381 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 22:43:20 ID:NMBuM8D.0

 〜 王都ソクホウ 中央広場 〜


( ^ω^)「さて、こっちも宿探さないとだおね」

ξ゚听)ξ「というか、全く当てがないのに適当に馬車走らせてんじゃないわよ」

( ^ω^)「何かノリで……」

( ゚д゚)「まあ、宿ぐらいなら少し探せばすぐ見付かるだろう」

从 ゚∀从「腹も減ったし、早いとこ見付けて昼飯にしようぜ」

(∪^ω^)「わんわんお!」



     第十九話 栄えし美しきニューソクの都


382 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 22:44:26 ID:NMBuM8D.0

( ^ω^)「それじゃあまず、その辺の現地人に聞いてみるかお」

僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。

今僕は、ソクホウに友人のショボンを送り届け、今宵の宿を探している真っ最中である。
幼馴染のツン、ペットのわんわんお、馴染みの冒険者であるハインさん、ミルナさんと一緒だ。
1人足りない気もするが、彼は星になったとだけ述べておこう。

僕は馬車から降り、道を歩いていた人に話しかける。

( ^ω^)「すみません、この辺でいい宿ご存じないですかお?」

(´・_ゝ・`)「すまない、私も旅人なんでこの町には詳しくないんだ」

いかにも、ここはソクホウの町ですとでも答えてくれそうな特徴のない人に話しかけたのだが、まさかの旅人であった。
気を取り直し、別の人に尋ねるが、町の南西部に宿泊施設が集まってる区域があるらしいので、
取り敢えずそこを目指せばいいと教えてもらった。

( ^ω^)「んじゃ、行ってみますかお」

(∪^ω^)「わんお!」

383 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 22:47:04 ID:NMBuM8D.0

僕達は再び馬車に乗り込み、町の南西部に向かう。
道路自体はどこも同じように整備されているが、立ち並ぶ建物の感じは地区ごとに差があるようだ。

( ゚д゚)「王宮のある北の方が大きく、立派な建物が多いようだな」

( ^ω^)「今目指してる南西部は商業区域っぽいですおね」

ソクホウはヴィップの町の数倍大きな町だ。
周囲は壁に囲まれ、城塞都市の体をなしている。

町はいくつかの地区に分けられており、それぞれ住む人々の層が違うようだ。
正確な所は把握していないが、王宮の位置を考えれば北側が貴族や富裕層、教会関連、
騎士関連の住む場所や施設という事になるだろう。

ショボンが行った騎士学校も北部東側にあった。

ξ゚听)ξ「ソクホウって海も結構近いけど、港は町から離れてるのね」

( ^ω^)「みたいだおね」

ソクホウはニューソク大陸の中央部西に位置し、北と西には海がある。
西側に港があるが、あまり漁業なんかは盛んではないようだ。
軍港として作られたという歴史があるからかもしれない。

384 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 22:50:03 ID:NMBuM8D.0

( ^ω^)「お、それっぽい建物が並ぶ通りに出たお」

気付けば通りの左右には宿屋が立ち並んでいる。
僕は馬車を停め、宿探しに慣れているミルナさんと共に良さそうな宿を何軒か回り、
その内の1つを宿所に決めた。

('(゚∀゚∩「ナオルヨ亭にようこそだよ!」

( ゚д゚)「5人で。泊数は未定だが、後払いでいいのか?」

( ^ω^)「ミルナさん、5人と1匹ですお。ジョルジュさん忘れてますお」

('(゚∀゚∩「大丈夫だよ! かわいいわんちゃんだよ! その子は無料でいいよ!」

(∪*^ω^)「わんわんお!」

店主のナオルヨさんは気さくで話しやすい人だったので、この町の事を色々聞くことにした。
その後、僕らは2部屋取った内の男部屋に集まり、今後の予定について再度話し合う。

从 ゚∀从「飯」

( ^ω^)「ですおね。それはまあ、この後外に出て適当な店に入るとして……」

385 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 22:52:29 ID:NMBuM8D.0

ξ゚听)ξ「その後はやっぱり騎士団の詰所かしらね」

( ^ω^)「だおね。でもそれ、僕1人で行ってきてもいいお? 大人数で行くようなものでもないし」

礼金を受け取り、盗賊団について話を聞いたり聞かれたりするだけだ。
人数は必要ないだろう。

皆も僕が礼金を誤魔化す心配なんてしていないだろうし、
来ても退屈するだけなら別行動でかまわないと僕は考えている。

若干、それ以外の理由もあるのだが、ツン以外には話せないのでそれは口にはしない。

( ゚д゚)「ふむ、しかし、どうせ他に行く当てもないし、俺もついて行こうかと思う」

( ^ω^)「紹介状渡しますんで、武器職人に会いに行くってのもありますお?」

从 ゚∀从「後でいいから飯。とにかく飯」

ξ゚听)ξつ(∪^ω^)「はいはい、すぐご飯だから少し黙ってて」

从 ゚¬从「……ジュルリ」
つ∪;^ω^)

