7 :1代理 ◆X5HsMAMEOw :2005/12/04(日) 21:46:45 ID:lpETgJy90
( ゚д゚ )「ふんっ!」
ミルナがマルチーズで敵を蹴散らす。

( ゚∀゚)「ふっ!」
ジョルジュが、その剣技で敵をなぎ払う。

ジョルジュは、この数週間の間で、随分と腕を上げていた。


( ^ω^)「えいっ! えいっ!」
僕も、何もしないわけにはいかなかった。
実践で学んだ戦闘能力は、既に騎士団と同等なほどになっていた。


( ゚∀゚)「内藤、腕を上げたな!」
( ^ω^)「ジョルジュこそ!」

今の僕は、戦いを楽しんでいた。
12 :1代理 ◆X5HsMAMEOw :2005/12/04(日) 21:57:42 ID:lpETgJy90
( ><)「大将…、城門が突破されました。敵は現在、城のエントランスで交戦中とのことです」
( *’ω’*)「く、くそ! こんな所で倒れてたまるかっぽ! おい、貴様、残りの部隊を率いて敵を討てっぽ!」
( ><)「しかし…」
(#*’ω’*)「上官の命令も聞けないのかっぽ!!」
(;><)「わ、わかりました…」

―――城内、エントランス―――

( ゚д゚ )「…敵兵はほぼ殲滅したな。この城にいたのは残党か? あまり勢力はないようだったが」
( ∵)「裏があるやも知れん。注意を払う事にこした事はない」
( ゚д゚ )「…うむ、そうだな。部隊を三つに分ける。一つはここで待機、もう二つは東西の階段より王室へと向かってくれ」


その後、部隊が三つに分けられた。
エントランスで待機するのはミルナとジョルジュ達。
西の階段からは僕を、東の階段からはビコーズを中心にした隊が攻め入る事となった。

( ゚д゚ )「…深読みしすぎたか? 今更敵が出るとは思えぬが」
( ゚∀゚)「いや・・・、そうでもないみたいだ」
( ゚д゚ )「!?」

見れば、兵の一人の体が無数の切り傷を負っている。
その近くを漂うのは、【風】
19 :1代理 ◆X5HsMAMEOw :2005/12/04(日) 22:08:06 ID:lpETgJy90
( ゚д゚ )「・・・!? 魔法使いか!?」
( ><)「その通りです・・・」

ふと現れたのは、漆黒の装束に未をまとった男だ。


―――本城、西階段―――

( ^ω^)「はぁはぁ、あれが王室の扉だお!」

階段を駆け上ると、そこには王室の扉があった。
僕は、それを勢いよくあける!

( ^ω^)「・・・?」

不思議な事に、部屋の中には誰もいなかった。
あるのは……、不自然な形をした、男の死体だった。

( *-ω-*)「………」
(  ̄_ ̄)「…これは、ちんぽっぽ大将ですな。魔法使いに殺されているようだ」
兵士の一人が言う。これは一体、どういうことなんだろう?
33 :1代理 ◆X5HsMAMEOw :2005/12/04(日) 22:19:37 ID:lpETgJy90
( ゚д゚ )「ぐぅっ!」

突風を、マルチーズで受け止める。
その風は、後ろの大理石の壁さえも壊すほどの威力だ。

( ><)「…この城は私のものです。誰にも渡さない」
( ゚∀゚)「…貴様、ちんぽっぽではないな! ちんぽっぽは如何した!?」
( ><)「あの木偶なら既に殺しました。目障りでしかない」
( ゚д゚ )「飼い犬に手をかまれる…か。哀れなものよ。行くぞ、マルチーズ!」
( ><)「ふふふ…、部隊を分けたのは賢い選択であったな」


―――城内、王室

( *゚ω゚*)「チ…ン…ポッ……ポ……」
( ∵)「くっ! なんなんだ、こいつは!」
(  ̄_ ̄)「…呪術ですな。こいつはゾンビとなっている。呪術者を殺さねばこいつは死にませぬ」

あの後、ビコーズと合流した後すぐにだ。
ちんぽっぽ大将と思われる遺体が、急に動き出したのだ。
しかし目の焦点はなく、正気さえも感じさせない…!

( ^ω^)「…下でも戦いの音がするお! 多分、ジョルジュ達が術者と戦ってる! ここは、僕達で持ちきるお!
44 :1代理 ◆X5HsMAMEOw :2005/12/04(日) 22:32:00 ID:lpETgJy90
( ゚д゚ )「…くっ、この突風では進む事も出来ん!」
( ><)「その斧は、マルチーズですね。聞いたことがありますよ。神器とも呼ばれる素晴らしい武器だと。是非とも欲しい」
( ゚д゚ )「…我が先祖、ランゴパルトの血を引くものにしかこの斧は使えまい。貴様が手にしたところで、宝の持ち腐れだ」
( ><)「ふふふ…。別に、私が持つわけではありませんからね。ランゴパルトの血を引いているものは、あなただけではない」
(;゚д゚ )「!? 貴様、何を知っている!? 私には兄弟などいないぞ!」

ミルナが一瞬、油断する。その瞬間を逃さず、突風は一本の真空の剣となって、ミルナに向けられた。
だが、それよりも速く動き、真空の剣を打ち砕いた者がいた。ジョルジュであった。

( ゚∀゚)「油断するな、ミルナ! 聞くべきことがあるならば、生け捕りにした後にしろ!」
( ゚д゚ )「…うむ」

――――――本城
、王室


( *゚ω゚*)「チンポッポ……」

(;∵)「なんなんだこいつ! 頭を吹き飛ばしても、体を氷付けにしても再生しやがる!」
(  ̄_ ̄)「ゾンビを倒すには、術者自身を殺すか、聖なる魔法で浄化させるしかありませぬ。
ビコーズ殿。あなたは、その系統の魔法はお使いになれぬか?」
( ∵)「心得がないわけではない。よし、しばらく時間を稼いでくれ」
( ^ω^)「わかったお!」
56 :1代理 ◆X5HsMAMEOw :2005/12/04(日) 22:45:47 ID:lpETgJy90
( ゚д゚ )「しかし、突風の吹いている間はこちらから攻撃する事が出来ぬ。どうしたものか…」
( ゚∀゚)「俺がオトリになろう。マルチーズは遠距離からでも攻撃が出来るんだろう?」
( ゚д゚ )「うむ…。しかしジョルジュ、危険ではないか」
( ゚∀゚)「…あんたは少し甘いぜ。まあ、任せときな!」

そう言い、ジョルジュが駆け出す。
途端に突風はおさまり、真空の刃がジョルジュに向けられる。

( ゚∀゚)「速い…っ。だが、速さでなら俺は負けられん!」

ジョルジュは、その俊敏な動きで風を斬り、避け、男に近づいていく。

( ><)「中々速いですね。だが、これでどうか?」

男がそう言った途端、ジョルジュの体の八方向を真空の刃が取り囲む。
その刃は、数えるまもなく、ジョルジュを目掛けて飛んでいく!

( ゚∀゚)「くっ……!」
跳躍して避けるも、その刃は常に自分の死角、から飛んでくる。
男が、ジョルジュに注意を向けている証拠だ。

( ゚∀゚)「今だ! ミルナ!」
( ゚д゚ )「うおおぉぉおぉっ!!!!」
67 :1代理 ◆X5HsMAMEOw :2005/12/04(日) 22:58:58 ID:lpETgJy90
( ^ω^)「えいっ!」

僕の槍が、ゾンビの頭を打ち壊す。
だが、壊した頭部は、すぐにかけらが連結し、再生する!

(  ̄_ ̄)「ビコーズ殿、まだですか?」
(;∵)「すまぬ。使った事がないのでな…。もう少しだ」

会話をするまもなく、敵の攻撃がこちらに来る!
相手は一人、こちらは複数ということもあり、負けることはないと思っていた。

だが、突然、ゾンビの様子がおかしくなったのだ!


( *゚ω。*)「チチチチンポポポポッポポポポポ………!!!??!?!」
( ^ω^)「な、なんだお!?」
(  ̄_ ̄)「…! 術者の魔力が不安定な状態になり、体に掛けられた魔法が暴走している!」

途端、大地が激しく揺れる。
そして、その揺れがおさまったとき、目の前にいたのは………。


( ll。Д゚ll)「ア……ゥ…ア…チンポ……」

腐敗臭を全身から放つ、化け物であった。
88 :1代理 ◆X5HsMAMEOw :2005/12/04(日) 23:26:16 ID:lpETgJy90
その巨大な腕が、僕に向けられる。

( ^ω^)「くっ!」
咄嗟に槍で受け止めるも、凄い力である!
鋼の槍の柄が、今にも折られそうなほどの力だ…!

(  ̄_ ̄)「ふんっ!」
と、騎士が横から剣を一閃! その腕を、切り落とす。
だがしかし、その腕は先ほどと同じように再生を始める。

( ^ω^)「くっ…きりがない! 一体どうすれば!?」
( ∵)「……………」
( ^ω^)「ビコーズ?」
( ∵)「…多分、これで出来たはずだ。よし、皆! 下がってくれ!」

ビコーズの声で、全員が後ろに引く。
刹那、淡い光がゾンビの体を包み始める。


( ll。Д゚ll)「チンポ…ッ……ポ…?」

光は、ゾンビをそのまま包み込み、そして………。
音もなく、消えていった。

91 :1代理 ◆X5HsMAMEOw :2005/12/04(日) 23:27:46 ID:lpETgJy90
(  ̄_ ̄)「…ちんぽっぽ大将には、優秀な魔法使いの部下がいたと聞きます。大将の地位は、彼がいるからこそあったようなものだとも」
( ^ω^)「二人は、信頼しあっていなかったのかお…?」
(  ̄_ ̄)「ちんぽっぽは、彼を一度も褒めた事はありません。彼がどんなに自分を助けようとも…。
ちんぽっぽは、良い指揮官ではなかったようですね。ニュウソクの将と言えど、ハズレもいるものだ」
( ∵)「…彼も、しっかりと葬ってやらねばな」
ビコーズは、最初にこの城に入り、始末された使者を見ながら言った。

その後、僕達がエントランスに戻ると、そこには酷い光景があった。
壁は壊され、兵たちは深い傷を負っている。中には、死んでいるものもいた。

( ゚∀゚)「! 内藤!」
( ^ω^)「ジョルジュ…。何があったんだお!?」

ジョルジュは、ふと後ろを見る。僕も、その方向に目を向ける。

そこには、蒼白な表情をしたミルナと、ちんぽっぽの部下である魔法使いの死体が転がっていた。
94 :1代理 ◆X5HsMAMEOw :2005/12/04(日) 23:28:52 ID:lpETgJy90
( ^ω^)「ど、どうしたんだお?」
( ゚∀゚)「敵兵の嘘かも分からん。だが、あいつの話では……ギコ宰相が、ニイト国を裏切ったと…」
( ∵)「な、何!?」

ギコ宰相が…ニイトを裏切る!?
あんなにも、国のことを考えていた方が…? そんなこと、あるわけがない!

