- 596 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 21:40:16 ID:t0Judkck0
〜 メシューマの町 ??? 〜
(;^ω^)「うぉぉぉぉぉッ……って、あれ?」
(‡xДx)Ψ ギュォアー
ξ;゚听)ξ「何、今の光は?」
(;^ω^)「わからないお。何か光ったと思ったら、光の球がレッサーデーモン達を……」
「やれやれ、随分と厄介な事になっているようじゃないか……」
(;^ω^)「へ? いや、何であんたがここに?」
<( ・∀・)ノ「ご挨拶だな。助けて貰って礼の1つも言えないのかね君は?」
第四十八話 西方の力、東方の光
- 597 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 21:41:40 ID:t0Judkck0
(;^ω^)「いや、そりゃありがたいですけど、西の賢者がどうしてこんな所に……」
僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。
( ・∀・)「君は馬鹿かね。僕らの目的をデレから聞いていたのだろう?」
彼の名前はモララーさん。
西の賢者と称される魔法使いで、じいちゃんの弟子でドクオさんのライバルだったという人だ。
(;^ω^)「目的……あ、千年紀の……」
僕達はメシューマの町で行われる闘技大会の見物兼、有事に備える為にここに来ていたのだが、
その有事が起こってしまった所為で混乱の最中にあった。
わかっているのは灰衣の男が何かをしたらしき事と、何故か闘技大会会場を囲む結界内に取り込まれた事、
そして低級悪魔であるレッサーデーモンが大量発生している事ぐらいだ。
( ・∀・)「そうだ、朱玉だ。……だが、一足遅かった様だがね」
そんな中、突如として現れた西の賢者ことモララーさん。
僕らとは聖骸布を巡って争ったこともあり、どちらかといえば敵対関係にあったが、
先のモララーさんの言動を聞く限り、今回は争う気はない様に見える。
- 598 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 21:43:03 ID:t0Judkck0
(‡`Д´)Ψ キュル キュル (‡`Д´)Ψ
キュル キュル (‡`Д´)Ψ キュル キュル
(;^ω^)「って、今はのんびり話している時間は……」
( ・∀・)「人が話をしているのに、喧しい連中だ」
ミ⊃
モララーさんが右手を横に薙ぎ払うと、そこからいくつもの光弾が生み出される。
全ての光弾は狙いを寸分違う事もなく、同じ数だけのレッサーデーモンを貫いた。
(;^ω^)「すご……、何だお、今のは?」
極限にまで詠唱を短縮した攻撃魔法だと思うが、それであの威力だ。
多分、手の振りが妙に格好いいのでスペシャルなのだろう。
伊達に賢者と呼ばれているわけではないという事か。
(‡`Д´)Ψ キュル キュル (‡`Д´)Ψ
キュル キュル
(;^ω^)「まだいやがるお。これはキリがなさそうだおね」
- 599 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 21:44:47 ID:t0Judkck0
また別の箇所から湧き出す様に現れるレッサーデーモン。
僕も攻撃魔法を唱えようと杖を構えたが、モララーさんがそれを制した。
( ・∀・)「雑魚はあいつらに任せておいて、君には少々聞きたい事がある」
( ^ω^)「え? あいつらって……」
ζ(゚口゚*ζ「そ〜れ〜は〜♪ わ〜た〜し〜た〜ち〜♪」
振り向くまでもなく、背後から聞こえてきた声が誰のものかはすぐにわかった。
ラウンジの聖女、デレの発した歌声はレッサーデーモンの動きを次々と止めていく。
そして動きの止まったレッサーデーモンに、巨大な何かが上空からぶち当たる。
∩( ゚∋゚)∩
( ^ω^)「デレ、それにクックルも!?」
ヾζ(゚ー゚*ζ「やっほー、おひさし」
ξ゚听)ξ「ラウンジの聖女御一行様が勢揃いってわけね」
- 600 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 21:46:11 ID:t0Judkck0
デレは僕らに向かって手を振ると、すぐにまたレッサーデーモンの方に向かう。
何故いるのかはさておき、あの2人なら確かに任せて良さそうだ。
( ・∀・)「とにかく、君達はここで起こったことを速やかにこの僕に報告したまえ」
( ・∀・)「僕らが来た時にには既にこの状況だったんでね」
( ^ω^)「お? ということはモララーさん、この結界を解除して入って来たんですかお?」
( ・∀・)「……そんなとこだ」
僕の言葉にモララーさんが若干眉をひそめた様に見えたが、僕は素直にこの場で起こった事を説明した。
結界を解除出来るなら、まずは巻き込まれた観客の人達を外に出して欲しいという主張も沿えて。
( -∀-)「なるほどね……。あいつの予想以上に事態は芳しくないようだね」
ξ゚听)ξ「あいつって?」
( ・∀・)「さて、それじゃあ役割分担と行こうか」
(;^ω^)「いや、ちょっと待ってくださいお」
( ・∀・)「何だね? こうやって悠長に話している時間はそうないと思うんだがね?」
- 601 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 21:47:44 ID:t0Judkck0
(;^ω^)「そうですけど、こっちは事情が全くさっぱりポンなのに、そっちだけわかった風で進められても……」
( ・∀・)「わざわざ君に解説してあげる義理は僕にはない」
(;^ω^)「そんなバッサリと。てか、こっちは情報提供したじゃないですかお」
( ・∀・)「僕は情報を寄越せとは言ったが、こちらから提供するとは一言も言ってないぞ」
冷たい眼差しですげなく言い放つモララーさん。
初対面時の状況の所為か、僕に対してあまり良い感情を持っていないのかもしれない。
