- 113 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:18:40 ID:u4XTD2/c0
〜 ヴィップの町 南門 〜
( ^ω^)「帰って来たお、ヴィップの町」
ξ゚听)ξ「随分と久しぶりな気がするわね……って、前にもこんなやり取りあったわよね」
(∪^ω^)「わんわんお!」
川 ゚ -゚)「改めて見ると、やっぱ田舎だよな」
( ^ω^)「そこがいいんじゃないかお」
(゚、゚トソン「何にせよ、長旅お疲れ様でした」
(∪^ω^)「わんお!」
第四十二話 始まりの地にて
- 114 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:19:28 ID:u4XTD2/c0
( ^ω^)「さて、早速サンライズに帰るかお」
僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。
僕とツン、わんわんおにクーとトソン君は、聖骸布奪還、そして魔王の頭骨捜索という2つのクエストを終え、
ようやくヴィップの町に帰って来る事が出来た。
( ^ω^)「しかし、これだけ長い間ヴィップを離れたのは初めてだったお」
ξ゚听)ξ「前回、ショボンを送って帰って来た時も同じような事言ってたわね」
川 ゚ -゚)「何かソクホウに着いた時より、帰って来たって気がするな」
(゚、゚トソン「クー様は随分とヴィップに馴染んでおられますからね」
( ^ω^)「バーボンハウスでバイトしてるからか、町の人の事、僕より詳しかったりするおね」
僕達は取り敢えずここで解散し、各自家に帰る事にした。
馬はソクホウのギルドで借りたので、返すのはヴィップのギルド、つまりはバーボンハウスだ。
クーがバーボンハウスに寄るらしいので、馬はクーとトソン君にお願いする事にした。
- 115 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:21:21 ID:u4XTD2/c0
( ^ω^)「そんじゃ、色々とお疲れ様だお」
川 ゚ -゚)「またいいクエストがあったら誘うからな?」
(;^ω^)「しばらく遠出は勘弁だけど、わかったお」
(∪^ω^)「わんわんお」
僕とツンとわんわんおはクー達と別れ、町中を北に進む。
途中でツンとも別れ、僕とわんわんおは愛しの我が家、サンライズに帰り着いた。
( ^ω^)「今回は名前は変わってないおね」
llw´‐ _‐ノv「おや、珍しい顔が」
( ^ω^)ノ「おいすー。ただいまだお、シュー」
(∪^ω^)「わんわんお!」
サンライズに着くと、店の横で店舗として営業している馬車の中からシューが声を掛けて来た。
魔法農具屋サンライスは絶賛営業中らしい。
( ^ω^)「長期間すまんかったお」
llw´‐ _‐ノv「なに、別にかまわんよ。店長には借りがあるし、私は商売が出来ればそれでいいんでね」
- 117 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:22:50 ID:u4XTD2/c0
( ^ω^)「農具の売れ行きはどうだったお?」
llw´‐ _‐ノv「ふむ、それを聞くかね」
llw´‐ _‐ノv「そうだね、限りなくゼロに近い透明な売り上げとでも述べておこうか」
(;^ω^)「要するにまだ売れてないんだおね。聞いてすまんかったお」
llw´‐ _‐ノv「積もる話はあるだろうが、まずは荷物を降ろし、旅の埃を落として来てはいかがな?」
( ^ω^)「じゃあ、悪いけどそうさせてもらうお」
(∪^ω^)「わんお!」
僕はシューに引き続き店番を頼み、サンライズのドアを開ける。
中に入ると、カウンターの中に意外な顔があった。
lw´‐ _‐ノv「おや、遅いお着きで」
( ^ω^)「……瞬間移動かお?」
(∪^ω^)「わんお?」
- 118 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:23:44 ID:u4XTD2/c0
何故か先ほどサンライズの前で別れたはずのシューが店の中にいた。
わざわざそんな高度な魔法を使わずとも、サンライズに客が来た時に一緒に中に入ってくれば良さそうな物だが。
lw´‐ _‐ノv「何か勘違いをしているようだね」
( ^ω^)「お?」
lw´‐ _‐ノv「私は外にいたシューとは違うシューだよ?」
(;^ω^)「お? どういう……」
シューの説明によると、最初は1人で店番をしていたらしいが、時にサンライズが忙しい時も出て来たので、
2つに分かれる事にしたという。
(;^ω^)「その、2つに分かれるの時点で色々とワケワカメなんだけど……」
lw´‐ _‐ノv「あらかじめ宣言しておいたじゃないか?」
そういえば店番を頼んだ時、そんなことを言っていた気もする。
まさか実際にやるとは思っていなかったが、悪魔であるシューには造作もないことのようだ。
- 119 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:25:34 ID:u4XTD2/c0
lw´‐ _‐ノv「転移魔法だと魔力を消耗するからね。これなら力が半分になるだけので消費量は変わらない」
( ^ω^)「効率的な話で言えば納得出来るけど、人間にとっては無茶苦茶過ぎる手段だお」
