- 686 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:23:14 ID:FnHMrnZY0
〜 ヴィップの町 南門 〜
( ^ω^)「帰って来たお、ヴィップの町」
ξ゚听)ξ「随分と久しぶりな気がするわね」
(∪^ω^)「わんわんお!」
( ゚д゚)「うまい具合に雨も上がったか」
_
( ゚∀゚)「旅の間中降り続いて、鬱陶しい事この上なかったな」
第二十四話 ようこそ、魔法農具屋サンライスへ
- 688 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:24:55 ID:FnHMrnZY0
( ^ω^)「晴れたお陰で、荷物運び入れるのが楽に済みそうですお」
僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。
_
( ゚∀゚)「人手がいるなら手伝うぞ?」
彼の名前はジョルジュさん。
僕の顔馴染みの冒険者で、気さくで悪ふざけ好きの愉快な人だが、実力は確かで意外と根は真面目だったりする人だ。
( ^ω^)「大丈夫ですお。大した物はないですから」
僕達はソクホウへの旅を終え、ヴィップの町へ戻って来た。
2週間程度の予定の旅だったが、結局3週間以上かかってしまった。
かかった事には理由はあったし、それによって得られた物や経験は大きかったので僕としては満足しているが、
長期間店を閉めてしまった事は少し気掛かりだ。
( ゚д゚)「そうか。それなら俺達はここで失礼させてもらう」
ξ゚听)ξ「すぐソクホウに戻るんですか?」
- 689 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:26:06 ID:FnHMrnZY0
- _
( ゚∀゚)「1度シャキンの顔見てからな。馬の手配もしてもらおうと思ってるし」
ジョルジュさんとミルナさんは僕達の護衛でここまでついて来て貰ったが、またソクホウに戻る予定だ。
ソクホウでアニジャさんに武器の強化依頼をしている最中だし、負傷しているハインさんも残して来ている。
幸いにも帰路では特に何も起こらず、無事ヴィップに帰り着く事が出来た。
ハインさん最後までついて来ると駄々をこねていたが、ジョルジュさん達はソクホウへの帰りは馬を使う予定で、
肋骨にひびが入っているハインさんに馬の旅は無理だという事で却下された。
( ^ω^)「そうですかお。それじゃあ、色々とありがとうございましたお」
_
( ゚∀゚)「なに、お互い様さ。俺らもお前らのお陰でかなり助かったからな」
( ゚д゚)「俺達はしばらくソクホウに留まるが、何かあったら呼んでくれ。お前達の為ならすぐに駆けつけるからな」
ξ゚ー゚)ξ「ありがとうございます。お2人の旅の無事を祈ってます」
(∪^ω^)「わんわんお!」
(* ゚д゚)「またね、わんおちゃん」
つ∪^ω^)「わんお!」
( ^ω^)ノシ「またですお」
- 690 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:27:04 ID:FnHMrnZY0
僕達は2人と別れ、ヴィップの町中を馬車で進む。
荷物を降ろし終えてから馬車は返却するので、まずはサンライズに向かう事にする。
( ^ω^)「しっかし、随分と久しぶりな気がするお」
僕個人としては最長の長旅だったとはいえ、1ヶ月にも満たない期間だ。
ヴィップの町の風景もどこも変わった所はないのに、何故だがすごく懐かしいものの様に感じてしまう。
ξ゚听)ξ「そうね。どこも変わってないのに、何だか懐かしく感じるわね」
(∪^ω^)「わんお!」
僕だけでなく、2人もそんな気分なのか、馬車の上から町をきょろきょろと見回している。
時には住み慣れた町を離れてみるのも、新しい気持ちで今の暮らしを見詰め直せていいのかもしれない。
ξ--)ξ「まあ、私はしばらく旅はいいけどね」
( ^ω^)「取り敢えず僕も、今は自分の部屋のベッドが恋しいお」
馬車は町中を過ぎ、東に向かって走る。
もう間もなく、懐かしの我が家、サンライズが見えて来る頃だ。
- 691 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:28:48 ID:FnHMrnZY0
( ^ω^)「さあ、着いたお!」
(∪^ω^)「わんわんお!」
店の前に馬車を停め、御者台から飛び降りる。
逸る気持ちを抑え、感慨深い思いで店を見上げた。
( ^ω^)「……あれ?」
(∪^ω^)「わんお?」
店は営業しているようだ。
クーに鍵は渡してあるし、必要に迫られたら店を開けても良いという許可も出してはいた。
その場合は、クーとトソン君の2人でお店をやってもらうという条件付きではあったが。
( ^ω^)「営業してるのはいいんだけど、何か違和感が……」
(∪^ω^)「わんおー」
僕は再び店を見上げる。
そこには店の看板があり、店の名前もちゃんと書いてあるのだが、よくよく見ると何かおかしい。
