14 名前: ◆cnH487U/EY :2009/01/31(土) 21:15:24.44 ID:FZJLHqAmO
〜track-α〜

━━どうして、人は争うのか。

(#'A`)「ぬうぅぅおおおお!」

どうして、人は傷つけ合うのか。

从#゚∀从「あああぁぁあ!」

どうして、人は憎しみ合うのか。

(#'A`)「ふっざけんなぁぁぁぁあ!何でいきなり強制離脱(アボート)かけるんだよ!いいとこだったのにぃぃい!」

ニューロジャックに繋がったままの結線ケーブルを、怒りに任せて引き抜く。

不衛生と自堕落の窮極と化した我がねぐらの中。
情報端末(ターミナル)の脇のサイドボードに置かれた「アトリエ家具屋」の最新作のパッケージ上で、麗しきナース達が悩ましげな視線をこちらに向けていた。

(#'A`)「もうちょっと!もうちょっとで水樹たんのもちもちした太ももにしゃぶりつけたのにぃぃぃ!それを君は!君は!」

久し振りの休日。
一人性風俗鑑賞会を強制中断されたオレの怒りたるや、それはもうここに記したらR23もの(この心理描写はグロテスク・又は残酷な表現を多分に含みます)だろう。
18 名前: ◆cnH487U/EY :2009/01/31(土) 21:17:43.51 ID:FZJLHqAmO
从*゚∀从「見ろ、ドクオ!外はこんなに晴れているぞ!なんと清々しい休日なのだろう!」

そんなオレの憤慨もどこ吹く風とばかり、部屋に一つしかない窓を笑顔で開け放つなんちゃって清純乙女の名はハインリッヒ。

血のような真紅の双眸に白磁の肌、星屑のような輝きを放つ銀髪の彼女は、難しく言えば特A級護衛専任ガイノイド。
簡単に言えば、腕から鉄砲が出てくるようなコンバット・ロリータ・ロボット。

毒舌とその甘いマスクが売りの我らがヒーロー(誤植ではない)。

通称「アイアンメイデン」、鋼鉄の処女の十代後半の少女の外見に相応しい眩いばかりの笑顔もしかし、今のオレの怒りを止めることは出来ない。

(#'A`)「太陽がなんだ!日光がなんだ!そんなもんで性欲が満たされるか!」

オレ達二人は何でも屋。
金次第で某富樫のアシスタントからプレジデントの護衛までこなす、頼れるスーパーマンズ。
慢性的な金欠病(アルファプラス型)はどこへやら。
最近の依頼に次ぐ依頼で珍しく懐に余裕の出来たオレは、久し振りに看板を裏返し休日をとろうと思ったのだが。
21 名前: ◆cnH487U/EY :2009/01/31(土) 21:21:48.27 ID:FZJLHqAmO
从*゚∀从「何を言う!小鳥たちのさえずり!頬を撫でる優しい風!自慰行為の補助にはうってつけの日よりであろう!」

(#'A`)「青空オナニーするほどオレは落ちぶれちゃいません!」

不気味なまでの爽やかオーラを纏った鬼畜機械娘は、オレの唯一の楽しみであるエロゲーを許してはくれなかった。

从゚∀从「……おい、腐敗性タンパク質。よく聞け」

(#'A`)「水樹たんの!太もも!」

从゚∀从「貴様はこのままでは腐ってしまう。比喩ではない。物理的にだ」

(#'A`)「水樹たんの!おっぱい!」

从゚∀从「せっかくの休日、閉め切られた部屋で一人アダルトゲームソフトウェアに没入。電脳空間での自慰行為に耽る」

(#'A`)「水樹たんの!じゅわっと茂み!」

从゚∀从「不健康。不健全。絵に描いたような引きこもり男のような生活。慢性的となったこの習慣の行き着く先は、ぐずぐずに腐敗した原型を留めぬ貴様の骸だ」

(#'A`)「水樹たんの!桃尻!」

从゚∀从「今ならまだ間に合う!さぁ、私と行くのだ!光溢れる太陽の下へ!真人間への第一歩を!さぁ!」

('σA`)「さーてログインログイン」

从゚∀从「……」
23 名前: ◆cnH487U/EY :2009/01/31(土) 21:24:26.42 ID:FZJLHqAmO
鷲掴みにされるオレの襟首。

