761 名前:名も無きAAのようです:2012/07/08(日) 20:26:23 ID:UrlmOsCg0

 〜 イチサンの町 町長宅前 〜


( ^ω^)「さあ、始まりました、第8回、チキチキつーちゃん捕獲大作戦」

(*゚ー゚)「それ、私のセリフですよ、ブーン君。実況は私、イチサン町長シィ=ダンヴォールと」

( ^ω^)「解説は僕、ヴィップの魔法道具屋サンライズ店長、ブーン=ナイトウでお送りしますお」

【ξ;゚听)ξ】「何であんたらそんなにノリノリなのよ?」

【川;゚ -゚)】「つーかうるさい! この実況とやらは切れないのか?」

【(゚、゚トソン】「恐らくこの僕達の周りに浮遊している球体が発しているのでしょうね」

【ノパ听)】「うおおおおっ! 猫どこだああああっ!」



     第三十八話 白銀の黒を追え


762 名前:名も無きAAのようです:2012/07/08(日) 20:29:47 ID:UrlmOsCg0

( ^ω^)「さあ、誰が一番最初につーちゃんを発見するかが見物ですお」

僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。

(*゚ー゚)「つーちゃんはやんちゃですからね。むしろ隠れずに出て来てからかったりしそうですよ」

彼女の名前はシィさん。
イチサンの町で町長をしている、年齢の話に少し敏感な人だ。

僕達は魔王の頭骨を探すというクエストで、ニューソク大陸最北の町、イチサンに来ている。
まずは情報集めと長老、もとい町長の家に向かったのだが、何故か情報を得るために町長であるシィさんの飼い猫、
つーを捕まえなければならなくなった。

(*゚ー゚)「さて、解説のブーンさん。ここで簡単に選手の紹介をして頂きたいのですが」

( ^ω^)「了解ですお。まずは優勝候補筆頭、ツン=ディレード選手ですお!」

【ξ;゚听)ξ】「いや、選手って、あんたまで悪ノリしてんじゃないわよ!」

(*゚ー゚)「彼女はどういった選手なのでしょうか?」
764 名前:名も無きAAのようです:2012/07/08(日) 20:32:10 ID:UrlmOsCg0

