529 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 20:49:29 ID:.iP4EDXc0

 〜 ソクホウ西部 ソレイ港 マリン・サースガ号内 〜


( ^ω^)「ソクホウに着いたのはいいけど、どうするかおね」

ξ゚听)ξ「流石にラウンジの一行が陸路で先回り出来たとは思えないけど……」

川 ゚ -゚)「だが相手は西の賢者だからな。そのくらい出来ても不思議はない」

ノパ听)「おーい、降りないのかー? 早いとこ飯にしようぜー!」

(∪^ω^)「わんわんお!」

(´<_`;)「こ、ここは慎重に慎重を期してだね、顔の割れていない僕がまず様子を……」

(゚、゚トソン「無理をしないで下さい。顔がこれ以上ないくらい引きつってますよ?」



     第三十五話 敗者の凱旋


530 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 20:51:59 ID:.iP4EDXc0

( ^ω^)「オトジャさんにこれ以上迷惑かけられませんから、しばらく船に隠れててくださいお」

僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。

+d(´<_`;)「だ、大丈夫だよ。彼の西の賢者とて、この僕にかかればやり過ごす事も訳無いさ」

彼の名前はオトジャさん。
アニジャさんの弟で、トレジャーハンターをやっていて、冒険野郎サスガイバーの異名を持つ人だ。

ヴィップの町の教会から盗まれた聖骸布の奪還というクエストを請け負った僕らは、
色々と想定外の事態に会いながらも、偶然通りかかったオトジャさんの助けも借りて無事目的を達成する事が出来た。

正確には、まだ聖骸布を届け終えていないので達成したわけではないのだが、
目的地であるソクホウの王宮はここからさほど遠くない。

川 ゚ -゚)「どちらにしろ、我々はソクホウを気軽にうろつくわけにはいかないんだがな」

(゚、゚トソン「ですねえ。知り合いに見られたら事ですし」

クーとトソン君はソクホウから抜け出し、旅に出ている身だ。
見付かると色々と問題が発生するのは確実である。
途中でどこかに下ろすという手もあったのだが、状況を考えると寄り道も戦力を減らすのも避けたかったのだ。

531 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 20:53:22 ID:.iP4EDXc0

( ^ω^)「取り敢えずは色んな意味で身の軽い、僕とツンが様子見に行って来るかおね」

ξ゚听)ξ「それがいいわね。あんたはあんまり軽いわけでもないけど」

(∪^ω^)「わんわんお!」

( ^ω^)「わんおも一緒に行くかお?」

ツンの嫌味を聞き流し、そう結論付けて船から降りようと身を起こす。
船は既に接岸しており、そこで全員甲板に伏せて会話しているという少し間抜けな状況だったが、
幸いにも懸念していた襲撃は一切無かった。

( ^ω^)つ□「取り敢えず、その辺見回って来るから、これは預けておくお」

<「その必要はありませんよ」

(;^ω^)「お……?」

僕が携帯したままだった聖骸布を渡そうとしていると、突然背後から声を掛けられる。
嫌な予感満載で、恐る恐る振り向くと、そこには想定外の顔があった。

532 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 20:54:19 ID:.iP4EDXc0

( ∵)「お疲れ様です、ブーン様。クエスト達成、お見事です」

(;^ω^)「ビコーズさん!? 何でここに……」

(゚、゚;トソン川;゚ -゚)「ゲッ……」

慌てて隠れるクーとトソン君だが時は既に遅い。
少なくとも聖骸布を受け取ろうと立ち上がっていたクーの姿は、ばっちりと確認されただろう。

しかしながらビコーズさんは素知らぬ顔で僕に話し掛けて来る。

( ∵)「なに、連絡は受けていましたのでね。ブーン様がクエストを成功させ、海路でお戻りという話を」

それでお迎えに上がりましたと、ビコーズさんは恭しく頭を下げる。
何だかよくわからない部分もあるが、取り敢えずこれで本当にこのクエストは終了らしい。
僕は聖骸布をビコーズさんに差し出した。

( ∵)「それはそのままお持ちください」

(;^ω^)「お?」

533 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 20:55:50 ID:.iP4EDXc0

( ∵)「私は貴方様をお迎えに上がったのですよ」

ビコーズさんは僕に付いて来て欲しいと頼む。
ビコーズさんには聞きたい事が沢山あるし、こちらに対する害意は無いだろうから付いて行くのはかまわないが、
行き先ぐらいは聞いておきたい。

(;^ω^)「えっと、どちらまでですかお?」

( ∵)「勿論、王宮にですよ」

それは何となくわかっていたが、王宮のどこに案内されるのかが問題だ。
さり気なくぼかされる物言いに、どうにも嫌な予感が拭えない。

( ∵)「あ、ご希望なさる方はご同行して頂いてかまいませんよ?」

多分笑顔なのだろうと思われる普段と変わらぬ表情で、ビコーズさんは船上に声を掛ける。
しかし、誰もその言葉に反応はしない。

ξ゚听)ξ「それじゃあ、私が行ってもいいですか?」

( ∵)「ええ、勿論ですよ、ツン=ディレード様」

534 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 20:56:57 ID:.iP4EDXc0

ξ゚听)ξ「……貴方の様なご高名な方に、名をお覚え頂いて光栄ですわ」

( ∵)「幾度と無くブーン様の御身を守護して頂いたのです。勿論、存じ上げておりますとも」

(∪^ω^)「わんわんお!」

( ^ω^)「お、わんおは悪いけどお留守番だお」

(∪´ω`)「わんおー」

( ∵)「ハハハ、折角ですから、わんわんお君もご一緒されてはいかがでしょうか」

( ^ω^)「お? いいんですかお?」

( ∵)「以前もご一緒なされたじゃないですか。こちらは一向にかまいませんよ」

それから僕はオトジャさんに後を頼み、ビコーズさんが用意した馬車に乗る。
他の皆はこれからオトジャさんの家に向かうという事で、後ほどそこで合流する事にした。

( ∵)「それでは参りましょうか」

( ^ω^)「お願いしますお」

(∪^ω^)「わんお!」

535 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 20:58:11 ID:.iP4EDXc0

相変わらずの高級感溢れる馬車に乗り、僕達は王宮を目指す。
ともすれば旅の疲れから思わず眠りそうになってしまうが、流石にそれは無作法なので何とか耐え切った。

( ^ω^)「お? 今回は入る場所が違うんですかお?」

( ∵)「ええ。重大なクエストを達成して帰還した優秀な冒険者が、裏口から入る理由もないでしょう」

その言葉通り、馬車は王宮に向かってまっすぐに進み、僕らは正面の入り口の前に降ろされた。
すぐ様周りを兵士に取り囲まれるが、勿論僕らを捕らえる為とかではなく、護衛に付く様に周りに立っている。

