838 名前:名も無きAAのようです:2013/03/23(土) 22:42:27 ID:20QgFQY.0

 〜 メシューマの町 ??? 〜


( ^ω^)「その灰の霧の様なものは何なんだお?」

【+  】ゞ゚)『それを馬鹿正直に答えてやる義理はねえな』

( ^ω^)「おk、つまりはその秘密がバレるとお前が不利になる類のものなんだおね」

【+  】ゞ゚)『……ハッ、面白いな、お前』

( ^ω^)「そうかお? よく真面目過ぎて面白くない人と言われるんだけどね」
  _,
ξ゚听)ξ「……」

(∪^ω^)「……」



     第五十一話 開戦の時


839 名前:名も無きAAのようです:2013/03/23(土) 22:43:39 ID:20QgFQY.0

(;^ω^)「何だお、その、ないわーって顔は?」

僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。
  _,
ξ゚听)ξ「いや、別に」

彼女の名はツン。
サンライズの隣の武術道場の娘で、いわゆる幼馴染というやつだ。

(∪^ω^)「わんわんお」

この子の名前はわんわんお。
僕のペットというか家族で、見た目は子犬だが実は元竜だ。

僕達は今、非常にまずい状況に置かれている。
灰衣の男、デミタスとの直接対決という場面を乗り越えたと思いきや、今度はデミタスが召喚した悪魔、
オサムと対峙する事になってしまった。

その割には緊張感のないやり取りをしていたりもするが、今の僕らには時間を稼ぐ意味はある。

【+  】ゞ゚)『まあ、何にせよだ』

840 名前:名も無きAAのようです:2013/03/23(土) 22:45:03 ID:20QgFQY.0

【+  】ゞ゚)『危うくこいつに力を奪われる所だったが、お前らのお陰でようやく身体を奪う事が出来たぜ』

【+  】ゞ゚)『礼を言わせて貰うよ』

(;^ω^)「いやいや、礼には及ばんお」

軽い口調で返しながらも、内心では頭を抱えたい思いでいっぱいだった。
孤立する羽目になってしまった事といい、オサムが前面に出て来てしまった事といい、
どうも僕らの行動は最悪の展開を導き続けている様にしか見えない。

とはいえ、デミタスだろうが悪魔だろうが、相手が何になろうとも倒さなければならなかった事には変わりないので、
後悔している暇があったら今はこの場をどう凌ぐかを考えるべきであろう。

【+  】ゞ゚)『でだ、礼代わりと言っちゃあなんだが、お前らは苦しまずに殺してやるよ』

そう言うや否や、オサムの左腕から黒色の球体が出現し、僕に向かって飛んで来る。
当たれば僕の生命ぐらい簡単に奪えそうな高い魔力を感じるが、そう早いわけでもなく、
警戒もしていたので僕はそれをやすやすとかわした。

【+  】ゞ゚)『おいおい、遠慮せずに受け取ってくれよ』

( ^ω^)「結構だお。僕はこう見えて慎ましいんだお」
842 名前:名も無きAAのようです:2013/03/23(土) 22:51:35 ID:20QgFQY.0

軽口を返しつつツンの方を盗み見る。
ツンは頷き、オサムへ間髪入れず攻撃を仕掛けた。

ξ#゚听)ξ「はあああッ!」

【+  】ゞ゚)つ『慌てなさんなって。てめえにも礼は用意しているからよ』

オサムは振り向き、左手をツンに向ける。
オサムの左手に黒い魔力の塊が充満していくが、ツンはかまわず踏み込む。

【+  】ゞ゚)つ『たっぷり味わいな』

オサムの手から黒い魔力弾がツンに向けて放たれる。
ツンはなおも速度を緩めることなく、地を蹴り低空に飛んだ。

ξ#゚听)ξ「どりゃあああッ!」

ツンは魔力弾の下を潜り、そのままオサムに蹴りを放つ。
オサムはさも愉快そうな笑みを浮かべ、左手でそれを防ごうとした。

( ^ω^)「ウインド・ブラストッ!」

ツンの蹴りとタイミングを合わせるように、僕は風の魔法をオサムの上体目掛けて放った。
この同時攻撃は、簡単には避けられないはずだ。

843 名前:名も無きAAのようです:2013/03/23(土) 22:53:28 ID:20QgFQY.0

【+  】

( ^ω^)「!?」

瞬時にオサムの身体が消え、棺桶だけが残されたと気付いた時にはその棺桶の姿も消えていた。
残されたものは灰の霧のみだ。

ξ;゚听)ξ「また上!?」

【+  】ゞ゚)『残念、後ろだ』

上空を見上げるツンの後ろに何の前触れもなく現れたオサムは、接近しつつ黒い魔力を纏った腕でツンの後頭部を薙ぐ。
しかしツンはいち早くそれを察し、しゃがみながら足払いを放った。

【+  】

(;^ω^)「また消えた!?」

ツンの足払いが届く前にオサムは再びその姿を消す。
今度は反撃はせず、僕達から少し離れた場所にオサムは姿を現した。

844 名前:名も無きAAのようです:2013/03/23(土) 22:54:51 ID:20QgFQY.0

【+  】ゞ゚)『やるねえ。ガキだと思ってちょっと舐めてたわ』

ξ゚听)ξ「あんたもやるじゃない。逃げ足だけは一級品ね」

挑発めいたツンの言葉に、オサムは怒った様子もなく、むしろ心底おかしいといった風に笑う。
どうも戦いを楽しんでいる風にも見える。

( ^ω^)(まだまだ余裕があるってことだおね……)

(;^ω^)(実際、ああ頻繁に消えられたらこっちは相当厳しいお)

確実に当たると思われた攻撃を幾度もかわされている。
裏を返せば、避けるという事は当たればきくという事にも繋がるのだが、当たらなければ意味がない。

何とかして消える秘密を暴きたい所だが、どういう理屈で消えてるのかという事は、
悪魔の力を人間の常識で考えても仕方ない事かもしれないので、そこを追求しても仕方がない。
精々、法則性やタイミングを見極めるぐらいだろう。

( ^ω^)(けど、いくら強力な悪魔だって……いや、強力な悪魔だからこそ、能力の連発は出来ないはずだお)

