439 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 21:29:04 ID:uF/6QhHc0

 〜 キマスタの港 埠頭付近 〜


(;^ω^)(何でヒートさんがこんなとこに……?)

ノパ∀゚)「フハハハハッ! ツン! 何だその様は! それでも我が好敵手か!」

ξ;゚听)ξ「うるさいわね、私はあんたのライバルになった覚えはないわよ」

ノハ;゚听)「なんだとー? お前は師匠以外で私に唯一土を付けた人間だ。それをライバルと呼ばず何と呼ぶ!」

ξ゚听)ξ「何で私が自分より弱いやつをライバル認定しなきゃいけないのよ」

ノハ;゚听)「冷たい! 私達は再戦を誓い合った仲じゃないか、ツン=ザ=ドリルパンチ!」

ξ#゚听)ξ「人を変な名前で呼ぶんじゃないわよ!」



     第三十四話 激闘の果てに


440 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 21:31:10 ID:uF/6QhHc0

( ^ω^)(よくわからんけど、このイレギュラーはチャンスじゃないかお?)

僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。

ξ#゚听)ξ「今忙しいんだから、あんたの相手してる暇ないのよ!」

彼女の名はツン。
隣の武術道場の娘で、いわゆる幼馴染というやつだ。

ノハ;T儺)「お前、久しぶりに会ったライバルに対してつれなさ過ぎるぞおおおおっ!」

彼女の名前はヒートさん。
旅の武術家で、かつてツンと勝負に破れたが、その強さはツンとほぼ互角だろう。

( ^ω^)(これで状況が動けば、ここから逃げられるかもしれんお)

僕達は今、聖骸布奪還のクエストでニューソク大陸最南端のキマスタの町へ来ていた。
そこで運良く聖骸布を盗んだ犯人、ボルジョアを捕まえて聖骸布を取り戻す事は出来たが、
同じく聖骸布を追うラウンジの聖女こと、デレ達一行に見付かり、戦いになってしまった。

441 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 21:32:50 ID:uF/6QhHc0

ζ(゚口゚*ζ「な〜んだ〜か〜♪ に〜ぎや〜か〜に〜な〜ってき〜たね〜え〜♪」

( ゚∋゚)

戦いは僕達の方が旗色は悪く、僕はデレの歌によって身動きが取れず、
ツンは善戦しているが、クックルの猛攻の前に防戦一方だ。

ξ゚听)ξ「だからライバルって呼ばないでってば。恥ずかしいから」

ノハ;゚听)「何故だ! ライバルの存在はお互いの腕を高めあう素敵なものだぞ? 何も恥ずかしい事はない!」

そこに突如として現れたヒートさん。
屋根の上で両手を上げ、片足立ちで立つ姿は確かに恥ずかしいが、その腕はなかなかのものである。
僕達に協力してくれるならこの上ない戦力になるはずだ。

ξ゚听)ξ「あんたの存在自体が恥ずかしいのよ。あんたの相手は後でしてあげるから、そこで大人しく見ていなさい」

ノパ听)「いや、待たん! お前、あの鶏に負けそうじゃないか!」

ξ#゚听)ξ「うるさいわね! 誰があんなのに負けるってのよ!」

( ゚∋゚)

442 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 21:34:39 ID:uF/6QhHc0

(;^ω^)(ツンも状況の不利さはわかってるお? 挑発してないでヒートさんを仲間に引き込んでくれお!)

心の中でそう思っても、今の僕にはそれをツンに伝える手段はない。
このままでは巴戦になるか、最悪、向こうが共闘する形の変則的な1対2の戦いになってしまう。

(;^ω^)(つーか、クックルは何で律儀に待ってくれてるんだおね……)

( ゚∋゚)

ノパ听)「ツンを倒すのは私だ! だから先にやらせろっ! 勝負だ、とうっ!」

そう叫ぶや否や、ヒートさんは3階建てはあろうかという建物の屋根から飛び降りる。
このままヒートさんが参戦する方向は避けられないらしい。


          ドリャァァァァッ!      グハァッ!?
        三ヽξ#゚听)ξ┌┛ハ(#)听).・。 ’


(;^ω^)(ちょ!?)

443 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 21:36:04 ID:uF/6QhHc0

などと考えていると、ツンが突然猛ダッシュでヒートさんの着地点に駆け寄り、
着地寸前のヒートさんを思いっきり蹴り飛ばした。

ヒートさんは錐揉み状に飛んで行き、そのまま港の端に積んであった木箱に激突する。

ξ゚听)ξ「ふぅ……。これで邪魔者は消えたわね」

(;^ω^)(ひでえ……)

ζ(゚口゚*ζ「わ〜い〜る〜ど〜だね〜え〜♪」

僕らの心中を察する事もなく、ツンは涼しい顔でこちらに戻って来る。
悪びれた様子は一切なく、むしろ一仕事終えた満足感すら垣間見えるほどだ。

ξ゚听)ξ「待たせて悪かったわね。さあ、続きをやりましょうか」

( ゚∋゚)⊃ スッ…

ξ゚听)ξ「ん?」

クックルはツンの後方を指差す。
それが何を意味するか、説明されずとも何となく察しは付いていた気がする。
445 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 21:37:37 ID:uF/6QhHc0

ヽノハ#゚听)/「やったなーっ!」

ξ゚听)ξ「……相変わらずタフさだけはとんでもないわね」

身体の上に積み重なっていた木箱を吹き飛ばし、ヒートさんが勢いよく飛び出して来る。
ツンが言うように、そのタフさは相当なもので、クックルに引けを取らないかもしれない。

ξ--)ξ「ったく、揃いも揃って倒せないとか……。ちょっと自信なくしそうよ」

ツンは疲れたように溜め息をつき、額を押さえる。
クックルもヒートさんも、どちらも倒せなくても仕方のないタフさだとは思うが、
そういう事は関係なく、ツンはかなり疲れていのだろう。

クックルに受けた腹部へのダメージも気になる。
出来れば、早いとこ戦いを切り上げて治療をしてあげたいと思う。

ノパー゚)「そう簡単に私を倒せると思うなよ!」

ξ゚听)ξ「はいはい、わかったからちょっとどいてないさいよ」

ノパ听)「何故だ? 今から私と戦うんだろ?」

446 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 21:39:17 ID:uF/6QhHc0

ξ゚听)ξ「物には順序ってものがあるのよ。先客がいるんだから、そっちが先よ」

ノパ听)つ「だが断る。さあ、やるぞ! かかって来い!」

ξ#゚听)ξ「人の話を聞け!」

( ゚∋゚)

(;^ω^)(まだ待ってるお……。ひょっとして時間稼ぎしたいのかお?)

トソン君達という援軍の当てがある僕達の方が、時間を稼げば有利になると考えていたが、
ひょっとしてデレ達の方にも援軍が来るのだろうか。

(;^ω^)(来るとしたら、もしかしなくても西の賢者だったりするのかお?)

もしこの場に西の賢者が参戦する事になったら、僕達の勝ち目はゼロに等しくなると思う。
西の賢者の事はあまりよく知らないが、ドクオさんと同等の力はあるらしいので、
はっきり言って僕なんかの魔法では、きっと太刀打ち出来ない。

ヘノパ听)ヘ「さあ来い! ほら来い! よし来い!」

ξ#゚听)ξ「うるさいッ! 何なのよ、その奇妙な構えは!」

447 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 21:40:15 ID:uF/6QhHc0
  ,,    ,,
"(((;^ω^)))" (ツン、遊んでないで早いとこ何とかしてくれお!)

