- 2
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 00:25:25 ID:zdBb0esg0
〜 ニューソク王宮 謁見の間 〜
( ^ω^)「……といった次第でしたお」
( ´∀`)「うむ、ご苦労だったモナ。鑑定はこちらに任せるモナ」
( ∵)「はい、これで間違いは無いと思いますが、確認は急がせます。遅くとも明日までにはわかるでしょう」
( ^ω^)「よろしくお願いしますお」
( ´∀`)「それでは、冒険者ブーンよ、この度の働き、誠に大儀であったモナ」
( ^ω^)「勿体無きお言葉ですお」
(∪^ω^)「わんわんお!」
第四十一話 ひとまずの落着、そして帰り路へ
- 3
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 00:26:18 ID:zdBb0esg0
( ^ω^)「ふぅ……。取り敢えずは一段落だおね」
僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。
ξ゚听)ξ「あれで良かったのか、結果が出るまではクエスト終了ってわけじゃないけどね」
彼女の名はツン。
サンライズの隣の武術道場の娘で、いわゆる幼馴染というやつだ。
(∪^ω^)「わんわんお」
この子の名前はわんわんお。
僕のペットというか家族で、見た目は子犬だが実は元竜だ。
僕達はイチサンの北の海で見つけた魔王の頭骨らしきものをソクホウに持ち帰り、その報告を済ませた所だ。
まだあれが魔王の頭骨かどうか断定はされていないが、恐らく間違いないだろう。
報告はまた謁見という形で行われたが、2度目という事もあり、それほど緊張せずに済んだ。
ビコーズさんの部屋で、モナー王とフランクな話をしたお陰もあるかもしれない。
ξ゚听)ξ「確かにあんた、最初の時と違ってやけに堂々としてたよね」
( ^ω^)「もう慣れたお」
- 4
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 00:27:38 ID:zdBb0esg0
ξ゚听)ξ「……それだけ?」
( ^ω^)「それ以外に何があるっていうんだお?」
ツンはほんのわずかな時間、僕の目を見詰めると、それもそうねと目を逸らしてくれた。
きっと、それ以外の理由にも気付いていながら何も言わずにいてくれるのだろう。
ξ゚听)ξ「さて、それじゃあさっさと帰りましょうか」
( ^ω^)「そうするお。また絡まれるのは勘弁だお」
(∪^ω^)「わんわんお!」
謁見を終えた僕達は、そう考えて急ぎ王宮を出ようとしたのだが、残念ながら上手くいかなかった。
1階に降りた所で、前回同様貴族の人達に捕まってしまった。
( 貴)「いやいや、流石のお手前ですな。まさかこんな短期間で見付けて来られるとは」
( 貴2)「全くもってその通りですな。流石彼の大賢者の……おっと、失礼、これは我々だけの秘密でしたな」
( 貴3)「お若いのに大した腕前をお持ちですなあ」
- 5
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 00:29:49 ID:zdBb0esg0
( ^ω^)(何か妙に増えてるお……)
前回より増えた貴族の人達は、口々に僕の事を褒め称える。
褒められる事は嬉しいと思うが、今回も運が良かっただけだし、僕1人の力だけで達成したわけではないので、
あまり持ち上げられても困ってしまう。
その事を正直に告げても、謙虚だとかで結局褒められるので少々辟易する。
僕は適当に相槌を打ちながら、お昼は何を食べようか考えていた。
( 貴4)「いやしかし、この分ならブーン様が次期王に就かれるという噂もあながち噂ではなくなりそうですな」
(;^ω^)「は? いや、ちょっと何を言ってるんですかお?」
ほとんどの話は聞き流していたが、流石にそれは聞き逃せない。
何でそんな噂が立っているのか聞いてみると、どうも謁見での僕の扱いに僕の素性、
更にモナー王が正式に世継ぎとなる者を定めていない現状がそういう噂の立つ土壌になっているようだ。
そんな噂は初耳だし、もしあったとしても根も葉もない噂な上、
それを王宮で口にするのはあまりにも不遜ではないだろうか。
( 貴5)「しかし、貴方にはその力がお有りでしょう?」
貴族達の口ぶりでは、まるでモナー王に力が無いと言っている様に聞こえる。
僕はモナー王は立派な人だと思うし、力が無いとも思わない。
それは現在こうして治世を維持している事でも明らかだ。
- 6
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 00:30:54 ID:zdBb0esg0
(;^ω^)「そんな力は有りませんし、王に必要なのは力が全てではないと思いますお」
僕は貴族達の言葉を遮り、この話を打ち切ろうとする。
この辺で切らないと、僕の隣で拳を固めている方がどういった行動に出るかわからない。
僕は魔法道具屋で、冒険者だからそういう話に興味はないと告げた。
( 貴)「謙虚ですなあ。かつて大賢者殿もお断りなされたという事でしたし、血は争えないものですね」
(;^ω^)「え? じいちゃん……祖父にそんな話があったんですかお?」
そんな話は初耳で、じいちゃんからもドクオさんからも聞いた事は無い。
もしそんな話があったとしても、2人が僕に話すとは思えないからそれも当然だろう。
貴族達の話によると、かつてじいちゃんは前王から王位の禅譲を頑なに固辞したらしい。
(;^ω^)「そんな話があったんですかお……」
( 貴2)「ええ、ですからこれはある種の天命というものではないでしょうか」
(;^ω^)「だからそういう話に興味は……」
( 貴3)「そして是非、王となった暁には我々を……」
- 7
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 00:31:45 ID:zdBb0esg0
ξ# )ξ(;^ω^)「いや、ですからそういう話は……」
僕は隣で怒気が膨れ上がるのを感じ、これはまずいとツンの手を取り逃げ出そうとする。
しかし、もう1つの大きな怒気、いや、殺気を感じ、足が止まった。
(,,゚Д゚)「随分とお話が盛り上がっているようですな。私も御一緒させてもらってもよろしいですかな?」
(;貴)「ギ、ギコ殿!? い、いや、これは……」
平素と変わらぬ表情ながらも、戦場でしかお目に掛かれぬ様な殺気を纏う聖騎士団長ギコさん。
僕を取り囲んでいた貴族達は、慌てて暇を告げ、全員去って行く。
(;^ω^)「助かりましたお」
(,,゚Д゚)「……俺がお前を助けた様に見えるのか?」
殺気を僕に向けながらギコさんは僕を見詰める。
返答次第ではいきなり斬られそうな雰囲気ではあるが、僕は笑顔で返す。
( ^ω^)「いやー、あのままだとあの貴族の人達がみんなツンにぶっ飛ばされてましたお」
ξ;゚听)ξ「な!? 私は別に……」
- 8
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 00:32:27 ID:zdBb0esg0
だから、貴族の人達を助けてくれてありがとうございますと、僕はギコさんに改めて礼を述べる。
ギコさんは珍しく表情を崩し、呆気に取られた顔で僕を見詰めていた。
( ^ω^)「僕はああいう話には興味ないですし、何とも馬鹿げた噂だと思いますお」
僕はギコさんに一礼し、ツンの手を引いてその場を辞そうとした。
やはり王宮は色々と面倒臭い所だと思う。
( ´∀`)「全くないモナ? ホントはちょっぴりやってみたいなーとか思ったりしてないモナか?」
( ^ω^)「ないですお……って、モナー王様!?」
(;,,゚Д゚)「な……陛下!?」
いつの間に現れたのか、モナー王がさも愉快そうに僕に聞いて来る。
相変わらずの無用心だと思ったが、今日は1人で行動しているわけではないらしい。
(‘_L’)「陛下、あまりお巫山戯になられないで下さい」
( ´∀`)「いやいやフィレンクトよ、これはちゃんと聞いておきたい事モナよ」
先の謁見にはいなかった、騎士団長であるフィレンクトさんがやんわりとモナー王を諌める。
どうやらもう、ナカノヒトの町から帰って来ていたらしい。
- 9
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 00:33:22 ID:zdBb0esg0
(;^ω^)(てか、これ、どういう状況だお?)