以前したシューとの話の中で、強力な悪魔ほど人間界には長くいられないという事を聞いた。
空気中に含まれる魔力の量が低い人間界では、魔力の放出の方が多くなるからだと。

ならばそこをを突いて、魔界に帰らせるという手が使えるかもしれない。
オサムにあの消える能力を連発させ、魔力を消耗させる。
846 名前:名も無きAAのようです:2013/03/23(土) 22:58:15 ID:20QgFQY.0

(;^ω^)(でも、1つだけ気になる事があるんだおね……)

この結界内は現在、明らかに普通よりも空気中の魔力濃度が濃い。
という事は、悪魔であるオサムの消耗は結界の外より抑えられる事になる。
ひょっとするとこの結界の目的はそこにあったのかもしれない。

だとすれば、消耗させるという作戦は時間が掛かり過ぎて難しい可能性がある。

( ^ω^)(そうなるとやっぱり、一旦退いてジョルジュさん達と合流するのが最善策なんだろうけど……)

(;^ω^)(結界を壊すのは無理くさいおね)

僕は左手に握り締めていた魔王の朱玉を盗み見る。
せめてこいつの使い方がわかれば、まだ何とかなるかもしれない。

( ^ω^)「……で、オサムといったけかお? お前の目的は何だお?」

わからないならわかっていそうなやつに聞くしかない。
僕は時間稼ぎと情報入手の2つの目的のため、オサムに話しかける。

【+  】ゞ゚)『あん? 目的だぁ? 特にねえよ』

847 名前:名も無きAAのようです:2013/03/23(土) 23:04:17 ID:20QgFQY.0

ξ゚听)ξ「じゃあ、何でこっちの世界に来たのよ?」

【+  】ゞ゚)『そんなもん、面白そうだからに決まってんだろうが』

( ^ω^)「ま、悪魔の行動原理ならそんなとこだろうおね」

享楽のままに自分勝手に生きるのが悪魔と言ったのはドクオさんだったか。
古来より、気まぐれで人間界を騒がす悪魔の話は色々と伝えられている。

また、悪魔は人間の負の感情を好むとシューが言っていた。
人間界は悪魔にとって決して居易い世界ではないが、それを差し引いても得られるものは大きいとも。

【+  】ゞ゚)『ヘヘッ、よくわかってんじゃねえか。そういやお前もデミタスと同じ魔法使いだったな?』

【+  】ゞ゚)『面倒なもんだな、魔法使いってのは。何でああ小難しく考えなきゃ生きられねえんだ?』

( ^ω^)「人にも因るお」

【+  】ゞ゚)『あいつは見ていて滑稽だったぜ?』

【+  】ゞ゚)『ちょっとばかしあいつの知らない知識を与えてやったら、俺を神か何かの如く崇めやがってよ』

848 名前:名も無きAAのようです:2013/03/23(土) 23:05:55 ID:20QgFQY.0

( ^ω^)「その割には、デミタスに力を奪われそうになってたおね」

【+  】ゞ゚)『ククク……そうだったな。まんまとしてやられそうになっちまったぜ』

【+  】ゞ゚)『あいつにそこまでの度胸はないと踏んでいたんだが、案外強かなもんだな、人間ってのは』

( ^ω^)「そりゃ、身体を乗っ取られそうになって、黙ってされるがままにしておくやつはいないだろうお」

愉快気に語るオサムに応じながら、僕は打開策を模索していた。
すぐに手が見付かるほど楽な状況ではないのはわかっているが、兎にも角にも絶対に避けなければならない事がある。
それは……

(∪^ω^)ヾ

( ^ω^)(まず、わんおを守るのが最優先事項だおね……)

未だどこか痒いのか、僕の足元で背中を掻くわんわんおの方をちらりと盗み見る。
万が一わんわんおを守れなかった場合は、この場を切り抜けられてもその後、竜との戦争が勃発してしまう可能性がある

無論、そういう事を抜きにして家族同然のわんわんおやツンを守りたいと思う。

たとえ、この身を犠牲にしたとしてもだ。

849 名前:名も無きAAのようです:2013/03/23(土) 23:08:09 ID:20QgFQY.0

( ^ω^)(わんおは小さいから、どこかに隠れていれば何とかなりそうだけど……)

問題はツンであろう。
ツンも隠れようと思えば隠れられるかもしれないが、見た目が犬なわんわんおならともかく、
オサムがそれを黙って見逃してくれるとは思えない。

それにツン自身も隠れるのを良しとしないだろう。
最後まで僕と共に戦うつもりのはずだ。

( ^ω^)(結局、守る為には僕自身も無事生き延びるしかないって事だおね)

僕は手でわんわんおに後ろの方に隠れている様に伝える。
わんわんおは少し迷っていた様だが、おとなしく僕の指示に従ってくれた。

(´ω`∪)...

【+  】ゞ゚)『さて、そろそろ死んで貰おうかね』

( ^ω^)「そんなに急がなくてもいいんじゃないかお? どうせ他にやる事もないんだお?」

【+  】ゞ゚)『クク、まあ、確かにな。特に目的は持ってねえよ』

( ^ω^)「それなら……」

850 名前:名も無きAAのようです:2013/03/23(土) 23:09:00 ID:20QgFQY.0

【+  】ゞ゚)『……が、折角人の身体を手に入れ、この世界に長期滞在出来る目処がついたとはいえ』

【+  】ゞ゚)『時間は有限だからな。やるべき事はさっさとやっちまわないとな』

そう言うとオサムはまた左手に黒い魔力の塊を宿らせる。
もう少し時間を稼ぎたかったが、これ以上は無理そうだ。

( ^ω^)「あと1つだけ聞いておきたいんだけど」

僕はオサムの答えを待たずに質問を続けた。

( ^ω^)「この周りの結界はお前を倒せば消えるのかお?」

【+  】ゞ゚)『……消えねえな。だが、時間が経てば消えるぜ。それほど先の事じゃない』

( ^ω^)「それを聞いて安心したお」

【+  】ゞ゚)『安心して逃げ回れるってか?』

( ^ω^)「違うお。安心してお前を倒せるって話だお」

【+  】ゞ゚)『ククッ、言うねえ。……精々楽しませてくれよ』

オサムの手から黒い魔力弾が放たれる。
僕はそれをかわし、呪文の詠唱を開始した。

851 名前:名も無きAAのようです:2013/03/23(土) 23:13:18 ID:20QgFQY.0

 〜 ヴィップ南西の街道  <トソン> 〜


ミ(゚、゚彡ン「前方に商隊の馬車発見です」

こんにちは、トソン=トソンです。
ブーン店長達の危機をシューさんから聞かされた僕達は、一路シューさんの馬車でメシューマに向かっている最中です。

ノリミ゚ -゚彡「了解! 大きく回避……は、面倒なのでこのまますれ違うぞ」

ミ(゚、゚;彡ン「え、あ……ちょ……」

馬車はわずかに進路を左にそらしただけで、速度を維持したまま前方から来る馬車とすれ違います。
普通ならさほど気にする事でもないのですが、現在我々が乗っている馬車は普通とは言い難く……