(;'A`)「ちょ!何するんだよ!」

从*゚∀从「ねぇダーリン、今日は何処行くぅ?」

(*'A`)「よーっし!それじゃあ今日は、ピリオドの向こう側まで行っちゃうぞぉ!」

从*>∀从「レッツゴー!」

ずるずると引きずられるオレの体。

(#'A`)「って行くかヴォケェ!」

从゚∀从「……これほどまでに策を尽くしても、貴様は外に出ることを拒むのか」

(#'A`)「離せやい!離せやい!オレはお家で水樹たんとうはうはちゅっちゅするんだい!」

从゚∀从「しかし、私も今日という今日は容赦せぬぞ。諦めて大人しくするのだな」

手足をがむしゃらに振り回して抵抗するも、虚しく引きずられていくオレ・ザ・駄々っ子。

(#'A`)「はーなーせーよ!はーなーせーよ!」

部屋を出、階段を引きずられ、辿り着いたマンションの玄関ホール。

从゚∀从「見なさいドクオ、ここがお外よ」

ママンが扉を開け放った瞬間、オレの顔にどぎつい直射日光が降り注いだ。
26 名前: ◆cnH487U/EY :2009/01/31(土) 21:27:05.19 ID:FZJLHqAmO
(;゚A゚)「ぎゃー!溶けるぅぅぅう!死ぬぅぅぅぅう!」

从゚∀从「いい加減に悪あがきはよせ」

(;゚A゚)「あばばばばば」

从゚∀从「……」

(゚A゚)「……ばばばば」

ば、ば、ば、ば……。

从゚∀从「……」

(゚A゚)「ば…ば…ば…ば……?」

从゚∀从「……」

(゚A゚)「い…痛い……」

从゚∀从「?」

お腹……。

(;゚A゚)「痛ぇぇえ!腹が痛ぇ!痛てててて!痛ぇ!痛ぇよお!」
29 名前: ◆cnH487U/EY :2009/01/31(土) 21:28:55.58 ID:FZJLHqAmO
从゚∀从「下らん演技は……」

(;゚A゚)「あががががが!ぃぃいいぎぎぎぎっ!」

从゚∀从「……おい」

ぱねぇ!マジぱねぇ痛みっすよ!何これ!死ぬ!マジで死ぬ!冗談抜きで死ぬっての!

(;゚A゚)「腹がよじれ…ぃぃいぎゃぁぅぅうぅうぐぐぐ!」

从;゚∀从「おい、本当に…痛むのか?」

だからさっきから痛いって言ってんだろうが!

(;゚A゚)「いでぇぇぇえ!ああああああぁあ!死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬぅぅう!」

从;゚∀从「落ち着け、大丈夫だ。大したことはない」

救急車!救急車!

从;゚∀从「あぁ、大丈夫。ただの生理だ」

んなわけあるか!
31 名前: ◆cnH487U/EY :2009/01/31(土) 21:30:13.27 ID:FZJLHqAmO
(;゚A゚)「ぅぅうぬぅうぬぐぐぐぅおぉ……!」

从;゚∀从「……えぇと、救急車…救急車…117?」

(;゚A゚)「そ…れ…は……」

時報だよ。

最後の言葉を口が紡ぐ前に、オレの意識は暗闇の中へと落ちていった。
35 名前: ◆cnH487U/EY :2009/01/31(土) 21:32:08.15 ID:FZJLHqAmO
 ※ ※ ※ ※

━━目を覚ますと、白い天井が目に入りました。

('A`)「……」

僕の部屋の天井は煙草の脂で真っ黄色です。さて、ここは一体どちらでございましょうか。

(〇ゝ〇)「目が覚めましたか」

横合いからかけられた声に振り向けば、そこには白衣の男性がおります。
僕はどうやら、ベッドに寝かされているようでした。

('A`)「あの……」

(〇ゝ〇)「盲腸ですね」

('A`)「…え?」

(〇ゝ〇)「生活習慣の乱れが原因でしょう」

ええと……。
38 名前: ◆cnH487U/EY :2009/01/31(土) 21:33:44.81 ID:FZJLHqAmO
(〇ゝ〇)「今回は発見が早かったので、手術は必要ありませんね。抗生物質を点滴して散らしますので、一週間ほど入院すれば治りますよ」

