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名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:11:34 ID:ErvSmjSo0
(;^ω^)「えっと、どちら様ですかおね?」
(~~{ ヽ「……」
川 ゚ -゚)「知り合いか?」
( ^ω^)「いや、僕の知り合いに、ここまで力強くドア叩く人いないと思うお」
(~~{ ヽ「……………た」
( ^ω^)「お?」
(~~{ ヽ「見付けました、姫様!」
川 ゚ -゚)「……ヤベ」
( ^ω^)「おい、お前か? お前の知り合いだな?」
第十四話 忠義の剣は戦場に踊る
- 56
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:12:51 ID:ErvSmjSo0
( ^ω^)「このドア結構高いんだお? クーの知り合いはなんつーことしてくれるんだお?」
僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。
(゚- ゚ 川「シリアイ? ナンノコトダ?」
彼女の名前はクー。
新米冒険者だが僕に借金がある為、普段はサンライズのアルバイトもやっている。
(∪^ω^)「わんおー」
この子の名前はわんわんお。
僕のペットというか家族で、見た目は子犬だが実は元竜だ。
(~~{#ヽ「姫様から離れよ、下郎!」
この人は謎の襲撃者。
いきなりサンライズの店をぶち壊してくれた迷惑極まりないやつだが、どうやらクーの知り合いのようだ。
( ^ω^)「とぼけんなお。明らかにお前の事知ってる風じゃねえか」
- 57
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:14:56 ID:ErvSmjSo0
(゚- ゚ 川「知らんよ。大体、私は冒険者でアルバイトであって姫じゃない」
(~~{#ヽ「ちょっと、姫様から離れよと言っているのがわかりませんか?」
( ^ω^)「じゃあ、誰に向かって姫って言ってんだお?」
川 ゚ -゚)「それは……あれだ……ほら……」
川 ゚ -゚)「わんわんおにだろ?」
つ∪;^ω^)「わんお!?」
(;^ω^)「何でそうなるんだお」
川 ゚ -゚)「いや、かわいいじゃないか、わんわんお」
つ∪;^ω^)ノシ ジタバタ
(;^ω^)「かわいいけど、わんおは男の子だお」
(~~{ ヽ「あの、聞いてますか? ちょっと……」
川#゚ -゚)「うるさい! 少し待ってろ。それと、私の事はクーと呼べ! わかったな?」
- 58
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:16:52 ID:ErvSmjSo0
(~~{ ヽ「え!? しかし姫さ──」
川#゚ -゚)「クー!」
(~~{;ヽ「は、はい、クー様、あの……」
川#゚ -゚)σ「ちょっと向こうで座って待ってろ!」
クーに言われるまま、とぼとぼと店から遠ざかり、体育座りをする襲撃者。
その姿は何だか哀愁を誘う。
川 ゚ -゚)「で、話の続きだが、あいつは一体何者なんだろうな?」
(;^ω^)「いや、120%お前の知り合いじゃねえかお」
この期に及んでとぼけようとするクーだが、先のやり取りで知り合いである事は確定だ。
大方、クーを連れ戻しに来た人間といった所だろう。
そうなるといくつか疑問が浮かぶのだが、その最たるものが……
(;^ω^)(何でここがわかったんだお? ひょっとして解呪失敗してたのかお?)
- 59
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:17:47 ID:ErvSmjSo0
万が一そうならば非常にまずい事になる。
僕の腕とか店の信用問題とかもあるが、それよりも何よりも、
失敗した上で料金を請求してクーを働かせてた事になるのがまずい。
先のクーの仕事中の態度を鑑みれば、どれだけ切れられるかわかったものではない。
(;^ω^)(それはまずいお……。どうするかお? それとなく、クーに聞こえない様に聞いてみるかお?)
僕は尚も自分が姫ではないと力説するクーを無視し、それとなく襲撃者の方を伺う。
__(~~{ ヽ__
< ∩∩/)┣
 ̄  ̄
随分と小柄で子供の様にも見えるが、かなり頑丈だったサンライズのドアを吹き飛ばすほどの力は持っているのだ。
ひょっとしたら魔法使いか何かなのかもしれないが、マントに収まり切れていない、
背負う長大な獲物がその考えを否定する。
(;^ω^)(剣士……いや、騎士なのかおね)
先の言動とクーの立場から推察すれば、それが一番可能性が高い気もするが、
騎士が使う武器にしてはなんというか品がなさ過ぎる。
しゃがんでいる所為で背負う獲物がほぼ真横になっていて、その長さがよくわかるが、襲撃者の身の丈ほどはあるだろう。
襲撃者が小さい事を差し引いても、一般的な騎士の剣にしては大き過ぎる。
- 60
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:19:52 ID:ErvSmjSo0
川 ゚ -゚)「というわけで、わんわんおが……って、聞いてるのか?」
つ∪;TωT)ノシ ジタバタ
(;^ω^)「いや、だから、わんわんおが姫説は無理があるから……ってか、嫌がってるから離してやってお」
僕はクーからわんわんおを奪い取り、店の中に隠れてるよう言い付ける。
色々気になる事はあるのだが、取り敢えずは襲撃者の話を聞かない事には話が進まないだろう。
