1 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/20(金) 22:16:06.52 ID:rMgF7xuF0

 〜 バーボンハウス前 早朝 〜


(;^ω^)「いや、わんわんおは置いて行きますお?」

(∪^ω^)「わんおー?」

( ゚д゚)「ブーンの使い魔なんだろ? 使い魔は常に側において置くんじゃないのか?」

(;^ω^)「そうですけど、使い魔といっても常に一緒に居なくてもいいですお」

( ^ω^)「大きな馬車じゃないし、邪魔になりますお?」
  _
( ゚∀゚)「連れて行けばいいじゃないか」

从 ゚∀从「ああ、俺もかまわねえぜ」

(∪^ω^)「わんわんお」

( ^ω^)「……」


2 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/20(金) 22:17:39.95 ID:rMgF7xuF0

ξ゚听)ξ「連れて行ってあげなさいよ。わんおも行きたがってるわよ?」

(∪^ω^)「わんわんお!」

川 ゚ -゚)「うむ、旅は道連れ世は情けだ」

( ^ω^)「……」

(* ゚д゚)「決まりだな。わんわんおも一緒に行こう」

( ^ω^)「……はいですお」

(∪^ω^)「わんわんお!」

(´・ω・`)(´・ω・`) ショボーン



     第八話 旅路の馬車は揺れる

3 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/20(金) 22:19:24.00 ID:rMgF7xuF0

 〜 ヴィップ町南西街道 〜


( ^ω^)「今日もいい天気だおね」

僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。

(∪^ω^)「わんわんお!」

この子の名前はわんわんお。
僕のペットというか家族で、見た目は子犬だが実は元竜だ。

僕らは今、馬車の上、御者台に座っている。
ニゲット山へ鉱石採掘のクエストに向かう途中である。

馬車には僕達の他に幼馴染のツン、今回の依頼主であるクー、クエストを請け負ってくれた冒険者のジョルジュさん、
ハインさん、ミルナさんが乗っている。

馬車はこれから2日ほどかけてニゲット山の麓に向かう。
馬車の旅だが夜通し走る事はせず、夜は野営をする予定だ。

5 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/20(金) 22:21:10.22 ID:rMgF7xuF0

( ^ω^)「しっかし、何でこうなっちゃったかおね」

(∪^ω^)「わんわんおー?」

僕は隣に座るわんわんおの頭を撫でる。
わんわんおは御者台に大人しく座っているが、周りの景色が珍しいのか、首を右に左に忙しなく動かしていた。

僕のぼやきは、このわんわんおがクエストに同行する事になった事に向けられている。
本来はお留守番させる予定で、その間はシャキンさんに預かってもらう約束になっていた。

だが何故か、僕以外の意見が全員一致でわんわんおをクエストに同行させる流れになってしまったのだ。

わんわんおは皆には僕の使い魔であると紹介はしている。
しかしながら実際は違うし、使い魔としての役目も特に与えておらず、常に側にいてもらう必要はない。
だから、僕としてはクエストに同行させるつもりはなかった。

( ^ω^)「まあ、皆の目論見はわかってるんだけどさ」

(∪^ω^)「わんおー」

皆がわんわんおを同行させたがった理由は察しが付いている。
今回、馬車でクエストに向かう事になったので、誰かがニゲット山の麓で馬車の番をする必要があるのだ。


6 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/20(金) 22:23:22.72 ID:rMgF7xuF0

この役目は、山に踏み入るよりは遥かに危険も少ないので、ジョルジュさん達の中の1人か、
ツンとクーの2人セットのどちらかにやってもらうつもりでいた。

僕は後者を考えていたのだが、2人はそれが嫌だった様だ。
クエスト本番に参加出来ないのを良しとしなかったのだろう。
だから、わんわんおを連れて行く事で、強制的に馬車の番をする人が決まるように持って行きたかったのだ。

その、馬車の番をする人とは……

( ゚д゚)「旅は順調のようだな」

( ^ω^)「お、ミルナさん。はいですお、平和なもんですお」

馬車の中から御者台に上がって来たミルナさんはわんわんおを抱き上げ、僕の隣に座る。

(* ゚д゚)「馬車の旅は初めてか? 風が気持ちいだろ」
つ∪^ω^)「わんわんお」

犬好きらしいミルナさんは、わんわんおが大のお気に入りだ。
わんわんおを連れて行く事になっても、流石にニゲット山の中までは連れて行くつもりはないので、
必然的にミルナさんがわんわんおと共に馬車番になるのは目に見えている。

それが皆がわんわんおを連れて行きたがった理由だ。


7 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/20(金) 22:25:29.67 ID:rMgF7xuF0

( ^ω^)「わんわんおは遠出はこれが2回目ですけど、馬車は初めてですお」

( ゚д゚)「そうなのか。一緒にピクニックにでも行ったのか?」

( ^ω^)「ちょっとドクオさんのとこまで」

( ゚д゚)「賢者殿の所か。確かモオト湖周辺だったな。あそこはわんわんおを遊ばせるのに良さそうだな」

( ^ω^)「もう少し暑くなったら、泳がせに行ってみたいですお」

(* ゚д゚)「その時は是非俺も誘ってくれよ」
つ∪^ω^)わんわんお!」

( ^ω^)「覚えておきますお」

僕の本来の目的、わんわんおを守るという目的を考えれば、
下手に連れ出して危険な目にあわせる可能性を増やすのは得策ではない。

しかし同時に、わんわんおは僕の家族なので一緒に楽しみたいという思いもある。

今回のクエストへの同行も当初は不本意ではあったが、一緒にいられる事自体は嬉しくもある。
それにミルナさんに任せておけばきっちりと守ってくれそうだから、結果的には良かったかもしれない。