386 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 22:54:51 ID:NMBuM8D.0

( ゚д゚)「武器職人に会うのはブーンもいてくれた方がいい」

( ゚д゚)「俺達は紹介者を知らないし、武器についてブーンの意見も聞きたいからな」

話の種に騎士団の詰所を見ておくのも面白いんじゃないと言うツンの言葉もあり、
僕達は皆で騎士団の詰所に向かう事に決めた。

( ^ω^)「じゃあ、まずは食事にしましょうかお」

ξ゚听)ξ「そうね、わんおがハインに食べられる前に行きましょうか」

(; ゚д゚)「ハイン、わんおちゃんをこっちに寄越せ、今すぐにだ!」

わんわんおを無言でじっと見詰めるハインさんから引き剥がし、宿屋を出る。
ソクホウにはこれといった名物はないらしいが、料理の水準は高く、味は良かった。

( ^ω^)「というわけでやって来ましたニューソク騎士団詰所」
つ∪^ω^)「わんおー」

騎士団の詰所は王宮の城壁に併設するような形で立っていた。
東側が騎士団、西側が教会と施設が分けられているようだ。

387 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 22:56:26 ID:NMBuM8D.0

話はちゃんと通ってたのか、名前と用件を告げると特に怪しまれる事もなく中に通される。
武器は預ける事になったが、わんわんおは一緒に通してもらった。

通された先の部屋で待っていたのが騎士団長のフィレンクトさんだったのは少し意外だ。
もっと下っ端の人が応対するかと思ってたのだが、騎士団長直々とは恐れ入る。

(‘_L’)「わざわざご足労ありがとうございます。本来ならこちらが出向くべき話なのでしょうが……」

( ^ω^)「いえいえ、こっちは宿も決めてなかったし、所在のはっきりしない身でしたから当然の事ですお」

相変わらず腰の低いフィレンクトさんに恐縮しながら勧められた椅子に腰を下ろす。
まずはと、フィレンクトさんは礼金の入った袋を僕に手渡す。

(‘_L’)「どうぞ、お確かめください」

(;^ω^)「えっと、相場よりかなり多い気がしますが……」

(‘_L’)「調べた結果、数件の盗賊行為を繰り返していたようですからね」

(‘_L’)「メシューマでも賞金がかけられていましたので」

388 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 22:58:44 ID:NMBuM8D.0

メシューマから出る賞金も先払いとして含んでおいたとフィレンクトさんは言う。
こういう場合、片方からしかもらえないのが一般的な気がするのだが、
そこら辺は盗賊団の処遇をどちらの主導で行うかなど、政治的な要素が絡んでいるらしい。

その辺りを詮索しないで貰うための口止め料込みだからと、真面目な顔でフィレンクトさんは言う。
正直な物言いだが、若干脅しも含まれてると見るべきかもしれない。

从 ゚∀从「多い分には文句ねえから貰っとこうぜ」

( ゚д゚)「ハイン、お前は口を挟むな」

(‘_L’)「ええ、是非受け取ってください」

( ^ω^)「わかりました。有り難く受け取っておきますお」

詮索はするなと言われたが、そんな意味有り気な事を言われて仕舞うと否が応にも考えてしまう。
本来ならばメシューマはニューソク王国の1都市であり、
ニューソク王国の警護を司るニューソク騎士団が捕まえた犯罪者についてとやかく言う権利はないはずだ。

自治都市化が著しいとしても、それならそれで他国とも言えるニューソクの管轄に口を出すのはどうなのか。

389 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:01:42 ID:NMBuM8D.0

( ^ω^)(それが口出せるって事は、メシューマの権力が……)

等と考えていると、こちらを笑顔で見詰めるフィレンクトさんと目が合ってしまう。

(^_L^)

(;^ω^)

(^_L^)「……深読みはしないで頂けると助かります」

(;^ω^)「はい、わかっておりますお」

(;^ω^)(笑顔こええ……)

僕はその件について一旦考えるのを止め、盗賊団について気になっていた事を駄目元で聞いてみた。
また詮索はしないで欲しいと言われるのかと思ったが、その件についてはこちらの意見も聞きたがっていたようだ。

(‘_L’)「実際、彼らと戦って見てどう思われましたか?」

从 ゚∀从「クソよええ」

ξ゚听)ξ「ハイン、もう少し上品な言葉でね」

390 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:03:58 ID:NMBuM8D.0

(‘_L’)「お気になさらず。率直な感想でかまいませんよ」

( ゚д゚)「正直な所、あの程度の腕で盗賊団が勤まるのか疑問だったな」

( ゚д゚)「言葉通り、盗むだけならまだしも、隊商を襲ってとなると遠からず壊滅させられただろう」

ミルナさんの言葉に、フィレンクトさんは納得した様に頷く。
自分達の見解も、ほぼミルナさんと同じだとフィレンクトさんは言う。

(‘_L’)「なかなか口が固く、詳細はわかっておりませんが、背後に何かあるのは間違いないでしょうね」

口が固い事が逆に何かあることの証明だとフィレンクトさんは言う。
下っ端の誰1人ですら吐かないのは、裏に何かあると見るべきだろう。
ツンは簡単に吐かせてたが、あれは集合場所の事だけだったから吐いたのかもしれない。