ζ(゚口゚*ζ「な〜ん〜か〜ま〜た〜♪ め〜が〜さ〜めちゃ〜った〜みたい〜だ〜よ〜ね〜♪」

尚もヒートさんと言い争いを続けるツンに、気付いてもらおうと思い、注意を惹こうとしてみるが、
全くこちらを見る気配はない。
見た所で、僕の言いたい事が伝わるかはまた別問題なのだけど。

ξ#゚听)ξ「とにかく、あんたは引っ込んでろっての!」

ノハ#゚听)「嫌だ! いいから私と闘え!」

ξ#゚听)ξ「あとでいくらでも戦ってあげるって言ってるでしょ?」

ツンはヒートさんを無視し、クックルの方へ向き直る。
これ以上は口で言っても無駄だと考えたのだろう。

ξ゚听)ξ「待たせたわね。さあ、続きをやりましょうか」

ノハ#T儺)「無視すんなよおおおおッ!」

448 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 21:41:29 ID:uF/6QhHc0

( ゚∋゚)∩"

ノパ听)ξ゚听)ξ「?」

ツン達に向け、クックルが無言で手招きをした。
無表情だがその仕草は幾分挑発的にも見える。

ζ(゚口゚*ζ「ま〜と〜め〜て〜かかっ〜て〜こ〜い♪ と〜い〜って〜る〜よ〜♪」

(;^ω^)(これは……こっちにとってはラッキーだけど、ツンはきっとこの申し出は断るおね)

ξ゚听)ξ「お気遣いどうも。けど、こんなのと組むのもご免だし、舐められるのもはもっとご免だわ」

ノパ听)「調子に乗るな、デカブツ! お前なんか私1人で十分だっ!」

(;^ω^)(やっぱりかお……)

元々一騎打ちのような形ではじまった戦いだ。
そう簡単に受け入れるツンではないだろう。
だが現実を考えれば、共闘して欲しいとも思う。

449 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 21:43:01 ID:uF/6QhHc0

デレ曰く、クックルはラウンジ一の武との事らしいし、それに見合った強さも見せ付けてくれた。
クエストの成功を最優先に考えるなら、勝てる確率の高い方を選ぶべきだ。

┐( ゚∋゚)┌

ノパ听)ξ゚听)ξ「!」

ζ(゚口゚*ζ「ざ〜こが〜な〜んに〜ん〜たば〜に〜な〜ろ〜と♪ か〜わら〜ない〜♪」

ζ(゚口゚*ζ「み〜の〜ほ〜ど〜を〜しれ〜♪ お〜の〜が〜も〜くて〜きを〜わ〜す〜れ〜るな〜♪」

大袈裟に肩をすくめるクックルと、派手に挑発の歌を歌うデレ。
本当にクックルがそう思ってるかはさておき、多分これも逆効果で、
ツンはますます意固地になって一騎打ちにこだわるのではなかろうか。

ξ ゚ -゚)ξ「……」

ノハ#゚听)「何だと、この鶏頭! 唐揚げにしてやるっ!」

しかし、更に激昂するヒートさんとは裏腹に、ツンは神妙な顔でクックルの方を見ていた。
その後、視線が僕の方へ向く。

450 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 21:44:05 ID:uF/6QhHc0

ξ ゚ -゚)ξ

(;^ω^)(ツン……)

僕は何かを言ってあげるべきなのだろう。
それが、ツンなら勝てるという激励の言葉であったら良かったのだが、今言うべきはそうではない。

どちらにしろ、言葉を伝えられない僕は目を閉じて頷き、ツンに全ての判断を任せる事にした。

( -ω-)" コクッ

ξ゚听)ξ「……そうね、わかったわ」

ツンは僕に聞こえないくらいくらいの言葉で小さく呟くと、
クックルに罵詈雑言を浴びせているヒートさんの前に進み出た。

  モガッ
ノパ -(⊂ξ゚听)ξ「……あんたの言うとおりかもね」

( ゚∋゚)

451 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 21:45:40 ID:uF/6QhHc0

ξ゚听)ξ「1対1の果し合いなら、きっと今の私はあんたに勝てないわ」

ξ゚听)ξ「勿論、こっちのヒートもね」

ノハ#゚听)「なんだ──」
  モガッ
ノパ<(⊂ξ゚听)ξ「お言葉に甘えて、2人掛かりでやらせてもらうわ」

( ゚∋゚)" コクッ

ツンはそう言うと、ヒートさんの首に腕を回し、後に引っ張っていく。
今の提案を納得させるつもりなのだろうが、果たしてヒートさんが受け入れてくるかどうか。

ζ(゚口゚*ζ「ふ〜ん〜♪」

(;^ω^)(ツン……)

ζ(゚、゚*ζ「ふう……」

(;^ω^)「……おっ?」

452 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 21:47:01 ID:uF/6QhHc0

不意にデレの歌が止み、僕は解放された。
理由はわからないが、とにかくチャンスだと思ってその場を離れようとしたが、身体が思う様に動かず、転んでしまう。

ζ(゚ー゚*ζ「ああ、無理無理。歌の効果が抜けるまではしばらくかかると思うよ」

なるほど、どうやらデレの言っている事に嘘はないらしく、思った通りには身体に力が入らない。
それを見越してデレは歌を止めたのだろうが、何とか素早く回復してこの場を離れねば。
その為に僕は時間を稼ぐべく、デレに話しかける。

(;^ω^)「……何で歌を止めたんだお?」

ζ(゚、゚*ζ「君がなかなか眠ってくれないからだねえ」

ζ(゚ー゚*ζ「歌いっぱなしも疲れるんですよ。もう、喉からっからですぜ」

(;^ω^)「まあ、そりゃそうだおね」

ζ(゚ー゚*ζ「お水持ってない?」

( ^ω^)「海に行けばいくらでもあるお」

ζ(゚、゚*ζ「海水は飲めないねえ」

453 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 21:48:38 ID:uF/6QhHc0

僕は話しながら身体の状態をこっそり確かめる。
だるさは残るがそろそろ起き上がるくらいは出来そうだ。

ζ(゚ー゚*ζ「もう逃げられそう?」

( ^ω^)「まだ全然無理っぽいお!」

僕はさもだるそうに首を振り、まだ動けない風を装う。
そんな僕にデレは笑顔を浮かべた。

ζ(^ー^*ζ「嘘が下手だねえ」

( ^ω^)「嘘じゃないお。まだ身体は全然動かないお!」

そう主張する僕に、デレは人差し指を突き付ける。
そしてその指を僕の左に向け、下に下げた。

  ブルブルブル
(((∪>ω<)))

(;^ω^)「お……わんお……」

454 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 21:50:01 ID:uF/6QhHc0

いつの間にか起きていたわんわんおが僕の足元で身体を奮わせ、身体を伸ばしていた。
この状況では、僕が動けないと言っても説得力はない。

ζ(゚、゚*ζ「わんお君、わんちゃんにしては回復早すぎだと思うけどね」

( ^ω^)「わんおは元気さが取り得だお」

ζ(゚ー゚*ζ「で、もう身体動く?」

∩( ^ω^)∩「割と」

僕は観念し、正直に今の状況を伝えた。
しかしながら一行にデレの歌は再開されない。

ζ(゚ー゚*ζ「邪魔はしないんでしょ?」

( ^ω^)「お? 何のだお?」

僕の言葉にデレは再び僕の方を指差す。
正確には僕の背後、クックル達の方であろう。

455 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 21:51:59 ID:uF/6QhHc0

ζ(゚ー゚*ζ「クックル強いから、ラウンジじゃまず戦いを挑んでくる人はいないんだよね」

ζ(゚ー゚*ζ「だから、今日はちょっと楽しそうに見えるねえ」

ζ(゚ー゚*ζ「クックルが殴り合いで倒れるの、随分久しぶりに見た気がしますなあ」

( ^ω^)「……デレの歌から抜けられたら、すぐに助けに入るつもりだったけど」

( ^ω^)「ツンがプライドを曲げてヒートさんと共闘すると決めた今、魔法で援護するのは野暮だおね」

(∪^ω^)「わんお!」

ζ(^ー^*ζ「そういう事だね」

僕に向けられる屈託のない笑みに、複雑な思いが浮かぶ。
ツン達の邪魔はしないと決めたものの、僕とデレが敵同士なのは変わらない。
こちらはこちらで決着を付けなければならないのだ。