ζ(゚ー゚*ζ「先生、大人気ないっスよ。ブーン君とはただのお友達ですぜー?」
( ・∀・)「……僕は別段彼に対して何らかの否定的な感情を抱いているわけではないよ、デレ?」
ζ(゚、゚*ζ「どうでしょうかねえー?」
( ・∀・)「君にはクックルの援護をお願いしていますよ、デレ?」
ζ(゚口゚*ζ「はーいはい〜♪」
- 602 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 21:49:00 ID:t0Judkck0
( ・∀・)「……感情の話をするのであれば、敬愛する師の孫である君には悪感情を抱き様がないんだがね」
モララーさんは少しずれ下がって来ていた眼鏡を直しつつ、僕の方を見る。
デレが助け舟を出してくれたお陰か、モララーさんは状況を説明してくれるらしい。
説明を省こうとしたのは、あくまで時間の無駄を省く為だったのだがと、何度も前置きをしつつ。
( ・∀・)「まずこの場所、この結界の話だが、これは闘技大会用に張られた結界が変質したものだろう」
( ^ω^)「変質……ですかお?」
この結界は闘技大会用に張られた結界であるではあるが、それが何らかの力、
恐らくは朱玉とデミタスの力によって変えられたものだとモララーさんは言う。
元々は見えない結界だったのが、今ははっきりと見え、外の様子も伺えないのでまるで別物の様だ。
( ・∀・)「その男の力と言い切っていいかの真偽は置いておくとして、君達はそれに取り込まれたというわけだ」
あの時、意識を失う直前に何かに包まれた様に感じたが、それが結界ということなのだろう。
ただ、問題は何故僕達や観客が取り込まれたかだ。-
( ・∀・)「理由はいくつか考えられるが、どれも推測の域を出ないな」
正しい答えはこの事態を起こした張本人に聞くしかないだろうとモララーさんは言う。
現時点でのその推測を聞きたかったが、モララーさんはそれを教えるつもりはないらしい。
- 603 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 21:51:13 ID:t0Judkck0
( ・∀・)「今この辺りは空気中の魔力濃度が異様に高い。それはわかってるな?」
( ^ω^)「それは勿論。その結果、あのレッサーデーモン達は普段より手強くなってんですおね?」
そう言いながらデレ達の方を見ると、2人はさして苦もなくレッサーデーモン達を殲滅しつつある。
手強いといってもあくまで比較の話なので、彼女達にとっては造作もない相手なのだろう。
( ・∀・)「まあ、あの位僕1人でも余裕で片付けられるんだがね」
( ^ω^)「でしょうね」
(^ω^∪)ヾ
妙に負けず嫌いな所を見せるモララーさん。
そういう所は同じ賢者でもドクオさんとはだいぶ違うと思う。
あの人はどちらかと言えば、出来るのに面倒くさいからって出来ないと言って丸投げするような人だ。
ξ゚听)ξ「この状況はどういった意図があるんですか? それとも……」
( ・∀・)「結界の副産物なのか?」
ξ゚听)ξ「ええ」
- 604 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 21:52:09 ID:t0Judkck0
( ・∀・)「僕は後者だと見ているが、そもそもその状況を作るために結界を変質させた可能性もある」
(∪^ω^)ヾ
モララーさんが言うには、結界を変質させ、空気中の魔力濃度を上げる事が目的の1つだったのではないかという事だ。
( ・∀・)「結論から言うと、恐らくデミタスという男は召喚士だろう」
僕達の話やレッサーデーモンが大量発生している事から、その可能性が高いとモララーさんは言い切る。
レッサーデーモンはデミタスが召喚した物、もしくはデミタスが召喚した物が召喚した物だと。
デミタスが召喚士だとすると、灰衣の男、魔法使いとしての力は不十分に思えるかもしれないが、
召喚した物の力を借りていたなら説明は付く。
( ^ω^)「となると、僕らが意識を失う直前に見た物が召喚された物の可能性が高そうですおね」
( ・∀・)「恐らくね」
( ^ω^)「そしてこの魔力濃度の高さは、召喚を容易にする為の物ですかおね」
( ・∀・)「僕はそう考える。だが……」
ξ゚听)ξ「デミタスは既にかなり力を持つ物を召喚してる。この状況で何を喚ぶつもりなのか……」
- 606 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 21:53:57 ID:t0Judkck0
( ・∀・)「そこまではわからないね。推測は出来るけど」
(^ω^∪)ヾ
例によって推測は教えて貰えず、ようやく話は最初に戻った。
モララーさんが僕らに言った、役割分担という話だ。
( ・∀・)「君らの提案通り、僕はまず市民を逃がすことに専念したい」
モララーさんが言うには、この結界をこじ開けるのは結構大変で、
更に市民が逃げる間維持しておく必要があるから付きっ切りになるとの事だ。
( ^ω^)「じゃあ、僕らが他の市民を探してモララーさんの所まで誘導してくればいいんですかおね?」
ξ゚听)ξ「それと、モララーさんの護衛ですね」
( ・∀・)「僕の護衛は結構……と言いたいとこだが、それはデレにやって貰うよ」
( ・∀・)「そして君らにやって貰うのは市民の誘導だけじゃない」
( ^ω^)「デミタスを倒す事ですおね?」
- 607 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 21:54:56 ID:t0Judkck0
( -∀-)「……君は馬鹿かね?」
モララーさんは大きなため息を吐き、大袈裟に首を振ってみせた。
さも呆れましたといわんばかりの態度に、僕はその理由を尋ねる。
( ・∀・)「君達が勝てる相手かどうか、この状況を見れば理解出来そうなものだがね」
(;^ω^)「それはまあ、厳しいとは思いますけど、だからって放置しておくのはどうかと思いますお」