彡;l v lミ「な、何だ今のは?」

(;l v l) 「ば、馬車? でも馬が……!?」

すれ違った馬車の御者台にいた人の驚く声がかすかに聞き取れました。
幸い、驚きのあまり操作を誤ったり、馬が暴れて馬車が横転するような事態にはなっていない様です。
853 名前:名も無きAAのようです:2013/03/23(土) 23:17:55 ID:20QgFQY.0

ミ(゚、゚;彡ン「クー様、安全運転でお願いします」

ノリミ゚ -゚彡「わかっている。目一杯安全運転してるさ」

そう言いながらもクー様は馬に鞭を入れ、更に速度を上げます。
昔から手綱捌きはお上手でしたが、尋常ではない速さが出ているので少々心配です。

ノリミ゚ -゚彡「メシューマまで、あとどのくらいかな?」

ミ(゚、゚彡ン「まだ道の半ばほどですから、この速さでも2時間近くは掛かるかと思われます」

ノリミ゚ -゚彡「まだそのくらいか。じゃあ、もう少しスピード上げるか」

ミ(゚、゚;彡ン「これ以上スピード上げて、この馬車もちますかね?」

僕は馬車の幌を上げ、中にいるシューさんに尋ねてみました。
シューさんは馬車に力を与える為、馬車の中に座って集中しています。

lw´‐ _‐ノv「上げてみて、車体が大丈夫だったら大丈夫じゃないかな?」

ミ(゚、゚;彡ン「それって、大丈夫じゃなかったら大丈夫じゃないですよね?」

854 名前:名も無きAAのようです:2013/03/23(土) 23:22:31 ID:20QgFQY.0

じゃあ、試しにやってみようと言うクー様を止め、何とかこのままの速度を維持して貰いました。
先ほどから車体から妙な異音がしている様な気もするので、きっと大丈夫ではないと思います。

lw´‐ _‐ノv「仕方ない、米一號と報突飛亜の力をもう少し解放するか」

ミ(゚、゚;彡ン「いや、だから車体の方がもたなさそうなんですよね?」

シューさんが口にした奇怪な名前は、この馬車を引いている馬の名前だそうです。
勿論、普通ではありえない速さで走れるくらいですからただの馬ではありません。
何でも、シューさんが召喚した魔界の馬だそうです。

そう聞くと、モンスターの様で恐ろしい響きもありますが、
魔界の馬といっても人間界の馬とそう変わらないとシューさんは言っていました。

確かに、首がないのと黒い魔力の様なものを放出している事を除けば、主人に忠実な良い馬のようです。
ただ、見た目があれなので、すれ違う人々を先ほどの様に驚かせてしまう事請け合いなのですが。

更に言えば、万が一そんな馬にニューソク王家の姫様が乗っている事を知られてしまうと厄介な事になりそうなので、
僕もクー様も仮面を着用しています。

ノリミ゚ -゚彡「まどろっこしいな。馬車ごと強化できないのか?」

lw´‐ _‐ノv「出来なくはないが、だいぶ力を使う事になるね」

855 名前:名も無きAAのようです:2013/03/23(土) 23:25:55 ID:20QgFQY.0

人間界で派手に悪魔の力を使う事を良しとしていないシューさんですが、今回は結構使ってくれています。
大恩のあるブーン店長の危機という事で、だいぶ心配しておられるようです。

ノリミ゚ -゚彡「……それは止めておけ。あまり力を使い過ぎるとこの世界にいられなくなるんだろ?」

lw´‐ _‐ノv「そうだねえ。これ以上は滞在期間を削っていく事になるだろうね」

ノリミ゚ -゚彡「ならばやはり止めておこう。ブーン達もそれは望まないだろ」

lw´‐ _‐ノv「……そう悠長な事を言っててもいいのかね?」

最悪の場合を考えたら、自分の滞在期間よりもブーン店長達の事を最優先にすべきではないかとシューさんは言います。
あまり考えたくない事なのですが、シューさんの見立てでは状況はだいぶ悪いとの事でした。

ノリミ゚ -゚彡「急にどうした? 出発する前は、人間界の争いには関わりたくないみたいな事を言ってたじゃないか」

lw´‐ _‐ノv「言ってたね。でも、どうも状況が更に悪化してみるみたいなのよね」

嫌な気配が濃くなっているとシューさんは表情を曇らせます。
まず表情を変えることのないシューさんにしては珍しい事ですから、それほど悪い事態という事なのでしょう。

856 名前:名も無きAAのようです:2013/03/23(土) 23:27:20 ID:20QgFQY.0

ノリミ゚ -゚彡「なに、あいつらなら大丈夫さ。そう簡単にくたばる玉じゃない」

クー様は安心しろと、シューさんに言い含めるように言いました。
こういう時のクー様の言葉は不思議と説得力を感じます。
生まれのなせる業と言えるのでしょうが、僕は単にそれだけではないとも思っています。

クー様の言葉を聞き続けて来た僕にはそれがよくわかっていました。

lw´‐ _‐ノv「そうだね、彼らを信じようか」

シューさんも納得してくれたのか、頷いて再び馬の制御に集中しだしました。
僕達も馬車の運転と前方の監視に集中する事にします。

ノリミ゚ー゚彡「あいつもやけにブーンのことを気にしてるみたいだな」

ミ(゚、゚彡ン「ですねえ」

クー様はシューさんには聞こえないように、こっそりと僕に耳打ちします。
さも愉快そうに語るクー様ですが、今のご自分の言葉をよくよく思い返せば、
ご自分も同じ様な気持ちなのだということにお気付きになられるのではないでしょうか。