彼らを引き連れて歩くビコーズさんに従って僕らも歩き始めるも、
何だか途轍もなく嫌な予感を感じ、僕はツンの方を見た。

ξ;゚−゚)ξ

ツンも僕と同じ気持ちなのか、難しい顔をしていた。
僕の視線に気付くと、ここまで来たら腹を括れとでも言いたげな神妙な顔をしてみせる。

(;^ω^)「あの、ビコーズさん? これからどこへ……?」

( ∵)「勿論、謁見の間ですよ」

(;^ω^)「ああ、謁見の間ですかお。なるほどなるほど……」

536 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 20:59:41 ID:.iP4EDXc0

謁見の間、言葉通り考えれば、目上の人に面会する為の部屋だ。
この場合、面会するのは僕達であろう。
そして目上の人というのは……

(;^ω^)「ひょっとして、これから僕達が会うのは……」

( ∵)「はい、現ニューソク王国国王、モナー=ニューソク様です」

(;^ω^)「……やっぱりですかお」

(∪^ω^)「わんおー」

何となく予測はしていた展開ではある。
ビコーズさんの物言いや、この物々しい警護から察する事が出来た。

(;^ω^)「その、王様に会うのに、こんな格好でいいんですかおね?」

馬車を置いて着の身着のままの船旅で、僕らの格好はだいぶみすぼらしく見える。
船で水を浴びるぐらいは出来たので、長旅の後にしてはかなりマシな方だと思うが、
それでも王に謁見していい格好だとは思えない。

( ∵)「かまいませんよ。それも激闘を潜り抜けた勲章のようなものです」

( ∵)「誇れるものでこそあれど、貶められるものではありません」

537 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 21:00:57 ID:.iP4EDXc0

そう言ってくれるビコーズさんだが、何だか礼儀を欠くようで申し訳ない。
僕はそう思ったのだが、ツンは自分達は冒険者として呼ばれているのだし、
これが正装だから気にしてもしょうがないと割り切った事を言う。

( ∵)「ツン様の言う通りですよ。堂々と胸を張っておられれば良いのですよ」

ξ;゚听)ξ「その、ツン様というのは止めて頂けませんか? 私はそう呼ばれるような身の上では……」

( ∵)「まあまあ、お気になさらずに。貴女の実力は敬意を払われて然るべき物ですよ」

これ以上言っても無駄だと悟ったのか、ツンは恐縮ですと短く答え、口をつぐむ。
そうこうしている内に、僕達は一際立派な大きな扉の前に辿り着いた。

( ∵)「それでは、参りましょうか」

意外に軽い音を響かせながら開けられる扉に、何の躊躇いなく向かうビコーズさん。
既に僕達は武器も預けており、特に止められる事もなかったのでビコーズさんに続いて部屋に入る。

(;^ω^)

腹は括ったつもりだったが、きっと僕の表情はだいぶ強張っていたと思う。
開けた視界の先には、静まった豪奢な造りの謁見の間と、そこに並び立つ身なりのいい人達が見えた。

538 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 21:03:26 ID:.iP4EDXc0

( ´∀`)

部屋の奥、僕達の正面にただ1人座っている柔和な顔の男は、王宮の事に詳しくない僕でも顔は知っている。
現ニューソク国王モナー=ニューソク、僕達を呼んだ張本人だ。

( 貴)( 貴)( 貴)( 貴)( 貴)( 貴)( 貴)    (貴 )(貴 )(貴 )(貴 )(貴 )(貴 )(貴 )

部屋の左右にずらりと並ぶ身なりのいい人達は、この国の貴族階級の人達だろう。
物珍しげな眼を僕達の方に向けて来る。

中には露骨に顔をしかめている人もいたが、
多分僕らの格好がみすぼらしいのを場違いだとでも思っているのではなかろうか。
わんわんおまでいるのだし、場違い感は満載だと自分でも思う。

(,,゚Д゚)

( <●><●>)

( ><)

その中に、こちらとは若干違う意味で場違いだと思える顔も見えた。
1人は随分と強面の男で、貴族というより武人いった方がしっくり来る面構えだ。
多分、騎士団の要職に付く人だろう。

539 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 21:06:01 ID:.iP4EDXc0

そういえばフィレンクトさんの姿が見えないが、
ひょっとしたらジョルジュさん達と一緒にナカノヒトの町に出向いていたのだろうか。

そして更に見た目からして、周囲と比べてだいぶ年若いと思われる人が2人。
この場にいることを考えると、きっとこの2人がこの国の王子、つまりはクーの兄なのだろう。
1人は僕より年下かもしれないと思える幼い顔立ちだったが、クーの兄なら僕より年上のはずだ。

2人はギョロ目と細目の違いはあるが、顔立ちはよく似ている。
ただ、クーとは全然似てないと感じた。

それを言うなら父親であるモナー王は、どの子ともあまり似てなく見えるのだが。

( ´∀`)「この度の働き、大儀であったモナ」

(;^ω^)「あ、どうも……」

王の言葉に、思わず素で返した僕の脛をツンが蹴り、その背を押す。
かなり不遜な態度であった事に気付いた僕は、ツンに押されるまま膝を突き、頭を下げる。
わんわんおも空気を読んで、僕の側で大人しく座っていた。

( ´∀`)「そんなにかしこまらなくて良いモナ。まだ全然状況が飲み込めてないモナ?」

540 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 21:08:05 ID:.iP4EDXc0

(;^ω^)「ええ、その通りですお。教会から受けたクエストだったのがどうしてこんな事になってるのか……」

( ´∀`)「うむ、正直でよろしいモナ。いきなり呼び出してすまなかったモナね」

馬鹿正直に答えてしまった僕に、モナー王は笑みを浮かべてそう言ってくれる。
このよくわからない状況で、こちらの事情を察してくれてるのは助かると思う。

( ∵)「申し訳ありません陛下、全ては私の不手際です。ですから……」

( ´∀`)「皆まで言わなくていいモナ。私がお前に任せたんだモナ」

( ´∀`)「彼らに非があるなんてこれっぽっちも思ってないから心配するなモナ」

意外に気さくな物言いをしてくるモナー王に、ビコーズさんは大袈裟に頭を下げる。
そして説明が足りなかったと僕達にも謝罪した。

( ∵)「色々と知らせずに依頼して申し訳ありませんでした」

(;^ω^)「いや、まあ……悪事でなければ別に……依頼主の意図がわからないクエストはたまにありますし」

もう言葉遣いとか考えず、素で返してしまっている事には気付いていたが、今更修正がきかないので諦めた。
言葉遣いは普段の客商売で慣れてるつもりだったのに、緊張のし過ぎで色々と吹っ飛んでしまった気がする。
こんな事ならもう少し礼儀作法も学んでおくべきだったと思う。

541 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 21:08:52 ID:.iP4EDXc0

僕は取り敢えず改めて聖骸布をビコーズさんに渡そうとしたが、ビコーズさんは受け取る事はせず、
恭しく前方を指し示す。
直接モナー王に渡せという事なのだろうが、それは無用心過ぎるのではなかろうか。