( ゚∀゚)「内藤、ちんぽっぽ大将は?」
( ^ω^)「既に倒したお。この城は、既に制圧したお」
( ゚∀゚)「分かった。では、俺たちは一旦、ニイトのレジスタンス支部に戻る。詳しい話はそこでしよう」

人がゾンビになったり、ギコ宰相が国を裏切ったり…?
わけの分からないことが続きすぎている。

この騒動……何か、裏があるに違いない。
僕は、改めてそう思った。
261 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/05(月) 14:34:25 ID:qCmjYi0D0
僕たちは、VIP王国全土の制圧に思考した。
その後、僕たちはニイト王の【勅命】で、ニイト国へと帰還した。

今、岐路に発ちながら僕はふとミルナを見る。

(lll゚д゚lll)「…」

ギコ宰相が国を裏切ったと言う話から、ミルナは口を聞かなくなった。
いつも、青ざめた顔をしている。

早く本国へ帰り、真実を知ろう…。




ここから第二章
269 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/05(月) 14:54:37 ID:qCmjYi0D0
( ♀-♀)「VIP国での働き、ご苦労であった。王も満足しておられる」
( ゚д゚ )「いえ…。勿体無きお言葉です

僕たちはまず、レジスタンス東支部にやってきた。
明日は、ニイト城にあるレジスタンス支部を目指す事になっている。

( ♀-♀)「君達も疲れているだろう。今日はゆっくりと休みたまえ」
( ゚д゚ )「あ…。すいません、話したいことがあるのです…。よろしいでしょうか」
( ♀-♀)「…構わないよ」


王が使いに出した騎士団の団長と、ミルナが別室へと歩いていく。
おそらく、ギコ宰相の事についての話だろう。
278 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/05(月) 15:14:38 ID:qCmjYi0D0
( ♀-♀)「…ギコ宰相の事だな?」
( ゚д゚ )「えっ……」

部屋に入るなり、私は彼に話の本題を見据えられる。

( ♀-♀)「荒巻氏から話を少し聞いたのでね」
( ゚д゚ )「…そうでしたか。それで…実際はどうなのですか?」
( ♀-♀)「聞いて、後悔しないかい?」


…その言葉こそが、もう答えであった。
彼もそれを分かっているはずだ。私に、気を使っているのだろう。


( ゚-゚ )「いえ…、やはり、結構です」
( ♀-♀)「そうかね。では、私はこれで失礼するよ」

彼は、椅子から立ち上がり、部屋を出ようとする。
だが彼は、部屋の出口で立ち止まり、振り返ると、私にこういった。

( ♀-♀)「いずれ貴方にも真実が分かる日が来る。唯一つ、マルチーズを手放してくれるなよ」

彼はそういい残し、部屋を出た。

( ゚д゚ )「マルチーズ………」


私は、部屋の隅に立てかけている巨大な斧を、虚ろな目で見つめていた。

279 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/05(月) 15:26:48 ID:qCmjYi0D0
ξ-_-)ξ「………」
( -ω-)「………」

僕とツンは今、荒巻さんのいる医療室にいる。
荒巻さんは完全に失明、視力がもう戻ることはないそうだ。

( ,' 3 )「…誰かいるのかい?」
( ^ω^)「内藤です」
( ,' 3 )「内藤君か…。いや、恥ずかしい所を見られてしまったな」
( ^ω^)「いえ…そんな…」

荒巻さんは、随分と謙虚だった。
自分のしたことが偉大な事なのに、それを誇ろうともしない。
それどころか、自分をさげすんだ目で見ている。

( ,' 3 )「私は禁術の代償に視力を奪われた。もう、君達と行動していても、足手まといになるだろう」
( ^ω^)「…そんなことは」
( ,' 3 )「そう言ってくれるな。励まされると、余計につらい」
ξ゚听)ξ「………」

( ,' 3 )「私は、レジスタンスを引退しよう」
284 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/05(月) 15:42:50 ID:qCmjYi0D0
( ∵)「………」

夜空には、満月が星々と共に輝いていた。
それを見て、自分の心は落ち着くのか、腹立たしくなるのかも分からない。
非常に、複雑な気持ちだった。

ξ゚听)ξ「ビコーズ、ここにいたんだ」
( ∵)「ん? ツンじゃないか。どうしたんだ?」
ξ゚-゚)ξ「荒巻さんが、貴方を呼んでいたわ」


爺ちゃんが…? 一体、何の用だろうか。
私は、医療室へと足を運んだ。


( ,' 3 )「………」
( ∵)「………」

爺ちゃんは、私が部屋に入っても分からないようだった。
魔法使いは、魔力を持つものが近くまで来れば、己の魔力がそれを知らせるものなのだ。
禁術を使った事で魔力が鈍っているのか、魔力が単に衰えたのか…。私は、その姿を見るのがつらかった。

( ∵)「爺ちゃん。話ってなんだい?」
( ,' 3 )「…ビコーズか? 情けない姿を見せてしまうな…」
( ∵)「何をそんな…」
( ,' 3 )「お前に、渡しておかねばならないものがある」
289 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/05(月) 15:56:49 ID:qCmjYi0D0
私は、薄汚れた魔道書を手渡された。
魔道書の名は、【ボルゾイ】と彫られている。

( ∵)「これは?」
( ,' 3 )「マルチーズと並ぶ、【神器】だ」
( ∵)「……!? こ、この魔道書が!?」


そもそも、神器というものは、この大陸に文明が栄えた頃の代物である。
その昔、異国より【魔】と呼ばれる怪物が、この大陸を支配しようと攻め込んできた。
だが、その時勇敢にもそれらに立ち向かった戦士たちがいた。

その時の五人の戦士たちが使っていた武具を、天空の神々が祝福し、現世に残した物。
それが、神器である。いい例では、勇戦士ランゴパルトの使っていたマルチーズなどが挙げられる。

( ,' 3 )「私の家計は、魔女狩りで生き残った臆病魔法使いの血が流れている。勿論、お前の父親…私の息子もそうだ」
( ∵)「……」
( ,' 3 )「だが、お前の母親はそうではない。かの戦いに参加した偉大な魔道士の血を継いでいた。彼女がお前を私に預け、戦地に赴く時、私は同時にこれも預かった」
( ∵)「か、母さんが…?」
( ,' 3 )「そうだ。いずれこの地に何かがあれば、私が使おうと思っていたのだが…。ビコーズ、お前が使う方がフィルフュも喜ぶだろう」

私は爺ちゃんから、その魔道書……ボルゾイを受け取った。
ボルゾイは、私の手にずっしりと重みを感じさせた。
301 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/05(月) 16:13:31 ID:qCmjYi0D0
…………おや?
ここは……一体。

気付くと、僕はまた真っ暗な空間の中にいた。

ここに来るのは、これで三度目…。この前は、誰かに小石のようなものを投げられて終わったんだっけ。



『―――――ン』



ん? 今、何か聞こえた?



『――ホ―――ン』


…聞き間違いではない。誰かが、どこかで何か喋っている?
えっと? ホ……ン?  なんだ、そりゃ。


「内藤ホライゾン…」


…その声は、確かに僕の名前を呼んでいた。
312 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/05(月) 16:22:45 ID:qCmjYi0D0
ヒタ、ヒタ、ヒタ

今まで、足音に注意を向けたことはなかったが。
ここを歩く時、そう言えばいつも湿っぽい地べたを歩いているような音がする。
明かりでも、もっていればなぁ。

「内藤ホライゾン……、内藤ホライゾン……」


その声は、どこからかまだ聞こえる。
声に近づいているのは確かだが、その声の主はまだ見えない。
どうやら、声からして女性のようである。


( ^ω^)「…そこに誰かいるんですか?」


とりあえず、声を掛けてみる。



その途端、声が止む。そして、それと同時に、何か物凄い音が聞こえ始めた。
318 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/05(月) 16:30:44 ID:qCmjYi0D0
ダッ、ダッ、ダッ!!!

…! これは、獣が走り回る音!?
しかも、何匹かいる!?

その途端、その暗い空間に何処からか明かりが灯される。



そして、僕は驚愕した。
僕の目の前に、三匹の【何か】がいた。
僕には、それがなんなのかが分からない。見たこともない生き物だ。

ただ、似ているといえば……ゾンビにされたちんぽっぽ大将のようだ。
沢山の生き物をごちゃまぜにしたような…、そんな感じ。
その【何か】は、荒い息を吐きながら、僕を見つめ続けている。


「裏切り者……。裏切り者……」
そのうち、その中の一匹が人語を喋りだす。
その声は、先程聞いた声。普通の、女性の声に聞こえる。


だが、そんなことを悠長に考えている暇もなかった。
なんと、その獣が、僕に飛び掛ってきたのだ!
そして、その鋭利な爪で僕の喉を引き裂こうとしている!!


僕は、なす術もなく、目を強く瞑った。

319 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/05(月) 16:43:16 ID:qCmjYi0D0
( ^ω^)「っ!! が…ぁ…」

僕の喉がその爪に裂かれた。僕は…死ぬ…のか…?


しかし……何かへンだ。
喉からは血飛沫も出ないし、痛みも…感じない…?
でも、確実に喉は裂かれている。

それに、地面に倒されて始めて気付いたが…なんだ、この赤黒い地面?
この臭いは……血? まさか、これは血の塊?


