- 927 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:14:15 ID:bs5HKQgE0
〜 魔法道具屋サンライズ 〜
( ^ω^)「さて、色々と落ち着いて来たし、そろそろ新商品を考える頃だおね」
(∪^ω^)「わんわんおー」
( ^ω^)「結局、ツンに駄目出しされた薬草パンも薬草おにぎりも商品になったし」
( ^ω^)「その路線で考えてみるのもありだおね」
(∪^ω^)「わんお」
( ^ω^)「クエスト向きじゃないのが玉に瑕だけど」
ξ゚听)ξ「正直それって、魔法道具屋の商品として致命傷だと思うんだけど」
第二十七話 神の衣、魔王の衣
- 928 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:15:29 ID:bs5HKQgE0
( ^ω^)「でも、薬草パンも薬草おにぎりも売れ筋商品だお?」
僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。
ξ゚听)ξ「ここがお惣菜屋さんとかならそれでもいいんじゃない?」
彼女の名はツン。
隣の武術道場の娘で、いわゆる幼馴染というやつだ。
(∪^ω^)「わんわんお!」
この子の名前はわんわんお。
僕のペットというか家族で、見た目は子犬だが実は元竜だ。
いつも通りのサンライズでいつも通りの営業風景。
今日は僕とわんわんおだけで店番の予定だったが、ツンが遊びに来ていた。
稽古や畑仕事はどうしたのかと聞いてみると、こう暑いとやってられないという何ともひどい答えが返って来た。
( ^ω^)「お惣菜屋じゃねえし」
確かに、もう少し魔法道具屋としてクエストに役立つ商品をドカンと売り出したい所ではある。
その為にも何かしらの良いアイデアを考え出さねばならない。
- 929 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:16:38 ID:bs5HKQgE0
( ^ω^)「そういえば1つ思い付いてたんだったお」
色々あって忘却の彼方へ飛んでいたが、ソクホウの西の小島で思い浮かんだ商品のアイデアが1つあった。
あれはまだ、商品になるかどうか検討していない。
ξ゚听)ξ「ふーん。それで、どんな商品なの?」
僕はあの迷宮で思い付いた、位置特定用の道具について説明する。
パーティーが分断された時には有効で、特定の需要が望めると。
ξ゚听)ξ「確かに、あんな状況に陥った時は有効かもしれないわね」
( ^ω^)「そうだお。問題は、あんまりそんな状況に陥らないことなんだおね」
未開の遺跡を探索するクエストはかなり珍しい部類で、迷宮ともなると滅多にない。
更に言えば、そのクエストを受けるのはトレジャーハンターが多く、トレジャーハンターは単独で活動する人が多い。
( ^ω^)「とはいえ、僕らの時みたいに護衛として行くケースもあるにはあるお」
ξ゚听)ξ「あると便利だけど、その特定の需要が発生し難いわけね」
- 930 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:18:22 ID:bs5HKQgE0
( ^ω^)「ついでに言うと、結構高度なんで、値段も少し高めになるお」
取り敢えず試作してみて売ってみてもいいかとは思っている。
大量生産しないのであれば、時間も費用も許容範囲で賄える。
ξ゚听)ξ「別に遺跡じゃなくても使えるんでしょ? 森とかでも」
( ^ω^)「極端に離れ過ぎなければ大丈夫だお」
ヴィップの周辺では需要はほとんどなさそうだが、万が一のために買ってくれるパーティーはいるかもしれない。
使わなければ半永久的に効果は維持されるから、あっても損はないだろう。
セールストーク次第では、1パーティーに1つぐらいは買って貰う事も出来るかもしれない。
( ^ω^)「うん、作ってみてもいいかもだお」
ξ゚听)ξ「ちゃんとした魔法道具屋の商品っぽいしね」
(;^ω^)「別に、薬草パンとかも魔法道具屋ならではだと思うお?」
(∪^ω^)「わんおー」
- 931 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:19:44 ID:bs5HKQgE0
とにかく、その位置特定用の道具を作ってみるという事で考えは纏まった。
その為にはまずクーからあのペンダントを借りねばならない。
( ^ω^)「なるべく術式をコンパクトにして、携帯の邪魔にならないようにしたいんだおね」
ξ゚听)ξ「流石にあれはブーンのおじいさんの作った物だけあって、かなり高度なのよね?」
( ^ω^)「高度だお。あと無駄に細工が細かいお。すっげえ字が細いし」
あれを再現するのは無理だが、参考にはなる。
前に1度見たからある程度は覚えているので、ちょっとだけ借りれば済むだろう。
( ^ω^)「というわけで、クーが来たら……」
借りようと言おうとした矢先、ドアのベルが鳴る。
噂をすればなんとやらで、良いタイミングで来てくれるものだ。
('A`)「よう」
( ^ω^)「出口はあちらですお」
(;'A`)「え? 何で俺、来てすぐ帰れって言われてるの?」
- 932 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:20:44 ID:bs5HKQgE0
残念ながら来訪者は期待していたクーではなく、ドクオさんであった。
なんとも間の悪い人である。
( ^ω^)「冗談ですお」
ξ゚听)ξ「次回からは出て行かなくていいように、最初から入って来ないでください」
(;'A`)「入店拒否!?」
(;^ω^)「いや、冗談ですからホントに帰ろうとしないでくださいお」
A`)..
ξ゚听)ξ「か・え・れ! あ、それ! か・え・れ! か・え・れ!」
(;^ω^)「ツン、ノリノリで帰れコール連呼すんなお。手拍子も止めろお」
(∪^ω^)「わ・ん・お! わ・ん・お!」
(;^ω^)「わんおも真似しちゃ駄目だお。つーかどんな鳴き方だお」
)...