( ^ω^)「というわけで、話を聞くお」
川 ゚ -゚)「いや、聞く必要ないって。多分あいつ、道間違えただけだろ」
( ^ω^)「間違いで店のドアを跡形もなく壊すやついねえだろ」
川 ゚ -゚)「あれだ、ピンポンダッシュしようとして力入れ過ぎたとかだろ」
( ^ω^)「どんなワイルドないたずらっ子だお。いいから話聞くお」
僕は渋るクーを引きずり、襲撃者の方に向かう。
向こうを呼んだ方が早そうだったが、また暴れられて店を壊されるのも勘弁願いたい。
- 61
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:20:44 ID:ErvSmjSo0
( ^ω^)「というわけで、ちょっとお話を聞かせてもらえないかお?」
(~~{ ヽ「貴様……姫さ──」
川#゚ -゚) ジロリ
(~~{;ヽ「く、クー様から離れなさい!」
( ^ω^)「と、その前に自己紹介しておくかお」
( ^ω^)「僕はブーン=ナイトウ、魔法道具屋サンライズの店長だお」
(~~{#ヽギリッ…
(;^ω^)「お?」
川 ゚ -゚)「私の名はクー=スナオ、クー=スナオだからな? 間違えるなよ? いいな?」
(~~{ ヽ「はい、姫さ川#゚ -゚)「クー=スナオ!」
(~~{;ヽ「は、はい、クー様」
- 62
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:22:08 ID:ErvSmjSo0
何ともわかりやすい反応を示してくれたお陰で、どうやら僕はこの襲撃者に恨まれてる事は想像が付いた。
正直、恨まれる覚えはないのだが、解呪の件があるので逆恨みされている可能性はないとはいえない。
( ^ω^)「で、そちらも名乗ってもらえると助かるんだけど」
(~~{ ヽ「……」
僕の言葉に反応し、クーの方をちらりと見る襲撃者。
クーが頷くと、襲撃者はゆっくりとフードを取った。
(゚、゚トソン「僕の名はトソン=トソン」
(゚、゚トソン「下郎に名乗る名前は持ち合わせていませんが、ひ──クー様のご命令とあらば止むを得ません」
フードの下には、幼い顔立ちだが随分と整った顔があった。
クーと同じく、無愛想さは垣間見えるものの、将来かなりの美形に育つのだろう。
( ^ω^)「それで、トソン君はうちに何の用なんだお? といっても、クー絡みなのはわかってるけど」
(゚、゚#トソン「クー様を呼び捨てにするな!」
( ^ω^)「本人がそう呼べって言ってんだお。話が進まないから理由を教えてくれお」
- 63
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:24:28 ID:ErvSmjSo0
今にも襲い掛からんばかりの目で睨み付けて来るトソン君。
クーも隣にいるし、いきなり斬りかかって来る事は流石にないと思いたいが用心はしておくべきか。
(゚、゚#トソン「理由ですと? ……貴様がブーン=ナイトウで間違いないのですね?」
( ^ω^)「名乗った通りだお」
(゚、゚#トソン「魔法道具屋サンライズの店主の」
( ^ω^)「そうだお。君がドア壊したお店がサンライズだお」
(゚、゚#トソン「そしてクー様を騙して無理矢理借金を負わせ、薄給でこき使ってる悪徳商人」
(;^ω^)「どこでそんな話聞いたんだお。著しく間違ってるお」
今の発言でトソン君の怒りの出所はわかった気がしたが、一体どこでどうしたらそんな話になったのか。
僕は正当な仕事の依頼の報酬を払ってもらうためクーに働いてもらっているし、給金も高くはないが普通に払っている。
(;^ω^)(……ひょっとして、やっぱ解呪失敗して、それで不当な借金を負わせてると思われてるのかお?)
最悪の想像が頭に浮かんだが、それにしては少々不自然な部分もある。
トソン君が何故クーが僕の店に解呪の依頼を持ち込んだ事を知っているのかという事がまず1つ。
クーの話しぶりでは、誰にも知らせず王宮を抜けて来たような口ぶりだったはずだ。
- 64
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:26:55 ID:ErvSmjSo0
(;^ω^)(あ、そういえば1人は知ってるみたいな話もあったおね……)
解呪の依頼の際、じいちゃんの名前を出せとクーにアドバイスした人がいたはずだが、それがトソン君なのだろうか。
(゚、゚#トソン「しかし現にクー様はここで働かされているのでしょう?」
(;^ω^)「どっちかというと、働かせてあげてるんだけど……」
僕の口をつく反論の言葉が弱々しい。
解呪失敗の可能性が頭をちらつき、強くは言い返せなくなってしまっている。
(゚、゚#トソン「働かせてあげてるとは何ですか! 働いてくださってると言いなさい!」
(;^ω^)「ええっと、その、トソン君はどこでクーがここにいる事を知ったんだお?」
(゚、゚#トソン「それを知ってどうするつもりですか? 証拠の隠滅ですか?」
(;^ω^)「いや、そういうんじゃなくてだおね……」
僕はクーの方に視線を向ける。
ここはひとまずクーに借金の正当性を示してもらえればトソン君の怒りは収まるのではないだろうか。
- 65
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:28:10 ID:ErvSmjSo0
川 ゚ -゚)「借金の話は誰から聞いたんだ?」
僕の意図を察してくれたのか、クーがトソン君に質問をする。
若干、僕が聞いて欲しかった事と違うのだが、それも一応は知りたい事だ。