857 名前:名も無きAAのようです:2013/03/23(土) 23:29:45 ID:20QgFQY.0

ノリミ゚ -゚彡「ん? どうした、急にニヤニヤして?」

ミ(^、^彡ン「いえいえ、何でもありませんよ」

訝しげな目付きで僕を見るクー様に、僕はやさしく微笑み返します。
あまりご自分のそういった話に興味をお見せにならないクー様ですが、やはり女の子なんですよね。

ノリミ;゚ -゚彡「何かお前、良からぬ事を考えてないか?」

ミ(^、^彡ン「そんな事は全っ然ありませんよ?」

しかしどういたしましょうかね。
ブーン店長には幼馴染であるツンさんがいらっしゃいます。
あの2人は大層お似合いですし、ツンさんにも色々と恩がございます。

もし本当にそういう状況になってしまったら、僕はどちらを応援すべきなのでしょうか。

ノリミ;゚ -゚彡「いや、お前絶対何か変な事考えてるだろ?」

ミ(^、^彡ン「そんな事ないですってばー。あ、それより前方よりまた馬車が……」

僕達は、そろそろ涼しいを通り越して寒くなりかけている季節の空の下、メシューマへの道をひた走りました。
860 名前:名も無きAAのようです:2013/03/23(土) 23:31:26 ID:20QgFQY.0

 〜 メシューマの町 中央付近  <シブサワ> 〜

  _、_
( ,_ノ` )「おっと、ここから先は通行止めだぜ?」

フィレンクト達が走り出すとすぐに、1匹のGデーモンが空から降下して来る。
もう1匹は上空に待機し、援護射撃を開始した。
モンスターの癖にきっちりと連携が取れていて、かなり面倒な相手である。

ミ∬οw) ガァァァッ!
  _、_
( ,_ノ` )「殺る気満々じゃねえか……任せた」

( ゚∋゚) スッ

突進して来るGデーモンをから離れ、場所をクックルに譲る。
正面からの殴り合いならクックルに任せない手はない。

( ゚∋゚) ブンッ!
   ∪彡

ミ∬οw) シャギャァッ!

861 名前:名も無きAAのようです:2013/03/23(土) 23:32:24 ID:20QgFQY.0

クックルの盾を付けたままの横殴りの拳を、Gデーモンは受け止めてみせる。
そのまま腕に噛み付こうとしたGデーモンに、クックルは更に踏み込んで蹴りを打つ。

ミ∬οw) グァッ!

Gデーモンをクックルの腕を放し、後方に飛び退る。
そこに上空からの攻撃が降り注いだ。

( ゚∋゚) !?
  _、_
( ,_ノ` )「やらせんよ」

俺は防御魔法を張り、Gデーモンの魔力弾を防いだ。
しかしながらヒッキーの様にはいかず、すぐに防御魔法は破られてしまう。

だがその間にクックルは着弾点から逃げ切れていたので、俺もそれ以上防御することには拘らず、
その場から離れた。
  _、_
( ,_ノ` )「やっぱこういうのは苦手だわ」

( ゚∋゚)

862 名前:名も無きAAのようです:2013/03/23(土) 23:33:49 ID:20QgFQY.0
  _、_
( ,_ノ` )「ま、この間にフィレンクトの旦那達は逃げ切れただろう」

( ゚∋゚)
  _、_
( ,_ノ` )「あとは俺達がどうするかだが……」

( ゚∋゚)⊃ スッ……
  _、_
( ,_ノ` )「……だよな。おとなしく逃がしてくれるとは思えんし、やつらを野放しにしておくのもな」

再び降り注ぐ魔力弾を回避し、俺達は左右に分かれる。
一人一殺と行きたい所だが、真正面からやり合って倒すのは一苦労だろう。

俺達は再び合流し、物陰に隠れた。
Gデーモンは上空から魔力弾を連射し、隠れている俺達を燻り出そうとしている様だ。
  _、_
( ,_ノ` )「やれやれ、ここも長くはもたんな」

( ゚∋゚)" コクッ
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「……しゃーない、やるか」

( ゚∋゚)" コクッ

863 名前:名も無きAAのようです:2013/03/23(土) 23:36:08 ID:20QgFQY.0

俺は煙草を1本取り出し、火を点ける。
のんびりしてられるような時ではないが、こいつがなければ俺の人生は真っ暗闇だ。
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「あんたも吸うか?」

((( ゚∋゚))) フルフル……
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「まあ、吸いそうな感じじゃねえよな」

( ゚∋゚)

俺は、ひとしきり煙を灰に充満させる作業に勤しんだ。
段々と激しい音が近づいて来ている。
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「どれ、たまにはエクソシストらしい事でもやってみるかね」

背中に仕込んでいた2本のナイフを取り出し、両手に持つ。
十字架型という、神に仕える者に相応しいデザインだが、裏家業の俺に相応しいとは思えないデザインでもある。
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「たまには神の御加護ってやつに期待しても罰は当たらんよな」

( -∋-)

864 名前:名も無きAAのようです:2013/03/23(土) 23:39:48 ID:20QgFQY.0

俺の言葉に目を閉じ、拳を合わせて祈りを奉げるクックル。
こいつもこいつで俺とは別の神に仕える身である事を思い出した。

( -∋-)
  _、_
( ,_ノ` )y━・~(どう見ても聖職者って風体じゃねえよな)
  _、_
( ,_ノ` )y-・~(ま、そりゃお互い様か……)