(;^ω^)「ドクオさんも帰らないで、戻って来てくださいお!」
- 934 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:22:49 ID:bs5HKQgE0
僕は、トラウマが、トラウマがと震えるドクオさんを店に引っ張り入れる。
悪乗りが過ぎたと思うが、ドクオさんの打たれ弱さも半端ないと思う。
ξ゚听)ξ「で、何の用事なのよ? つまらない用事だったら折るわよ?」
(;'A`)「何をだよ……。いや、大した用事じゃないんだけどさ」
ドクオさんが言うには、遠出をするのでしばらく庵を空けるという話であった。
ξ*゚听)ξ「永久に?」
(;'A`)「ちげえよ! 精々1、2ヶ月だよ! お前が俺の話で目を輝かせたの初めて見たわ!」
( ^ω^)「わかりましたお。ちなみに、何の用事なんですかお?」
('A`)「それは……まあ、お前らが気にするような事じゃねえよ」
一瞬僕の顔を見て、すぐに目を逸らしてぶっきらぼうに言い放つドクオさん。
僕としては、色々と厄介事を押し付けているから気になるのだが、この様子だと聞いても教えてくれないだろう。
素っ気無い態度だが、ドクオさんはドクオさんなりに僕の事を考えてもくれている。
そのドクオさんが言わないと決めたのなら、無理に詮索するのも失礼だろう。
僕はドクオさんの気持ちを汲み、それ以上は聞かない事にする。
- 935 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:24:25 ID:bs5HKQgE0
ξ゚听)ξ「どうせくだらない用事でしょ。耳毛が伸び過ぎたから切りに行くとか」
(;'A`)「ちげえよ! 何だよ、耳毛って。もしそうだとしても、そのくらい自分で切るわ!」
そんな僕の気持ちを余所に、いつも通りツンはドクオさんを全力でなじる。
とはいえ、昔からあんな感じなので、あれはあれでお互いに会話を楽しんでいると見ている。
少なくとも、ドクオさんとまともに口をきいてくれる女の子はツンぐらいだし、ドクオさんは嬉しがってると思う。
確か、ドクオさんの愛読書のモテモテ通信にも、女性から罵倒はご褒美とか何とか書いてあったはずだ。
( ^ω^)「旅の無事をお祈りしておきますお」
('A`)「俺は神は信じてねえっての。それよりも俺がいない間に無茶すんなよ?」
( ^ω^)「しませんお」
(∪^ω^)「わんお」
僕の方にはこれといった用事もなく、遠出の予定もない。
しばらくはここでお店をやってるだけなので、何もしでかす事はないだろう。
あくまで僕はだが。
- 937 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:26:50 ID:bs5HKQgE0
僕はドクオさんを見送り、再び新商品の話をツンと始めようとした。
しかしそれはすぐに再び鳴ったドアベルの音に遮られる。
川 ゚ -゚)「クエストに行くぞ!」
_, _,
(∪^ω^)( ^ω^)ξ゚听)ξ
ドクオさんが戻って来たのかと思いきや、今度こそクーであった。
そのクーは店に入ってくるや否や、唐突な提案を持ちかけてくる。
川 ゚ -゚)「ん? どうした? 早く準備しないか」
(;^ω^)「いや、準備ってあんた……何の事だかさっぱりポンだから、もうちょっとちゃんと話せお」
ξ゚听)ξ「いきなりクエストに行くぞって言われてもねえ……私はかまわないけど」
(;^ω^)「行くのかお。せめて概要ぐらい聞いてからにしてくれお」
(∪^ω^)「わんおー」
川 ゚ -゚)「クエストの依頼があった。私が受けた。お前達も手伝え。以上」
(;^ω^)「そこじゃなくて、クエストの内容とかだお」
- 938 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:29:00 ID:bs5HKQgE0
川 ゚ -゚)「面倒だな。取り敢えず今から依頼主のとこに行くんで、ついて来ればわかる」
(;^ω^)「いや、今仕事中だお?」
川 ゚ -゚)「どうせいつも通り暇なんだろ? 店閉めればいいだけの話じゃないか」
(;^ω^)「いつも通りとか言うなお。今日はたまたま客が少ないだけだお」
ξ゚听)ξ「ちなみに、その依頼主って誰なの?」
川 ゚ -゚)「ヒッキーさんだ」
(;^ω^)「え?」
ξ゚听)ξ「随分と意外なとこから出たわね」
ヒッキーさんといえば、言わずもがな、この町の教会の司祭さんだ。
教会の司祭がギルドにクエストを依頼するのはあまり聞いた事がない。
僕は、少し興味が湧いたので店を閉め、クーと共に教会に向かう事にした。
- 939 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:30:41 ID:bs5HKQgE0
〜 ヴィップの町の教会 〜
(-_-)「ようこそお越しくださいました。取り敢えずお茶をどうぞ」
( ^ω^)「いただきますお」
教会に着くと、出迎えてくれたヒッキーさんに礼拝堂に案内された。
礼拝堂の隅の方に、いつの間にか設けられていた談話スペースみたいな場所に僕達は座る。
僕達の他にも今日は教会でのバイトだったトソン君もいた。
( ^ω^)「それで、クエストの話なんですけど、詳しく聞かせてもらってもいいですかお?」
(-_-)「ええ、勿論です。ただ、少々情けないというか、申し訳ない話なのですが……」
ヒッキーさんの話を端的に要約すると、例の教会から盗まれた物を取り戻す事がクエストの目的らしい。
ただ、それを探せという訳ではなく、それを盗んだやつが現れるのでそれを捕まえろというもののようだ。
更にこのクエストには、ヒッキーさんも1メンバーとして同行するとの事だ。
(-_-)「この時点でいくつも質問があるかと思いますので、何でもどうぞ」
川 ゚ -゚)「報酬はどんなもんだ?」
(;^ω^)「最初にそれかお。それは後でもいいお」
- 940 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:32:00 ID:bs5HKQgE0
後でもいいと言ったが、ヒッキーさんの話だと本来の依頼主、報酬の支払い元は教会の本部なので、
それなりに高めになっているようだ。
ξ゚听)ξ「どういった経緯で教会からクエストの依頼を出す事になったんですか?」
