- 254 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:22:35 ID:.GRteUcU0
〜 メシューマ近郊の街道 〜
( ^ω^)「火はこれで良しと」
( ^ω^)「即席だけど、これで何とかなるおね」
( ^ω^)「よし、早速焼くお!」
ξう-)ξ「うるさいわね……朝っぱらから何やってんのよ?」
( ^ω^)「お、ツン、起きたのかお。おはようだお」
( ^ω^)「何って、見ての通りだお」
ξ゚听)ξ「見ての通りって、何か窯みたいなのが出来てるわね……」
第十七話 再会のメシューマ
- 255 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:23:48 ID:.GRteUcU0
( ^ω^)「この窯で今からパンを焼くんだお!」
僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。
ξ゚听)ξ「パンって……私達、今街道沿いで野宿してる最中よね?」
彼女の名はツン。
隣の武術道場の娘で、いわゆる幼馴染というやつだ。
( ^ω^)「そうだけど、早めに出発すればもう朝のうちにメシューマに着くお」
僕達は今、騎士になる為に王都へ向かうショボンを送っている最中だ。
旅は既に4日目の早朝である。
騎士学校の入学試験に間に合うように時間的には余裕を見て出発したので、
馬車の旅だがここまでのんびりとしたペースで進んでいる。
普通のペースなら、先日の夜半頃にはメシューマの町に着いているはずだが、馬車もあるし、
宿代節約も兼ねてメシューマの近くで野宿をしていた。
- 256 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:25:16 ID:.GRteUcU0
ξ゚听)ξ「まあ、今から出発すれば着くでしょうけど、それがどうパンと繋がるのよ?」
( ^ω^)「今から焼くのはただのパンじゃないお。薬草パンだお」
ξ゚听)ξ「うん、それで?」
( ^ω^)「ヴィップ名物薬草パンという名目で売り出して、路銀を稼ぐんだお!」
折角馬車を使って遠出をするのだから、2点間貿易みたいな事をやりたかったのだが、
ヴィップからメシューマに持って行く特産品が思い浮かばず、代わりに薬草パンを売る事を思い付いたのだ。
薬草としては失敗作だったが、単にその場で食べるパンとしては薬草パンは物珍しく、
商品として成り立つのではないだろうか。
ξ゚听)ξ「なるほどね。魔法道具屋っぽくはないけど」
( ^ω^)「背に腹は変えられんお」
別に路銀が足りないわけでもないのだが、ただ観光だけというのも僕としては物足りないものがある。
色々と商品の可能性を試したり、僕自身の商売人としての修行にもなるから丁度いい。
ついでにサンライズの宣伝にもなるはずだ。
- 257 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:27:47 ID:.GRteUcU0
ξ゚听)ξ「まあ、いいんじゃないの。何か手伝う?」
( ^ω^)「あとは焼くだけだから大丈夫だお。それよりそろそろショボン達起こしといてくれお」
現在、この馬車には僕とツン、それにショボンとわんわんおが乗っている。
比較的安全な道なので、護衛は雇っていない。
万が一モンスターと遭遇しても、僕らだけでもそれなりに戦える。
ξ゚听)ξ「わかったわ。あんたは寝なくて大丈夫なの?」
( ^ω^)「今日はメシューマで1泊の予定だし、1日ぐらい大丈夫だお」
基本は野宿なので、夜は交代で見張りをしながら休息を取っている。
パンを焼くためにも昨夜は僕が順番の最後になるように調整していたから、全く寝てないわけでもない。
( ^ω^)「さて、焼きあがりはどうかお?」
僕は岩を積んで魔法で固定して作った即席の窯からパンを取り出す。
端の方に並べたものには多少の焼きむらがありそうだが、全体的には色艶良い、
美味しそうなパンが焼き上がった。
- 258 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:29:48 ID:.GRteUcU0
(´・ω・`)「おはよう、やけに香ばしい匂いがするね」
(∪^ω^)「わんわんお!」
( ^ω^)「おはようだお。2人とも、朝ご飯は出来てるから顔洗って来いお」
僕は焼き上がったばかりの薬草パンを木製のバスケットに盛り、ツンに手渡す。
( ^ω^)「焼き立ては美味いお」
ξ゚听)ξ「これ、売り物じゃなかったの?」
( ^ω^)「ちょっと焦げたりしたやつだお。商品用はどんどん焼くから心配いらないお」
ξ゚听)ξ「形も何種類かあるのね」
( ^ω^)「今回のは薬草用途を度外視だから、甘いクリーム入りとチーズ入りも焼いたお」
ξ*゚听)ξ「そうなの? どれがクリーム?」
( ^ω^)「そっちの楕円のやつだお。尖ったのがチーズだお」
- 259 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:32:51 ID:.GRteUcU0
(´・ω・`)「じゃあ、僕はプレーンなのを。わんおちゃんはチーズかな?」
(∪*^ω^)「わんわんお!」
( ^ω^)「わんおには骨っ好も用意してるけど、パンでもいいかお」
顔を洗って戻って来たショボン達も加え、皆で朝食を取る。
焼き立ての薬草パンは、外の香ばしい、パリっとした食感と、
中のふっくらした食感が調和して満足の行く焼き上がりだった。