僕達の方で、盗賊団との戦闘中や追い掛けている時に何か気付いた事はないかとフィレンクトさんが聞いてくる。

( ^ω^)「盗賊団自体からは何も。推測した事ならいくつかは」

別段隠しておくような事もないので、僕はツン達に話した推測をフィレンクトさんにも話す。
その位は既に考えられてる可能性もあるが、僕らがあの場にいた経緯は知らないだろう。

391 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:05:59 ID:NMBuM8D.0

(‘_L’)「なるほど。貴方方は急遽そこに向かったわけでもないのですね」

( ^ω^)「一定のペースで進んでましたから、あの日シラヒーゲさん達とすれ違うのは必然だったと思いますお」

フィレンクトさんは顎に手を当て、何かを考えるような仕草をする。
その目が値踏みをするかような感じで僕らの間を彷徨っていた。

ξ゚听)ξ「……ひょっとして、私達が盗賊団とグルって可能性も考えておられますか?」

(;^ω^)「ちょ、それは……」

ないと言おうとした僕だが、否定出来る明確な材料がない事に気付いた。
その場合の目的が何なのかすぐには思い付かないが、少なくとも現状、
こうやって騎士団長と面と向かって話す機会を得ている事は目的の1つと取れなくもない。

(‘_L’)「無論、可能性の1つとは考えてはいましたが……」

(;^ω^)「お……」

从 ゚∀从「考えていて、あんたは1人で俺らと会ってんの? それはちょっと軽率じゃねえか?」

392 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:06:56 ID:NMBuM8D.0

フィレンクトさんの言葉に気分を害したのか、ハインさんが挑発気味に尋ねる。
加速度的に悪くなる空気に、僕はいつでもハインさんを止められる様に身構えた。

(‘_L’)「そう思われますか?」

从 ゚∀从「素手の相手に負けるわけないってか?」

( ゚д゚)「……止めておけ、ハイン。フィレンクトさんも、少々悪ふざけが過ぎませんか?」

(‘_L’)「……失礼、冗談が過ぎました」

(‘_L’)「どうも生きの良い若い者を見ると、試したくなってしまうのが悪い癖でして」

ξ゚听)ξ「あまりいいご趣味ではありませんね」

(∪^ω^)「わんお」

(‘_L’)「面目ない。貴方方の身元は保証されております。ブーン殿のお陰でね」

( ^ω^)「……そう言えば最初に名乗りましたおね、ヴィップの魔法道具屋って」

393 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:09:23 ID:NMBuM8D.0

若干含みのあるフィレンクトさんの物言いを、気付かぬふりをして流す。
よくよく考えれば僕の身分は証明するでもなく、ソクホウなら知っている人は知っているのだ。
僕がバーン=ホライゾンの孫である事を。

僕が1人でここに来たがった理由の1つはそれである。
正直、王宮方面に来るのはあまり好ましくない展開も有り得るので、避けるべきだったかもしれない。
フィレンクトさんが最初から僕の事を知っていたかどうかわからないが、知っていてもおかしくない身分だ。

(‘_L’)「冒険者のお三方はなかなかご優秀なようですね」

(‘_L’)「どうです、騎士団に入られませんか? その気があられるならば歓迎いたしますが」

从 ゚∀从「興味ねえ」

( ゚д゚)「ハイン」

ミルナさんは明らかに不機嫌なハインさんを窘め、評価は有り難いが、
まだ冒険者としてやることがあるからと丁重にお断りを入れる。

(‘_L’)「そうですか。貴方方ならばすぐにでも師団長を務められるくらいにはなれると思うのですが残念です」

( ゚д゚)「世辞は結構だ。天下のニューソク騎士団なら我々程度の腕前の者はいくらでもいるだろう?」

394 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:11:01 ID:NMBuM8D.0

(‘_L’)「お世辞というわけではないのですがね……」

(‘_L’)「最近は世が平和な事もあり、実戦経験の少ない者が多いので、冒険者としての経験は大きいのですよ」

勿論、平和なのは良い事なのですがとフィレンクトさんは言い添える。
有事に備えるには、訓練だけでは十分ではないと危惧されているようだ。

(‘_L’)「だから、いざ実戦となると舞い上がって仕舞ったりする」

(‘_L’)「この間の様に、いきなり斬りかかるような愚行を犯してしまう場合もあったりとね」

あの時はすみませんでしたとまた頭を下げるフィレンクトさんに、僕は気にしてませんからと答える。
想定外の事だったのだろうし、誤解しても仕方がなかった面もあると思う。

( ^ω^)「騎士って、戦う時に必ず名乗りを上げるわけではないんですおね」

(^_L^)「流石に実戦でそんな悠長な事はやりませんよ。一騎打ち等、名を示す必要がある場合は名乗りますが」

それから僕らは世間話程度に少し話をし、フィレンクトさんの部屋を辞する事にした。

(‘_L’)「そうそう、忘れておりました」

( ^ω^)「お?」

395 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:12:35 ID:NMBuM8D.0

(‘_L’)「ブーン殿のお仲間の……ジョルジュさんでしたか。あの方が訓練場の方にいらしております」

(;^ω^)「は? いや、何で……」

そういえば馬車から落っことした時、追い付いて来てとは言ったが、追い付くも何も目的地は告げていなかった。
だからジョルジュさんは、恐らく僕らが必ず来るであろうここにお邪魔する事にしたのだろう。
ジョルジュさんにしては冴えていると思う。