(;^ω^)つ□「ど、どうぞ……」

結局断る事も出来ずに僕は王の前まで進み、聖骸布を手渡す。
どう考えても渡し方がぞんざいだったと思うが、特に咎められる事もなかった。

( ´∀`)つ□「うむ、確かに受け取ったモナ」

( ´∀`)「改めてそなたの働きに感謝するモナ」

(;^ω^)「もったいないお言葉で……」

一連の僕の適当な作法に、嫌な顔をする貴族の人の顔も目に入ったが、僕としても正直いっぱいいっぱいなので、
本当はどうすれば良かったのかなんてわかりようがない。

僕は王の前から下がり、再びツンの横で膝を突く。

( ´∀`)つ□「ふーむ……一見するとただのボロ布モナね」

542 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 21:13:24 ID:.iP4EDXc0

( ∵)「ええ、単体では何も感じないでしょうな。ですが品に間違いはございません」

( ´∀`)「わかってるモナ。そこは疑ってないモナよ」

モナー王は聖骸布を広げ、怪訝な顔をしたがビコーズさんの言葉に笑って返す。
今の話し振りからも、モナー王もこれがただの神具等ではないとわかっているのだと思う。

( ´∀`)「さて、ここに集まった諸君も、それから取り返してくれた本人達も」

( ´∀`)「完全に事情を理解しているものは少ないと思うモナよ」

王の言葉に、周りの多数の貴族達が頷く。
どうやら僕達以上に事情をわかっていない人の方が多いようだ。

( ´∀`)つ□「まずここにあるこの布、聖骸布と呼ばれてるモナ」

( ´∀`)「それは教会側の人間はよく知ってるモナね?」

王の問い掛けに、王の右手側の人達が一様に頷いた。
今気付いたが、この左右に別れた貴族達は騎士側と教会側に分かれているらしい。
544 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 21:15:45 ID:.iP4EDXc0

( ´∀`)「保管されていたヴィップの教会から盗まれた聖骸布を取り返すというのが」

( ´∀`)「彼らに教会から依頼されたクエストだったモナ」

(∪^ω^)「わんお!」

(;^ω^) " コクッ

次に王の視線がこちらに向けられる。
僕が答えるより早く、わんわんおが元気よく返事をする。
王は軽い笑みを浮かべ、話を続けた。

( ´∀`)「本来はこれだけの事だったモナよ。……しかし、実際は違ったモナ」

( ´∀`)「聖骸布というのは過去の賢人が付けた仮の名前」

( ´∀`)「本当の名は……魔王の衣」

( ´∀`)「千年紀の王を蘇らせる為の魔具モナ」

(;^ω^)(わかってはいたけど、やっぱりそれで確定なんだおね……)

545 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 21:18:33 ID:.iP4EDXc0

それからモナー王はつらつらと事の経緯を話し続ける。
当初はその事は知らなかったが、ビコーズさんの進言で知り得た事。
この件を教会から王直々の預かりに変えた事。

そして、それを集める事に決めた理由をモナー王は語る。

( ´∀`)「こんなものが世に出回っていては、いつこの国の、いやこの世界の平和が脅かされるかわからないモナ」

( ´∀`)「故に、これはニューソク王家の名の下に管理し、千年紀の王の復活は断固として阻止するモナ!」

モナー王は立ち上がり、力強くそう宣言した。
周囲からは自然と拍手が起こり、皆口々に王を讃える。

そして僕も王の言葉に安堵していた。
これでデレとの約束は守れそうだ。

( ^ω^)(王家が管理してくれるなら、大事にならずに済みそうだおね……)

( ´∀`)「冒険者ブーンよ」

(;^ω^)「は、はいですお!」

546 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 21:19:19 ID:.iP4EDXc0

油断していた所に突然声を掛けられ、声が裏返ってしまった。
視界の端に額を押さえるツンの姿が見える。

( ´∀`)「今回のそなた達の働き、誠に素晴らしきものであった」

(;^ω^)「恐縮ですお」

( ´∀`)「聞けば彼の凶悪な犯罪者である精霊兵器の研究者を倒し」

( ´∀`)「更にはラウンジの聖女に、西の賢者さえも退けたそうモナ?」

(;^ω^)「え、いや、倒したとか退けたとかではなく、運良く逃げられたというのが正確な所で……」

(;^ω^)「僕はマルタスニムにもラウンジの聖女にも、西の賢者にも勝てなかったんですお」

( ´∀`)「……」

思わず馬鹿正直に反論してしまったが、一国の王に対して不遜だったのではと思ってしまう。
今の言葉で周りの貴族達がざわついているし、王も口を閉ざしてしまった。

(;^ω^)(これはやらかしちゃったかお……)

ξ゚−゚)ξ

547 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 21:20:51 ID:.iP4EDXc0

そう思いつつツンの方を見ると、ツンは目を伏せ、唇を噛み締めていた。
その姿は僕に対して怒っているとかではなく、自分の行いを後悔しているようにも見えた。

( ∵)「ブーン様」

( ´∀`)「ビコーズ、よいモナ。下がっているモナ」

( ∵)「はっ……」

(;^ω^)「えっと……」

( ´∀`)「冒険者ブーンよ。そなたは確かに此度のクエストで己の力のなさを痛感したのかも知れぬモナ」

( ´∀`)「力は及ばず、知恵は足りず、絶望の中、戦いに身を置いたのかも知れぬモナ」

(;^ω^)「……」

( ´∀`)「しかしそなたは、その様な状況下においてもクエストを達成したモナ」

( ´∀`)「最終的に魔王の衣を手に入れたのはそなたモナ」

( ´∀`)「冒険者ブーンよ、そなたがどう思おうと、そなたが今回の戦いの勝利者なのは間違いないモナよ」

548 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 21:23:26 ID:.iP4EDXc0

(; ω )「……もったいないお言葉ですお」

僕はその言葉に、救われる思いはあった。
しかし同時に、やはり悔しい思いもあった。

僕は負けたのだ。
聖骸布を手に入れられたのは、運が良かっただけに過ぎない。

( ´∀`)「さて、ブーンよ。今回のそなたの働きを見込んで、新たに依頼したい事があるモナ」

(;^ω^)「……はい?」

どうやらわざわざ王に謁見する事になったのは、単に労いの言葉だけでなく、この話があったからの様だ。
むしろこちらの話が本題らしい。
僕は思わずツンと顔を見合わせる。

( ´∀`)「なに、至ってシンプルな依頼モナ」

(;^ω^)「えっと、どのような……」

( ´∀`)「魔王の頭骨を探してきて欲しいモナ」
550 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 21:26:58 ID:.iP4EDXc0

さらりと言い放つモナー王に、僕は呆けてしまって返事が出来なかった。

千年紀の王を復活させない為に、魔王の衣をニューソク王家が管理するとなれば、
当然、他の2つの魔具も集めようとするのはわかる。

しかしそれが何故僕に依頼されるのだろうか。

( 貴)「お待ちください、陛下」

僕が返事をせずに固まったままでいると、1人の貴族が進み出て王に進言する。
その貴族は何故僕に依頼をするのかという、僕も聞きたかった疑問を口にした。

( ´∀`)「そりゃ魔王の衣も取り返してくれたし、うってつけの人材モナ?」

( 貴)「ですが先ほど本人の言にもあった様に、彼らでは実力が足りてないのではないかと思われます」

( 貴)「わざわざ冒険者風情に頼まずとも、聖騎士団に任せれば済む話ではないですか」

(,,゚Д゚)