ξ*゚听)ξ「美味しいわね」
(∪*^ω^)「わんわんお!」
(´・ω・`)「ブーンは魔法道具屋よりパン屋にでもなった方が良かったかもね」
( ^ω^)「褒め言葉として受け取っておくお。まだあるから遠慮せず食えお」
僕達は朝食を食べながら、今日の予定について話し合う。
( ^ω^)「メシューマに着いたら、まずは商売の許可取ってパンを売るお」
- 260 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:35:56 ID:.GRteUcU0
メシューマには市場の一角に露店を広げられるスペースがあり、営業許可証込みで格安で借りられる。
メシューマはニューソク大陸の中央にあり、陸の交通の要所とも言える町で人の行き来は大陸随一だ。
地方から出て来た商売人がスペースを借りて店を広げるのは日常的なことである。
( ^ω^)「ぶっちゃけ、種類も少ないし大量に売るわけじゃないから僕1人でいいんだおね」
手伝うと言ってくれた2人に、折角だから観光して来ればいいと僕は勧める。
上手くいけば昼過ぎには薬草パンも売り捌けるだろうから、午後からは一緒に僕も観光に回ろうかと思う。
上手くいかなかったら売るのを諦めて自棄食いするから、どっちにせよ午後は時間が空く予定だ。
ξ゚听)ξ「いいの? 私は別に午後からでも……」
( ^ω^)「メシューマなんて滅多に来ないんだから、色々見てくればいいお」
( ^ω^)「それに、ショボン1人観光に行かせるのも何だか寂しいお?」
(´・ω・`)「別に僕も手伝ってもいいんだけど……まあ、確かに、しばらくは来られないだろうからね」
そうさせてもらうとショボンが言うと、ツンも納得してくれた様だ。
どうしても僕1人でやりたいわけでもないのだが、それほど忙しくならないと思うし、
むしろものすごく暇だった場合を考えると1人の方がいいかと思う。
- 261 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:38:09 ID:.GRteUcU0
( ^ω^)「あ、わんおには手伝ってもらおうかお」
(∪^ω^)「わんお!」
予定がまとまった所で、僕らは朝食の後片付けをし、メシューマの町を目指して馬車を走らせた。
目論見通り、朝の早いうちにメシューマに到着し、商工会の本部で露店の場所も借りられた。
( ^ω^)「朝から人が結構並んでたおね」
(´・ω・`)「そりゃメシューマの市場っていったら、常時人で賑わうとこだからね」
(´・ω・`)「露店スペース借りるのも、結構な倍率のはずだよ」
ξ゚听)ξ「さっきちょっと商工会の人に聞いたけど、南から来る予定だった商人の一団が来られなくなって」
ξ゚听)ξ「それでたまたま今日、スペースがかなり空いちゃったって話みたいね」
( ^ω^)「そりゃ運が良かったお。幸先いいお」
(∪^ω^)「わんわんお!」
- 262 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:40:23 ID:.GRteUcU0
(´・ω・`)「僕としては、その辺の事情とか調べてなかった君の迂闊さに頭を抱えるけどね」
ξ゚听)ξ「ホントね。スペース借りられなかったら、この大量のパンはどうするつもりだったのよ」
(;^ω^)「ま、まあ、結果オーライだお。早速市場に行ってみるお!」
僕達は馬車を引いて市場へ向かう。
与えられたスペースに馬車を止めると、早速開店準備を始める。
馬は商工会の厩舎に一時的に預ける事にした。
ξ゚听)ξ「馬預けるのも無料なのね。ここってホント、商売人の町って感じよね」
( ^ω^)「色々と商売しやすくなる様に整えられてるおね」
メシューマは商人の町と言ってもいいくらい、商工会の力が強い。
今の商工会の議長が町長も兼ねていたはずだ。
(´・ω・`)「そんなとこでホントに1人で大丈夫? そういう町なら客の目も肥えてると思うよ?」
( ^ω^)「売るのはパンで、難しい商品を扱うわけでもないから平気だお」
( ^ω^)「それに、わんおもいるから1人じゃないお」
(∪^ω^)「わんわんお!」
- 265 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:42:46 ID:.GRteUcU0
少し心配げな顔をしていた2人を笑顔で観光に送り出し、僕はわんわんおと開店準備を続ける。
( ^ω^)「ここは人通りも多いし、知らないとこだからわんおはこの上でおとなしくしてるお?」
(∪^ω^)「わんお!」
積んだ木箱に布を敷き、その上にわんわんおを乗せる。
首には薬草パンの宣伝文句を書いたプレートを提げさせた。
(∪^ω^)
/つ└┘|
c( ,,O|ウマイ.|つ
 ̄ ̄
( ^ω^)「これ、見えるように座っててお。でも、苦しかったら外してもいいお」
(∪^ω^)「わんお!」
大丈夫とでも言うかの様にわんわんおは元気良く吠え、プレートを立てて座る。
僕はわんわんおが寄り掛れる様に、背後にも木箱を積んだ。
( ^ω^)「広告塔はこれでいいおね。さあ、商品を並べるお」
- 266 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:44:02 ID:.GRteUcU0
ヴィップ名物薬草パンと大きく書いた布を馬車に張り、テーブルの上にディスプレイ用としてパンを並べる。
選ぶほどの種類はないから、全て並べる必要はないだろう。
(゜д゜@「あらやだ、薬草パン? そんなの初めて聞いたわ」