ξ゚听)ξ「じゃあ、帰りましょうか」

(;^ω^)「いや、流石に迎えに行ってあげるお?」
つ∪^ω^)「わんおー」

僕は渋るツンを宥め、訓練場の方に向かう。
案内は他の騎士の人がしてくれた。

武器も既に返却済みなのは、信用されているのだと考えていいのだろう。
  _
(#゚∀゚)「どぉぉぉりゃッ!」

(;=゚д゚)「ぐっ……」

396 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:14:04 ID:NMBuM8D.0

案内されたのは屋外訓練場のようで、そこで見覚えのある顔同士が闘っていた。
丁度決着が付いた所らしく、ジョルジュさんが倒れている騎士の方に手を伸ばす。
  _
( ゚∀゚)「足技はまずかったか?」

(;=゚д゚)「いや、実戦に卑怯も何もないラギ。勉強になったラギ」

从 ゚∀从「次、俺な。誰かやろうぜー」

(;^ω^)「ちょ、ハインさん。いつの間に混ざってんですかお」

どういう状況なのかを聞く暇もなく、いつの間にがハインさんが訓練場に降り、戦闘準備を始めている。
当然、訓練場にいた騎士達は何事かと身構えるが、ジョルジュさんが自分の連れだと説明すると、
騎士達は警戒を解き、手合わせに応じてくれる。
  _
( ゚∀゚)「おう、やっと来たか」

( ^ω^)「何か既にえらく馴染んでますおね」
  _
( ゚∀゚)「まあな。騎士ってもっとお堅いかと思ってたけど、案外気さくでいいやつらだよ」

397 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:15:54 ID:NMBuM8D.0

先のような経緯で詰所を訪れたジョルジュさんが、運良く最初に出会ったのが僕に斬りかかって来た騎士、
トラギコさんだったらしく、これ幸いとばかりに約束の手合わせを始めたという。
  _
( ゚∀゚)「まあ、俺の全勝だったけど」

(=゚д゚)「悔しいが力及ばなかったラギ。やはり実戦経験の差は大きいと痛感したラギよ」

ジョルジュさんはトラギコさんだけでなく、他の騎士とも手合わせをし、その力を存分に示したらしい。
勝っても驕らず、さらっとした態度のジョルジュさんは騎士達にも尊敬に値すると一目置かれているようだ。

( ゚д゚)「そういう事なら俺も1勝負願いたい所だが……」

(=゚д゚)「あんたも相当やりそうラギね。こちらとしても願ったり叶ったりラギよ」

( ゚д゚)σ「その前にあれを止めるべきかな」

(=゚д゚)「ラギ?」

从 ゚∀从「おら、次来い、次。あ? もう十分? 俺がまだ十分じゃねえんだよ。いいから来い」

(;=゚д゚)「お願いするラギ……」

398 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:18:38 ID:NMBuM8D.0

ξ゚听)ξ「あれは私が相手するわ。向こう半分場所借りますね」

瞬く間に数人の騎士を打ち倒していたハインさんの元にツンが向かう。
久しぶりの手合わせに、2人とも嬉々として打ち合い始めた。

(;=゚д゚)「どっちもかなり速いラギね。お前達って、ひょっとして有名なパーティーラギか?」
  _
( ゚∀゚)「いや、しがない一冒険者だぜ。ツンに至っては冒険者ですらないけど」

(;=゚д゚)「そうラギか。世界は広いラギね……。俺ももっと訓練しないとラギよ……」
  _
( ゚∀゚)「んじゃ、もう一勝負と行くか?」

( ^ω^)「……何だろうね、この流れ。僕、またやることなくて空気だおね」

(∪^ω^)「わんおー」

何故か皆で騎士団と共に訓練する流れになっていたが、魔法使いの僕は加わる事も出来ず、
盛り上がっているのに水を差すのも無粋なので、わんわんおと共におとなしく座って見学する事にした。

( ^ω^)「加わってもいいけど、僕の戦い方じゃあんま向こうの訓練にはならなそうだしね」
400 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:21:28 ID:NMBuM8D.0