lw´‐ _‐ノv「そうかい? 町の皆は魔法だと言ったら納得してくれたが?」llw´‐
_‐ノv
ドアを開け、外にいたシューも中に入って来る。
離れていても情報の伝達は図れるらしい。
魔法に詳しくない人が見れば、そんなことも出来るんだぐらいの感覚で納得出来るのだろうが、
これが魔法だとすると高度過ぎるというのは魔法使いなら誰でも気付くだろう。
分身体を作って動かすぐらいならともかく、それに自立した意識を持たす事は相当困難だ。
( ^ω^)「まあ、特に問題起こってないならいいんじゃないかお」
( ^ω^)「でも、農具売れてないんだったら、1人で良かったんじゃないかお?」
llw´‐ _‐ノv「薬草おにぎりはサンライスの方で売っていたんでね」
lw´‐ _‐ノv「薬草パンはサンライズで」
- 120 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:26:57 ID:u4XTD2/c0
(;^ω^)「売り場統一すればいい話じゃないかお?」
llw´‐ _‐ノv「まあ、いつか農具が売れるかも知れなかったからね」
lw´‐ _‐ノv「サンライスを空けたくなかったというのもある」
lw´‐ _‐ノvllw´‐ _‐ノv「結果は見事に惨敗だったがね。HAHAHA」
(;^ω^)「サラウンドで笑わないでくれお」
(∪^ω^)「わんおー」
事情は理解したので、引き続き店番をシューに頼み、僕は自分の部屋に戻る。
定期的に換気はしてくれていたのか、僕の部屋はあまり埃っぽい感じはしなかった。
( ^ω^)「色々と助かったお。これ、お土産だお」
僕は旅の荷を降ろし、着替えると店内に戻った。
そしてシューにソクホウ土産を手渡す。
lw´‐ _‐ノv「おや、わざわざすまんねえ。……ん? これは?」
- 121 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:28:06 ID:u4XTD2/c0
( ^ω^)「見ての通りネックレスだお。そう高いものじゃなくて申し訳ないけど」
lw´‐ _‐ノv「あらあら、こういう贈り物は初めてですのよ。嬉しいわ」
何だか変な口調だが、シューは喜んでくれたようだ。
ネックレスを両手で持ってくるくる回っている。
lw´‐ _‐ノv「しかし、ブーン店長に女性にこんな贈り物が出来る甲斐性があったとは驚きだね」
(;^ω^)「うん、実はそれ、ツンがそういうものがいいんじゃないかと提案してくれたんだお」
(∪^ω^)「わんおー」
僕が最初にお土産にしようと考えたのは、
米好きのシューに合うと思って選んだ日持ちのきく様に加工された、保存食用の米だった。
しかし、流石にそれは無いとツンに怒られ、変更したのだ。
lw´‐ _‐ノv「それはそれで興味はあったが、まあ、店長のセンスは疑うね」
(;^ω^)「やっぱりかお? 一応そっちも買って来たけどいるかお?」
lw´‐ _‐ノv「うむ、頂こうか」
そう言うとシューは早速包みを開け、米をつぶさに観察を始める。
その熱心に観察する様を見ると、やっぱり土産はこっちでも良かったんじゃないかと思うほどだ。
- 122 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:29:22 ID:u4XTD2/c0
lw´‐ _‐ノv「味はイマイチだね」
( ^ω^)「まあ、保存食だから。しかし美味い保存食が作れれば、需要はあるかもしれんおね」
(∪^ω^)「わんわんお」
そこから米の可能性と新商品のアイデアについて議論し、時を過ごした。
また魔法道具屋と関係ない商品だとツンに怒られそうだが、携帯食料の新たな可能性を少し見出せたかもしれない。
lw´‐ _‐ノv「今日はこのままサンライズの店番もやるのかね?」
( ^ω^)「あ、出来れば今日までシューに頼みたいんだけど」
lw´‐ _‐ノv「それはかまわんが、帰って早々何か用事かね?」
( ^ω^)「ちょっとドクオさんに会いに行こうかと」
今回の旅の事、今後の話と僕はドクオさんに相談したい事があった。
それと、イチサンの話、ドクオさんの過去についての話も聞きたい。
出来れば早い方がいいと考えていたので、シューに僕が戻るまで店番を頼む事にした。
- 124 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:31:30 ID:u4XTD2/c0
( ^ω^)「すまんお。もし忙しくなりそうなら、クー達も戻ってるのでバイトに入れる事も出来ると思うお」
lw´‐ _‐ノv「彼女達も旅疲れしてるだろ? なに、大丈夫。いざとなったらもう1人分かれればいい」
(;^ω^)「そういう解決法はどうかと思うけど、まあ、頼むお」
llw´‐ _‐ノv「前にも1度忙しい時があって、その時も増やしたから問題ないさ」
(;^ω^)「やったのかお……って、また2人に増えてやがるお。見分けつかんし紛らわしいお」
lw´‐ _‐ノv「私の事はシュー一と呼びたまえ」
llw´‐ _‐ノv「私はシュー二だ」
(;^ω^)「だから見分けつかんって言ってるお」
(∪^ω^)「わんおー」
lw´‐ _‐ノv「3人目はシュー三だったのだが」
llw´‐ _‐ノv「前に分かれた時はうるさいは暑苦しいはで、あまり役に立たなかったのよね」
(;^ω^)「意味わからんけど何かわかったお」