( ^ω^)「お、いらっしゃいませですお。美味しいですお、お1ついかがですかお?」
さあ開店だと呼び込みを開始しようかと思ったら、観光客とは思えない、
近所のおばちゃんが早速興味を持ってくれた様だ。
僕は早速薬草パンの売込みを始める。
(゜д゜@「あらやだ、ヴィップでこれ、流行ってるの?」
( ^ω^)「残念ながらまだ流行ってませんお。これから流行らす予定なんで」
(゜д゜@「あらやだ、じゃあ、新製品? 美味しいのかしら?」
( ^ω^)「味は太鼓判を押しますお。そうだ、ちょっと味見してみませんかお?」
僕はテーブルにおいてあった薬草パンを手早くナイフで小さく切り、木串をさして勧める。
おばちゃんはそれを受け取り、口に運ぶ。
(゜д゜@「あらやだ、これ、なかなかいいわね。甘みの中にほのかに苦味があって」
- 267 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:45:59 ID:.GRteUcU0
( ^ω^)「お姉さん、舌が肥えてますおね。その僅かな苦味が薬草パンの特徴ですお」
( ^ω^)「そこに気付くとはお目が高いですお」
(゜д゜@「あらやだ、そうかしら? まあ、伊達にここで20年も飯屋やってないわ」
( ^ω^)「ちなみに、もっと甘みが欲しい方用のクリーム入りや、ボリューム満点のチーズ入りもありますお」
(゜д゜@「あらやだ、良さそうね。それじゃあ、それ、3種類とも2つずつ頂こうかしら」
( ^ω^)「ありがとうございますお!」
(∪^ω^)「わんわんお!」
(゜д゜@「あらやだ、何、この子? 店員さん?」
( ^ω^)「うちの看板息子ですお。撫でると幸せになると評判ですお」
(゜д゜@「あらやだ、よしよし」
(∪^ω^)「わんお」
- 268 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:47:37 ID:.GRteUcU0
( ^ω^)「お待たせしましたお。こちら商品ですお」
(゜д゜@「あらやだ、はい、これ、お代ね」
( ^ω^)「ありがとうございましたお。ヴィップにお越しの際は、魔法道具屋サンライズをよろしくですお」
あれよという間に最初のお客さんの来訪、最初の販売に成功した。
しかも妙に声の大きいおばちゃんだった事が幸いしてか、
今のやり取りを耳にしていた人達が興味深げに店に寄って来てくれた。
(客)「兄ちゃん、俺も貰おうか。普通のやつくれ」
( ^ω^)「ありがとうございますお!」
(客)「クリームのやつ3つくれ」
( ^ω^)「はい、少々お待ちくださいお」
(客)「試食してみたけど美味いね。全種類5つずつくださいな」
( ^ω^)「ありがとうございますお。少々お待ちお」
- 269 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:49:08 ID:.GRteUcU0
驚く事に薬草パンは予想以上の売れ行きを誇り、1人で客を捌くのにてんてこ舞いであった。
こんな事ならツン達に手伝ってもらえばよかったと若干の後悔が浮かぶ。
しかし、客の中にはサンライズの事を知っている人もいたり、
昔ヴィップに冒険者として滞在していたという人も来てくれたりと、
僕がこれまでして来た事が少なからず生きている事を知り、嬉しく思えた。
(;^ω^)「ありがとうございましたおー。魔法道具屋サンライズをよろしくですお」
(∪;^ω^)「わんおー」
ひっきりなしに訪れる客を何とか捌き切り、一区切り付いた頃にはパンはほぼ売り切れていた。
僕も疲れたし、多くの人に撫で回されたわんわんおも疲れていたので、この辺で店を閉めようかと考える。
(;^ω^)「これだけ売れれば十分過ぎるお。サンライズの宣伝も出来たし、少し早いけど店仕舞いするかお」
(∪;^ω^)「わんわんお」
ζ(゚ー゚*ζ「あれ、もうお店閉めちゃうの?」
( ^ω^)「お、商品がもうなくなって……って、デレちゃん?」
- 270 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:51:23 ID:.GRteUcU0
背後からの声に振り向いた僕の前にいたのは、ヴィップの教会で出会った自称旅の僧侶ことデレであった。
意外な再会に戸惑う僕は思わずその顔を凝視してしまうが、デレの視線は僕の右後方に向けられていた。
ζ(゚、゚*ζ「そこにまだパンがあるのは気の所為で御座いますかねえ?」
( ^ω^)「これはディスプレイ用に置いてたものだから売るのは……」
それじゃあ、とばかりに両手を揃えて突き出してくるデレ。
僕はその手とパンを見比べ、しばらく考慮した後、パンをデレの手の中に落とす。
ζ(´ー`*ζ「うわーい、3日ぶりのまともなご飯だー」
( ^ω^)「お金は……って、3日ぶり!? どんだけ貧しい暮らししてんだお」
ζ(゚ー゚*ζ「冗談ですよー。それじゃ、いただきますねー」
相変わらずのマイペースに惑わされながらも、僕はデレを改めて観察する。
以前出会った時と変わらぬ旅装束で、武器らしきものは持っているようには見えない。
旅をしている割には無用心だと思うし、小奇麗な格好だと思う。
ζ(゚〜゚*ζ「ムグムグ……ばびびべんべふば?」
(;^ω^)「いや、食べながら話すなお。何言ってるかわからんお」
- 271 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:53:03 ID:.GRteUcU0
いつもはされる側の注意をデレにし、僕は店の片付けに取り掛かる。