そう言って貴族が指し示した先には、先ほど僕が場違いだと思った男の姿があった。
恐らくあれが聖騎士団長なのだろう。

551 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 21:28:08 ID:.iP4EDXc0

その貴族の言葉を皮切りに、次々と僕に依頼する事に対して異を唱える者が出て、場は騒然とし出した。
前に進み出る者、それを抑える者、わんわんおに向かって指を振って呼びかける者もいて、収拾が付かなくなって来る。

( 貴)「誇り高きニューソク王家が、斯様な重大な任を軽々しくその辺りの冒険者に与えるのは如何なものでしょうか」

どうも話を聞いていると、貴族の言葉の端々に冒険者を見下しているのが感じられた。
多分、最初に僕らを見た時に顔をしかめてた人達だろう。

あまりいい気はしないが、確かにこんな重大なクエストは、
もっと信用の置ける上に実力のある人にやらせるべきだとは思う。

( ∵)「皆様、お静まり下さい」

静かで低い声だが、よく通るビコーズさんの声が届いた。
ぴたりと静まり返る場が、ビコーズさんのこの国での立場をよくわからせてくれる。

( ´∀`)「ちょっと落ち着くモナ。諸君らの考えもわかるが、まず聖騎士団はそう簡単には動かせないモナ」

( ´∀`)「更に言うと、適材適所モナよ」

( ´∀`)「聖騎士団の精鋭達が、市井の中に入って行って情報集め出来ると思うモナ?」

552 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 21:31:04 ID:.iP4EDXc0

王の言葉に、居並ぶ貴族達は僕と聖騎士団長と思しき人の顔を見比べる。
妙に納得した顔で頷かれるのも引っかかるが、確かにあの強面な人よりは上手く情報を集められる自信はある。

( 貴)「し、しかしですね、やはりこのような冒険者に頼るなどというのは……」

未だに食い下がって来るのは、一番最初に異を唱えた貴族の人だ。
よっぽど僕の事が気に入らないらしいが、僕としても応援したい気持ちはある。
どうしようもなく力不足を感じている今の僕に、ニューソク王から直々の依頼は重過ぎる。

( ´∀`)「貴公がニューソク王家の事を思い、進言しているのはよくわかっているモナ」

( ´∀`)「しかし、もし彼らの身分をもって不適格と判断しているなら慎むモナ」

(;貴)「は……? それはどういう……」

モナー王の目が僕に向けられる。
僕は本日最大の嫌な予感を感じながらも、目をそらすことも出来ずにその目を見詰め返した。

( ´∀`)「冒険者ブーン=ナイトウ……それは仮の名前モナ」

(;貴)「え?」

( ^ω^)

553 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 21:32:17 ID:.iP4EDXc0

( ´∀`)「彼の真の名は、ブーン=ホライゾン。彼の大賢者バーン=ホライゾンの末裔モナ」

躊躇いなく言い放った王の言葉に、一旦は静まった場がまた大きな喧騒に包まれる。
最初から知っていた者も一部いるようだが、どうやら知らなかった者が大半らしい。

( ^ω^)

僕は自分に向けられる数多くの視線は無視し、まっすぐにモナー王を見詰め続けた。

( ∵)「では再度問いましょう。冒険者ブーン=ナイトウに依頼する事に反対の者はいますか?」

ビコーズさんの言葉に、急速に喧騒は収まり、誰一人口を開く者はいなかった。
反対者はゼロ、これで僕の意思とは無関係にこの依頼は受ける事になりそうだ。

( ´∀`)「ブーンよ、改めて今回の件、頼まれてくれるモナか?」

( ^ω^)「慎んでお受けいたしますお」

僕は恭しく頭を下げ、ようやくこの場に相応しい態度を取れたと漠然と考えていた。
今は一刻も早くこの場を離れたい気持ちでいっぱいだ。

554 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 21:35:32 ID:.iP4EDXc0

( ´∀`)「貴公の決断に感謝するモナ。詳しい話は後ほどビコーズにさせるモナ」

僕はその言葉を機に立ち上がり、再び頭を下げてからわんわんおを抱き上げて謁見の間を退出する。
その背後で、モナー王が今回の話は全て内密にせよと言っているのが聞こえたので、
僕の事が公になるのは避けられるらしい。

( ^ω^)

ξ゚听)ξ

(∪^ω^)

早足で歩く僕に、ツンは何も言わずに付いて来てくれる。
僕自身、どこに向かっているのかよくわかっていなかったが、今は足を止めたくなかった。

( ^ω^)「ごめんお」

ξ゚听)ξ「何で謝るのよ」

( ^ω^)「勝手にクエスト受けちゃって」

555 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 21:38:03 ID:.iP4EDXc0

ξ゚听)ξ「そっちの件なら仕方ないでしょ? あの状況じゃ断れないわよ」

( ^ω^)「だおね。でも……」

ξ゚听)ξ「もし、もう一方の件も謝るのなら……」

( ^ω^)「謝るなら?」

ξ゚ー゚)ξ∩「あんたの顔が物凄く歪む事になるわよ?」

( ^ω^)「……それは勘弁だお」

僕は足を止め、ツンに笑いかける。
じいちゃんの事で謝りでもしていたら、きっと僕は殴られていたのだろう。

( ^ω^)「さて、どうするかおね」

ξ゚听)ξ「どうするも何も、ビコーズって人と話すしかないんじゃない?」

(∪^ω^)「わんお!」

556 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 21:39:38 ID:.iP4EDXc0

( ^ω^)「だおねー」

それはわかっているのだが、問題はどこに行けばビコーズさんに会えるのかだ。
謁見の間に戻るのも何だか間抜けだし、かといって執務室に行ってもいつ戻って来るかわからない。

そんなことを考えると、後から息を荒げて誰かが走って来ているのに気付いた。

(;貴)「ハァハァ……お待ちを……お待ちください……ブーン様……ハァハァ……」

(;^ω^)「お……」

誰かと思いきや、先ほど僕に依頼するのを反対していた貴族の人だった。
僕に追いつくや否や、ひたすら頭を下げ謝罪をしてくる。

僕は別に気分も害していなかったし、むしろ応援していたのだが、その貴族の顔を見ると悲しい気持ちになった。
そこに浮かぶのは恐れの色。
大賢者バーン=ホライゾンの名は、未だもって恐ろしく力を持つのだと改めて実感する。