( ^ω^)「デレは何で千年紀の王の復活を止めたいんだお?」

ζ(゚ー゚*ζ「君は止めたくないの?」

( ^ω^)「いや、それは当然止めたいお」

456 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 21:53:34 ID:uF/6QhHc0

人として平和に暮らすためには、そういう物騒なものの復活を止めたいと思うのは当然だろう。
僕が聞きたいのは、具体的に誰かが復活させようとしているという話もない今に、
わざわざ率先してそれを回収に当たっている理由だ。

ζ(゚ー゚*ζ「そうだねえ。わかりやすいから、かな?」

( ^ω^)「わかりやすい?」

(∪^ω^)「わんお?」

dζ(゚ー゚*ζ「ほら、私の夢ってなんだか漠然としてるじゃないですか」

こういう具体的な何かをなせば、即、人々の幸せに繋がる事はなくとも、不幸にはしないだろうとデレは言う。
自分がラウンジの聖女として与えられる幸せなんて限られているから、
それならば人々が普通の暮らしを送れる世界を守れば、後は皆ががんばって幸せになれるだろうと。

( ^ω^)「そんな簡単な話じゃないと思うけど、間違ってはいないと思うお」

理想論だとは思うが、世が平和なら不条理に生命を奪われる機会も減るだろう。
ごく当たり前の暮らしが出来れば、そこからどう生きるかは自分達で選ぶことも出来る。

ζ(゚ー゚*ζ「あんまり警戒しなくても、私の話に賛同するなら聖骸布を渡せなんて言わないから安心してよ」

457 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 21:54:48 ID:uF/6QhHc0

( ^ω^)「それとこれとはまた別の話だから、渡す気はないお」

冗談交じりに言うデレに、僕は肩をすくめて見せる。
僕がこれをビコーズさんに届けたからといって、千年紀の王が復活するわけでもないのだ。
デレが正しいとしても、僕やビコーズさんをはじめニューソクの人々が間違った道を進むとは決まっていない。

ζ(-、-*ζ「まあ、その通りですな」

( ^ω^)「迷ってたけど、僕はこれをビコーズさんが、ニューソク王家がどうするつもりかを見極める為にも」

( ^ω^)「これを届ける事に決めたお」

僕は聖骸布を掲げ、デレにそう宣言する。
デレは少し困った様に笑い、今度はデレが肩をすくめた。

ζ(゚ー゚*ζ「それがいい、なんて立場上言っちゃ駄目なんだけど、知ろうとする意思は尊重したいね」

( ^ω^)「じゃあ、ここは引いてくれるかお?」

ζ(゚ー゚*ζ「……出来れば戦いたくはないと今でも思ってるんだけどねえ」

458 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 21:57:42 ID:uF/6QhHc0

ζ(゚ー゚*ζ「君に限らず、誰とだって」

ζ(-、-*ζ「ただ、そうも言ってられない時だってあるのはわかってるんだけどね」

だから、そう言える時ぐらいはそう言いたいとデレは言う。
戦いたくないと。

ζ(゚ー゚*ζ「まあ、そう簡単には行かないでしょうし」

ヽζ(゚ー゚*ζ「取り敢えずはそうだねえ……、向こうの結果次第ですかね」

ξ;--)ξノパー゚)

( ゚∋゚)

いつの間にかツン達とクックルの戦いは再開されていた。
やけに上機嫌なヒートさんと、妙に疲れた顔をしたツンの対比が、話し合いの行く末を理解させる。
ヒートさんの説得にはだいぶ苦労したみたいだが、どうやら共闘の道は取れた様だ。

ノハ#゚听)「だらっしゃああああっ!」

大気を震わす大声を上げ、ヒートさんが跳躍する。
そのまま一直線にクックル目掛けて降下していくが、クックルはそれを落ち着いて盾で迎撃しようとした。

459 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 21:59:53 ID:uF/6QhHc0

ノパ听)「甘いっ!!! 守兵主散打ァァァァッ!!!」

ヒートさんは高速で連続突きを放ち、四方から襲い来る盾を弾く。
そのままクックルに一撃を食らわせようとしたが、クックルはそれを掻い潜って攻撃をかわした。

ξ゚听)ξ「ハッ!」

( ゚∋゚)∩ ガシッ

前進したクックルを、待ち構えていたかのようにツンが蹴りを放つ。
クックルはそれを生身の腕で受け止め、すぐ様距離を取ったツンに反対側の盾を飛ばした。

ξ゚听)ξ「どこ狙ってんのよ」

それを簡単にかわすツン。
しかし、かわしたはずの盾はクックルが鎖を操る事で急激に方向を変え、ツンから離れて行く。

ノハ;゚听)∩「うわっと!? 危なかった……」

どうやら最初から狙いはヒートさんだった様で、クックルの死角を突こうとしていたヒートさんに綺麗にぶち当たった。
ヒートさんは辛くもそれを両腕で防御して耐える。

460 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 22:01:58 ID:uF/6QhHc0

( ^ω^)「白熱してるおね。つーか、クックル強いお」

ζ(゚ー゚*ζ「そりゃ伊達にラウンジ最強の武なんて讃えられてませんぜ?」

むしろ2人掛かりとはいえ、よくあのクックル相手に善戦してるものだとデレはツン達を褒める。

ζ(゚ー゚*ζ「大体殴って終わりってのが多いんだよねえ。あの盾をあそこまで使ってるのは久しぶりに見たね」

( ^ω^)「あれ、魔法使いとしてはだいぶ嫌な武器だお」

(∪^ω^)「わんおー」

距離を取って戦うのが基本の魔法使いにとっては、あの鎖付きの盾みたいに遠距離攻撃も可能とする武器は厄介だ。
トソン君の時と同じような戦い方をすれば何とかなるかもしれないが、
あのタフガイと追いかけっこはしたくないものである。

ζ(゚ー゚*ζ「そう? 先生は余裕で捌いてたけどね」

( ^ω^)「先生? ひょっとして西の賢者さんかお?」

ζ(゚ー゚*ζ「そうそう、モララー先生」

461 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 22:04:00 ID:uF/6QhHc0

ラウンジの聖女の後見人の西の賢者。
デレは先生と呼んでいるらしい。

師匠と呼ばないのは実際に魔法なんかを教えてもらっているわけでもなく、
師弟関係というものとは少し違うからとの事だった。

東も西も師匠と呼ばれるのは嫌いなのかと思ったら、こちらとはまた事情が違うようだ。

ζ(゚ー゚*ζ「クックルも強いけど、先生はそれ以上に強いからね」

(;^ω^)「クックルがラウンジ最強じゃなかったのかお?」

ζ(゚ー゚*ζ「クックルはラウンジ最強の武だよ。殴り合いとか近接戦闘の最強」

ζ(゚ー゚*ζ「先生はただ単に最強だね」

( ^ω^)「要するにオールマイティに強いんだおね。まあ、わからなくはないお」

ζ(゚ー゚*ζ「なんせ先生のお師匠様は大賢者バーン=ホライゾンだからねえ」

( ^ω^)「知ってるお。僕の師匠は東の賢者だし、それに……」

ζ(゚、゚*ζ「そういえばそうでしたなあ」
462 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 22:06:07 ID:uF/6QhHc0