売るものがないこの状況で客に来られると困るので、取り敢えず看板だけでも降ろすことにした。
( ^ω^)「おっと、わんおもこれ、外していいお。お疲れ様だお」
(∪*^ω^)「わんわんお!」
ζ(゚ー゚*ζ「ふーむ……随分変わった子だねー」
(;^ω^)「うおっ、もう食べたのかお?」
いつの間にか至近距離までデレが近付いており、わんわんおの顔を眺めていた。
片方の手はわんわんおの頭に伸ばされ、もう片方の手は残りのディスプレイ用パンに伸ばされる。
( ^ω^)「さり気なくパン取ろうとすんなお」
ζ(゚、゚*ζ「ぶー、ケチー」
( ^ω^)「美味かったかお?」
ζ(゚ー゚*ζ「お腹空いてると何でも美味しいね」
( ^ω^)「……まあ、そうだろうけど」
- 272 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:54:35 ID:.GRteUcU0
ζ(゚ー゚*ζ「冗談冗談。すごく美味しいと思うよ。焼き加減も絶妙」
僕はデレの手に残っていたパンを乗せる。
どうせ後で僕が食べるつもりだったし、喜んでもらえるならあげてもいいだろう。
(∪^ω^)「わんわんおー」
ζ(゚ー゚*ζ「ん? 君も食べたいのかい?」
(∪^ω^)「わんお!」
({⊂ζ(゚ー゚*ζ「それじゃあ、少しちぎってあげ……」
(∪*^ω^)「わんわんお!」
パクッ
ζ(^ー^*ζ「ない!」
(∪^ω^)
(;^ω^)「わんおをいじめんなお」
- 273 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:56:56 ID:.GRteUcU0
({⊂ζ(゚ー゚*ζ「ごめんごめん、はい、どうぞ」
(∪*^ω^)「わんわんお!」
結局、残っていたパンは全てデレとわんわんおのお腹に収まることになった。
僕は食べ損ねたが、自分が作ったものを美味しいと言って食べてもらえるなら満足だ。
( ^ω^)「それで、何の用だお?」
ζ(゚ー゚*ζ「用?」
僕はデレが何かしらの目的があって来たのかと思ったが、反応を見る限りどうも偶然らしい。
ζ(゚ー゚*ζ「私は旅の僧侶ですぜー? 偶然通りかかったら、見知った顔があったから挨拶しただけだよ」
( ^ω^)「挨拶しただけって、あれだけパン食べといてよく言うお」
ζ(゚ー゚*ζ「ご馳走様でした。それじゃ、私は行くね」
(;^ω^)「ちょっと待ってくれお。もう少し話を聞かせてくれお」
- 274 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:58:42 ID:.GRteUcU0
ζ(゚、゚*ζ「話? 何の? 趣味ならアリの行列の方向を微妙にずらすことかな?」
( ^ω^)「そんな話じゃなくて……って、何か若干陰湿な趣味だおね」
ζ(゚ー゚*ζ「進行方向に障害物置いたりするとずらせるよ。登り難いものに限るけど」
僕はアリの話を遮り、先日の教会の件、それとデレ自身の目的を尋ねる。
しかしながらデレはあの時話したことが全てだからと、答えるつもりはないようだ。
ζ(^ー^*ζ「私は、全ての人がほんの少しだけでも今より幸せになれるといいなーって思ってますよー」
( ^ω^)「そんな漠然とした話じゃなくて、せめて目的、あの時何をしに教会に行ったのか教えてくれお」
ζ(゚、゚*ζ「うーん……教える理由もないんだけど……」
( ^ω^)「パンあげたお?」
ζ(゚、゚*ζ「足りないなあ。せめてあと10個は欲しいな」
(;^ω^)「まだ食うのかお。つか、あれで全部だお。もう1個も残ってないお」
僕は食い下がり、後日サンライズに来てくれれば必ずご馳走するからと頼み込む。
- 275 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:00:52 ID:.GRteUcU0
ζ(゚、゚*ζ「うーん……じゃあ、後払いね」
( ^ω^)「その時は10個でも20個でも」
ζ(゚ー゚*ζ「あの教会にある物を見に行っただけだよ」
( ^ω^)「ある物?」
ζ(゚ー゚*ζ「もうなかったみたいだけどね」
それはつまり、やはり教会から何か盗まれたという事なのだろうか。
気になる所だが、デレはそのある物が何かは教えてくれる気はないらしい。
ζ(゚ー゚*ζ「君には関係ない話だからねー」
( ^ω^)「ヴィップで起きた事なら、後々関係して来たりする可能性があるお」
ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫、危険なものとかじゃないから。今は、だけど」
(;^ω^)「その発言で安心出来ると思うのかお?」
ζ(゚、゚*ζ「うーん……そうだねえ……」
- 276 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:02:16 ID:.GRteUcU0
デレは両腕を組み、顔を空に向け、何事かを考えるような仕草をする。
そして不意に顔を正面に戻し、僕の方へ詰め寄る。
(;^ω^)「お……?」
ζ(゚ー゚*ζ「君は自分を信じて、自分が思う通りに動けばいいよ。私が言えるのはこれだけかな」
(;^ω^)「?」
デレ僕の瞳を下から覗き込む様にして意味深なことを告げ、踵を返す。
そして軽く放心状態な僕に手を振り、通りに向かって歩いて行く。
ヾζ(゚ー゚*ζ「それでは、ご縁があればまた会いましょうぜー」
(;^ω^)ノ「え、あ……ちょ……」
まだ話は終っていないと追いすがろうとしたが、デレはもう人込みの中に姿を消していた。
