4 : ◆fkFC0hkKyQ :2010/03/17(水) 21:16:19.81 ID:KzpbEqrr0
blank disc P-4. Subliminal murder


“I felt the hate rise up in me

Kneel down and clear the stone of leaves

I wander out where you can't see

Inside my shell, I wait and bleed.”



……Wait and bleed/Slipknot


5 : ◆fkFC0hkKyQ :2010/03/17(水) 21:19:55.49 ID:KzpbEqrr0
prologue



――ドアベルのオシャレな音に振り向く。相変わらず、時間を守らない奴だ。

(メ^ω^)ノ「おいすー。おっまたしー」

('A`)「おせえよ。一体何時間待ったと思ってるんだ」

(メ^ω^)「ごめりんこ。ちょっと野暮用がありまして」

('A`)「どうせネトゲ関連だろ?え、“紅の堕天使”様よぉ」

(;メ^ω^)「その件はもう勘弁してくれお……」

眉を八の字にして、塩豚は俺の向かいの席に座る。ニューソク区の大通りから路地を二つ挟んだ喫茶店「ラシェット」。
平日の昼下がりと言う事もあり閑散とした店内には、俺達の他には暇そうにあくびをかみ殺す給仕以外に人の姿は見当たらなかった。

(メ^ω^)「苺パフェとミルクティー、あ、あと苺のタルトとクランベリーパイ」

オレの奢りをいい事にスイーツをしこたま注文する塩豚。遅れてきたというのに随分と良い根性をしてやがる。

(メ^ω^)「それで、向うはどうだったんだお?地雷は踏まなかったかお?」

('A`)「踏んでたらここにいねーよ」

(メ^ω^)「それもそうだおね」

7 : ◆fkFC0hkKyQ :2010/03/17(水) 21:21:24.23 ID:KzpbEqrr0
つまらなそうに舌打ちをする塩豚に本気で殺意が湧きそうになるが、寸での所で踏みとどまる。
冷静に、冷静に。オレはこいつより大人なんだ。

(メ^ω^)「確か女記者さんと一緒だったんだお?そこら辺どうなんだお?」

('A`)「どうって?」

(メ^ω^)「躓いた拍子に押し倒しちゃったりとか、部屋のドアを開けたら着替え中だったとか…そういうムフフイベントは無かったのかお?」

運ばれてきた苺タルトにかぶりつきながら、塩豚は何時もの福々顔で聞いてくる。
怒りを通り越して溜息が洩れた。

('A`)「……ねーよ」

(メ^ω^)「そうかお?……なんか、元気ないみたいだおね」

('A`)「いや、まぁ、な……」

(メ^ω^)「おっお。まぁそう落ち込むなお。童貞を捨てる機会はまだあるお」

完全に勘違いした方向でフォローを入れると、塩豚はクランベリーパイに手を伸ばす。
無邪気な横顔に、オレは完全に毒気を抜かれてしまった。

('A`)「それでよ、さっきから気になってたんだけど……」

(メ^ω^)「お?」


8 : ◆fkFC0hkKyQ :2010/03/17(水) 21:22:32.64 ID:KzpbEqrr0
クランベリーパイを頬張りながら、塩豚は顔を上げる。
クランベリーソースで汚れた艶の良い右頬には、火傷のような醜い傷跡が横に走っていた。

('A`)「その傷跡、どうしたんだ?」

(メ^ω^)「ああ、これかお……」

塩豚はクランベリーパイを皿に置き、自分の右頬をそっと撫でる。

(メ^ω^)「ドクオが砂漠の国に小旅行に行ってる間に、こっちでも色々あったんだお」

冗談めかして言う塩豚の目は、何処か遠い場所を眺めるように細められていた。

('A`)「色々ってなんだよ」

(メ^ω^)「まぁ、色々だお」

思わせぶりに窓の外へと視線を移す塩豚。
つられて視線を動かすと、街頭ホロの巨大なスクリーンが目に飛び込んでくる。

《…これに対して、S&Kインダストリー側は、回答を見送っており……》

何時ものニュース、何時もの人波、何時もの喧騒。
VIPの街は何時もと変わらず、その色褪せた享楽の底で淀んでいた。

10 : ◆fkFC0hkKyQ :2010/03/17(水) 21:26:34.76 ID:KzpbEqrr0
(メ^ω^)y―~「何も変わらない……。ホントに、この街は何があっても変わらないお」

懐から葉巻を取り出して、塩豚は百円ライターで火を灯す。

('A`)「あれ?お前、煙草なんていつ覚えたんだ?」

オレの問いに塩豚は答えず紫煙を吐き出した。
きつい匂いが鼻をつく。銘柄は分らないが、相当に高価なものに見える。

(メ^ω^)y―~「“虚無の晩讃”って、知ってるかお?」

('A`)「は?いや、知らんが……」

(メ^ω^)y―~「出先でも自分の国のニュースは見ておくもんだお。…最も、今じゃ誰も憶えていないとは思うけど」

('A`)「それがどうしたんだよ?」

塩豚が、もう一度紫煙を吐く。
長い、長い、溜息のような煙。
やがて、葉巻の匂いにオレが慣れた頃、ブーンはゆっくりと語り始めた。

(メ^ω^)y―~「あれは、ドクオが向うに発ってから直ぐのことだったお……」

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