- 126 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:33:54 ID:u4XTD2/c0
(;^ω^)「てか、分かれるのは今日限りだろうから、名前とかどうでもいいお」
lw´‐ _‐ノv「つれないねえ」
llw´‐ _‐ノv「名前、それは萌える生命だというのに」
(;^ω^)「とにかく、店番頼むお。わんお、行くお」
(∪^ω^)「わんわんお!」
僕はわんわんおと共に店を出て、ドクオさんの庵に向かう。
ドクオさんがもう、戻って来てるといいのだが。
( ^ω^)「行ったら行ったで、どう話を切り出そうかおね……」
(∪^ω^)「わんおー?」
千年紀の王の話をすると、また何にでも首を突っ込みやがってと怒られるのだろう。
それは仕方ないし、関わってしまった事も仕方がない。
ただ、王宮での事やイチサンでの事は聞き辛いものがある。
特にイチサンでの話は、ドクオさんにとっては辛い過去の事だ。
無闇に聞いていいものか迷う所だ。
- 127 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:34:57 ID:u4XTD2/c0
( ^ω^)「これまで僕に話さなかった理由を考えると……」
何度かドクオさん自身の昔話をしてくれと頼んだ事も、子供の頃にはあったと思う。
他意のない、純粋な興味からの質問だったがその都度はぐらかされたのは覚えている。
( ^ω^)「そりゃ子供に聞かせられるような話じゃなかったのかもしれないけど……」
そう考えるとドクオさんが話してくれなかったのは当然の事だと思う。
しかし、少しだけ僕の中に引っかかる物があるのも事実だ。
( ^ω^)「もしドクオさんが……」
僕は首を振り、一瞬浮かんだ想像を振り払う。
そんな事はありはしないとわかっていても、心のどこかに張り付いた不安は拭い去る事は出来ない。
( ^ω^)「……まあ、行ってみてから考えるお」
(∪^ω^)「わんお!」
僕は歩を早め、ドクオさんの庵に向かう。
まだ高い日が僕らを強く照りつけた。
- 129 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:36:39 ID:u4XTD2/c0
〜 モオト湖周辺 ドクオの庵前 〜
( ^ω^)「……いないお」
(∪^ω^)「わんお」
結界を解除し、庵の玄関から中に呼びかけるも返事はない。
どうやらドクオさんはまだ戻って来ていないらしい。
( ^ω^)「随分と長旅だおね。どこに行ってるんだお?」
(∪^ω^)「わんわんおー?」
僕は主のいない庵に上がり込む。
普段からあまり掃除が行き届いているとはいえない室内は、ドクオさんがこまめに帰って来ているのか、
長期間不在なのかはわからない。
( ^ω^)「こうして勝手に入るのは初めてだおね……」
僕がここを訪れた時、ドクオさんがいなかった事はなかったと思う。
元々出不精な人だ。
- 130 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:38:15 ID:u4XTD2/c0
( ^ω^)「しっかし、汚い廊下だおね」
(^ω^∪)...「わんおー」
( ^ω^)「気持ちはわかるけど、もうちょっと付き合ってくれお」
僕は帰りたそうな顔をしたわんわんおと一緒に、いつもドクオさんと話すリビングに向かう。
(;^ω^)「弟子としては掃除の1つもするべきかもしれないけど……」
(^ω^∪)...「わんおー」
(;^ω^)「だから帰ろうとしないでくれお」
どうやらドクオさんはあれでも一応、僕らが来る時は掃除をしてくれていたようだ。
普段のリビングはよくわからないゴミが色々と散乱していた。
( ^ω^)「研究室は結界で入れそうもないおね。私室も駄目と」
結局、リビングと台所や風呂とトイレぐらいしか入れないようだ。
一応は賢者と呼ばれる人だ。
不在の間の泥棒などの対策に、研究室に厳重な結界を張る理由は理解出来る。
- 131 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:39:36 ID:u4XTD2/c0
( ^ω^)「結局、リビングぐらいしか見るものがないおね」
僕は持って来ていたドクオさんへの手土産、アニジャさんから渡されたモテモテ通信の最新号と、
没になった企画が載った幻の未発売の号をリビングのテーブルの上に置いた。
( ^ω^)「……帰るかお」
(∪^ω^)「わんお!」
僕の言葉に妙に嬉しそうに鳴いたわんわんおは、勢い良く走り出そうとした。
しかし、焦り過ぎたのかリビングの端にあった机に思いっきりぶつかってしまう。
(∪´ω`)「わんおー……」
(;^ω^)「ちょ、大丈夫かお? ああ、机の上の物が散らばっちゃったお」
僕は机の上から落ちたよくわからないメモとか、本とかを片付ける。
研究室に置かず、ここに置いてある本は大して価値のない物なのだろう。
(∪´ω`)「わんわんおー……」
- 132 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:40:56 ID:u4XTD2/c0
( ^ω^)「すぐ片付くからそんなに落ち込まなくていいお。今日は付き合ってくれてありがと……お?」
しゅんと蹲るわんわんおの後に、何か棒の様な物が落ちている。
恐らくわんわんおがぶつかった際に落ちた物だろう。
( ^ω^)「何だお、これ……?」