(#゚;;o゚)「裏切り者……。何故、私たちを……」
( ^ω^)「…あーっ。あーっ」

喉を裂かれたのに、喋る事が出来る。
ど、どうなってるんだ? それに、裏切り者って…。

(#゚;;o゚)「内藤ホライゾン…。私たちは、貴方を信じていたのに…。貴方は…何故!!!」
( ^ω^)「なんのことだお!? 僕には何がなんだか分からないお!!」
(#゚;;o゚)「話を……ごまかさないでよ!!」

その、…多分、女がその爪で、今度は僕の肩を貫く。だが、先程とは…何かが違った。


( ;`ω´)「う…っ、、あああぁぁあああ!!!!」


肩が……焼けるように熱い…。い…いたい……!!
322 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/05(月) 16:52:27 ID:qCmjYi0D0
(#゚;;-゚)「そういえば、貴方は肩……だったわね。私は首だから、思わず首を狙ってしまったわ」
( ;`ω´)「ぐっ……。な…何のことだお…!!」

(#゚;;-゚)「……ねえ、内藤ホライゾン。今なら許してあげるわ。だからほら。私の手をとって」

【何か】がそういった瞬間、【何か】は人の形になって行った。
実に、何がなんだか分からない。

やがて、完全に人の形になったそれは、僕に手を差し出した。
僕に、手を取れといっていたっけ? 僕は……どうすればいいんだ?


(#・;;-・)「手を取りたまえ、内藤ホライゾン。もう一度来るがいい」
(#。;;o。)「さあ……内藤ホライゾン…」

他の二匹の【何か】も、僕のその手を取る事を強要してきた。

【何か】達は、僕の名前をずっと連呼し始めた。

内藤ホライゾン……内藤ホライゾン……内藤ホライゾン……内藤ホライゾン……内藤ホライゾン……

内藤ホライゾン内藤ホライゾン内藤ホライゾン内藤ホライゾン内藤ホライゾン内藤ホライゾン内藤ホライゾン
内藤ホライゾン内藤ホライゾン内藤ホライゾン内藤ホライゾン内藤ホライゾン内藤ホライゾン内藤ホライゾン

うるさい……うるさい……うるさい…!!!!


( ^ω^)「うるさいんだよおおおお!!!!!」

僕は、無我夢中で【何か】の手を払いのけた。
326 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/05(月) 17:07:16 ID:qCmjYi0D0
( ^ω^)「はぁっ! はぁっ! はぁっ!」
(;゚∀゚)「おい、大丈夫か内藤? 随分うなされていたが…」

次の瞬間、視界に飛び込んできたのは宿舎とジョルジュだった。
僕は、冷や汗を流しながら、ベッドの上に…いた。肩の痛みも、ない。

( ´ω`)「…すまんお、なんでもないんだお。悪い夢みたお」
( ゚∀゚)「そうか。朝飯できたらしいからな。食堂に行こうぜ」


…あの夢はなんだったんだろうか。
僕は……どうも、彼らに見覚えがあった。
いや、見覚えがある? 何か違う。なんと言うか、親近感がわくのだ。

……あんな、化け物たちに?

( ^ω^)「……今は深く考えないお。ご飯食べるお」

338 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/05(月) 17:26:50 ID:qCmjYi0D0
( ゚д゚ )「では、我々はこれより本城にあるレジスタンス支部へと向かう」

ミルナは、すっかりいつもの顔に戻っていた。
あの騎士団長と、何を話したのだろうか? もしかすると、ギコ宰相の裏切りの話は嘘だったのかもしれない。

( ∵)「了解だ」

ビコーズも、荒巻さんのことからは立ち直ったらしい。
それに、新しい魔道書も持っていた。名前は……ボルゾイ?

( ゚д゚ )「…む? ツン君の姿が見当たらんな。誰か知っている者はいないか?」

ミルナの言葉で、みんながハッとする。
確かに、ツンがいない。何処へ行ったのだろうか? 誰も心当たりはないようだ。

( ゚д゚ )「むぅ…。置いて行くわけにはいかんからな。内藤、探してきてくれるか?」
( ^ω^)「はいだお」



ツンは何処にいるんだろう? 

もう大体全ての部屋を回ったが………ツンが、いない。
340 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/05(月) 17:34:08 ID:qCmjYi0D0
( ゚д゚ )「いない?」
( ;^ω^)「…もう、全ての部屋を回りました」
(;゚д゚ )「ぬ…、嫌な予感がするな。みな、手分けしてツン君を探すのだ!」

騎士達が、次々とツンを探しに散らばっていく。
その場に残ったのは、僕とビコーズと、ミルナだった。

( ^ω^)「ツン……」
僕は、ツンのくれたお守りをそっと握り締める。
何処へ行ってしまったんだ……。


そんなことを、考えていた瞬間だった。


( ゚д゚ )「ぬっ!」

カン! と、金属が何かを弾く音!
見れば、ミルナがマルチーズで、何かの鋭利な骨のようなものを弾いていた。


(#゚;;-゚)「……それは神器か」
( ^ω^)「!!!」


そして、それを僕達に投げつけたであろう相手に………、、僕は、見覚えがあった。
342 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/05(月) 17:43:02 ID:qCmjYi0D0
(#゚;;-゚)「…マルチーズにボルゾイか。これは分が悪い」
( ^ω^)「……貴様ッ!!」

(#゚;;ー゚)「内藤ホライゾンだな? やはりここにいたか…」
(;∵)「貴様…! 【魔】だな!? 何故こんな所にいる!?」
(#゚;;-゚)「…私たちを知っているのか。まあ、そう焦る事もない。私たちに戦うつもりは無い。私たちは、そこの男に用があるのだ」

そいつは…、僕を指差して言った。

( ^ω^)「ツンを…ツンを何処にやった! 答えろ!」
(#゚;;-゚)「ツン? ああ…、この女か」

そいつが、印を結ぶ。
咄嗟にミルナとビコーズが構えるが、その印から出てきたのは魔法ではなかった。


ξ-_-)ξ「…………」
( ゚д゚ )「ツ、ツン君!? 貴様、何をした!?」
(#゚;;-゚)「そう焦る事もなかろう。用があるのは、そこの男なのだ」


そいつはそう言うと、僕の目の前にやってきた。

343 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/05(月) 17:51:56 ID:qCmjYi0D0
(#゚;;-゚)「取引をしようじゃないか。内藤ホライゾン、君のそのネックレス…」

そいつは、僕の首飾りを指した。
ツンからお守りとしてもらった、ネックレスだ。

(#゚;;-゚)「そのネックレスと、この女。悪い条件ではないだろう?」
( ^ω^)「…断れば?」
(#゚;;ー゚)「この女の命はないと思え」
( ^ω^)「…くっ!」

ツンの命とネックレス…? そんなの、天秤にかければ、どちらに傾くかは明白だ!

( ^ω^)「先にツンをよこせ! それからでいいだろう!?」
(#゚;;-゚)「…信用できんな」
( ^ω^)「僕だってお前を信用できないお!」
(#゚;;-゚)「まあ、いいだろう」

そいつがそう言うと、ツンの体が浮き、ミルナの方へ運ばれていく。

( ゚д゚ )「おっと」

ミルナが、ツンを抱きかかえる。
これで、ツンは安心だ。

(#゚;;-゚)「さて。その首飾りをもらおうか?」

僕は、悔しかったが、首飾りをそいつに投げ渡した。
345 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/05(月) 17:57:41 ID:qCmjYi0D0
(#゚;;-゚)「…貴様らは神器を持っているな。いずれ、また会う事になるだろう」

そう言うと、そいつは煙のように消えてしまった。


( ^ω^)「ツン! ツン! しっかりしろお!」
ξ-_-)ξ「………」
( ゚д゚ )「心配ない。眠っているだけだ。しばらくすれば目覚めるだろう」

僕はそれで胸のつかえがおりた。

だが、ビコーズが今度はさめた顔をしていた。


(;´∵)「………」
( ゚д゚ )「そう言えばビコーズ…。先程、あいつを【魔】と言っていたな? 何か知っているのか?」
( ^ω^)「それに、あいつはボルゾイのことを神器とも言っていたお」

(;´∵)「…詳しい話をしよう。こっちに来てくれ」


僕とミルナは、ビコーズに連れられ、医療室へと向かった。
その途中で、ツンを捜索していた騎士団には、先に城へ向かうようにと、ミルナが命令を出していた。
366 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/05(月) 18:21:36 ID:qCmjYi0D0
( ∵)「…爺ちゃん。今、【魔】が来た」
( ,' 3 )「ほう、【魔】が…」
( ゚д゚ )「なんなのだ? その、【魔】とは」
( ,' 3 )「【魔】…。それが現れたのは、今よりずっと古の事だ」


荒巻さんは、【魔】についてかたりだした。
371 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/05(月) 18:29:41 ID:qCmjYi0D0
話を簡潔にまとめると、こういう事だ。


今よりはるか昔、文明が栄えた頃だ。
この大陸では、【東】と【西】の国の二つしかなかったと言う。
双方の国は、その領土を我が物にしようと、戦争を続けていたと言う。

だが、その戦争に突如、終止符が打たれる事になる。
海を渡り、異国より【魔】と呼ばれる怪物が大陸を侵略し始めたのだ。

【魔】は、東も西も構わず、この大陸全土を我が物にするつもりだったらしい。
そんな中、【魔】に立ち向かわんとする五人の勇者達がいた。

彼らは、現在のブーン公国のある辺りにあったといわれる【魔】の根城に進入。
そして、【魔】の頭角を打ち滅ぼし、全ての【魔】を浄化させたと言われている。

これにより、領土戦争は終結。
それから、五人の勇者達がそれぞれの地域を治めるように、現在の五つの国ができたと言うのだ。

そして、その時の勇者達が使用していた武器に、天空の神々が祝福をかけたと言う。
これが、現在の神器である。


だが、一番不思議なのは、今の世に再び【魔】が訪れた事であった。
382 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/05(月) 18:39:41 ID:qCmjYi0D0
( ∵)「【魔】は神器を見て分が悪いと言っていた。おそらく、神器にはまだ恐れがあるのだろう」
( ゚д゚ )「…【魔】は、内藤の首飾りを奪って行ったな。何かあるのやも知れぬ」
( ,' 3 )「あやつらは、再び戦乱を起こそうとしているのかもしれない。ここ最近、ニュウソクの動きがおかしい事を考慮すると、裏で【魔】が動いている可能性も否定できない」