( ^ω^)「僕は全く気にしてませんので、謝らないでくださいお」

ひたすら繰り返される謝罪を聞き届け、僕が怒っていない事を伝える。
怒っていたとしても、僕に大した事は出来ないのだが彼にはそれがわからないのだろう。

557 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 21:40:54 ID:.iP4EDXc0

何とか貴族の人に納得してもらい、僕達はこの場を離れる。
止まっていては似たような人達が沢山来そうなので、今日は一旦帰った方がいいかもしれない。

ξ゚听)ξ「出直した方がいいかもね」

(∪^ω^)「わんおー」

( ^ω^)「そうしようかお」

(,,゚Д゚)

(;^ω^)「お……」

出直す事を決め、歩き出そうとした僕達の前に1人の男が立ち塞がる。
射抜く様な鋭い眼光に、思わず身がすくむ思いだ。

(,,゚Д゚)「ニューソク王国聖騎士団団長、ギコ=ニャーハン。以後お見知りおきを願う」

(;^ω^)「ブーン=ナイトウですお」

( ^ω^)「モナー王様の言葉にもあったと思いますが、出来れば普通に接していただけると助かりますお」

558 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 21:45:41 ID:.iP4EDXc0

(,,゚Д゚)「そうだな。ならばそうさせてもらおう」

聖騎士団長ギコさんは、がらりと口調を変え、僕の方を見詰める。
その目には先の貴族の様な恐れの色は一切見られない。

(,,゚Д゚)「大賢者の末裔ブーン=ホライゾン。お前は何を望むのだ?」

(;^ω^)「はい?」

唐突過ぎる質問に、僕は間の抜けた返事をすることしか出来なかった。
質問の意味をよく考えても、この場で答えるべき言葉が思い付かない。
強いて言うなら商売繁盛とかだが、それを流石に違う気がする。

(,,゚Д゚)「答えられぬか?」

(;^ω^)「えーっと……、正直に言うと、何を問われているのかよくわかってませんお」

(,,゚Д゚)「……」

(;^ω^)「……」

559 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 21:47:03 ID:.iP4EDXc0

無言の圧力が僕を襲うが、思い付かないものは思い付かない。
そもそもこの質問の意味がよくわからないし、わざわざ聖騎士団長が僕に尋ねる意図がわからない。

(,,゚Д゚)「自身の名の重さを、お前は理解しているのか?」

(;^ω^)「それは……」

(,,゚Д゚)「お前が望むとも望まざるとも、その力はこの国に波紋を広げる」

ξ゚听)ξ「それはブーンの所為じゃ……」

(,,゚Д゚)「もしお前が、王に仇為す存在となるのなら……」

ギコさんは強い口調でツンの言葉を遮り、途中で言葉を切って僕を睨むと、軽く一礼して僕の前から去って行く。
そんな事は言われずともわかっていたつもりだったが、改めて言われると何だかもやもやとした気持ちが湧いて来る。

ξ#゚听)ξ「何よあれ……」

( ^ω^)「まあ、聖騎士団長ともなれば仕方ないんじゃないかお?」

聖騎士団は騎士団と教会の両方共に属さず、独自の行動決定権を持つが、王直属の部隊という位置付けでもある。
バーン=ホライゾンの名だけであそこまでどよめいた謁見の間を見たら、僕の事を危険視するのもわかる話だ。
ともすれば王の立場さえ脅かすかもしれないと考えたのだろう。

僕にその気も力もなくても、その名は危険なのだと。

560 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 21:50:42 ID:.iP4EDXc0

ξ゚听)ξ「何でそんな他人事風なのよ」

( ^ω^)「他人が勝手にそう思ってるんだし、僕にはどうにも出来ないお?」

むしろ今まで好意的な人が多かった事の方が出来過ぎていたのかもしれない。
弟子であったビコーズさんはともかくとして、フィレンクトさんやシブサワさんの方が例外なのだろう。

僕は尚も不服そうに口を尖らせるツンを宥め、出口に向かおうと提案する。

( ^ω^)「さあ、わんおも……お?」

(∪^ω^)

先ほどから妙に静かだったわんわんおの方を見ると、何やら一点を凝視している。
廊下の奥の方で、何かがちらちらと動いているのが見える。

( ><)っ" チッチッチッチッチ

ξ゚听)ξ「あれ、謁見の間にもいたわよね?」

( ^ω^)「ツンも気付いてたかお? さっき騒ぎになった時も、ああやってわんお呼んでたお」

561 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 21:52:10 ID:.iP4EDXc0

多分クーの兄なんじゃないかという僕の見解は、ツンと一致していた。
一心にわんわんおの気を惹こうとしている姿は、どちらかと言えば弟に見えるのだが。

( ^ω^)「いくらわんおでも、僕の前で全く知らない人のとこには行かないお」

( ><)っ□" サッ…

(∪^ω^)" ピクッ…

( ^ω^)「何か取り出したおね。何だお? 赤い……」

ξ゚听)ξ「多分、肉じゃない? 生の」

( ^ω^)「何でそんなもん持ち歩いてんだお……。あいつ、アホなのかお?」

しかし、生肉程度で釣られるわんわんおではない。
むしろわんわんおはちゃんと調理したお肉の方が好きなのだ。

三(∪^ω^)「わんお!」

(;^ω^)「お? わんお?」

562 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 21:56:34 ID:.iP4EDXc0

わんわんおは一声吠えると、廊下の奥の方へ走って行く。
まさか生肉に釣られるとは思ってもいなかった。

(;><)「わ、わ!? こっちに来たんです!」

呼んでいたのに、いざ来られると萎縮したのか後ろに下がろうとする名も知らぬ男。
わんわんおはその男目掛けて跳躍する。

彡(∪*^ω^)っ「わんわんお!」

(*><)つ「おいでおいでなんです!」

踏み止まり、嬉しそうにわんわんおの方に手を伸ばす男。
しかし突然、男の身体が前のめりに倒れる。

(#)><)「へぶしっ!?」

(*´・ω・`)「やあ、わんおちゃん、久しぶり。元気だったかい?」
つ∪*^ω^)「わんわんお!」

ξ゚听)ξ( ^ω^)「ショボン!」

563 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 21:57:38 ID:.iP4EDXc0

目の前の男を蹴り倒し、わんわんおを抱き止めたのは、ここソクホウで騎士学校に入学したショボンであった。
なるほど、それならばわんわんおが走って行ったのも納得がいく。

(´・ω・`)ノ「君らも久しぶり。元気だった……は聞くまでもないかな」

走り寄る僕らに片手を挙げて応じるショボン。

( ^ω^)「何やってんだお? ここ王宮だお? 何でショボンがここにいるんだお?」

(´・ω・`)「まあ、色々あってね。一応ちゃんと騎士学校に入ってるけど、時々要人警護の仕事もやってるのさ」

ξ゚听)ξ「警護? 誰の?」

(´・ω・`)「ビロード=ニューソク、この国の第二王子さ」

何でそんな大層な話になってるのかと聞いてみると、簡単には説明し辛いとショボンは答える。
それでも短くまとめると、ある時たまたま助けた人がビロード王子その人で、フィレンクトさんの推薦もあり、
年も近いという事でその任に付く事になったという話の様だ。