(-_-)「以前、お話したと思いますが、この教会の異変について、本部の方へ報告をしました所」
(-_-)「本部の方で検討し、この件に付いての責任を問われ、今回の様な話になりました」
( ^ω^)「責任って、ヒッキーさんにですかお? そんな無茶な」
教会に侵入者があった可能性があるのは、ヒッキーさんの赴任前の話だ。
それをヒッキーさんの所為にするのは筋違いだと思う。
しかし、僕は何となく気付いてしまった。
恐らく責任は前任者に問われたが、それをそのままヒッキーさんが敢えて引き継いだのではないかと。
前の司祭様とヒッキーさんの関係を思えば、それは不自然な事ではないと思う。
(-_-)「大丈夫ですよ。責任を問うといっても、そう重い物じゃないですので」
重い物じゃないからこそ、自分で盗んだやつを見付けろという話ではなく、捕縛の手伝いなのだヒッキーさんは言う。
要は人手として行くだけだからと。
犯人探しなら大変だろうが、確かにそれなら軽い物かもしれない。
- 941 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:33:15 ID:bs5HKQgE0
( ^ω^)「ちなみに、犯人はどこにいるんですかお?」
(-_-)「ナカノヒトの町です。そこのオークションに犯人は現れるらしいですね」
(;^ω^)「意外と遠いですおね」
(;^ω^)「しかもナカノヒトのオークションっていったら、闇オークションじゃないですかお」
これは前言を撤回する必要がありそうだ。
全然軽くないかもしれない。
川 ゚ -゚)「ナカノヒトの町っていったら、ここから南に行った所だよな? どんな町だ?」
(゚、゚トソン「大陸一治安が悪いと言われている町です」
トソン君の言葉通り、治安が悪いらしいのであまり好んで近付きたい町ではない。
しかしながら、それで1つヒッキーさんにこのクエストが回ってきた理由がわかった。
ナカノヒトはこの大陸の主要な町の中で、唯一ニューソク正教の教会がないのだ。
現地で人集めが出来ないから、こうやって距離的に本部のあるソクホウより近いヴィップに回って来たのだろう。
直線距離ではソクホウからの方が近いが、ナカノヒトに行くには山を越えるか大きく迂回する必要があるのだ。
- 942 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:35:11 ID:bs5HKQgE0
(-_-)「ええ、そういう事なのでしょうね」
(∪^ω^)「わんお」
(-_-)「ですから、正直な話、失礼ながら皆さん達のような年若い人達に依頼するのはどうかとも思っています」
(-_-)「かなり危険なクエストですので、ヴィップで最も強い冒険者の方に依頼しようかと」
川 ゚ -゚)b「ヒッキーさんの気持ちはわかるが、それなら結局私達になると思うがな」
クーはそう言うと、僕、ツン、トソン君と順々に視線を向ける。
クーの言う様に、冒険者としての経験とかそういうのを考えず、純粋に戦闘力だけを考えると、
ジョルジュさん達がいない今、恐らくトソン君が一番強く、次いで僕やツンになるだろう。
僕やツンは冒険者ではないけども。
加えて言うと、ジョルジュさん達がいても、元聖騎士であるトソン君だけはあの3人より上かもしれない。
(;-_-)「そう言われるとそうですね。しかし、治安を考えると、特に女性は……」
ξ゚听)ξ「大丈夫ですよ。各自、自分の身は守れますし、任せてください」
- 943 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:36:14 ID:bs5HKQgE0
既にツンとクーはかなり乗り気で、トソン君もクーに従うだろう。
これはクエストを受ける事が決定したような物かもしれない。
( ^ω^)「パーティーバランスは悪くなさそうですお」
( ^ω^)「僕とヒッキーさん、魔法の使える人間が2人もいて後衛からサポートできますし」
実際、いつもの脳筋パーティーに比べればバランスはかなりいいと思う。
魔法の使える聖職者が1人パーティーにいると、かなり戦闘は安定する。
ヒッキーさんの守護魔法は戦闘にかなり有用なはずだ。
(゚、゚トソン「一応、僕も魔法使えるんですけど……」
( ^ω^)「それで、盗まれたものって何なんですかお?」
僕はトソン君の主張をスルーし、聞きそびれていた最も肝心な事を聞く。
トソン君の魔法も多分有用なはずだが、スペシャルの件があるので、正直念頭から外しておいて欲しく思う。
(-_-)「聖骸布とのことです」
川 ゚ -゚)「せい……がいふ?」
(∪^ω^)「わんわんお?」
- 944 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:38:16 ID:bs5HKQgE0
皆一様に首を傾げたが、僕はこの言葉に聞き覚えがあった。
聖骸布書物にも載っており、知っている人は知っているような品だ。
( ^ω^)「神の遺体を包んだとされる衣ですおね?」
(-_-)「そうです。それが聖骸布です」
魔法道具屋としての面目を躍如出来て幸いだが、これに関していくつかつっこみたい所がある。
確かニューソク正教の主神アルァは、創始者の夢に出て来てお告げをした神様で、いわゆる現人神ではない。
それなのに遺体を包む衣ってどういう事なのかと。
(;-_-)「そ、それはまあ、教義とか伝承が長く語り継がれる内に、色々と変化していったんだと思いますが……」
そういう風に語り継がれてきた物だから、真偽の程はともかくとして、教会にとっては大事な物なのだろう。
僕としても、そこについてはそういうものだと割り切る気持ちはわかる。
だがしかし、それならそれで何故無人の教会に放置されていたのかはよくわからない。
(-_-)「そこは私も疑問でした。しかし、本部からの回答はありませんね。気にするなとだけ」
ξ゚听)ξ「何か気に入らないわね」
川 ゚ -゚)「随分と適当な物言いだな。何か裏があると見るべきか」
- 945 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:40:15 ID:bs5HKQgE0
ツンもクーもほぼ同時に僕の方を見る。
取り敢えず心当たりはないし、調べようもないが嫌な予感だけはしている。
ドクオさんの話と照らし合わせると、ある部分で合致する箇所があるのだ。
( ^ω^)(衣……魔王の衣かお?)