( ^ω^)「やっぱりデレも僕の事は知ってたんだおね」

ζ(゚ー゚*ζ「名前は先生から聞いてたからね。ヴィップで会ったのもメシューマで会ったのも偶然だけど」

( ^ω^)「そうだったのかお」

流石に僕の事を調べに来たと考えるのは、自意識過剰というものであろう。
色んな意味で僕には力がないのだし。

ζ(゚ー゚*ζ「その名が嫌い?」

( ^ω^)「そんな事は無いお。じいちゃんの事は好きだし」

僕自身は、ホライゾンの名を名乗る事に抵抗はない。
それによる弊害がある事はわかっているが、僕はこの名が、じいちゃんの事が好きなのだ。

( ^ω^)「ナイトウの名も、じいちゃんが付けた名前だし、好きなんだけどね」

じいちゃんがヴィップの町に隠居した時、現在のドクオさんの庵に住んでいる事にしていたが、
実際は名を変えて僕とドクオさんと共にサンライズで暮らしていた。
その時名乗っていたのがナイトウの姓である。
463 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 22:09:15 ID:uF/6QhHc0

ζ(゚ー゚*ζ「そりゃあ良かった」

(∪^ω^)「わんわんお」

( ^ω^)「そういうデレは、ラウンジの聖女の名があんまり気に入ってないみたいだおね」

ζ(゚、゚*ζ「別に嫌いなわけじゃないんですがねえ」

ζ(゚ー゚*ζ「何だか仰々しくていけませんなあ」

ラウンジの聖女の名がラウンジでどれほどの力を持つのか僕にはわからない。
ただ、デレの話し振りからするに、かなり敬われているのは確かだろう。

ζ(゚、゚*ζ「色々と面倒なんですよ。こっちとしては、もう少し地域密着型の活動をしたいんだけど」

ζ(゚、゚*ζ「やれ政治だ説法だとねえ、何だか遠いんですよ、国民との距離が」

( ^ω^)「ラウンジの聖女ってやつが、すげえ偉そうな立場なのはわかったお」

( ^ω^)「てか、地域密着型とか言って、その地域出ちゃってるのはどうなんだお?」

ζ(゚、゚*ζ「まあ、それはそれとして……」

464 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 22:11:31 ID:uF/6QhHc0

ζ(゚ー゚*ζ「折角クックルと2人で先生撒いて得た自由だし」

ζ(゚ー゚*ζ「ラウンジの聖女じゃなくて、ただのデレとして色々見てみたいんですよ」

( ^ω^)「何かどっかで聞いた話だけど、それはともかく西の賢者置いてけぼりかお」

ζ(゚ー゚*ζ「そろそろ追い付かれるかもしれないけどね」

デレの考えは、クーが僕に話したそれとどこか似ていると思う。
王族とかそういった立場の人間になると、考える事は似通って来るのだろうか。

ただ、西の賢者がいないのはラッキーだ。
もっとも、この様子だと僕はデレと戦わなくても済むかもしれないが。

( ^ω^)「西の賢者さんって、厳格で怖い人なのかお?」

ζ(゚ー゚*ζ「厳格は厳格だけど、どちらかと言えば物静かな人かな?」

ζ(゚、゚*ζ「ただ、怒らせると怖いねえ。滅多に怒るような人じゃないけど」

( ^ω^)「ふーん……って、ひょっとして置いてけぼり食らわせた事で、すごい怒ってるかもしれなくないかお?」

465 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 22:15:19 ID:uF/6QhHc0

ζ(´ー`;ζ「うーん、その可能性はあるかもねー」

そしたらまた逃げようと、デレは口の端を吊り上げて笑ってみせる。

( ^ω^)「その時に僕らを囮にするのは止めてくれお」

ζ(゚一゚*ζ「おお、その手があったね」

冗談交じりに言うデレに、僕は笑い返す。
先ほどから向こうの方で打撃音と共に、何だか殺気混じりの視線を感じるのは多分気の所為だろう。

ξ#゚听)ξ「こっちが必死こいて戦ってんのに、何であいつら長閑に談笑してるわけ?」

( ゚∋゚)

ξ#゚听)ξ「あんたはそれでいいの?」

( ゚∋゚)

ξ#゚听)ξ「何とか言ええええっ!」

ヒートさんと見間違わんばかりの雄叫びを上げ、ツンが真正面からクックルに拳を放つ。

466 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 22:16:34 ID:uF/6QhHc0

気の一撃ではなく、単なる打撃の様だが、
戦い始めた当初より随分と力が籠っているように見えるのは気の所為ではないだろう。
ツンの拳を両腕で防いだクックルの身体が後退る。

ヽノハ#゚听)ノ「次は私だ! 宇宙魔法!」

ノハ#゚听)「守兵座亜ァァァァッ!」

ツンと入れ替わるように走り込んで来たヒートさんが跳ぶ。
しかし、その跳躍は低く、地を這うように空中を滑り、クックルの脚目掛けてヒートさんは両足で蹴りを放った。

( ゚∋゚)"

ノハ#゚听)「クッ、これでも倒れないかっ!」

クックルはヒートさんの攻撃を耐え切り、目の前に着地したヒートさん目掛けて拳を振り下ろす。
ヒートさんはしゃがんだままの体勢で、両腕を挙げてそれを防ぐ。

ノハ#゚听)「ぬッ!」

辛くも防御には成功したが、その衝撃で更に体勢を崩すヒートさんに、クックルは続けて反対の拳を放つ。
そのまま防御をお構い無しに放たれ続けるクックルの拳に、ヒートさんの顔が歪む。

467 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 22:17:51 ID:uF/6QhHc0

ξ#゚听)ξ「やらせない!」

今度はツンが走り込んで来て、先のヒートさんと同じく低空の飛び蹴りを放つ。
攻撃態勢にあった所為か、クックルは今度はわずかにバランスを崩し、その隙にヒートさんはその場から離脱した。
ツンも着地と同時に横に飛び、距離を取ってヒートさんと合流する。

ξ゚听)ξ「考え無しに突っ込まないの。隙の大きい技は厳禁! 常に動き続けるぐらいの気でいなさい!」

ノパ听)「知らんッ! 細かい事は気にするな! とにかくあいつを殴り倒せば済む話だ!」

ξ#゚听)ξ「そう簡単に行くわけないでしょうが! ちょっとは頭使えっての!」

ノパ听)「おうっ! 今度は必殺の頭突きを食らわせてやるっ!」

ξ#゚听)ξ「そういう意味じゃねええええッ!!!」

どうやら即席の連携はあまり上手く行っていないようだ。
強さにさほど差はなくとも、ツンとヒートさんの戦い方には結構な差があるという事か。

ξ゚听)ξ「極力攻撃は食らわない戦い方をしなきゃ、すぐに戦闘不能よ?」

468 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 22:19:44 ID:uF/6QhHc0

ノパ听)「だがなツンよ、そんなちまちました戦い方であいつが倒せると思うか?」

ξ゚听)ξ「それは……」

( ゚∋゚)