俺は苦笑し、短くなった煙草を投げ捨てる。
それから息を大きく吸い込み、物陰から飛び出す。

ミ∬οw) ガグァッ!
  _、_
( ,_ノ` )「待たせたな。さあ、やろうか」

すぐさま上空にいた2体のGデーモンの視線がこちらに向く。
その隙に、物陰の反対側からクックルが飛び出し、1体のGデーモン目掛けて盾を放った。

( ゚∋゚)⊃ バッ

盾は唸りを上げ、一直線にGデーモンに向けて突き進んだ。

865 名前:名も無きAAのようです:2013/03/23(土) 23:44:18 ID:20QgFQY.0

 〜 メシューマの町 ???  <ブーン> 〜


(#^ω^)「サンダー・ボール!」

雷の球体がオサムに向かって直進する。
それに対し、オサムは一切避ける素振りは見せず、当たる間際に姿を消した。

(;^ω^)「またかお!」

避けられるのは想定内なのだが、つい悪態を吐いてしまう。
未だ打開策を見付けられず、攻撃が一切当たらないのだから愚痴の1つも言いたくなるものだ。

(;^ω^)「今度はどこから……」

ξ゚听)ξ「後ろよ!」

(;^ω^)「おわっと!?」

黒い魔力弾が、しゃがんで避けた僕の頭上を通り過ぎる。
最初の頃に撃って来た魔力弾よりかなり小さいが、魔力切れとかではなく意図的にそうしているのだろう。
大きかった時よりは弾速が増している。

その分威力は下がっているのかもしれないが、だからといって当たって無傷で済むとは到底思えない禍々しさを感じる。

866 名前:名も無きAAのようです:2013/03/23(土) 23:45:30 ID:20QgFQY.0

【+  】ゞ゚)『おいおい、そろそろ当たってくれよ。こっちも暇じゃねえんだから』

( ^ω^)「特に予定はないんだお? ならもう少し付き合ってくれお」

軽口を返しつつ、姿を現したオサムの姿を観察する。
オサムを包んでいた灰の霧が徐々に霧散していく。

( ^ω^)(やっぱ、あの霧が転移魔法と関係してると見るべきだおね……)

今現在、オサムがどのくらい本気で攻撃を仕掛けて来ているのかわからない。
こちらを舐め切っているのは確かだが、それを差し引いてもあまり強力な攻撃は見せていない。
あの転移魔法を除けば、対処のしようがない攻撃はないのだ。

( ^ω^)(だからってあいつが弱いわけでもないんだけどね)

オサムが本当は強く、手を抜いているだけだとしても、今が倒すチャンスだという事には変わりはない。
その為にはまず、あの転移魔法の仕組みないし法則性を見付ける必要があるだろう。

( ^ω^)(わかっているのは、消えた後に灰の霧が残るのと、出て来た時も霧を濃く纏ってるくらいだお)

未だ僕らを囲むように霧が周囲に存在している。
心なしか少し薄まって来ている気がするのは気の所為だろうか。

867 名前:名も無きAAのようです:2013/03/23(土) 23:46:44 ID:20QgFQY.0

( ^ω^)(いや、霧が何らかの役目を負っているとしたら、消費されて薄まって来ている可能性もあるお)

だとしたら、試してみる価値はあるかもしれない。

【+  】ゞ゚)『ちょこまかとうざってえな』

ξ゚听)ξ「その重そうな棺桶、置いたらいいじゃないのよ?」

僕が考えている間、ツンが付かず離れずオサムを牽制してくれている。
回避されるのはわかっているから大きい攻撃は仕掛けず、僕が打開策を講じるまで時間稼ぎを務める気なのだろう。

( ^ω^)「ツン!」

ξ゚听)ξ" コクッ

呼んだだけで察してくれたようで、ツンはオサムを牽制しつつ僕の側まで移動して来る。

【+  】ゞ゚)『やれやれ、逃げ足の速いガキだ。いい加減観念しろよ』

( ^ω^)「お前の逃げ足には負けるお」

そう言って僕は呪文の詠唱を始めた。
オサムはそれを余裕綽々といった体で見ている。
きっと何が来ても避け切れるという自信の現われなのだろう。

868 名前:名も無きAAのようです:2013/03/23(土) 23:47:35 ID:20QgFQY.0

【+  】ゞ゚)『何をやっても無駄だと思うぜ?」

ξ゚听)ξ「どうかしら? やってみるまではわからないわよ?」

オサムは大袈裟に肩をすくめ、やってみろと言わんばかりに顎をしゃくる。
僕はそれに応じるように、唱えていた魔法を解き放った。

( ^ω^)「ウインド・ブロウ!」

【+  】ゞ゚)『!?』

僕の両の手から生み出された突風がオサムを直撃する。
直接的なダメージを与えられる様な魔法ではないし、オサムの身体を吹き飛ばせるほどの威力はなかった。

【+  】ゞ゚)∩『チッ!』

だがオサムは慌てた様に左手を上げ、魔力を壁を作り出し、突風を途中から防いだ。
しかし既にオサムの周辺の灰の霧は薄くなっている。

( ^ω^)「これは……」

今のオサムの行動を見る限り、少なからず僕の予想は当たっていたと考えるべきだろう。
僕はチャンスとばかりに畳み掛けるべく次の呪文を始めたが、それよりも早くツンが仕掛けていた。