モナー王がこんなことを僕に聞いて来るという事は、先の貴族達の話をモナー王も聞いていた、
もしくは誰かから聞いたのだろう。
それに対し、モナー王は怒る所かむしろ楽しそうに見える。
( ´∀`)「男なら皆、王になりたいと思うぐらい野心はあってもいいと思うモナよ?」
(;^ω^)「そういう憧れレベルの話で聞いてませんおね、これ?」
( ´∀`)「つまり、ブーンはそれを冗談と笑い飛ばせない事を自覚してるって事モナね」
(;^ω^)「お……それは……」
変わらぬ笑顔を見せるモナー王に、僕は思わず顔を伏せる。
本来なら有り得ない、馬鹿馬鹿しい話なのだが、僕はそれをともすれば実現可能な話として見てしまっていた。
大賢者バーンの名が、それを可能とさせてしまう事を僕は理解しているのだ。
ξ゚听)ξ「モナー王様、ブーンは……」
( ´∀`)「わかってるモナ。これ以上いじめないモナよ。悪かったモナ」
- 10
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 00:34:17 ID:zdBb0esg0
(,,゚Д゚)「陛下、その、こちらに何の御用で……」
( ´∀`)「おお、そうモナ。忘れるとこだったモナ。フィレンクト」
(‘_L’)「ブーン殿、こちらを」
( ^ω^)「お? これは?」
フィレンクトさんが僕に握り拳3つ分ぐらいの大きさの皮袋を差し出す。
どうやら金貨の様だが、まだ正式にクエストは達成していないのだが。
( ´∀`)「経費モナよ。聞く所に、今回は結構掛かったらしいモナ?」
(;^ω^)「まあ、それなりには。でも、前もって準備金を頂いてましたお?」
モナー王が言う様に、今回のクエストには結構お金が掛かってしまった。
例の頭骨を手に入れた後にだ。
まず、あれのモンスターを呼び寄せる性質の所為で、サースガ号が結構傷んでしまった。
そしてそれを抑える為の魔法を施す為の材料集めと、その間にも寄って来るモンスターを討伐する為に、
イチサンの町で冒険者を雇って町の防護に当たってもらったのだ。
ツン達だけでも防げなくもなかったが、町のどこに現れるかわからないという不安もあったので、万全を期す事にした。
結局、頭骨を手に入れてからソクホウに戻るまで2週間ぐらいの時間が掛かってしまった。
- 11
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 00:35:08 ID:zdBb0esg0
( ´∀`)「まあ、気にせず受け取っておくモナ。事の重大さを考えると、安いものモナ?」
僕はわざわざ王が届けてくれた物を無下に断るわけにもいかず、渋々それを承諾した。
そもそも、モナー王が直々に届けに来る必要は無いと思うのだが。
( ^ω^)「では、我々はこれで。失礼致しますお」
(∪^ω^)「わんわんお」
( ´∀`)「さっきの話だけど……」
一礼し、この場を辞そうとした僕達をモナー王がまた呼び止める。
相変わらずその顔に笑みは浮かんでいたが、どことなく真剣味を帯びた口調に聞こえた。
( ´∀`)「王に力はいるモナよ」
( ^ω^)「……国を治める力、という事ですかお?」
( ´∀`)「違うモナ。勿論それも必須だけど、それとは違う、純粋な個人の力モナよ」
臣に、兵に、率いる者として力を見せる必要が王にはあるとモナー王は言う。
先頭に立って何かをなせる力が王には必要なのだと。
- 12
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 00:36:14 ID:zdBb0esg0
( ^ω^)「それは……」
( ´∀`)「別に、何でも自分でやりたいからってわけじゃないモナよ」
( ´∀`)「臣下の力は存分に借りるモナ」
そう言ってモナー王は左右に控えるギコさんとフィレンクトさんの方を見る。
2人ともそれに軽く頭を下げて応じた。
( ´∀`)「それでも、王に力が無いと対外的には軽んじられたりするモナ」
( ´д`)「現に今、メシューマとの交渉は難航してるモナね」
( ^ω^)(メシューマと……朱玉の件だおね……)
(,,゚Д゚)「その件なら、一言ご命じになられれば我々が……」
( ´∀`)「それは最後の手段モナ。もうしばらく待って欲しいモナ」
(,,゚Д゚)「ハッ、失礼致しました」
- 14
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 00:37:15 ID:zdBb0esg0
( ´∀`)「ちょっと話が逸れちゃったモナね。とにかく、私が言いたいのは……」
( ´∀`)「王は強く在らねばならないって事モナよ」
モナー王はそう言うと、引き止めて悪かったと謝罪し、去って行く。
ギコさんはそれを見て、どうするべきか一瞬迷ったようだがモナー王を追いかけた。
残された僕は何だかよくわからず、ツンと顔を見合わせる。
( ^ω^)「今のはどういう……」
ξ゚听)ξ「その話は後にしましょう」
( ^ω^)「お?」
そう言うとツンが僕に目で訴えて来る、
視線をツンの方から正面に戻すと、そこにはフィレンクトさんが立っていた。
( ^ω^)「モナー王様を追いかけなくていいんですかお?」
(‘_L’)「ギコ殿が付いておられますから、大丈夫ですよ」
- 16
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 00:42:34 ID:zdBb0esg0
フィレンクトさんは元々僕に用事があったらしい。
その途中で同じく僕の所に向かおうとしていたモナー王と会ったのだとか。
(;^ω^)「城内とはいえ、結構無用心なとこありますおね、モナー王様」
(‘_L’)「そうですね。しかし、ああは仰ってましたが、剣は学んでおられますので」
フィレンクトさんは苦笑しながらも、モナー王の弁護をする。
決して何も出来ない、弱い方ではないと。
( ^ω^)「何であんな話を僕にされたんですかおね?」
(‘_L’)「それは……恐らくは貴方の事をお認めになっておられるからだと」
( ^ω^)「それはありがたいことですけど、僕はその噂の様な気は一切ないですお?」