数日間わんわんおを預かれると喜んでいたシャキンさん達には、ぬか喜びさせて申し訳なかったけれど。
10 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/20(金) 22:27:44.78 ID:rMgF7xuF0

( ^ω^)「ニゲット山へはこの街道の次の分岐点を右に曲がりますお」

( ゚д゚)「直進するとメシューマ方面だったな。北の方へは俺も行った事はないからよくは知らん」

ニゲット山はヴィップ町から見て北西方向にあるが、一旦街道を南西に向かい、途中から北西に向かう必要がある。
徒歩なら街道を無視して最初っから北西に向けて森の中を進んでも良かったが、馬車はそうは行かない。

この先を曲がったら、以降の街道はほとんど森の中を通る。
そうなると街道沿いとはいえ、モンスターとの遭遇率は多少上がるから気を付けねばならない。
  _
( ゚∀゚)「おーい、ミルナ、一勝負しねえか?」

背後からジョルジュさんがミルナさんを呼んでいるようだ。
その手にカードが握られている所を見ると、一勝負というのは賭けの事だろう。

どうやらだいぶ暇を持て余しているらしい。
現在、後方の警戒はハインさんがしているはずだし、ジョルジュさんは特にやる事がない。

( ゚д゚)「お前は……無粋な奴だな。人がこうやってこの子と一緒に自然の香りを楽しんでいるというのにだな……」
つ∪^ω^)

そう言いながらもミルナさんの目はしっかりとカードに向けられている。
冒険者の暇潰しはカードゲームと相場が決まっているくらいメジャーで、皆やっている事を僕は知っていた。

14 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/20(金) 22:29:14.19 ID:rMgF7xuF0

( ^ω^)「わんわんおも連れてっていいですお? しばらくは暇でしょうし、何かあったら呼びますお」

ミルナさんは僕の申し出を額面通り受けていいのか躊躇いながらも、最終的にわんわんおを連れて馬車の中に戻った。
それと入れ替わるように、今度はツンが馬車の中から出て来て僕の隣に座る。

( ^ω^)「ツンはカードはやらないのかお?」

ξ゚听)ξ「私はああいうの苦手なのよ。賭け事は好きじゃないしね」

( ^ω^)「賭けって言っても大した事ないお? 精々1食分の酒代が動くかどうか程度だお」

そうは言ったが、僕も賭け事はあまり好きではない。
商売人は無闇に博打を打つべきではないというのが僕の信条である。

ξ゚听)ξ「クーはやってみるらしいわよ」

( ^ω^)「ありゃま。クーにカードゲームなんか出来るのかお?」

( ^ω^)「下手に借金重ねて依頼料払えなくなるのは勘弁願いたいお」

初心者相手にジョルジュさんもミルナさんもそこまで容赦なく毟り取ろうとはしないと思うが、少し心配だ。
今回の依頼料はクエストの規模も難易度もそこそこ上になったので、必要経費だけでも結構掛かっている。

今の所は僕が立て替えているが、最終的には当然ちゃんと払ってもらわねばならない。


15 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/20(金) 22:31:14.84 ID:rMgF7xuF0

( ^ω^)「まあ、何とかなるだろうとは思ってるけどさ」

ξ゚听)ξ「そうかしら? 無一文で飛び出して来た可能性もあるのよ?」

(;^ω^)「やな事言うなお。つーかクーと仲良くなったのに、その辺容赦ないんだおね」

それはそれで別の話だとシビアな物言いをするツン。
商売人としては見習うべき姿勢ではある。

ただ、クーに関しては身元がはっきりしてるので安心と言いたいとこだが、
今回の件の必要経費を王宮に請求するのは恐らく厳しいだろう。

色々とややこしい事になるのは目に見えている。

ξ゚听)ξ「王宮ねえ……」

( ^ω^)「行ってみたいかお?」

ξ゚听)ξ「いや、別に。あんたは行ってみたいの?」

( ^ω^)「王宮はそうでもないけど、王都ソクホウには1度は行っておきたいお」

18 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/20(金) 22:33:14.91 ID:rMgF7xuF0

主に純粋な興味からではあるが、やはり1度は王都の様子は見てみたいと思う。
商売人の観点からも、魔法使いの観点からもどちらから見ても得られるものは多々あるはずだ。

ξ゚听)ξ「ふーん。私はヴィップの町ぐらい田舎の方が合ってると思うから、そこまで興味はないわ」

( ^ω^)「色々と珍しい物や美味しい物もいっぱいあるお? 行ってみると楽しいと思うお」

僕らぐらいの年齢の田舎の子供は、都会に憧れたりするものだと何かの書物で読んだ覚えがあったが、
ツンは例外らしい。
ヴィップの町での暮らしを随分気に入ってる様だ。

僕もヴィップでの暮らしが気に入らないわけではないのだが、
見聞を広めたいという気持ちはまた違う話だと思う。

ξ゚听)ξ「あんたはいつか、ヴィップの町を出て行くつもりなの?」

( ^ω^)「それは今の所考えてないお。お店もあるし」

随分と唐突な質問だが、聞かずともツンも答えはわかっていたのではなかろうか。
僕はヴィップの町の魔法道具屋サンライズの店主であり、今の所店を畳む気は全くないのだから。