(゚、゚*トソン「はい! ひ川#゚ -゚)「クー!」
(゚、゚;トソン「クー様を探してこの町に辿り着き、情報を集めるならば人が集まる場所だろうと」
(゚、゚トソン「向かった先、バーボンハウスという酒場で聞いた所」
(゚、゚トソン「ミセリさんという親切な御仁が、クー様が借金の形に無理矢理働かされていると教えてくださいました」
( ^ω^)「あの野郎……なに適当な事ぶっこいてんだお」
いくらミセリさんがいい加減で噂好きな人だとしても、これは流石にひどいのではなかろうか。
こんな調子で吹聴されてたら、僕がものすごく悪いやつだと色んな人に誤解されてしまう。
(;^ω^)「けど、何でミセリさん、そんな嘘っぱちを広めるんだお? あの人馬鹿だけど、そんなあくどい事は……」
(゚ -゚;川
(゚、゚トソン
- 66
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:32:53 ID:ErvSmjSo0
( ^ω^)「……」
(゚- ゚;川「……」
( ^ω^)「……クー?」
(゚ -゚;川「……ナンダ?」
( ^ω^)「そういや最近、ミセリさんと仲良かったおね?」
(゚- ゚;川「そりゃバーボンハウスで働く同僚だからな」
( ^ω^)「一緒にお茶したり、お酒飲んだりしてたんだおね?」
(゚- ゚;川「そんな事もあったかな」
( ^ω^)「ミセリさんに、バイトしてる理由とかも話したのかお?」
(゚- ゚;川「どうだったかな? 話したような話さなかったような……」
( ^ω^)「借金の理由とか、何て話したんだお?」
(゚ -゚;川「ソ、ソンハナシマデハシテナイナー」
- 67
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:34:19 ID:ErvSmjSo0
( ^ω^)「……」
(゚- ゚;川「……」
( ^ω^)「……お前だな?」
(゚ -゚;川「ハハハ、ナンノハナシダイ?」
(#゚ω゚)「てめええええ!!! 人の事極悪人みたいに仕立て上げてんじゃねえええええ!」
川#゚ -゚)「うるさい! 話が盛り上がっちゃってつい話を盛っちゃったんだ。そんなのよくある事だろ!」
(#゚ω゚)「よくあってたまるかお! 逆切れかお、この駄目バイト!!!」
川#゚ -゚)「なんだと? 元はと言えば私の給料が安いのがいけないんだ。もっと時給上げろ、ふくよか店長!」
(#゚ω゚)「誰がふくよか店長じゃあああいッ!!!」
(゚、゚;トソン「えっと……あの……」
川#゚ -゚)「もう堪忍袋の緒が切れた! やってしまえ、トソン! この守銭奴に正義の鉄槌を下すのだ!」
- 68
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:35:37 ID:ErvSmjSo0
(゚、゚;トソン「え? あ、はい、その……」
(#゚ω゚)「ふざけんなお! そっちが悪だろうがお。お前らまとめてぶっ飛ばしてやるお!」
(゚、゚;トソン「えーっと……その、よく事態が飲み込めないのですが……」
( ^ω^)「……お」
(゚、゚トソン「クー様のご命令とあらば、一刀の元に叩き伏せてご覧に入れましょう」
トソン君が羽織っていたマントを脱ぎ捨てる。
マントの下にあったのは、白銀に輝く鎧。
(;^ω^)「って、それって聖騎士の──」
(゚、゚トソン「生命までは取りません。その行いを悔い改める機会は授けてあげましょう」
そして背負っていた大剣を鞘ごと外し、横にして眼前に掲げる。
アホらしい口ゲンカをしていたはずだが、どうにも雲行きが怪しい所ではない。
まあ、僕もぶっ飛ばすとか言っちゃったんだけど。
- 70
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:37:45 ID:ErvSmjSo0
(;^ω^)「ちょ、タンマ! 僕は君と争う気は……」
(゚、゚#トソン「問答無用! この剣の錆となりたまえ!」
掲げていた剣を上段に振りかぶり、そのまま勢いよく振り下ろしてくるトソン君。
どこにそんな力があるのかと驚かされると共に、言葉通り手加減はしてくれてるのか、剣は鞘に納まったままである。
(;^ω^)「ぬおおおおッ!?」
後方に転がるように飛び退り、からくも攻撃をかわした。
騎士の剣技とは到底思えぬ荒々しい一撃で、僕が先ほどまで立ってた場所の地面が抉られている。
(;^ω^)「いや、これ鞘のままでも死ねるだろ」
(゚、゚トソン「かわしましたか。なかなかやりますね。……しかし!」
重心を落とし、切っ先をこちらに向けて構えるトソン君。
今にも突撃して来そうな鼻息だが、僕は片手を広げてトソン君に向ける。
(;^ω^)∩「ちょっと待ってくれお」
(゚、゚トソン「待ちません!」
- 71
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:39:05 ID:ErvSmjSo0
(;^ω^)「いや、仮にも騎士ともあろう者が、丸腰の相手に一方的に斬りかかるのはどうなんですかお?」
(゚、゚トソン「む……それもそうですね。いいでしょう、武器をお持ちなさい」
(;^ω^)「どうもですお」
僕はダッシュで店の中に戻り、杖を手にし、滅多に身に着ける事なかった魔法使いのローブを纏う。
無用な戦いは避けるつもりであったが、今はどうにも話の通じる状況ではなさそうだ。
誤解を解くためにも、ここは一旦本気で立ち向かうしか打開策はないだろう。
(;^ω^)「全く……何でこんな事に」
(∪;^ω^)「わんおー」
( ^ω^)「お、わんお、もう少しここに隠れてるお」