棒だと思ったが、手に取ってみるとそれが杖だという事がわかった。
木製の、装飾は少ないがしっかりとした作りで、手によく馴染む。
( ^ω^)「何か見覚えがあるような……これと、この景色と……えっと……」
一瞬、何かの景色が浮かんだ気がしたがすぐに霧散してしまった。
いつだったか、以前にも見た記憶のフラッシュバック。
( ^ω^)「暗い部屋が……魔法陣……? 何だっけかお……」
記憶の糸を手繰り寄せようとしても何も思い浮かばず、僕は諦めて杖の調査に戻る。
( ^ω^)「先端に石が付いてるけど……随分とみすぼらしい石だおね」
杖に宝石や魔法鉱石などの石を取り付け、術式を施して魔法の増幅力を高めたりするのはよくある事だ。
当然、宝石や魔法鉱石の質でその効果は変わる。
- 133 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:42:50 ID:u4XTD2/c0
今、この杖についているのは灰色の、その辺りにいくらでも転がっていそうな石だ。
一応研磨はされているが、増幅力には期待出来ないのではないかと思える。
( ^ω^)「術式もよくわからんお。てか、結界っぽい? 何か変わってるお」
( ^ω^)「しかしこの杖、どこかで見たような気もするけど……まあ、これもあとでドクオさんに聞くお」
(∪^ω^)「わんわんお!」
僕が杖を机に置こうとすると、わんわんおが吠える。
思わず手を止め、杖をよく見ると、杖の裏側に何か紙片らしき物が貼り付けてあった。
( ^ω^)「お? これは……」
折り畳まれた紙を開くと、そこにはミミズの這った様な汚い字で、短い文章が書かれていた。
『ブーンへ やる 好きに使え』
( ^ω^)「このへったくそな字、ドクオさんの字だおね……」
(∪^ω^)「わんおー」
- 134 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:44:48 ID:u4XTD2/c0
( ^ω^)「って事は、この杖を僕にくれるって事かお?」
僕は改めて杖を握り直す。
作りは悪くないし、持ちやすくあるが、魔法の増幅力があまり期待出来ないのはマイナス点だ。
( ^ω^)「いや、まだこれがポンコツって決まったわけでもないおね」
単に僕がこの杖の力を理解出来ていないだけの可能性もあるのだ。
しかし、どうにもみすぼらしい外見の所為で、あまり良いものに見えないのも確かである。
( ^ω^)「どういうつもりなんだお、ドクオさんは?」
何で杖をくれたのかという事も、何で急にくれたのかという事も、
何でこんなわかり辛い場所においてあったのかという事も、どれも僕にはわからない。
( ^ω^)「うーん……ひとまず持って帰ろうかお」
(∪^ω^)「わんお!」
僕はドクオさんの庵を後にし、サンライズに帰る事にした。
- 135 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:46:08 ID:u4XTD2/c0
〜 魔法道具屋サンライズ 〜
lw´‐ _‐ノv「……で、これが持ち帰って来た杖だと」
( ^ω^)「そうだお」
(∪^ω^)「わんわんお!」
サンライズに戻った僕は、シューにドクオさんの庵で見付けた杖の話をしていた。
シューは杖を受け取るとそれをつぶさに観察している。
lw´‐ _‐ノv「随分と面白い杖だね」
( ^ω^)「面白いかお?」
僕が見た所、確かに何の変哲もない杖とは言い難いが、
どちらかといえばあまり面白みのない杖に見えてしまう。
( ^ω^)「だいぶ手間は掛かってると思うけど、それにしてはちょっとみすぼらしいおね」
- 136 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:47:41 ID:u4XTD2/c0
lw´‐ _‐ノv「一見するとそう見えるが……」
( ^ω^)「実は何か仕掛けがあるとでもいうのかお?」
lw´‐ _‐ノv「あるかもしれんし、ないかもしれん」
(;^ω^)「何かわかったわけではないのかお」
(∪^ω^)「わんおー」
lw´‐ _‐ノv「うむ、わからん。特にこの石がね」
そう言ってシューは杖の先端にある灰色の石を指差す。
確かにこの杖の中ではそこが一番よくわからない点であろう。
( ^ω^)「何だろうおね、この石? 何かの原石かお?」
lw´‐ _‐ノv「それにしては形が整い過ぎてるのではないかね?」
見た目はみすぼらしいが、ちゃんと研磨して形を整えてあるのは見ればわかる。
問題は何故こんなみすぼらしい石をわざわざ加工して杖に付けたかだ。
- 137 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:49:08 ID:u4XTD2/c0
( ^ω○)、「ちょっと見てみるかお」
僕はルーペを取り出し、石をよく見る。
しかし、調べてみても、正体を突き止めるこれといった手がかりは見付からなかった。
( ^ω^)「ありふれた石に見えるけど、微妙に違う気もするお」
職業柄、鉱石や宝石にはそれなりに詳しい僕だが、この石が何なのかはわからない。
逆に言えば、それが手がかりの1つになるかもしれない。
lw´‐ _‐ノv「店長が知らない、希少な石ってことかい? みすぼらしいけど」
( ^ω^)「その可能性はあるお。みすぼらしいけど」
(∪^ω^)「わんお!」