(‘_L’)「それは陛下もきっとわかっておられますよ」
恐らく、僕をからかいたかっただけだろうとフィレンクトさんは軽く微笑み、本来の用事を告げる。
(‘_L’)「ジョルジュ達から、ライシンマッハ軒という酒場で待っていると言付かりましてね」
- 17
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 00:43:25 ID:zdBb0esg0
(;^ω^)「え? それだけですかお?」
(‘_L’)「ええ、もし時間があれば来てくれないかと」
ξ;゚听)ξ「あいつら、騎士団長に何て事頼んでんのよ……」
(∪^ω^)「わんおー」
申し訳ないと平謝りする僕らだが、フィレンクトさんは気にしてないというか、
それだけジョルジュさん達と仲良くなった様だ。
何気にジョルジュと呼び捨てにしていた事だし、色々あったのだろう。
(‘_L’)「ちなみに場所は西区の入り口の近くですが、若い騎士に案内させましょうか?」
( ^ω^)「そこまでわかってれば自分で探すから大丈夫ですお」
ξ゚听)ξ「ソクホウにもだいぶ慣れましたし」
(∪^ω^)「わんわんお」
僕達はフィレンクトさんに礼を述べ、王宮を出る。
ナカノヒトの件を色々聞きたくもあったが、フィレンクトさんはこの後用事があるという事だったので、
それはジョルジュさん達から聞く事に決め、酒場に向かう事にした。
- 18
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 00:44:12 ID:zdBb0esg0
〜 酒場 ライシンマッハ軒 〜
_
( ゚∀゚)ノ「おう、ブーン、こっちだこっち!」
指定された酒場は少し奥まった所に有りはしたが、なかなか大きな店で簡単に場所はわかった。
店に入るとすぐ大きなフロアになっており、それを取り囲むように座席が円状に設けられている。
店内は昼にしては賑わっていて、それなりに繁盛している店なのだろう。
( ^ω^)ノ「お久しぶりですお、ジョルジュさん、ハインさん、ミルナさん」
2階席から身を乗り出すようにして僕を呼ぶジョルジュさんの声に、僕達は片手を挙げて応え、
案内しようとしてくれた前髪の長い人に断り、席に向かった。
从 ゚ー从「元気してたか? 腕は鈍っちゃいねえだろうな?」
ξ゚ー゚)ξ「あんたこそどうなのよ? 何なら後で試してみる?」
(* ゚д゚)「元気だったかい、わんおちゃん」
つ∪^ω^)「わんわんお!」
それぞれ再会の挨拶を交わし、まずはお互いの無事を祝し、乾杯をする。
話を聞く所によると、ジョルジュさん達は今日、ソクホウに戻って来たばかりらしい。
- 19
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 00:45:23 ID:zdBb0esg0
( ^ω^)「それで、僕達を呼んだ理由は何ですかお?」
_
( ゚∀゚)「あれ、フィレンクトのおっさんに聞かなかった?」
( ^ω^)「おっさんって……特には聞いてませんお」
呼び出したのはこれといって用事があったわけではなく、
折角僕もソクホウにいるのなら色々話をしたいと思ったかららしい。
それで僕が王宮にいると聞いて、同じく王宮に用事があるフィレンクトさんに伝言を頼んだらしかった。
ξ;゚听)ξ「いくらフィレンクトさんが王宮に行くからって、騎士団長に伝言を頼むのはどうなんですか?」
从 ゚∀从「おっさんは別にかまわないって言ってたぜ?」
(;^ω^)「すっかりおっさん呼ばわりですおね……」
( ^ω^)「まあ、僕もその辺の話をジョルジュさん達に聞きたかったんで、呼んでくれたのは幸いでしたお」
( ゚д゚)「うむ、こちらもお前達の話を聞きたくてな。何やら大変な事になってるようだしな」
(∪^ω^)「わんお!」
僕達はお互いの近況を報告しあう事にしたが、その前に僕は3人に話さねばならない事があった。
- 20
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 00:46:26 ID:zdBb0esg0
( ^ω^)「実はジョルジュさん達に隠してた事があるんですお」
僕は3人に手招きをし、顔を寄せてもらう。
昼間とはいえ店内は賑わっていて騒がしいので、そこまで神経質になる必要はないかもしれないが、
万が一を考えて小声で話す事にした。
_
( ゚∀゚)「で、改まって何の話だ?」
( ^ω^)「僕の祖父の事なんですが……」
僕はじいちゃんの話をし、今僕が王宮でどういう風に見られているかの話をした。
今の状況では隠しておいても、いずれはバレる可能性が高い。
この件ではアニジャさん達にも迷惑をかけたし、僕と付き合うことで煩わしい事になるのを理解してもらった上で、
どうするかはジョルジュさん達に決めてもらいたかった。
_
( ゚∀゚)「へー、すげえなあ」
( ^ω^)「今まで隠しててすみませんでしたお」
( ゚д゚)「気にするな。事情を考えればそうするのも納得がいくさ」
从 ゚∀从「それでお前が今までと変わるわけでもねえんだし」
- 21
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 00:47:19 ID:zdBb0esg0
( ^ω^)「ありがとうございますお」
3人とも驚きはした様だったが、皆さばさばとした反応で、隠していた事に対して怒る事も不快感を表す事もなかった。
その代わりに秘密も共有したし、付き合いも長いのだからそろそろ敬語は止めてくれという条件を提示してされる。
( ^ω^)「そんなことでいいのなら、かまわないです……かまわないお」
_
( ゚∀゚)「もう何度も背中を預けた仲だ。堅苦しいのはなしにしようぜ」
( ゚д゚)「しかし、それで色々と納得がいった部分もあるな」
( ゚д゚)「東の賢者殿との関係や、年に似合わぬ博識ぶりはそこに起因するわけだな」
(;^ω^)「ドクオさんとの関係はともかく、知識はそんなにないお」
从 ゚∀从「ツンはこの事知ってたの?」