869 名前:名も無きAAのようです:2013/03/23(土) 23:48:36 ID:20QgFQY.0

ξ#゚听)ξ///⊃「はあああッ!」

【+  】ゞ゚)『甘いぜ!』

オサムはツンの攻撃を左腕で防ぎ、そのままツンを蹴り飛ばそうとした。
ツンはそれを後方に飛んで避け,代わりに僕がオサムへ向かって魔法を放つ。

( ^ω^)「ウインド・カッター!」

【+  】ゞ゚)『小賢しいッ!』

オサムは風の刃を左手で薙ぎ払い、全て掻き消した。
僕は反撃に備えるべく防御魔法を張ろうとしたが、オサムは反撃はして来ず、その身から灰の霧を放出しだす。

【+  】ゞ゚)『何度やっても無駄だと言ったろ? いい加減諦めろよ』

( ^ω^)「無駄? それはどうだろうかおね?」

余裕の笑みを浮かべるオサムに、僕も挑発めいた笑みを返す。

【+  】ゞ-)『ハッ、まともに攻撃を当てる事すら出来ねえくせによく言ったもんだ』

870 名前:名も無きAAのようです:2013/03/23(土) 23:50:49 ID:20QgFQY.0

( ^ω^)「さっきの攻撃は当たったお」

【+  】ゞ゚)『何を言ってやがる。きっちり防いだだろうが』

( ^ω^)「だおね。防がれはしたお。でも……」

( ^ω^)「今までみたいには消えて避けられなかったおね?」

【+  】ゞ゚)『……フン、どうやら気付いたみてえだな』

( ^ω^)「お前はその霧がないと、あの転移魔法は使えないんだお」

そう言い放った僕に、オサムは一瞬表情の消えた顔で僕を睨む。
しかしすぐに先ほどまでと同じ様に、余裕の笑みを浮かべた。

【+  】ゞ゚)『その通り、なかなかいい観察眼だな』

( ^ω^)「……やけにあっさり認めたおね」

【+  】ゞ゚)『まあ、見てりゃその内バレる様な能力だからな』

871 名前:名も無きAAのようです:2013/03/23(土) 23:52:31 ID:20QgFQY.0

オサムの能力について重要な点を見破ったつもりだったが、オサムに全く焦った様子が見られない。
それほど自分の能力に自信があるのか、それともこちらを侮っているかのどちらかだろうか。

【+  】ゞ゚)『確かに、俺は周囲にこの霧がなければ転移の力は使えないが……』

【+  】ゞ゚)『こんなものは無尽蔵に生み出せる』

( ^ω^)「また魔法で吹き飛ばして……」

【+  】ゞ゚)『俺がそれをおとなしくやらせると思うか?』

先ほどは途中からだが、オサムは僕の風の魔法を防いだ。
今後は警戒されるだろうから、簡単には吹き飛ばせないだろう。

(;^ω^)「けど……」

【+  】ゞ゚)『……そろそろ遊びは仕舞いだ』

オサムを中心に灰の霧が激しく放出される。
視界不良の中、更にオサムの魔力も跳ね上がり、いくつもの黒い魔力弾が出現した。

【+  】ゞ゚)『死ね』

(;^ω^)「クッ……」

オサムの言葉と共に、魔力弾が一斉に僕らに迫り来る。
僕とツンは必死にそれを回避しようとした。

872 名前:名も無きAAのようです:2013/03/23(土) 23:53:33 ID:20QgFQY.0

 〜 メシューマの町 中央付近  <ジョルジュ> 〜


( ゚д゚)「追っては来ないようだな」

全力疾走を止め、徐々に速度を落としながら後方を振り返るミルナ。
その言葉通り、今の所Gデーモンの姿は見受けられない。

(‘_L’)「あの2人がきっちりと仕事をこなしてくれているのでしょう」

こちらもやるべき事をやらなければと、真剣な顔付きでフィレンクトは言う。
  _
( ゚∀゚)「ブーン達はどこへ行ったかわからねえか?」

(-_-)「残念ながらまだ、ブーン君の反応は見付けられません」

悲壮感溢れる青ざめた顔でヒッキーは俺の質問に答える。
反応がない、イコール、最悪のケースを考えているのかもしれないが、
ブーン達がそう簡単にくたばるとは俺は思っていない。
  _
( ゚∀゚)「随分遠くに飛びやがったもんだな。ひょっとしたら結界の外か?」

873 名前:名も無きAAのようです:2013/03/23(土) 23:54:29 ID:20QgFQY.0

( ゚д゚)「やつがわざわざこういった舞台を整えた事を考えると、その可能性は薄いだろうな」

空気を全く読みやがらないミルナは、俺のフォローを台無しにするような言葉を吐く。
案の定、ヒッキーの顔が更に悲痛なものに変わっていく。
  _
( ゚∀゚)「……そんな泣きそうな顔すんなよ。あいつらなら心配いらねえさ」

(-_-)「だといいのですが……」
  _
( ゚∀゚)「あいつらとはそれなりに長い付き合いだ。ああ見えて場数もこなしてるし、上手く切り抜けてくれるさ」
  _
( ゚∀゚)「な、ミルナ?」

( ゚д゚)「そうだな。ブーン達ならきっと無事だ」

今度はちゃんと空気を読んで、俺に同調するミルナ。
大丈夫だと、ヒッキーの背を力強く叩いた。

(;-_-)「そ、そうですね。無事を信じてブーン君達を探しましょう」

(‘_L’)「では急ぎましょうか。彼らが無事だとしても、危険な状況には変わりないのですから」

874 名前:名も無きAAのようです:2013/03/24(日) 00:00:39 ID:IeYf1DvE0

俺達はヒッキー頼りで、なるべく魔力反応が大きい場所へ向けて走り出した。
若干、周囲の灰の霧が薄れて来ている感じもするが、まだ視界がよろしくない事に変わりはない。

(-_-)「次は……あれ?」
  _
( ゚∀゚)「どうした?」

(-_-)「いえ、あちらからかすかにですが、魔力反応を感じられたのですが……」

すぐに消えてしまったし、ブーンにしては随分弱い反応だったとヒッキーは言う。

( ゚д゚)「どうする?」

(‘_L’)「行くべきでしょう。他に手がかりもありませんし、負傷している場合も考えられますので」
  _
( ゚∀゚)「だな。急ぐぜ?」

俺は先に立ち、ヒッキーが指し示した方向へ走る。
周囲にはレッサーデーモン達の姿もなく、妙に静まり返っていた。
  _
( ゚∀゚)「!?」

角を曲がり、いくつかの倒壊した建物の間を進んだ先で、俺は倒れている人間らしき物を発見した。
それを即時に人間だと断定出来なかったのは、それが既に人の形を保てていなかったからだ。

875 名前:名も無きAAのようです:2013/03/24(日) 00:01:50 ID:IeYf1DvE0
 _
(;゚∀゚)「「こいつは……」


           ( ゚゚ω)