( ・∀・)「放置しろ。それで、君達はこの湧き続けるレッサーデーモンをどうにかしてくれ」
取り付く島もなく、デミタスに会ったら逃げろの一点張りでモララーさんは僕らがやる事を説明する。
レッサーデーモンは恐らくこの結界内のどこかにある魔方陣から呼び出されてるはずだから、
それを破壊しろという事だ。
( ・∀・)「本来ならば僕がそちらに向かう方が効率がいいんだが、君じゃこの結界は解除出来ないらしいしな」
(;^ω^)「ええ、無理そうですお」
確かに、僕達じゃデミタスに太刀打ち出来ないというのなら、モララーさんに向かって貰う方がいい。
正論だが、僕はモララーさんの物言いに少し気になる所があった。
- 608 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 21:56:04 ID:t0Judkck0
( ^ω^)「てか、僕じゃ『結界を解除出来ないらしい』って、誰から聞いたんですかお?」
( ・∀・)「……僕の見立てだよ」
わずかな沈黙の後、そう答えたモララーさん。
明らかにウソっぽいのだが、これ以上の質問は許さんと目で訴えかけて来る。
( ・∀・)「ああ、それと、魔方陣は1つとは限らないからな?」
ξ゚听)ξ「それはどうやって探せばいいんですか?」
( ・∀・)「手段は任せる。レッサーデーモンの湧く方に向かえば自ずと見付かるだろうがね」
(∪^ω^)ヾ
( ・∀・)「……先ほどからこの犬は何をやっているんだね?」
( ^ω^)「え? ああ、何でしょうおね? どっか痒いのかお?」
(^ω^∪)ヾ
- 609 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 21:56:54 ID:t0Judkck0
モララーさんが指摘したように、先ほどからやたらと背中を掻いているわんわんお。
短い足で掻こうとしてるので、右に左にところころ転んでいて目に付くのだろう。
( ・∀・)「ノミでもいるのかね? 全く、これだから犬というのは……」
(;^ω^)「こまめに洗ってあげてるんですけどね」
( ・∀・)「そうかね? この辺とか結構汚れてるじゃないか? ほら、じっとしてなさい」
つ∪^ω^)
わんわんおをさっと抱き上げ、手馴れた手つきでブラッシングするモララーさん。
モララーさんはにこりともせず一通りブラッシングして、わんわんおを地面に下ろす。
何でそんな櫛を持っているのか聞きたくもあったが、そんな悠長な事をしていられる状況でもないので流しておいた。
( ・∀・)「さて、それでは分担作業……と行きたい所だが、正直な話、君達だけでは不安もある」
( ・∀・)「観客の中に腕の立つ冒険者は紛れてないのか? いるなら何人か連れて行くといい」
ξ゚听)ξ「先ほど聞きましたけど、この中にはいませんでした」
- 610 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 21:58:35 ID:t0Judkck0
( ^ω^)「でも、参加者の中に知り合いの腕の立つ人達がいますんで、まずは合流しようかと思いますお」
( ・∀・)「それが良い。まあ、クックルも同行させるので最悪、3人で何とかしてくれたまえ」
(;^ω^)「え? クックル……さんですかお? あの人と意思の疎通が図れる気がしないんですけど」
ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫だよー。便利な盾が出来たと思ってこき使っちゃってよ」
( ゚∋゚)" コクッ
ζ(゚ー゚*ζ「それと、呼び捨てでいいってさ。改まれるのは苦手だから、だって」
いつの間にか粗方レッサーデーモンを片付けたデレとクックルが、僕達のそばまで戻って来ていた。
コミュニケーションには不安があるものの、戦力的には申し分ないので僕らはクックルの力を借りる事にした。
( ^ω^)「よろしくお願いしますお」
( ゚∋゚)" コクッ
ξ゚ー゚)ξ∩「これが終わったら、また1つ手合わせをお願いしたい所ね」
( ゚∋゚) ・・・
- 611 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 21:59:36 ID:t0Judkck0
クックルの実力をその身をもってよく知っているツンが、笑顔で拳を突き出すと、
クックルは無言でその背に背負っていた布の袋の中身を漁り出す。
そして袋の中から何かを取り出すと、ツンの方に突き付けた。
スッ {''}
( ゚∋゚)つ|
ξ;゚ー゚)ξ「え? あの、これって……?」
(;^ω^)「花……だおね」
どういう状況なのか理解出来ていない顔でツンが僕の方を見る。
僕は見たままを答えるが、それがどういう意味かはよく理解出来ずにいた。
ζ(゚д゚;ζ「クックル、それ、どうしたの?」
(;-∀-)「……何をやってるんだ、お前は」
クックルの仲間であるデレ達にも、この状況は意外なものであったようだ。
クックルがどういう意図でそんなことをしたのか、デレに解説を頼みたかったのだが無理そうだ。
- 612 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 22:00:51 ID:t0Judkck0
( ・∀・)「前の戦いで君の力を認めたのだろう。敬意の表れと思って受け取ってくれるとありがたい」
( ゚∋゚)" コクッ
戸惑う僕らに、意外にもモララーさんがクックルの意図を説明してくれる。
モララーさんの性格を考えると、こんな時にと怒り出したりしそうな気もするのだが、案外寛容なようだ。
ξ;゚听)ξ「そ、そう? それなら……」
そう言いながらも僕の方をちらちらと見てくるツンに、僕は何度か頷いて見せた。
武人としての敬意を無碍にするのも無粋だと思う。
ξ゚ー゚)ξ「あ、ドライフラワーなのね。これなら崩れないかな」
(* ゚∋゚)
ツンが受け取った花をポーチに仕舞おうとする様を満足げに見詰めるクックル。
ツンは花を仕舞い終えると、クックルに大きく一礼をした。