休憩中の騎士の人に話を聞いたが、彼らは各師団の若い騎士達らしく、
まだまだ未熟な自分達が弱いだけで騎士全体が弱いのではないと少し悔しそうであった。

それはあながち嘘でもないのだろう。
多分、もっと実戦経験を積んだ騎士ならジョルジュさん達もそう簡単には勝てないはずだ。

とはいえ、訓練の相手をしてもらえるのは有り難いし、ジョルジュさん達の強さには敬意を払うとも言っていた。

( ^ω^)「ジョルジュさんじゃないけど、僕も騎士ってもう少し偉そうに構えてる人ばっかだと思ってたお」

(∪^ω^)「わんお」

ジョルジュさん達のお陰で、何故か僕までかなりの敬意を払われている様で、
いつの間にか僕の前にはお茶とお菓子が出されていた。

( ^ω^)「おー、これはパイかおね。ヴィップじゃあんまり見ない香りで、つーか、デケえな、これ」

(∪^ω^)「わんわんお!」

( ^ω^)「オレンジパイみたいだから、わんおには合わないと思うお。美味いけど、ちょっと甘酸っぱいお」

(∪´ω`)「わんおー」

401 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:23:15 ID:NMBuM8D.0

( ^ω^)「骨っ好あげるから、これで我慢するお」

(∪*^ω^)§「わふわふお!」

( ^ω^)「お、騎士さんの手作りなんですかお? 騎士さんでも料理するんですおね」

( ^ω^)「ああ、配給の食事じゃ足りないんですおね。わかりますお」

僕は騎士さん達と世間話をし、退屈する事無く訓練が終わるまで時間を潰す事が出来た。
騎士とは到底縁がないような料理の話で盛り上がれたのは意外な事であった。

( ^ω^)「近い内に薬草パン売りに出す予定ですんで、良かったら買いに来てくださいお」

ξ゚听)ξ「それじゃあ、お邪魔しました。場所貸していただいてありがとうございます」

(*=゚д゚)「い、いえ、見事なお手前でしたラギ。今度是非、個人指導お願いしますラギ」

从 ゚∀从「おう、いいぜ。血反吐を吐くまで付き合ってやるよ」

(;=゚д゚)「いや、あんたじゃなくて……」

402 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:26:19 ID:NMBuM8D.0
  _
( ゚∀゚)「またな。1度酒でも飲もうぜ」

( ゚д゚)「互いに精進しよう」

(∪^ω^)「わんわんお!」

僕達は騎士団の詰所を後にし、宿へ戻る。
予定外の事であったが、皆楽しそうにしていたので良かったと思う。
  _
( ゚∀゚)「あー、疲れた。腹も減ったが、まずは一っ風呂浴びてえな」

从 ゚∀从「暴れ足りねえ。やっぱあのフィレンクトってやつを引っ張り出すべきだったか」

ξ゚听)ξ「止めときなさいよ、あれ、一応お偉いさんなだから」

( ゚д゚)「やつは少々腹の読めない相手だったな」

从 ゚∀从「俺は気に入らねえな。何考えてやがんのやら」

( ^ω^)「人望はあるみたいですお。若い騎士達からの評判は良かったですお」

403 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:28:30 ID:NMBuM8D.0

あの時、盗賊団を殲滅しに現れたフィレンクトさんは、特定の師団を率いてたわけではなく、
各師団の若い騎士を集めて野外演習をしていたらしい。
単に飾りに収まらず、現場に出て共に汗を流す姿は若い騎士達の良き手本となっているようだ。

ξ゚听)ξ「現場からの叩き上げで上り詰めたってとこかしらね」

( ^ω^)「腰の低い丁寧な人だけど、貴族っぽくはなかったおね」

お飾りの団長なら、王族や貴族が付く事もあるのかもしれないが、フィレンクトさんはそんな雰囲気ではなかった。
騎士団はこの国の武を司る集団だ。
やはり実力が伴わないと務まらないだろう。

僕達はソクホウの町並みに目を向けながら宿屋まで歩いて帰った。

('(゚∀゚∩「おかえりなさいだよ。この人が5人目だね、把握したよ」

僕はナオルヨさんに先ほどはいなかったジョルジュさんを紹介し、部屋に戻る。
その後しばらく休憩してから、外に食事に出た。

( ^ω^)つU「長旅お疲れ様でしたお! 乾杯!」
  _
( ゚∀゚)U( ゚д゚)U从 ゚∀从Uξ゚听)ξU「乾杯! お疲れー」

404 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:31:10 ID:NMBuM8D.0

僕達は食事を取りながら明日以降の事について話し合う。
ひとまず確定なのは武器職人の所に向かう事だが、それ以降は全く予定がない。

(* ゚д゚)「武器職人に会ったら、すぐにヴィップに戻るつもりなのか?」

(*^ω^)「いえ、1日ぐらいは観光とかパン売りとかやってみたいですお」

(∪^ω^)「わんお!」

ξ*゚听)ξ「ミルナさん達はどうされます?」

(* ゚д゚)「武器職人と会っても進展がない可能性もあるからな。しばらくは滞在するつもりだ」
  _
( ゚∀゚)「丁度良い訓練相手も出来たしな。退屈はしなそうだ」

从*゚∀从「留まるんなら、ギルドにも顔出さねえとな」

(* ゚д゚)「そうだな。滞在期間を考えると、クエストに出て金も稼がないと」
  _
( ゚∀゚)「太っ腹な騎士団長のお陰で、しばらくは大丈夫じゃね?」

406 名前:>>405はミス:2012/03/23(金) 23:33:42 ID:NMBuM8D.0

(* ゚д゚)「いや、あの分は武器の強化に回したいからな。生活費は稼がないといかん」
  _
( ゚∀゚)「えー、お小遣いは無し? 折角おっぱ──」
_  ヘブッ!?
(゚∀゚(#UU三