- 692 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:29:42 ID:FnHMrnZY0
( ^ω^)「見間違いかおね? 何かお店の名前が……」
ξ゚听)ξ「見間違いじゃなく、変わってるわね」
【魔法農具屋 サンライス】
(;^ω^)「魔法農具屋? サンライス? 何だお、これ?」
目を擦り、何度も確認するもやはりそこには魔法農具屋サンライスの文字がある。
間違って違う店に来てしまったのかと思うも、物心付いてからずっと過ごして来た我が家を忘れるはずはない。
(;^ω^)「何だお、これ? 何が起こってるんだお?」
ξ;゚听)ξ「私にわかるわけないでしょ? とにかく、入ってみればわかるわよ」
何だかよくわからないが、現にこうやって目の前にサンライスというお店がある以上、これは現実の事だ。
ツンが言う様に入ってみるしかないだろう。
(;^ω^)「うーん……まあ、それしかないおね」
僕は恐る恐るまだ新しいが見覚えのあるお店のドアを開けた。
- 693 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:31:24 ID:FnHMrnZY0
lw´‐ _‐ノv「いらっしゃいませ。魔法農具屋サンライスへようこそ」
(;^ω^)「……どちら様?」
店に入ると、聞き覚えのあるドアベルの音と共に聞き覚えのない声が出迎えてくれた。
声の主に目を向けると、エプロン姿の女性が1人。
年の頃はよくわからないが僕より上だろうという雰囲気の、小柄で細い目をした見覚えのない若い人だ。
lw´‐ _‐ノv「魔法農具屋サンライスの店長のシューと申します。お客さん、旅人さんかな?」
(;^ω^)「旅人じゃなくて、旅から帰って来た人だお」
lw´‐ _‐ノv「ほう」
(;^ω^)「ここ、魔法道具屋サンライズで僕、ブーン=ナイトウのお店だお? あんた、一体何なんだお?」
lw´‐ _‐ノv「ふむ、なるほど。そういう事か。はいはい、それならちょっと待っててね」
(;^ω^)「お?」
(∪^ω^)「わんお?」
- 694 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:33:34 ID:FnHMrnZY0
シューと名乗った女性は、何かを理解した風でカウンターから出てこちらに近寄ってくる。
何だか嫌な予感がし、身構えようとした時には既にその顔が目の前にあった。
(;^ω^)「えっと、だからあんたは何者……」
lw´‐ _‐ノv「ぐっない」
(;^ω^)「え……」
彼女は右手の人差し指を僕の顔に向け、突き出す。
僕はその指を凝視しながらも1歩下がった。
(;^ω^)「何を……?」
不意に視界が闇に覆われた。
それが自分で目を閉じたからだと気付いた時には、意識も同じく闇に覆われていく。
( -ω-)「……」
遠くで僕を呼ぶツンの声とわんわんおの鳴き声が聞こえた気がしたが、僕の意識は既に閉ざされていた。
- 695 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:34:24 ID:FnHMrnZY0
〜 魔法農具屋サンライス 〜
( ^ω^)「新しい朝が来たお! 今日も1日がんばるお!」
僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法農具屋サンライスを営む魔法使いだ。
(∪^ω^)「わんわんお!」
この子の名前はこめにしき。
僕のペットというか家族で、お店のマスコット的な子犬だ。
lw´‐ _‐ノv「ブーン店長は朝から元気だねえ。うむ、お茶が美味い」
彼女の名前はシュー。
サンライスの店員で、マイペースでちょっと変わった人だ。
(;^ω^)「いきなりサボるなお。ご飯はもう炊いたのかお?」
- 696 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:36:03 ID:FnHMrnZY0
僕の朝の仕事は、おりぎりを握る所から始まる。
魔法農具屋と銘打っているように、ここでは扱うものは主に農具、それも魔法を使って強化したものだが、
農具なんてそうそう毎日売れるような物ではない。
故に肥料なんかの消耗品や、農具を使って出来た成果、つまりは農作物なんかも取り扱っており、
売れる機会が多いのはそちらの方だ。
中でも売れ筋なのが、お店のオリジナルの薬草をブレンドして握り込んだおにぎりである。
よって朝はまずそれを作らねば始まらない。
lw´‐ _‐ノv「そこは抜かりないっスよ、店長。きっちり5升炊き上がっておりますぜ?」
( ^ω^)「助かるお。シューの炊いた米は美味いからね」
lw´‐ _‐ノv「お褒めに預かり光栄ですな」
(∪^ω^)「わんわんお!」
( ^ω^)「それじゃあ、早速握るかお」
(∪^ω^)「わんお!」
- 698 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:37:29 ID:FnHMrnZY0
( ^ω^)「こらこら、こめにしきは握らなくていいお」
キョロキョロ
? (^ω^∪三∪^ω^) ?