ξ゚听)ξ「さあ、その魔方陣ってやつを壊しに行きましょうか」
( ^ω^)「おk」
( ゚∋゚)" コクッ
- 613 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 22:02:49 ID:t0Judkck0
( ・∀・)「そっちは任せるよ。くれぐれもデミタスに近付くんじゃないぞ?」
( ^ω^)「善処しますお」
( ・∀・)「厳守したまえ。いいね?」
(;^ω^)「無茶はしませんお。じゃあ、行きますお」
( ・∀・)「君は少し危なっかしい所があるね。大体……」
(^ω^∪)ヾ
(;^ω^)「あ……」
また僕の足元で背中を掻き始めたわんわんおに、モララーさんの鋭い視線が向けられる。
僕は慌ててわんわんおを抱き上げ、この場を去ろうとしたがモララーさんにがっしりと腕を捕まれてしまった。
( ・∀・)「……この子は僕のブラッシングが気に入らないというのかね?」
(;^ω^)「いや、そういうわけじゃないと思いますお。単に何か痒いだけかと……」
- 614 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 22:04:20 ID:t0Judkck0
( ・∀・)「良かろう。ならば徹底的にブラッシング……」
つ∪^ω^)
ζ(゚ー゚*ζ「先生、空気は読みましょうぜー?」
デレがモララーさんからわんわんおを取り返し、僕に手渡す。
ただでさえ先の説明で時間をとってしまってるのだから、急いで行動に移るべき場面だ。
( ・∀・)「しかしだね、デレ。これから戦いに赴くというのに、汚れたままの……」
ζ(-、-*ζ「しかしも案山子もありません」
反論するモララーさんに、ぴしゃりと言い切るデレ。
その手はモララーさんに見えないように、僕らに向けて行けという様に振られていた。
(;^ω^)" コクコク
ξ;゚听)ξ" コクコク
僕達はそれに従い、その場を小走りに離れて灰深き町の中央の方へ向かった。
- 615 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 22:06:30 ID:t0Judkck0
〜 メシューマの町 中央南部 <ミルナ> 〜
( ゚д゚)「ふむ、これで全部か?」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「その様だな」
辺り一面に散らばるモンスターの死骸。
あまりお目にかからないタイプのモンスターだったが、我々の敵ではなかった。
上空から急襲された時は肝を冷やしたが、あの程度でくたばる様な弱い者はこのパーティーにはいない。
(;-_-)「しかしレッサーデーモンとは……。何故悪魔がこんな所に……?」
(‘_L’)「当然、何者かが喚び出したのでしょう」
フィレンクトは『何者か』とは言ったが、それが誰なのかは恐らく皆理解しているだろう。
それが俺達が追う、灰衣の男だということは。
(;-_-)「一体何の為に……」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「それは今考えてもわからねえことさ」
- 616 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 22:09:29 ID:t0Judkck0
シブサワはタバコを吹かしつつ、皮肉めいた口調で答える。
些事に拘っても仕方がないと言いたいのだろうが、細かな見落としで足を掬われるのは勘弁願いたい。
(‘_L’)「これも奴の目的の一環と考えるのが妥当な所でしょうね」
( ゚д゚)「単純に戦力の増強か、それとも他に目的があるかだが……」
シブサワとは対極的に慎重なフィレンクトに俺も追随した。
このパーティーは慎重派と楽天派が綺麗に2つに分かれている。
今この場には慎重派が全員いるので、自ずとそちらの考え方が主導になる。
_、_
( ,_ノ` )y━・~「どういうった目的があるにせよ、最終的にやる事は変わらんだろ」
(‘_L’)「ええ、ですが進め方は若干変わって来ますよ」
シブサワとフィレンクトが今後の方策について話し合う間、俺は周囲の様子を探る事にする。
残念ながら先のレッサーデーモンの急襲でマルタスニム達は逃してしまった。
( ゚д゚)「出来れば、今回は灰衣の方に集中した方がいいかもしれんな……」
戦ってみてわかったが、あのクルゥという女は一筋縄では行かなさそうだ。
あれと本気で戦えば、こちらも相当消耗するであろう。
その状況で灰衣の相手もするとなると、正直な所、厳しいかもしれない。
- 617 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 22:11:19 ID:t0Judkck0
それに、他にも気がかりな事もあるのだ。
見物に来ているわんおちゃん達が無事なのかという事だ。
ブーンやツンならば大丈夫だとは思うが、この特異な状況ではやはり気になってしまう。
_
( ゚∀゚)「ミルナ!」
( ゚д゚)「どうした?」
考え事をしていると、前方から苦い顔をしたジョルジュが走って来て俺の名を呼ぶ。
悪い知らせであろう事は、きっと付き合いの短い人間でも気付くくらいのしかめっ面だ。
_
( ゚∀゚)「ハインがいねえ」
( ゚д゚)「……単独で追いかけたのか?」
_
( ゚∀゚)「恐らくはな」
すまないと頭を下げるジョルジュに、お前の所為じゃないと返す。
マルタスニムの方は放置しておきたかったが、そういうわけにも行かなくなりそうだ。
_
( ゚∀゚)「俺はハインを追う」
( ゚д゚)「今の状況を……いや、わかっていてもそうせざるを得んな。俺も行こう」
- 618 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 22:12:20 ID:t0Judkck0
この状況でパーティーを二分するのは上策ではない。
しかし、これは俺達3人の問題で、フィレンクト達には迷惑はかけられない。