要するにショボンは、かつてのトソン君と似た様な位置にいるという事だろう。

564 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 21:58:49 ID:.iP4EDXc0

( ^ω^)「ほー、なかなか上手くやったおね」

(´・ω・`)「何言ってんの。半分はブーンの所為だよ」

(´・ω・`)「君があの時、僕の事をあんな風にフィレンクトさんに紹介しなきゃ」

(´・ω・`)「僕の名前なんて覚えてもらえてなかったさ」

溜め息混じりに言うショボンだが、結果を考えればそれも悪くはなかったけどと言い添える。

ξ゚听)ξ「ふーん。それで、そのビロード王子ってのは?」

(;><)「ここにいるんです! いい加減どいて欲しいんです!」

不意に足元から声が聞こえて来たと思ったら、先のわんわんおを呼んでいた男が顔を上に向けて必死で抗議していた。
その背の上にはショボンの足がある。

(´・ω・`)「おや失敬。まさかそんなとこにおられたとは露知らず」

(;><)「絶対嘘なんです! ていうかショボン、明らかに後から蹴っただろ?」

565 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 22:00:16 ID:.iP4EDXc0

ショボンは大袈裟に肩をすくめ、ゆっくりとビロード王子の背から降りた。
その様で、2人の関係がどんなものかは窺い知れる。

( ^ω^)「それで、ええっと……」

(;><)「は、はじめましてなんです、ブーン=ホ──」

(#)><)「あふん!?」

(´・ω・`)∩「おっと失礼、手が滑りました」

(´・ω・`)「ビロード王子、こちらは僕の同郷の友人でもあるブーン=ナイトウです」

(´・ω・`)「いいですか? ブーン=ナイトウです。お間違いのなきよう」

(;><)「わ、わかってるんです。ブーン=ナイトウ殿、僕はビロード=ニューソクなんです」

( ^ω^)「ブーンでいいですお、ビロード王子。こっちはツン=ディレードにわんわんおですお」

ξ゚听)ξ「はじめまして、ビロード王子」

(∪^ω^)「わんわんお!」

566 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 22:01:18 ID:.iP4EDXc0

僕達は挨拶を交わし、軽く世間話をする。
ビロード王子は随分と気さくというか、見た目通り子供っぽい人の様だ。
先ほどショボンは年は近いみたいな事は言っていたが、おおよそ5つぐらいは上らしい。

恐らく精神年齢的意味で近いと言っていたのだろう。
それでも、ショボンの方がだいぶ上に感じるが。

見ているとショボンの王子に対する態度が随分と不遜に感じるが、仲は良さそうなので黙認されているのだろう。
ひょっとしたらある種の教育係的な立ち位置なのかもしれない。

( ^ω^)「それで、ビロード王子は僕に何の用だったんですかお?」

(;><)「そ、それはその……」

(´・ω・`)「王子、この子はブーンの家族ですから、お城では飼えませんよ?」
つ∪^ω^)

羨ましそうにわんわんおを見るビロード王子を余所に、ショボンはわんわんおをしっかりと抱いている。
少しぐらい抱かせてあげればいいのに、ショボンは伸ばされるビロード王子の手を全てかわしていた。

(´・ω・`)「王子如きがわんおちゃんに触れようなどと百年早いですよ」

(;><)「ひどいんです!」

567 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 22:03:30 ID:.iP4EDXc0

(´・ω・`)「そんなことより王子、そろそろ行かなくてよろしいのですか?」

(;><)「そ、そういえば兄ちゃんに呼ばれてたんです! 行かないとまずいんです!」

(´・ω・`)「わかっているなら急ぎましょう、王子」
つ∪^ω^)つ

つ)*><)「は、はいなんです!」

ショボンはわんわんおの手をビロード王子に頬に押し付けた後、僕の方にわんわんお手渡す。

(´・ω・`)「というわけなんですまないね。話はまた今度ゆっくりと」

( ^ω^)「おう。また今度だお。僕らはしばらくサースガって武器職人のとこにいると思うお」

(´・ω・`)「うん、時間が取れたら行かせて貰うよ」

ξ゚听)ξ「がんばって騎士になりなさいよ」

(´・ω・`)「そっちこそ、クエストがんばってね。あんまり無茶もして欲しくないけど」

ショボンも先の謁見の間での話は知っていたようだ。
姿は見かけなかったので、ビロード王子にでも聞いたのかもしれない。

568 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 22:04:34 ID:.iP4EDXc0

( ^ω^)「わかってるお。じゃあ、まただお。ビロード王子もお元気で」

( ><)「お疲れ様なんです。またお会いしたいんです」

(∪^ω^)「わんわんお!」

別れの挨拶を交わし、僕達は出口に向かおうとした。
しかしすぐにショボンが僕達を呼び止める。

(´・ω・`)「ごめん、忘れてた。ビコーズさんからの伝言」

( ^ω^)「お?」

ショボンの話によると、正面入り口に馬車があるからそれでお帰り下さいとの事だった。
今後の話に付いては、翌々日にまた迎えに上がりますからと。

(´・ω・`)「今回の報酬も馬車に積んで置きましたってさ」

(;^ω^)「そういえば報酬の件、すっかり忘れてたお」

(;´・ω・`)「冒険者にあるまじき行いだよね」

569 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 22:06:10 ID:.iP4EDXc0

( ><)「というかショボン、それ、僕が伝えてくれって言付かった話じゃないんですか?」

(´・ω・`)「ええ、ですがビロード王子は完全にお伝えするの忘れていたでしょう?」

(;><)「あうあう……」

(´・ω・`)「それを見越して、ビコーズさんは私にも聞こえるような声で話されていたんですよ」

わんわんおに釣られ過ぎだと窘めるショボンだが、そのショボン自身もわんわんおに釣られて、
本来の目的を告げるのを忘れていたのではなかろうか。

(´・ω・`)ノ「じゃあ、そういう事だから。あと、正面入り口はこっちだよ」

( ^ω^)ノシ「助かるお。それじゃあ、改めてバイバイだお」

僕らはショボンに教えられた通路を行き、無事正面入り口に辿り着いた。
外に出るとすぐに兵士の人達が迎えに来てくれて、馬車まで案内してくれた。

( ^ω^)「ありがとですお」

若干来た時より丁重さが増した様に感じるのは、上から色々お達しがあったのかもしれない。
僕の素性は知れ渡ってなくとも、先ほどの貴族の人達が何かしら命じた可能性はある。

570 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 22:07:27 ID:.iP4EDXc0

(;^ω^)「で、この大きな袋は何だおね?」

ξ;゚听)ξ「考えられるのは1つしかないでしょ?」

僕は座席に鎮座していた背負うには少し大きいだろうと思われる皮袋の中を恐る恐る覗き込む。
そこには予想通り、金貨がびっしりと詰まっていた。

(;^ω^)「予想以上に多いお! 後でお釣り返さないとだお!」

ξ;゚听)ξ「そんなの受け取ってもらえるわけないでしょ」

(∪^ω^)「わんおー」

当初ヒッキーさんから受けた依頼で、報酬に関しては足が出なければいいとぐらいしか考えていなかった。
その後依頼の規模が拡大し、後で別途交渉する必要があるとは思っていたが、
そんな事をする必要ないくらい十分過ぎる報酬を貰ってしまった。