(;^ω^)「こめにしきはお前だお。何で名前覚えてくれないんだお」
こめにしきの名前は有名なお米の銘柄から取っている。
真っ白の毛並みがお米を髣髴させるからだ。
しかしながらこめにしきはなかなか自分の名前を覚えてくれない。
ひょっとしてこの名前が気に入ってないのだろうか。
(∪´ω`)「わんおー」
( ^ω^)つ刀uこのお米ライス棒あげるから、こっちで食べててお」
(∪*^ω^)「わんわんお!」
心意気はありがたいが、犬であるこめにしきにおにぎりを握ってもらうわけにはいかない。
衛生的には毎日お風呂に入れて常に清潔な状態を保っているが、流石におにぎりを握るのは無理だ。
僕はご飯を固めて骨の形を模したおやつをこめにしきにあげ、カウンターの上に座らせる。
(∪;^ω^)刀uわん……お……?」
- 699 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:38:37 ID:FnHMrnZY0
( ^ω^)「まずはプレーンを握るお。日替わりは何にしようかお」
lw´‐ _‐ノv「それなんだが店長、今日はこれを使ってみないかね?」
( ^ω^)「お? 何だお、これ?」
そういってシューが差し出したのは緑の薄い紙の様なものだった。
( ^ω^)「これはひょっとして、海苔かお? それも薬草で作った」
lw´‐ _‐ノv「ざっつらい。流石店長だ。よくわかったね」
シューの説明によると、薬草を煮詰めて敷き伸ばした物を天日で乾燥させ、塩を振った物らしい。
いわゆる海苔だが、海藻ではなく、薬草である所がミソだ。
( ^ω^)「なるほど、これで巻いてみるのは新しいかもしれんお」
新しさはあるが、商品になるかどうかは味を見ないと何とも言えない。
僕は炊き立てのご飯に粉末の薬草をまぶし、薬草海苔で巻いてみた。
( ^ω^)「見た目は悪くないお」
lw´‐ _‐ノv「緑の様な緑色だね」
- 700 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:40:12 ID:FnHMrnZY0
僕は薬草海苔巻き薬草おりぎりをがぶりとかじる。
薬草海苔のパリっとした食感とお米のやわらかな口当たりが心地良い。
味も薬草海苔の塩と米の甘み、
それに薬草のほのかな苦味が合わさって複雑だが絡み合った見事なハーモニーを奏でている。
(*^ω^)「美味いお、これ。これなら日替わりじゃなくってレギュラーメニューでも行けそうだお」
lw´‐ _‐ノv「お褒めに預かり光栄ですな」
( ^ω^)「売れ行き見て感想聞いて、レギュラー入りを検討するお」
僕とシューはせっせとおにぎりを握り、開店に備える。
何気に朝一の売り上げがかなり大きいので、朝は結構な数を準備する必要がある。
冷めても美味しいのがおにぎりのいい所とはいえ、炊きたてでまだ温かいおにぎりを好きな人も多いのだ。
( ^ω^)「こんなもんかお」
lw´‐ _‐ノv「みっしょんこんぷりー」
おにぎりを握り終わり、汗を拭っているとシューがお茶を淹れてくれる。
暑いのに熱いお茶はどうなのかと思ったが、意外と飲めるというか却って汗が引くことがわかった。
- 702 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:41:38 ID:FnHMrnZY0
( ^ω^)「さて、そろそろお店を開けるかお。今日も完売目指すおー!」
チョイ チョイ
(∪;^ω^)っ
( ^ω^)「お? こめにしき、お腹空いてないのかお? お米ライス棒、好きだお?」
フルフル
(((∪;^ω^)))刀uわんお……」
( ^ω^)「まあ、後でお腹空くだろうからその時食べればいいお。さあ、開店だお」
lw´‐ _‐ノv「おーぷん ざ すとあー」
開店と同時に数人の客が店を訪れる。
そのほとんどが顔馴染みの客だ。
そう大きな町でもないので、顔馴染みでない人の方が少ないのだが。
( ^ω^)「いらっしゃいませですお! 今日の日替わりは新作ですお! 是非買ってってくださいお!」
そんなアナウンスをするまでもなく、ほとんどのお客は日替わりおにぎりを買ってくれる。
新作とあらば試してくれるお客さんは多い。
- 703 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:43:01 ID:FnHMrnZY0
しかしながら、その審美眼はなかなか厳しく、中途半端なものだともう2度とその商品は買ってもらえなくなる。
その代わり、出来がいいとまた戻って来てお昼の分まで買って行ってくれたりするのだ。
( ^ω^)「どうでしたかお? って、聞くまでもなさそうですおね。日替わり3つですね。少々お待ちくださいお」
早速外で食べてまた買いに来てくれたお客さんがいる。
どうやら今日の新作日替わりおにぎりはお客さんの眼鏡に適ったようだ。
( ^ω^)「お待たせしましたお。またお越しくださいお!」
僕とシューは協力してお客を捌き、品物を売る。
ただの薬草を買いに来た冒険者の人や、何を勘違いしたのか、遠方から薬草パンなるものを買いに来たお客もいた。
どこで誤解したのかわからないが、ここで売ってるのは薬草パンではなく薬草おにぎりである。
ただの薬草は売っているが、薬草パンは売っていない。
そういうお客さんにはシューが懇切丁寧に説明し、薬草パンの代わりに薬草おにぎりを買って帰ってもらった。
( ^ω^)「ふぅ……お昼はこんなとこかおね」