('A`)「……」

盲腸……。

(〇ゝ〇)「何か、質問は有りますか?」

入院……。

('A`)「……エロゲは…」

(〇ゝ〇)「病院内では出来るだけ電子機器の使用は控えて下さいね」

畜生……。
41 名前: ◆cnH487U/EY :2009/01/31(土) 21:35:36.10 ID:FZJLHqAmO
(〇ゝ〇)「それでは、私はこれで。何かあれば、枕元のナースコールを押して下さい」

そう言って、白衣の男性は視界から消えました。
ぼんやりとした頭の僕も、左腕に突き刺さった点滴のチューブにようやく事態が飲み込めてきます。

('A`)「……水樹たん」

しばらくの間、彼女との秘め事はお預け。

その事実に打ちのめされ、再び僕の意識は奈落の底へと墜ちていくのでした。
43 名前: ◆cnH487U/EY :2009/01/31(土) 21:36:58.95 ID:FZJLHqAmO
 ※ ※ ※ ※

━━ニューソク中央病院。ニューソクに数ある病院の中でも、あまり繁盛している方ではない安病院。
オレが運び込まれたのは、入院するにはあまり嬉しいとは言いかねる医療施設だった。

('A`)「まぁ、ニーソクの闇医者よりかはましなんだろうけどな」

あそこら辺の医者に掛かることとなったら最後、手術と称して得体の知れない人工臓器だとかを移植された上、法外な治療費を請求され兼ねない。

从゚∀从「調子の方はもういいのか?」

ベッドサイドに座った機械娘がりんごの皮を剥きながら、オレに尋ねる。
彼女が救急車を呼んでから、半日が過ぎただろうか。
病院に担ぎ込まれてからこっち、オレは痛み止めの麻酔の影響で眠りこけていたようだ。

('A`)「あぁ。もう全然。これからアイスホッケーだって出来そうだよ」

そのせいもあってか、あの時オレを死ぬほど苦しめていた腹の痛みも今は全く無く、あれは嘘だったのではないかとすら思える。

从゚∀从「……そうか」

何時もの仏頂面で呟く冷血機械娘。
心なしか、その表情が少し緩んだように見えた。
46 名前: ◆cnH487U/EY :2009/01/31(土) 21:39:26.07 ID:FZJLHqAmO
从゚∀从「……全く、今時盲腸を患うなど貴様も珍しい輩だ」

<(*'A`)「へへ、よせやい。照れるべ」

从゚∀从「医師も日頃の不摂生の積み重ねが招いた病だと言っていた。やはり貴様は一度、徹底的に生活習慣を見直せねばなるまい」

<( '3`)>「やだぷぅー。オレはオレらしく生きるんだもぉん」

从゚∀从「取りあえず、入院準備の傍ら貴様の所持するアダルトゲームソフトウェアは、全て廃棄処分しておいたぞ」

な……な……。

(;゚A゚)「な、なんですとぉぉぉぉおお!?」

从゚∀从「有り難く思え。これで貴様も真人間への第一歩を踏み出したわけだ。これを機会に、少しずつ……」

(;'A`)「な、な、な……」

从゚∀从「あぁ、それと肺ガンの危険性も排除する為、部屋の隅に積んであったカートンの山も焼却処分しておいた。健全な生活は健康な体から、だ」

(;A;)「あぁあんまりだぁぁぁあ……!」

くそったれ!人が病院のベッドに縛り付けられている間に、好き放題やってくれやがって!
51 名前: ◆cnH487U/EY :2009/01/31(土) 21:42:39.64 ID:FZJLHqAmO
(;A;)「くそっ…くそっ…くそぉぉお…」