相変わらずつかみ所のない人だ。
< ア、フラレタナ オシガヨエエ チッチッチッチ…
( ^ω^)「でも、何となく悪い人じゃない感じはするんだおね……」
- 277 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:05:00 ID:.GRteUcU0
見た目に騙されているわけではないつもりだが、敵意らしきものは一切感じないし、
あの教会での出来事を思えば悪い人ではないと思う。
< オワネエノカヨ ソンナコンジョウネーダロ チッチッチッチッチッチッチ…
( ^ω^)「あれだけ美味しそうに薬草パン食べてくれたしね」
一緒に食事をすれば、その人がどんな人か多少はわかるものだ。
あんなに笑顔でご飯を食べられる人が、悪い人とは思えない。
< ナカナカビジンダッタナ C、イヤDカ! オイデオイデオイデ…
( ^ω^)「気になる事も聞けたし、帰ったらヒッキーさんに……って、そこ!」
僕は先ほどからひそひそと聞こえて来る声の方にビシりと指を突きつける。
聞き覚えのある声だと思っていたが、案の定、出て来た3人は見覚えのある顔だった。
_
从 ゚∀从 ( ゚∀゚) ( ゚д゚)
- 278 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:07:05 ID:.GRteUcU0
( ^ω^)「何してんですかお、3人とも?」
_
( ゚∀゚)「むしろお前が何してんだと聞きてえんだがな、ブーンよ」
从 ゚∀从「何でメシューマなんかでナンパしてんの? しかも失敗」
(* ゚д゚)「よーしよしよし、元気にしてたかい」
つ∪^ω^)「わんわんお!」
( ^ω^)「色々あって、というかナンパはしてませんお!」
現れた3人は、しばらく前に武器の強化にメシューマに来ていた冒険者のジョルジュさん達であった。
確かに彼らがここにいるのは自然で、僕がここにいる方が不自然であろう。
僕はショボンの事と、それを送って行く最中であった事などをジョルジュさん達に説明した。
_
( ゚∀゚)「へえ、ショボンがねえ」
从 ゚∀从「意外だな」
( ゚д゚)「そうか、とうとう決めたのか」
- 279 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:08:15 ID:.GRteUcU0
- _
( ゚∀゚)「あれ? ミルナ知ってたの?」
( ゚д゚)「以前、少しだけそういう話をしたことがあってな」
_
( ゚∀゚)「何でお前だけ?」
( ^ω^)「多分、口が固そうだからだと思いますお」
_
( ゚∀゚)「なるほど」
从 ゚∀从「それで納得するんだ……」
次いで僕はデレの事、ヴィップの教会で起こったことも説明する。
ナンパしてたなどと妙な誤解を受けるのは心外なので、なるべく事細かに話した。
_
( ゚∀゚)「謎の僧侶ね……」
从 ゚∀从「クソ怪しいにも程があるな」
( ^ω^)「現状はさっぱりポンですから、あんまり探るなとドクオさんには言われてるんですけどね」
- 281 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:12:26 ID:.GRteUcU0
とはいえ偶然出会ってしまった物は仕方がない。
欲を言えばもう少し情報を引き出したかったが、
こんなに早く再会するとは思っていなかったので動揺してしまった部分もある。
_
( ゚∀゚)「大きかったからな。お前が動揺するのも無理はない」
(;^ω^)「何の話ですかお。それより、ジョルジュさん達の方はどうなんですかお?」
ミルナさんの話では、ハインさんの武器の修繕は終わったが、全員の武器強化の目処は立っていないという。
素材も足りなければ、これと思う武器職人とも出会えていないらしい。
仕方がないのでここしばらくはクエストをこなして資金を稼いでいたとの事だ。
( ^ω^)「武器職人といえば、例のからくり武器職人の武器を見る機会がありましたお」
从 ゚∀从「ああ、何か胡散臭いとかいう奴か」
( ^ω^)「胡散臭いとこだけはみんな覚えてますおね……」
僕はトソン君とその武器の事も説明する。
ついでにこのあと王都に行った際にその武器職人に会う事も教えた。
- 282 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:14:31 ID:.GRteUcU0
( ゚д゚)「ほう、なかなか興味深い話だな」
_
( ゚∀゚)「そのトソンってやつ、強いんなら1度手合わせ願いたいもんだ」
从 ゚∀从「んじゃ、お前ら王都行ったらその武器職人に会うのか」
( ^ω^)「その予定ですお。トソン君に紹介状も書いてもらってるんですお」
(;^ω^)「何故か、かなり渋られましたけど」
恩のある僕の頼みだから紹介状は書くが、
決して自分が彼と仲がいいわけではない事は間違わないで欲しいとトソン君には念押しされてしまった。
先方にもその辺は誤解しないで欲しいと言い添えてくれと。
从 ゚∀从「つまり友達と思われたくないんだな」
(;^ω^)「そういう事になるんでしょうね。ぶっちゃけ、そういう反応だと会うべきなのか迷いますけど」
腕は確かなのだし、折角王都まで行くのだから会ってみるぐらいはしてもいいと思うのだが、
あのトソン君があそこまで顔をしかめて交友関係を否定する相手だ。
一抹の不安は感じてしまう。
- 283 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:16:51 ID:.GRteUcU0