( ^ω^)「彼女は武術家で、その身体能力は高く、身の軽さはパーティー1ですお」

(*゚ー゚)「なるほど、それでこの武器も魔法も使えない状況では、必然的に優勝候補になるわけですね」

( ^ω^)「加えて頭も良いですからね。少々短気なのが玉に瑕ですが、彼女ならやってくれると思いますお」

(*゚ー゚)「これは期待の選手です! それでは、次の選手をお願いします」

( ^ω^)「はい、そのツン選手の対抗馬になり得るのが、ヒート=オネスティー選手ですお!」

【ノパ听)】「ねええええこおおおおっ!」

(*゚ー゚)「元気溢れる選手ですね。あの格好で寒くないのでしょうか」

( ^ω^)「彼女も武術家で、その実力はツン選手と互角ですお。速度では少し劣るものの、腕力は勝っていますお」

( ^ω^)「しかしながら、彼女が今回優勝するのは少し厳しいかと思ってますお」

(*゚ー゚)「それはどういう事でしょうか?」

( ^ω^)「まず大雑把で、考えて行動するのを苦手としてますお」

(*゚ー゚)「つまりは馬鹿なんですね?」

765 名前:名も無きAAのようです:2012/07/08(日) 20:36:02 ID:UrlmOsCg0

( ^ω^)「更に言えば、ヒート選手はつーちゃんがどんな猫がまだ知りませんお」

(*゚ー゚)「これは何とも大きなハンデですね。というか、その状況でヒート選手は何を追いかけてるのでしょうか」

( ^ω^)「さて次の選手ですが、この人が僕の中ではツン選手の対抗馬になるかと思っていますお」

( ^ω^)「トソン=トソン選手、体力自慢のタフガイですお!」

【(゚、゚トソン】「不肖、このトソン、全力でがんばらせて頂きます」

(*゚ー゚)「小柄なのでリーチの面で多少の不利がありそうですが、やる気は十分ですね」

( ^ω^)「ただ、怪力な上、多少そそっかしいとこがありますので」

( ^ω^)「壊されたくないものがあったら、ちゃんと家の中にしまっておいて欲しいですお」

(*゚ー゚)「だそうですよ、町の皆さん、気をつけて下さいねー」

( ^ω^)「さて次の選手ですが、まあ、この人にはあまり期待できないでしょう、クー=スナオ選手です」

【川;゚ -゚)】「何だとー? 私だってやる時はやるぞ?」

766 名前:名も無きAAのようです:2012/07/08(日) 20:38:43 ID:UrlmOsCg0

( ^ω^)「寒さが苦手な上に、身体能力は先の3人に劣りますので」

( ^ω^)「如何に頭を使って立ち回れるかが勝利の鍵ですが……」

( ^ω^)「きっとどこかでサボると思いますお」

【川;゚ -゚)】「サボるって決め付けんな!」

(*゚ー゚)「おっと、クー選手の背後に映る建物は、イチサンの町でも有名な温かいスープが美味しいお店ですね」

( ^ω^)「既にサボる気十分のようですお」

【川;゚- ゚)】「いや、これはたまたま……」

( ^ω^)「さて次はこの人、オトジャ=サースガ選手ですお!」

【+(´<_` )】「探し物は大得意、冒険野郎サスガイバーの実力をお見せしようじゃないか」

(*゚ー゚)「おおっと、オトジャ選手自信に満ち溢れた発言だーシネ!」

【(´<_`;)】「あれ? 今最後に何か不穏な言葉が聞こえた気がするんだけど?」

767 名前:名も無きAAのようです:2012/07/08(日) 20:40:22 ID:UrlmOsCg0

( ^ω^)「さて、この人も本命といえば本命です。なんせ本職のトレジャーハンターですからね」

( ^ω^)「しかも武器ではない道具、ワイヤーを持ってますので、高低差を無視した移動も可能ですお」

(*゚ー゚)「なるほど、これは期待が持てそうですねーデモシネ!」

【(´<_`;)】「いや、だから何か不穏な言葉が……」

( ^ω^)「さて、次はアニジャ=サースガ選手ですが……」

【(  _ゝ )】 チーン

( ^ω^)「未だ気を失ってるので放っておきましょう。起きてもどうせ戦力外ですお」

(*゚ー゚)「これは手厳しい。では彼は賭けから外しておきましょう」

【ξ;゚听)ξ】「お前ら、賭けまでやってんのかよ……」

( ^ω^)「ちなみに、現在はツン選手が一番人気ですお」

【ξ*゚听)ξ】「え、そうなの? じゃ、じゃあ、ちょっとがんばろっかな」

768 名前:名も無きAAのようです:2012/07/08(日) 20:44:50 ID:UrlmOsCg0

(*゚ー゚)「ツン選手、現金ですねー。私的には穴が来てくれた方が現金になるのですが」

【川;゚ -゚)】「お前が胴元かよ……」

( ^ω^)「さあ、選手紹介も最後となりましたお」

( ^ω^)「最後はこの人、わんわんお選手ですお!」

【(∪^ω^)】「わんわんお!」

( ^ω^)「元気良く走るわんわんお選手ですが、優勝は若干厳しいでしょうかお」

( ^ω^)「体力はそこそこつきましたし、足もそこそこ速くなりましたが、如何せん猪突猛進過ぎますお」

( ^ω^)「でも、個人的には今大会のダークホースだと思ってますので、がんばって欲しいですお!」

【(∪*^ω^)】「わんお!」

(*゚ー゚)「さあ、選手紹介も終わりました所で、肝心のつーちゃんの様子ですが……」

【(*゚∀゚)】

769 名前:名も無きAAのようです:2012/07/08(日) 20:46:00 ID:UrlmOsCg0

(*゚ー゚)「おおっと、ツーちゃんカメラの視界に1人の選手が見えました! これは……」

【ξ゚听)ξ】「みーっけ、と」

( ^ω^)「ツン選手ですお! 流石優勝候補、早くも勝負を決めるか!」

【(*゚∀゚)】「なー」

【ξ゚听)ξ】「取り敢えず……足を止めますか!」

(*゚д゚)「ツン選手、大きく跳躍し拳を固め……え? 拳!?」

【ξ゚听)ξ⊃】「でえええりゃああああっ!」

(;^ω^)「そのまま上空からつーちゃん目掛けて容赦なく殴りかかるうううっ!」

【(*゚∀゚)】「なっ!」

【ξ゚听)ξ】「チッ、外したか……」