19 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/20(金) 22:35:05.61 ID:rMgF7xuF0

ξ゚听)ξ「おじいさんの残したお店だから?」

( ^ω^)「それもあるけど、ツンと同じく、僕もヴィップの町での暮らしが好きだからだお」

ξ゚ー゚)ξ「そっか」

僕の解答に、ツンは満足げに微笑む。
同じ質問をツンにもしてみようかと思ったが、先の答えを考えれば聞くまでもないだろう。

ただ、ほんの少しだけ気掛りな部分もある。
人は変わって行くものだから仕方がないし、幼い頃のたわいもない夢物語を今更蒸し返してもしょうがないので、
その気掛りは仕舞っておく事にした。

( ^ω^)「まあ、いつか王都に旅行に行くにしても、その為にはまず稼がなきゃいかんおね」

( ^ω^)「というわけで、昨日ちょっと新商品のアイデアを閃いたんだけど……」

ξ゚听)ξ「却下」

(;^ω^)「ちょ、せめて聞いてからにしてお」
23 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/20(金) 22:37:18.61 ID:rMgF7xuF0

ξ゚听)ξ「どうせまた薬草何とかでしょ?」

(;^ω^)「確かに薬草だけど、今回は一味違うお」

( ^ω^)b「名付けて薬草七味! 一味どころか七味も違うお!」

ξ゚听)ξ「却下」

(;^ω^)「ちょ、まだ名前だけだお? どんなのか興味湧かないかお?」

ξ゚听)ξ「いや、聞くまでもないでしょ……って、あら?」

( ^ω^)「お?」

川 ゚ -゚)「む? 邪魔したか?」

いつの間にかクーが馬車の中から顔を出して、こちらの様子を窺っていた。
2頭立ての馬車なので、御者台は3人座れるぐらいの余裕はある。

ξ゚听)ξ「カードはどうしたの?」

( ^ω^)「やっぱり負けたかお?」


24 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/20(金) 22:39:21.12 ID:rMgF7xuF0

川 ゚ -゚)σ「ん……」

僕らの質問に、クーは無言で馬車の中を指差す。
  _
(lii ∀ )(lii д )(^ω^∪)

そこには沈み込んだ2つの顔と、それを慰めるような無邪気な顔があった。

(;^ω^)「ちょ、何したんだお?」

川 ゚ -゚)「なに、ほんのちょっと毟り取ってやっただけさ」

ほんのちょっとな、というクーだが、沈む2人の前に、
引っくり返された空っぽの財布が見える気がするのは気の所為だろうか。

ξ゚听)ξ「クーはカード得意だったの?」

( ^ω^)「というか、初心者じゃなかったんだおね」

川 ゚ -゚)「まあまあな。別にカードは冒険者だけの遊びじゃないさ」
26 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/20(金) 22:41:05.40 ID:rMgF7xuF0

王宮の中でもカードをやる事があったというクー。
ああいうとこはお堅いイメージしかなかったので意外だったが、案外そうでもないらしい。

川 ゚ -゚)「冒険者上がりの騎士もいたからな。そこから方々に伝播したんだろ」

( ^ω^)「なるほど」

冒険者が名声を得て騎士になるのはそこまで特別な事でもない。
騎士が秩序や戒律を重んじるとはいえ、強さは重要な要素である。
流石に人間性は考慮されるが、未だ争いごとが散発的にでも発生する現状、国は強い人材を欲しがっている。

ただ、王宮にそういう遊びが一部広まったのは理解出来るとしても、
クーがそういう遊びを許されていたのかという話になると少し疑問が湧く。

クーの王家での立ち位置を考えると、花嫁修業とかそういうのが中心になると思うのだが。
カードに限らず剣術や武術を学んでいたり、不自然な点は他にもある。

王宮を抜け出して来たクーの行動力を鑑みれば、王家の方針とは関係なく勝手に学んだ可能性の方が高そうだが。

川 ゚ -゚)「どうした? 私の顔に何か付いているか?」

30 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/20(金) 22:44:20.35 ID:rMgF7xuF0

(;^ω^)「あ、いや、別に……」

クーは僕の顔を覗き込むような形で、僕に顔を寄せる。
素行はさておき、見た目は相当な美人なので突然そういう事をされれば焦ってしまう。

僕はクーから目を逸らす様に視線を正面に向けた。
街道沿いに立つ背の高い木々が色濃く影を落としている。

ξ゚听)ξ「クーは解呪が終わったらどうするつもりなの?」

川 ゚ -゚)「そうだな……また別の町に旅する事になると思う」

解呪の為にヴィップの町に来たが、クーの本来の目的は世界を見て回る事だ。
今の所これと行った行き先は決めてないが、しばらくヴィップの町を見たら違う町に向かうという。

ξ゚听)ξ「クーはメシューマ経由で来たのよね。だったら北か南のどっちかね」

ヴィップの町はニューソク大陸中部の東の端にある
そこから西、中央に向かうとメシューマの町があり、さらに西に進み大陸の端まで行くと王都ソクホウがある。
クーが来たルートはこれのはずだ。
32 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/20(金) 22:45:56.44 ID:rMgF7xuF0