目を見開き、苦悶の表情を浮かべるその顔には見覚えがあった。
マルタスニム=ハーセーガー。
俺達が倒さねばならない敵の1人だった男だ。

( ゚д゚)「……死んでいるのか?」
  _
( ゚∀゚)「だろうな。これで生きてたら大したもんだぜ」

マルタスニムには両腕と胴から下がなく、胸の中央辺りが血に染まっている。
これで生きていられたら、人間業ではない。

(‘_L’)「……呆気ないものですね。出来れば彼は生かして捕らえたかったのですが」

生かして捕まえてたとしても極刑は免れないが、刑が下される前に精霊兵器の実験台にされた人達の治療に、
少しでも役立たせたかったとフィレンクトは言う。

876 名前:名も無きAAのようです:2013/03/24(日) 00:04:28 ID:IeYf1DvE0

( ゚д゚)「これ以上犠牲者が出なくなっただけでも良しとするべきだろう」

(‘_L’)「そうですね。しかし、問題はこれを誰がやったかということですが……」

フィレンクトの言葉に、俺とミルナは顔を見合わせる。
マルタスニムにあるのは恐らく刃物による傷だ。
デーモンどもの仕業ではないだろう。
  _
( ゚∀゚)「何をするつもりだ?」

ふと気付くと、ヒッキーがマルタスニムに近付いてしゃがみ込んでいた。

(;-_-)「いえ、せめて目だけでも閉じさせてあげようかと……」

マルタスニムのような悪党にそんな事をしてやる義理はないと思うが、
死者に尊卑はないからとヒッキーはマルタスニムの顔に手を伸ばした。

( ゚゚ω)「我が研究! ここに成せりッ!!!」

(;゚_゚)「ひっ!?」

突如マルタスニムが上半身を起こし、一言叫ぶと血を吐いてまた倒れた。
あまりの事に全員言葉を失ったが、それからもう、再びマルタスニムが口を開く事はなかった。

877 名前:名も無きAAのようです:2013/03/24(日) 00:05:17 ID:IeYf1DvE0
 _
(;゚∀゚)「……何なんだ一体?」

(‘_L’)「余程無念だったのでしょうか。それとも……」

( ゚д゚)「大丈夫か?」

(;゚_゚)" コクコクコクッ

間近にいたヒッキーはかなりショックを受けた様だ。
完全に死んでいると思った人間が動いたのだから無理もないだろう。
頬にマルタスニムが吐いた血が少し付いてしまっている。
  _
( ゚∀゚)「それとも、何だ?」

俺は何か言い掛けて黙り込んだフィレンクトに話を振る。

(‘_L’)「いえ、その逆なのかと思ったのですが……」
  _
( ゚∀゚)「逆?」

(‘_L’)「……研究の成功を、余人に伝えたかったのかと」

878 名前:名も無きAAのようです:2013/03/24(日) 00:06:26 ID:IeYf1DvE0

マルタスニムは虚栄心の強い男だと聞いていた。
であるならば、先の言葉を叫んだマルタスニムの行動の意味はわからなくもない。

しかし、そうだとしたら問題は……

( ゚д゚)「……おい、何か聞こえないか?」
  _
( ゚∀゚)「風の音……じゃねえな」

吹き荒ぶ風の音の様な、低く響く様な音がかすかに聞こえる。
だが、現在はほぼ無風状態といってぐらいなので、風の音ではないだろう。


         ルォォォォォォォォォ……


(‘_L’)「何でしょう? 獣の唸り声の様な……」

フィレンクトがそう呟きながら右手を剣に掛ける。
音だけでなく、徐々に膨れ上がる殺気に俺達は円形に陣取り、周囲を警戒した。

879 名前:名も無きAAのようです:2013/03/24(日) 00:07:18 ID:IeYf1DvE0

( ゚д゚)「段々近づいて来ているな……」
  _
( ゚∀゚)「ああ……、抜かるなよ?」

殺気の元は俺の真正面から向かって来ているようだ。
俺は得物が振り易い様に1歩前へ出て、迎撃体制を取る。

(‘_L’)「来ます!」
  _
(#゚∀゚)「でえええりゃぁぁぁッ!」

真正面にいたはずの殺気が瞬時に上空へ移動し、俺へと向かって降下して来る。
俺は動じる事無く、襲撃者に向けて下段からバルディッシュを振り上げた。
 _
(;゚∀゚)「!?」

振り上げたバルディッシュが空を切り、殺気が忽然と消える。
それが消えたわけでなく、瞬時に移動して背後に回ったのだと気付いた時には、襲撃者の得物が煌いていた。

川lii゚ 々゚)「グァッ」

880 名前:名も無きAAのようです:2013/03/24(日) 00:08:09 ID:IeYf1DvE0

(;゚_゚)「いっ!?」

( ゚д゚)「やらせん!」

襲撃者、クルゥの狙いは俺ではなく、後衛にいたヒッキーだった。
いち早く反応したミルナがクルゥの攻撃を防ぐ。

川lii゚ 々゚)「グァー」
  _
(#゚∀゚)「てめえッ!」

川lii゚ 々゚)「ガッ」

動きの止まったクルゥに斬りかかったが、既に後方に飛び去った後だった。
元々出鱈目に強いという話ではあったものの、明らかに最初に対峙した時よりもスピードが上がっている。
それも、尋常じゃないレベルでだ。

(;-_-)「ど、どういうことなんです?」

(‘_L’)「それはわかりませんが……」

881 名前:名も無きAAのようです:2013/03/24(日) 00:09:10 ID:IeYf1DvE0

川lii゚ 々゚)「グァッ」

(;-_-)「ひぃぃっ!?」

(‘_L’)「容易い相手ではない事だけは確かでしょうね」

再び襲い掛かって来るクルゥのナイフを、フィレンクトが剣で受け止める。
そのままフィレンクトは力で押し切ろうとした様だが、クルゥを下がらせる事すら出来なかった。

川lii゚ 々゚)「グァッ」

( ゚д゚)「ええい、ちょこまかと!」

クルゥは自分からフィレンクトを離れ、今度はミルナに上空から襲い掛かる。
ミルナはそれを盾で防ぎ、クルゥを地面に叩き付けようとしたが、触る事すら出来なかった。

川lii゚ 々゚)「グォァー」

距離を取ったクルゥは、姿勢を低くしてこちらを観察する様な目を向け、ゆっくりと左右に動く。
その姿は、どうもこちらを恐れている様にも見える。
よく見ると心なしか、クルゥの表情は青ざめていた。