(∪;^ω^)「わんわんおー」
( ^ω^)「大丈夫だお。僕は負けないお」
心配そうな顔で僕に擦り寄ってくるわんわんおの頭を撫で、笑顔を向ける。
手強い相手だが、魔法を駆使すれば何とかなるのではないと思う。
- 72
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:40:06 ID:ErvSmjSo0
( ^ω^)「いや、きっと勝つお」
( ω )「そして……」
(∪^ω^)「わんお?」
(#゚ω゚)「あの腐れバイトの根性叩き直してやるお」
(∪;^ω^)「わんおー……」
そもそも悪いのはバカクーとアホミセリで、トソン君は悪くないのだ。
トソン君には申し訳ないが、さっさと動きを封じてあのバカどもにちゃんと謝らせるのが筋だろう。
そう思うとこの理不尽な状況にまた怒りが込み上げて来た。
( ω )「待たせたおね」
僕は店を出て、ゆっくりとトソン君の方に向かう。
トソン君は仁王立ちで僕を待ち構えていた。
クーは少し離れた場所で寝っ転がって見物してやがる。
σ(゚ -゚ 川
- 73
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:41:12 ID:ErvSmjSo0
(# ω )「あの野郎……」
(゚、゚トソン「逃げずに来た事は褒めてあげましょう。ですが──」
(#゚ω゚)「先手必勝! ウインド・カッター! カッター! カッターッ!」
(゚、゚;トソン「ちょッ!?」
僕は近付く間に詠唱していた呪文を一気に解き放つ。
魔法使いの勝機は虚を突く事、そして──
( ^ω^)「戦略的撤退!」
(゚、゚;トソン「何!?」
僕の放った魔法をことごとくかわすトソン君の体裁きを見て僕は走り出す。
重装備のトソン君と真っ向から殴り合っても勝ち目はないし、今の動きを見る限り、
腕は確かな様なので距離を取って戦うのが肝要だ。
見た所トソン君の装備はあの大剣のみだろうから、攻撃手段を封じる事にも繋がる。
( ^ω^)「次はこれだお、ロック・スロー!」
- 74
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:41:56 ID:ErvSmjSo0
大地の精霊の力を借り、高速で石を飛ばす。
当たればかなり痛いが、トソン君は簡単には食らってくれないだろう。
(゚、゚トソン「きかぬ! 待て、逃げるか卑怯者!」
( ^ω^)「逃げてるわけじゃないのは君も気付いてるお? これが魔法使いの戦い方だお」
魔法使いは本来1対1の戦いには向いていない。
よほどの高速詠唱が出来るか、あらかじめ何か仕込んでおくなら別だが、斬撃が降り注ぐ中、
かわしながら呪文の詠唱は厳しいものがある。
おまけに相手は聖騎士だ。
幼く見えるトソン君だが、あの若さで聖騎士になれた事を考えると、その実力は容易に推し量れる。
ならば最初から、一方的に攻撃出来る距離を保てばいいというのが結論だ。
その手段として走って逃げるのは、スペシャルの為に常日頃走り込んでいる僕だから取れる方法ではあるが。
( ^ω^)「スネア・トラップ!」
(゚、゚;トソン「うぉっ!?」
再び大地に働きかけ、草を結び足を絡めるわっかを作り出す。
シンプルだが、頭に血が上っている相手には意外と効果的だったりする。
(x、x;トソン「へぶっ!?」
- 75
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:43:40 ID:ErvSmjSo0
草に足を引っ掛け、物の見事にすっ転ぶトソン君。
僕はチャンスとばかりに距離を詰め、次の魔法の詠唱を始める。
( ^ω^)「悪いけど、ふん縛らせてもらうお! マジック──」
(゚、゚#トソン「なめるなッ!」
倒れ込んだまま剣の鞘を外し、こちらに放り投げるトソン君。
そんな一か八かの攻撃を食らってあげるほど焦ってはいない。
僕は軽くそれをかわし、再び力ある言葉を解き放つ。
( ^ω^)「マジック──」
(゚、゚#トソン「うぉぉぉぉぉッ!!!」
何を考えてるのか、トソン君が膝立ちの姿勢で剣を大きく振りかぶる。
当然、僕は剣の攻撃範囲内にはいないし、また投げるのならかわせばいいだけだ。
そう考えた瞬間、僕は何だかわからない、身の毛の弥立つ殺気を感じ大きく横に飛んだ。
(゚、゚#トソン「ガリアン・ソォォォォォドッ!!!」
- 76
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:45:29 ID:ErvSmjSo0
次の瞬間、先ほどまで僕がいた場所を何かが通り過ぎたのがわかる。
それがトソン君の剣である事は漠然と理解出来たが、
身を起こした僕が目にしたのは剣を手に持ったままのトソン君の姿だ。
(;^ω^)「な、何だお、今の?」
(゚、゚トソン「ガリアン・ソード。かの武器職人、からくり・サースガ製の武器です」
(;^ω^)「からくりって……、ああ、あの胡散臭いとかいう……」
(゚、゚;トソン「今はあの人の胡散臭さはどうでもいい!」
(;^ω^)「否定しないって、どんだけ胡散臭い人なんだお……」
足から草を外し、立ち上がって剣をこちらに向けるトソン君。
僕はどうでもいい話をしながらも、あの武器の秘密を探る。
先の自分の感覚を信じるなら、あの位置から剣の一撃が届いたという事になる。
しかしながらどう見ても、あの剣の長さではここまで攻撃が届くとは思わない。
(゚、゚トソン「……この武器が気になりますか?」
(;^ω^)「そりゃまあ……気になるけど……」
- 77