川 ゚ -゚)「目指すとしたら北のイチサン、南のナカノヒト、それにキマスタの町か」

以上に挙げた6つがニューソク大陸の主要な町である。
あとは小さな集落や村がいくつも存在するが、旅の目的地とするならこれらの町の方がわかりやすいだろう。

ξ゚听)ξ「それとも、いっそ海を渡ってみる?」

川 ゚ -゚)「ラウンジ大陸か。興味はあるが……」

( ^ω^)「旅の初心者が全くの異文化圏に行くのはお勧めしないお」

ラウンジ大陸はニューソク大陸の西にある大陸である。
ニューソク大陸がニューソク王国の単一国家に対し、
ラウンジ大陸は大陸の約半分を占めるラウンジ教国とその他の諸王国の連合という形で成り立っている。

そう聞くとニューソク王国の国力が相当大きいように聞こえるが、実際はニューソク王国も連合国家のようなもので、
王国は1つだが、その他の町は大半が自由都市扱いで任意で協力しているだけだ。
いわば一種の同盟国で、法令こそニューソク王国と同じものを採用しているが自治都市に近い。

ヴィップの町も一応そうなのだが、場所が場所だけに重要度も皆無なので、ほとんど大陸の情勢に影響を与える事はない為、
その事を忘れている人が大半かもしれない。

35 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/20(金) 22:47:38.28 ID:rMgF7xuF0

川 ゚ -゚)「そんなに違うのか?」

( ^ω^)「向こうは宗教的要素が生活に大きく関わって来るお」

遥か昔にはニューソク大陸とラウンジ大陸は1つの大陸であったとされ、ニーチャ大陸と呼ばれていた。
その呼び方は現在でも、竜の住む大陸と区別して人の住む大陸と呼ぶ場合に使われる事もある。
ちなみに、大陸の大きさは若干ラウンジが大きい。

現在は元々同じ大陸だったとは思えないくらい、その生活や文化は違っているらしい。
伝聞なのは毎度の話、じいちゃんに聞いたり書物での知識だったりするからだ。

川 ゚ -゚)「堅苦しいのは勘弁だ。そうだな、やはり北のイチサンに向かうのが順当か」

ξ゚听)ξ「どうして南じゃなくて北が順当なの?」

川 ゚ -゚)「北は30年前の大戦の傷跡が色濃く残っているからな。立場上、1度見ておくべきだろ?」

現在竜の住むシベリア大陸は、ニューソクから見て北にある。
元々竜はシベリア大陸以外、ニューソク大陸にもラウンジ大陸にも住んでいたが、その生息域は主に大陸の北部だった。
故に戦場は両大陸の北部が大半で、その際に壊された町や街道など未だ放置されたままの場所もあるという。

ニューソク大陸最北にあるイチサンの町も当時の傷跡が残ってはいるが、今はかなり復旧していると聞く。
イチサンの復旧が完全に終われば、その他の場所も徐々に修復されていくのかもしれない。

37 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/20(金) 22:49:20.52 ID:rMgF7xuF0

ξ゚听)ξ「意外と真面目な理由なのね」

川 ゚ -゚)「意外とは失礼じゃないか?」

イチサンの町へはこの街道をひたすら進めば辿り着くのだが、徒歩だと二週間はかかるだろう。
距離的には大差ないとしても、メシューマ側から森を避けて向かう方が危険は少ないと思う。

ξ゚ー゚)ξ「ま、理由はともかく、精々がんばんなさい」

从 ゚∀从「おーい、そろそろ交代なんだが、こいつらどうしたんだ?」

そんな話をしていると馬車の中からハインさんが顔を出し、背後を指差す。
そこには未だ放心しているジョルジュさんとミルナさんの姿が見えたが、説明は後回しにしてクーが馬車の背後に向かう。

从 ゚∀从「悪いな」

川 ゚ -゚)「いや、半ば私の所為でもあるので気にしないでくれ」

从 ゚∀从「あ? どういう事?」

いなくなったクーの代わりに、ハインさんはツンに説明を求める。
ツンがカードゲームの件を説明すると、ハインさんは大笑いしていた。

39 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/20(金) 22:51:13.90 ID:rMgF7xuF0

从 ゚∀从「情けねえな、あいつら」

ξ゚听)ξ「結構やるみたいよ、クー」

今度自分が相手をしてやろうと言うハインさんに、油断するなとツンが忠告する。

从 ゚∀从「ふーん。……で、あいつは一体何なんだ?」

( ^ω^)「それは……」

漠然とした質問だがハインさんの質問の意図する所はわかっている。
口元に笑みこそ浮かべているが、その目は笑っていない。

ξ゚听)ξ「……そういう聞き方するなら、クエスト受けなければ良かったんじゃないの?」

从 ゚∀从「……違いないな。悪い、忘れてくれ」

僕が答えるよりも早く、ツンが話を終らせてしまう。
慌てて謝罪するが、ハインさんはツンの方が正論だという。

从 ゚∀从「ただの興味本位だから気にすんな。訳有りなのは見てればわかるしな」

41 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/20(金) 22:53:06.78 ID:rMgF7xuF0