ξ*゚听)ξつ从*゚∀从つ「悪い、手が滑った」

(*^ω^)「その、サースガって武器職人の腕が良かったら、そこで強化依頼するんですかお?」

(*^ω^)「もれなく変なギミック付きそうですけど」

(* ゚д゚)「そうだなあ……。あまり変なのは付けて貰っても困るからな」

(* ゚д゚)「手入れが大変だったり、強度が落ちてたりして実戦に耐えられないのは問題外だ」

(*^ω^)「トソン君の武器見た限りでは、滅茶苦茶振り回してましたし強度の方は問題なさそうでしたお」

ξ*゚听)ξ「手入れもあの大雑把なトソンが出来るくらいだから、難しくなさそうですね」

从*゚∀从「俺は斬れ味と耐久力さえ上げてもらえれば余計なもんはいらねえ」

407 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:35:32 ID:NMBuM8D.0
  _
( ゚∀゚)「ここで掘り出し物を探すって手もあるしな」

(* ゚д゚)「うむ、明日は武器職人に会った後に商業区域を回ってみるか」

(*^ω^)「騎士団の施設周辺の方が武器職人はいるかもしれないですけどね」
  _
( ゚∀゚)「あ、騎士団長に紹介してもらえばよかったんじゃね?」

(* ゚д゚)「そこまで親しくもないのに図々し過ぎるだろ」

从*゚∀从「騎士団の下っ端にでも聞いとけば良かったな」

ξ*゚听)ξ「あら? そういえばブーン、あんた結構騎士の人と話盛り上がってたじゃない?」

(*^ω^)「盛り上がってたけど、主に料理の話だお」

ξ;゚听)ξ「何でわざわざあんなとこで料理の話なのよ……」

(*^ω^)「お茶請けに出されたパイが独特で美味しかったんだお」

(∪^ω^)「わんお!」

408 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:37:03 ID:NMBuM8D.0

(* ゚д゚)「わんおちゃんには、この程よく焼けたお肉をあげよう」
つ∪*^ω^)「わんわんお!」

(*^ω^)「あ、そうだ、ツン。今日はわんお、ツンの方で預かってお」

ξ*゚听)ξ「え? どうして?」

(*^ω^)「今日はこの後、男同士で部屋で飲み直すからわんおが寝れなくてかわいそうだと思うお」
  _
( ゚∀゚)「おろ? 初耳なんだけど? いや、嬉しい誘いだから断らねえけどさ」

(* ゚д゚)「わんおちゃんはいてもいいんじゃないか?」

ξ*゚听)ξ「ハインがいいなら私はかまわないけど」

从*゚∀从「いいぜ、俺は。わんすけをもっふもふにしてやろう」

(∪;^ω^)「わんおー」

(* ゚д゚)「わんおちゃんはいてもいいんじゃないか?」

409 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:38:07 ID:NMBuM8D.0

(*^ω^)「じゃあ、頼むお」

ξ*゚听)ξ「うん」
  _
( ゚∀゚)「お前も成長したな、ブーンよ……」

(*^ω^)「いきなり何ですかお?」
  _
( ゚∀゚)「男同士でしか話せないような話をしたいんだな。わかってるさ、ドンと来いだ」

ξ*゚−゚)ξ「……」

(*^ω^)「……まあ、そんなとこですお」

ξ*゚д゚)ξ「……」

(* ゚д゚)「わんおちゃんはいてもいいんじゃないか?」

僕達は食事を終え、部屋に戻ると宣言通り飲み直すことにした。
帰り際に酒とつまみは買っておいたから、準備は万端だ。

飲み初めてしばらくは取留めのない話に終始していたが、ミルナさんは僕の突発的な行動を気にしているのか、
話を切り出すタイミングを窺っている様にも見えた。
411 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:39:50 ID:NMBuM8D.0

( ^ω^)「そりゃ、気になりますおね、急にこんな事して」

( ゚д゚)「まあな。ブーンの事だ。何かしら考えがあっての事だとは思うが、理由は聞いてもいいのか?」
  _
( ゚∀゚)「あれ? 猥談したかっただけじゃねえの?」