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:47:29 ID:ErvSmjSo0
(゚、゚トソン「まあ、見ればすぐわかると思いますし、タネがわかったところでどうという事はないですので……」
再び剣を構えるトソン君。
今度は振りかぶらず、重心を落として切っ先をこちらに向けた構えだ。
(゚、゚トソン「一応、貴方を相応の実力者と認めてこれを使います。死なない程度に食らってくださいね」
(;^ω^)「死なないし当たってあげるつもりもないお」
僕は軽口を返しながらも魔法を発動させる。
声を潜め、短縮詠唱で口を拭うふりをして使った。
(゚、゚#トソン「ならば! 避けてみなさい!」
すさまじい速さで剣を虚空に突き出すトソン君。
そこからは届きようもないはずの切っ先が、瞬く間に眼前に迫る。
(;^ω^)「糸!? いや、金属の──」
僕は寸前の所で突きをかわし、その正体を見極める。
詳しくはわからないが、どうやら刀身が分裂し、それぞれの刃を金属の紐で繋げている様だ。
- 78
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:48:25 ID:ErvSmjSo0
(゚、゚トソン「む……速いですね……」
(;^ω^)「なるほど、蛇腹剣ってとこかおね」
こっそりと魔法で速度を上げていた僕は、再びトソン君と大きく距離を空ける。
トソン君が剣を引き戻すと、再び剣は元の形に戻った。
作り手の胡散臭さはさておき、あの剣は相当厄介な代物のようである。
剣としても使え、鞭のような使い方も出来、小柄なトソン君のリーチ不足を補って余りある武器だ。
(;^ω^)「今一つ、構造がわかんないとこあるけど興味湧いたお。1度そのサースガって人に会ってみたいおね」
(゚、゚トソン「随分と余裕ですね」
(;^ω^)「いやー、そうでもないお。割とギリギリなとこだお」
ギリギリだからこそ、こうやって間を作っていたりするのだ。
魔法の連発はしんどいし、次の手を考える時間も欲しい。
トソン君を多少走らせてみたが、全くの涼しい顔をしている。
流石騎士といった所である。
僕もそれなりに鍛えてはいるが、やはり騎士と魔法使いの体力勝負では分が悪い。
- 79
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:50:00 ID:ErvSmjSo0
(゚、゚トソン「そうですか。では、一思いに貫いて差し上げましょう!」
トソン君がこちらに駆け寄って来る。
先ほどよりは遠くから攻撃を仕掛けてこられる事を考えると、
遠距離攻撃で対抗するならもっと距離を空ける必要があるだろう。
( ^ω^)(……と、トソン君は考えるだろうね)
剣の煌めきが眼前に迫る。
鞭の様にしなる一撃が届くより早く後方へ走り出した。
(゚、゚トソン「待ちなさい! 往生際が悪いですよ?」
逃げる僕をトソン君は追って来る。
距離が詰まると剣を振るい、僕を執拗に狙って来るが、僕はそれを回避する。
僕らはサンライズからだいぶ離れ、ヴィップの町中を疾走していた。
(゚、゚トソン「ちょこまかと! それでも男ですか! 逃げずに戦いなさい!」
( ^ω^)「これも勝利への布石だお。悔しかったら当ててみろお!」
- 80
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:51:02 ID:ErvSmjSo0
(゚、゚#トソン「ならば食らいなさい! そして死になさい!」
(;^ω^)「っと、ヤベ!? つーかもうちょっと手加減しろお」
僕の背後で何かが崩れ落ちる。
それが見覚えのある畑にある物置であった気がするが、今はそんな事を気にしている余裕はない。
人的被害が出なければセーフという事にしておこう。
(゚、゚#トソン「いい加減ッ!」
( ^ω^)「当たらねえお!」
トソン君が剣を振るい、僕がそれをかわす。
無限に続くかに思える鬼ごっこは、いつの間にかある種のパターン化していた。
(゚、゚#トソン「今度こそ!」
( ^ω^)「はっずれーだお!」
そしてそれこそが、僕の狙いでもあった。
トソン君の攻撃が単調になりつつあるのを確認し、僕はこっそりと風の障壁を張る。
- 81
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:53:04 ID:ErvSmjSo0
(゚、゚#トソン「いつまで逃げ続け──」
( ^ω^)「いや、もう鬼ごっこは終わりだお!」
(゚、゚トソン「!?」
既に何度も見て覚えたトソン君が振るう剣の軌跡をかわし、僕は最高速で一気に距離を詰める。
遠距離攻撃が魔法使いとしての戦い方の基本ではあるが、僕にはこれがある。
⊂二二二( ^ω^)二⊃「ksk! ブーン・クラァァァァッシュ!!!」
(゚、゚;トソン「しまっ──」
剣を突き出した姿勢のまま、驚愕に満ちた目だけを僕に向けてくるトソン君。
次の瞬間、鈍い音と共に、小柄なトソン君の身体が宙を舞った。
ヽ( ^ω^)ゝ「決め……って、やりすぎたかお?」
中間距離からであったので、そこまで速度は付いてなかった。
しかし、それでも人1人弾き飛ばすほどの威力はあったのだ。
聖騎士の鎧があるから大丈夫だろうと思って使ったのだが、骨折ぐらいさせてしまったかもしれない。
- 82
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:54:59 ID:ErvSmjSo0
川 ゚ -゚)「おお、ブーンが勝ったか。流石だな」