ドクオさんの推測が当たりならば、これは相当ヤバい道具なのかもしれない。
果たしてこのクエストを受けていいものかどうか。
(;^ω^)(……そういえば、ドクオさんに相談しようにも、今いないじゃんかお)
余計な事に首を突っ込むなと釘を刺されている。
そして今まさに、これは余計な事に首を突っ込む瞬間なのではなかろうか。
(∪^ω^)「わんおー?」
( ^ω^)「お?」
気付けば心配そうにこちらを覗き込む目がいくつもある。
急に黙り込んで仕舞ったので、心配させてしまったらしい。
- 946 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:41:37 ID:bs5HKQgE0
(-_-)「再度言いますが、これは危険なクエストになる可能性が高いですので、断っていただいてもかまいませんからね?」
( ^ω^)「いや、受けますお。皆もそのつもりなんだおね?」
僕の言葉にツン達は頷く。
ヒッキーさんはまだ心配そうな顔をしていたが、僕は大丈夫だと笑いかける。
( ^ω^)(これは余計な事じゃないお。やらなきゃいけない事だお)
義務感ではない。
僕らが断っても、ヒッキーさんがクエストに行くのは確定なのだ。
故に、日頃お世話になってるヒッキーさんを手伝う事が、余計な事なはずはない。
だからこれは義務感ではなく、僕がやりたい事だ。
クエストの依頼を受け、僕達はすぐに今後の予定について話し合う。
今回は魔法道具屋として行くつもりはないので、これといって特別に準備する物はない。
馬車の準備も、ヒッキーさんがやってくれるようだ。
(;^ω^)「さて、僕自身はいいとして、お店の方はどうするかおね」
- 947 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:43:04 ID:bs5HKQgE0
ナカノヒトまで馬車で片道約1週間と少し。
往復と滞在期間を考えれば、また2、3週間は店を閉める事になるだろう。
今回はクー達も来るので、店は全く開けられる状況に無い。
ξ゚听)ξ「今から大量に薬草作って、シャキンさんのとこに置いておくしかないんじゃない?」
( ^ω^)「それしかないおね」
(-_-)「場合によっては1日ほど出発を遅らせる事も可能ですので」
( ^ω^)「そうすると、道中のスケジュールがかなりタイトになりそうですおね」
そう考えると、今からでも夜通し薬草とかを作り続けて出発を早めるべきだろう。
睡眠は馬車で存分に取らせて貰えばいい。
川 ゚ -゚)「ヴィップの南の街道は安全面はどんな感じなんだ?」
ξ゚听)ξ「そうね、メシューマ方面に比べるとモンスターとの遭遇確率は高いと思うわ」
街道の治安は町の力や治安とも比例する。
そう考えると、ナカノヒト方面の街道が、安全面においては今一つなのは納得出来る話だろう。
- 948 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:48:01 ID:bs5HKQgE0
( ^ω^)「加えて、例の灰衣の魔法使いの件もあるから、道中の警戒は密にしておく必要はあるお」
そう考えると、夜通し薬草作って馬車で寝るという考えはあまり良くないのかもしれない。
ヴィップを出てすぐはそれほど危険は無いと思うが、どうするべきか。
( ^ω^)「うーん……ちょっとシャキンさんに相談して──」
<「話は聞かせてもらった」
(;^ω^)「お? 誰だお?」
どこからともなく聞き覚えのある声がした。
しかし、周りを見回すも、ここには僕達以外誰もいない。
そう思った瞬間、何かが天井から落ちて来た。
_ ヘロゥ
^/- - ,ml
川;д川 !? !? !? !?
!?