lw´‐ _‐ノv「お疲れさんした。午後の分はどうするかね?」
- 704 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:44:02 ID:FnHMrnZY0
朝からお昼にかけて大体のおにぎりは売り尽くしてしまった。
夕食用におにぎりを買って行く客は少ないので、今日の所は売り切れにしてもいいのだが、
この客足からすると、もう1升分ぐらいは仕込んでおいてもいいかもしれない。
lw´‐ _‐ノv「そうだね、まだお客さん来そうな感じはあるね」
( ^ω^)「んじゃ、よろしく頼むお」
lw´‐ _‐ノv「おっけー、店番よろしゅうに」
そう言うとシューは店の奥に引っ込んだ。
僕は商品の点検をしながら店番を勤める。
そんな折、ドアが開く音がして1人の客が入って来た。
('A`)「何だ、やっぱ帰って来てたんだな」
( ^ω^)「お、ドクオさん、今日は珍しく普通に入って来ましたおね」
(∪;^ω^)「わんおー」
- 705 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:46:05 ID:FnHMrnZY0
('A`)「俺はいつも普通に入って来てるよ。お前が気付かないだけだ」
( ^ω^)「無意識に視界から外そうとしてるのかもしれませんお」
('A`)「うん、無視は止めてね、心折れるから」
相変わらずのくたびれた顔で、ドクオさんは溜め息を吐く。
そして店内を見回すと、眉をひそめた。
('A`)「何だこりゃ? 随分様変わりしたな」
( ^ω^)「何の事ですかお? いつも通りのサンライスですお?」
(;'A`)「サンライス? サンライズじゃなくて?」
( ^ω^)「魔法農具屋サンライスですお。いつも通りですお」
(;'A`)「いや、農具って……確かにそれっぽいのあるな。お前、旅先で何かあったのか?」
( ^ω^)「旅? 何の話ですかお? 僕はずっとヴィップでお店やってましたお?」
- 706 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:47:27 ID:FnHMrnZY0
僕の言葉に何故かドクオさんが険しい顔をした。
何だか今日のドクオさんは変だ。
よくわからない事ばかり口走っている。
('A`)「変なのはお前だよ。何をされた? 誰の仕業だ?」
(;^ω^)「仕業って……話が見えませんお?」
ドクオさんが真面目な顔で僕の両肩に手を乗せる。
何でそんな深刻な風なのかはわからないが、あまり顔は寄せないで欲しいと切に思う。
lw´‐ _‐ノv「おーい、店長、そろそろ薬草採集に行かねばならんようだな」
( ^ω^)「お、シュー。そうなのかお?」
ご飯の仕込みを終えたのか、シューが店内に戻って来る。
それを見たドクオさんは僕を押しのけ、シューの方に向かう。
('A`)「てめえは何もんだ?」
lw´‐ _‐ノv「何だこのモンスター?」
- 707 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:49:15 ID:FnHMrnZY0
( ^ω^)「シュー、ドクオさんは一見モンスターだけど僕の師匠で人間だお」
( ^ω^)「ドクオさんも、何もんだって、シューはシューだお? うちの店員の」
('A`)「……てめえがやったのか」
lw´‐ _‐ノv「……ふむ、仕方がないね。君も眠ってもらおうか」
2人はよくわからないやり取りし、シューがドクオさんの前に立つ。
そしてシューはドクオさんに指を突き付けるが、いくら気持ち悪いとはいえいきなり目潰しはひどいと思う。
lw´‐ _‐ノv「ぐっない」
('A`)「!?」
シューが何事か呟くと、ドクオさんの動きが止まる。
シューは満足げに頷いて指を下ろし、こちらを向いた。
lw´‐ _‐ノv「さて、店長の方も少し眠ってもらおうか」
(;^ω^)「シュー、ドクオさんに何したんだお?」
- 708 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:50:02 ID:FnHMrnZY0
('A`)「チャームか」
lw´‐ _‐ノv「!?」
( ^ω^)「お?」
動きが止まったと思ったドクオさんが呟くように言う。
驚いたのかシューの目蓋がぴくりと動き、ドクオさんの方に向き直った。
lw´‐ _‐ノv「きいていない? 何故……?」
('A`)「生憎、俺には魅了の魔法は一切きかねえよ」
理由はよくわからないが、ドクオさんの言葉から察するに、シューがドクオさんにチャームの魔法を使ったようだ。
ドクオさんを魅了してどうするのかと正気を疑うが、ドクオさんはチャームが一切きかない体質なので意味がない。
lw´‐ _‐ノv「随分と変わった人間がいたものだねえ……」
('A`)「そう言うてめえのその力、人間のものじゃねえな」
lw´‐ _‐ノv「おまけに勘もいいと来てるね」
('A`)「一応、巷じゃ賢者という事になってんでね」
- 709 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:51:31 ID:FnHMrnZY0
ドクオさんが身構え、シューと距離を取る。
何が起こっているのか全くわからないが、何だか不穏な空気だ。
(;^ω^)「2人とも、落ち着いてくださいお。生理的に受け付けないからってケンカは駄目ですお」
(#'A`)「お前はいい加減戻って来い! ほら、これ飲め!」
ドクオさんがこちらに走りより、懐から何かを取り出す。