( ^ω^)「ちょっとヤバかったけどね……って、おい、お前、ちょっとそこに正座しろお」
もっと近くで戦えよと文句を付けながらも追いかけて来たクーに、僕は怒りを顕に詰め寄る。
川 ゚ -゚)「悪かったって。ほんの軽いお茶目だから」
(#^ω^)「お前、それで済むと思ってるのかお? 大体……」
( 、 トソン「姫様から離れなさい……」
(;^ω^)「お……」
川;゚ -゚)「……クーだってのに」
クーの背後に、ふらふらと立ち上がるトソン君の姿が見える。
どうやら骨折はしてないようだが、ダメージは深刻だろう。
(;^ω^)「トソン君、もう少し休んでた方がいいお。あれ、僕のスペシャルだから結構痛かったお?」
- 83
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:56:18 ID:ErvSmjSo0
( 、 トソン「スペシャル……そうですね、貴方は魔法使いでしたね。その存在を考慮すべきでした」
(゚、゚トソン「しかし、私も聖騎士です。そして──」
トソン君が剣を片手で逆手に持ち、反対の手を胸の前に挙げる。
(゚、゚トソン「私にもスペシャルがあります!」
(;^ω^)「!?」
すっかり失念していたが、聖騎士ならば魔法、それも神聖魔法が使えてしかるべきだ。
多分、今立ち上がって来れたのも回復系の神聖魔法を使ったのかもしれない。
そしてトソン君がいうスペシャル、ニューソク騎士団伝統の──
(゚、゚トソン「我が舞踊魔法、受けてみなさい!」
(;^ω^)「クッ!?」
慌てて杖を構え、対抗呪文を張る準備を整える。
- 84
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:58:02 ID:ErvSmjSo0
舞踊魔法は詠唱手順が舞踊、踊りである。
詠唱の邪魔を出来れば手っ取り早いが、踊りは踊りでも剣舞だ。
下手をすれば舞の段階で斬られる可能性もある。
遠距離攻撃も生半可なものでは容易にかわされてしまうだろう。
川 ゚ -゚)「勝負あったな……」
(;^ω^)「……」
淡々としたクーの言葉が耳に響く。
どんな強力な魔法を繰り出されるのか、この段階では想像も付かない。
また逃げの一手を打つ方がよかったのかもしれないが、判断が間に合わなかった。
(゚、゚トソン「いきます!」
(;^ω^)「!?」
川 - -)
- 85
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:00:04 ID:ErvSmjSo0
/ヽ フニフニ
| |
| |(゚、゚トソン
┳〜| |〜
(((( < ̄> ))))
ホヨホヨ
__
┫__>
人
(゚、゚トソン
| |
(((( < ̄> ))))
モッサモッサ
__
┫__>
(((o(゚、゚トソン
/ /o)))
< ̄>
/ヽイェイイェイ
| |
| |(゚、゚トソンo)))
(((┳oヽ ヽ
< ̄>
- 87
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:02:08 ID:ErvSmjSo0
( ^ω^)
川 ゚ -゚)
(((o(゚、゚トソンo))) シェイク シェイク
( ^ω^)「……えっと」
トソン君の踊りは、その、控えめに言ってものすごく下手だった。
何というかたどたどしいステップでぎこちなく動き、時々間違ったのか同じ踊りをやり直したり、
一向に完成する気配がない。
川 ゚ -゚)「あいつさ……リズム感全くなくってな……」
( ^ω^)「ああ……」
┌
└(゚、゚トソン シェー ア、コレチガウ
┘
クーの言葉通り、勝負あったようだ。
僕は捕縛の魔法を尚も踊り続けるトソン君に向けて解き放った。
- 88
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:03:36 ID:ErvSmjSo0
-
|
| プラーン
|
=
八
|≡|
(。´。 ト/vヽ
ムネン…
僕は不本意ではあるが、トソン君を魔法の縄で縛り、近くの木に吊り下げた。
逆さにする必要はなかったかもしれないが、これで少しは怒りが納まってくれる事を願う。
川 ゚ -゚)「いや、逆さ吊りにされたら逆に怒るだろ。頭に血が上るし」
(;^ω^)「いいからちゃんと説明しろお。誤解が解けたら下ろしてやれるから」
クーも一応は反省してるのか、この町に来た経緯、そして解呪の依頼についてトソン君に説明する。
最初僕に言わされてるのではと疑っていたトソン君だが、
説得の間にバーボンハウスからあの時の依頼書の控えを借りて来て見せた事もあり、納得してくれた様だ。
(゚、゚トソン「ええっと、そうなるとつまり僕は……」
川 ゚ -゚)「うむ、無実の相手を死ねだの暴言吐きまくって追い回してた事になるな」
(;、;トソン「もおおおおおしわけえええええええええございませええええええん!!!」
- 90
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:05:01 ID:ErvSmjSo0
(;^ω^)「いや、全部クーの所為だろうが。何トソン君の所為にしてんだお」
今回の事は、悪ふざけにしては少々度が過ぎていたと思う。
クーには反省してもらわないと、僕にもトソン君にも申し訳が立たない。
川 ゚ -゚)「……悪かった。すまない、トソン、そしてブーン」
(;、;トソン「ひめさまぁぁぁぁぁ! もったいなきお言葉ああああああああ!」
川#゚ -゚)┌┛「クーだって言ってんだろうが!」三Σ(;´;
ト/vヽ アアン!