ξ゚听)ξ「倒せないとしたら、あんたはどうするつもりなのよ?」

ノパ听)∩「そんなの真っ向から殴り合うに決まってるだろ?」

ξ;゚听)ξ「だからそれじゃ、こっちがもたないんだってば……」

ノパ听)「ならば殴られる前に倒す!」

ξ;--)ξ「それが出来れば苦労しないわよ……」

ノパ听)「やってみなきゃわからんだろ?」

ξ;゚听)ξ「散々やった結果がこの状況でしょうが……」

ξ;--)ξヽ「もういいわよ、あんたと話してると頭痛くなってくるわ」

469 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 22:21:23 ID:uF/6QhHc0

ノパー゚)「よし、じゃあ、作戦はやられる前にやれ! これで行くぞ!」

ξ;゚听)ξ「何でそうなるのよ! って、待ちなさい!」

ツンの静止も虚しく、ヒートさんはクックル目掛けて走り出す。
その行動に頭を抱えながらも、ツンはヒートさんの後を追う。

ノハ#゚听)「どりゃあああああッ!」

( ゚∋゚)⊃ ブンッ

全く小細工抜きで真正面から殴りかかるヒートさん。
クックルは盾を投げ、近付かれる前に迎撃する。

ノハ#゚听)∩○「くぬっ!」

( ゚∋゚) !?

ヒートさんはクックルの盾をかわさず、しっかりと受け止める。
そしてその場で急制動を掛け、鎖を思いっきり引っ張った。

470 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 22:23:37 ID:uF/6QhHc0

ノハ#゚д゚)「んぎぎぎぎ……」

しかし、いかにヒートさんとて、単純な力比べではクックルには及ばないようだ。
逆に引っ張られ、徐々に引き寄せられる。

ξ゚听)ξ「何やってんのよ!」

追い付いたツンが跳躍し、ヒートさんとクックルの間に張られた鎖を足場に更に跳ねる。
それによって更に前に引っ張られたヒートさんは、つんのめりながらも盾を放り投げ、
数回の前転の後、大地を蹴った。

ξ#゚听)ξ「はああああッ!」

高高度に達したツンは、クックルに狙いを定め、急降下の飛び蹴りを放つ。
ほぼ同じタイミングで、地を這うような低空を飛んだヒートさんも飛び蹴りの体勢を取った。

∩( ゚∋゚)⊃ スッ…

クックルは冷静に両方の着弾点に盾を構える。
このままではクックルにダメージは通らないだろう。

471 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 22:27:50 ID:uF/6QhHc0

ノハ#゚听)「ならばっ!」

ヒートさんが吠え、飛び蹴りの体勢のまま身体を捻らせる。
捻りは回転になり、その身を一筋の螺旋の矢とした。

ξ#゚听)ξ「はああああああッ!」

それを見ていたのか、それとも最初からそのつもりだったのか、同じくツンもその身を捻り、螺旋を描く。

ノハ#゚听)「怒竜流ッ! 守兵座亜ァァァァッ!」

ξ#゚听)ξ「でえええええりゃあああああッ!」

重々しい金属音が鳴り響き、2本の螺旋の矢を受け止めたクックルの身体が後方に押される。
しかしクックルは耐え切り、盾ごと受け止めた2人を地面に叩き付けようとする。

ξ#゚听)ξ「まだよッ!」

ノハ#゚听)「やられる前にッ!」

ノハ#゚听)ξ#゚听)ξ「やれええええッ!!!」

472 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 22:29:41 ID:uF/6QhHc0

地面に叩きつけられた様に見えた2人は、きっちりと受身を取っており、すぐ様反撃に転じる。
仰向けの体勢で倒立するように身体を前に丸め、引き絞った脚を同時にクックルに突き出し、その身を跳ね上げた。

( ゚∋゚) !?

クックルの巨体がふわりと宙に浮く。
決して高くはないが、脚が地面から離れたことで、更に下から襲い来るツンの追撃を耐える事は出来なかった。

ξ#゚听)ξ「飛んでけええええッ!」

先の跳ね上げた蹴りの着地の瞬間、すぐ様次の蹴りを放っていたツン。
その一撃が更にクックルの身を高く浮かせる。

ヽノハ#゚听)ノ「宇宙魔法ッ!」

∩ノハ#゚听)∩「打武流ゥッ! 覇亜ケェェェェンッ!!!」

いつの間にかクックルよりも更に高く跳躍していたヒートさんが、両手を握り合わせ、
大上段から振り下ろす渾身の一撃を放つ。
クックルは不安定な体勢ながらも身をよじり、それを盾で辛くも防ぐ。

473 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 22:31:16 ID:uF/6QhHc0

ノハ#゚皿゚)「んがあああ! しぶといッ!」

( ゚∋゚)⊃ バッ

クックルはそのまま距離が狭まったヒートさんの身体を掴もうとうする。
しかしそれは下から飛んで来たツンの蹴りに阻まれる。

ξ#゚听)ξ「油断すんじゃないわよ!」

ノハ#゚听)「おうっ!」

そのまま2人の間を通り過ぎ、更に高高度に達したツンは空中で反転し、上空からクックルに襲い掛かる。
ほぼ同時ヒートさんが必殺の一撃の溜めを作るべく、拳を引いた。

ξ#゚听)ξ///⊃「おりゃあああああああああッ!!!」

ノハ#゚听)///⊃「凄駆竜暗射亜ァァァァ──!!!」

(;゚∋゚) !!!

その刹那、3つの閃光が煌いた。
上空に2つ、そして……
475 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 22:35:20 ID:uF/6QhHc0

僕の目の前に1つ。

(;゚ω゚)「んなッ!?」

咄嗟に僕は魔法でも何でもない魔力を放出し、閃光、僕目掛けて飛んで来た光弾を持っていた杖で防ぐ。
魔力の放出による魔法防御は、魔法に対する防御方法としては最も原始的で、効率の悪い手段だが、
その人の魔力の強さによっては十分防御魔法としての効果は為す。

(;^ω^)「クッ!」

(∪;^ω^)「わんお!?」

何とか光弾を防ぐ事は出来たが、僕の愛用の杖は乾いた音を立てて砕けてしまった。
僕は役に立たなくなった杖の残骸を投げ捨て、デレの前に立ち、すぐ様防御魔法を張る。

攻撃を仕掛けて来た相手の姿を探すが、今の一撃で周囲に発生した煙の所為で見付けられない。
2つの光弾が襲ったツン達の方の様子も、同じく煙でよく見えない。

「ほう……、あれを防いだか」

(;^ω^)「誰だお!?」

徐々に晴れていく煙の先に、1人の男の姿が見える。
その身に纏うローブは青。
帽子は被らず、代わりに小さめの眼鏡を鼻に乗せた眉目秀麗な顔が無表情でこちらを見詰めている。

476 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 22:37:32 ID:uF/6QhHc0

( ・∀・)「誰だ、か。やれやれ、この国の人間はこの俺の顔も知らないのか」

(;^ω^)「知らないお。つーか誰だお、あんた?」

ζ(゚、゚*ζ「あらら、先生、お早いお着きで」

(;^ω^)「え? 先生って、ひょっとしてあれが……」

デレの言葉で僕は全てを瞬時に察することが出来た。
なるほど、西の賢者ならば今の一撃の速さも頷けるというものだ。
あの光の魔法は、発動は察知出来たが、出来た時には既に目の前にあったのだ。