(;*゚ー゚)「いや、外したかじゃなくて、何で殴りかかってんのよ!」

770 名前:名も無きAAのようです:2012/07/08(日) 20:48:53 ID:UrlmOsCg0

【ξ゚听)ξ】「動きを止める為よ。勿論、手加減はするわよ」

(;*゚ー゚)「猫相手に何てことすんのよ!」

【ξ゚听)ξ】「武器、魔法は禁止だけど、攻撃は禁止じゃないんでしょ?」

(;*゚ー゚)「禁止禁止! そんなことする人今までいなかったから明言しなかったけど、普通わかるでしょ!」

【ξ゚听)ξ】「面倒ねえ……。まあ、いいわ。次は拳を固めずに行くから」

(;*゚ー゚)「全然わかってない!? チッ、こうなったら……」

( ^ω^)「あれ、実況のシィさんの姿が消えましたが……まあ、いいですお」

( ^ω^)「逃げたつーちゃんはどうなってますかおね」

【(*゚∀゚)】

( ^ω^)「これはどこかの屋根の上のようですお。さて、ここから一番近いのは……オトジャ選手のようです」

【(´<_` )】「僕か。ブーン君、お転婆なレディはどこかな?」

771 名前:名も無きAAのようです:2012/07/08(日) 20:49:58 ID:UrlmOsCg0

( ^ω^)「オトジャさんの右前方、三階建ての建物の上ですお」

【(´<_` )】「オーライ、把握した。それじゃあ、行こうか」

( ^ω^)「オトジャ選手、ワイヤーを使い、華麗に建物を登って行きますお!」

【(´<_` )】「見付けたよ、レディ」

【(*゚∀゚)】「なー」

( ^ω^)「おおっとつーちゃん、オトジャ選手の姿を確認すると別の建物に向かって跳躍、逃げ出しましたお!」

【+(´<_` )】「逃がさないよ」

( ^ω^)「オトジャ選手、巧みにワイヤーを駆使し、同じように跳躍して追い掛ける!」

【(*゚∀゚)】「なー」

( ^ω^)「つーちゃんも必死に逃げますが、徐々に距離は詰まって行きますお。これは捕まったか!?」

【+(´<_` )】「フフ、この僕の華麗なるワイヤーワークからは逃れ……」

772 名前:名も無きAAのようです:2012/07/08(日) 20:52:29 ID:UrlmOsCg0

( ^ω^)「ああっと! ワイヤーを引っ掛けた建物が倒れてくる! これはーっ!」

【(´<_`;)】「え!? ちょ、ま──」


     
| 壁          / ミ |
     |      ビターン   / ミ   |
     |     \、_,     _/  |
     |     _,       (   |
     |     )(   )ノ  ___──
     |     ┗-ヽ ノ        ̄ ̄ ̄
     |       ┏┘   ̄ ̄ ̄──
     |    ')     (`    |
     |    /'        '^\   |


( ^ω^)「何とこれは建物に見せかけたハリボテでしたお! まさかのトラップ!」

(*゚ー゚)「町の皆さんが一丸となってがんばってくれました」

( ^ω^)「ここで実況のシィさんがお戻りですお。シィさん、どちらへ?」

(*゚ー゚)「ちょっとお花を……」
774 名前:名も無きAAのようです:2012/07/08(日) 20:56:05 ID:UrlmOsCg0

(* ー )「摘むための根回しに」

( ^ω^)「はい、聞かなかった事にしましょう。さて、ここで他の選手の様子ですが……」

【****】

(;^ω^)「えっと、これはなんでしょうかお? 白いもさもさの……えっとこれは誰の映像でしょうかお?」

(*'ω(*'ω(*'ω(*'ω(*'ω')*'ω')*'ω')*'ω')
  (*'ω(*'ω(*'ω(*'ω(*'ω')*'ω')*'ω')
    (*'ω(*'ω(∪´ω(*'ω(*'ω')
      (*'ω(*'ω(*'ω(*'ω')
        三ヽノパ听)ノ「ねこおおおおっ!」


(;^ω^)「ああっと、ヒート選手! 大量の猫を捕獲して戻って来たあああっ!」

ノパ听)「どうだ! 捕まえて来たぞ! 猫っ!」

(*゚ー゚)「これはすごい! ヒート選手、恐ろしいまでの身体能力の高さです!」

775 名前:名も無きAAのようです:2012/07/08(日) 20:58:22 ID:UrlmOsCg0

( ^ω^)「問題はこの中につーちゃんがいるかどうか……ああっと、今審判団による判定が終わりましたお!」

(*゚д゚)「残念! つーちゃんはいませんでした! というか、黒猫が1匹たりともいません!」

ノパ听)「お? この猫じゃ駄目なのか?」

( ^ω^)「つーちゃんは黒い猫だお、せめて色ぐらいは知っててくれお」

ノパ听)「よし、わかった、黒いやつだな! 行っくぞおおおっ!」

( ^ω^)「さあ、ヒート選手、再びつーちゃん捕獲に走りますお」

(*゚ー゚)「この間に、間違って捕まえられた猫さん達は解放しましょうか」

ニャー   ニャー   ニャー   ニャー   ニャー    ニャー   ニャー   ニャー   ニャー   ニャー
('ω'*)三('ω'*)三('ω'*)三('ω'*)三('ω'*)三(*'ω')三(*'ω')三(*'ω')三(*'ω')三(*'ω')


                      (∪´ω`)


(;^ω^)「ああっと! 解放された猫さん達の中からわんわんお選手の姿が!」
777 名前:名も無きAAのようです:2012/07/08(日) 20:59:58 ID:UrlmOsCg0

(*゚ー゚)「どうやら間違えて捕獲されたようですねー。捕まえるのはせめて猫だけにして欲しいものです」

(;^ω^)「てか、大丈夫かお、わんお?」

(∪´ω`)ノ「わんおー」

(;^ω^)「あんまり無理しなくていいお? わんおはつーちゃんと遊ぶつもりで楽しむお?」

(∪´ω`)
  ブルブルブル
(((∪>ω<)))