ξ゚听)ξ「そりゃあね。幼馴染だし、ブーンのおじいさんとも会ってるし」
_
( ゚∀゚)「やっぱ、すげー怖い人だったのか?」
- 22
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 00:48:35 ID:zdBb0esg0
(;^ω^)「ジョルジュさんもそういうイメージ持ってたんだおね……」
(∪^ω^)「わんおー」
じいちゃんの話はあまり大っぴらには出来ないので、また日を改め、場所を変える事で切り上げ、
お互いの近況の話に移る。
まずは僕達が受けたクエストの話をジョルジュさん達に話した。
_,
从 ゚∀从「千年紀の王ね……。そりゃまた大事になってんな」
3人とも、千年紀の王の話自体知らなかったらしい。
もっとも、意図的に歴史から削除された話なのだからそれが普通の事だ。
_
( ゚∀゚)「ラウンジの聖女に西の賢者、それに巨大イカか。随分とハードな旅だったみてえだな」
(;^ω^)「そりゃあもう」
結局、どの相手からも逃げてクエスト達成してる辺りは、少々誇れない結果だが、達成は達成だ。
冒険者としてはそれでいいのだと割り切るしかない。
从 ゚∀从「そのイカ? 何とかって伝説クラスのモンスターだったんだろ? よく無事だったな」
ξ゚听)ξ「ああ、あれ、その伝説クラスのモンスター、クラーケンじゃなかったみたいよ」
- 23
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 00:50:05 ID:zdBb0esg0
あの後、目撃情報とイチサンの口伝などでわかったのだが、あのイカはクラーケンではなく、
それより数回り小さいテンタクルスというイカのモンスターだったようだ。
(;^ω^)「それであんだけ苦労したのに、クラーケンと遭遇してたら終わってたおね」
ξ;--)ξ「ホントにね……」
( ゚д゚)「しかし、千年紀の王を復活させる魔具の2つまでがここ、ソクホウに集まったのか……」
( ^ω^)「2つ目はまだ確定じゃないんだけど、そういう事になると思うお」
_
( ゚∀゚)「んー……、若干きなくせえな」
ξ゚听)ξ「一応、王宮側の説明は筋が通ってるけど、個人的にはちょっと引っ掛かるわね」
( ^ω^)「ラウンジ側もそこを心配してたけど、かといってラウンジが集めたとしても結局心配なんだおね」
( ゚д゚)「だからといって放置しておくと、いつか復活する可能性がずっと残されると」
从 ゚∀从「別々の国でそれぞれ保管しておく方が良さそうに思えるがねえ」
- 24
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 00:51:15 ID:zdBb0esg0
結局、互いの国が完全には信用出来ない以上、そう上手くは行かないのは想像出来る。
僕としては実際に集めた手前、その管理が非常に気になる所だ。
モナー王やビコーズさんの説明で納得はしているが、事の重大さを考えると万が一があっては困る。
_
( ゚∀゚)「ま、そっちはあと1つあるんだし、それがどうなるかを見てからでもいいかもな」
( ゚д゚)「メシューマの闘技大会の賞品となっていたあれだな」
ξ゚听)ξ「そういえば闘技大会は出るの? 前に出ようかとか話してたけど」
从 ゚∀从「うーん……、どうすっかなあ?」
( ゚д゚)「武器の強化依頼は済んでいるからな。腕試しの相手も最近は困っていない」
( ^ω^)「ミルナさん達は騎士団に正式に入ったのかお?」
_
( ゚∀゚)「いや、非正規団員ってとこだな。フィレンクト個人との契約って位置付けなんだっけ?」
ミルナさんの説明によると、ソクホウ滞在中に灰衣の男の情報を追っていると、
フィレンクトさんの方から打診があったらしい。
目的が同じなのだから、協力してくれないかという。
- 25
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 00:52:34 ID:zdBb0esg0
( ゚д゚)「騎士団だけの情報網で追うのに限界を感じていた様だな」
ジョルジュさん達の冒険者としての経験や情報網を買って、協力を依頼されたという話らしい。
从 ゚∀从「俺らもそう独自の情報入手経路があるわけじゃねえけど、冒険者ならではのものもあるからな」
_
( ゚∀゚)「それで色々情報を集めた結果、あの灰衣の男がナカノヒトに現れるという情報を掴んだんだが……」
从 ゚∀从「と言っても、掴んだのは俺らじゃねえけどな」
結局、ナカノヒトでは灰衣の男は見付けられなかったらしい。
いたかどうかもわかっていないという話ではあるが、
僕自身はそれらしい魔法の発動を目にしたので、いたのではないかと思っている。
( ゚д゚)「残念ながら他に目撃者がいなかったんでな」
_
( ゚∀゚)「おっさんはブーンの証言を信じてたみたいだぜ?」
それで町中をくまなく探したらしいが、その痕跡は何も見付からなかった様だ。
元々、情報が少な過ぎる相手なのでそれも仕方がない事かもしれない。
- 26
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 00:53:25 ID:zdBb0esg0
ξ゚听)ξ「あっちはどうなの? あの、マルタスニムとかいう魔法使いは」
从 ゚∀从「……」
マルタスニムの件も騎士団が関わる事になったのはビコーズさんから聞いていた。
しかしそちらの方も芳しい成果は上がっていないらしい。
( ゚д゚)「研究に使っていた施設は発見出来たのだが……」
_
( ゚∀゚)「既に蛻の殻さ。資料の1つも残っちゃいねえ」
それでもオワタ兵は何人も捕らえる事が出来たので、現在彼らを正気に戻す研究は行われているらしい。
容赦なく処分される方向に話が進んでいなくて良かったと思う。
_
( ゚∀゚)「胸糞悪い野郎だぜ」
( ゚д゚)「全くだ。見付けたら叩き伏せてやらんとな」
从 ゚∀从「……ああ、細切れに斬り刻んでやるよ」
精霊兵器の実験の事はジョルジュさん達も詳しく聞いたとの事だ。
ジョルジュさん達はマルタスニムの所業に激しい憤りを見せている。