( ^ω^)「ドクオさんがくれた物だし、きっと悪い物じゃないと思うんだおね」
ドクオさんがわざわざ僕に、という手紙を添えた杖だ。
使い物にならないものを僕に渡すわけが無いと思う。
- 138 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:50:18 ID:u4XTD2/c0
何故このタイミングでこんな物をくれたのかは、僕が見付けたのが偶然に等しいので、
本来はドクオさんが意図したタイミングではない可能性を考慮すると、考えても無駄かもしれない。
ただ、僕にとってはありがたいタイミングではある。
キマスタの町でモララーさんに杖を破壊され、臨時の代用品としてソクホウでこしらえた杖を使ってはいるが、
その内ちゃんと作り直すつもりではあったのだ。
もし使えるものならその手間がなくなる。
lw´‐ _‐ノv「まあ、きっと使えるものだと思うね」
( ^ω^)「お? どうしてだお?」
lw´‐ _‐ノv「店長は彼、ドクオちんを信じているのだろう?」
( ^ω^)「お……、それは……」
勿論信じている。
そう答えるはずの僕の口は半開きで固まり、言葉を発する事は無かった。
lw´‐ _‐ノv「……旅先で何かあったのかね?」
( ^ω^)「……うん」
- 140 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:51:11 ID:u4XTD2/c0
口ごもる僕に、シューは話したくなければ話さなくてもいいとやさしく言ってくれる。
あの話は今の所、誰にもしていない。
ツンに相談しようと思ったが出来なかった。
話してしまって、ツンとドクオさんの関係がぎくしゃくするのを見るのが嫌だったからだ。
ツンはドクオさんにきつく当たっている様に見えるが、それは子供の頃から変わらない。
それは第一印象が悪かっただけで、別に嫌っているわけではないのだ。
子供の頃からの付き合いを変えずにいられるくらいは、ツンとドクオさんの仲は良いのだと僕は思っている。
僕が思っているだけだったらどうしようと思う事もあるが、2人の事は、僕はよく知っているつもりだ。
( ^ω^)「親の仇って、やっぱり絶対許せないものかおね?」
lw´‐ _‐ノv「ふーむ……どうだろうねえ?」
lw´‐ _‐ノv「たとえば自分の親が極悪人で、それが正当な理由のある相手に殺されたとして」
lw´‐ _‐ノv「その場合、理屈では理解出来るかもしれない」
lw´‐ _‐ノv「だが本能的な部分、感情で許せるかはわからないかもしれない」
( ^ω^)「そういうもんかお?」
lw´‐ _‐ノv「親の事を好いていれば、という前提は付くかもしれないがね」
- 141 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:52:48 ID:u4XTD2/c0
僕自身は、その辺りの事を正しく理解する事が出来ないのかもしれない。
なんせ両親の事を全く覚えていないのだ。
ただ、親の部分をじいちゃんやドクオさんに当てはめれば、僕にも理解出来るのかもしれない。
( ^ω^)(そうなんだおね……ドクオさんは僕にとって……)
lw´‐ _‐ノv「今の話、ドクオちんに関わってくるのかね?」
( ^ω^)「お……、それは……てか、ドクオちんって」
lw´‐ _‐ノv「苦虫君は止めてくれというので、ちゃんとした名前で呼ぶようにしただけじゃないか」
( ^ω^)「それはわかるけど、ちんはないお」
lw´‐ _‐ノv「ん? ちんは人間世界で尊称ではないのかね? 昔の偉い人が使ったとかいう」
(;^ω^)「多分、どこかで情報が捩れてるお。尊称っちゃあ尊称だけど、一人称に使う物だお」
lw´‐ _‐ノv「むう、ではツンちんとかクーちんとかトソンちんとか呼ぶとまずいのか……」
(;^ω^)「馬鹿にしてるように聞こえるから、止めた方がいいお」
- 142 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:54:35 ID:u4XTD2/c0
lw´‐ _‐ノv「こめにしきちん」
∩(∪^ω^)∩「わんお!」
( ^ω^)「だからわんおはこめにしきじゃねえお。わんおも芸はしなくていいお」
馬鹿にしている様に聞こえるなら、そう呼ぶのはドクオさんだけにするというシュー。
わかって使う分にはかまわないと思うので、僕はそれを流す事にした。
lw´‐ _‐ノv「で、ドクオちんの話だが」
( ^ω^)「……ちょっと話を聞いてもらってもいいかお?」
結局僕はドクオさんの事をシューに相談する事にした。
考えてみれば僕やドクオさん所か人間界全体と因縁浅いシューならば、大賢者の名に捕らわれる事もなく、
一番第三者的な目線で公平に見てくれるかもしれない。
人間と悪魔という感性の違いはあるかもしれないが、これまで付き合った感じからすると、
シューならば人間の思考に基づいて考えてくれそうだ。
( ^ω^)「実は、今回の旅先、イチサンの町でドクオさんの過去の話を聞いたんだお」
- 143 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:55:17 ID:u4XTD2/c0
僕はシィさんから聞いたドクオさんの過去についての話をシューに伝える。
シューは時折り相槌を入れながら、最後まで黙って話を聞いていた。