(∪^ω^)「わんお!」

(*゚ー゚)「さあ、わんわんお選手、再び元気よく走り出しました!」

( ^ω^)「がんばれお、わんお!」

【(∪^ω^)】「わんわんお!」

778 名前:名も無きAAのようです:2012/07/08(日) 21:02:19 ID:UrlmOsCg0

(*゚ー゚)「勝負は未だ続いております。他の選手の動きはどうなってるでしょうか」

【川*゚ -゚)U】「ふぅ……。おやっさん、おかわりくれ」

( ^ω^)「大方の予想通り、完全にサボりに入っているクー選手!」

【(>、<;トソン】「すみません! すみません!」

( ^ω^)「こちらも予想通り、いや、予想以上というべきか、建物自体を破壊して謝るトソン選手」

【ξ#゚听)ξ】「あ? 何よ、やろうっての?」

( ^ω^)「どこからともなく現れたガラの悪い一団に絡まれているツン選手」

( ^ω^)「多分、僕の隣でほくそえんでる方の根回しでしょうが……」

(*^ー^)

( ^ω^)「虎の尾は踏まないようにして欲しいものですお」

【ξ#゚听)ξ///⊃】「邪魔よ!」

779 名前:名も無きAAのようです:2012/07/08(日) 21:03:41 ID:UrlmOsCg0

( ^ω^)「さて、惨劇から目を背ける事にして、現在つーちゃんに一番近いのは……」


【(*゚∀゚)】         【(´<_` )】


( ^ω^)「ああっと、先ほど壁に当たって轟沈したと思われたオトジャ選手ですお!」

【+(´<_` )】「あの程度、このサスガイバーにかかればなんて事はないさ」

(*゚ー゚)「まだ若干顔を赤く晴らしたままでは説得力はありませんが、今度は慎重に行くようです」

(*゚ー゚)「ゆっくりと屋根の上から、建物の前にいるつーちゃんに近付いて行きます」

【+(´<_` )】「オーケィ、レディ。そのままじっとしててね」

( ^ω^)「じりじりと近付くオトジャ選手。おおっと、ここでつーちゃん目掛けて飛んだー!」

【(*゚∀゚)】!?

【+(´<_` )】「貰っ──」

780 名前:名も無きAAのようです:2012/07/08(日) 21:05:22 ID:UrlmOsCg0

           ∩∩ クマッ!
           (・(エ)・)
            ⊂彡#)<_゚;) ヘブオッ!?


(*゚д゚)「ああっと、オトジャ選手! どこからともなく現れたクマに吹っ飛ばされたああああっ!」

(:^ω^)「ちょ、オトジャさああああんっ!」

(*゚ー゚)「ちなみにノースニューソクシロクマのクマーちゃんは、三丁目のナカジマさんのペットです」

(*゚ー゚)「シロクマなのに色が黒いという珍しいクマーちゃんは、つーちゃんとは大の仲良しなんですよー」

(:^ω^)「あれもあんたの仕込みかお」

(*>ー<)ヾ テヘッ

(:^ω^)「さ、さあ、気を取り直してつーちゃんの姿を追いましょうお」


【(*゚∀゚)】       【(^ω^∪)】

781 名前:名も無きAAのようです:2012/07/08(日) 21:07:05 ID:UrlmOsCg0

( ^ω^)「おおっと、オトジャ選手から逃げたつーちゃんの目の前にわんわんお選手の姿がありますお!」

(*゚ー゚)「わんわんお選手、これは絶好のチャンスだ!」

【(*゚∀゚)】  【(^ω^∪)三】 「わんわんお!」

      【彡(*゚∀゚)】 ヒラリッ
【(^ω^∪)三】 !?

( ^ω^)「ああっと、つーちゃん、わんわんお選手の突進をひらりとかわしたーっ!」

【Σ(>ω<∪)】 ゴチンッ!

(;^ω^)「わんわんお選手、そのまま家屋の壁に激突。その上に雪が落ちてくるというお約束の展開に!」

【(*゚∀゚)=3】「なー」

(*゚ー゚)「つーちゃん、雪に埋もれてしまったわんわんお選手を嘲笑うかのように近付いて行きます」
  バッ!
【彡(∪^ω^)っ】「わんわんお!」

782 名前:名も無きAAのようです:2012/07/08(日) 21:08:18 ID:UrlmOsCg0

【(;*゚∀゚)】「なっ!?」

( ^ω^)「おおっとわんわんお選手、雪の中から勢いよく飛び出し、つーちゃんに向かってダイブ!」

(*゚д゚)「辛くもそれをかわすつーちゃん! そして2人の追いかけっこが始まるー!」

【三(∪^ω^)】「わんわんお!」   【三(*゚∀゚)】「なー!」

( ^ω^)「白熱するデッドヒート! わんわんお選手追いつけるかーっ!」

(*゚ー゚)「2人の微笑ましい追いかけっこに、町の皆さんも大喜びです!」


        (・(エ)・)(#)<_(# )
        三ヽノパ听)ノ「黒いの捕まえたぞおおおっ!」


(;^ω^)「ちょ、色しかあってねえお!」

(*゚д゚)「ああっと、ヒート選手、再び戻って来ましたが、何とクマーちゃんを捕まえてしまったーっ!」
785 名前:名も無きAAのようです:2012/07/08(日) 21:10:43 ID:UrlmOsCg0