何かの粉の様だが、ドクオさんの清潔とは言い難いローブに収まってたものを口にするのは勘弁願いたい。
(#'A`)「いいから飲め!」
(;゚ω゚)「ちょ、止め──何これ? 苦ッ! うごげおばべべぐえおあい──」
(∪;^ω^)「わんわんお!?」
無理矢理口の中に押し込まれたそれから、すさまじい苦さが広がり、僕は思わず倒れ込む。
とんでもない頭痛が襲い、意識が白濁して行く。
lw´‐ _‐ノv「あーあー、無茶するねえ」
ガブッ
(∪^皿^)}'A`)「俺の弟子はこのくらいで死にやしねえさ。それよりてめえ……」
ガジガジ
(∪^皿^)}'A`;)「あの、ブーンは大丈夫だから離してくれる? いや、気絶してるだけだかさ、ホント、ね?」
- 711 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:53:22 ID:FnHMrnZY0
lw´‐ _‐ノv「うん? 戦うつもりかい?」
{'A`)「いや、出来れば避けてえな」
lw´‐ _‐ノv「懸命だね。勝てないという事は理解していると」
('A`)「無駄な事はしない主義でね」
lw´‐ _‐ノv「ふむ……、とはいえ、私が店長に害を加えようとするなら戦うのだろ?」
lw´‐ _‐ノv「それに、今の君なら恐らく私に勝てるだろうしね」
('A`)「……買い被り過ぎだな」
lw´‐ _‐ノv「ま、多くは聞かんよ。ただ、溜め込み過ぎは身体に毒だと言っておこう」
('A`)「そりゃどうも」
('A`)「そんじゃ、改めて言わせて貰うぜ」
('A`)「どうせこいつ以外にもチャームをかけてんだろ? そいつを解いてここから去るなら見逃してやる」
- 712 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:54:56 ID:FnHMrnZY0
lw´‐ _‐ノv「見逃してやる、か。随分と上からだねえ。……嫌だといったらどうするのかね?」
('A`)「……決まってるだろ? お前──」
(;゚ω゚)「ぶるあああああああああああああああああああああッ!?」
(∪;^ω^)「わんお!?」
衝動のままに叫びながら飛び起きると、そこはサンライズの店内だった。
しかしながらどことなく馴染みのない物が置いてあり、馴染みのある変な顔と馴染みのない顔が向かい合っている。
(;^ω^)「あれ? えっとここは……」
(∪*^ω^)「わんわんお!」
('A`)「やっと起きたか。ここがどこかわかるか?」
(;^ω^)「サンライズの中? ですおね、ちょっと変わってるけど天井とか同じだし……」
lw´‐ _‐ノv「ふむ、解けたのか。なかなかやるねえ」
('A`)「伊達に賢者やってないんでね。おい、ブーン、状況理解してるか?」
- 713 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:56:16 ID:FnHMrnZY0
目の前の女性、シューの姿とドクオさんの言葉で、混濁していた僕の頭の中の靄が晴れた。
ソクホウから帰ってから今までの流れを思い出すに、僕はどうやらシューに魅了されていた様だ。
lw´‐ _‐ノv「そゆことだね」
('A`)「チャーム中の記憶も残ってるのか」
lw´‐ _‐ノv「まあ、過去の記憶に少し足しただけだからね」
lw´‐ _‐ノv「消したりはしてないし、新たに増える分はそのままだね」
('A`)「過去を消さなきゃ、どこかで矛盾が出るだろ?」
lw´‐ _‐ノv「そこは後乗せの分の優先度を上げてね、誤魔化してるね」
('A`)「そりゃ便利な事で」
(;^ω^)「よくわかんないような、わかったような感じですけど、取り敢えず何でこんなことしたんですかお?」
それだけ高度なチャームを使っておきながら、シューがやっていた事は単にお店の手伝いだ。
店の名前や扱う商品は変えたが、誰にも危害を加えたりとかはしていない。
何らかの物が盗まれたわけでもなさそうだし、むしろ物は増えている。
- 714 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:57:28 ID:FnHMrnZY0
lw´‐ _‐ノv「話せば長くなるが聞きたいかい?」
(;^ω^)「ええ、それはもう」
僕はドクオさんの方を見る。
ドクオさんは不満げな顔をしてはいたが、反対はしなかった。
lw´‐ _‐ノv「最初はね、頼まれただけだったんだよ」
(;^ω^)「頼まれた? 誰にですかお?」
lw´‐ _‐ノv「誰って、クーとかシャキンとか、この町の人間にだよ」
(;^ω^)「はい!?」
シューの話によると、シューは旅の途中でヴィップの町に立ち寄っただけだったらしい。
それでバーボンハウスで食事をしていると、何やら町の魔法道具屋がなかなか帰って来なくて、
薬草とかの道具がそろそろ底を尽きそうでどうしようという話が聞こえてきたという。
lw´‐ _‐ノv「私がちょっと魔法使いっぽい格好してたからだろうね。クーが話しかけて来たよ」
lw´‐ _‐ノv「お前、薬草作れるかってね」
- 715 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:58:37 ID:FnHMrnZY0
どうやら僕がいない間に、ヴィップの町のクエストが活発になっていたらしい。
僕が用意した分では足りないくらい道具を消費した様だ。
その場合は別の町から仕入れて来るとか、別の人に作ってもらうとか手段は考えられるが、