- _
( ゚∀゚)「これ、お前らの馬車? 3人旅の割には大きいな」」
( ゚д゚)「4人だぞ、ジョルジュ」
つ∪^ω^)「わんお!」
( ^ω^)「そうですお。一応、商売もしつつ行こうと考えてたので少し大きめですお」
ジョルジュさんは馬車の方に向かい、しげしげと観察している。
馬車はレンタルだが、シャキンさんのギルド絡みのつてで安価でいいものが借りられた。
_
( ゚∀゚)「なあ、ブーン、物は相談なんだが」
( ^ω^)「何ですかお?」
_
( ゚∀゚)「俺達も乗せてくんねえか?」
( ^ω^)「お?」
ジョルジュさん達の話では、メシューマでは目ぼしい成果は上がらなかったから、
ソクホウへ行く事も考え始めていた矢先に僕達が来たとの事だ。
別に僕に頼らなくても王都に行くのは難しくないだろうが、
武器職人にも会うならジョルジュさん達にとっては好都合だろう。
- 284 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:19:01 ID:.GRteUcU0
从 ゚∀从「無論、護衛は引き受けるぜ、無料でな。飯も自分持ちでかまわねえ」
( ^ω^)「僕は別に構いませんお。護衛は助かりますし、料金払ってもいいくらいですお」
( ゚д゚)「王都への街道は3人も護衛はいらんだろう。金目のものを積んでるわけでもないしな」
从 ゚∀从「最近はちと物騒な噂もあるんで、用心はしといた方がいいだろうがな」
( ゚д゚)「むしろこちらが運賃を払ってもいいくらいだ。わんわんおと旅が出来るしな」
結局、護衛料も運賃もいらないという話で落ち着いた。
お互い知らない仲ではないし、旅は道連れ、人数が多い方が楽しくもある。
( ^ω^)「一応、ツン達にも聞きますが、多分断らないと思いますお」
_
( ゚∀゚)「送ってくれて、武器職人に合わせてくれればいいからさ。帰りは邪魔しないから」
( ^ω^)「お? 帰り?」
ジョルジュさん達はしばらくソクホウに留まるつもりらしい。
そうなると帰りは僕とツンとわんわんおの3人だ。
むしろ人数の減る帰りの方が護衛が欲しいかもしれないが、仕方がないか。
- 285 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:20:21 ID:.GRteUcU0
从 ゚∀从「よし、それじゃあ早速ツン達に会いに行くか。あいつらどこにいんの?」
( ^ω^)「観光中ですお。お昼頃、もうすぐ戻って来ると……お、噂をすればですお」
通りの方に視線を向けると、人込みの中を見慣れた顔がこちらに歩いて来る。
ξ゚听)ξ「ハインじゃない。それにジョルジュさん達も。どうしたの?」
从 ゚∀从「市場の方で、ヴィップの町の名物を売りに来てるって丸っこいのがいるって話聞いたから」
从 ゚∀从「見に来たらブーンだった」
( ^ω^)「お、宣伝効果ちゃんと出てたのかお、って、丸っこいのって……」
丸っこいが何を指すか甚だ気になる所だが、僕は広い目で見て標準体型だと思う。
顔が丸っこいのは認めざるを得ないが。
(´・ω・`)「それで、パンの方は売れたの?」
( ^ω^)b「完売だお!」
ξ;゚听)ξ「嘘、まだ午前中じゃない? 売れないから諦めて自分で食べ尽くしたんじゃないの?」
- 286 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:22:29 ID:.GRteUcU0
( ^ω^)「んなわけねえお。大繁盛だったお。そうだおね?」
(∪^ω^)「わんわんお!」
信じられないといった表情をしていたツンとショボンだったが、売上金を見せると納得してくれた様だ。
( ^ω^)「つーか、美味いのは2人とも知ってたお? 売れても不思議はないお」
(´・ω・`)「見知らぬ土地で宣伝も無しにいきなりだったからね。こんな早く売り切れるとは信じられなくて」
( ^ω^)「試食も用意したし、最初のお客さんが声の大きい人でいい感じに宣伝っぽくなったんだお」
从 ゚∀从「あれ、そうなると俺らヴィップ名物とやらは食べられないの?」
ハインさん達は冷やかしではなく、買うつもりで来ていたらしい。
それは申し訳ないことをしてしまったが、3人は薬草パンを1度食べただろうし、それほど珍しくもないと思う。
( ゚д゚)「薬草パン? いや、食べた覚えはないが……」
( ^ω^)「あれ? 結構前の話ですけど、試作した時にジョルジュさんにみんな分渡したんですけど……」
- 287 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:24:01 ID:.GRteUcU0
从 ゚∀从「……ジョルジュ?」
_
( ゚∀゚)「……ああ、思い出した。竜の調査の時だな。そういえば貰ったな」
从 ゚∀从「それで、貰ってどうした?」
_
( ゚∀゚)「1つ食ってみたら美味かったんで、全部食った」
从#゚∀从「てめえ……」
薬草パンを巡り、一触即発の空気だったが、また後日焼いた時に食べさせるという事でこの場は収まった。
げに恐ろしきは食べ物の恨みである。
僕としては、ジョルジュさんが薬草パンを気に入ってくれた事自体は嬉しいのだが。
( ^ω^)「それでツン、ショボン、ジョルジュさん達なんだけども……」
僕は2人にジョルジュさん達も同行したがってる事を説明する。
2人は特に断る理由もないからと、快く了承してくれた。
从*゚∀从「サンキュー、ツン。助かるぜ」
ξ゚听)ξ「礼を言われるほどの事じゃないわよ。そもそも私もおまけみたいなもんだし」