- 27
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 00:54:25 ID:zdBb0esg0
( ^ω^)「それじゃあ、ジョルジュさん達はもうしばらくソクホウにいるのかお?」
_
( ゚∀゚)「まあ、そうなるかな」
( ゚д゚)「場合によっては情報集めに他の町を回るかもしれんが」
从 ゚∀从「基本的にはここにいるだろうな」
灰衣の男の件に片が付けば、ヴィップに帰ると3人は言う。
ヴィップに行くではなく、帰ると言ってくれるのは、ヴィップの町の人間として少し嬉しく思った。
( ^ω^)「その灰衣の男って、何でナカノヒトにいたのか理由はわかってるのかお?」
_
( ゚∀゚)「わかんね。ただそういう情報があったってだけさ」
ξ゚听)ξ「それ、誰からの情報?」
( ゚д゚)「確か、宮廷魔術師からだったと思うぞ」
( ^ω^)「ビコーズさんかお……」
ミルナさんの言葉に、僕は思わずツンの方を見る。
ツンも僕の方を見ていた。
- 28
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 00:56:01 ID:zdBb0esg0
从 ゚∀从「さっきのブーンの話だと信用は出来るんだろ? 大賢者の弟子って事で」
( ^ω^)「情報収集には長けてるって話だお。人柄も悪くないと思ってるけど……」
_
( ゚∀゚)「何だ、その歯切れの悪い物言いは?」
ξ゚听)ξ「色々あったのよ。でもまあ、基本的には信用していいと思うわよ」
意外な事に、一番ビコーズさんの事を疑っているはずのツンが取り成してくれる。
多分信用したからではなく、今回もイチサンの時と同じ様に何か思う所があるのだろう。
( ゚д゚)「俺達はソクホウに残るとして、わん……ブーン達はどうするんだ?」
つ∪*^ω^)}) ハムハムオ
( ^ω^)「ミルナさんには申し訳ないけど、ヴィップに帰りますお。わんおも連れて」
_, ,_
( ゚д゚)「……そうか。まあ、そうだよな」
从;゚∀从「そんな露骨に落ち込むなよ。ブーン達が帰り辛いだろうが」
そう言うとハインさんはミルナさんからわんわんおを取り上げ、自分の膝の上に置く。
- 29
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 00:57:09 ID:zdBb0esg0
从 ゚∀从つU「飲むか?」
つ∪^ω^)「わんおー?」
ξ;゚听)ξ「わんおがお酒飲むわけないでしょ? 止めなさい」
わんわんおはハインさんが鼻先に突き付けたコップの中の匂いを嗅ぐと首を振った。
これは飲めないものだと判断したらしい。
(((∪^ω^)))「わんわんおー」
_,
从*゚∀从「何だよー、俺の酒が飲めねえってか?」
;;つ)∪^ω^(⊂;;
どうやら思ったより酒が回って来ているようだ。
ハインさんは愉快そうに、わんわんおのほっぺに両手をぐりぐりと押し当てる。
(; ゚д゚)「止めんか、馬鹿者」
つ∪^ω^)
すぐ様ミルナさんがわんわんおを取り返し、大事そうに抱きかかえる。
多分ハインさんも手加減はしてくれていたのだろうから、わんわんおは平気そうな顔をしていた。
- 30
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 00:59:09 ID:zdBb0esg0
ξ--)ξ「全く、昼間から飲み過ぎじゃないの?」
从*゚∀从「たまにはいいじゃねえか。ようやく長旅から帰って来れたんだし」
_
( ゚∀゚)「そうだな。たまには羽目を外すのもいいもんだ」
( ゚д゚)「別に旅先で全く酒を飲めなかったわけでもないんだがな」
从*゚∀从「かてえ事言うなよ、ミルナちゃん」
そう言ってハインさんは酒瓶をミルナさんの方に差し出す。
ミルナさんはそれにコップを向けて返した。
( ^ω^)「そういえばアニジャさんの所には行ったのかお?」
_
( ゚∀゚)「いや、まだだ。この後押しかけて宿代わりにするつもりだが」
ξ゚听)ξ「あら、まだだったの? もう武器は完成したみたいなのに」
(* ゚д゚)「そうなのか? それは重畳だ」
- 31
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 01:00:50 ID:zdBb0esg0
从*゚∀从「いよっしゃ、んじゃ早速アニジャん家行ってアニジャで試し斬りしようぜ!」
(;^ω^)「他のもので試してくれお」
3人とも武器の完成を待ちわびていたのか、すぐに酒盛りを切り上げ、アニジャさんの家に向かう事になった。
从*゚∀从「どんな風に仕上がってるか楽しみだな」
ξ゚听)ξ「ジョルジュさんの武器だけは見たわよ。というか1度使ったのよね。私がじゃないけど」
_
(;゚∀゚)「おいおい、俺んだぞ? いきなり中古にしてくれるなよ」
僕は状況が状況で止むなくであった事と、テストも兼ねていた事も説明し、ジョルジュさんに納得してもらった。
3人とも上機嫌で、何だかプレゼントを目の前にした子供の様である。
_
( ゚∀゚)「よし、アニジャの家まで競争だ!」
(;^ω^)「いや、競争って……」
从*゚∀从ノ(∪^ω^)ノ(* ゚д゚)ノξ゚听)ξノ「おー!」
(;^ω^)「って、まさかの全員賛同!?」
- 33
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 01:02:07 ID:zdBb0esg0
驚く間もなく、全員一斉に走り出す。
どんだけテンション高いんだよと呆れながら、僕はその背を目で追った。
(;^ω^)「てか、何でツンまで乗るんだお……」
ハインさんとミルナさんはだいぶ酔っていた様だが、酒の強いジョルジュさんはまだ平気なのだろう。
ツンもまだ大して飲んでないはずだが、久しぶりの再会に少し浮かれているのかもしれない。
( ^ω^)「わんおも僕を置いて行ってるし……」
僕は溜め息を1つ吐き、空を見上げた。
暑い季節の峠は越え、これからは段々と涼しくなって行くだろう。