lw´‐ _‐ノv「なるほどね。それで親の仇か……」
( ^ω^)「ドクオさんから見れば、僕のじいちゃんがそうなるんだお」
lw´‐ _‐ノv「先の例とは少し違うが、理屈で考えれば、店長の祖父殿に否も無いと」
( ^ω^)「無いかどうかは断言出来ないけど、話を聞いた限りでは、仕方が無かった事と扱われていると思うお」
lw´‐ _‐ノv「しかしそれにドクオちんが納得いっているかどうかは……」
( ^ω^)「わからないんだおね……」
理屈ではない部分、感情の部分でドクオさんがどう思っているかは僕にはわからない。
僕にはじいちゃんと暮らしていた時のドクオさんが、じいちゃんを恨んでいたようには見えなかったが、
所詮は子供の目で見てだ。
それが本当にそうだったかはわからない。
そしてドクオさんがもし、じいちゃんを恨んでいたとしても、それは不思議な事ではない。
両親の顔を知らない僕だって、例えばじいちゃんが誰かに殺されていたのなら、きっとその人の事を恨むだろう。
- 144 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:56:13 ID:u4XTD2/c0
lw´‐ _‐ノv「だが店長は、ドクオちんの事を信じているのだろう?」
( ^ω^)「お……」
先ほどと同じ質問に、また僕の口は言葉を紡げずにいる。
しかし僕の中には、共に過ごしたドクオさんとの思い出が浮かんでいた。
初めて習った魔法は、弱い風を起こす魔法だった。
いつも走り回っていて遊んでいた僕に合う魔法は風の魔法だろうと、ドクオさんが教えてくれた。
ドクオさんもじいちゃんも、料理はあまり得意ではなく、たまにとんでもない味の料理が出て来ることもあったけど、
それでも一生懸命作ってくれていた事は覚えている。
僕が高熱を出して寝込んだ時、ずっと看病してくれた事もあった。
思い返せば、いつもそこにあったドクオさんの顔。
僕を育ててくれたと言うには、少々周りの人に助けられ過ぎていたと思うが、それでもドクオさんは、
僕にとって親代わりである人の1人である事に変わりはない。
( ^ω^)「僕は……」
僕はドクオさんがくれた杖を握り締める。
見付けた時、どこかで見覚えがある気がしたのだが、昔じいちゃんが持っていた杖に似ているかもしれない。
- 145 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:57:23 ID:u4XTD2/c0
( ^ω^)「僕はドクオさんの事を信じてるお。だからこの杖、使ってみるお」
lw´‐ _‐ノv「うむ、店長がそう思うのならそれでいいんじゃないかな」
そう言ってシューは穏やかに笑ってくれる。
まだ色々と気にかかる事は多いが、僕はドクオさんを信じると決めた。
ドクオさんだけではなく、じいちゃんもだ。
ドクオさんもじいちゃんも、2人共を信じている。
僕を育ててくれた、2人を信じているのだ。
( ^ω^)「話聞いてくれてありがとだお。何か少しすっきりしたお」
lw´‐ _‐ノv「ふむ、すっきり爽やか賢者時間というやつかね」
(;^ω^)「多分違うと思うお」
(∪^ω^)「わんわんお!」
( ^ω^)「わんおもありがとだお。わんおが杖を見付けてくれて良かったお」
(∪*^ω^)「わんお!」
- 146 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:58:57 ID:u4XTD2/c0
僕はわんわんおを抱き上げ、その頭を撫でる。
何1つ解決したわけでもないけれど、僕の気持ちは整理出来た。
それだけで、何だかだいぶ気が楽になったと思う。
( ^ω^)「さあ、すっきりした所で張り切って仕事するかお!」
(∪^ω^)「わんわんお!」
lw´‐ _‐ノv「ところがぎっちょん」
llw´‐ _‐ノv「もう閉店時間ですな」
(;^ω^)「お、もうそんな時間かお……って、また2号もいるのかお」
いつの間にか店内にサンライスの方にいたシューも入って来ていた。
気付けば既に閉店時間は過ぎている。
思ったより話し込んでしまっていたようだ。
(;^ω^)「つーか、僕がいる時全然客が来なかったお……」
lw´‐ _‐ノv「まあ、そういう時もある」
llw´‐ _‐ノv「明日は明日の風が吹くさ」
- 147 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 22:01:09 ID:u4XTD2/c0
( ^ω^)「ま、そういう事にしとくかお」
(∪^ω^)「わんお!」
僕は苦笑を浮かべ、お店の片付けを始める。
明日からまた、繁盛させられるようにがんばらねばならない。
( ^ω^)「シューは明日からどうするんだお?」
( ^ω^)「まだヴィップにいるなら、そこで営業するのはかまわないお」
lw´‐ _‐ノv「ふむ、そうだねえ……」
llw´‐ _‐ノv「農具が売れなかったから、また旅しながらアイデアを考えるかね」
lw´‐ _‐ノv「うむ、それがいいかもしれんね」
( ^ω^)「そりゃ残念だお。またいつでも好きな時にサンライズに寄ってくれお」
llw´‐ _‐ノv「店長も、また私の力が必要な時はいつでも呼びたまえ。
( ^ω^)「呼べ゙と言われて呼べるもんでもないけど、その時はまたお願いするお」
- 148 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 22:02:00 ID:u4XTD2/c0