( ^ω^)「簡単に言えば、理由はツンですお」

( ゚д゚)「ツン? どういう事だ?」

( ^ω^)「今日はすっごく落ち込んでると思うんですおね、ショボンの事で」

一見、何でもないように振舞っていたツンだが、内心はかなり落ち込んでいると思う。
昔から、ツンは寂しがりな所があったのだ。

( ^ω^)「口ではああ言ってましたけど、実際はかなり堪えてると思うんですおね」

僕でさえ、ショボンの事を考えると漠然とした寂しさに襲われるくらいだ。
必然的に1人になり、色々考えてしまう事の多い寝る時なんかは耐え切れないかもしれない。

あの時ショボンを笑って見送ったのは虚勢ではないし、ショボンがそうして欲しいだろうと考えたのも本当の事だ。
けれども、表に出さずとも寂しいものは寂しいものである。

412 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:41:02 ID:NMBuM8D.0

( ゚д゚)「それでわんおちゃんをツンに渡したのか」

( ^ω^)「そういう事ですお。少しでも気が紛れればと思ったんですお」

僕の説明に、ミルナさんは納得してくれたようだ。
散々わんわんおをこっちの部屋に置く事を主張されてたのに、無視して申し訳なかったと思う。

( ゚д゚)「そういう事なら仕方ないだろう。しかし、お前は大丈夫なのか?」

( ^ω^)「お? 僕ですかお?」

( ^ω^)「僕は案外ドライなんで、大丈夫ですお」
  _
( ゚∀゚)「寂しくて眠れないなら俺を抱き枕にして寝てもいいぞ?」

( ^ω^)「慎んでお断りさせていただきますお」

本当は少し寂しいし、色々と考えて眠れなくなりそうな気はしてるが、男としては強がっておくべきだろう。
何も考えずに寝れるように今夜は飲み過ぎようと思ってたりもする。
  _
( ゚∀゚)「けどさあ、俺にはツンが落ち込んでたようには全然見えなかったんだけどな」

413 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:42:14 ID:NMBuM8D.0
  _
( ゚∀゚)「からかったらいつも通りの反応だったじゃん?」

( ^ω^)「あれ、いつも通りなら肋骨何本か持ってかれてますお」
 _
(;゚∀゚)「マジで? 不用意にからかうの止めとこうかな」

( ゚д゚)「まあ、とにかく、良い機会だからもう少し飲もうか」

( ^ω^)「お付き合いしますお」
  _
( ゚∀゚)「よし、朝まで飲むぞ」

(;^ω^)「流石にそれは……」

( ゚д゚)「明日は武器職人に会わねばならんしな。酒が残らん程度に切り上げよう」

( ^ω^)「そんな感じでお願いしますお」
  _
( ゚∀゚)「しょっぺえなあ。仕方ねえ、それで我慢してやるか」

( ゚д゚)「お前は酒だけは強いからな」

414 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:43:59 ID:NMBuM8D.0
  _
( ゚∀゚)「だけとは何だ、だけとは。腕もあっちの方も俺は強いぜ?」

( ゚д゚)「子供に悪い影響を与えるような品のない発言は止せ」
  _
( ゚∀゚)「何だよ、ブーンも俺らの酒に付き合えるくらいでガキじゃないんだぜ?」
  _
( ゚∀゚)「で、ブーンはツンとどうなの? どこまで行ってんの?」

( ^ω^)「お? ツンも一緒にソクホウに来てますお?」
  _
( ゚∀゚)「そういうテンプレートなボケはいいから」

完全に酔っ払い親父モードで絡んでくるジョルジュさん。
一見すると酔っている様に見えない顔だが、飲むペースは早いし、僕らの中で一番飲んでいるはずだ。
  _
( ゚∀゚)「そういうんじゃなくてさ、あるじゃん、ほら、AとかBとかCとかDとかEとか」

( ゚д゚)「どこまで行くつもりだ。お前は子供か」

いつの間にか矛先が僕から逸れ、ジョルジュさんとミルナさんは言い合いを始める。
最終的にジョッキの角でミルナさんがジョルジュさんを沈めて決着が付いたが、
僕はそれを仲が良いなと微笑ましい気持ちで眺めていた。