「おっいすー」

生きる意味を一度に二つも失ったことに涙していると、間の抜けた声と同時に病室の扉が開いた。

( ^ω^)「今時盲腸なんかにかかった間抜けな奴が居ると聞いて」

lw´‐ _‐ノv「嘲笑いに来ますた」

現れたのは塩豚と不思議美女のコンビ。
手ぶらで入ってきたのを見ると、こいつらは本当に嘲笑いに来たのか。

('A`)「……帰れよ」

( ^ω^)「せっかく人が重たい腰を上げて見舞いに来てやったのに、酷い言い種だお」

lw´‐ _‐ノv「差し入れはKO☆MEでーす!」

('A`)「頭痛ぇ……」

久しぶりに顔を見たと思ったら、相変わらずこの調子だ。
オレの周りにはまともな人間が居ないのか?

('A`)「……はぁ」

( ^ω^)「何溜め息ついてんだお。お前が入院してる間、僕はハインちゃんを預からなきゃいけないんだお。感謝されこそすれ、溜め息をつかれるような道理は無いお」

('A`)「え?何?言ってる意味がわかりません」
54 名前: ◆cnH487U/EY :2009/01/31(土) 21:44:48.21 ID:FZJLHqAmO
从゚∀从「前に言っただろう。貴様が病に倒れた場合、代わりに私の整備面でのケアをする人間が居ないと困ると」

('A`)「あぁ、そう言えばそんなことも……」

从゚∀从「貴様の携帯端末を調べたが、驚くほど交友関係が狭くてな。頼れるのが彼しか居なかった」

( ^ω^)「フヒヒwwwwテラボッチwwwwwww」

lw´‐ _‐ノv「私は?ねぇ私は?」

うぜぇ…。

('A`)「フォックスの奴も居るだろうが」

从゚∀从「個人的な見解を述べさせて貰えれば、私も彼の方が安心出来る。だが、彼と塩豚では電子機器に関する知識の量に差があってな」

( ^ω^)「ちょっと待つお。今塩豚って言ったかお」

lw´‐ _‐ノv「やーい塩豚塩豚ぁ」

从゚∀从「近場ということもあって、不服ながら塩豚を選んだ」

( ^ω^)「やっぱり塩豚って言っただろ。お前ちょっと面貸せお」

lw´‐ _‐ノv「そんな気軽に顔は貸せねぇよwwww」

('A`)「ふーん…まぁフォックスも店で忙しいだろうしな。塩豚なら暇も有るだろうし問題ねぇか」

( ^ω^)「おい、屋上に行こうぜ。久しぶりに切れちまったお」
58 名前: ◆cnH487U/EY :2009/01/31(土) 21:46:43.60 ID:FZJLHqAmO
从゚∀从「そう言うわけで、私はこれから一週間は塩豚の家で待機する。何か用事があれば、塩豚の家に連絡を」

lw´‐ _‐ノv「私は?ねぇ私は?」

('A`)「はあくした」

( ^ω^)「……あ、りんごもーらい」

lw´‐ _‐ノv「私も私もー」

('A`)「……」

从゚∀从「……」

( ^ω^)「はむはむはむ……うめぇwwww」

lw´‐ _‐ノv「うさぎちゃんりんごか。ふふふ、手が込んでるのは愛のあ・か・し☆」

59 名前: ◆cnH487U/EY :2009/01/31(土) 21:49:00.16 ID:FZJLHqAmO
('A`)「なぁ…今日はもういいから、お引き取り願えないかな」

从゚∀从「……うむ。私もそろそろ帰ろうと思っていた」

呆れるオレの心中を察したのか、ハインはパイプ椅子から立ち上がるとブーンの首根っこを掴む。

从゚∀从「さぁ、これ以上は病状に障るから今日は戻ろう」

( ;^ω^)「ちょww引きずらないでwwww」

lw´‐ _‐ノv「ずるずるずー」

塩豚の両脇を美女二人が掴んで退出していく姿は、大昔の「捕まえられた宇宙人」のよう。

そんな風に賑やかな彼らが居なくなってみると、病室は途端に静かになった。
62 名前: ◆cnH487U/EY :2009/01/31(土) 21:51:13.80 ID:FZJLHqAmO
('A`)「……」