( ゚д゚ )「…レジスタンス本部にこのことを報告する。その後、我々は神器の探索に出かけよう」
( ∵)「幸い、ここにはマルチーズとボルゾイがある。残りの神器についての情報が何か得られれば良いが…」

( ゚∀゚)「それなら、俺に心当たりがある」

横で話を聞いていたジョルジュが、突然口を出す。

( ゚∀゚)「VIP王国のどこかに、彼の騎士、シャナルの使っていた剣があると聞く。詳しい場所までは分からんが、VIPの民に色々と聞いていけば分かるだろう」
( ゚д゚ )「成る程。それでは、いったんレジスタンス本部へ行こう。それから、我々はVIP国へと赴く。異議はないな?」


その場にいた全員が、うなずいた。
409 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/05(月) 19:05:49 ID:qCmjYi0D0
その後、僕たちはレジスタン支部にこのことを報告。
その後、VIP国のシン村へ向かい、そこで貴重な情報を得る。

その情報によると、剣は湖のほとりの洞窟の奥底に眠ると言う話だった。
僕たちは、その洞窟へと足を運んだ。


その洞窟に、何があるかも知らずに…。


ttp://sakots.pekori.jp/cgi/sn/src/up39290.png

437 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/05(月) 20:09:04 ID:qCmjYi0D0
( ゚д゚ )「この洞窟には、ニュウソク隊の残党が常駐しているとの話だ。気を抜かずに頼む」
( ^ω^)「ニュウソク隊…かお」

洞窟は、湖の滝の裏にあった。
普段は気づけない場所だが、シン村の住民が、村を救ったと言う恩返しで教えてくれた。

ならば疑問は、何故ここにニュウソク軍が常駐しているのかと言う事である。


洞窟の中は、とても薄暗かった。
湖から流れ込む水が、水路を作り、道を作っている。
基本的には一本道で、たいまつさえあれば通路にも困らぬような洞窟である。


( ゚д゚ )「おかしいな。そろそろ深く入ったと思うが、ニュウソクの部隊が見当たらん」
( ゚∀゚)「…確かに。普通なら、洞窟の入り口に見張りでもつけておくはずだがな」


だが、その言葉は、目の前にある不気味な物を見たとき、止まってしまった。
444 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/05(月) 20:18:03 ID:qCmjYi0D0
( ゚-゚ )「…人骨のようだな」
ξ゚听)ξ「………」

今回は、比較的少数の部隊で攻め込んでいるので、ツンや輸送隊も洞窟の中に入ってきている。
しんがりには僕とビコーズがいるが、そこからでもその人骨は見ることが出来た。
実戦経験の無いツンにとっては、見て吐き気がするものだろう。

( ゚д゚ )「何かあるやも知れぬ。気を抜くなよ」

ミルナの言葉で、僕は銀の槍を強く握り締めた。
もう、ツンを危険な目にはあわせたくないからだ。



道中には、点々と人骨が落ちていた。
洞窟の中腹に差し掛かる頃には、分岐路もあったが、人骨はまるで僕たちの道しるべになるかのように、落ちている。


やがて、洞窟の最深部であろう。開けた場所に出た。
447 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/05(月) 20:25:59 ID:qCmjYi0D0
( *゚ω゚*)「チン……ポッ…ポ…」
(;゚д゚ )「な、な!?」

そこにあったのは、紛れもなく……あの時、ゾンビとなったちんぽっぽ大将の姿だ。
しかも、一人だけではない! 数匹いる!

( ゚д゚ )「くっ! 道中にあった人骨……。ニュウソク軍、こいつらに食われたのか!?」
それぞれが、武器を構える。

が、その瞬間、銃声!
音の方向を見れば、なんと、ニュウソク軍の生き残りが応戦しているではないか!

(;´・ω・`)「くそ! こんなところで倒れてたまるかいな!」
( ^ω^)「ショ、ショボ隊長!?」
(;´・ω・`)「!? 貴様、内藤ホライゾンか!? 戦死したと聞いていたが…まさか寝返っていたのか!?」

ここにいるのは…18番隊!?
だが、生き残りの中に、毒男の姿は無い!

( ^ω^)「隊長…、毒男は」
(;´・ω・`)「うるさい! 話している暇があったらこいつらを何とかしろ!」
457 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/05(月) 20:39:20 ID:qCmjYi0D0
( ゚д゚ )「くっ! こいつらは私が何とかしよう! 内藤はツン君たちを守ってくれたまえ!」
( ^ω^)「は、はいだお!」


( ∵)「…こうも数が多くては、光の魔法を使う時間はない。ここは、ボルゾイを試してみるか」


( ゚д゚ )「ふんっ!」
( ゚∀゚)「はっ!」
ミルナが、ジョルジュがその武器でゾンビを斬り倒す。
だが、ゾンビは再生をはじめる! 倒しても、倒しても数は減らない!

(;゚д゚ )「ど、どうなってるんだ! 何故倒れない!?」
(;´・ω・`)「つい数時間前のことだ。我々がここに留まっていると、突然女が現れたのだ。その女はそこの台座の剣を抜こうとしたが…」
( ゚∀゚)「!? あれが神器、ブリアードか!」
(;´・ω・`)「どうも、抜けずにいたらしい。その後、女がこちらを睨んだかと思うと、突然こいつらが現れた。逃げようとしたものは皆食われた」
( ゚д゚ )「……なるほど。あの人骨はそのせいか」


( ゚д゚ )「しかしきりがないな! どうする!?」
( ゚∀゚)「く……、逃げるしかないのか!?」


と、その時、ビコーズの大声が洞窟内にこだました。

( ∵)「皆下がれ! でかいのをぶちかますぞ!」
474 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/05(月) 20:50:15 ID:qCmjYi0D0
ビコーズの持つ魔道書から、突風が吹き出される!
その風のすさまじさは、ニュウソクの城で相手にした魔道士以上!
風は、ゾンビの体を切り刻む!

そして、立て続けに炎と氷が、まるで龍の様に閃光となって空気中を駆け抜ける!
閃光はゾンビの体を、これでもかと言うほどに何度も貫通する!

だが、それでもゾンビの体は再生する!

( ゚д゚ )「くっ…。魔法でもダメなのか!?」
( ∵)「まだだ! まだだ!」

ビコーズがそう言った刹那、魔道書から一筋の光の帯が空へと登る。
その光の筋は、空中で肥大! 途端に激しい音を立てて破裂する!
無数の光の閃光は、壁に跳ね返り、ゾンビの体だけを正確に貫いていく!

やがて、その光の閃光が消えていく頃。
そこには、既にゾンビの姿はなかった。
492 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/05(月) 21:01:47 ID:qCmjYi0D0
(´・ω・`)「す、すさまじい……」

唖然とする隊長の喉元に、ミルナがマルチーズを突きつける。

( ゚д゚ )「すまぬな。お主には、我が国の捕虜となってもらう」
(´-ω-`)「…あぁ。今更戻った所で、私は処刑される身であろう。それならばいっそ捕虜となろう」

隊長は、以前見たときよりも、どこか弱弱しい感じであった。

僕は、ツンを遠ざけ、隊長と話しをすることにした。
あの村を襲撃したのは、隊長の部隊だ。ツンには、隠しておきたい。


( ^ω^)「…隊長」
(´・ω・`)「内藤か。あの村の襲撃のすぐ後、我ら18番隊は意気揚々と城に帰った。
その後、勅命を受け、我らはVIPの占領部隊として、VIPに送り込まれたのだ。だが…」
( ^ω^)「…?」
(´-ω-`)「貴様と同い年のあの…毒男と言う少年。彼が、突然隊から消えたのだ。我々はそのことを気にも留めていなかったのだが…。
数日後、黒装束をまとった毒男が、私たちをこの洞窟に隔離したのだ。それからすぐであった。あのゾンビが現れたのは…」

( ^ω^)「!? では、毒男は今日隊長たちをこの洞窟に!?」
(´・ω・`)「…そうだ。あいつは、今までと何かが違っていた。近くにいるかも知れん、気をつけたまえ」


( ^ω^)「毒男が…? どういうことだお…?」
497 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/05(月) 21:13:52 ID:qCmjYi0D0
( ゚д゚ )「ふんんんんっ!!!」

ミルナは、台座にある剣…。神器、ブリアードを抜こうとしていた。

(;゚д゚ )「抜けんな。どうなっているのだ」
( ∵)「マルチーズをランゴパルトの血を引く貴方が使えない事と同じではないだろうか?」
( ゚д゚ )「しかしそれでは、手間がかかるな。神器を探し出すのに、いちいち適正者を見つけねばならぬ」
( ゚∀゚)「どいてみ、俺が抜いてやろう」

ジョルジュがミルナを押しのけ、その剣の柄に手をかける。
ジョルジュが手を引くと、その剣はスッ、と地面から抜けた。

( ゚д゚ )「ほう、これは…」
( ∵)「ジョルジュ、お前まさか…」
( ゚∀゚)「…………ふっ、何も言うな」



ビコーズは知っていた。
だいぶ昔、VIP王の第二子息である男の子が、行方不明となっていた事を……。
520 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/05(月) 21:36:43 ID:qCmjYi0D0
(#゚;;-゚)「…毒男」
('A`)「なんでしょうか、デイ様」

毒男は、静かにデイに頭を垂れる。
その様子は、まるで飼い主と、犬のようだ。

(#-;;_-)「私は純系の【魔】だ。神器を抜く事が出来ぬ」
('A`)「はっ」
(#゚;;-゚)「…やつらは、次に神弓キースホンドを取りに行くはずだ。貴様はもしかすると抜けるかも知れぬ」
('A`)「神器は、その昔の勇者の血を引くものにしか抜けないと聞きます」
(#゚;;-゚)「抜けぬならば、皆殺しにせよ。私の人形どもも、貸し与えよう」
('-`)「はっ…」
535 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/05(月) 21:50:03 ID:qCmjYi0D0
( ゚д゚ )「…キースホンドはここより北西のタナシン国の何処かにあるという。ただ、何処にあるかまでは分からない」
ξ゚听)ξ「タナシン国の人に聞くのはダメなの? ブリアードはシン村の人たちが教えてくれたから入手できたんでしょう?」
( -д- )「今度ばかりはそうもいかぬ。VIPならまだしも、タナシンとは敵対関係にある国だ。我々がタナシンに行く事さえ難しい」
( ^ω^)「それでも…、いかなきゃ、手遅れになってしまうお」
( ゚∀゚)「そうそう。とりあえず、行ってから考えればいいさ」
( ゚д゚ )「うむ…、そうだな」


