10 : ◆cnH487U/EY :2009/02/14(土) 21:16:20.14 ID:3WPpvdgrO
从゚∀从処女の缶詰め。のようです



“甘い甘い恋のチョコレート

あなたにあげてみても目立ちはしないから

私ちょっと最後の手段できめちゃう”



……国生さゆり/バレンタイン・キッス

11 : ◆cnH487U/EY :2009/02/14(土) 21:18:46.02 ID:3WPpvdgrO
〜preparations〜

━━ふらふらと、ゆらゆらと。さ迷うように、踊るように。覚束ない足は、誘われるようにネオンの下を歩き続ける。

( ∵)「べ〜らんめぇ〜!なぁにが…ヒック!チョコレートだぁ〜」

千鳥足で進む、歓楽街。すれ違う人々の幸福そうな横顔に、赤らんだ自分の頬との対比を見る。

( ∵)「そぉんなもん!ウェッ…糞の肥やしにも…なりゃあせんわいっ!」

バランスを崩した身、傍らの電柱に預け、へたり込む、路地裏。

( ∵)「まぁだお月様を見てた方が…ヒック!…腹ぁ膨れるわいぃ〜」

振り上げた拳。勢いをつけ振り下ろそうとして、猛烈な吐き気。

( ∵)「ゴェェ〜!!ガハッ!ゴボッ!」

こらえようともせず、なすがままに。吐き散らす、吐き散らす、吐き散らす。

( ∵)「……お月様ぁ〜お月様ぁ〜小生のお月様ぁ〜」

吐寫物の傍らで丸くなり、抱いた膝。
滲む視界に、涙の存在にはたと気付く。

( ∵)「……寂しい」

時は2月14日、セントバレンタイン。腕時計の針は、9の数字を回った辺り。
14 : ◆cnH487U/EY :2009/02/14(土) 21:21:36.70 ID:3WPpvdgrO
( ∵)「寂しいよぉ……」

震える声で、絞り出す想い。誰かに届けと、祈り込め。

( ∵)「寂しいよぉ…!」

涙と、鼻汁と、吐寫物にまみれた言葉はしかし、虚しく路地裏の暗がりへ吸い込まれて消えた。

( ∵)「……うぅ」

嗚咽を押し殺し、上げた顔。涙で滲んだアスファルトの上。ぽつねんと佇む小さな小さな缶詰め。

( ∵)「……何、だ?」

手を伸ばし、掴む。メタリックブラックの表面にピンクのリボンが巻き付いた缶詰め。

蓋に踊る文字はこう。

从゚∀从処女の缶詰め。

( ∵)「……?」

誘われるよう指をかけ、ゆっくりとおこすタブ。

途端、缶詰めから湧き出る眩い光。
開けて居られず閉じる目。瞼の裏、映し出されるは異界の景色、異界の物語。

さぁ、缶詰めを開けよう。僕たちは、一人じゃない。

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