( ^ω^)「今回はホントに助かったお。ありがとだお」
僕はそう言ってシューに改めて頭を下げる。
長期間の店番も、ドクオさんの話を聞いてくれたことも、すごく助かった。
その後、片づけを済ませた僕達はバーボンハウスに向かった。
シャキンさんへの顔見せと、シューの送別会も兼ねて晩ご飯を取る事にしたのだ。
( ^ω^)ノ「おいすー。お久しぶりですお」
(`・ω・´)「おう、ホントに久しぶりだな、このサボり魔法道具屋が」
(∪^ω^)「わんわんお!」
(*`・ω・´)「久しぶりだね、わんおちゃん、元気してたかい?」
つ∪^ω^)
( ^ω^)「うん、僕とわんおで扱いに雲泥の差があるおね」
(`・ω・´)「シューちゃんも一緒か。今回は随分とこの馬鹿が迷惑かけたな」
lw´‐ _‐ノv「いえいえ。私が少しでもこの町の役に立てたのなら幸いですよん」
- 149 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 22:03:24 ID:u4XTD2/c0
シューもいつの間にか随分と町に馴染んでいるらしい。
僕の代わりにギルドや冒険者の相手をしてくれていたのだから、それも当然といえば当然の事だ。
シューがまた旅に出ると聞いて、シャキンさんやバーボンハウスにいた冒険者の連中は心底残念がっていた。
いっそ僕の代わりにずっとサンライズの店長をやっていればいいのになんて言葉も聞こえてきたが、
それだけシューがヴィップに馴染んだのなら、それはそれで悪い気はしないと思う。
(`・ω・´)「おっと、ツン達も来てるぞ? ほれ、あっちだ」
( ^ω^)「お、じゃあ、僕らも相席させてもらおうかお」
僕達はツンとクー、それにトソン君が座る席へ向かう。
3人とも自宅で一休みした後、晩ご飯を食べにバーボンハウスへ来たらしい。
ツンはクーに誘われて半ば無理矢理だったらしいが。
ξ゚听)ξ「じゃあ、シューはもう行っちゃうんだ」
lw´‐ _‐ノv「うむ、明日には旅路の空の下だね」
川 ゚ -゚)「そんなに急がなくても良かろうに」
- 150 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 22:05:32 ID:u4XTD2/c0
lw´‐ _‐ノv「あまり長く居過ぎると、旅立ち辛くもなるのでね」
(゚、゚トソン「そういうものですか」
lw´‐ _‐ノv「出会いと別れは表裏一体。そういうものですよん」
川 ゚ -゚)「まあ、あまりサンライズにべったりと居着かれても、ツンが困るだろうしな」
lw´‐ _‐ノv「ですなあ」
ξ--)ξ「別に私はかまいませんけど?」
(*^ω^)ノ「シャキンさーん、こっち肉追加してくれお!」
(∪*^ω^)「わんわんお!」
(`・ω・´)「おう、ちょっと待ってろ。わんおちゃんもちょっと待っててね」
(*^ω^)「やっぱバーボンハウスの料理は美味いおね。旅先の飯も美味いけど、ここは別格だお」
(`・ω・´)「嬉しい事言ってくれるじゃないの。まあ、子供の頃から食べ慣れてるってのもあるんだろうな」
(*^ω^)「ドクオさん達の料理が失敗した翌日は、いつもここで口直ししてたおね」
- 151 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 22:06:56 ID:u4XTD2/c0
川 ゚ -゚)「それだけでもないと思うぞ? ソクホウなんかの飯屋と比べてもシャキンの作る飯は美味い」
(`・ω・´)「おいおい、おだてても時給は上げんぞ?」
(゚、゚トソン「お世辞ではないですよ。僕はまだここのご飯は食べ慣れてませんが、美味しいと思いますし」
ξ゚听)ξ「そうね。私も旅先でここの味が恋しくなった事もあったわ」
(`・ω・´)「何だお前ら……褒めたって何も出ねえぞ?」
川 ゚ -゚)「事実を述べているだけだ。気にするな」
(`・ω・´)「……おい、クー。保冷庫に冷やしてあるいい酒があるから取って来い。お前らの帰還祝いだ」
川 ゚ -゚)「今日は客として来てるんだが……ありがたく頂くよ」
(*^ω^)「よ! シャキンさん、太っ腹!」
(`・ω・´)「何だ、ブーン、もう酔ってんのか? つーかお前、珍しく飲むペース早いな」
(*^ω^)「そうかお? まあ、たまにはいいお。明日からはサンライズは通常営業だし」
(`・ω・´)「普通に店開けるならあんまり飲み過ぎんなよ」
- 152 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 22:08:20 ID:u4XTD2/c0
お酒のおかわりを頼む僕に、シャキンさんはほどほどになと言い残してカウンターの方に戻る。
確かに少し飲み過ぎている自覚はあるが、色々と煩わしい事から開放された今日ぐらいはいいじゃないかと思っている。
(*^ω^)つU「シュー、店番ありがとだお! 皆もクエストお疲れだお!」
lw´‐ _‐ノvU「おつかれー」
(゚、゚トソン「しかし、改めて思うと、色々と大変な事続きでしたね」
ξ゚听)ξ「そうねえ。厄介ごとの連続だったわね」
(∪^ω^)「わんおー」
川 ゚ -゚)「当初はここまでの長旅になるとは思わなかったが……まあ、結果オーライだな」
ξ--)ξ「あんまりオーライでもないんだけどね……」
(*^ω^)つU「どうしたお、ツン? あんまり悩むと禿げるお? 今日はパーッと飲むお!」
