3 :作者 :2007/02/05(月) 23:54:30.87 ID:mm6iYYdT0
プロローグ


響き渡る悲鳴。室内に充満した煙や、所々から吹き出る炎がが人々をパニックに陥れる。
パニックがまた別のパニックを呼ぶという最悪の連鎖の中、ここ、セレクトビル内は
取り返しのつかないほどの混乱に包まれていた。


人々が出口を求めて逃げ惑う中、10代くらいだろうか、自身の身長の半分ほどの
大きさのロボットを引き連れた一人の少年が彼らとは全く逆の方向へ向かって
走ってゆく。自分が助かることに必死な人々は危険に自ら飛び込んでゆく少年になど
気付くはずもなかった。


4 :作者 :2007/02/05(月) 23:55:38.53 ID:mm6iYYdT0

「そろそろ一番上の階か?」


小型のロボットが隣を走る少年に話しかける。走っている最中だというのにその
口調には疲れが微塵も感じられない。


「だ…だろうな…!そろそろなはずだぜ!!奴らを…止めなきゃな!!」


走っている事による体温の上昇と、火事となった建物内の強烈な熱気が少年を
襲っているのだろうか。少年は既に汗だくで言葉にも所々力の抜けている部分がある。


「…この先だ。感じる。レアメダルの気配を」


小型のロボットが一つの扉の前で立ち止まり、緊張した声色で少年に話しかける

5 :作者 :2007/02/05(月) 23:56:25.96 ID:mm6iYYdT0

「いよいよ…か。覚悟はできてるか、メタビー?」

「誰にもの言ってやがるんだよおめーは。お前こそビビってんじゃねーだろうな?」

「おまっ…それがマスターに対する態度か!!」

「さぁ?どーだかな。…そろそろ行くぞ。俺だって本当は怖い。だけどここで
 行かなくちゃ…世界が滅ぶ」

「…大丈夫だ、メタビー。俺たちに出来ないことなんてないはずだ。行くぜ!!」

「……おうっ!!!」


互いに支えあうように扉に手を掛けて、二人は勢いよく扉を開いた。
7 :作者 :2007/02/05(月) 23:57:18.17 ID:mm6iYYdT0
「…来たか。だが一足遅かったな。『ビーストマスター』はたった今完成した」

「ビースト…マスター?なんだこいつは…」


目の前に存在する異形の『それ』に対して、少年は驚愕の表情を浮かべる。
それに応えるかのように、少年から10メートルほど離れた位置に立つ男が。
保安隊のような制服に身を包んだ男が下品な笑みを浮かべて少年の疑問に答えた。


「最強の兵器メダロット。『ビーストマスター』だよ」

「兵器だとっ!!」


少年の隣に立つ小型のロボットが叫ぶ。それに続いて少年も叫ぶ。


「ふざけるな!メダロットは…兵器なんかじゃない!!」


感情を露にする二人を尻目に、保安隊風の男はゆっくりと答える。


「ならば止めて見せろ。散々我々の邪魔をしてきたのだ…ここで決着をつけようじゃないか」

8 :作者 :2007/02/05(月) 23:58:47.81 ID:mm6iYYdT0
「俺はお前らの邪魔なんかした覚えはないぜ!人違いもいいところだ!……って待てよ…まさかお前らっっ!!」

「ようやく気付いたか。そう、俺たちと『奴ら』は共同戦線を張ってたんだよ」

「ふざけるな!!人々を守るべき立場の人間がそんな事をして許されると思ってるのか!!」


少年と男。一定の距離を保ったまま叫びあう。そんな二人の大声をかき消すかのような
不気味な音…産声というべきだろうか。形容のし難い不快な音が部屋の中央で大量の
ケーブルに繋がれたロボットから発せられた。


「お目覚めってわけかよ…準備はいいか!?マスターさんよぉ!」

「こんな時だけマスター扱いするなよな…けど…やるしかない!いくぞ、メタビー!!」

「おうっ!!」



9 :作者 :2007/02/05(月) 23:59:44.42 ID:mm6iYYdT0
既に日常の生活必需品ともいえるほどに人々に浸透していたメダロット。完全な制御の下で
管理されていたはずのメダロットたちは、ある日を境に突然暴走を始めた。不思議な事に
その暴走はおよそ10日間で何事も無かったかのように収まった。全世界の人々を恐怖に陥れた
原因不明の事件。人々は究極の恐怖を込めてこの事件をこう呼んだ。



――魔の十日間――と。


人々は知らない。
自分たちを守ってくれるはずだった人間が自分たちに牙を剥こうとしていたことを。

人々は知らない。
未だにその名を出すだけで人々を震え上がらせる「魔の十日間」事件は、一人の少年と
一体のメダロットによって解決されていた事を。


時の流れは恐怖による傷跡を少しずつ埋めてゆき――

「魔の十日間」事件から7年が経とうとしていた。
11 :作者 :2007/02/06(火) 00:00:58.04 ID:0Sy+KWQe0







        ( ^ω^)はメダロッターなようです






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