(#・∀・)「ええ、貴女の先生様ですよ、デレ? そちらのお子様には西の賢者モララー様と名乗っておこうか」

ζ(゚ー゚;ζ「あははは、お元気でしたか、先生?」

(#・∀・)「お陰様ですこぶる体調は良好だよ。長い船旅が良い気分転換になったんでね」

(;^ω^)(うわちゃー……、何かすげえ怒ってらっしゃるおね……)

(∪^ω^)「わんおー」

デレ曰く、西の賢者は厳格だが物静かな人という事であった。
しかしそれは怒らせなければの話らしい。
478 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 22:41:10 ID:uF/6QhHc0

今の西の賢者、モララーはどう見ても怒っていることからするに、相当ヤバい状況であろう。
物静かな人がいきなり攻撃を仕掛けて来るとか有り得ない話だ。

(#・∀・)「それで、デレ、君には色々と聞かねばならない事があるが……」

(#・∀・)「お前にも色々と聞く必要があるんだよな……」

(;^ω^)「お……」

そう言ってモララーは視線をデレから外し、僕ではなくクックルの方に向ける。
いつの間にか煙は晴れ、そこには3人の姿が見えていた。

ξ;゚听)ξ( ゚∋゚)ノハ;゚听)

(;^ω^)「ツン! ヒートさん! 無事だったのかお!」

ξ;゚听)ξ「う、うん、無事というか……」

(;^ω^)「お……?」

ツンはどこか信じられないものを見た様な顔で、クックルの方に視線を向ける。
見た所、ツンもヒートさんもケガはしてない様だが、先ほどの魔法はどうやってかわしたのだろうか。

479 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 22:43:15 ID:uF/6QhHc0

(#・∀・)「なあ、クックル? お前、何やってんの?」

( ゚∋゚)

そんな僕の疑問を余所に、モララーのクックルに対する詰問が始まる。
と言っても、一方的にモララーがしゃべってるだけで、クックルは相変わらず無言だ。

しかしデレはそれでもクックルの言っている事がわかっているようだったから、
ひょっとしたらラウンジには一見無言に見えるクックルと意思疎通を図る方法があるのかもしれない。

(#・∀・)「お前はデレの護衛だ。抜け出そうとしたデレを止めなかった事は置いておくとして」

(#・∀・)「デレにずっと付いて、守っていた事は認めよう」

( ゚∋゚)

(#・∀・)「しかし何だ、今の戦いは? ラウンジ最強の武がたかだか小娘2人に負けそうになってんじゃねえよ」

( ゚∋゚)

(#・∀・)「あまつさえ、何で俺の魔法からその2人をかばってんだよ?」

(;^ω^)「お、どういう事だお?」

480 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 22:45:37 ID:uF/6QhHc0

何の事かと思い、ツンの方を見ると、ツンは僕に頷いて返す。
つまりはモララーの言う事が正しいという意味だろう。

( ゚∋゚)

確かによく見るとクックルの両盾は黒ずんでいた。
恐らくモララーの魔法を盾で受けたのだろう。

となると、本来防ぐはずだったツンとヒートさんの攻撃はどうなったのだろうか。

(#・∀・)「何とか言いやがれ!」

┐( ゚∋゚)┌

(#・∀・)「何言ってんのかわかんねえよ! おい、デレ!」

(;^ω^)(あ、わかってなかったんだ……)

ζ(゚ー゚*ζ「はいはい、なんざんしょ?」

(#・∀・)「あいつは何て言ってんだ?」

( ゚∋゚)

481 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 22:47:50 ID:uF/6QhHc0

ζ(゚ー゚*ζ「戦いに年は関係ない。彼女達は立派な戦士だ。自分はその拳に応えたに過ぎない、だって」

(;^ω^)(今の短い間でそんなにしゃべってたのかお?)

(#・∀・)「はっ、ご立派な言い分だが、それが負けていいって理由には繋がらねえぞ?」

( ゚∋゚)

ζ(゚一゚*ζ「自分だって小娘に撒かれて置いてけぼり食らったくせに、ハハッ、ワロス、だって」

(#・∀・)「何だと、コラァァァァッ!」

(((;゚∋゚))) ブンブンブン

(;^ω^)「今のホントにそう言ったのかお? 何かすげえ否定してるように見えるんだけど?」

ζ(゚、゚*ζ「お前はいつもいちいち細かいんだよ、根暗眼鏡、だって」

(#゚∀゚)「おいコラ、てめえ、クックルゥゥゥゥゥッ!!!」

((((;゚∋゚)))) ブンブンブンッ!!!
483 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 22:51:19 ID:uF/6QhHc0

(;^ω^)「いや、これ絶対デレが捏造してるだろ。何か別の人みたいになってるから落ち着いてくれお」

(∪^ω^)「わんわんお」

(#・∀・)「あ? つーかお前誰だよ、さっきからうちの聖女に馴れ馴れしくしやがって」

(;^ω^)「お……、いや、僕は……」

なんと答えるべきなのだろうか。
現状を正しく答えるなら、僕はデレの敵なのだが、それを馬鹿正直に言うと瞬時に消されそうで怖いものがある。

ζ(゚ー゚*ζ「ただのお友達ですよー」

(#・∀・)「友達ぃ?」

(;^ω^)" コクコク

助け船を出してくれたデレの言葉に乗っかるも、モララーの射抜くような視線が僕に突き刺さる。
これは絶対信用してない眼だと感じるが、デレは嘘は言っていないと思う。

(#・∀・)「友達ねえ……。付き合い始めたばかりの男女は皆大体そう言うよなあ?」

484 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 22:53:13 ID:uF/6QhHc0

(;^ω^)「いや、そういうんじゃないですお、ホントに」

ζ(゚一゚*ζ「うん、違うよー、……まだね」

(;^ω^)「ちょ!?」

(#・∀・)「ほう……てめえ、ラウンジの聖女に手を出すというのがどういう事かわかってんだろうな?」

(;^ω^)「いや、だから違うし、わかってませんお」

(#・∀・)「そのくらい知っとけ、無学なクソガキ」

(;^ω^)「他の国の事情なんて知りませんお」

(#・∀・)「今回だってなあ、デレがすっぽかしたお陰で俺がどれだけ苦労したか」

それこそ知ったこっちゃない事だが、モララーの有無を言わせぬ迫力に僕は口をつぐむ。
下手な事を言うといきなり攻撃されそうな気がしてならない。

(#・∀・)「北部中を回って、お偉いさんの嫌味を聞いて来たんだぞ?」

(;^ω^)「そりゃご苦労様ですお」

485 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 22:56:30 ID:uF/6QhHc0

(#・∀・)「ああ、ご苦労なことだよ。その辺わかってるのか、デレ?」

ζ(゚、゚*ζ「だってー、北の方の偉い人達は私の話なんかなくっても、毎日に普通に暮らしていけるでしょ?」

デレの話によると、デレはラウンジ大陸北部に多い富裕層の町を回って説法をするよりも、
南の貧困層の多い町を回って助けになりたかったらしい。

(#・∀・)「うむ、流石デレ。ラウンジの聖女に相応しい、誠実な答えだ」

(;^ω^)(何でこの人、怒りながら褒めてんだお?)