"(;-_-)川;゚ -゚)(゚、゚;トソンξ;゚听)ξ(∪^ω^)(;^ω^)
- 949 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:49:19 ID:bs5HKQgE0
それが天井から何か紐のようなもので逆さまにぶら下がったシューの姿だと気付いた時には、
既にシューは僕の隣のわんわんおが乗っていた椅子に腰掛けていた。
lw´‐ _‐ノv「やあ、皆の衆、お久しぶりだね。こめにしきも元気だったかい?」
つ∪^ω^)「わんおー?」
(;^ω^)「シュー、突然出て来んなお。つーか他にも色々つっこみたいとこあるけど、何の用だお?」
ここにいる皆はシューの事を知っているが、唯一ヒッキーさんだけがシューが悪魔だという事は知らない。
悪魔を敵とする教会の司祭様に、シューが悪魔だと教えるのもどうかと思ったので内緒にしておいたのだ。
というかここは教会なのに、悪魔であるはずのシューはどうやって入って来たのだろうか。
lw´‐ _‐ノv「何の用とはご挨拶だね。今の話からすると、用があるのはブーン店長の方ではないかね?」
(;^ω^)「僕がシューに……お、そういう事かお」
何の話かと思ったが、確かにシューなら店を任せる事が出来、僕にとっては僥倖かもしれない。
しかし……
( ^ω^)「いや、結構だお」
lw´‐ _‐ノv「なん……だと……?」
- 950 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:50:47 ID:bs5HKQgE0
大袈裟に驚くシューだが、能力的には店番に申し分ないとしても、また店で違う物を売られるのも困る。
うちの店は農具屋でも米屋でもなく、魔法道具屋なのだ。
lw´‐ _‐ノv「おにぎりとパンは売ってるじゃない?」
( ^ω^)「それはそれだお」
ξ゚听)ξ「というかシュー、あんた何でこんなタイミングで顔出したのよ?」
lw´‐ _‐ノv「このジャストタイミングが気に入らんかね?」
lw´‐ _‐ノv「安心したまえ、北を適当に回って丁度戻って来た所なだけで、他意はないよ」
サンライズを訪れたら僕の姿がなかったので、魔力を追ってここに来たとシューは言う。
いくら魔法使いとはいえ、人間は常時魔力を出してるわけでもないのによくそんな事が出来るものだ。
シューはこれは土産だと北の方の特産らしい、魚の塩漬けの瓶詰めを机の上に置いた。
lw´‐ _‐ノv「茶請けにどうぞ、神父さん」
(;-_-)「ど、どうも。しかしこれ、お茶請けに合うでしょうかね……」
- 951 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:53:46 ID:bs5HKQgE0
川 ゚ -゚)「ふむ、どれどれ……」
クーが瓶を手に取り、蓋を開ける。
そして鼻先まで持ち上げ、その匂いを嗅いだ。
_,
川 ゚ -゚)「む……これはなかなか」
(゚、゚トソン「良い香りなのですか?」
チョイチョイ
川 ゚ -゚)っ"「わんおちゃん、ちょっとおいでなさい」
(;^ω^)「止めろお。臭かったんだお? わんおがかわいそうだお」
;;つ∪*^ω^)ノシ「わんお!」
僕は呼ばれて嬉しそうに駆け寄ろうとするわんわんおを抱き止め、蓋を閉めるように促す。
最初に匂いを嗅いだ時のクーの表情を見れば、あれがどんな匂いだったのかは想像が付く。
lw´‐ _‐ノv「で、話を戻すが断るのかね? 断って他に手はあるのかと問いたいが」
シューが言う様に、他に店番の、それも薬草が作れるような店番の当てはない。
ナカノヒトの町までの移動時間を考えると、ここは背に腹は変えられないと思うしかないのか。
- 952 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:55:00 ID:bs5HKQgE0
lw´‐ _‐ノv「私が違う物を売らないといっても安心は出来ないだろうから、最初から売る事を宣言しておこう」
(;^ω^)「どっちにしろ安心出来ねえお」
lw´‐ _‐ノv「なに、サンライズの店内では売らないさ」
lw´‐ _‐ノv「サンライスの店舗も、といっても馬車だが、店の横に併設させてもらうから」
なるほど、それならば店の中を改装されたりする恐れはなくなるし、共存出来るだろう。
店番が大変だと思うが。
lw´‐ _‐ノv「安心したまえ。2つに分かれれば何とでもなる」
(;^ω^)「聞かなかった事にするから、あんまり派手にやるなお」
最終的に僕はシューに店番を頼む事に決めた。
一抹どころかかなりの不安もあるにはあるが、シューなら何とかなるだろう。
川 ゚ -゚)「それじゃあ、話はこの辺にして、明日の朝の出発に向けて各自準備を進めようか」
クーの一声でその場は解散となり、各自準備に向かう。
僕の方はまずは店に戻り、シューと少し店について話をした後、シャキンさんに話をしに行くつもりだ。
- 953 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:56:32 ID:bs5HKQgE0
〜 魔法道具屋サンライズ 〜
( ^ω^)「で、残りの薬草がここにあるけど、足りなくなったら採集に行くしかないお」
lw´‐ _‐ノv「うむ、その辺は勝手知ったるものだからのーぷろぶれむ」
過去に店番の経験がある事もあり、シューへの仕事の引継ぎは何の問題もなくすぐに終わった。
頼む事を渋りはしたが、いざ頼む事になると話が早くて随分と助かった。
( ^ω^)「言うの遅くなったけどお礼を言うお、シュー、ありがとだお」
lw´‐ _‐ノv「何の何の、ブーン店長には借りがある。これも借金返済の一貫さ、気にするでないよ」
( ^ω^)「そうかお? でもまあ、助かるのは事実だお」
僕はシューに改めて頭を下げ、店の事を頼む。
シューも若干真面目な態度で頭を下げ返した。
こういう態度を見ると、シューが悪魔だとは思えなくなって来る。
( ^ω^)「っと、ついでにちょっと聞いてもいいかお?」
- 954 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:58:29 ID:bs5HKQgE0
lw´‐ _‐ノv「ふむ、スリーサイズかね? 上から108……」
(;^ω^)「そんな事は聞いてねえお。しかも今、有り得ないくらい盛ったお?」