クーの所作には所々初心者冒険者という理由では説明出来ない部分、言ってみれば気品の様な所があるので、
見る人が見ればその場違いさに違和感を覚えるのだろう。
そこからクーの出自は想像出来る。

ただ、ハインさんはクーの事を道楽貴族の遊びか何かだと思っているのかもしれないが、
流石に王族である事までは気付いていないとは思う。

从 ゚∀从「ま、お前らが依頼を受けるぐらいだから、あいつが悪い奴じゃないのはわかってるから心配するな」

僕は謝罪の代わりにハインさんに礼を述べる。
ハインさんは片手を挙げてそれに応じ、場車内に戻って行った。

( ^ω^)「やっぱハインさん達には話しておくべきだったかおね?」

依頼を引き受けた時にクーには話したが、この依頼を受けること自体、
ニューソク国から見れば罪になる可能性があるのだ。

知らせなければハインさん達は騙されていただけで済むだろうから、下手に話さない方がいいのではと考える反面、
背中を預け、共に戦うなら知らせておくべきかもしれないとも思っている。

ξ゚听)ξ「それはクーの判断に任せましょ」
45 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/20(金) 22:55:43.64 ID:rMgF7xuF0

話す必要があると思ったら自分で話すだろうとツンは言う。
その辺は自分で判断出来るだろうし、自分で判断した方が良いと。

ξ゚听)ξ「この話は、クーが旅を続けるならしばらくは付いて回る話だろうしね」

( ^ω^)「だおね」

旅を続けていればそういう部分も消えて冒険者らしくなっていくだろうが、もうしばらくはぎこちなさは残るだろう。

このクエストが終わった先、ヴィップの町を出てからはクー自身がどうにかすべき話だから、
ツンが言うクーの判断に任せるという意見が正しいと思う。

( ^ω^)「また話が戻っちゃうけど、クー見ててツンは旅に行きたくはならないのかお?」

ξ゚听)ξ「あんたは私をヴィップの町から追い出したいの?」

(;^ω^)「いや、そんな事はないけどさ。ただ……」

ξ゚听)ξ「ただ、何よ?」


46 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/20(金) 22:57:24.00 ID:rMgF7xuF0

戦闘においては自信家で無茶な行動も見られるものの、ツンは基本的に冷静に判断が下せる頭のいい子だ。
先のクーの話にしろ、先の事まで考えて答えを決めているし、周りを見る能力には長けていると思う。
きっといい冒険者、それもパーティーのリーダーや参謀的な存在になれるはずだ。

無茶をしなくなればの話だが。

ξ゚听)ξ「なれる事となりたい事が同じとは限らないわよ」

( ^ω^)「そうだけど、ツンは昔、冒険者になりたがってたお?」

それは幼い頃の夢。
ツンは冒険者になると言っていたはずだ。

先ほどは胸の中に仕舞っておいた気掛かりだが、クーが語る旅の話を笑みを浮かべて聞くツンを見ると、
どうしても聞きたくなってしまった。

ξ;゚听)ξ「あんたねえ……すっかり忘れてるじゃないの」

( ^ω^)「お?」

ツンが言うには、自分は冒険者になるのが夢だと言った覚えはないという。
確かに冒険者になるとは言ったが、それが夢ではなくただの手段だったはずだと。


47 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/20(金) 22:59:29.82 ID:rMgF7xuF0

(;^ω^)「あれ? そうだったけかお?」

ξ゚听)ξ「そうだったのよ。よく思いだしてみなさいよ」

そう言われて思い出そうとしてみるも、やはり冒険者の件しか思い出さない。
ツンが誤魔化しているのかと思い、
それならばと外堀を埋めるつもりでまずは同じ頃に語っていたはずの自分の夢を思い出してみる。

( ^ω^)「……あれ? 僕は何になりたいって言ってたっけかお?」

ξ;゚听)ξ「そんなの覚えてないわよ」

(;^ω^)「あっれー? ツンの夢が……えーっと……」

思い出そうとしても、断片的な記憶しか浮かび上がって来ない。
それどころか思い出そうとすればするほど、余計にごちゃごちゃになり、全く繋がる事はない。

ξ゚听)ξ「あんたは昔から物覚えが悪かったわよね」

(;^ω^)「今はそうでもないお? ちゃんと術式とか暗記してるし」

50 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/20(金) 23:01:20.62 ID:rMgF7xuF0

そう反論するが、一向に思い出せない状態では説得力がない。
潔く負けを認め、ツンに夢の事を聞くがツンの夢は教えてもらえず、僕の夢は覚えてないという。

ξ゚听)ξ「覚えてないけど、立派な魔法使いか道具屋かその辺じゃないの?」

( ^ω^)「それが妥当なとこだおね」

何となくすっきりしない僕は尚も考え続けるも、全く思い出せる気がしない。
脳裏に浮かぶのは幼いツンの顔、幼いショボンの顔、皺だらけのじいちゃんの顔、サンライズ、ヴィップの町、
暗い部屋、明るい部屋、森、川、魔法陣……

( ^ω^)「あ、タ──」

ξ゚听)ξ「た?」

(;^ω^)「い、いや、何でもないお!」

それは唐突に記憶の中から浮かび上がって来た。
幼い僕とツン、そしてショボンが埋めたタイムカプセル。
当時の僕らが思い付いた、たわいのない子供の遊び。

あれを掘り出せば、あの頃見ていた夢が書かれているはずだ。


51 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/20(金) 23:03:42.99 ID:rMgF7xuF0