(;^ω^)「ていうか、オトジャさああああんっ! 生きてますかおーっ!」

(*゚ー゚)「さあ、その間にもつーちゃんとわんわんお選手の追いかけっこは続いておりますが……」

 【三(∪^ω^)】「わんわんお!」  【ミ(*゚∀゚)】「なー!」

(*゚ー゚)「おおっと、勝負の舞台は屋根の上に移行しております」

(*゚ー゚)「猫であるつーちゃんはともかく、わんわんお選手、大丈夫か!?」

       【彡(∪^ω^)っ】「わんお!」

(*゚д゚)「わんわんお選手、飛んだー! 届くのか、これは!?」

( ^ω^)「わんお! がんばれお!」


       【彡(∪;^ω^)ノシ】「わんおー!?」
    【(*゚∀゚)】

(*゚д゚)「ああっと、飛ぶには飛んだがこれは、飛び過ぎたか!?」

786 名前:名も無きAAのようです:2012/07/08(日) 21:12:11 ID:UrlmOsCg0

(;^ω^)「ちょ、下に落ちるお!」

【ε三ヾ(^ω^∪)】 キキーッ

(*゚д゚)「ギリギリの所で踏み止まったわんわんお選手! そして!」

【∩(^ω^∪)∩】「わんお!」

(*゚д゚)「そのまま反転してつーちゃんの方に転がったああああっ!」

( ^ω^)「あれはまさかの、ヒート選手の必殺技、でんぐり返しスペシャルだあああっ!」

【(;*゚∀゚)】「なっ!?」【(^ω^∪)⌒Y⌒Y⌒ 三】ゴロゴロ

(*゚д゚)「予想外の展開につーちゃん逃げ遅れたーっ! そのまま両者激突ーっ!」

(;^ω^)「ちょ、2人とも落ちるお!」

(;*゚ー゚)「つーちゃん!」

【(;*x∀x)】【(xωx;∪)】 ヒュー
788 名前:名も無きAAのようです:2012/07/08(日) 21:13:51 ID:UrlmOsCg0

【川*゚ -゚)U】「ああ、雪見酒というのも乙なもんだな。おやっさん、つまみが切れたんで……」

【(;*x∀x)】 ドスンッ!
【(xωx;∪)】 ドスンッ!
【川;゚ -゚)U】「ぬおっ!?」

【(*-∀-)⊂川*゚ -゚)⊃(∪´ω`)】「わんおに猫じゃないか? どこから落ちて来た?」

( ^ω^)「ああっと、わんわんお選手とつーちゃん、屋外のテーブル席で飲んでいたクー選手の上に落下!」

(*゚ー゚)「そしてクー選手、つーちゃんを捕まえたーっ!」

(;^ω^)「優勝はまさかのクー選手です! てか、こいつずっとサボってやがったお」

(*゚д゚)「何という劇的な幕切れ! クー選手、おめでとうございます!」

【ヾ川*゚ -゚)U】「何だかよくわからんがありがとう! おやっさん、つまみの追加ねー?」

(*゚ー゚)「というわけで、以上を持ちまして第8回、チキチキつーちゃん捕獲大作戦を終了致します」

(*゚ー゚)ノシ「実況は私、シィ=ダンヴォールと」

( ^ω^)ノシ「解説、ブーン=ナイトウでお送りしました。皆さんお疲れ様でしたおー」

789 名前:名も無きAAのようです:2012/07/08(日) 21:16:18 ID:UrlmOsCg0

 〜 イチサンの町 町長宅前 夕刻 〜


(;^ω^)「色んな意味で疲れたお……」

お祭り騒ぎが終わると、そのまま町をあげての大宴会という更なるお祭り騒ぎが行われた。
ある意味祭りの主役だったツン達は町の人達にしこたま飲まされ、今は町長宅で眠っている。
わんわんおも一緒に遊んだお陰で仲良くなったのか、つーと一緒に眠っていた。

( ^ω^)「でも、流石雪国だおね。外で眠ってる人が1人もいないお」

少し前まで宴会で酔い潰れた人達が、そこかしこで眠りこけていたはずだが、今は誰一人見かけない。
外で眠るとヤバいのはよくわかっているのだろう。

( ^ω^)「ま、取り敢えず幽霊船が出る海域の情報は入手したからよしとするお」

あの後、約束通り情報は教えて貰えたので、幽霊船捜索に出発する事は出来るようになったが、
この状況なら明日に出発するのは無理かもしれない。
誰か1人、2人は二日酔いになってそうだ。

790 名前:名も無きAAのようです:2012/07/08(日) 21:18:25 ID:UrlmOsCg0

( ^ω^)「折角だから、数日滞在してみるのもいいおね」

この短い時間で色んな人と仲良くなれた。
気候的には寒い町だが、人々の繋がりが深く、暖かい町だと思う。

( ^ω^)「ここはいい町だお」

(*゚ー゚)「そう言って貰えると、町長としては嬉しい限りね」

( ^ω^)「お、シィさん」

(*゚ー゚)つU~「はい、これ。陽が落ちると急に冷えるから、そろそろ家の中に入った方がいいわよ?」

( ^ω^)つU~「ありがとうございますお」

僕はシィさんから暖かいコーヒーが入ったカップを受け取り、礼を述べる。
シィさんもだいぶ飲んでたはずだが、全く平気そうな顔をしていた。

(*゚ー゚)「色々とごめんね」

( ^ω^)「お?」

791 名前:名も無きAAのようです:2012/07/08(日) 21:21:00 ID:UrlmOsCg0

(*゚ー゚)「お祭り騒ぎに付き合わせちゃって、ごめんなさいって話」

( ^ω^)「ああ、いや、別にまあ、こっちも楽しかったといえば楽しかったですお」

追いかけっこだけならともかく、その後散々ただで飲み食い出来たのだし、うちのパーティーの皆は不満もないだろう。
結構ひどい目にあったオトジャさんですら、かなり楽しんでいた様に見えた。