lw´‐ _‐ノv「んふ、乙女の嗜みというやつですよん」
シューの冗談を流し、僕は千年紀についてシューに尋ねる。
仮にも魔王と名の付くものの話だ。
悪魔であるシューなら何か知っているかもしれない。
lw´‐ _‐ノv「魔……王……?」
( ^ω^)「あれ?」
(∪^ω^)「わんお?」
しかし、シューの反応は芳しくなく、きょとんとした顔を見せた。
ひょっとして魔王を知らないのだろうか。
lw´‐ _‐ノv「いや、知ってますけど」
(;^ω^)つそ「知ってるんかーい!」
- 955 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 23:00:18 ID:bs5HKQgE0
じゃあさっきの反応は何だよと問い質したいが、
シューにしてみれば何でそんなごく普通の事を改まって聞くのかという反応らしかった。
lw´‐ _‐ノv「うちのマザーさんも魔王だし」
(;゚ω゚)「マジで!?」
さらっと飛んでもない事を言うシューだが、その言葉には1つ気になる点があった。
(;^ω^)「も?」
lw´‐ _‐ノv「ん? 魔王なんていっぱいいるぞ?」
lw´‐ _‐ノv「向こうの世界のそれぞれの国を治めてるのは大体魔王だし」
(∪^ω^)「わんおー」
シューの話によると、魔王というのはこちらでいう所の王様のようなものらしかった。
それなら確かに、少なからずいる事になる。
lw´‐ _‐ノv「まあ、魔王なんかが人間界に来る事はまずないけどね」
lw´‐ _‐ノv「一番の問題は国を空ける事で、他国から攻められる可能性が出て来るし」
- 956 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 23:01:53 ID:bs5HKQgE0
なるほど、納得のいく理由ではある。
ただ、そうなるとあの千年紀の王には不自然な所がある事に気付く。
( ^ω^)「どこの国の魔王なんだお?」
lw´‐ _‐ノv「さあね。戦争に負けて滅んだ国もあるし、はぐれ魔王がいてもおかしくはないけど」
僕の説明を聞いた限りでは、千年紀の王は魔王というには不自然な点が目立つとシューは言う。
lw´‐ _‐ノv「今の話だと、思念体みたいなもののようだね」
lw´‐ _‐ノv「ただ、そこに自分の意思を感じられない。どっちかというと低級な悪魔の様にも感じるね」
魔王というには少し違う物のように思うというのがシューの見解らしい。
なるほど、そう言われてみると確かにそこに主体性はなく、随分と他人任せの復活だし、
どちらかといえば道具の呪いとか言われた方がしっくり来る。
lw´‐ _‐ノv「まあ、人間にとってそこは割とどうでもいいのだろうね」
( ^ω^)「正体はどうでもいいお。知りたいのは復活させない方法とか、倒し方だお」
(∪^ω^)「わんわんお」
僕の言葉にシューは珍しく眉根を寄せ、優れない顔を見せる。
滅多に表情の変わらないシューがこんな表情をするのはよっぽどの事だ。
- 957 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 23:03:08 ID:bs5HKQgE0
lw´‐ _‐ノv「まず、私はそれについて知らないという事を念頭に置いて聞いて欲しいのだが」
( ^ω^)「お……」
lw´‐ _‐ノv「無闇に悪魔に知識を求めるのはお勧めしないと言っておくよ」
悪魔は人間から見るとモンスターに分類されるが、その知性は高く、人間の言葉を理解する者が多い。
その知識も豊富で、人間が知り得ない知識も有している。
魔法使いの中にはそういった悪魔を違う世界、魔界と呼ばれる世界から呼び出し、知識や力を得たりする者もいた。
そういう人たちを魔法使いの中でも召喚士と呼んでいる。
lw´‐ _‐ノv「そう、召喚士だ。一般的に悪魔は彼らによって召喚されてこの世界に来る事が多い」
中にはシューのように自発的に人間界に来る者もいるが、それはなかなか大変な事らしい。
移動に膨大な魔力を必要とするのがその最たる原因の様だ。
lw´‐ _‐ノv「そもそも、この世界は悪魔にとって住みやすい世界ではないからね」
主な要因は空気に含まれる魔力量の違いで、それが低い人間界では魔力を放出する一方で、
強大な悪魔ほど長くはいられないらしい。
- 958 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 23:04:54 ID:bs5HKQgE0
lw´‐ _‐ノv「召喚された場合はその限りでなく、召喚者から対価を貰い、存在していられるんだがね」
( ^ω^)「その辺りは一応、召喚士としての一般知識として人間界でも知ってる人は知ってるお」
( ^ω^)「けど、今の話でいくつか疑問点があるのにも気付いたお」
まず、今の話だと低級な悪魔が何故人間界に存在しているのかがわからない。
弱いが故に長く存在は出来るのかもしれないが、自発的には人間界に来れないのではなかろうか。
lw´‐ _‐ノv「そういうのは上のランクの悪魔が呼んでるか、一緒に連れてきてるんだろうね」
( ^ω^)「なるほど、そういうわけかお」
さらっとシューは言ったが、つまりは低級の悪魔がいるという事は、
ある程度上級の悪魔も人間界に潜んでいるという事なのだろう。
その目的がシューのようなものなら良いが、一般的な悪魔ならそうじゃないのがほとんどのはずだ。
lw´‐ _‐ノv「悪魔は元来、人の負の感情を好むからね。あるいは、人の肉体そのものを」
lw´‐ _‐ノv「ここは悪魔にとって存在し辛い世界だが、それを差し引いても得られるものは大きいのだろうね」
あまりそういった輩には近づかない事をお勧めするとシューは言う。
勿論、近付きたくはないので僕は頷いて返す。
- 959 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 23:06:04 ID:bs5HKQgE0
( ^ω^)「で、次の疑問だけど、シューはいわゆる高位の悪魔なんだおね?」
そうであるなら、先の話と少し矛盾がある気がする。
召喚者の存在なしには長期間人間界にいられないのではなかったのか。
lw´‐ _‐ノv「私は割と特殊な部類でね。限りなく魔力の放出を抑える事が出来るんだよ」
( ^ω^)「あ、そういえばそうだおね」
シューからは悪魔だと気付かないくらい魔力を感じない。