しかしれをツンに伝えると先に掘り出されてしまうか、掘り出しを禁止されてしまうかもしれない。
ツンがタイムカプセルの事を覚えているかどうかはともかく、この事はしばらく僕の胸の内に仕舞っておき、
頃合を見てこっそり掘り返して見てみようと心に誓う。

ξ゚听)ξ「……」

(;^ω^)「な、何だお?」

ξ゚听)ξ「来たわね」

(;^ω^)「お?」

その言葉が指し示す意味、ツンの向けられた視線の先にいるものに僕は気付いた。
街道の側、森の中を馬車と一定の距離を置いて並走する一群の存在。

( ^ω^)「ウォーグかお!?」

ウォーグ、ウォーグ・ウルフとも呼ばれるそれは外見は狼だが狼よりは一回り大きく、常に群れをなして行動する。
モンスターとしてはさほど強い部類ではないが、その数の多さで侮れない相手だ。

( ^ω^)「馬車の速度を上げて、振り切るかお?」
55 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/20(金) 23:05:41.78 ID:rMgF7xuF0

ξ゚听)ξ「それも手だけど、向こうも足は速いわ」

下手に速度を上げた所に馬を襲われて横転するのは避けるべきだとツンは主張する。

( ^ω^)「止めて迎撃する方が良さそうかおね」

从 ゚∀从「おい、クーから報告だ……って、その様子じゃ気付いてるようだな」

ξ゚听)ξ「馬車を止めて追い払うわ」

从 ゚∀从「オーケィ、それが最善手だ。先に行くぜ!」

そう言うが早いか、ハインさんはまだ走行中の馬車から飛び出し、
2本の蛮刀を抜き放って森の中のヴォーグに一直線に走って行く。

ξ゚听)ξ「ったく、せっかちねえ」

それに続くようにツンも飛び降り、ハインさんの後を追う。

( ^ω^)「お前ら迎撃って言葉知ってるかお?」

58 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/20(金) 23:07:16.75 ID:rMgF7xuF0

馬車の速度を落とし、完全に停車させて御者台の上に立つ。
この場での僕の役目は馬車を守る事だ。
ハインさんもツンも馬車から離れてしまったので、必然的にそうなる。

( ^ω^)「早速お出ましかお」

ツン達が向かった反対側の森に数匹のヴォーグの姿が見える。
知性はほとんど感じられないモンスターではあるが、狩りの手法ぐらいは身に染み付いてるのだろう。
挟撃を仕掛けるぐらいの事はやって来る。

( ^ω^)「先制攻撃行っとくお。ウインド・カッター!」

既に詠唱していた風の魔法を解き放ち、森の中の1匹のヴォーグを狙う。
しかし、ヴォーグは木に隠れ、魔法をやり過ごした。

(;^ω^)「外したお。つーかやり辛いお」

こう障害物が多い場所では、速度を重視した遠距離攻撃魔法は使い勝手が悪い。
もっと指向性の高い魔法を使うべきであった。

そうしてる間にも、別のヴォーグが馬車の方に走って来る。
やむなく僕は馬車から飛び降り、馬を守るように立ち、風の障壁を広く張る。
61 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/20(金) 23:09:09.87 ID:rMgF7xuF0
 ∧_
ミ ゚ M)「グォォォ」

(;^ω^)「チッ」

杖を両手に持ち、飛び掛かって来るヴォーグの攻撃を防ごうとする。
このまま接近戦に持ち込まれると、魔法使いとしては不利な戦いになるのは避けられない。

   ∧_
=★)゚ M)「ギャフンッ!?」

(;^ω^)「お?」

僕に飛び掛かって来たヴォーグが、側方からの一撃で大きく吹き飛ばされていく。
僕が事態を把握するより早く、ガシャンガシャンと鎧を鳴らして走って来るミルナさんの姿が目に入った。

( ゚д゚)「すまん、遅れた。無事か?」

( ^ω^)「大丈夫ですお。馬も無事です」

( ゚д゚)「うむ、ならば良し」


62 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/20(金) 23:11:08.12 ID:rMgF7xuF0

ミルナさんは僕の前に立ち、周りに睨みをきかせる。
数匹のヴォーグが威嚇しながら身を低くして構えるが、どれも飛び掛っては来ない。

( ゚д゚)「どうした、獣共よ? かかって来ぬのか?」

構えたモーニングスターがじゃらりと鎖の擦れる音を鳴らす。
次の瞬間、大きく前方に振り伸ばされた腕の先に、鈍く光る鉄製の星がうなりをあげて飛んで行く。

 ∧_
ミ{★}M)「ギャフンッ!?」

鉄星は見事にヴォーグの頭蓋を打ち砕く。
崩れ落ちる仲間の姿に、残りのヴォーグはじりじりと後退る。

( ゚д゚)「退くのならば追わぬ。しかし退かぬのならば……」

( ゚д゚ )「全て打ち砕く!」

再び鉄星が唸りをあげる。
鈍い音を立て、鉄星は森の若い木にぶち当たり、なぎ倒した。

その倒れる木の音が合図になったかのように、残ったヴォーグは森の奥に逃げて行った。

64 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/20(金) 23:13:05.53 ID:rMgF7xuF0