(#・∀・)「だがね、デレ、その君が救いたい貧困層に対する支援を引き出す為にも」

(#・∀・)「君は北部の嫌味ったらしい貴族の所を回る必要があった」

(#・∀・)「君もそういった政治的な判断がわからないわけじゃないだろ?」

ζ(¬、¬*ζ「むー……」

モララーの言葉に目を逸らし、反論出来ないでいるデレ。
そのことをわかった上で、自分の我を通してしまった負い目がデレにはあるのかもしれない。

486 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 22:59:57 ID:uF/6QhHc0

(#-∀-)「まあ、君の気持ちもわかるし、僕も鬼じゃない」

(#・∀・)「この件はこれで不問にしようと思う。……が」

ζ(゚、゚*ζ「が?」

(#・∀・)「何故君はニューソク大陸まで来たんだね?」

(#・∀・)「ラウンジ南部を回っているだけなら許したが、流石にこれは見過ごせないね」

ζ(゚、゚*ζ「それは……」

反射的に僕の方を見ようとしたのか、デレの顔がわずかに揺れる。
思い止まったはずのその仕草で、モララーは何かを察したのか僕の方を凝視する。

( ・∀・)「なるほど、そういう事かね」

モララーは少しずり下がって来ていた眼鏡を直し、再びデレの方へ視線を向ける。

( ・∀・)「千年紀の王か」

ζ(゚ー゚;ζ「あはは……、相変わらず鋭いですなあ」

487 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 23:01:40 ID:uF/6QhHc0

ヽ( ・∀・)>やれやれ、関わるなと言っておいたはずだが、見付けてしまったならしょうがない」

(;^ω^)「お?」

モララーはそう言いながら、何だかよくわからないカッコいいポーズを取り始める。
片手を自分の頭に絡ませるように挙げ、もう片方の手を胸の前で曲げたその体勢に、
僕はわからないながらも不穏なものを感じ、再度防御魔法の準備をする。

ヽ( ・∀・)>「さっさとそれを頂戴してラウンジに帰るぞ、デレ」

急激に高まるモララーの魔力に、それがモララーのスペシャルなのだと僕は判断した。
恐らくは舞踊魔法の一種で、特定の型に構える事で発動するものだと。

(・∀・#)「だから邪魔すんなよ、っと!」

いきなりモララーは振り向き様、後方に魔法を放つ。

ξ;゚听)ξ(;゚∋゚)ノハ;゚听) !?

放たれたのは風の魔法。
不意を突こうとしていたツン達3人は大きく空に舞い上がり、海に落ちた。

488 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 23:03:01 ID:uF/6QhHc0

(;^ω^)「ツン! ヒートさん! あと、クックル!?」

何故クックルもツン達に加担しようとしていたのかわからないが、
その重量のあるクックルさえもあんなに吹き飛ばすとは恐ろしい威力だ。
殺すつもりはなかったのだろうが、結構遠くまで飛ばされたので助けないとまずいかもしれない。

ζ(゚ー゚;ζ「聞いて!」

(;^ω^)「お?」

思わず飛び出しそうになった僕の手をデレが掴み、小声で耳打ちをして来る。

ζ(゚ー゚;ζ「何とか私が先生の足を止めるから、君達は逃げて」

(;^ω^)「……いいのかお?」

ζ(゚ー゚;ζ「このままだと君達、先生に消されちゃいそうだしね」

(;^ω^)「まあ、正直勝てる気はしないお」

(;^ω^)「でも、いいのかお、これ?」

489 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 23:04:12 ID:uF/6QhHc0

僕は小脇に挟んでいた聖骸布を差す。
これをモララーに素直に渡してしまえば、戦いは避けられそうな気もするが、
それはそれで納得は出来ないものがある。

ζ(゚ー゚*ζ「確かめるんでしょ、それ?」

( ^ω^)「そのつもりだお」

ζ(゚ー゚*ζ「だったら、君を信じて預けるよ」

( ^ω^)「ありがとうだお。決して悪い事には使わせないって約束するお」

デレとの会話終え、モララーの方に視線を戻す。
モララーは既に次の魔法の体勢に入ってるようで、先程とは違うカッコいいポーズを決めていた。
     ヽ
ノ( ・∀・)「さて、大人しくそれを渡せば見逃してやるがどうするかね?」

( ^ω^)「だが断るお。こっちも仕事なんだお」
     ヽ
ノ( ・∀・)「勤勉さは美徳だが、時と場合を考えた方が良いんじゃないか?」

( ^ω^)「冒険者も魔法道具屋も、信用が第一なんだお」

490 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 23:05:39 ID:uF/6QhHc0

モララーがどんな魔法を使ってくるか、現段階では予測は出来ない。
しかしながら僕の隣にデレがいる事を考えると、あまり強力な魔法は使って来ないと思う。
本意ではないが、ここはデレを利用させてもらう他に道はない。
     ヽ
ノ( ・∀・)「ふむ、言うじゃないか。骨のある若者は嫌いではないが、今の所、俺は君が嫌いだね」

( ^ω^)「僕はそうでもないんですけどね。貴方の師匠のお話とか聞きたいですし」
     ヽ
ノ( ・∀・)「ん? 君は……っと!」

モララーが魔法を解き放つ。
対象は僕ではなく、自分自身に。

( ・∀・)「まだ仲間がいたのか」

モララーの周囲の空気がわずかに歪んで見える。
恐らく、モララーの張った防御魔法だろう。

そしてその魔法に遮られ、見覚えのある金属の板が空中に留まっていた。

491 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 23:07:24 ID:uF/6QhHc0

(゚、゚;トソン「物理防御結界!? いや、高密度の空気ですか!?」

( ・∀・)「随分と変わった武器を使うねえ。いい太刀筋だ」

気付けば集合時間は過ぎていた。
時間になっても現れない僕らを不審に思い、トソン君達は港に駆け付けて来てくれたのだろう。

川#゚ -゚)「ハッ!」

更に脇からクーが躍り出て、モララーに剣を向ける。
しかし、モララーが右手を一薙ぎすると、クーの剣はまるで空中に壁があるように止められてしまう。

( ・∀・)「こちらはまだまだ踏み込みが甘いな」

川#゚ -゚)「クッ……」

( ・∀・)「ああ、君、すぐに剣を捨てた方がいいぞ?」

川#゚ -゚)「何を……」

(;^ω^)「クー! 剣を捨てるお!」

492 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 23:09:23 ID:uF/6QhHc0

川;゚ -゚)「え? あ……」

僕の叫びに咄嗟に剣を離すクー。
次の瞬間、空中に浮かんでいたクーの剣はぐにゃりと捻じ曲がり、ただの鉄屑と化した。

(;^ω^)(とんでもねえ強さだお……)

やはりまともに戦っても敵う相手ではない。
デレの提案に従い、逃げるしかないだろう。

トソン君達の奇襲は失敗したが、その時間で周囲の確認が出来た。
心配だったツン達も、見覚えのある船に救助される姿が見えた。

(;^ω^)(退路はやっぱあそこかおね……)

僕は船上の人物がこちらを見ている事を確認し、何かを放り投げる仕草をして見せた。
その後、わんわんおをフードに押し込み、聖骸布を懐に入れて魔法の詠唱の準備をする。
逃げる為にはもう1手必要だと思うが、それはデレに任せられるだろうか。

( ・∀・)「年長者の言うことは素直に聞くものだよ、お嬢さん」

川;゚ -゚)「……」

493 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 23:12:34 ID:uF/6QhHc0

そうこうしている間に、モララーがクーに手を向けている。
あまりのんびり構えている時間はない。

( ^ω^)「ここで行くしかないかお。ksk!」

僕はエア・シューズの魔法を唱え、一直線に走る。

( ・∀・)「何だね、それは? 無謀にも程があるだろ」

モララーの手がクーから僕に向け直される。
最初に見た光の弾が各指に浮かぶ。

(;^ω^)「ぬおっ!?」

( ・∀・)「サービスだ」

更に反対側の手も向けられ、計10の光弾が飛んで来る。
このままモララーの元に向かえば直撃は避けられないが、僕の狙いは最初からモララーではない。

(;^ω^)「だあああああッ!」

川;゚ -゚)「!?」

494 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 23:14:46 ID:uF/6QhHc0

僕は進行方向を変え、クーの元へ向かう。
その僕のすぐ後ろを光弾が通り過ぎて行く。

(;^ω^)「クー!」

僕はクーの横を通り過ぎつつ抱き上げ、そのまま走り去ると見せかける。
モララーが再び僕に向けて魔法を放とうとしているのがわかるが、
それより早くモララーの背後にデレが飛び出した。