シャキンさん達は後者の手段を選択したのだろう。
lw´‐ _‐ノv「まあ、作れるし、別に行く先も決めてない旅だったんでオーケイしたのよね」
('A`)「人間の頼みをか?」
lw´‐ _‐ノv「君の疑う気持ちはわかるがね、こんな格好してる時点で少しは察してもらえんかね?」
シューの格好はごく普通の服装だ。
ドクオさんの質問の意味も、シューの言う察する所も僕には理解出来ない。
('A`)「いい加減気付けと言いたい所だが、ここまで魔力を隠されているとお前にはまだわからんか」
(;^ω^)「お?」
('A`)「この女は人間じゃねえよ」
(;^ω^)「へ……?」
- 716 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 23:00:44 ID:FnHMrnZY0
むしろ顔的にはドクオさんの方が人間じゃない気もするが、冗談を言っている素振りはない。
シューもごく普通に頷いている。
lw´‐ _‐ノv「店長にもっともわかりやすく言えば、悪魔ってとこだろうね」
(;^ω^)「悪魔って……マジすか……」
lw´‐ _‐ノvv「マジマジ」
ピースサインでさらっととんでもない事をいうシューだが、僕には何というか実感がない。
人間の姿をしている事を差し引いても、この半日を共に過ごした経験から言うと、ちょっと変わってるけどいい人だ。
(;^ω^)「実感ないけど、取り敢えずこの姿ならシャキンさん達が旅の魔法使いと勘違いしてもおかしくはないお」
lw´‐ _‐ノv「うむ、理解が行き届いた所で話を続けよう」
lw´‐ _‐ノv「それで頼みを引き受け、短い時間で結構な数の薬草を作った」
lw´‐ _‐ノv「評判も悪くなかったし、これなら店を開けるというクーの提案の元、ここで薬草の販売を始めたのね」
('A`)「店名を変えてか?」
lw´‐ _‐ノv「いやいや、最初は普通に魔法道具屋サンライズで薬草とか売ってただけだったんよ」
- 717 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 23:02:04 ID:FnHMrnZY0
( ^ω^)「それが何で途中から変わったんだお?」
lw´‐ _‐ノv「それを話す為に、まずは私が何故人間の姿でこの世界を旅をしているかを語ろうか」
シューの話を要約すると、シューは悪魔でも農業とか豊穣を司る悪魔らしい。
何だか悪魔っぽくないが、何でも人間の世界でも割と有名な悪魔の子供という事だった。
個人的には悪魔というと、悪事を働いて略奪して生きてくイメージしかないから、
農業をやる悪魔というのは全くイメージが湧かない。
lw´‐ _‐ノv「それだと結局、奪い奪われの繰り返しで不毛じゃないか」
('A`)「正論だが、悪魔に言われるとな……。享楽のままに自分勝手に生きるのが悪魔だろ?」
lw´‐ _‐ノv「我らの一族が我らの世界の中で異端な考えを持っているのは否定しない」
lw´‐ _‐ノv「だが考えてもみたまえ」
lw´‐ _‐ノv「奪い合いの生き方は、常に奪われる事に怯え、備えて生きていかねばならないのだぞ?」
lw´‐ _‐ノv「はっきり言ってめんどくさいじゃないか」
- 718 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 23:03:38 ID:FnHMrnZY0
要するに、皆で農業やって暮らす生き方の方が、奪い合いの生き方より面倒が少ないからそうしているという事らしい。
こっちの方が楽な上、楽しいからある意味享楽のままに生きていると。
lw´‐ _‐ノv「更に言えば、農作物は美味い。野菜も美味いが特に米が美味い」
( ^ω^)「何となくそこは理解出来たけど、農業も結構大変だお?」
lw´‐ _‐ノv「うむ、確かにね。故に私はこうやって人間界を旅してるのだよ」
lw´‐ _‐ノv「人間界は農業が発達してるだろ? より良い農業の仕方を探る為、私は旅をしている」
(;^ω^)「でも、農業を司ってるなら、そんな事しなくても何でも出来そうな気がするお」
lw´‐ _‐ノv「あれは担当制というか、適当に割り振られただけだからねえ」
lw´‐ _‐ノv「割り振られてからは興味を持って調べるようにはなったけど、大した事は出来ないね」
('A`)「それで、旅の理由はわかったが、店名を変えた理由は何だ?」
lw´‐ _‐ノv「君はやけに店名にこだわるね。安心したまえ、ちゃんと説明はするよ」
シューの話によると、店を開けてしばらくは何の変哲もない魔法道具屋として営業していたらしい。
これといって問題もなく、客足もぼちぼちといった所らしかった。
- 719 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 23:04:39 ID:FnHMrnZY0
lw´‐ _‐ノv「だがある時、遠方から来たという客がこんな事を聞いて来たんだ」
lw´‐ _‐ノv「『薬草パンは売ってないのですか?』とね」
(;^ω^)「お、それってひょっとして……」
lw´‐ _‐ノv「やはり店長、君かね? 客はここで売ってると聞いて来たらしいが、私には何の事かさっぱりでね」
どうやらメシューマやソクホウで行った宣伝活動が実を結んでいたらしい。
ツンが危惧してたように、少し違った方向で広まってしまったみたいだけど。
lw´‐ _‐ノv「残念ながら私はパンは作れない。パンも農作物の成れの果てだが、同じ農作物なら私は米を推す」