(*゚ー゚)「それなら良かったけど。ホント言うと、今回のこれはあなた達を出汁にしたようなものだったの」

( ^ω^)「お、それはどういう事ですかお?」

シィさんの話によると、元々近々祭りが行われる予定だったらしい。
しかし、この異常気象の影響で、計画していた祭りのメインイベントの変更を余儀なくされていたようだ。

代わりに何をやるか決めかねていた時にちょうど僕らが来たので、
これ幸いと祭りを今日開催する事に決めたという。

( ^ω^)「だからあの遠視の魔法とかハリボテとか、準備が良かったんですおね」

(*゚ー゚)「そういう事。付き合わせちゃって申し訳なかったわね」

( ^ω^)「かまいませんお。そもそも僕は楽してましたし」

792 名前:名も無きAAのようです:2012/07/08(日) 21:24:11 ID:UrlmOsCg0

僕がそう言って笑うと、シィさんもそれもそうかと快活に笑う。
町長業務を離れているからか、それとも酔っ払っているからか、シィさんは随分と砕けた口調で話してくれる。

( ^ω^)「しかし、予め準備はしていたとしても、急遽日程を繰り上げたのによくこれだけ集まりましたおね」

(*゚ー゚)「娯楽が少ない町だからね」

( ^ω^)「それもあるのかもしれませんけど、町の人の一体感が他の町よりだいぶ高いと思いますお」

(*゚ー゚)「そうかもね。まあ、この町も色々あったから……」

少し言葉を濁したシィさんだが、オトジャさんの解説や予備知識で何の事かはわかっている。
住民が一丸となって町を復興させてきた結果なのだろう。

( ^ω^)「シィさんも、竜との戦争は実際見たんですおね」

(*゚ー゚)「そうね。見たと言っても年が年だし、ほとんど覚えてないけどね」

(*゚ー゚)「おばあちゃん……前町長からは色々と聞いたから、町の歴史的な事なら大体知ってるわ」

何か聞きたい事があるのかと問い掛けてくるシィさんに、僕はすぐには答えられなかった。
あるにはあるのだが、それを聞いてもいいのか僕は迷っていた。

793 名前:名も無きAAのようです:2012/07/08(日) 21:25:54 ID:UrlmOsCg0

(*゚ー゚)「ブーン君も魔法使いだから、やっぱり大賢者や竜の話が聞きたいのかな?」

( ^ω^)「そういう話を聞きに来る人は多いのですかお?」

(*゚ー゚)「たまにいるわ。魔法使いが聞きに来た場合は、ほとんどその質問もしていくけどね」

大賢者が使った魔法や竜の生態について聞きたいのだろうが、流石にそんな詳細はわからないんで、
期待には応えられないんだけどとシィさんは苦笑する。

確かに同じく魔法使いである僕も、大賢者や竜の事は聞きたいが、質問の内容は大きく異なる。

( ^ω^)「やっぱりこの町では、大賢者バーン=ホライゾンは多くの人に恨まれてるんですかおね?」

結局僕は聞くか迷っていた質問を口にした。
この町は竜との戦争時に戦場になった場所だ。
町を壊したのは竜だけでなく、それと戦ったじいちゃんもだと聞いている。

守る為の戦いであったと僕は信じているが、巻き込まれた人達がどう思っているのかはわからない。

(*゚ー゚)「そうねえ、昔は少しはいたかもしれないけど、多分今はもう、ほとんどいないんじゃないかな?」

( ^ω^)「そうなんですかお?」

794 名前:名も無きAAのようです:2012/07/08(日) 21:27:46 ID:UrlmOsCg0

(*゚ー゚)「元々、大賢者様が悪いわけじゃないしね。恨んでたとしても、八つ当たりに近いものだったはずよ」

シィさんの言葉に、僕はほっと胸を撫で下ろす。
何となく、胸の痞えが取れた気がした。

(*゚ー゚)「本当だったら一番恨んでいたかもしれない人が、大賢者様に弟子入りしたしね」

(*゚ー゚)「それなのに、他の人がいつまでも引き摺ってたらおかしいって空気にもなったみたいね」

(;^ω^)「え? それってどういう事ですかお?」

予期せぬシィさんの言葉に、僕は思わず持っていたカップを取り落としそうになってしまう。
僕は何とかカップを掴み直し、シィさんに詳細を聞いた。

(;^ω^)「その、一番恨んでいたかもしれない人って、誰の事ですかお?」

(*゚ー゚)「ブーン君はヴィップの魔法道具屋さんだったよね?」

(*゚ー゚)「だったら知ってるんじゃないかな、今はあの辺に住んでいるって聞いてるし」

(;^ω^)「東の賢者……ドクオさんですかお?」

795 名前:名も無きAAのようです:2012/07/08(日) 21:30:29 ID:UrlmOsCg0