もっとも、分かれることで既に迷惑をかけているようなものではあるが。
( ゚д゚)「フィレンクト達に別行動する事を伝えて……」
(‘_L’)「その必要はありませんよ」
いつの間にかフィレンクト達3人がこちらに向かって来ていた。
その顔を見るに、こちらの事情は察している様だ。
(‘_L’)「彼女らしからぬ行動ですね」
_
( ゚∀゚)「あいつは1人で勝手に突っ走る傾向があるからな。珍しくもねえさ」
(‘_L’)「……そろそろ誤魔化さずに本当の事を教えて欲しいですね」
_
( ゚∀゚)「何の事だ?」
(‘_L’)「2人とも、彼女の独断専行の理由に心当たりがあるのでしょう?」
_
( ゚∀゚)「そんなものは……」
(‘_L’)「ない、と言うのですか?」
- 619 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 22:14:04 ID:t0Judkck0
- _、_
( ,_ノ` )y━・~「お前らその辺にしとけよ」
ジョルジュとフィレンクトの間の剣呑な空気を、払う様に口を挟むシブサワ。
ジョルジュは何も言わず顔を背け、フィレンクトはシブサワに謝罪する。
(;-_-)「今は言い争っている時では……早くハインさんを追わないと」
( ゚д゚)「あんたも追うつもりなのか?」
(;-_-)「当たり前じゃないですか。ハインさんは仲間ですよ?」
俺達の目的を考えれば、勝手な行動をした者など放っておいて、灰衣の男の元に向かうのが筋なのだが、
ヒッキーはさも当たり前のようにハインを追う事を提案して来た。
更にフィレンクトもシブサワも、ヒッキーと同じ意見の様だ。
_、_
( ,_ノ` )y━・~「この状況で単独行動を放置しておくわけにもいかんだろ」
(‘_L’)「いくら腕の立つ彼女でも無謀が過ぎます。この状況で二手に分かれるのも愚策ですしね」
( ゚д゚)「……すまん」
- 620 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 22:15:59 ID:t0Judkck0
俺は3人に深く頭を下げ、上げた視線をジョルジュに向ける。
( ゚д゚ )「ジョルジュ」
_
( ゚∀゚)「……わかった。事情はハインを追いかけながら説明する」
出来れば隠しておきたかった話だが、事情を伏せておいてもなお、助けてくれるという仲間に話さないのも義理を欠く。
俺達はハインが向かったと思われる方向に目星を付け、走り出した。
(‘_L’)「彼女はマルタスニムと何かしらの因縁があるのですか?」
_
( ゚∀゚)「やっぱ気付くよな。ああ、そうだ」
( ゚д゚)「あいつはかつて、マルタスニムの実験の被験者だったらしい」
(;-_-)「それは……」
俺の言葉に表情を曇らせるヒッキー。
フィレンクトは得心したように軽く頷き、シブサワはわずかに眉を動かすのみだった。
( ゚д゚)「もっとも、俺達がマルタスニムという男の名のを知ったのはナカノヒトの騒動以降だがな」
- 621 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 22:17:31 ID:t0Judkck0
その話は今は亡き、かつてのハインの保護者だった者達に聞いた話だ。
幸か不幸か、ハイン自体はその事をよく覚えていない。
_、_
( ,_ノ` )y━・~「その割には、マルタスニムに対して殺意満載だったじゃねえか」
_
( ゚∀゚)「幼い頃、マルタスニムにさらわれたらしいからな」
_
( ゚∀゚)「だから、ハインの本当の両親はどうなったのか不明だ」
(‘_L’)「親の敵かもしれない、というわけですか」
( ゚д゚)「そうだ」
(-_-)「それならばハインさんが熱くなるのもわかりますが、何故我々を頼ってくれないのでしょうね」
( ゚д゚)「恐らく、巻き込みたくないと思っているんだろうな」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「……で、そのマルタスニムの研究の被験者だったって話だが」
(‘_L’)「ひょっとして、彼女も何らかの精霊の影響を受けているのですか?」
- 622 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 22:20:29 ID:t0Judkck0
- _
( ゚∀゚)「ああ」
( ゚д゚)「あいつにも精霊が憑いている」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「そいつは危険じゃねえのか?」
( ゚д゚)「危険かそうでないかで言えば、危険と言わざるを得ない」
一度それが発動してしまえば、敵も味方も関係なく、見境なく刃を向ける狂戦士と化す。
ハインに憑いている精霊が何なのかわかっていないが、
それが危険なものである事はこの身をもって十分に理解していた。
( ゚д゚)「ただ、恐らく実験が不完全だったのか、滅多に発動することはないが」
しばらく発動することはなかったので安心していたが、
よりにもよって俺達がいない時に発動して肝を冷やしたのはまだ記憶に新しい。
ブーン達とソクホウ近辺の島の地下迷宮に行った時の事だ。
あの時は意外なほどあっさり鎮まってくれたので助かったが、毎回そうであるとは限らない。
(‘_L’)「本人もその事は理解しているのですよね?」
- 624 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 22:22:43 ID:t0Judkck0
( ゚д゚)「ああ。だから今回、単独で向かったのだと俺は見ているがな」
これまでの経験上、ハインの中の精霊が発動するのは、生命の危険に陥った時か、極度に感情を爆発させた時だ。
仇敵であるマルタスニムを前にハインが感情を爆発させ、狂戦士化する可能性は極めて高い。
本人もそれがわかっているからこそ、単独で向かったのではないかと俺は考えている。
_、_
