び出した。
从゚∀从「おい今支払い終えて、もうすぐ戻ってくるぞ」
( ´ー`)「よし、まあこんなもんだろ」
( ゚∀゚) 「ばれないように、元通りに閉めろ!よし、撤収!!」
- 278 名前:1
◆piEfblYWC. :2006/08/11(金)
20:46:10.78 ID:6rh99YNW0
- 窃盗団の車が発進したのと同時に、運転手とツンがトラックに戻ってきた。
運転手「さて、もうひと頑張りするか」
ξ゚听)ξ「あーウーロン茶最高ー」
- 281 名前:1
◆piEfblYWC. :2006/08/11(金)
20:47:06.70 ID:6rh99YNW0
- 30分後、窃盗団たちは空き地に車を止め、先ほど盗んだ荷物を物色し始めた。
从゚∀从「なにがでるかな〜なにがでるかな〜」
( ´ー`)「・・・ゴミばっかじゃん」
( ゚∀゚)「・・・・やはりあせって引越し屋なんか狙ったのは失敗だったか・・・」
从゚∀从「ロクなもんないな・・・服に本に雑貨・・・」
- 282 名前:1
◆piEfblYWC. :2006/08/11(金)
20:48:05.91 ID:6rh99YNW0
- ( ´ー`)「あ、ジブリのDVDめっけ」
( ゚∀゚)「全ジブリ作品コンプリートしてんじゃん!基地帰って首領とそれ観ようぜ!」
从゚∀从「残りはどうすんの?」
( ´ー`)「んなもん捨てておけ」
( ゚∀゚)「さっさと帰るぞ」
窃盗団の車が行ってしまうと、空き地には散乱した荷物だけが残った。
- 283 名前:1
◆piEfblYWC. :2006/08/11(金)
20:51:09.11 ID:6rh99YNW0
- ( ^ω^)「・・・ここはどこだお」
(´・ω・`)「やっと着いたと思ったら・・・」
川*゚ -゚)「さっきの奴らに箱ごと盗まれたってわけか」
( ^ω^)「・・・・・ツンちゃんの家は?」
(´・ω・`)「知らないよ・・・」
川*゚ -゚)「どうやら、最悪の事態に直面しているようだな」
- 284 名前:1
◆piEfblYWC. :2006/08/11(金)
20:51:41.31 ID:6rh99YNW0
- ( ^A^)「壁時計様!あなた様は最高の時計です!」
('ω`)「まさに時計の中の時計だ!キング・オブ・クロック!!」
川*'A`)「壁時計様!!私と結婚してくれ!!」
('A`)(ムニャムニャ・・・)
('A`)「ん・・・夢か・・・いい夢だったな。うしし」
('A`)「おや?トラックが止まったぞ。そろそろ着いたかな」
- 285 名前:1
◆piEfblYWC. :2006/08/11(金)
20:52:22.19 ID:6rh99YNW0
- ( ;ω;)「うわあああん!!ツンちゃんどこだおー!!」
(´;ω;`)「うう、もう二度とツンちゃん腕に巻かれないのか・・・」
川*゚ -゚)「このまま電池が切れていくのを待つしかないな、まあ私には関係ないが」
( ;ω;)「そんなのいやだお!!」
(´;ω;`)「誰かたしゅけてえええ!!!」
川*゚ -゚)「・・・・これも運命か」
- 286 名前:1
◆piEfblYWC. :2006/08/11(金)
20:53:28.01 ID:6rh99YNW0
- ミ,,゚Д゚彡「お前ら、うっせえぞゴラァ!」
( ;ω;)「お!? 誰だお!?」
(´;ω;`)「お前は・・・一緒にダンボールに入ってたぬいぐるみか!?」
川*゚ -゚)「ぎこなんちゃらか」
( ;ω;)「なんでただの綿のかたまりに、僕らの言葉が話せるんだお?」
(´;ω;`)「幻聴か!?」
川*゚ -゚)「歯車をかすかに振動させることによって、会話できるのは我々時計と、
一部の機械のみに許された意思伝達法のはずなんだが」
- 287 名前:1
◆piEfblYWC. :2006/08/11(金)
20:54:31.98 ID:6rh99YNW0
- ミ,,゚Д゚彡「俺様はこう見えても、からくり仕掛けなんだ!歩くことだって、できるんだぞゴラァ!」
そういうとギコ猫は、すっと立ち上がり、悠々と空き地を歩き始めた。
( ^ω^)「すげえお!」
(´・ω・`)「ファンタスティック!」
川*゚ -゚)(すごく、うらやましい)
- 290 名前:1
◆piEfblYWC. :2006/08/11(金)
20:55:49.66 ID:6rh99YNW0
- ミ,,゚Д゚彡「ふん!ダンボールの中じゃ好き放題言ってたくせに!このゴラァどもが!」
( ^ω^)「あいや、あれは戯言でござるよ」
(´・ω・`)「気にするなかれ、ギコ猫よ」
川*゚ -゚)(私も歩行能力がほしい。自分の力で歩きたい)
- 291 名前:1
◆piEfblYWC. :2006/08/11(金)
20:57:54.80 ID:6rh99YNW0
- ('A`)「お・・・次々とダンボールが運びこまれてるぞ・・・」
('A`)「うは、ついに俺のダンボールが運ばれてるぜ。いっちょ慎重に頼むよ!」
('A`)「おーとうとう光が!!みんなに会える!!」
それまでうす暗かったダンボールの中に、光がわっと差し込んだ。
ξ゚听)ξ「さて、ひとまずはここでいっか」
ツンは壁時計を手に取ると、学習机の上へと置いた。
('A`)(早くみんなも出てこないかな。感動の再開だ。ワクワクするぜ)