- 288 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:25:12 ID:.GRteUcU0
( ゚д゚)「旅の間、わんおちゃんのお世話は引き受けよう」
(´・ω・`)「それは間に合ってます」
( ゚д゚ )「……」
(´・ω・`)「……」
( ゚д゚)「一緒にやろうか」
(´・ω・`)「そうですね」
(∪^ω^)「わんおー」
_
( ゚∀゚)「出発はいつの予定だ?」
( ^ω^)「明日の朝には出るつもりですお」
僕はこの後の予定を改めて皆に説明する。
と言っても、宿を決め、馬車を預けて観光するぐらいしか予定はないのだが。
- 289 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:26:11 ID:.GRteUcU0
( ^ω^)「というわけでまずは宿の確保に行くお」
馬車も停められるような商人向けの宿は商工会から大体の場所は聞いていた。
僕は良さそうな宿と交渉し、宿泊場所を決め、次いで商工会の本部で露店の使用が終わったことも報告する。
どうやら商工会にも僕のお店が賑わってた噂は耳に届いていた様で、また是非借りに来てくれという言葉も頂いた。
(*^ω^)「僕の商売人としての腕も捨てたものじゃないおね」
サンライズの宣伝もしたし、ソクホウでも薬草パンの販売と宣伝をすれば、サンライズを訪れる客はきっと増えるだろう。
ξ゚听)ξ「……でもそれって、パン屋として有名になってくだけじゃないの?」
( ^ω^)「え……?」
( ^ω^)「いや、ちゃんとパン渡す時に魔法道具屋サンライズをよろしくって宣伝したし、それはないお」
(´・ω・`)「でも、馬車には薬草パンの宣伝しかしてなかったみたいだよね」
( ^ω^)「そうだけど……いや、でも……」
2人の物言いに不安になって、ジョルジュさん達の方を見る。
そういえば3人はサンライズの名前を聞いて来たわけじゃなかった。
- 290 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:28:05 ID:.GRteUcU0
从 ゚∀从「何でも美味いもの売ってるらしいとしか聞いてねえな」
_
( ゚∀゚)「商品名も店名も聞かなかったな」
( ^ω^)「そうですかお……」
( ゚д゚)「そう落ち込むな。広まるのはこの後だろ。食べた人が噂をしてくれるさ」
(∪^ω^)「わんわんお」
( ^ω^)「だといいですおね……」
僕は頷きつつも、次からはもう少し店構えや包装等を工夫した方がいいかもしれないと考えていた。
ついでに護符なんかも並べて、魔法道具屋であることをアピールするとかも行うべきか。
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( ゚∀゚)「おい、ブーン。そっちには行くな」
( ^ω^)「お?」
考え事をしながら歩いていたら、皆から離れて1人別の通りに入ろうとしていた。
ジョルジュさんがこっちに来いと手招きしている。
- 291 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:31:46 ID:.GRteUcU0
- _
( ゚∀゚)「あっちは裏通りだ。あんまり無闇に足を踏み入れる場所じゃねえ」
( ^ω^)「お、そうなんですかお」
メシューマの裏通り、噂に聞く物騒な通りだ。
しかしながら一見すると普通の通りとそう変わらぬように見えて、人通りも多い。
僕のイメージしていた裏通りとはだいぶかけ離れていた。
从 ゚∀从「どんなのを想像してたんだよ?」
( ^ω^)b「人通りなくて、店が軒並み閉まってて、店に入る為には秘密の合言葉が必要だったり」
そんな身を潜めて営業してる感じだったのが、随分とオープンに店を開けているものだ。
あんなに賑わっていると、ちょっと覗いてみたいと思ってしまう。
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( ゚∀゚)「俺らも魔法鉱石が出てねえか、ちょっとは見て来たんだがな」
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( ゚∀゚)「スリや強盗紛いの連中もいて、めんどくせえとこだった」
( ゚д゚)「品は真っ当な物から、ご禁制の物まで色々だったな」
( ゚д゚)「魔法鉱石もあったが、かなり高価な値がついていた」
- 292 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:33:49 ID:.GRteUcU0
从 ゚∀从「異常に安いのもあったが、どうも怪しくてな」
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( ゚∀゚)「俺らには鑑定出来ないし、それは避ける事にした」
( ^ω^)「それが正解だと思いますお」
僕達はそんな話をしながらメシューマの町を歩き回る。
これといった目的もなかったが、数々の品々や商売のやり方は見ていてとても勉強になった。
それに何より、賑やかな雰囲気が自然と楽しい気分にさせてくれる。
ξ゚听)ξ「流石に歩き疲れたわ。どこかで休まない?」
( ゚д゚)「この近くに果物ジュースの美味い店がある」
つ∪^ω^)「わんおー?」
意外な事に、メシューマの町、特に食べ物関連の店に一番詳しいのはミルナさんだった。