(;^ω^)「ちょ、蹴るなお。すげえ揺れてるから」
僕はトソン君を下ろし、改めて僕からも謝罪する。
僕も被害者ではあるが、今回の件はクーが僕の店でのバイト中の出来事で、僕の監督不行き届きの部分もある。
( ^ω^)「クーも悪かったお。ちょっとクーを便利に使い過ぎてたと思うお」
川 ゚ -゚)「ブーン……」
思えばクーははっきりと仕事に対する不満を述べていたではないか。
その正当性は少々怪しいとこはあるが、確かに僕は配慮がなかったかもしれない。
今度からは店番をさせる時は、暇な時にやる仕事もちゃんと考えておこうと思う。
- 91
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:06:37 ID:ErvSmjSo0
川 ゚ -゚)「いや、それは……私のわがままで……」
( ^ω^)「でも、クーはバーボンハウスの仕事については不満言ってないお?」
( ^ω^)「やっぱりちょっと僕の仕事のさせ方が悪かった所あるお」
根は真面目なのだ。
だから、ちゃんと仕事の忙しいバーボンハウスでは不満も言わず働いている。
たまに愚痴る事ぐらいはあるだろうが、それでもちゃんとやっている姿は何度となく目にした。
サボってるように見えた、わんわんおに芸を教えてた事も、本人なりに真面目に考えていたのかもしれない。
( ^ω^)「今まで店番してくれるのツンぐらいで、ツンは言わなくても勝手に色々やっててくれてたから」
( ^ω^)「それに甘え過ぎてたお。これじゃ店長失格だおね」
川 ゚ -゚)「ブーン……本当にすまなかった」
( ^ω^)「いいんだお。それにひょっとしたらまだ謝らなきゃいけないことあるかもだし」
僕は改めてトソン君にどうやってヴィップの町に辿り着けたのかを尋ねる。
クーがどうしてヴィップの町にいるのがわかったのか、それ次第では僕はまた謝る必要があるのだ。
- 92
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:08:19 ID:ErvSmjSo0
(゚、゚トソン「クー様が王宮を抜け出され、失意の底にあった僕はクー様を追い掛ける事を決意しました」
(゚、゚トソン「しかしながらクー様がどこへ向かわれたのか、誰も知る者はいません」
(゚、゚トソン「そこで僕は、これの存在を思い出したのです」
そう言ってトソン君が取り出したのは1枚の小さな鏡。
どうやら、僕の予感は当りそうな気配だ。
川 ゚ -゚)「それは、これの追跡用の鏡か?」
クーはペンダントを取り出し、トソン君に見せる。
トソン君は力強く頷き、予備ですがと補足する。
川 ゚ -゚)「……で、それに私の居場所が映ったのか?」
(゚、゚トソン「はい!」
( ^ω^)「……」
- 93
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:09:59 ID:ErvSmjSo0
(゚、゚トソン「一瞬だけですが」
川 ゚ -゚)「一瞬だけ? どういう事だ?」
(;^ω^)「さ、さあ……?」
トソン君の話では、鏡を頼りに追おうとしたが何も映らず、仕方なく勘で探し始めた所、
1度だけ鏡に反応があったとの事だ
川 ゚ -゚)「何だそれは?」
(゚、゚トソン「それは僕にもわかりませんが……。それ以降は1度も反応ありませんでしたし」
(;^ω^)「……あ、思い出した。恐らくあの時だお」
僕はトソン君の話でとある事を思い出していた。
解呪の時、失敗して一瞬だけ魔法を発動させてしまった事を。
(;^ω^)「多分、その時のだお」
川 ゚ -゚)「おいおい、ホントに一瞬だけだろうな?」
- 94
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:11:07 ID:ErvSmjSo0
その心配は僕もしてたが、トソン君の話を聞く限りではその可能性はなさそうである。
トソン君は常に鏡を見ながら追跡していたという話だ。
川 ゚ -゚)「では、解呪は成功と見ていいのだな」
(;^ω^)「ミスったのは悪かったお」
川 ゚ -゚)「まあ、その位なら──」
(゚、゚*トソン「いえ、ミスしてくださってありがとうございます! お陰で僕はクー様の元に辿り着く事が出来ました!」
川 ゚ -゚)「やっぱり許さん」
(;^ω^)「悪かったお、時給ちょっとだけ上げてやるから」
川*゚ -゚)「ならば良し」
色々と疲れたが、何とか一段落したようだ。
怪我の功名とでもいうべきか、解呪が成功してた事もわかったし、これでようやく一息つけそうである。
僕は、だが。
- 95
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:12:50 ID:ErvSmjSo0
( ^ω^)「それで、トソン君はどうするんだお?」
(゚、゚トソン「どうする、とは?」
( ^ω^)「遥々ヴィップまで追って来てクーを見付けたんだお? クーを連れて帰るのかお?」
川 ゚ -゚)「!?」
僕の言葉に、クーが身を固くし、トソン君から一歩離れる。
聖騎士であるトソン君の立場と目的を考えれば、必然的にそうなるはずだ。
(゚、゚トソン「……」
しかし、トソン君はその問いには答えず、無言でクーを見詰める。
( ^ω^)「トソン君?」
(゚、゚トソン「僕は……、いえ、クー様はこれからどうなさるおつもりですか?」
川 ゚ -゚)「ここで借金を返して、それから世界を見て回るよ。世間知らずでは、人の上に立つには相応しくないからな」
(゚、゚トソン「そうですか……では……」
- 96
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:14:38 ID:ErvSmjSo0
トソン君は近くに寝かせてあった剣を取り、クーの前に跪く。
そして両手でクーに剣を捧げた。
(-、-トソン「僕はクー様にこの剣を捧げます。僕はクー様を守るためにここに来ました」
川 ゚ -゚)「トソン……」
(゚、゚トソン「僕はクー様の騎士になります。何卒、この剣を、僕をお使いください」
川 ゚ -゚)「……お前の剣は重過ぎる」
クーはトソン君から剣を受け取ると、よろめきながらそれを地面に下ろす。
そして剣の代わりに、その手をトソン君の肩に置いた。
川 ゚ -゚)「私はただの冒険者だ。そしてたまにアルバイトだ」
川 ゚ -゚)「だから騎士はいらん。……だが、友達なら一緒に旅をするのもかまわないだろ?」