僕たちは、北西のタナシン国に向かう事になった。


――――タナシンの寒村

('A`)「参ったなぁ…。俺もキースホンドが何処にあるかなんて知らないんだよな……ヘクシュ」
545 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/05(月) 22:05:16 ID:qCmjYi0D0
―――タナシン国、国境

( ゚д゚ )「私はコッチミルナ。ニイト国から王の使いとしてやってきた。これが親書である」
( =。=)「…悪いが、お引取り願おう。それが本物とは限らぬ。迂闊に敵国の者を入れることは出来ない」
( ゚д゚ )「…そうか」


( ゚д゚ )「やはりダメだ。親書は本物だが、見る目も持たぬ」
ξ゚听)ξ「で、でも、ここで諦めるわけにもいかないわよね! よし、私が説得してやるわ!」
( ^ω^)「ちょ、ツン!」


ξ゚听)ξ「ちょっと、あなた!
( =。=)「……?」
ξ゚听)ξ「私たちは大事な用があってここに来たの! 通しなさ……」
( =。=)「お、お、お王妃様!!? 半年も、ど、何処へ行っていたのですか!?」
ξ;゚-゚)ξ「え?」
( =ー=)「そ、そちらの方々は王妃の使いの方々ですね? ニイト国から来たと言う事は、遂に和解が決定されたのか!」


( ゚∀゚)「…ど、どういうことだ? ツンが…王妃?」
561 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/05(月) 22:22:13 ID:qCmjYi0D0
あの後、僕たちは国境警備隊に案内され、近くの寒村で休息を取る事となった。
今は、村の旅館で、仲間達と会議をしている所だ。


ξ゚听)ξ「…どう言う事かしら? 私が王妃なんて…」
( ∵)「単純に考えて、ソックリさんか何かだろう。身寄りの無い者が集まるレジスタンスにいたのだ。この国の王妃の隠し子か何かかも知れぬ」
( ゚д゚ )「その場合は、ツン君。君がキースホンドを抜く事になってしまうな…」
ξ゚听)ξ「え!? 私がキースホンドを!?」

ツンは、戸惑っていた。
他に抜けるものがいないとはいえ、やはりツンは女。戦場には、出したくないと言う思いがあった。

ξ゚-゚)ξ「…内藤達が戦っているんだから、私だけ横で見ているわけには行かないわね。し、仕方ないから…抜くだけ抜いてあげるわよ」
( ゚∀゚)「ならば話は早い。王国兵ならば、神器のある場所を知っているだろう。よし、城に行くとしよう」


――――そのころ、タナシン城

( メ ̄。 ̄)「ぐっ……ぅ!!」
(;・д・)「貴様、い、一体何者だ!? 魔法使いだと!? 城を侵略して何になる!」

('A`)「……。神器キースホンドの在り処を教えてもらおう」
(;・д・)「そんなもの、教えられるわけが……!!」

毒男が手をかざす。
すると、そこからはたちまち炎が巻き上がり、その炎は兵士の身を瞬時に焼き尽くした。

('A`)「これ以上隠そうとするならば、民間人の命も保障はせんぞ…」
( lll。A。)「クッ…!!」
573 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/05(月) 22:32:28 ID:qCmjYi0D0
ξ゚听)ξ「…これは」

私たちがタナシン城についたとき、そこは既に半壊していた。
倒れていた兵士に話を聞くと、黒装束に身をまとった魔法使いが、一人でここまでしたのだと言う。
そしてもう一つ気になる事に、その男はキースホンドの在り処を聞いたという。

( ;^ω^)「まずいお、それは多分毒男だお!」
( ゚д゚ )「毒男というと…この前、ショボのいっていた例の魔法使いか」
( ゚∀゚)「…【魔】の方も神器を狙っていると言うわけか。これは急いだほうがいいな」


私達は、兵士から聞いた情報を元に、キースホンドの眠る吹雪の山の洞窟へと行く事にした。
584 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/05(月) 22:47:13 ID:qCmjYi0D0
( ゚д゚ )「ここがその洞窟か」

そこは、山の中腹にあった。
普通なら足を踏み入れない、吹雪の山の中だ。誰も立ち寄る事は無い。

だが、その万年氷で封印されているはずの扉は、見る影も残さずになくなっている。
おそらく、毒男の仕業だ。


―――

洞窟の中は、とても寒かった。
少し動きにくいが、城で貰った防寒具が役に立っているようだ。
凍傷を絶対に起こすので、ミルナは鎧を脱いでいる。


( ゚д゚ )「奥には【魔】がいるわけだな。奴ら、どうやらビコーズ君の光魔法でしか撃退できぬようだが…、どうしたものか」
( ∵)「心配ない。光の魔法にも慣れてきた。詠唱もすぐに終わるだろう」
( ゚∀゚)「神器も長い封印でその効力を失っているのだろうな…」



やがて、僕達は開けた広間に出た。
そこで僕の視界に入ってきたのは、巨大な氷の中に封印された美しい弓と、そこにたたずむ毒男の姿であった
750 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/06(火) 14:56:56 ID:u9VYnEPn0
( ^ω^)「…毒男! やっぱり毒男だお!」
('A`)「!? お前は誰だ? 何故俺の事を…」

毒男はどうやら、僕の事をおぼえてはいないようであった。
少し、腹立たしい。

( ^ω^)「…18番隊の内藤ホライゾンだお」
('∀`)「ああ、あのヘンピな村を襲った時、俺と話した奴か」
ξ゚-゚)ξ「……………!」

ツンは、今にも叫びだしそうだったが、自分でそれをこらえていた。

('A`)「デイ様が直、ここに神器を求め、来る者達がいると言っていた。お前達か?」
( ゚д゚ )「…おそらく、そうだろう」
('-`)「ならば話は早い。適性者がいるのだろう?その弓を抜いてくれたまえ」
( ∵)「貴様は【魔】に下り落ちたものであろう? 何故神器を欲する」
('A`)「目的にこだわる必要など無い。俺の任務は、こいつを破壊する事だ」
( ゚∀゚)「…無理な話だな」
('-`)「ならば……、その武器に訴えるが良い!」
756 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/06(火) 15:11:48 ID:u9VYnEPn0
ジョルジュが、ブリアードを持ち直して駆け出す。
それに呼応するように、ビコーズとミルナもそれぞれ武器を構える。
僕は、後ろに下がり、ツンを守る。

('A`)「貴様らの相手は、こいつで十分だ! 適性者は……内藤、貴様か? それともそこの女か?」

毒男が指をはじいた瞬間、何体かのゾンビが現れる。
その数はそれほど多くはないものの、光の魔法でしか倒せない分、こちらが圧倒的に不利になる。

( ゚д゚ )「くっ…! ビコーズ君、君は魔法を頼む! ジョルジュはその男を、内藤はツン君を!」

ミルナが指示を出し、腰からトマホークを抜き出す。
そして、それを、遠心力に任せ、思い切り投げつける!

('A`)「無駄だ。その程度では俺の人形は……………!?」

驚いたのは、毒男だけではない。
僕も、ビコーズも、そして当のミルナまであいた口がふさがらない!

なんと、トマホークに斬られたゾンビは、そのまま地面に腐った液体と成ったのだ。

('A`;)「な、何故だ!? 何故、何故!? デイ様、何故だ!!」
( ゚∀゚)「っ! 隙ありだ!」

焦り、見境をなくしていた毒男の首首元に、ジョルジュのブリアードの刃先が向けられた。
758 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/06(火) 15:21:32 ID:u9VYnEPn0
('A`;)「………そんな」

毒男は、観念したように、ガクリと膝を落とした。

( ∵)「…デイ様、と言っていたな。何者だ?」
('A`)「言えるわけないだろう…」
( ゚-゚)「言わぬなら、この場でその首を切り落とそう」
('-`)「…………俺は、最初から信用されてなどいなかったのだ。今更何を言おうと………」



毒男の言葉は、そこで止まった。
…………そして、腹から、物凄い量の血を出し、毒男はその場に倒れた。

見れば、毒男の背中から腹までを、とても長い刀が貫いていた。


(#゚;;-゚)「…一人ではろくに戦えもせぬか。やはり使えぬ男よ」
( ^ω^)「貴様かお……デイと言うのは」
(#゚;;ー゚)「いかにも」


そいつは、不敵に笑っていた。

759 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/06(火) 15:27:14 ID:u9VYnEPn0
( ^ω^)「なぜ、毒男はお前なんかについたんだお!? 前にあった毒男は…優しい奴だった! お前が毒男を変えたに違いないお!」
(#゚;;-゚)「…私は何もしていない。その者の【望み】を叶えたに過ぎぬ」
( ^ω^)「望み? 毒男は…自らこれを望んだと言うのかお?」

(#゚;;-゚)「その男の昔話をしてやろう。とても、つまらない話だ」

デイはそういうと、毒男の昔を語りはじめた。

760 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/06(火) 15:33:58 ID:u9VYnEPn0
毒男は、無職だった。
職面接に行けば断られ、何処のアルバイトにもつけなかった。

だが、そんな毒男には一つの取り得があった。
それは、腕っ節だ。毒男は、喧嘩が強かったのだ。


('A`)「……おい、そこのお前」
( lーl)「ぁ? なんだ、ヒョロ野郎?」
('A`)「金を出せ。命が惜しかったらな」
(#lーl)「…調子に乗るのもいい加減にしろやコルァアァ!!」


―――――――――――――

('A`)「ふう、これで今日もメシにありつけるな」
(#lД゚l)「……ぁ…ぅ…」



毒男は、お金を【稼ぐ】のではなく、【奪う】ことで生きていた。
769 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/06(火) 15:50:40 ID:u9VYnEPn0
そんな毒男は、ある日思いつく。
この腕っ節の強さを、仕事に活かせないか…!?