まめな性格らしいし、ミルナさん達のパーティーで宿の手配とかは全てミルナさんが受け持っている事を考えれば、
意外でも何でもないのかもしれないが。
从 ゚∀从「あいつ、結構な甘党だしな」
( ^ω^)「そうなんですかお?」
僕達はミルナさんのオススメのお店でジュースを買い、近くの公園で飲んだ。
確かに少し甘かったが、果物の瑞々しさは損なわれておらず美味しかった。
- 293 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:35:50 ID:.GRteUcU0
( ^ω^)「美味いお。やっぱり薬草ジュースの開発も視野に入れるべきだおね」
ξ゚听)ξ「もう、クエストに携帯する事とか度外視で言ってない?」
すかさず入るツンのツッコミを聞き流し、視線を余所に向ける。
そんな時、向けた先にあった掲示板が僕の目に入った。
( ^ω^)「お? 何だお、これ?」
掲示板にはその区域の連絡事項的なものとは別に、何かを告知した1枚のポスターが貼られていた。
ポスターには大きく闘技大会の文字が書かれている。
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( ゚∀゚)「ここで大規模な闘技大会が開かれるらしいぜ」
まだ先の話だがと前置きし、ジョルジュさんが説明してくれる。
商工会設立何周年かの記念イベントの目玉として開催されるらしい。
6人以内のチームの集団戦形式で、武器も魔法もありという話だ。
( ^ω^)「危険な大会になりそうですおね」
( ゚д゚)「一応、相手を殺してしまったら失格になるから、そこまでひどくはならないと思うがな」
- 294 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:37:13 ID:.GRteUcU0
从 ゚∀从「ガチンコの大会なら、その気はなくても殺しちまう可能性はあるだろうけどな」
ジョルジュさん達は、参加も視野に入れているらしい。
腕試しが目的だが、優勝商品が手に入れば武器の強化とか余裕で出来るだろうから狙う価値はあると。
(´・ω・`)「でも、優勝する為には武器の強化も必要そうですよね」
( ゚д゚)「まあな。結局そうなるのが何とも頭の痛い所だ」
最悪、今の装備で出るつもりらしいが、その為には人数も集めないと厳しいだろうとミルナさんは言う。
从 ゚∀从「お前らならいい線行きそうだが、流石に危ねえ大会だしな」
ξ゚听)ξ「別に、クエストでモンスターと対峙するのとそう変わらないでしょ?」
( ^ω^)「まあ、僕らは遠慮しときますお」
(∪^ω^)「わんわんお」
これ以上この話を続ければ、ツンが参加するとか言いそうな気配だったので強引に話を打ち切る。
モンスターと人では戦い方は大きく異なるし、個人戦や雑魚相手ならともかくツンは集団戦には慣れていないはずだ。
あまり不用意に危険な戦いに参加して欲しくないと僕は思う。
- 295 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:39:13 ID:.GRteUcU0
(´・ω・`)「ちなみに、優勝商品って何なんですか?」
( ゚д゚)「魔王の朱玉と呼ばれる宝石だ」
( ^ω^)「何かご大層な名前ですおね」
从 ゚∀从「あれ、その様子だとどんなものか知らねえの、魔法道具屋店長さん?」
( ^ω^)「聞いたことないですお。有名なんですかお?」
从 ゚∀从「いや、知らね。だから後でブーンにどのくらい価値があるか聞こうと思ってたんだけどさ」
残念ながら聞き覚えのない名前である。
そんな仰々しい名前で有名なものなら職業柄、1度くらい耳にしていてもおかしくないが僕は知らない。
つまりはそれほど有名ではないのかもしれない。
( ^ω^)「けど、商工会主催なら価値のないものを賞品にするわけないですし、それなりには高いはずですお」
_
( ゚∀゚)「だよな。じゃなきゃ参加者集まらねえだろうし」
僕の言葉に皆、納得した様に頷き、この話はおしまいになった。
宝石の事はヴィップに戻った時にドクオさんに聞いてみようと思う。
- 296 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:41:16 ID:.GRteUcU0
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( ゚∀゚)「で、これからどうするよ?」
ξ゚听)ξ「私は疲れたし、宿に戻りたいですね。まだ町を見て来たい人は別行動でもいいんじゃないですか?」
(´・ω・`)「じゃあ、僕も宿に帰ろうかな」
( ^ω^)「僕もそうしますお」
(∪^ω^)「わんわんお」
_
( ゚∀゚)o彡゚「あれ? お前ら皆帰るの? ブーン達を色々お楽しみなお店に案内してやろうかと思ってたのに」
从 ゚∀从「どうせろくでもない店だから聞く耳持つなよ。馬鹿は置いて帰るぞ」
(* ゚д゚)「わんおちゃんは晩ご飯何が食べたい?」
(∪^ω^)「わんおー」
僕らは何か力説しているジョルジュさんを1人残し、宿に戻る。
今日はやわらかな布団でゆっくりと眠れる事に感謝しながら明日からの馬車の旅に備えよう。
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(;゚∀゚)o「いや、ホントに置いて行くなよ……」
第十七話 再会のメシューマ 終
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