一応救急車で運び込まれたこともあって、オレの病室は個室だ。
安病院らしくせせこましい病室には、ベッドとオレとその荷物だけがぽつねんと取り残されている。

('A`)「……んー」

喉元過ぎれば熱さも忘れるというか。
嵐も去ってしまえば、名残惜しくすらあるというか。
手持ち無沙汰になったオレは、窓の外へ目をやった。

('A`)「……まだ、昼過ぎか」

冬の終わりが近付いたことを知らせるように、長くなった日。時刻にして大体三時くらいだろう。

('A`)「ちょっくら、お散歩しますかね」

ベッドから身を起こし、ハインの持ってきてくれた着替えの包みの中からナイトガウンを取り出し、羽織る。

左腕から繋がった点滴の管が、どこか場違いなものに思えた。
65 名前: ◆cnH487U/EY :2009/01/31(土) 21:53:34.84 ID:FZJLHqAmO
 ※ ※ ※ ※

('A`)「安病院とか言うけどよ……」

案外……広いです。

('A`)「おいおい…早速迷子とか…洒落にならねぇぞ」

立ち尽くす長い廊下。振り返る来た道。先の案内板で見たところ、ここは一般病棟の四階らしい。
自室のナンバープレートは……。

(;'A`)「何番だっけ……」

えーと、あそこで曲がって、ここで左に折れて……えーと…。

(;'A`)「……えーと」

ヘイ、ブラザー、ちょっと待ってくれ。おいおい…“まさか”、だろ?

('A`)「はは…マジか…」

道……迷っちゃった。テヘッ!
67 名前: ◆cnH487U/EY :2009/01/31(土) 21:55:11.13 ID:FZJLHqAmO
('A`)「……取りあえず、誰かに聞くしかねぇか」

そう思い、辺りを見渡す。
色褪せたリノリウムの廊下を歩いているのは、額が立派にはげ上がった翁や入院服が型にはまった顔色の悪い中年オヤジ達。

('A`)「ここは天国の待合室かよ…」

そこはかとなく不謹慎なことを考えながら、白衣の天使を捜していると。

(*'A`)「うひょっ!居た居た!居ました!」

廊下の向こう、こちらに背を向けた影はまさしく天使!
70 名前: ◆cnH487U/EY :2009/01/31(土) 21:57:58.05 ID:FZJLHqAmO
歩く度にしずしずと揺れるのは、背中までかかった黒髪のロングヘア。その上にちょこんと乗ったナースキャップ。
淡いピンクのナース服は勿論ミニスカート。
そこから伸びる“グンバツ”な生足!

(*'A`)「あのぉ……」

口内に滲み始めた涎を飲み込みながら、オレはその背中に声をかける。

川゚ー川「はい、なんでしょうか?」

それに応じてゆっくりと振り返った彼女の美しさと言ったら!

(*'A`)「おぉ……」
72 名前: ◆cnH487U/EY :2009/01/31(土) 21:59:43.32 ID:FZJLHqAmO
日本人形のように切り揃えられた黒髪が覆う輪郭は、アーモンド型。
長い前髪に隠れがちな瞳は、切れ長でいて優しい流線を描いていて。

盲腸で良かった!

オレは心の中でそう叫ばずには居られなかった。

川゚ー川「何か、お困りですか?」

小首を傾げながらとてとてとかけてくるその姿に、オレの心象風景がうららかな小春日和を映した次の瞬間。

川゚ー川「あっ…」

何かに足をとられたのか。
唐突に。突然に。彼女はその場でバランスを崩すと、前のめりになり。

川>ー川「きゃっ!」

熱烈な接吻を廊下にかました。
74 名前: ◆cnH487U/EY :2009/01/31(土) 22:01:48.79 ID:FZJLHqAmO
(;'A`)「だ、大丈夫っすか?」

点滴を押しながら慌てて駆け寄るオレ。

川д川「……」

うつ伏せのままピクリとも動かないナース。

(;'A`)「あ、あのぅ……」

死んだか?……いやまさか。

(;'A`)「もしもーし」

屈み込んで、肩を叩いてみる。

川д川「……」

え?何?マジ?いやいやいや、待て待て。
え?人間って転んだだけで死ぬの?