( ^ω^)「……取り敢えず、と」
僕はエア・シューズの魔法を自分に掛ける。
( ^ω^)+「走りに僕で勝とうとは、甘甘々の甘ちゃんちゃんだお!」
僕は全速力で駆け出し、途中でわんわんおを拾い上げて全員をぶち抜き、一番でアニジャさんの家に辿り着いた。
- 34
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 01:03:26 ID:zdBb0esg0
〜 サースガ邸 中庭 〜
【4位】从;゚∀从「お前、容赦ねえな……」
【3位】ξ;゚听)ξ「あんたに負けるなんて腹立つわね。魔法無しで勝負しなさいよ」
【1位】( ^ω^)+「ククク……、敗者の戯言は聞く耳持たんお」
【2位】(∪^ω^)「わんわんお!」
【5位】(; ゚д゚)「わんおちゃんとの至福の時が……」
_
【6位】(;゚∀゚)「誰だよ、競争だなんて疲れること言ったの……」
(;´_ゝ`)「お前ら元気だな。昼間っから何やってんだよ……」
僕達は出迎えてくれたアニジャさんと共に、サースガ邸の中庭に向かう。
酒臭い集団に顔をしかめながらも、アニジャさんは完成した武器の準備をしてくれた。
( ´_ゝ`)「取り敢えず説明はする必要あるだろうから、1人ずつだな。誰からにする?」
- 35
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 01:04:37 ID:zdBb0esg0
- _
( ゚∀゚)「んじゃ、既にネタバレしてる俺からでいいよな?」
从 ゚∀从「いいぜ、早漏」
( ゚д゚)「かまわんぞ、早漏」
_
( ゚∀゚)「てめえら……」
(゚、゚トソン「早漏とはどういう意味ですか?」
川 ゚ -゚)+「どういう意味だ?」
( ^ω^)+「どういう意味だお?」
ξ;゚听)ξ「ど、どういう意味?」
(∪^ω^)「わんわんおー?」
+d(´<_` )「それはね……」
(;´_ゝ`)「オトジャよ、空気を読め。そこは流すべき所だ」
- 36
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 01:05:47 ID:zdBb0esg0
アニジャさんの開発した武器に興味があるのか、クーやトソン君、オトジャさんも室内から出て来ていた。
ヒートとはイチサンの町で既に別れているのでここにはいない。
何でも、ヒートの師匠がイチサンの近くで修行しているらしいので会いに行くとの事だった。
ツンが少し興味を惹かれている様だったが、
最終的には宇宙魔法なんてとんでもない技を考える武術家とはあんまり関わりたくないと判断したらしい。
( ´_ゝ`)「ほれ、こいつがお前さんの新しい斧だ」
_
( ゚∀゚)「やけに煌びやかだな……。お、何か妙に手に馴染むぜ」
ジョルジュさんはアニジャさんから渡された金色の長柄の斧を受け取り、軽く振り回す。
あの大きさなら重量は結構あるはずだが、ジョルジュさんはいとも簡単にそれを操っていた。
それと比べると、幽霊船でヒートが使った時は斧に振り回されている感じがあったと思わざるを得ない。
( ´_ゝ`)「コードネーム、まあ銘だな、バルディッシュだ。気に入らんなら好きに呼べ」
_
( ゚∀゚)「いや、それでいいぜ。んで、ちょっと試し斬りをしたいんだが」
(゚、゚トソン「ではアニジャさんで」
从 ゚∀从「試しに斬ってみようか」
(;´_ゝ`)「いや、何で俺なんだよ。向こうにある材木でも使ってくれ」
- 37
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 01:06:54 ID:zdBb0esg0
ジョルジュさんは庭の隅にあった材木を何度か斬り、その切れ味に満足したのか上機嫌で戻って来る。
_
( ゚∀゚)「いい感じだ。あとは実戦で使って耐久度を見るぐらいだな」
( ´_ゝ`)「その前にもう1つあるぞ」
_
( ゚∀゚)「あ? もう1つ?」
( ´_ゝ`)「このからくり・サースガ異名を持つ俺が作った武器だぞ? それだけで終わるわけないだろ?」
アニジャさんは全員の武器に特殊なギミックを組み込んだらしい。
確か全員から断られていたはずだが、ひょっとして勝手に組み込んだのだろうか。
( ´_ゝ`)「全員には断られてないぞ?」
川 ゚ -゚)「何だと? アニジャの残念ギミックを見て断らなかったやつがいるのか?」
(;´_ゝ`)「残念ギミックとか言うなよ……」
(;´_ゝ`)「それに、邪魔にならないように組み込んだんで、使わないなら使わなくてもいいからさ」
勝手なことをするなと言わんばかりの表情で蛮刀を抜き放ち、詰め寄るハインさんに必死に弁解するアニジャさん。
ハインさんから逃れ、ジョルジュさんの元へ向かう。
- 38
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 01:07:48 ID:zdBb0esg0
( ´_ゝ`)「この柄の所にだな……こうやって……こう……」
_
( ゚∀゚)「ほう……ほうほう……なるほど……」
( ´_ゝ`)「で、これを押し込んで、イグニッション! と叫ぶと発動する」
_
(;゚∀゚)「叫ばねえと駄目なのか?」
( ´_ゝ`)「勿論だとも!」
バルディッシュのギミックは幽霊船でヒートが使った、あの刃が高熱を放つ物の様だ。
叫ぶ必要性はともかく、それならばそこそこの有用性はあると思う。
_
( ゚∀゚)「なるほどな。ま、確かに状況次第では使えそうだな」
( ´_ゝ`)「そうだろ? ただ、無限に使えるわけじゃないから気を付けろよ?」
アニジャさんの説明によると、カートリッジと呼ばれるアニジャさんの発明品を組み込む必要があるらしい。
カートリッジは小型の燃料の様な物で、それを消費して熱を発するらしかった。
( ´_ゝ`)「交換は柄のここだな。簡単だから誰でも出来る」
- 39
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 01:09:05 ID:zdBb0esg0
( ´_ゝ`)「カートリッジは最初いくつか渡しておくから、使い切ったら買いに来い」