ζ(゚口゚*ζ「あ〜♪」

( ・∀・)「どういうつもりだね?」

モララーは跳躍し、デレの歌の効果範囲から逃れる。
その隙に僕は、再び進行方向を変え、今度はトソン君の元へ走った。

ζ(゚ー゚*ζ「いやね、内輪揉めは内輪でやるべきじゃないかあと」

( ・∀・)「君はあの布を取りに来たんじゃなかったのかな?」

dζ(゚ー゚*ζ「それは彼、ブーン君に任せる事に決めましたのさ」

( ・∀・)「ブーン? ……チッ、お前まで邪魔をするのか」

495 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 23:16:04 ID:uF/6QhHc0

( ゚∋゚) グワッ

宙に浮いたモララーより更に上から、海水を身体から滴らせたクックルが襲い掛かる。

( ・∀・)「もう1回頭を冷やして来い」

( ゚∋゚) !?

モララーから放たれた光弾を防御したクックルは、その勢いを殺せず再度海まで飛ばされる。
僕はそれを横目に見ながら、空いていた反対の手でトソン君を抱き上げる。

(;^ω^)「トソン君、剣を!」

(゚、゚;トソン「え? あ、はい!?」

事態を理解せぬまま、トソン君は右手の剣を空に掲げる。
後は向こうが気付いてくれなければ手詰まりだが、その心配は要らなかった様だ。

<「サースガ式ワイヤー!」

(゚、゚;トソン「なんと!?」

496 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 23:17:47 ID:uF/6QhHc0

海上から聞こえて来た大声と共に、飛んで来たワイヤーがガリアン・ソードに絡み付いた。

(´<_`;)「今だっ!」

ξ#゚听)ξノハ#゚听)「うぉぉぉりゃぁぁぁぁッ!」

物凄い勢いで引っ張られるワイヤーに、僕ら4人は宙を舞い、海にダイブする。

(∪;゚ω゚)(;゚ω゚)「ごぼべばぼぼぶッ!?」川;゚д゚)(゚д゚;トソン

そのまま僕らが水を飲むのもかまわず、引っ張り続けられるワイヤー。
かなり乱暴な手段だったが、これで全員モララーから離れる事が出来ただろう。

(;^ω^)(いや、まだだお!)

僕らが港から離れるよりも速いスピードで膨れ上がる嫌な気配。
波に翻弄されながらも背後を覗くと、そこには一際カッコいいポーズを取ったモララーの姿が見える。


          ゴゴゴゴゴ…

          ヽ(#・∀・)
             (  (\
             <  \
             ┛   ┓

497 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 23:19:29 ID:uF/6QhHc0

(;^ω^)(ちょ、船ごと沈める気かお!?)

これまでよりは明らかに大きな魔力を感じる。
この魔力なら、このサイズの船の1艘や2艘は確実に破壊出来るだろう。

(;^ω^)(オトジャさんに船の速度を上げるように伝えなきゃだお!)

しかし、未だ海面を引っ張られている僕の声は船上の人間には届かない。
万事休すかと、観念した瞬間、突如僕の身体が宙を舞った。

ξ#゚听)ξノハ#゚听)「大漁おおおおッ!!!」

(∪;゚ω゚)(;゚ω゚)「うひょおおおおッ!?」川;゚д゚)(゚д゚;トソン

一気に引き上げられ、宙を舞った僕らは甲板に折り重なるように着地する。
すぐに僕はそこから抜け出し、オトジャさんに声を掛ける。

(;^ω^)「オトジャさん、 緊急発進だお! デカい魔法が来るお!」

(´<_`;)「り、了解! ジェットブースト、オン!」

操舵室に飛び込み、オトジャさんが何かを操作すると船は急激に速度を上げる。
以前話には聞いていた、機工技術で加速する仕組みの様だ。
そのまましばらく進んだが、一行に魔法が放たれる気配はない。

498 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 23:22:48 ID:uF/6QhHc0

(;^ω^)(あれ? 魔法の気配消えてね?)

(´<_`;)「ブーン、ジェットブーストはもうすぐ燃料切れだがどうする?」

(;^ω^)「あ、何か大丈夫みたいなんで、通常航行に切り替えてもらっても良さそうですお」

既に港は遥か遠くにある。
いくら西の賢者とはいえ、これほど距離の離れた船に強力な魔法をぶち当てるのは不可能だろう。

(;^ω^)「……逃げ切ったみたいだおね」

(゚、゚;トソン「その様ですね……」

(´<_`;)「あー、ブーンよ。取り敢えず色々聞きたい事があるんだが」

(;^ω^)「ええ、わかってますお。オトジャさんには礼を言っても言い足りないぐらいなんで」

+(´<_` )「困った時はお互い様さ。友の危機とあらば、この身を投げ打ってでも助けるのが男というものだよ」

( ^ω^)「ありがとうございますお。ついでにこのままソクホウに向かってもらえると助かりますお」

499 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 23:24:51 ID:uF/6QhHc0

(´<_` )「ああ、それはかまわないさ。僕も帰る所だったしね。だからその、色々と話をだね……」

( ^ω^)「ええ、勿論ですお。でも……」

(´<_` )「でも?」

( ´ω`)「ちょっと休んでからでいいいですかおね……」

そう言うと僕は、甲板にひっくり返る様に倒れ込む。
何とか窮地を切り抜けはしたが、全員身も心もくたくたの様で、皆同じように甲板に寝転んでいた。

( ´ω`)ノ□「取り敢えず、クエスト成功だお……」

(∪´ω`)ノξ´凵M)ξノノハ´凵M)ノ川 ´ -`)ノヽ(´、`トソン

懐から聖骸布を取り出し、弱々しく掲げると皆も寝転んだまま手を挙げる。
長い旅路と戦いの連続だったが、何とか僕達は目的を達成する事が出来た。



     第三十四話 激闘の果てに 終……?

500 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 23:31:20 ID:uF/6QhHc0

 〜 キマスタの港 埠頭付近 〜


( ・∀・)「……」

ζ(゚、゚;ζ「……」

( ・∀・)「何のつもりだ?」

「何のつもりも何も、少し頭を冷やせ。そんなもん撃ったら全員死ぬぞ?」

( ・∀・)「……うるさいなあ、ちゃんと外すつもりだったさ」

「どうだかな。……まあ、いいや。それよりお前に用があるんだよ」

( ・∀・)「用だと? お前が俺にか? どうせ碌な用事じゃないんだろ?」

「そうだな。用というよりは頼みだからな」

( ・∀・)「ハッ、お前が俺に頼み事か。そりゃ途轍もなく碌な物じゃないな」

「違いないな」

( ・∀・)「まあ、いいだろう、話を聞こうか……」

501 名前:名も無きAAのようです:2012/06/15(金) 23:32:37 ID:uF/6QhHc0


( ・∀・)「……東の賢者殿」


('A`)「ああ、聞いてもらおうか、西の賢者殿」




     第三十四話 激闘の果てに 終

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