その次の日、偶然とも言うほどのタイミングで、毒男のもとに一枚の手紙が届いた。
ニュウソク国で、志願兵募集とのおふれであった。


('A`)「……」
だが、そこは毒男の考えていた世界とは違った。
下級兵士の戦闘は、剣などは使わず、銃で行う。
その腕っ節など活かす機会もなかった。そしてなにより、毒男は銃の扱いが下手だったのだ。


その事で、何度も同じ部隊の隊員にバカにされた。
殴り倒してもやったが、集団で相手が攻めてくると、もうかなわない。
毒男はいつしか、【力】を欲するようになっていた。

770 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/06(火) 15:56:57 ID:u9VYnEPn0
そのうち、毒男には内藤ホライゾンという友人が出来た。
友人……と呼ぶにはふさわしくないかもしれない。一日、話しただけだが。

そしてその日は、初任務の日だった。
毒男は、緊張していた。人を気絶させる事はしばしばあったが、殺すまではさすがに嫌であった。
そこで隊長に質問をすれば、当たり前と罵られる。毒男は、心のどこかでで怒りを覚えていた。


それから数時間後だ。戦闘が、とうとう始まった。
毒男も銃を持ち、町を襲う。
だが、邪魔な良心が毒男を邪魔する。毒男は、自分が死ぬ事よりも、相手を殺すことを恐れていた。
あんなに、人を殴り飛ばし、金を奪ってきたのに、不思議な事だった。

結局、毒男は誰一人殺さなかった。

771 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/06(火) 16:01:26 ID:u9VYnEPn0
城に帰還して、毒男は隊長に酷く怒られる。
隊員たちも、自分をさげすんだ目で見る。

そして、友と思っていた内藤ホライゾンが戦死したと聞いたとき、毒男の中に何かの感情が芽生えた。

それは、憤怒か、憎悪か、怠慢か…。何かは分からないが、ぐちゃぐちゃな感情であった。



それから数日後、18番隊はVIP侵略の為、シン村を攻めることとなった。
毒男は、やはり人を殺しに行くのに抵抗を持っていた。
しかし、また何もしなければ、今度は体罰だけではすまなくなるかもしれない。

それが、毒男を不安にさせていた。

772 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/06(火) 16:07:30 ID:u9VYnEPn0
シン村に常駐していた18番隊に、電報が入る。
村に、ニイトの同盟軍が攻め入るとのことだ。

しかし、既にこのとき、毒男の姿はなくなっていた。
だが、部隊の者達は、それを気にも留めていなかった。


やがて、VIP城が制圧され、18番隊が城に戻ろうとしたときだ。
毒男が現れたのは。



そこからは、僕がショボ隊長から聞いたとおりだった。
毒男は部隊を滝の洞窟に隔離し、そのまま消えた。

773 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/06(火) 16:16:33 ID:u9VYnEPn0
( ^ω^)「不自然な箇所があるお。毒男は何故消えたお?」
(#゚;;-゚)「…ふふ。あの男は、単純であった。力をやると言ったら、ホイホイと付いて来た」
( ゚д゚ )「このゾンビ達は私の普通の武器で倒せたな。何故、毒男にまともな兵を貸し与えなかった?」
(#゚;;-゚)「もとより信用などしていない。己を過信するものは、いずれ己自身を滅ぼす。力を得て、毒男は己を過信する事しか出来なくなった。そこでもう、奴は捨て駒だ」」
( ^ω^)「だからって…! だからって、こうも容易く!!」
(#゚;;-゚)「感情に任せて文句を言うな。貴様とて、我々を裏切った身ではないか」


その言葉が、僕に重く響く。
宿舎で、あの暗い空間に行った時…。僕は確かに見た。デイを。

そして、デイが自分を裏切り者と言うのも聞こえた。
これがどういう事なのかは……既に、理解している。


(#゚;;-゚)「もう気付いているのだろう、内藤ホライゾン? 貴様は……」
( ゚д゚ )「な、何を言う気だ!!」

ミルナがその口を塞ごうとする。
だが、ミルナの体は、デイの体に触れようとした瞬間に跳ね飛ばされた。




(#゚;;ー゚)「貴様は………【魔】だ」
777 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/06(火) 16:26:03 ID:u9VYnEPn0
――――――――!!!

その言葉を聴いた瞬間、体中の血が、勢いよく体を駆け巡る。
心の臓はその鼓動を増し、額からは冷や汗が落ちる。
気付けば僕は、荒い息遣いをしていた。

ξ゚听)ξ「な、内藤が…? 何をい、言ってるのよ!!」
(#゚;;-゚)「嘘ではない。それが真実かどうかなど、その男自身が一番知っているだろう」
( ^ω^)「…………ぐっ、、」

僕は、地面にガクリと膝をつく。

ξ゚听)ξ「内藤!? 嘘でしょ、内藤!? ねえ、嘘って言ってよ!!」
( ´ω`)「………………」
( -д- )「そんなバカな事が…信じられるか。何とか言え、内藤。お前らしくも無い」

( ´ω`)「何回か、不思議な夢を見たお。その中で、デイのような奴が何人か出てきた。
そして、僕を裏切り者と罵ったお。でも、………僕が【魔】だなんて確証は…どこにもないお」
(#゚;;ー゚)「ほう、そのことを覚えているなら話は早い。貴様は、肩だったな。
これ以上お前のようなものがいるのも目障りなのでな。ここで私が直に消してやろう」


デイが、直刀を毒男の体から引き抜き、僕に突きつける。
狙っているのは……、僕の肩。

778 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/06(火) 16:38:30 ID:u9VYnEPn0
以前、宿舎で見たあの夢の中で、デイはこう言っていた。

(#゚;;-゚)「そういえば、貴方は肩……だったわね。私は首だから、思わず首を狙ってしまったわ」


デイは僕の肩を狙っている。だが、肩に刀を刺しただけでは、致命傷には至らない。

ならば、別の目的! つまり…!!

( ^ω^)「首だお! デイの首を狙うんだお! そこ意外を狙っても意味はない!」
(#゚;;o゚)「ぐ…っ! 以前、口を滑らせすぎたな! だが、それが分かったところで、どうしようもあるまい!!」

デイの刀が、僕に伸びる!
だが。それを別の刀が、勢いよく払った!

( ゚∀゚)「…もし、本当に内藤が【魔】だとしても。内藤は俺らの仲間だ。今更その絆を壊す事などできん」

そして、立て続けに大きな衝撃波と、業火がデイに向けられる。
デイはそれを刀で振り払い、間合いを開けた。

( ゚ー゚ )「全くもってその通りだ。内藤には、まだ槍の技術をマスターしてもらっていない。私が見込んだのだ、最後まで育てさせてもらうぞ」
( ∵)「あぁ。内藤がいたからこそ助けられた場面もある。何より、俺たちは同じ【レジスタンス】の仲間だ」


ξ゚听)ξ「ねぇ、内藤。私、貴方が兄さんを殺した事、知っていたわ。私、兄さんの後ろにいたから、銃を撃った貴方の姿も見えた。
私も最初は貴方を殺したかったわ。でもね、兄さんだって剣を持った。それは死ぬ覚悟が……あったから。今更、貴方に文句は言えないわ。
もしその事で気が病んでいたなら、今すぐそんなことは忘れて。私は………あなたがたとえ【魔】だとしても、………貴方が好きだから」
780 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/06(火) 16:43:41 ID:u9VYnEPn0
仲間たちの感情が……その優しさが……僕を包み込む。


僕は、一人じゃない。沢山の仲間たちに支えられ、今ここに立っているんだ!!


( ^ω^)「……デイ。たとえ僕が【魔】だとしても。それで何も変わりはしないお。
人の心は…そんなに容易くは無い! デイ、お前は悲しすぎる奴だお!」
(#゚;;-゚)「ぬかしおって! 今すぐ叩き斬ってくれる!!」

デイが僕を目掛けて突進する。
だが、僕は焦らない。焦る必要も、無い。


僕は、ゆっくりと、両腕を広げた。
787 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/06(火) 16:54:02 ID:u9VYnEPn0
ツンの歌っていた歌が、頭の中を過ぎる。


『光る風を追い越したら 何かがその先に待っている』



その『何か』とはなんだろう? 僕は、それを見てみたい。

だから僕は……今、光る風を追い越す!!


( ^ω^)「うおおおおお!!!!!」

右足を一歩踏み出した瞬間、意思とは関係なく左足が地面を踏みしめる!
後はそれの繰り返しだ。風の力を借りて、僕の速度はすさまじいものとなる!

( ゚∀゚)「くっ…! この俺でも目で終えぬ動きだ!? どれだけ速いのだ!?」

僕は、デイの周りを回る。何週も、何週も。
不思議と、目が回る事は無い。それどころか、何か気持ち良い。

( ∵)「内藤、私の力を受け取れ!」
ビコーズが、ボルゾイの魔道書から風神の力で、突風を作り出す!
その突風は僕の体を優しく包み、僕の速度をさらに上げた。


(#゚;;-゚)「どうなっているのだ! くっ! 視界が…定まらぬ!!」
790 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/06(火) 17:02:24 ID:u9VYnEPn0
( ^ω^)「ツン! 風を受け取れ!!」

僕がそう叫んだ瞬間、デイを覆っていた風の力の全てが、ツンへと流れ込む。

ξ゚听)ξ「内藤! 貴方の風、借りるわよ!」

ツンがそう言い、いつの間にかに手にしたキースホンドから、矢を射る。
途端、風はキースホンドから放たれた矢をまとい、デイを目掛けて飛んでいく!