_
( ゚∀゚)「ただじゃねえのかよ」
( ´_ゝ`)「ぼらんから安心しろ。材料代と燃料代だけだ。使わなきゃ減らんしな」
ジョルジュさんはアニジャさんの言葉に納得し、礼を言って下がる。
次の武器の説明に移ってくれという事だろう。
( ´_ゝ`)「じゃあ、次の武器はこいつだな。双剣、コードネームは……」
从 ゚∀从「名前はいい。気に入ったら自分で付けるから。それより貸せ」
ハインさんはアニジャさんから2振りの曲刀を受け取ると、ジョルジュさんに斬りかかる。
ジョルジュさんもそれをわかっていたのか、得物を両手で持ち、ハインさんの斬撃を受け止めた。
从 ゚∀从「へえ……」
_
( ゚∀゚)「悪くない感じだな」
その後、数合打ち合い、武器を収める。
お互い普段より手応えがいいのがわかったのだろう。
満足そうな表情を浮かべている。
- 40
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 01:10:44 ID:zdBb0esg0
从 ゚∀从「いい感じだ」
( ´_ゝ`)「満足してもらえて幸いだ。で、ギミックだが……」
从 ゚∀从「俺はあのカートリッジとかいう面倒なのは使わねえぞ」
( ´_ゝ`)「そう言うと思ったからお前のには付けてないよ。こいつだけだ」
そう言うとアニジャさんはハインさんの手から剣を1つ受け取り、柄の部分を捻る。
そうすると柄の端が外れ、よく見ると外れた柄にはナイフのような物が付いている。
( ´_ゝ`)「いわゆる仕込み武器だな。膠着した時の牽制や、隠し持つ時には使えるだろ」
从 ゚∀从「へえー、やるじゃん。気に入ったぜ」
( ´_ゝ`)「本来はこっそりお前だけに教えるべきなんだろうが、この場の連中にならバレててもかまわんだろ?」
ハインさんはアニジャさんから剣を受け取ると、再び笑みを浮かべる。
アニジャさんは満足そうに頷いた。
( ´_ゝ`)「一応、柄を外した穴にこのワイヤーを付ける事でヌンチャクみたいに使えるギミックもあるんだが」
( ´_ゝ`)「だいぶ使い勝手が違うから無理に使わなくてもいい」
- 42
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 01:12:42 ID:zdBb0esg0
从 ゚∀从「わかった。貰っとくよ。この分の代金は……」
( ´_ゝ`)「いらん。サービスだ」
从 ゚∀从「サンキュー、今度酒でもおごるぜ」
ξ゚听)ξ「珍しいわね、ハインがおごるなんて」
_,
从 ゚∀从「俺を何だと思ってる。俺だってごく稀には他人に敬意は払うぞ?」
ここまで上機嫌なハインさんは僕も滅多に見たことがないので、ツンがそう思う気持ちもわかる。
ハインさんはアニジャさんの腕を評価したのだろう。
ただ酔っ払って上機嫌なだけだけの可能性もあるが。
( ´_ゝ`)「で、最後は……」
( ゚д゚)「俺だな」
つ∪^ω^)「わんお!」
ミルナさんは抱いていたわんわんおを僕に渡し、アニジャさんの方へ向かう。
- 43
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 01:13:49 ID:zdBb0esg0
( ´_ゝ`)「見ての通り、見た目に大差はない。コードネームは宵の明星、イブニングスターだな」
( ゚д゚)「ふむ、手に持ってしっくり来るのは流石だな」
ミルナさんは以前と同じ様に、鎖を振り回し、その手応えを確かめると、ジョルジュさんの方に鉄球を飛ばす。
バルディッシュとイブニングスターの鉄球がぶつかり合い、甲高い金属音が辺りに響いた。
_
( ゚∀゚)「あの変な音は仕込んでねえみてえだな。よかったよかった」
( ゚д゚)「いい塩梅だ。アニジャよ、礼を言うぞ」
( ´_ゝ`)「まだギミックの説明が終わってないから礼は早いぜ?」
アニジャさんによると、イブニングスターのギミックは鉄球自体を取り替えることで発動させるらしい。
鉄球に例のカートリッジを仕込み、高熱を発生させたり、爆発させたり出来るという豪快な物だ。
( ´_ゝ`)「爆発は使い捨てだと思ってくれ。奥の手ってやつだ」
( ゚д゚)「なるほどな。乱戦で付け替えは無理だろうが、使える場面はありそうだ」
( ´_ゝ`)「更に鉄球自体を柄の方に接続する事も出来るから、狭い室内での戦闘にも対応する事が出来るぞ」
( ゚д゚)「うむ、悪くないな」
- 44
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 01:15:53 ID:zdBb0esg0
( ´_ゝ`)「そして更に、例のギミックは柄の所……そうそう、その部分だ、そこを押せば発動するぞ」
(* ゚д゚)「おお、あれも組み込んでくれたのか!」
_
( ゚∀゚)「何だよ、例のギミックって?」
从 ゚∀从「何か嫌な予感しかしねえんだけど?」
何やらミルナさんは、あらかじめ付けるギミックを1つアニジャさんに頼んでいたらしい。
ジョルジュさんとハインさんは眉をひそめたが、僕も何となく嫌な予感はする。
( ´_ゝ`)b「大丈夫だ。誰もが羨む素敵機能だからな」
川 ゚ -゚)「なら、100%ろくな物じゃないと断言出来るな」
(゚、゚トソン「120%馬鹿馬鹿しい機能でしょうね」
( ´_ゝ`)「ハハハ、さっきから辛辣だね、トソンちゃん」
(゚、゚トソン「訂正させてもらいますと、さっきからではなく、出会ってからずっとですね」
(;´_ゝ`)「うん、揺るぎないねえ……」
- 45
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 01:16:49 ID:zdBb0esg0
- _
( ゚∀゚)「いいから押してみろよ」
从 ゚∀从「くだらなかったら、そん時はアニジャをボコればいいだけだしな」
(;´_ゝ`)「あっれー、さっきと態度が大違いだぞ?」
皆の目がミルナさんに集まる。
ミルナさんは大きく頷き、イブニングスターを眼前に構えた。
( ゚д゚)つ| | ポチッ
(* ゚д゚)つ| | < ワンワンオ!