ξ#゚听)ξ「禿げないわよ! つーかあんた、飲み過ぎよ?」
(*^ω^)「たまにはいいじゃないかお。ほら、ツンも飲むお!」
- 153 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 22:09:34 ID:u4XTD2/c0
ξ゚听)ξ「……まあ、塞ぎ込まれるよりはいいけどさ」
(*^ω^)「お? 何の事だお?」
ξ゚听)ξ「あんた最近、何か妙に考え込んでる事あったじゃない?」
(*^ω^)「まあ、色々あったからね」
王宮の事やじいちゃんの事、それに千年紀の王にラウンジの聖女の事など色々あったからと僕は誤魔化した。
ドクオさんの事は本人と話すまでは言わないつもりだ。
ξ゚听)ξ「色々ね……まあ、あんたが割り切れたのなら何も言わないわよ」
(*^ω^)「助かるお。さあ、ツン、かんぱーいだお」
ξ--)ξつU「はいはい、乾杯乾杯」
ツンは僕とジョッキを合わせると、一気にお酒を飲み干した。
ツンもヴィップに帰って来れた事は嬉しいのか、機嫌は悪くない様だ。
川 ゚ -゚)「おお、そうだ、ブーン。幽霊船で見付けた剣、早いとこ鑑定してくれよ」
(*^ω^)「ああ、そんな話もあったおね。サンライズの方が落ち着いたら引き受けるお」
- 154 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 22:11:56 ID:u4XTD2/c0
(`・ω・´)「ほれ、追加の肉に酒だ。味わって食えよ」
(*^ω^)「肉!」
(∪*^ω^)「わんお!」
lw´‐ _‐ノv「あー、シャキンさんや。ご飯をもらえるかな?」
(゚、゚トソン「あ、僕も欲しいです」
(`・ω・´)「おう。……飯が来るまでに肉がなくならなきゃいいが」
(*^ω^)「肉うめえ! 肉うめえお!」
ξ;゚听)ξ「ブーン、あんたちょっと食べ過ぎよ?」
川 ゚ -゚)「各自、己の分は素早く確保しておいた方がいいな」
(゚、゚トソン「ブーン店長、随分ご機嫌ですね。帰って来て何か良い事でもあったのですか?」
(*^ω^)「あったお。ドクオさんから杖貰ったお」
- 155 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 22:13:22 ID:u4XTD2/c0
ξ゚听)ξ「ドクオから? もう帰って来てるの?」
(*^ω^)「いや、まだみたいだったお」
僕はツン達に杖を手に入れた経緯を説明する。
杖も持って来ていたので、取り出して皆に見せた。
ξ゚听)ξ「何かちょっとみすぼらしいわね……」
(*^ω^)「ドクオさんらしくていいじゃないかお」
川 ゚ -゚)「これはブーンが上機嫌になるほど良い杖なのか?」
(*^ω^)「わからんお。でもきっと、良い杖だお」
(゚、゚トソン「銘はないんですね。何て名前の杖なんですか?」
(*^ω^)「ドクオさんから貰ったんでドクオロッドとかでいいんじゃないかお?」
ξ;゚听)ξ「適当過ぎるし、ダサいわよ」
(*^ω^)「じゃあ、ドクオステッキ?」
ξ;゚听)ξ「同じよ!」
- 156 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 22:14:08 ID:u4XTD2/c0
結局、名前は賢者の杖にすることで落ち着いた。
安易な名前だが、冷静に考えるとドクオロッドよりはマシだと思う。
ξ゚听)ξ「少しは酔いが醒めてきた?」
( ^ω^)「若干」
僕はシャキンさんからお水を貰い、食べ散らかしたテーブルの上を眺める。
よくもまあこれだけ食べたものだ。
(;^ω^)「てか、シューの送別会と言いながら何もそれっぽいことしなくてごめんお」
lw´‐ _‐ノv「いやいや、いつも通りの仲良しな皆を見れただけで十分ですよん」
lw´‐ _‐ノv「御馳走様でした」
そう言ってシューは両手を合わせ、恭しく頭を下げる。
よくわからないが、楽しんではくれたみたいなので良かったと思う。
川 ゚ -゚)「次はどこに行くんだ?」
lw´‐ _‐ノv「前は北だったから、今度は南に行こうと思ってる」
- 157 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 22:15:28 ID:u4XTD2/c0
ξ゚听)ξ「南に行くなら、ナカノヒトの町はまだ不安定かもしれないから、キマスタの方がいいかもね」
lw´‐ _‐ノv「ふむ、ではそうしましょうかね」
僕達はシューの無事を祈り、改めて乾杯する事にした。
流石に飲み過ぎたので、全員お水でだが。
更に、僕ら以外にもこの場にいた冒険者の皆やシャキンさんも加わって、皆でシューに感謝を込めて杯を掲げた。
(`・ω・´)「それじゃあ、シューちゃんに感謝と旅の無事を祈って、乾杯!」
(゚、゚トソン川 ゚ -゚)ξ゚听)ξ(∪^ω^)( ^ω^)「乾杯!」
lw´‐ _‐ノv「乾杯。ありがとね、みんな」
( ^ω^)「また遊びに来てくれお」
lw´‐ _‐ノv「うむ、また来させてもらうよ」
僕達は夜が更けるまで語り合い、皆でシューを送り出した。
次会う時までに1つは農具を売ってみせると宣言し、シューはヴィップの町を後にした。
第四十二話 始まりの地にて 終
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