なるほど、それならば長く人間界にいる事も出来るのだろう。
過度の魔力の放出がなければ、教会へ入るのも特に問題はないはずだ。
lw´‐ _‐ノv「むしろこういう体質だったからこそ、人間界に来てみようと思ったんだけどね」
例外的に魔法なんかを使う時は、当然の如く大きく魔力を放出するからあまり使いたくないとシューは言う。
lw´‐ _‐ノv「あの苦虫君は、チャーム時の魔力と普段の魔力の差か何かで私の正体に気付いたようだね」
あの時苦虫さん、もとい、ドクオさんはそうやってシューの強さを判断したのだろう。
ドクオさんと戦う事にならなくて良かったとシューは言う。
戦えば勝とうが負けようが魔力を多大に使う事になったであろうから、長く人間界にいられなくなると。
- 960 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 23:07:28 ID:bs5HKQgE0
lw´‐ _‐ノv「故に私は、人間界の争い事には極力干渉したくないのだよ」
本来の目的を考えれば、滞在期間を短くするだけの争い事は避けたいのだろう。
このシューの答えは、例の灰衣の魔法使いとの関係性を否定する事に繋がりそうだと思う。
クーの記憶もドクオさんの薬を飲んでも変わらなかったので、きっと無関係だと判断する。
lw´‐ _‐ノv「まあ、それでも目の前で店長がヤバい事に巻き込まれてたら手を出してしまうかもしれないね」
( ^ω^)「ありがとだお。極力自分で何とかするから、安心してお」
(∪^ω^)「わんお!」
ありがたい言葉だが、シューを関わらせると色々とややこしい事になるのは目に見えてるから、それは避けたいと思う。
事情を何も知らない人が、悪魔と聞いて見せるであろう反応は想像が付く。
lw´‐ _‐ノv「で、だいぶ話が逸れたが……」
( ^ω^)「いや、シューが言いたい事は大体わかったお」
気軽に聞くなというのは悪魔に対する一般常識の話で、本来なら対価を要求されたり、
嘘をつかれる危険性を考えろという事であろう。
そしてシューに色々聞く事は、それらの問題は無いとしても、シューを人間界の問題に関わらせてしまう事になる。
- 961 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 23:08:49 ID:bs5HKQgE0
lw´‐ _‐ノv「手伝いたい気持ちもあるが、私はそもそもこの世界ではイレギュラーな存在だからね」
( ^ω^)「気持ちだけ頂いておくお」
それでも、どうしても力が借りたい時は召喚契約を結ぶ事を考えた方がいいだろう。
そういう状況にならないように立ち回りたいとは思うが。
lw´‐ _‐ノv「召喚も性質の悪いやつを呼んでしまえば、大事になってしまうからね。気を付けないと」
( ^ω^)「自分の力を見誤って、召喚した悪魔に取り殺された召喚士の例は多々あるお」
(∪^ω^)「わんおー」
何にせよ、悪魔は人間にとって危険なものだから気をつけろとシューは話を結ぶ。
その事を悪魔であるシューから言われるのは何だか変な感じだが、
きっとシューはドクオさんと似たような心配をしているのだろう。
自分に慣れ過ぎる事で、僕が悪魔に対する警戒心を無くしてしまう事を恐れているのだと思う。
lw´‐ _‐ノv「さて、それではサンライスの方の開店準備に取り掛かろうかね」
- 962 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 23:10:54 ID:bs5HKQgE0
( ^ω^)「今からかお? 今から開けても閉店まであんまり時間ないお?」
lw´‐ _‐ノv「明日一番で開けられるように準備するだけさ」
随分と張り切っているようだが、あれから少しは農具は売れたのだろうか。
僕はシューとわんわんおと共に店を出て、シューの馬車に向かう。
( ^ω^)「農具、いくつか売れたのかお?」
lw´‐ _‐ノv「……明日も晴れるといいなあ」
(;^ω^)「売れてないのかお……」
(∪^ω^)「わんおー」
シューの馬車の中を覗くと、相変わらず使い道のよくわからない農具が綺麗に整理されて仕舞ってある。
サンライズに置いていた時より種類も増えているようだ。
( ^ω^)「思うに、一般的な農具を魔法で強化しただけとかの方がまだ売れるんじゃないかお?」
lw´‐ _‐ノv「人間、オリジナリティというものを忘れてしまってはいかんと思うのだよ」
( ^ω^)「独創的過ぎるのも、誰もついて来れないと思うお」
- 963 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 23:12:31 ID:bs5HKQgE0
僕は孫の手のように見えて、それぞれの指が更に枝分かれする謎の農具を手に取る。
どこから見ても使い道がさっぱりわからない。
lw´‐ _‐ノv「それは虫除けというか、虫退治の農具だね」
(;^ω^)「これがかお? どう使うんだお」
シューの説明を極めて短くまとめ直すと、枝分かれしたハエ叩きという事らしい。
多方向をカバーしようとした結果らしいが、重い上に隙間が大きくて使い辛いと思う。
( ^ω^)「こういうのは軽量かつコンパクトな路線の方がいいと思うお」
lw´‐ _‐ノv「むぅ……、一網打尽に出来て良いと思ったのだが」
(∪^ω^)「わんわんお」
色々と考えてはいるようだが、それが実を結ぶのはまだまだかかりそうだ。
借金返済の道は遠そうである。
lw´‐ _‐ノv「ではこの、狭い所をピンポイントで耕せる鍬はどうかね?」
( ^ω^)「小さ過ぎるお。耳掻きかお。何でもコンパクトにすればいいってもんじゃないお」
- 964 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 23:13:38 ID:bs5HKQgE0
その後もいくつか商品説明を受けたが、どれも売れそうな感じはしない。
何と言うか、着眼点がどこかずれている気がする。
lw´‐ _‐ノv「農業の道は険しいねえ」
( ^ω^)「わざわざ道無き道を突っ走ってる感がひどいお。せめてもう少し人のいそうな道を行けお」
(∪^ω^)「わんお」
lw´‐ _‐ノv「我が前に道無し、我が後にも道無しだよ」
(;^ω^)「後には道を作れお」
( ^ω^)「つーかこの後も用事あんだから、さっさとこっちの店の準備も終わらせるお」