( ゚д゚)「……行ったか」

( ^ω^)「追っ払えたみたいですお」

集団行動を常とするヴォーグだ。
これで反対側のヴォーグも全て退却するだろう。

そう思っていると案の定、反対側の森からツンとハインさん、後方からクーとジョルジュさんが戻って来た。

( ^ω^)「お疲れさんだお。みんなケガはないかお?」

ξ゚听)ξ「ないわよ、こんな雑魚相手に」

从 ゚∀从「肩慣らしにもなりゃしねえ」

川 ゚ -゚)「無事だ。仕留め損なったが、馬車も傷付けさせてはいない」
  _
( ゚∀゚)「ああいうすばっしこいのはめんどくせえ。ま、無傷だけどな」

( ゚д゚)「うむ、無事で何よりだ」
67 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/20(金) 23:14:24.41 ID:rMgF7xuF0

幸い、誰もケガしておらず、馬車も無事だったようなので僕らはすぐに馬車を出す。
そうすぐすぐまた襲われる事はないと思うが、
下手にあの場に止まるとモンスターの血の臭いで新たなモンスターを集めかねない。

川 ゚ -゚)「街道でも、モンスターに襲われる事はあるのだな」

( ^ω^)「たまにはあるお」
つ∪^ω^)

御者をハインさん、後方の警戒をジョルジュさんに任せ、僕達は馬車内で休んでいた。
正直、ほとんど役に立ってなかったし疲れてもいなかったが、
時間的に交代するタイミングではあったので代わってもらった。

(∪^ω^)「わんわんお!」

戦闘中は1人馬車内にいたわんわんおだが、僕が馬車内に入った時はぐっすり眠っていた。
あの喧騒の中眠っているとは鈍いんだが肝が据わっているんだがわからないが、
変に興奮したり恐慌に陥られるよりはいい。

ξ゚听)ξ「でも、珍しいわよね。街道でヴォーグなんかが襲ってくるのって」


68 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/20(金) 23:16:17.54 ID:rMgF7xuF0

( ^ω^)「それは確かにそうかもしれんお」
つ∪^ω^)つ"                 "⊂(゚д゚ *)

街道がモンスターに襲われ難いのには理由がある。
街道自体がある種の魔除けの結界みたいなものなのだ。

街道には整備する際に、
モンスターが嫌がる空気的なものを纏うような術式を構成するように縁石が埋めてある。

で、それに国や都市に雇われた魔法使いが魔法を施し、街道を作るのだが、
当然結界術式の精度や魔法使いの実力で結界の能力も変わって来るのである。

それがある種の国や都市の実力を示すバロメーターの様なものになっていたりもする。

( ^ω^)「でも、経年劣化もするし、術式に使われてる石を盗んで行く不届き者がいたりする事もあるお」

川 ゚ -゚)「なるほど。安全度合いは街道によっても違うし、全く安全というわけでもないのだな」

( ^ω^)「そういう事だお。ただ、見た所この辺りはそんなに結界が弱ってるようには見えないんだおね」

それに加えて、先ほどツンが言った件もある。
この手の結界はヴォーグのような獣に近い、知性の低いモンスターに対しては効果がかなり高いのだ。
そんなモンスターが街道近くまで来てる事が少し気になる。

72 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/20(金) 23:18:05.70 ID:rMgF7xuF0

それに関しては、天空竜がこの地に来た余波の可能性もあるので口をつぐんでおく事にした。
単に僕が気付いてないだけで、街道の結界が損壊していた可能性もあるし。
ただ、バジリスクの件もあるので、この先も異変が続くようなら1度ドクオさんに相談した方がいいかもしれない。

川 ゚ -゚)「もう1つ質問なんだが」

( ^ω^)「何だお?」

川 ゚ -゚)「街道にモンスターが近付かないなら、街道の両側に同じ群れのヴォーグがいたのは変じゃないか?」

( ^ω^)「ホントのとこはわかんないけど、可能性はいくつかあるお」

街道がずっと続くとはいえ、ずっと平地の道ばかりではない。
橋もあればトンネルもあるのだ。
くぐったり越えたりは出来るし、木々を伝って越えて行く事も考えられる。

また、先の群れが別の群れだった可能性もある。
片方に便乗しただけの事だったかもしれない。

ただ、今回の場合はそもそも街道に近付いて来てるのだし、ごく普通に街道を越えた可能性の方が高いとは思う。
結界があるとはいえ、越えた所でモンスターがダメージを負うわけでもないのだから。


73 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/20(金) 23:20:10.03 ID:rMgF7xuF0

川 ゚ -゚)「ふむ、なるほどな。勉強になった」

(* ゚д゚)「まあ、あの程度の雑魚が何匹来ようがちゃんと護衛の任務は果たすから心配するな」
つ∪^ω^)

そう力強く宣言するミルナさんだが、わんわんおを抱いてにやつきながらではあまり説得力がない。
確かに、あの戦いぶりなら安心は出来るのだが。

( ^ω^)「ていうかツン、ツンも護衛なんだから馬車から離れて行くなお」

ξ゚听)ξ「向こう側は近付けさせなかったでしょ? 役割はちゃんと果たしたわよ」

( ^ω^)「そういう問題じゃねえお」

無茶はするなと言いたいのだが、ツンもハインさんも全くの無傷で戻って来たのだから強くは言えない。
2人とも軽装でスピードを生かした戦い方をするので、動きは早いが装甲は薄いモンスターとは相性が良い。
相手が早過ぎるとまた違ってくるのだが、あの程度なら問題はないのだろう。