lw´‐ _‐ノv「というわけで、ここの壁に貼ってあったレシピを元に薬草おにぎりを作り、パンの代わりに売った」
lw´‐ _‐ノv「そしたら、思いの他好評でね。そこで少し欲が出てしまった」
lw´‐ _‐ノv「自分の可能性を試したくなったとでも言うべきなのかね? いや、お米の可能性かな?」
そこから新作おにぎりを売りに出したり、自分が考案した農具を置いたりし始めたらしい。
勿論、そこまで勝手な事をするほどの権限はないから、町中の皆にチャームをかけ、
元からそうであったように錯覚させたと。
- 720 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 23:06:08 ID:FnHMrnZY0
lw´‐ _‐ノv「そして店長が帰って来て今に至るわけだね」
( ^ω^)「流れは把握したお」
(;^ω^)「……したけど、僕は何て言っていいかわかんないお」
lw´‐ _‐ノv「まず私は謝るべきだろうね。ごめんね、色々と勝手な事をして」
(;^ω^)「まあ、正直な所、謝られる事とお礼を言うべき事と相殺しそうな割合だお」
( ^ω^)「こちらからもごめん、そしてありがとうだお」
店名を変えたり、違うものを売られたりもしたが、
シューはヴィップの町にとって必要だった薬草とかの道具の供給もしてくれたのだ。
それに付いては僕のみならず、町の皆も感謝しているだろう。
僕が帰って来て以降もそれを続けようとしたのは怒るべき所かもしれないが、一緒に仕事をした記憶もある今、
そんな気にもなれない。
シューの仕事振りは見ていて清々しいものがあり、悪魔とかそういうの関係なしにいい店員だったのだ。
lw´‐ _‐ノv「そう遠くない内に返すつもりだったと言って信じてもらえるかはわからないがね」
- 721 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 23:07:20 ID:FnHMrnZY0
lw´‐ _‐ノv「せめて1つぐらいは自作の農具が売れるのを見たかったんだが、売れなかったねえ」
(;^ω^)「まあ、何かよくわかんない形してるし、魔法農具ってのがそもそもよくわからんお」
( ^ω^)「しかし、シューの言葉は信じるお」
( ^ω^)「店を本気で奪う気なら、僕を店長にする必要もなかったはずだしね」
(∪^ω^)「わんわんお!」
lw´‐ _‐ノv「そう言ってくれるとありがたいね。こめにしきもすまなかったね」
(;^ω^)「この子はこめにしきじゃなくってわんわんおだお。つーかごめんお、変なご飯あげたりして」
つ∪*^ω^)「わんお!」
わんわんおは犬だから、チャームをかける必要はないとシューは判断したようだ。
別の名前で呼んだり、味の付いてないお米の固まりをあげたり、色々とかわいそうな事をして申し訳なかったと思う
ただ、わんわんおの正体を考えれば、シューがチャームをかけなくて助かったのかもしれない。
かけていたらどうなっていたかわからないが、シューはわんわんおに何らかの疑問を感じた可能性はある。
( ^ω^)「これで大体の説明は終わりだおね」
一通りの事情は理解し、シューもこれから全員のチャームを解くという事なので一件落着となりそうだ。
ドクオさんだけは未だに眉をひそめた渋い顔をしているが。
- 722 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 23:08:54 ID:FnHMrnZY0
( ^ω^)「何でそんな苦虫みたいな顔してるんですかお?」
('A`)「苦虫を噛み潰した様な顔な。いや、お前の甘さにほとほと呆れ果ててるんだよ」
( ^ω^)「そうは言いますけど、実害はなかったわけですし、怒る理由もないですお?」
('A`)「お前は……。まあいい、とにかくお前は物事に対する危機感というものをだな……」
lw´‐ _‐ノv「店の看板は戻しておいたぞ、苦虫君。君にも手間をかけさせたね」
('A`)「誰が苦虫だ。……もういいや、俺は帰る。あとは知らん。勝手にしろ」
そう言うとドクオさんはさっさと店を出ていってしまった。
ドクオさんにもちゃんとお礼を言いたかったが、また今度でいいだろう。
改めて色々と話をしにドクオさんの庵に向かう予定だし。
lw´‐ _‐ノv「それじゃあ、私も行こうかね」
( ^ω^)「お……」
シューはこれから全員のチャームを解き、村を出るという。
1人1人に謝罪をしたい所だが、自分の正体を思えばもう会わない方がいいだろうとシューは言った。
- 723 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 23:11:13 ID:FnHMrnZY0
( ^ω^)「別に、チャームを解いたからってシューの正体はバレないお?」
lw´‐ _‐ノv「店長は私の正体を言わないつもりかね? それでどう町の皆に説明するつもりかな?」
チャームが解けてもここしばらくの記憶はあるのだから、多分皆は色々と僕に聞きに来るだろう。
しかしながら、別にシューの正体は明らかにしなくてもいくらでも説明は出来る。
なんせシューは普通に商売していただけだ。
高度な魔法を使う魔法使いとでも言えばそれで済む。
lw´‐ _‐ノv「説明は付くが、それでいいのかね?」
( ^ω^)「でも、悪魔だって知られればヴィップに来辛くなるお?」
僕はシューが悪い悪魔ではない事を理解したが、普通の人は悪魔という言葉にまずいいイメージは持たない。