( ,_ノ` )y━・~「それならマルタスニムは嬢ちゃんに任せた方が……いいわけないか」
( ゚д゚)「狡猾な相手らしいからな。闇雲に暴れた所で勝てるとは思えん」
それに、マルタスニムはハインを改造した張本人である。
一見全く言葉が通じないように見えるクルゥを制御しているくらいだ。
何らかの対抗手段を持っている可能性もある。
_、_
( ,_ノ` )y━・~「そこまで理解していて、何で単独で走らせたかねえ」
( ゚д゚)「それを言われると返す言葉もない」
( ゚д゚)「あいつ自身もわかっていると思っていたのだが甘かった様だ」
俺はすまなかったと皆に頭を下げる。
ジョルジュも同じ様に目を伏せ、頭を下げていた。
- 625 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 22:24:42 ID:t0Judkck0
(-_-)「済んだことは仕方ありませんよ。お2人が悪気があって隠していたわけでないことはわかってますし」
(‘_L’)「そうですね。ですが、今後はそういう隠し事はなしにして欲しいですね。我々は仲間なのですから」
俺達はフィレンクトの言葉にもう一度頭を下げ、謝罪する。
余計な迷惑はかけられないと黙っていたが、結果的にこうやって迷惑をかけてしまっているのだから、
本当に申し訳ないと思う。
(‘_L’)「そういう話は全て終わってからにしましょう。今はハインさんを追うのが先決です」
_
( ゚∀゚)「だな。うし、急ぐぜ」
( ゚д゚)「うむ」
俺はジョルジュの言葉に力強く頷き、イブニングスターの柄の部分を押し込む。
(* ゚д゚)つ| | < ワンワンオ!
_
( ゚∀゚)「それは止めろ」
俺達はハインを追って、灰に満ちたメシューマの町をひたすら走り続けた。
- 626 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 22:26:23 ID:t0Judkck0
〜 ヴィップの町 魔法道具屋サンライズ <クー> 〜
川 ゚ -゚)「ありがとうございました。また来いよ」
買い物を済ませ、店を出て行く馴染みの冒険者に定型と親しみを込めた言葉で送り出す。
ブーン達がメシューマに向かってから数日、
ここ魔法道具屋サンライズは平々凡々とした極めて平和な時間が流れていた。
川 ゚ -゚)「忙しくもなく、かといって全くの暇ってわけでもない、と」
店番を任された身としては、もう少し忙しい方がやり甲斐もあると思うものの、
忙しすぎるのも疲れるのでこの位が丁度いいと満足している。
川 ゚ -゚)「そういえば今日が大会当日じゃなかったかな?」
私はカウンターの奥に置いてあった暦に目を向ける。
そこにはブーン達の旅の日程が記されてあった。
川 ゚ -゚)「やっぱりそうか」
- 627 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 22:27:37 ID:t0Judkck0
日程が予定通りに運んでいれば、既に大会は始まっている時間であろう。
ブーン達は大会に参加しないという事だが、参加するジョルジュ達の腕はよく知っているし、
ニューソク騎士団長であったフィレンクトまでいるのだ。
あの面子なら、何ら心配はする必要はない。
よっぽどの事がなければの話だが。
川 ゚ -゚)「よっぽどの事、か……」
しかし、この大会に関しては、そのよっぽどの事が起こり得る可能性があるのだ。
色々と不穏な点が見え隠れしている。
川 ゚ -゚)「やはり私も行くべきだったかな?」
私はカウンターの中に置いていた剣、ダイオードを手に取った。
今の私があの面子に混じって大会に出ても、足手纏いにしかならないのはよく理解している。
だが、私は私で出来る事もあるのだ。
川 ゚ -゚)「メシューマの上層部の動き……気になる所だな」
- 628 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 22:29:07 ID:t0Judkck0
この大会の開催において、まず気になる点はメシューマの上層部の態度である。
メシューマは、ニューソク王家の要求を完全に突っぱねた形で闘技大会を強行開催しているのだ。
川 - -)(ただ、これに関して不穏なのはメシューマだけの話じゃないんだよな……)
メシューマの強硬姿勢も謎だが、それ以上にニューソク側の対応も謎なのだ。
むしろ、不自然さではニューソク側の態度の方が上だと思う。
川 - -)(ニューソクは、いわばなめられているわけだ)
川 - -)(それに対して何ら動きがないのは、どうにも不自然と言わざるを得ん)
ニューソクとメシューマの関係はそれほど悪かったわけではない。
メシューマが自治都市化しているとはいえ、今回、ニューソクの要求を突っぱねた理由がわからないと思う。
川 ゚ -゚)(ニューソクの要求が理不尽なものだったのならいざ知らず、国の安寧の為に必要なことだったわけだからな)
千年紀絡みの話は、ニューソク王宮内では普通に知らされている話だ。
王が静観を決めたとしても、このような理不尽な態度に納得出来ない者も多数出て来ているのではないかと思う。
川 ゚ -゚)(だからこそ、フィレンクトが騎士団長を辞めたわけだし)
- 629 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 22:33:03 ID:t0Judkck0
フィレンクトだけでなく、教会のエージェントであるシブサワも今回の件には疑問を感じているからこそ、
フィレンクト達と行動を共にすることを選んだのだ。
その事実を考えると、今王宮内はあまり良い空気ではない可能性もある。
なんせ騎士団長が、王には従えないとはっきりと態度で示したのだ。
フィレンクトがそう表立って表明せず、辞職の理由をぼかして辞めていたとしても、
事情を知るものは王との決別だと捉えるだろう。
川 - -)(……ひょっとして、今王宮内はヤバい状況にあるんじゃないか?)