(#;゚;;-゚)「ぐっ…! その程度の矢、すぐに避け……………」



一瞬の、出来事だった。
ツンが、矢を放ったすぐ後? いや、もしかするとそれと同時かもしれない。


その矢は、間を置かずに、デイの首に深々と刺さっていた。

791 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/06(火) 17:10:29 ID:u9VYnEPn0
(#゚;;O゚)「ぐ……ぁ…がああぁあぁあ!!!!!」

デイは絶叫上げると、そのまま姿をどこかに消した。
後に残ったのは、風。



( ^ω^)「はぁ、はぁ、はぁ……」

息を切らす僕に、手が差し伸べられる。
ツンの手だった。

ξ゚ー゚)ξ「内藤、大丈夫?」
( ^ω^)「ツン……、僕は、君の兄を…」
ξ゚-゚)ξ「私だって悔しいけど。そんな過去にいつまでも縋らないわ。どう? これで胸のつかえは少し降りたかしら?」
( ^ω^)「ツン…。その弓……、やっぱり、ツンはこの国の王女の?」
ξ゚-゚)ξ「私は、兄さんと一緒にレジスタンスに拾われたというわ。おそらく、今国にいる王女とは父親違いの兄弟なのでしょうね」
( ゚д゚ )「しかし考えてみると妙だな。この国の王女、行方不明との事だったな?」
( ∵)「確かに少し気にかかるな。城へ戻ってみるとしようか」
805 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/06(火) 18:06:09 ID:u9VYnEPn0
城に戻るなり、兵士がツンの周りに集まってくる。
兵士は口を揃え、「王妃様」と言うだけであった。

ξ゚听)ξ「ちょっと! 私は王妃じゃないわ!」
( ---)「何を仰いますか! その容姿、何処からどう見ても王妃様ではありませぬか!」
ξ゚-゚)ξ「声も、身長も、性格もぜんぜん違うでしょうが! 見た目だけで人を判断しないでよねっ!」
( ---)「………では、あなたはただのソックリさんか? それでは、その手に持たれるキースホンドは?」
ξ゚-゚)ξ「一般には公表されるわけはないと思うけれど、私はこの国の王妃の……隠し子よ」
( ---)「な、なんと!?」

兵達は、動揺していたが、その話を信じないというわけにもいかなかった。
確かに、見てくれだけならば王妃に瓜二つであるが、その内面はぜんぜん違っていたからだ。
話によると、王妃が消えたのは、ニイトがVIPを制圧した頃だという。


( -д- )「………妙だな」
( ^ω^)「ん? 何がだお?」

ミルナが珍しく、怪訝な顔をしている。

( ゚д゚ )「私の親…。ギコが国を裏切ったというのは真実だ。突然、戦地から消えたので実際に裏切ったとはいえないが」
( ;^ω^)「な、マジかお!」
( -д- )「それだけではない。VIP城で戦った魔法使い、あやつめは、マルチーズを欲していた。私以外の者に使わせる為にな。
普通に考えれば、今の世でマルチーズを扱えるのは、私と父上しかいない。そして、キースホンドの後継者であるこの国の王女も同時期に消えた…」
( ;^ω^)「な…」
( ゚д゚ )「なぜ、デイがこの国の王妃を使ってキースホンドを手に入れさせなかったかは分からんが…。
裏で、【魔】が動いている事には、相違ないだろうな」
808 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/06(火) 18:13:48 ID:u9VYnEPn0
残る神器は、疾風の槍【バセンジー】を残すのみとなった。
バセンジーは、北東の中立王国ブーンにあるという。

だが、いくら槍を使えど、僕は適性者ではない。
だが、敵も神器を狙っている以上、後れを取るわけにはいかない。

ひとまず、僕たちはブーンに向かう事になった。

809 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/06(火) 18:22:58 ID:u9VYnEPn0
(#゚;;-゚)「ぐ………、この私が…まさか…」

苦い表情をするデイ。
その前に、二人の【魔】が現れる。

(#・;;-・)「しくじったのか、デイ」
(#。;;o。)「刻印を……やられたのね……ククク。貴方も、これまでね…」
(#゚;;O゚)「ぐっ…、こんな所で終われるか! 封印を解くカギを手に入れたのも私なのだぞ!!」

(#・;;-・)「我々に失敗など許されない。だが、君は失敗してしまったのだ」
(#。;;o。)「さて……、あのお方は…貴方を見捨てないでいてくれるかしら……ククク」


(#゚;;-゚)「クソッ! 元はといえば、内藤ホライゾン…!! あいつのせいで……私は…!!」
813 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/06(火) 18:30:57 ID:u9VYnEPn0
ブーンは、先日までニュウソクの兵と交戦をしていた。
だが、数日前、いきなりニュウソクの兵が全て姿を消したというのだ。
そのせいか、ブーンでは今、他国からの警戒が強かった。


――――ブーン、国境

( ゚д゚ )「私はコッチミルナ。ニイト国から王の使いとしてやってきた。これが親書である」
( =。=)「…悪いが、お引取り願おう。それが本物とは限らぬ。迂闊に他国の者を入れることは出来ない」
( ゚д゚ )「…そうか」

( ^ω^)「なんか、タナシンのときと同じような言い回しで断られてたお」
( -д- )「いや…、仕方ないのだろうがな」
ξ゚听)ξ「もう、だらしないわね! 私が言ってやるわ!」
( ^ω^)「ちょ、ツン!」


ξ゚-゚)ξ「私は、タナシンの王妃です。今回は用があり、ニイトのコッチミルナを連れてここに来ました。通してくれますね?」
( =。=)「証拠となるものはあるだろうか」

ツンが、背中からキースホンドの弓を取り、兵士に見せる。

( =。=)「…! これはキースホンド……。どうぞ、お通り下さい」

ξ゚ー゚)ξ「フフフ、騙せるもんねえ」
( ;^ω^)「ツ、ツン」
817 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/06(火) 18:42:24 ID:u9VYnEPn0
( ∵)「国に入れたは良いが、肝心のバセンジーの在り処がわからんぞ。一刻を争うのだ、早く誰かから聞き出さねばな」」
( -д- )「うむ……。先ずは、城にでも行ってみようか」
( ^ω^)「…その必要はないお。僕が、知っているお」
( ゚д゚ )「な、本当か! しかし何故?」

( ^ω^)「ブーン…。ここは、僕の故郷だお」


そう。ここは、僕の住んでいた国。
戻ってくるのは…、ニュウソクの兵士になろうと家を出た時だ。

( ^ω^)「でも、その前に…。ある村に寄りたいんだお。それでもいいかお?」
( ゚∀゚)「………お袋さんか」
( ゚д゚ )「ああ、勿論だ。こちらばかりが贅沢を言っていられないからな」
822 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/06(火) 18:54:26 ID:u9VYnEPn0
内藤の村は、本当に小さな村だった。
畑が人口より多く、自給自足で十分まかなっていけるほどの村だ。
私やビコーズ君たちは、内藤の家の前に立っていた。
内藤は、一人で行かせて欲しいと言い、家の中に入っていった。


( -д- )「…ジョルジュ、内藤の母上について何か知っているのか?」
( ゚∀゚)「ああ。内藤は、本当は病気のお袋を助けるための金集めにニュウソク隊に入ったそうだ。だが、俺たちが無理やりレジスタンスに引き込んでしまってな…」
( ゚д゚ )「そうだったのか」
( ∵)「内藤が家から出てきても、そっとしておいてやろうな」



その後、内藤は母の遺体を家から持ち出した。
その遺体は、何日放置されていたのだろうか? 凄まじい臭いを放っていた。
我々は遺体を焼き、小さな墓を作った。

内藤は、しばらくその墓の前で佇んでいた。

 

834 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/06(火) 19:11:42 ID:u9VYnEPn0
内藤の話によると、バセンジーはこの村のすぐ近く、海辺の祠に神具として祭られているとのことだ。
だが、その祠に入るには、特別な許可が必要だと言う。

( ^ω^)「ブーン王からの許可をもらえれば、入れるお。でも、今ブーン王は遠征していて、新書が書かれるのは王が帰ってくる頃になるお」
( ゚д゚ )「…やむをえまい。門番を気絶させてしまおう」

他に方法もなく、僕たちはその意見に賛成した。


―――――暗い場所―――

(#゚;;-゚)「いかん……、刻印がもう…もたぬ…」

首を押さえながら、ふらふらと歩くデイ。
その首からは、真っ黒な液体がこぼれおちている。

( ´∀`)「どうした、デイよ」

そんなデイの前に、黒装束を羽織った男が現れる。

(#゚;;-゚)「……! 公爵閣下……、今一度…今一度、私に刻印をお与えください!」
( ´ー`)「ほう、君ほどの者が刻印を破壊されるとは…! 相手は誰だい? 実に興味がある」
(#゚;;-゚)「裏切り者の……内藤ホライゾンです」

男が、一瞬怪訝な表情をする。
だが、その表情は、次の瞬間には不気味な笑いに変わっていた。

( ´∀`)「これはとんだ茶番だな……。ククク……ハハハハハ!!!!」

後には、その男の笑い声だけが、響いていた。
844 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/06(火) 20:05:11 ID:u9VYnEPn0
私たちは、その祠に来て驚愕した。
門番が、倒れている。脈は無い。死んでいるのだ。

( ゚д゚ )「…急ごう、【魔】が中にいる」

私たちは、祠の中に入った。


祠の中に入って先ず見えたのは、二人の男と、一人の女の姿。
私は、女には見覚えがあった。数日前にタナシンでであった、デイと言う女だ。
後の二人の男は……知らない。

( ^ω^)「!! あなたはブーン王! 何故ここに!?」
(;゚д゚ )「なんだと!? あの男がブーン王? 奴ら、ブーン王に槍を抜かせようとしているな!」

(#゚;;-゚)「無駄だ。バセンジーはもうわれらの手におさまる」

(ll゚ω゚)「ア……ァ……」

ブーン王が、槍の柄に手をかけた。
848 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/06(火) 20:14:23 ID:u9VYnEPn0
だが、その槍が抜ける事はなかった。
ブーン王は槍を抜こうとはしているが、槍のほうに抜かれる気がないように見える。

(#゚;;-゚)「!? どう言う事だ…? 適性者は、あの忌々しい勇者達の血を引くものでは…!?」
( ´-`)「…しくじったな、デイよ。刻印を修復してやったと言うのにな」
(#゚;;-゚)「こ、公爵閣下…」

デイと、見知らぬ男が会話している。
あの男も、おそらく【魔】なのだろう。
公爵閣下と呼ばれるからには、【魔】の中でも上にいる者か…?