882 名前:名も無きAAのようです:2013/03/24(日) 00:10:29 ID:IeYf1DvE0

(‘_L’)「マルタスニムが亡くなった今、彼女と戦う理由も、彼女が戦う理由もないはずですが……」

( ゚д゚)「そのはずだな。……説得してみるか?」
  _
( ゚∀゚)「ありゃ無理だろ。会話の通じそうな目はしてねえよ」

どうにかして取り押さえ、戦闘力を奪うしかないだろう。
出来れば殺したくはない相手だ。

(;-_-)「あの……」

( ゚д゚)「どうした? 何かいい手でも思い付いたか?」

(;-_-)「い、いえ、そうじゃなくてですね……」

ヒッキーは引きつった表情を浮かべつつ、人差し指を空に向ける。
釣られて空を見ても何も見付けられなかったが、1つ気付いた事があった。


         ルォォォォォォォォォ……

883 名前:名も無きAAのようです:2013/03/24(日) 00:12:40 ID:IeYf1DvE0
  _
( ゚∀゚)「……あいつじゃねえのか」

クルゥの方を見てみたが、クルゥは小さな声で何事かをぶつぶつと呟いてはいるものの、
唸り声の様なものはあげていない。
つまりこの声は、クルゥではない別の何かの声ということらしい。

(‘_L’)「新手のデーモンでしょうか? 何にせよ、警戒は……」
 _
(;゚∀゚)「フィレンクト、避けろ!」

何かが上空からフィレンクトに向かって一直線に降下して来た。
フィレンクトは咄嗟に剣で防いだものの、その勢いまでは殺す事が出来ず、後方に撥ね飛ばされる。

(;‘_L’)「クッ……」

第2の襲撃者は、クルゥと同じく超高速の動きでフィレンクトの元を離れ、再び上空から襲い掛かる。
今度の狙いはどうやら俺らしい。
  _
(#゚∀゚)「なめんじゃねえッ!」

バルディッシュを搗ち上げ、襲撃者の攻撃を防ぎつつカウンターの一撃を食らわせようとした。
しかし、相手を押し切る事は出来ず、肉薄されてしまう。

ノ从∀ 从ト「ルォォォォォォォォォォォォ……」

884 名前:名も無きAAのようです:2013/03/24(日) 00:13:30 ID:IeYf1DvE0
 _
(;゚∀゚)「お前!? ハイ……がッ!?」

襲撃者は鍔競り合う武器を軸に半回転して俺に蹴りを放ち、後方に飛んで距離を取った。
俺は蹴られた脇腹の痛みに膝を曲げるが、踏みとどまって襲撃者の姿を目で追う。

ノ从∀ 从ト「ルォォォォォォォォォォォォ……」
  _
(#゚∀゚)「ハイン、てめえ! 何やってんだよ!」

(; ゚д゚)「落ち着け、ジョルジュ!」

ハインに突っ掛かろうとする俺を、ミルナが後ろから羽交い絞めにする。
  _
(#゚∀゚)「離せ、馬鹿!」

( ゚д゚)「離すか、馬鹿!」

俺が無茶をするとミルナは考えているようだが、今襲われたらヤバい所の話ではない。

(;-_-)「どどどどどういう事なんですか? 何でハインさんが……?」

(‘_L’)「説明は受けていたでしょう? だからといって、簡単には飲み込める状況ではないでしょうが」

885 名前:名も無きAAのようです:2013/03/24(日) 00:14:54 ID:IeYf1DvE0

事前にハインの事を話していた所為もあってか、フィレンクトは事情を察した様だ。
ヒッキーもフィレンクトの言葉で状況理解したらしく、青ざめた顔をこちらに向けて来る。

恐らくハインはマルタスニムに追い付き、戦って打ち倒したのだろう。
その結果か、その過程でかはわからないが、ハインは感情を爆発させ、狂戦士化したのだと考えられる。

(;-_-)「ど、どうしましょう?」
  _
( ゚∀゚)「どうもこうも、取り押さえて正気に戻すしかねえさ」

過程はどうあれ、ハインがああなってしまった以上、俺達がやるべき事は決まっている。
ハイン俺達の仲間だ。
助ける以外の選択肢はない。
  _
( ゚∀゚)「……ミルナ」

( ゚д゚)「冷静になったか?」
  _
( ゚∀゚)「最初から俺は冷静だよ。とにかく、あいつを捕まえるぞ」

( ゚д゚)「ああ、それしかあるまい」

886 名前:名も無きAAのようです:2013/03/24(日) 00:16:11 ID:IeYf1DvE0

ハインは別に俺達が相談するのを待ってくれていた訳ではないのだろうが、
虚ろな目をこちらに向けるだけで動こうとはしない。
クルゥは相変わらずふらふらと覚束ない足取りでうろついている。
  _
( ゚∀゚)「ヒッキー、お前は下がってろ。正直、守りながらやれる相手じゃねえ」

(;-_-)「は、はい……」

ハインもクルゥも魔法の類は一切使わないだろう。
故に、対魔法の備えは必要ないし、ヒッキーの白兵戦闘技術では瞬殺されるのがオチだ。

(‘_L’)「作戦を……と言いたい所ですが……」
  _
( ゚∀゚)「臨機応変にやるしかねえだろうな」

出来れば、どちらかを集中して狙い、まず1人の動きを止めたい所だが、
あの速さの上に恐ろしく行動が読み辛い相手だ。
大雑把な方針は決められても、その通りに動けるとは限らない。

( ゚д゚)「ま、そちらの方がお前にはあってるだろうしな」
  _
( ゚∀゚)「お前だって、それほど考えて戦ってねえだろうが」

887 名前:名も無きAAのようです:2013/03/24(日) 00:17:27 ID:IeYf1DvE0

俺はミルナに向けて軽く拳を放つ。
ミルナはそれを受け止め、音を立てて払った。
  _
( ゚∀゚)「行くぜ」

( ゚д゚)「応!」


       川lii゚ 々゚)      ノ从∀ 从ト


俺達は得物を掲げ、それぞれ別々の相手に向かう。
そのまま一気に接近し、渾身の一撃を振り下ろす。
  _
(#゚∀゚)「とっとと目を覚ませ、この馬鹿野郎がッ!」

ノ从∀ 从ト「ルォォォォォォォォォォォォ……」

灰の満ちる戦場に、刃と刃がぶつかり合う音が響き渡り、激しく火花を散らした。



     第五十一話 開戦の時 終

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