フィレンクトは人望のあった団長だし、そもそもこの朱玉の件、灰衣の男の件は騎士団全体の沽券に関わる問題だ。
それを蔑ろに済まされたとなると、フィレンクトだけでなく、もっと多くの騎士達が職を辞している可能性もある。
川 - -)(ただ、事はそれだけじゃない可能性もあるんだよな)
いくら何でもこの状況は不自然というか、父上、いや、
その補佐をしているビコーズさんがそうなる事を見越せないはずがないのだ。
川 - -)(そうなる事がわかってて静観を決めたとなると、何か考えがあるのか、それとも……)
私の頭の中を、ある考えが過ぎった。
ブーンやツンから聞いた、とある危惧の話だ。
私自身はそんなはずはないだろうと高を括っていたが、今の状況を鑑みれば、その可能性の方がしっくり来る。
- 630 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 22:36:04 ID:t0Judkck0
川 - -)(だとすると、狙いは何だ?)
もし父上が意図してこの状況を引き起こしたのだとすると、その目的が全く見えて来ない。
まさか千年紀の王の復活なんて話はないと思うが、
そもそも復活が目的なら、是が非でもメシューマから朱玉を得ようとするはずだから辻褄が合わないだろう。
川 ゚ -゚)(深く考えないようにしていたが、流石に見過ごすわけにもいかないかもしれんな……)
正直な所、私はまだ外の世界でやりたい事が沢山あり、王宮に戻りたくはない。
だがこの状況を放置して、自己都合を最優先させられるほど図太くは育っていない。
自分1人の力で何でも出来るとは思っていないが、
王族の1人として世が荒れようとしている状況を放っておく訳にも行かないのだ。
それが王族として生まれ育った責務である。
川 ゚ -゚)「名残惜しいが、ブーン達が戻って来たら、一度ソクホウに帰るかな」
そう呟き、未だ手の中にあったダイオードを仕舞おうとしていると、店のドアが開くベルの音が鳴った。
川 ゚ -゚)「いらっしゃいませ……って、珍しいな。どうした? いつヴィップに?」
- 631 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 22:37:49 ID:t0Judkck0
lw´‐ _‐ノv「ちょいと火急の用事でね」
サンライズのドアを開け、店の中に入って来たのはだいぶ前に南に旅立ったはずのシューであった。
いつも通り飄々とした佇まいに見えたが、何やら浮かない顔をしている様にも見える。
川 ゚ -゚)「うん? 急ぎの用事? 残念ながらブーン達はいないぞ」
lw´‐ _‐ノv「うん、それは把握しているよ。その店長の事でちょっとね」
川 ゚ -゚)「ブーンの? 何かあったのか?」
lw´‐ _‐ノv「あったというか、現在進行形であってるようだね」
川 ゚ -゚)「詳しく頼む」
シューの話によると、現在メシューマの町が大変な事になっているという。
ジョルジュ達が追う灰衣の男が姿を現し、ブーン達もその騒動に巻き込まれたとの事だ。
川 ゚ -゚)「いくつか質問があるのだがいいか?」
lw´‐ _‐ノv「おkですよ」
- 632 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 22:39:43 ID:t0Judkck0
川 ゚ -゚)「お前は何でそれがわかった?」
lw´‐ _‐ノv「そうだねえ。そう感じたから、と言えばいいのかな?」
川 ゚ -゚)「確証が取れてないのか?」
lw´‐ _‐ノv「いや、大事になってるのは確かだね。私にはわかるから、この異質さが」
シューが言うには、メシューマの方で人間界の物とは思えない、異質な魔力の存在が大きく膨れ上がっているという。
悪魔であるシューにはそれがわかるらしい。
川 ゚ -゚)「なるほど。しかし、何故ブーン達が巻き込まれていると?」
lw´‐ _‐ノv「それもまたわかるんですよ。ちょっと小細工してたんで」
川 ゚ -゚)「小細工?」
lw´‐ _‐ノv「簡単に言えば、こめにしきに危険察知用の魔法をかけてたってとこだね」
川 ゚ -゚)「こめ……わんおにか。いつの間に……。それ、ブーンは知ってたのか?」
lw´‐ _‐ノv「店長にはお守りとしか伝えてないね」
- 633 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 22:41:11 ID:t0Judkck0
シューの返答に、私は眉をひそめてみせる。
シューに悪意がないのはわかるが、それはブーンに断っておくべき事じゃないだろうか。
lw´‐ _‐ノv「仰る通りですな。申し訳ない」
川 ゚ -゚)「私に謝っても仕方ないだろ」
そうは言ったが、今回はそのお陰でブーンの危機を知る事が出来たのだし、良しとしよう。
シューが言うには、ちゃんとお守りの効果もあるらしく、危険察知はそのおまけという事らしい。
川 ゚ -゚)「しかし、それを聞いた所でここからメシューマまで3日は掛かる」
川;゚ -゚)「今から向かっても遅過ぎるだろ」
知らせてくれたのは有り難いと思うものの、それを聞いた所で私にはどうする事も出来ないのが現実だ。