ξ゚听)ξ「まあ、事の重大さを考えれば、このくらい貰ってもおかしくはないんだけど……」

(;^ω^)「追加の旅費に壊された武器もあるけど、それにしたって多いと思うお」

571 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 22:09:37 ID:.iP4EDXc0

色々と考慮した結果、次のクエストの準備資金込みなのだろうという事で無理矢理納得した。
大体、報酬が多いことで悩む冒険者なんて馬鹿みたいだとは思うが、
今回の結果ではあまり誇れないと思っている自分達がいるのもある。

ξ゚听)ξ「色々聞かないとね。ヒッキーさん達がどうなったのかとか、マルタスニムの事とか」

( ^ω^)「キマスタにおいてきた馬車の事とか。服とかあるし」

馬車には大した物は積んでなかったし、それらを全部買い直してもこの報酬で余裕で事足りそうだが、
その辺りは庶民の性とでもいうべき所だ。

ξ--)ξ「ま、取り敢えずはゆっくり休みましょうか」

明後日ビコーズさんと次のクエストの話をした所で、流石にすぐ出発という話にはならないだろうとツンは言う。
そうであってくれれば助かるが、場合によってはすぐ出発する可能性も考えてはおくべきだろう。

( ^ω^)「そうだおね。今日は久しぶりに揺れない地面の上で寝れるんだしね」

(∪^ω^)「わんわんお!」

それから程なくして、僕らはサースガ邸へ帰り着いた。

572 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 22:10:47 ID:.iP4EDXc0

 〜 王都ソクホウ 約束された勝利の軒 〜


(´<_` )「えー、それでは、ブーン君達のクエストの成功を祝して」

Uヽ(´<_` )「乾杯!」

(*´_ゝ`)ノU「乾杯!」

ノパ听)ノU「乾ぱぁぁぁぁいっ!」

( ^ω^)Uξ゚听)ξU川 ゚ -゚)UU(゚、゚トソン

(∪^ω^)「わんお!」

サースガ邸に帰った僕らは、しばらく身体を休めた後、オトジャさんの行き付けだという酒場に来ていた。
今回のクエストの祝勝会を開こうとアニジャさんが提案してくれたのだ。
ここならば顔がきくし、クー達の事も内緒にしてくれるという。

しかしながら、祝勝会は明らかに参加者のテンションが二分されていた。
疲れているという事を差し引いても僕やツン達は、祝勝会という言葉を素直に受け入れられなかったのだ。

573 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 22:12:39 ID:.iP4EDXc0

(*´_ゝ`)「おいおいどうした? 折角のお前達の祝勝会なのに暗いじゃないか」

ξ--)ξ「申し訳ないですけど、お世辞にも勝ったとは言えないクエストでしたので」

( -ω-)「心遣いはありがたいんですが、馬鹿騒ぎ出来そうな気分じゃないですお」

更に言えば、僕は王宮での出来事も重く圧し掛かっている。
わかっていたつもりの自分の名の重さが、ここまでのものだったと改めて思い知らされたのだ。

川 ゚ -゚)「だな。結局私達は負け続けただけだったしな」

(゚、゚トソン「己が身の不甲斐なさに、浮かれられる気分ではありませんね。アニジャさんもいますし」

(;´_ゝ`)「最後の関係なくないかな、トソンちゃん?」

ノハ*゚听)ノU「おかわり!」

ξ゚听)ξ「というかヒート、何であんたまだいるのよ?」

ノハ;゚听)「何だよー、いちゃいけないのかよ?」

574 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 22:13:53 ID:.iP4EDXc0

( ^ω^)「いいじゃないかお、ヒートのお陰で助かった部分もあるし。どんどん飲んでくれお」

ノハ*゚听)「おお、ブーン! 話がわかるやつだなー、お前は!」

ヒートとは帰りの船内で色々話したし、年が同じだった事もあって結構仲良くなれていた。
今回、オトジャさんやヒートがいなければクエスト自体が失敗に終わった可能性もあるので、
今日は存分に飲み食いして欲しいと思う。

ξ゚听)ξ「その分ちゃんと報酬は渡したんだし、さっさと追っ払えばいじゃない」

ノハ;T儺)「お前、ライバルに対して冷たすぎるだろー」

(∪^ω^)「わんおー」

(´<_` )「僕は燃料代だけで良かったんだけどね」

( ^ω^)「オトジャさんはある意味今回最大の功労者ですから、少ないですけど受け取って下さいお」

なんせ報酬は十分過ぎるほど貰ったのだ。
僕やクーの武器を新調しても、まだまだお金はある。

575 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 22:16:13 ID:.iP4EDXc0

+(´<_` )「それなら今は暇だから、次のクエストが遠方だった場合、サースガ号で送ってあげようか」

( ^ω^)「それは助かりますお。けど……」

川 ´ -`)「次のクエストかー……」

クーが呻く様に言うと、そのまま盛大にテーブルに突っ伏した。
どちらかと言えば自信家であったクーだが、今回のクエストはだいぶ堪えたらしい。

川 ´ -`)「そりゃ凹みもするさ」

川 ´ -`)「今回1度でも私が戦闘の役に立ったか?」

(゚、゚;トソン「あまり深刻に考えなくとも良いと思いますよ? 相手が相手でしたし……」

川 ´ -`)「いいや、考えるよ、あの負け方じゃ」

川 ´ -`)「西の賢者に至っては一瞬だぞ? どこの次鋒だよってくらい見事な瞬殺だ」

ナカノヒトの町では凹んでいた僕を慰めてくれたクーだが、今はそんな余裕は見られない。
トソン君が言うように、相手が悪過ぎただけなのだが、
それを自分に置き換えて考えると納得出来ない気持ちもわかる。