_
( ´_ゝ`)bd(´<_` )( ゚∀゚)从
゚∀从( ^ω^)(∪^ω^)ξ゚听)ξ川
゚ -゚)(゚、゚トソン
ミルナさんが柄を押すと、どこかで聞いたことがある鳴き声が聞こえた。
どうやらそのギミックとやらは鳴き声がするだけのものらしく、他には何も起こらない。
(∪^ω^)「わんわんおー?」
(* ゚д゚)つ| | < ワンワンオ!
( ^ω^)「うん、わんおの声だおね」
- 47
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 01:18:32 ID:zdBb0esg0
(*´_ゝ`)b「名付けて腕白なる猛犬の咆哮だ!」
(;^ω^)「いや、猛犬って……」
ξ;゚听)ξ「だいぶ名前負けしてるわね」
(* ゚д゚)つ| | < ワンワンオ!
(∪*^ω^)「わんわんお!」
はっきり言って、武器に付けるのに無駄以外の何でもないギミックだと思うが、
付けた方と付けられた方が満足しているならそれでいいのだろう。
残りの皆もオトジャさん以外は呆れていたが、打ち合いの度に鳴るよりはマシだと思ったのか、
疲れた様に肩を落とすだけで何も言わなかった。
ξ゚听)ξ「これで全部の説明が終わったのね」
( ´_ゝ`)「うむ、俺からは以上だ」
_
( ゚∀゚)「若干最後に引っ掛かる部分もあったが、取り敢えずこちらからは文句はねえ」
- 48
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 01:20:58 ID:zdBb0esg0
ジョルジュさん、ミルナさん、ハインさんの3人は改めてアニジャさんに礼を述べる。
アニジャさんも大いにやり甲斐のある仕事だったと礼を返し、4人は固い握手を交わした。
( ´_ゝ`)「何かあったらすぐここに持って来いよ。俺が見てやるから」
( ゚д゚)「ああ、その時はよろしく頼む」
(∪^ω^)「わんお!」
川 ゚ -゚)「さて、ジョルジュ達の武器の話が片付いた所で聞くが、今後はどうするんだ?」
_
( ゚∀゚)「俺ら3人はしばらくここに滞在させてもらうつもりだぜ」
(´<_` )「ならば部屋を準備しないとね」
( ゚д゚)「もう武器の完成待ちでもないわけだから、宿代はちゃんと払うぞ」
( ´_ゝ`)「食費程度でいいさ。どうせ部屋は余ってるんだし」
(゚、゚トソン「我々はどうしましょうか?」
川 ゚ -゚)「私とトソンは、ソクホウに長期滞在するのはあまり好ましくないからな」
- 49
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 01:22:52 ID:zdBb0esg0
( ^ω^)「僕とツンとわんおはヴィップに帰るつもりだお」
ξ゚听)ξ「魔王の頭骨の鑑定結果が出次第ね」
川 ゚ -゚)「ならば我々もだな」
(゚、゚トソン「ですね。ヴィップに戻ってブーン店長に借金を返済せねば」
ξ゚听)ξ「この2回のクエスト分でもう借金は返せるんじゃないの?」
川 ゚ -゚)「返せなくもないが、そうすると交遊費が乏しくなるんでな」
ξ;゚听)ξ「まずは返すことを優先させなさいよ……」
またクーの借金が膨らまない事を祈りつつ、僕らは今後の予定について話し合う。
今回は大して荷物もないので馬車はいらないだろう。
キマスタの町に置いていた荷物も受け取っていたが、馬に積める程度の量だ。
( ^ω^)「馬の手配はしておくかおね」
だいぶ長旅になったけれど、これでようやくヴィップに帰れそうである。
帰ったら帰ったで色々とやる事もあるのだが、まずは自分の部屋のベッドでゆっくりと休みたいものだ。
- 50
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 01:24:13 ID:zdBb0esg0
ξ゚听)ξ「王家からのクエストも一旦打ち止めでしょうしね」
( ^ω^)「だおね。朱玉は所在もわかってるし、僕らにお鉢は回って来ないおね」
(∪^ω^)「わんわんお」
(;^ω^)「しかし、ちょっと魔法道具屋の方をサボり過ぎたから、帰ったら何か新商品を売り出したいお」
ξ゚听)ξ「シューに何かお土産でも買って行く?」
( ^ω^)「そうだおね。今回はシューにだいぶ感謝しないとだお」
まだ時刻は昼過ぎだ。
僕はツンとわんわんおと一緒に、町に馬の手配と買い物に行く事にした。
川 ゚ -゚)「ごゆっくり。何なら今日は帰って……」
ξ#--)ξ「送別会やるんでしょ? その時間までには帰るわよ」
( ^ω^)「そんじゃ、行って来るお」
д゚)つ| | < ワンワンオ!
∪^ω^)
(;^ω^)「いや、別にミルナさんも付いて来るなら付いて来てもらってもいいんで、こそこそしないで下さいお」
从 ゚∀从「ミルナの馬鹿はこっちで面倒見るからツンとわんすけと3人で行って来いよ」
- 51
名前:名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 01:26:03 ID:zdBb0esg0
( ^ω^)「お? そうかお? じゃあ、ツン、わんお、行くお」
ξ゚听)ξ「ええ、行きましょうか」
(∪^ω^)「わんわんお!」
僕達3人は並んで歩く。
ソクホウの町の景色もこれでしばらくは見納めだ。
最初に来た時は何となく整い過ぎてて馴染めなかった町だが、今はいい町だと感じている。
ξ゚听)ξ「ここも慣れると案外悪くなかったわよね」
( ^ω^)「僕も同じ事考えてたお。またその内、来てみたいおね」
ξ゚ー゚)ξ「今度は魔法道具屋として、新商品を考えて売りに来ればいいじゃない」
( ^ω^)「それもいいおね」
(∪^ω^)「わんお!」
僕らはのんびりとソクホウの町で買い物をし、緩やかな時間を過ごした。
その翌日、魔王の頭骨の鑑定が終了し、晴れて僕らはヴィップに帰れる事になった。
第四十一話 ひとまずの落着、そして帰り路へ 終
戻る