(*゚ー゚)「そう、ドクオさん。彼はこの町の出身なのよ」

(;^ω^)「そうだったんですかお?」

ドクオさんがイチサンの出身という話は聞いた事がなかった。
そもそも、ドクオさん自身の昔の話はほとんど聞いた事がない。
聞いても教えてくれなかったのだ。

(;^ω^)「その、恨んでてもおかしくない話って、何があったんですかお?」

(*゚ -゚)「本当はあんまり話していい話じゃないだろうから、人に話す事は稀なんだけど……」

僕は自分の出自は隠しながらも、ドクオさんに魔法の師事を仰いだ事や、色々とお世話になっている事を説明し、
何とかシィさんに話して貰えないか頼み込んだ。

シィさんも何となくそこにあるただならぬ僕の思いを感じ取ってくれたのか、僕の頼みを了承してくれた。

(*゚ー゚)「本来、竜との戦場はもう少し離れた場所で、この町に戦火が及ぶ事はほとんどなかったの」

(*゚ー゚)「当時戦時下ではあったけども、この町では平素と変わらぬ平和な日々が送られていたと聞くわ」

戦況は一進一退の様相を呈し、長引くと思われていたけど、大賢者と天空竜の活躍で人側が優勢になりかけた時に、
その事件は起きたらしい。

796 名前:名も無きAAのようです:2012/07/08(日) 21:32:49 ID:UrlmOsCg0

(*゚ー゚)「当時の竜側に、古代竜とは別に強力な竜がいたらしいの」

名はファブニル。
その狡猾な性格から邪竜と恐れられ、古代竜に力は劣るがそれを補って余りある能力を備えていたという。

(*゚ー゚)「ファブニルは姿と魔力を完全に消す事が出来たらしいわ」

ファブニルはその能力を使い、神出鬼没に現れては兵を襲っていたらしい。
その存在に人側は苦戦を強いられたが、一計を案じ、大賢者の力で深手を負わせる事が出来た。

(*゚ -゚)「深手を負ったファブニルは、姿を消しつつこの町まで逃げて来たの」

そしてファブニルは、この町の何軒かの家を囲む様に降り、自身の子飼いの竜を呼び寄せ警護に当たらせて、
そこで傷を癒し始めたという。

当然、町の人間は逃げ惑い、中には追い払おうと戦いを挑むものもいたが、徒に生命を失うだけであった。
如何に手負いとはいえ、普通の人間が竜に敵うわけがない。
戦える者は兵として出払っており、なす術がなかった。

(*゚ -゚)「そこで当時の町長だったおばあちゃんは、町の放棄を決意」

(*゚ -゚)「住民を引き連れ、国軍兵士の駐屯地を目指す事にしたらしいの」

797 名前:名も無きAAのようです:2012/07/08(日) 21:36:41 ID:UrlmOsCg0

全員で逃げ出したかったが、逃げる事も出来ずに取り残された人もいたらしい。
ファブニルが取り囲んだ家の中にいた住民だ。

(*゚ -゚)「それでも少数の為に全てを犠牲にするわけにはいかないから、脱出を決意したらしいわ」

逃げる途中、いち早くファブニルを追って来た大賢者と遭遇した町長は、状況を説明したらしい。
それならばと、取り残された住民を助けに行こうとした大賢者を町長は呼び止めたという。

(*゚ -゚)「貴方が行けば、恐らくファブニルは残った住民を皆殺しにし、姿を消して逃げるでしょうと」

だからと言って遠距離から強力な魔法で攻撃すれば、ファブニルは倒せても取り残された住民も一緒に殺してしまう。
それがわかっていて狡猾なファブニルはあの位置を選んだのだと。

姿を消し、飛び回っていれば滅多な事ではやられないファブニルだが、手傷を追った今、
治療に専念出来る場所が欲しい。
だがその際足を止めれば、遠距離からの強力な魔法でやられる恐れもある。

(*゚ -゚)「ファブニルは竜側にも疎まれていたらしいから、ファブニルとしても苦しい選択だったのでしょうね」

ファブニルはシベリアに逃げ帰る事も出来なかったのだろうと。

798 名前:名も無きAAのようです:2012/07/08(日) 21:39:00 ID:UrlmOsCg0

(*゚ -゚)「大賢者様はそれでも住民を見捨てるわけにはいかないだろうと、何とか手を尽くそうとしたらしいわ」

しかし、悠長に構えていてはファブニルが回復してしまう。
取り残された住民の生命も、いつまで安全かはわからない。

(*゚ -゚)「そんな中、町長は、町の住民は1つの決断を下したの」

(*゚ -゚)「それは町から逃げる事を決めた時に、既に決まっていたかもしれない答えだったわ」

小を捨て、大を生かす。
ここでファブニルを逃せば、また多くの兵や町の住民に被害が出、戦争を長引かせる可能性が高い。
それならばここでと、大賢者に魔法による遠距離攻撃でファブニルを倒す事を提案したらしい。