( ´∀`)「おや? 君は裏切り者の内藤ホライゾンではないか。こんな所までご苦労だね」
( ^ω^)「…公爵閣下、と呼ばれていたお。一つ聞きたいことがあるお」
( ´ー`)「なんだね? 難しい話でないのならば答えてあげよう」

( ^ω^)「………僕は、【魔】なのかお?」
( ´-`)「まあ、結論から言えば、そうだ。お前は、【魔】だ」
( ´ω`)「…そうかお」

内藤は、つらそうな表情をしていた。
自分が【魔】だと言う事が、よほど身にこたえているのだろう。

( ^ω^)「それともう一つ……。裏切り者とは、なんのことだお」
( ´∀`)「ふむ…、その事については覚えていないのか。まあ、いいだろう。話してやろう」
856 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/06(火) 20:27:03 ID:u9VYnEPn0
( ´∀`)「元々、現世に居る【魔】とは、全て私が作り出したものだ。そこのデイも、お前も含めてな」
( ^ω^)「…なっ!? 僕が…作られた!?」
( ´ー`)「何か変な事を言ったかな?」
( ;^ω^)「…僕は、幼い頃の記憶があるお。僕を育ててくれたお母さんの事も覚えているお!!」
( ´∀`)「話は、まだ終わっていないだろう。」

( ´∀`)「私はある秘密組織で、【魔】についての研究をしていたのだよ。人が人を支配する時代を、終わらせるためにな」
( ゚д゚ )「人が人を支配……身分階級の事か?」
( ´ー`)「ある日、私は三体の完成品を作った。その完成品はまだ出来立ての状態でね。人で言う、赤ん坊のような状態だったのさ」
( ^ω^)「…………」
( ´∀`)「ところがある日、その完成品のうち、一体がね。ケージの外へ出してやった隙に、逃げ出してしまったんだよ」
( ^ω^)「それが…僕?」
( ´ー`)「そうだ。それが君、内藤ホライゾンだ。あの後、君の言うお母さんに拾われたのだろうね」

( ∵)「待て。内藤は赤ん坊のような状態だったのだろう? ならば、そう遠くへはいけないはずだ。
つまり……、その組織とやら、このブーンのどこかにあるのではないか? 伝承では、【魔】の根城もブーンにあったと聞くが…」
( ´∀`)「賢いな。その通りだよ。それこそが、ブーンに本部をもつ我々の組織、【スレンダー】だ」
865 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/06(火) 20:39:15 ID:u9VYnEPn0
( ゚д゚ )「【魔】は当の昔に滅ぼされたと聞くが?」
( ´∀`)「言ったろう? 我々が作ったと」
( ゚∀゚)「どうやって……そんなものを作ったと言うのだ!」
( ´∀`)「簡単な事だ。適当に赤ん坊を拾い、【魔菌】を注射すればいい。赤ん坊に入れるのが大事なんだがね。フフ」
ξ゚听)ξ「なっ!? あなた、罪も無い赤ん坊を【魔】にしたというの!? それに、【魔菌】って何よ!」

( ´∀`)「【魔】は確かに滅びた。だが、彼らの根城には、残りカスがあったよ」
( ゚д゚ )「残りカスだと?」
( ´-`)「我々、スレンダーは古文書を解読し、【魔】の根城に侵入した。そこで得られたのは…、奇妙な粉だけだったよ。私はそれを、残りカスと呼んでいた。
だが、驚いた事にね。これを幼いマウスに注射したら、なんと古文書で見た【魔】になってしまったのだよ! おとなのマウスには効かなかったのにね」
( ^ω^)「…それで、人間にも【魔菌】を注射したと?」
( ´∀`)「そうだ。戦乱の続く世の中で、赤ん坊の一人や二人を手に入れるのは難しい事ではなかったよ。君は、そのうちの一人だ」
( ∵)「…刻印と言う言葉をよく、【魔】とセットで聞くな。それはなんだ?」
( ´∀`)「……流石に、そこまでは教えられないな、私は、お喋りをしにここに来たのではない」

その男は、ブーン王を見る。
そして、ブーン王に手を突きつける。
その途端に、男の手から触手のような物が生え、ブーン王の体を八つ裂きにした。

( ´∀`)「槍が抜けぬのならば、この男に用は無い」
( ^ω^)「…貴様!!!」
869 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/06(火) 20:47:46 ID:u9VYnEPn0
( ´∀`)「内藤ホライゾン。貴様も魔菌を体に持っている。【魔】となるのも、時間の問題だ」
( ^ω^)「………………」

(#゚;;-゚)「内藤ホライゾン。私もその時の完成品の一人だ。後で公爵閣下にお前が逃げ出したと言う事を聞いたとき……私は心底、お前が羨ましかったのかも知れぬ」
( ´-`)「…何を言う、デイ」
(#゚;;-゚)「私は、魔になることなど自ら望んではいない…。お前達を見ていたら、私も普通の生活を送ってみたかったと思うようになってしまったよ」
( ^ω^)「……デイ」

( ´∀`)「フフフ…。デイ、貴様も所詮は元が人間だ。やはり、【魔】には成り切れなかったか」

公爵と呼ばれた男が、今度はデイに手をかざす。
すると、その掌から稲妻がデイに向かってほとばしった。

(#゚;;O゚)「内藤………、頼みがある」
( ^ω^)「なんだお…?」
(#゚;;ー゚)「せめて最後に…、お前に殺して欲しい」

デイがそう言った瞬間、視界が光に包まれる。


そして、その光が消えた時、そこには、もはやデイではなくなった、化け物が立っていた。

( ´∀`)「使えぬ者に用は無い。内藤、君達にはここで死んでもらう」
( #^ω^)「……貴様! 許さん! 貴様は命を何だと思っているんだお!!」
( ´ー`)「ふっ…。命など、たわいのないゴミよ。
それと私は、貴様ではない。私はスレンダーのリーダー、モナーだ」

モナーはそういうと、姿を消した。
890 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/06(火) 21:04:39 ID:u9VYnEPn0
( ^ω^)「デイ! 君の気持ちは良くわかるお! だから……最後に、僕が君の願いを果たすお!」

内藤がバセンジーの柄に手をかける。
ブーン王が抜けなかったのだ。単純に、神器を扱える人間が勇者の血を持っている事だけではないと言う事だ。

ならば、神器を扱う条件は………神器に、認められることだ!

( ^ω^)「みんな! 彼女は…僕にやらせてくれ!」


内藤はそう言うと、バセンジーを構えて化け物に走りこんでいった。


ξ゚听)ξ「ちょ、ちょっと! みんな、内藤を助けなきゃ!」
( -д- )「これは奴の戦いだ。私たちが手出しをする余地は、ないさ…」
905 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/06(火) 21:21:54 ID:u9VYnEPn0
デイの巨大な手が、内藤を鷲掴みにしようと伸びる。
内藤はそれをかわし、、返す槍でデイの肉を抉る。
だが、デイの攻撃はおさまらない。
今度は、その巨体全てを使い、内藤を取り込もうとする。

( ^ω^)「デイ! 僕も同じだ! 【魔】になんかなりたくない!」

デイから、返事はない。聞こえているのかも、わからない。

内藤はその速さでデイの後ろに回りこみ、背中を駆け上がる。
そして、その頭部にバセンジーを突き立てる。

「グオオオォォォォオオォオオアアア!!!!」

デイが、もがき、苦しむ。
その隙を逃さず、内藤は頭部からデイの膝へと降下、心の臓を突き刺した。

( ^ω^)「だから、デイ…。君の苦しみを、僕は少しでも解りたい。君の願いを叶える事で……それが出来たなら、僕は良かったと思う」

内藤はデイの膝から飛び降りる。
それと同時に、デイの巨体も地面に音を立てて崩れ落ちた。
911 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/06(火) 21:30:09 ID:u9VYnEPn0
( ゚д゚ )「内藤……」
( ^ω^)「行こう! 神器は全て揃った! 今、僕達の本当の目的は、モナー……、いや、スレンダーを倒す事だ!」
ξ゚ー゚)ξ「これ以上……内藤やデイのような人を増やさないためにもね」
( ゚∀゚)「あぁ。ここまで来たんだ。最後まで付き合ってやるぜ」
( ∵)「ふふ、私もとんだお人よしになったものだ」



決意は、一つにまとまる。
僕達は、スレンダーを倒す! もう、二度とこんな悲しい事は繰り返させない!!
914 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/06(火) 21:38:41 ID:u9VYnEPn0
( ´∀`)「…初号三機のうち、二体も失ってしまったか。これは酷いな」

(#・;;-・)「モナー様」
( ´-`)「…グリスか。どうした?」
(#・;;-・)「内藤ホライゾンがバセンジーを手に入れたとの事です」
( ´∀`)「ふむ…。まさか、デイを倒すとは。内藤ホライゾン、やつは傑作かも知れぬ」
(#・;;-・)「いかが致しましょう」
( ´-`)「放っておけ。奴らは直、ここへと来るだろう。殺すのは、それからでも遅くない」
(#・;;-・)「了解しました…」
( ´∀`)「グリスよ。内藤もデイも私を裏切った。貴様だけは、私を裏切らんでくれよ?」
(#・;;-・)「……私は、主君を裏切りなど致しませぬ。では」

モナーに背を向け、立ち去るグリス。

( ´-`)「ふん。口先で隠しても、背中が語っているぞ。所詮、奴も人間か」
938 : ◆X5HsMAMEOw :2005/12/06(火) 21:57:21 ID:u9VYnEPn0
( ゚д゚ )「…ビコーズ君。何か、【魔】の城について詳しい事は解らんかね」
( ∵)「詳しい場所などは調べてみれば解るだろう。憶測だが、スレンダーのアジトと【魔】の城の距離はそう遠くはないだろう」
( ^ω^)「…それなら、調べなくてもいいお。僕の【魔】の血が、騒いでる。おそらく、たくさんの魔菌の実験体がいるんだと思うお」
ξ゚听)ξ「内藤…」
( ^ω^)「僕もいつか【魔】になってしまうのかも知れない。それなら、僕が僕であるうちに、僕は彼らを楽にしてあげたいお」


その後、内藤の案内で、私たちは大陸の最北東にやってきた。
そこには、不気味な祠があった。内藤が言うには、この中だとか。

祠に入る前、内藤が私達のほうを向き、こんな事を言った。


( ^ω^)「…みんな。僕は【魔】だけど、みんなと仲間だお! だから…みんなも」
ξ゚听)ξ「何よ、ここまで来て水臭いわね! 私だってあ、あんたのこと仲間だと思ってるわよ!」
( ∵)「レジスタンスに誘い込んでしまった非があるからな。せめてもの罪ほろぼしとでもしておくかな」
( ゚∀゚)「お前もあの頃に比べれば随分腕を上げたよな。この戦いが終わったら、手合わせしたいぜ」
( ゚ー゚ )「私は父上に、借りは必ず返せと言われている。内藤、今がその時だ」

( ^ω^)「みんな……ありがとう」
inserted by FC2 system