576 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 22:20:33 ID:.iP4EDXc0

川 ´ -`)「この状態で次のクエストって言われてもなあ……」

川 ´ -`)「しかも、千年紀の王絡みなんだろ? またあんなのが出て来るわけだ」

ξ゚听)ξ「別に、あんたは無理して来なくてもいいのよ?」

川 ´ -`)「それはそれで癪じゃないか」

ξ゚听)ξ「わがままねえ……」

(゚、゚;トソン「クー様も全く役に立たなかったわけじゃないんですし、そんなに落ち込まなくとも……」

川 ´ -`)「じゃあさ、トソン、今回私が役立ったとこってどこだ? 言ってみ?」

(゚、゚;トソン「えっと……あ、馬車の運転は上手かったかと」

( ^ω^)「パンこねるのは上手くなってたお」

ξ゚听)ξ「ヒッキーさんの出したクエストに気付いて、いち早く受けたとことか?」

川 ´ -`)「うん、やっぱり役立ってないな」

577 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 22:24:32 ID:.iP4EDXc0

完全にテーブルに顔を埋め、これ以上ないくらい落ち込むクー。
それを必死に慰めるトソン君を見ながら、僕はお酒のコップを傾ける。

( ^ω^)「クーの気持ちはよくわかるお。正直な話、僕も今すごく力不足を感じてるし

( ^ω^)「だから、次のクエストは無理に手伝わなくていいお」

( ^ω^)「パーティーメンバーは取り敢えず僕が何とかするお」

ξ゚听)ξ「私は行くわよ?」

( ^ω^)「そう言うと思ったお。どうせ断り切れないし、いてくれた方が助かるから頼むお」

ノパ听)ノ「私も行くぞ!」

ξ゚听)ξ「あんたはうちのパーティーじゃないでしょうが」

ノハ;゚听)「冷たい! ライバル超冷たい!」

ξ゚听)ξ「だから、ライバルって呼ぶなと」

578 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 22:26:16 ID:.iP4EDXc0

面白そうだから参加させろと言うヒートさん。
実力的に考えて断る理由もないが、ツンが猛反対しているので悩み所だ。
それほど仲が悪い様には見えないけど、一緒に行くとツンの気苦労が増えそうだとは思う。

(゚、゚トソン「その、僕は……」

( ^ω^)「トソン君はクーに付いていてあげるといいお。クーが心配だお?」

トソン君は僕の顔と突っ伏したクーを見比べる。
悩んでいるみたいだが、今のクーにはトソン君が側にいてあげるべきだろう。

川 ゚ -゚)「私の事はいいから行け、トソン」

川 ゚ -゚)「……と言ってもお前は行かないだろうから、やはり私も行こうか」

( ^ω^)「お? どういう心境の変化だお」

突如がばりと起き上がったクーが、先ほどまでとは正反対の言葉を口にした。
僕は無理はするなとクーに言う。

川 ゚ -゚)「役立たずの足手纏いになるのは論外だが、かといって何もしないのもな」

579 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 22:28:49 ID:.iP4EDXc0

川 ゚ -゚)「失敗を糧に、次に繋げるべきだと考えたのさ」

( ^ω^)「前向きだおね」

川 ゚ -゚)「ここで萎縮していたら、何の為に王宮を出たのかわからないだろ?」

川;゚ -゚)「まあ、本当に足を引っ張る様な事態になりそうなら、どこかに隠れておく事にするさ」

( ^ω^)「自棄になって無茶をしないなら、来てくれる分には歓迎するお」

(゚、゚トソン「それでは僕もお供します。もしもの場合、僕がクー様の分まで働きますので」

( ^ω^)「助かるお。でも、クーの分は皆でカバーするお」

川;゚ -゚)「お荷物前提で言われるのは少々引っかかるが、頼むよ、2人とも」

ばつの悪そうに言うクーに僕もトソン君も笑みを浮かべ、酒のコップを掲げる。
クーも自分のコップを手に取り、僕らのコップに打ち合わせた。

結局、次のクエストもこのパーティーで挑む事になりそうだ。

580 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 22:31:07 ID:.iP4EDXc0

(´<_` )「話が纏まりそうで良かったよ。若い内は挑戦あるのみだよ、クーさん」

( ´_ゝ`)「よし、俺が健気なクーちゃんの為に、スペシャルな武器をこしらえてあげよう」

川 ゚ -゚)「そりゃありがたいが、お前の武器はそんな簡単には作れないだろ?」

(´<_` )「そうだね。まだジョルジュ君達の武器も完成してないしね」

( ´_ゝ`)「まあ、そうなんだが……そんなあっさりと水を差さなくてもいいんじゃない?」

(゚、゚トソン「そうですよ。アニジャさんならこれから1、2週間ぐらい寝ずに働けばきっと作れますよ」

(;´_ゝ`)「それ、フォローなの? それともホントに寝ずに作れと?」

(∪^ω^)「わんわんお」

ようやく皆に笑顔が戻り、酒宴の場は少し活気が出て来た。
しかし僕の隣にいるツンだけが、未だ暗い表情のままだ。

( ^ω^)「今回、ツンの方が僕の数倍役立ってたお」

581 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 22:33:07 ID:.iP4EDXc0

ξ--)ξ「……だったとしても、負けは負けよ」

難しい顔で木製のコップを傾けるツン。
随分と美味しくなさそうな酒に見える。

( ^ω^)「謁見の間ではああ言ったけど、クエスト成功には変わりないお」

( ^ω^)「僕らはまた次があるお。次で挽回すればいいお」

ξ゚听)ξ「……そうね。切り替えていかないとね」

ツンは曖昧に頷き、コップに口をつける。
今回の事や今後の事で色々と話したいこともあったが、日を改めた方が良さそうだ。

ノパ听)「しけた面してんなあ。そんな顔でお酒飲んで美味いか?」

ξ゚听)ξ「うっさいわねえ。大体、あんたもボロ負けしてんのに、何でそんなケロっとしてんのよ?」

ノパ听)「何を言う。私は負けてないぞ!」

ξ゚听)ξ「どこがよ。何回私がフォローしたと思ってんのよ?」

582 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 22:35:02 ID:.iP4EDXc0

ノパ听)「私が負けたと思わない限り負けじゃない!」

ξ;゚听)ξ「何言ってんのよ? 私たち2人掛かりであいつに敵わなかったのに」

ノパ听)σ「次やったら私が勝つ! 勿論、お前にもだ、ツン!」

何の根拠もない言葉だが、こう堂々と言い張られるとホントに勝ちそうな気がして来る。
その目は自信に満ち溢れ、何かをやってくれそうだと思わせてくれる。

ξ;--)ξ「はいはい、寝言は寝て言いなさいな」

ノパー゚)「ふふん、少なくとも、私はもうツンには勝ってるぞ!」

そう言ってヒートは自分のテーブルの前を指し示す。
そこには空になった食器とコップが大量に置かれている。

(;^ω^)「てか、いつの間にそんなに食ったんだお」

ノパー゚)「どうだ、我がライバルよ! お前にこれだけ食べられるか?」

ξ--)ξ「アホらし……でも、まあ……」

583 名前:名も無きAAのようです:2012/06/23(土) 22:38:36 ID:.iP4EDXc0

ξ゚ー゚)ξU「あんたに負けるのは気に入らないわ。店員さーん、こっち、おかわり持って来てくれる?」

ノパー゚)U「よし、勝負だ! おーい、こっちもおかわりだ!」

なんだかんだでヒートのお陰でツンの顔にも笑顔が戻った。
物凄い勢いで傾けられていくお酒のコップに若干の不安は抱いたが、
今回の事は酒で洗い流して酔い潰れて忘れてしまうのもいいかもしれない。

また新たな気持ちで旅立つ為にも。

( ^ω^)U「まあ、なんにせよ、お疲れ様だお」

(∪^ω^)「わんわんお!」

長く厳しかった戦いを終え、無事クエストを成功させた僕らは、心行くまで美味しいお酒と料理を堪能し、
ぐっすりと眠る事が出来た。



     第三十五話 敗者の凱旋 終

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