シューに悪意がないのなら、無用な争いを避ける為にも隠しておく方がいいと思う。
例によってツン達数人には話しておこうと思っているが。
lw´‐ _‐ノv「店長は私を信用してくれるんだね」
( ^ω^)「短い時間だけど一緒に働いたお。それに、あの薬草海苔もすごく良く出来てたお」
( ^ω^)「あんな美味しいものを作れる人が……人じゃないけど、とにかく悪い悪魔じゃないお!」
(∪^ω^)「わんわんお!」
- 725 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 23:14:08 ID:FnHMrnZY0
lw´‐ _‐ノv「……旅はもう諦めて帰らねばならんと思っていたが。私は店長の厚意に甘えていいのかね?」
( ^ω^)「もっともっとこの世界の農業を学んで、シューの世界の為に役立ててくれお」
lw´‐ _‐ノv「ありがとう。折角の厚意だ、乗っからせてもらおう」
折角だから、しばらくここで働いてみるかと提案もしたが、流石にそこまでは甘えられないとシューは断った。
また旅に出ると言うシューだが、それには1つ問題がある。
(;^ω^)「この農具、どうするお?」
lw´‐ _‐ノv「ここで売ってもらうのは店に合わないし場所取るだろうから、出来れば持って行きたいが……」
店内に所狭しと並んでいる魔法農具は結構な数があり、大きさも重さも徒歩の旅に携帯するのは無理がある。
悪魔ならそれくらい何とかなりそうだが、悪魔の力で何とかしたら悪魔だとバレる可能性も出て来てしまう。
lw´‐ _‐ノv「残念ながら処分するしかないかね……」
( ^ω^)「お……」
これまでほとんど表情を変えなかったシューだが、その眉尻が少し下がる。
折角作った魔法農具を処分するのは忍びないのだろう。
- 726 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 23:16:07 ID:FnHMrnZY0
正直な所、この魔法農具がどういう使い方でどう従来の物と違うのかはよくわかっていない。
しかしながら開店前にこれらをシューが熱心に掃除して点検していたのは目にした。
それらを処分するのは僕も気が進まない。
( ^ω^)「そうだお、どうせなら馬車借りて商売しながら旅すればいいお」
( ^ω^)「農具だけじゃなく、おにぎり売ったりも出来るお」
lw´‐ _‐ノv「馬車か……なるほど、それは魅力的な話だが、私は馬車を持っていないね」
( ^ω^)「借りれば……いや、シューの境遇なら専用の馬車があった方がいいおね、物を置く家がないんだし」
lw´‐ _‐ノv「買えと? 私は人間界の通貨は大して持ち合わせていないぞ?」
lw´‐ _‐ノv「馬ぐらいなら向こうの世界から召喚出来ると思うが。首がなかったりするけど」
(;^ω^)「普通の姿の馬はいないのかお?」
lw´‐ _‐ノv「角が付いてたり、羽があったりも駄目?」
( ^ω^)「駄目……でもないかお。羽は厳しいけど、角ぐらいなら使い魔って事で誤魔化せなくも……」
- 727 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 23:18:50 ID:FnHMrnZY0
竜を従えていたじいちゃんのような魔法使いもいる事だし、角のある馬、
ユニコーンとか従えている魔法使いがいてもおかしくはない。
ただ、珍しいので人目は惹くしトラブルの元になりかねないが。
( ^ω^)「それが出来るなら馬車本体は何とか出来ると思うお」
lw´‐ _‐ノv「まさか店長、私に馬車を無償提供しようとかお人好しな事を考えているのではないかね?」
(;^ω^)「お、馬車本体だけならそこまで高くないのはあるお」
図星を指されてしまったが、シューのこれまでの働きを思えばこのくらいはしてあげてはいいのではと思う。
確かに、またツンやドクオさんからお人好し過ぎると怒られそうだし、結構な赤字になるがそういう問題ではない。
人間界で他に頼れる人がいないとしたら、ここで無下に放り出す事は僕には出来ない。
( ^ω^)「貰うのが嫌なら、貸すって形でもいいお」
世界を旅して回り、利益が出たならいつか返してくれればいいと僕は提案する。
商売がうまくいかなくて行き詰って諦める事になったら、その時は馬車を返してくれればいいと。
lw´‐ _‐ノv「ふむ……やるとなったら諦める気はないが、それでも返済には相当時間を要すると思うぞ?」
- 728 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 23:21:37 ID:FnHMrnZY0
( ^ω^)「どうせシューは僕らよりずっと長生きなんだお? だったら、いつかはきっと返せるお」
( ^ω^)「代金は僕の子孫が受け取ってくれるお」
(∪^ω^)「わんお!」
lw´‐ _‐ノv「君は本当にお人好しだね。……しかしながら、私はそれが好ましくも思うよ」
( ^ω^)「お人好しなのは自覚してるお。提案を受け入れてくれてありがとだお」
僕は笑ってシューに右手を差し出す。
シューは軽く肩をすくめ、その手を握り返してくれた。
( ^ω^)「お、そうだお。あの薬草海苔の作り方教えてくれお」
lw´‐ _‐ノv「む、これから商売敵になろうというやつに……まあ、いいか。あれはだな……」
(∪*^ω^)「わんわんお!」
第二十四話 ようこそ、魔法農具屋サンライスへ 終
戻る