(゚、゚*トソン「クー様……ありがとうございます。誠心誠意、お仕えさせて頂きます」
川;゚ -゚)「いや、だからそういうのじゃなくってだな……まあ、いいや」
- 97
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:17:08 ID:ErvSmjSo0
川 ゚ -゚)「まずは借金返済だ。手伝ってくれるか、トソン」
(゚、゚*トソン「喜んで!」
どうやらクーの方も話はまとまりそうだ。
連れて帰ってくれてもかまわなかったのだが、店番要員がいなくなるのも残念なので、良かったという事にしてこう。
まあ、折角仲良くなれた友達なのに、これでお別れなのは少し残念だと思うしね。
川 ゚ -゚)「ていうかトソン、騎士団の方は良かったのか?」
(゚、゚トソン「はい! ……クー様は僕が何のために騎士になったのか、ご存知でしょう?」
川 ゚ -゚)「……そうだったな。ありがとう、トソン」
(-、-トソン「もったいなきお言葉」
( ^ω^)「ホントにいいのかお? その鏡、貸してくれたって事はクーを連れ戻せって事じゃなかったのかお?」
(゚、゚トソン「大丈夫ですよ。これは勝手に持ち出したものですから」
( ^ω^)「おい、ちょっと待て。どこからだ? どこから持ち出した?」
(゚、゚;トソン「ま、まあ、それはそれとしてですね……」
- 98
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:18:27 ID:ErvSmjSo0
(;^ω^)「ひょっとして君、すごくまずい事になってないかお?」
川 ゚ -゚)「まあ、大丈夫だろう」
( ^ω^)「何でそう言えるんだお?」
川 ゚ -゚)「多分、私の時と同じ……じゃないかと思ってる」
( ^ω^)「……」
以前クーから聞いた話を思い出し、僕は曖昧に頷く。
見逃されているという事なのだろうが、その理由が何なのかわかっていない以上、簡単には安心出来ないものもある。
クーにじいちゃんの件を言い添えたのもトソン君ではないらしい。
(゚、゚トソン「それで、ブーン店長、早速で申し訳ないのですが……」
( ^ω^)「店長って……君、既にうちで働く気満々だおね? うちはそんなには雇えねえお?」
(゚、゚トソン「まずはクー様の借金の額をお聞かせ願いたいのですが」
( ^ω^)「ああ、ちょっと待ってお」
- 99
名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:20:36 ID:ErvSmjSo0
僕は2人にサンライズに戻ろうと提案し、自分だけ先に戻って借金の明細を準備する事にした。
(∪^ω^)「わんわんお!」
( ^ω^)「店番ご苦労様だお。ってか、開けっ放しで不用心過ぎたお。何もなかったかお?」
(∪^ω^)「わんわんお!」
( ^ω^)「それなら良かったお。あ、骨っ好食べるかお? 僕はちょっと書類書くからまた後でだお」
(∪*^ω^)§「わふわふお!」
僕は当初よりは少し減ったクーの借金の明細を持ち出し、そこに少し書き加える。
それから間もなくしてクー達が戻って来た。
( ^ω^)「はい、これだお」
(゚、゚トソン「ありがとうございます」
(゚、゚;トソン「……って、意外とありますね」
- 101 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:22:47 ID:ErvSmjSo0
川;゚ -゚)「こ、これでも少しは返したんだぞ? ちょっと見せてみろ!」
(゚、゚トソン「大丈夫ですよ! 2人で働いて返せばこんなのあっという間ですよ!」
川 ゚ -゚)「そうだな……って、ブーン! 何だこれ? 最初より金額増えてるじゃないか! どういう事だ?」
( ^ω^)σ「そりゃあ……」
詰め寄るクーに、僕はその背後を指差す。
その先にあるもの、いや、本来はあったはずのもの。
( ^ω^)「ドアの修理代だお。結構高いって言ったおね?」
川 ゚ -゚)
(゚、゚トソン
川 - )「……トソン」
(゚、゚;トソン「えーっと……その……」
- 102 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:24:41 ID:ErvSmjSo0
(^、^;トソン「だ、大丈夫ですよ! ふ、2人で働いて返せばこんなのあっという間ですよ!」
;;川 - );;「お前……」
怒りのためかその身を震わせるクー。
助けて欲しそうな目でトソン君が僕を見て来るが、残念ながら僕にはどうする事も出来ない。
僕に出来るのは、これから更に起こるであろう惨劇を少しでも和らげる事ぐらいだ。
ξ )ξ スッ…
いや、それも無理かもしれない。
一切表情の消えた顔で音もなく店に入ってくるツンを見て、僕に出来る事はもうないと判断した。
(゚、゚;トソン「え? こちらは、どちら様で……」
( ^ω^)「隣にある武術道場の娘で、僕の幼馴染のツンだお。クーの友達でもあるお」
ξ )ξ
(゚、゚;トソン「ど、どうもはじめまして、僕はトソン=トソンと申します。クー様の──」
( ^ω^)「そして、君がぶっ壊した畑の物置の所有者でもあるお」
(゚、゚;トソン「……え?」
- 103 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:27:22 ID:ErvSmjSo0
ξ^竸)ξ「あら、はじめましてトソンさん」
(゚、゚;トソン「えっと、その、あの……」
ξ#^竸)ξ∩;;「……それで、はじめましてでうちの畑を荒らすってどういう了見でしたのかしらね?」
(゚、゚;トソン「そ、それは、ふ、不可抗力で……」
ξ#゚听)ξ∩;;「歯を食いしばれええええッ!!!」
(;、;トソン「ひぃぃっ!? 姫様、助けてええええっ!」
川#゚ -゚)「クーだと言っとろうが、この駄目騎士!」
ξ#゚听)ξ∩;;「逃げるなああああッ!!!」
(;、;トソン彡「うわああああん!!!」
( ^ω^)「やれやれ、あの物置の見積もりも明細に足しておくかお」
(∪*^ω^)§「わふわふお!」
こうして、元聖騎士であるトソン君も、このヴィップの町で暮らす事になった。
第十四話 忠義の剣は戦場に踊る 終
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