lw´‐ _‐ノv「普通ならそうだね。でも……」
川 ゚ -゚)「でも……って、そうか、普通じゃないお前なら何とか出来るのか?」
私の言葉にシューはゆっくりと頷く。
何とか出来るからこそ、シューはここに来たのだろう。
- 634 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 22:43:07 ID:t0Judkck0
lw´‐ _‐ノv「私の馬車なら、ここから数時間でメシューマまで行ける」
川;゚ -゚)「馬車でか? どんな馬だよ」
シューの説明によると、シューの馬車を引いている馬は魔界から召喚した物らしい。
普段は力を抑えてあって、普通の馬と何ら変わらないらしいが、力を解放させれば凄まじい速度で走れるとの事だ。
lw´‐ _‐ノv「……ただ、いくら速いといっても、数時間はかかってしまう」
lw´‐ _‐ノv「着いた頃には全てが終わっている可能性もある」
川 ゚ -゚)「ああ、その可能性もあるな」
だからといってブーン達の危機を聞いた以上、行かないわけにもいかない。
間に合う可能性があるなら、それに賭けたいと思う。
川;゚ -゚)「しかしその速さで走られると、乗ってる方も大変だな」
lw´‐ _‐ノv「酔う所じゃすまんかもしれんね。行くの止めとく?」
川 ゚ -゚)「いや、行くさ。馬の扱いは慣れているし」
- 635 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 22:46:10 ID:t0Judkck0
私は早速店仕舞いをし、ダイオードを手にシャキンに事情を話しに行く事にした。
ついでにトソンも拾って行こう。
川 ゚ -゚)「しかし、何でわざわざ私を誘いに来た?」
川 ゚ -゚)「こう言っちゃ何だが、お前1人でさっさと向かった方が効率は良かったんじゃないか?」
lw´‐ _‐ノv「私は、基本的には人間界の争いごとには関わりたくないんでね」
川 ゚ -゚)「そういえばそんな話はしてたな」
確かに以前、シューからそんな話は聞いていた。
シューの目的や悪魔としての力、滞在期間の話の説明は受けていたし、そのスタンスには納得出来た。
ニューソク王家の人間としては、世の安寧を乱す事のないそういう考え方を有り難くも思っていたのだ。
しかしそのシューが、今回はばっちり関わろうとしているのが気に掛かる。
lw´‐ _‐ノv「店長には借りが沢山ある。それだけさ」
川 ゚ -゚)「義理堅い悪魔だな」
ただそれだけだと真面目な顔で言い放つシューに、私はほんの少し口の端を歪めた。
悪魔にもモテるとは、うちの店長は飛んだ色男である。
- 636 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 22:47:25 ID:t0Judkck0
lw´‐ _‐ノv「状況次第では私も介入するかもしれんが……」
川 ゚ -゚)「ああ、なるべくこっちで何とかしてみるよ」
駄目な時は頼むと、私はシューに頭を下げた。
私とトソンだけで何とか出来ればいいが、出来ない時はシューに頼むしかない。
だが今回は王家絡みの話でもあるので、ひょっとすると教会や聖騎士団も出張って来ている可能性もある。
その場にシューを出すのは躊躇われるので、なるべくなら力を使わせたくないとも思う。
lw´‐ _‐ノv「そこまで気にしてくれるのは嬉しいね。けど……」
川 ゚ -゚)「うん、最終的にはお前の判断に任せるさ」
ありがとうと今度はシューが頭を下げる。
ありがとうはこっちのセリフなのだが、私は気にするなと微笑み返しておいた。
川 ゚ -゚)「さて、まずはトソンを呼びに行くか」
トソンにも1から事情を説明しないといけないが、あいつは事情を聞かずとも手伝ってくれるだろう。
私を妄信し過ぎているのは少々問題だと思うも、こういう時は話が早くて助かる。
- 637 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 22:49:59 ID:t0Judkck0
川 ゚ -゚)「シューは馬車の準備をしてて貰えるか?」
lw´‐ _‐ノv「おーらい、ボス」
トソンに会ってまず先にトソンを馬車に向かわせ、私自身はシャキンに事情を話し、
後事を託してから馬車に向かうからとシューに説明する。
lw´‐ _‐ノv「ふむ、しばらくサンライズを閉めるわけだから、うちの手持ちの薬草とか置いていこうかね」
川 ゚ -゚)「それは助かるな。じゃあ、馬車をバーボンハウスに向けてくれ。そこで合流しよう」
lw´‐ _‐ノv「らじゃー」
私はシューと別れ、教会に向かって走る。
今回でサンライズでの仕事納めだと考えていたのだが、こんな風に終わるとは思いもしなかった。
私は1度だけ足を止め、サンライズの方を振り返る。
思い出深きあの店とも、長いお別れになるかもしれない。
川 ゚ -゚)「……よし、待ってろよ、ブーン、ツン、わんお!」
私はダイオードを握る手に力を込め、教会への道を急いだ。
第四十八話 西方の力、東方の光 終
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