(*゚ -゚)「大賢者様はそれを受け入れ、ファブニルを倒したわ」

(*゚ -゚)「町の一部と、何十人かの住民を犠牲にして」

それから、ファブニルを失った竜側の戦力は下がり、最終的に炎竜が倒された事で戦争は終結したという。
しかし、終結間際は一時的に戦線が拡大し、イチサンも何度となく戦火に晒される事になった。

(*゚ー゚)「それでも人々は往き続け、町はここまで復興された」

そう言ってシィさんは右手を左から右にゆっくりと動かし、眼前に広がる町を指し示す。
陽はすっかり落ち、町には夜の帳が下りていた。

799 名前:名も無きAAのようです:2012/07/08(日) 21:40:25 ID:UrlmOsCg0

(*゚ー゚)「私の話はこんなとこよ」

( ^ω^)「そんなことがあったんですかお……」

僕は話してくれたシィさんに礼を述べ、今の話を反芻するように頭の中で考える。
確かにそれなら、じいちゃんの事を恨んでいた人はいたかもしれない。
じいちゃんに絶対的な否はなくとも、直接的に手を下したのならそう思われても仕方がない部分もある。

(;^ω^)「って、ドクオさんの話はどうなったんですかお?」

じいちゃんの話ですっかり忘れていたが、本来はドクオさんの話であったはずだ。
今の話の中にはドクオさんは出て来なかった。

(*゚ー゚)「ああ、そういえばそうだったね。でも、何となくわかってるんじゃない?」

( ^ω^)「それは……」

(*゚ -゚)「ドクオさんはね、あの時取り残された人の中で唯一生き残った人なの」

( ^ω^)「お……」

800 名前:名も無きAAのようです:2012/07/08(日) 21:42:33 ID:UrlmOsCg0

そろそろ部屋に戻ると言うシィさんを見送り、僕は1人立ち尽くしていた。
ドクオさんとじいちゃんに、そんな因縁があったとは全く知らなかった。

( ^ω^)「因縁なんて言葉で済ませられるものじゃないおね……」

その時取り残された人達の中には、ドクオさんの両親もいたという話だ。
それはつまり……

( ^ω^)「じいちゃんがドクオさんの両親を殺したのかお……」

口に出してみると、それはひどく重い響きを持っていた。
言うなればじいちゃんは、ドクオさんにとって両親の仇だ。

( ^ω^)「でも、そんな素振りは一切なかったおね……」

僕の記憶を思い返してみても、決して会話が多い間柄ではなかったが、
じいちゃんとドクオさんの間には険悪な雰囲気は一切なかった。

とはいえ所詮は子供の目だ。
僕の気付かぬ所で、本当は何かあった可能性もある。

801 名前:名も無きAAのようです:2012/07/08(日) 21:46:55 ID:UrlmOsCg0

( ^ω^)「ドクオさんは、本当にじいちゃんの事を恨んでなかったのかお?」

そんな簡単に忘れられるような事だろうか。
そういった疑問も浮かぶが、両親の顔を最初から知らない僕には答えられない。

( ^ω^)「もし、ドクオさんがまだ……」

一瞬、僕の中にどす黒い、最悪の想像が浮かんでしまった。
僕は慌てて頭を振り、それを振り払う。

( ^ω^)「そんな事ないお。ドクオさんはきっと、そんな人じゃないお」

僕はドクオさんの事を信頼している。
ツンにも言ったが、一番信じているのだ。

でも、ドクオさんが僕の事をどう思っているのかはわからない。

じいちゃんが亡くなって、少し距離が空いた様になってしまったドクオさん。
師匠と呼ばせて貰えなくなった事も、僕の中では不安を掻き立てる材料となっている。

( ^ω^)「……止めるお、そんな事考えるなお」
803 名前:名も無きAAのようです:2012/07/08(日) 21:50:52 ID:UrlmOsCg0

僕は自分に言い聞かせる様に口に出し、気持ちを落ち着かせる。
過去にそういう事実があったとしても、ドクオさんは思慮深く、やさしい人だ。
だからこそ、じいちゃんに弟子入りし、再びそんな戦いが起こらぬよう力を付けたのだろう。

( ^ω^)「僕はドクオさんを信じてるお」

再び口に出し、自分の中の揺れを抑える。
どちらにしても、今考えても仕方のないことだ。

( ^ω^)「ヴィップに帰ったら、ドクオさんに今日の話をすればいいんだお」

( ^ω^)「そうすれば、きっとちゃんと話してくれて、心配し過ぎだって笑い飛ばしてくれるお」

僕は大袈裟な身振りでくるりと向きを変え、町長宅へ向かう。
今は目の前のクエストに集中する。

僕はそう結論付け、今日はもう眠ってしまおうと心に決めた。



     第三十八話 白銀の黒を追え 終

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