lw´‐ _‐ノv「こっちは私の店だし、準備は私1人でもいいんだがね」
( ^ω^)「もう、ついて来ちゃったし、2人の方が早く終わるお」
そういって僕はシューの店の準備を手伝う。
言葉通り2人ならそれほど時間もかからずに終わった。
- 965 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 23:15:15 ID:bs5HKQgE0
( ^ω^)「この展示台いいおね。どこで買ったんだお?」
lw´‐ _‐ノv「あら嬉しい。ハンドメイドですよん。稼ぎが少ないんだから、節約節約」
シューの意外な才能に驚いたが、よくよく考えたら農具を自作しているくらいだ。
この位はお手の物なのだろう。
( ^ω^)「何かホント、シューは悪魔の既成概念をぶち壊すおね」
lw´‐ _‐ノv「悪魔だって家に住むんだぜ? 壊すだけじゃなく作る事も当然可能だ」
( ^ω^)「そう言われるとそうだおね。先入観に捕らわれ過ぎるのは良くないって事かお」
僕達は開店準備を終えて馬車を出る。
日はだいぶ傾き、そろそろ夕餉の香りが町中に漂ってくる頃だ。
( ^ω^)「さて、それじゃあ僕はバーボンハウスに行って来るお」
(∪^ω^)「わんわんお!」
lw´‐ _‐ノv「晩ご飯までには帰って来てね」
- 966 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 23:17:35 ID:bs5HKQgE0
(;^ω^)「いや、ついでに晩ご飯も食べてくる予定だけど」
lw´‐ _‐ノv「ふむ、亭主元気で留守ばかりというやつかね」
(;^ω^)「あらゆる点で間違ってるお。というかシューも来るかお? シャキンさんに店の事説明する必要あるし」
lw´‐ _‐ノv「そういう事なら手土産を持参して行こうかね」
そう言ってシューは馬車の中に戻り、何かを手に戻って来た。
( ^ω^)「それは何だお?」
lw´‐ _‐ノv「ああ、さっき神父さんに渡したやつの別のタイプだね。こっちはご飯のおかず用」
シューの手にあった小瓶の中身は、先ほどと同じく魚の塩漬けらしい。
しかし、ご飯のおかずの方はまだわかるが、茶請け用の魚の塩漬けなんてあるのだろうか。
( ^ω^)「ヒッキーさんに渡した方は甘かったりするのかお?」
lw´‐ _‐ノv「いや、塩辛いよ」
- 967 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 23:19:22 ID:bs5HKQgE0
(;^ω^)「それで茶請けになるのかお?」
lw´‐ _‐ノv「おいおい、漬物が茶請けになるんだから、魚の漬物も茶請けになるんじゃないか?」
(;^ω^)「茶の種類によると思うお。少なくとも、教会で出されるようなお茶には合わない気がするお」
塩辛い魚をコーヒーや紅茶と一緒に食べたくないと思うが、確かに緑茶なら許容範囲かもしれない。
僕はシューから小瓶を受け取り、蓋を開けてみた。
lw´‐ _‐ノv「こっちはかなり濃い味だ」
( ^ω^)「ふーん……って、すごい匂いだお。生ぐせえ」
lw´‐ _‐ノv「だがそれがいい。そうだよな、こめにしき?」
(∪^ω^)「わんお?」
( ^ω^)「あ……」
シューは僕が制止する暇もなく、僕の手から小瓶を取り、わんわんおの鼻先に突きつけた。
- 968 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 23:21:17 ID:bs5HKQgE0
- クンクンオ
"(∪^ω^)[]
ヘブチッ!?
(∪>ω<)。・,゚
(;^ω^)「あーあ……」
(∪TωT)「わんわんおー」
僕は咽て涙目になるわんわんおの背中をさする。
人の何倍もの嗅覚を持つ犬には相当厳しい匂いだっただろう。
lw´‐ _‐ノv「こめにしきにはお気に召さなかったか」
(;^ω^)「当たり前だお」
つ∪TωT)「わんおー」
シューは申し訳なさそうに僕からわんわんおを受け取り、頭を撫でた。
lw´‐ _‐ノv「ふむふむ……ほうほう……ほほう……」
つ∪´ω`)「……わんお……わんわんお……わんおー」
(;^ω^)「って、シュー、わんおの言葉がわかるのかお?」
- 969 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 23:22:44 ID:bs5HKQgE0
lw´‐ _‐ノv「いや、全然」
(;^ω^)つそ「わからんのかーい」
:いかにもわかったようなタイミングで合の手を入れているので、
てっきりわんわんおの言葉がわかるのかと思ったら違った様だ。
わかられたらわかられたで問題が出そうなので、わからなくて良かったと思うべきか。
lw´‐ _‐ノv「ただ……」
( ^ω^)「ただ、何だお?」
lw´‐ _‐ノv「この子がご主人様の事を大切に思っている事はわかったよ」
つ∪^ω^)「わんお!」
( ^ω^)「お……」
lw´‐ _‐ノv「だからこれはお守りだ」
つ''∪^ω^)「わんお?」
シューの言葉と共に、薄く白い光がわんわんおを包む。
何をしたのかとシューに聞くと、ちょっとした守護の魔法をかけたとの返事だった。
- 970 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 23:24:49 ID:bs5HKQgE0
lw´‐ _‐ノv「まあ、いつか役立つ日も来るだろう。その時はこめにしきの気持ち次第だがね」
(∪^ω^)「わんわんお!」
( ^ω^)「つーか、こめにしきじゃなくてわんわんおだお。いい加減覚えてくれお」
lw´‐ _‐ノv「ふむ、では間を取って『わんにしき』、もしくは『おこめわん』と呼ぼうか」
( ^ω^)「却下だお。わんわんおはわんわんおだお」
(∪^ω^)「わんわんお!」
僕達はそんな言い合いを続けながらバーボンハウスに向かって歩く。
明日からはまた旅路の空の下だ。
今日はゆっくりと自分の部屋の布団を堪能しようと思う。
lw´‐ _‐ノv「では、大負けに負けて『きしめん』というのはどうだろうか?」
(;^ω^)「もう、原形止めてねえじゃねえかお……」
(∪^ω^)「わんわんおー」
第二十七話 神の衣、魔王の衣 終
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