ξ゚听)ξ「別に強装甲の相手だろうが、通じる技ぐらい持ってるけどね」

川 ゚ -゚)「そうなのか?」

75 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/20(金) 23:22:25.23 ID:rMgF7xuF0

ξ゚听)ξ「勁を使った拳なら、装甲関係なくダメージを通せるわよ」

川 ゚ -゚)「勁?」

ξ゚听)ξ∩「打撃でダメージを与えるんじゃなくて、拳から気の力を打ち込み、装甲内に直接ダメージを与えるのよ」

川 ゚ -゚)「ああ、気の話か。前に本で読んだ事があるが、ツンもそれ使えるのか?」

気とは、武術において人に宿る生命力の力とされる概念だ。
魔法使いの視点から見るとかなり漠然とした概念で、それに付いての研究はお世辞にも進んでいるとは言い難い。
ただ、気という力が実際に発動しているのは事実ではあるので、荒唐無稽な物というわけでもないが。

要は気合で何とかしてるんだろうと僕は漠然と捉えている。

ξ゚听)ξ「剛の拳が単純な腕力による攻撃、柔の拳が気による攻撃、武術家の基本よ」

川 ゚ -゚)「なるほど、漠然とだが理解した」

装甲関係なくダメージを通せるなら、武術家は相当強い職業な気がするが、そんな単純な話ではないとツンは言う。
気を使う攻撃は体力の消耗が激しいし、拳を当てて行う物が大半なので、相手に密接する必要もあるのでリスクも大きいと。

77 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/20(金) 23:24:21.44 ID:rMgF7xuF0

ξ゚听)ξ「元々、武器を使う戦士よりはリーチでは分が悪いし、軽装だから防御面でも劣るから、結構大変なのよ」

まあ確かに、冒険者で戦士の人は多いが武術家の人はあまり見かけない。
武術家で冒険者としてやって行くためにはそれなりにハードルが高いのだろう。

( ゚д゚)「しかし、ハインではないが、俺もツンなら冒険者として十分やって行けると思うぞ?」

ξ゚ー゚)ξ「ありがとうございます。ミルナさんにそう評してもらえるのはお世辞でも嬉しいです」

お世辞ではないと言うミルナさんだが、ツンは謙虚にそれを固辞する。
質実剛健を地で行くミルナさんの事は武術家として通じるものがあるのか、ツンはミルナさんには一目置いている様だ。
褒められて素直に嬉しいのだろう。

ξ゚听)ξ「そろそろお昼よね? どうするの?」

( ^ω^)「この先に川があるから、そこでお昼にするお」

気付けば順調に話は逸らされ、僕はツンにお小言を言う機会を失ってしまった。
あまり無茶はしないで欲しいのだが、自覚してくれる事を願うしかないのかもしれない。

ξ゚听)ξ「馬車内で済ませてもいいんじゃないの?」

( ^ω^)「水をあんまり蓄えてこなかったから、早めに補給しておくお」

80 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/20(金) 23:26:06.03 ID:rMgF7xuF0

色々と急だった上、馬車がそう大きいわけでもないので水や食料の準備が十分だったとは言い難い。
ただ、今回のクエストは目的地に付くまでは比較的それらが入手しやすい道なので、そのまま出発する事にしたのだ。

川 ゚ -゚)「この辺りは水が綺麗なんだな」

( ^ω^)「飲料水としては十分だし、魚も多いお。暑い時は泳いだりも出来るし、いい環境だお」

ヴィップは豊かな自然に囲まれた町なので水は勿論の事、魚や動物やキノコや薬草など食料となるものも豊富だ。
モンスターもいるが、それが普通の動物を全て駆逐するような事はない。

( ゚д゚)「では、何か狩ってくるか?」

( ^ω^)「それは夜にお願いしますお。昼はあり物で済ませて小休止程度で出発しますお」

僕はそう宣言し、皆が頷くのを確認してハインさん達にも決定事項を伝える。
採掘クエストの依頼主という事で僕がリーダー的に決定をしているが、ハインさん達からは特に異論はなかった。

そう希薄な付き合いでもないので、問題があれば何か言ってくれるだろう。
戦闘時は僕が詳細指示を出すわけでもないので、気楽に構えておこうと思う。

本当は大元の依頼主であるクーがやるべき事だった気もするが、まあ、仕方ないだろう。


81 名前:ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/20(金) 23:28:05.43 ID:rMgF7xuF0

ξ゚听)ξ「ちなみに昼食は薬草なに?」

(;^ω^)「何で薬草限定なんだお……」

ξ゚听)ξ「違ったの?」

( ^ω^)「……いや、まあ、干し肉の薬草包みだけど」

ξ゚听)ξ「……」

(;^ω^)「いや、これは僕が考えた新商品じゃなくって、シャキンさんが用意してくれた……」

(∪^ω^)「わんわんお!」

その後馬車は順調に走り、モンスターに襲われる事もなく僕達は目的地であるニゲット山に辿り着いた。



     第八話 旅路の馬車は揺れる 終

 

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