415 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:45:15 ID:NMBuM8D.0

(* ゚д゚)「ブーンも結構酔ってる様だな」

(*^ω^)「みたいですおね。かなり飲んだ気がしますお」

今日は多分、人生で一番の量を飲んだ気がする。
意外と飲める事がわかったが、そろそろ限界なのだろう。
思考が上手く繋がらない。

(* ゚д゚)「しかし、ジョルジュではないがブーンはツンと恋仲ではないのか?」

(*^ω^)「違いますお」

(* ゚д゚)「そうか? 見てると微笑ましいぐらい仲が良いと思うのだが」

(*^ω^)「ツンは家族みたいなものですお」

(*^ω^)「小さい頃からいつも一緒にいるし、言わなくても何でも理解してくれるし、頼りになりますお」

(* ゚д゚)「うーむ……そうか……お前はやはりまだ子供なのだな」

(*^ω^)「お?」

416 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:46:49 ID:NMBuM8D.0

(* ゚д゚)「いや、何でもない。家族なら大切にしないとな。ずっと側にいてやれよ」

(*^ω^)「お? 勿論ですお」

(* ゚д゚)「しかし、幼馴染か。一応、俺とジョルジュも幼馴染なのだが、お前達とは全然違うな」

(*^ω^)「そうだったんですかお?」

(* ゚д゚)「ああ、同じ村の出身だ。と言っても、それほど仲が良かったわけじゃなかったんだがな」

村にいた頃は競い合うを通り越して争う仲だったとミルナさんは言う。

(* ゚д゚)「当時は知らなかったんだが、ジョルジュは幼い頃から冒険者になりたかったらしくてな」

(* ゚д゚)「俺はその頃、そんな事は全く考えてなかったが、腕っ節だけは強くて」

(* ゚д゚)「それを知ったジョルジュが、強くなる為の特訓と称して俺にケンカを挑んで来たんだ」

(*^ω^)「何となく想像出来る姿ですおね」

(* ゚д゚)「しかし、ジョルジュは今でこそガタイはいいが、幼い頃はかなり身体が小さくてな」

(* ゚д゚)「毎度毎度、俺が完膚無きまでに叩き伏せてた」

417 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:48:06 ID:NMBuM8D.0

それでもジョルジュさんは懲りずに何度も何度も、事あるごとに挑んで来たらしい。

(* ゚д゚)「正直、修行と言われても何がしたいのかよくわからなかったし、煩わしくて仕方がなかった」

それでもミルナさんの真面目かつ強気な性格上、断る事もわざと負ける事も良しとしなかったのだろう。
そんな関係を何年も続け、ジョルジュさんにも成長期が訪れてミルナさんより背も大きくなり、
修行の成果もあったのか、ようやくジョルジュさんが勝つ日が来たという。

(* ゚д゚)「流石にその頃にもなると、日常茶飯事だし慣れていたので煩わしさはなくなっていてな」

(* ゚д゚)「むしろ、心のどこかで日増しに強くなるジョルジュと闘うのを楽しみにしていた」

(* ゚д゚)「いつか負ける日が来たら、今度は俺が挑んでやろうかと思っていたくらいだ」

しかしジョルジュさんはミルナさんに勝ったその日、これまで修行に付き合ってくれた礼を述べ、
自分が冒険者になりたいと思っている事を教えてくれたという。

(* ゚д゚)「その時は、だからどうしたと反射的に思ったよ」

(* ゚д゚)「自分の一方的な理由を押し付けて、修行と称して俺にケンカを吹っかけてたんだからな」

418 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:49:40 ID:NMBuM8D.0

(* ゚д゚)「しかしその一方、幼い頃から夢を持ち、ひたすら打ち込んで来たジョルジュが羨ましくもあった」

(* ゚д゚)「そう思った時、俺はあいつに尋ねていた」

(* ゚д゚)「俺も冒険者になれるだろうか、ってな」

それから2人は打ち解け、共に冒険者になる事を目指して切磋琢磨したという。
その後もしょっちゅうケンカしたが、共に村を出て、何とかここまでやって来れたとミルナさんは話を結ぶ。

(*^ω^)「人に歴史ありですおね」

(* ゚д゚)「そんな大層なものではないがな。まあ、時に想い出を語るのも悪くないものだな」

ミルナさんは少し照れくさそうに木製のジョッキに残っていた酒を一気に飲み干す。
僕は酒瓶を手に、ミルナさんのジョッキにおかわりを注ぐ。

(*^ω^)「そういえば、ハインさんは同じ村の人じゃないんですかお?」

(* ゚д゚)「あいつは……違う、数年前からちょっとした縁で行動を共にしている」

(*^ω^)「へー、ハインさんはどの辺の出身なんですかおね」

419 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:51:13 ID:NMBuM8D.0

(* ゚д゚)「南の方だな……」

(*^ω^)「おー、そうだったんですかお」

(* ゚д゚)「……ブーン、ハインにはあまり昔の事は聞いてやらんでくれ」

(*^ω^)「お?」

(* ゚д゚)「あいつは色々あったらしくてな。あまり昔の事は語りたがらないんだ」

(*^ω^)「お……」

そういえば、ソクホウに着いた時、ハインさんはソクホウに来たのは初めてらしいが、
自分がどの辺りの出身かとかの話は一切していなかった気がする。

過去を語りたがらない冒険者はそう珍しいわけでもないから、軽く流すべき話だったのだろうが、
ミルナさんの真剣な表情が少し気にかかった。
  _
(*>∀<)つU「うおらぁッ、ミルナッ! もう1勝負行くぞ!」

(;^ω^)「お!?」

突如ジョルジュさんが跳ね起き、ミルナさんの方に勢いよくジョッキを向ける。
どうやら1勝負というのは飲み競べの事らしい。

420 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:53:34 ID:NMBuM8D.0

(* ゚д゚)つU「ふん、良かろう。ブーン、合図を頼む」
  _
(*゚∀゚)つU「負けた方が今から女子部屋潜入な」

(;^ω^)「それは竜の巣穴に飛び込む様なものですお」

(* ゚д゚)つU「いいだろう。負けたらお前、女子部屋からわんおちゃんをそっと回収して来い」

(;^ω^)「予想外に乗り気!? いや、絶対バレるから止めときましょうお」

それから僕達は買い込んだ酒を飲み尽くしてしまうまで酒盛りを続けた。
朝まではかからなかったが、それでも結構な夜更かしをしてしまった。

酒の力もあってか思ったより話が盛り上がり、色々と馬鹿な話で楽しい時間を過ごせた。
本当はもう少し真面目な話もしようかと思ってたのだが、こういうのもいいものだと思う。
  _
(*-∀-)(*-ω-)(* -д-) zzz

お陰で僕は、寂しく思う暇もなく安らかに眠る事が出来た。



     第十九話 栄えし美しきニューソクの都 終

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