(;'A`)「えぇー……」
76 名前: ◆cnH487U/EY :2009/01/31(土) 22:03:05.30 ID:FZJLHqAmO
どうしていいか分からず周りを見るが、道行く患者達はオレ達を目にしてもどこ吹く風と言った様子。
通り過ぎていく間に一瞥をくれる人の瞳は、「またか」みたいに涼しげな色。

(;'A`)「スルースキル高杉だろ……」

それとも日常茶飯事なのか?

川д川「……はっ!?」

首をひねるオレの前で、がばり。

(;'A`)「うぉっ!生きてた!」

倒れた時と同じ唐突さで身を起こす白衣の天使。

川゚ー川「お見苦しいところをお見せしました」

何事も無かったように立ち上がる。
78 名前: ◆cnH487U/EY :2009/01/31(土) 22:04:53.86 ID:FZJLHqAmO
「やーいやーい!うすのろ貞子ー!」

そんな彼女に横合いから幼い声で嘲笑がかけられた。

('A`)「ん?」

l从・∀・ノ!リ人「“がいのいど”のクセにこんなのに引っかかるなんて、相変わらず鈍くさいのじゃー」

目をやれば、廊下の端、曲がり角。
首だけ出して野次を飛ばしていたのは、ひよこ豆ほどに小さな女の子。

川゚ー川「やっぱり妹者さんでしたか。また、してやられてしまいました」

白衣の天使は、そんな女の子へ文字通りのエンジェルスマイルを浮かべた。
見れば、女の子の手にはどこから引っ張ってきたのかコードが握られている。
どうやら、白衣の天使はそれに躓いて盛大に転けたみたいだ。

l从・へ・ノ!リ人「……む」

だというのに、何食わぬ顔で笑みを湛える彼女が気に食わなかったのか。

l从・へ・ノ!リ人「からかい甲斐のないやつなのじゃ!」

むくれたような表情を浮かべると、女の子はさっと顔を引っ込める。
すぐに響くドタバタとした足音に、オレは廊下を韋駄天のごとく駆けていく女の子の姿を想像して、微笑ましい気持ちになった。
80 名前: ◆cnH487U/EY :2009/01/31(土) 22:07:12.95 ID:FZJLHqAmO
('ー`)「……悪戯盛りってやつかねぇ」

川゚ー川「元気なのは良いことです」

('ー`)「伸び伸びと育って欲しいね」

川゚ー川「……はい」

('ー`)「……」

川゚ー川「……」

おっと。何しんみりしてるんだ。

('A`)「あの…」

川゚ー川「はい、何でしょう?」

('A`)「お名前は……」

川゚ー川「はい。貞子と申します」

('A`)「へぇ…奥ゆかしいお名前ですね」

川゚ー川「有難うございます。私も、気に入っております」

('A`)「……」

川゚ー川「……」
83 名前: ◆cnH487U/EY :2009/01/31(土) 22:08:39.78 ID:FZJLHqAmO
('A`)「……」

川゚ー川「……」

あぁ…落ち着く……。

(;'A`)「じゃなかった!」

何だろう、この異常なまでに居心地のいい安らぎ空間。
彼女の周囲三メートルにえもいわれぬ和やかな空気が漂っておりますよ。
危なく本来の目的を忘れて黄昏てしまうところだったわ。

('A`)「オレの部屋ってどこでしたっけ?」

川゚ー川「お部屋…でございますか」

('A`)「はい、お部屋です」

川゚ー川「えーと、ちょっと待って下さいね」
90 名前: ◆cnH487U/EY :2009/01/31(土) 22:11:29.67 ID:FZJLHqAmO
そう言うと彼女は口を噤み、オレ達の間に再び沈黙が訪れる。

('A`)「……」

川゚ー川「……」

('A`)「……」

川゚ー川「……」

('A`)「あの……」

川゚ー川「はい」

('A`)「お部屋…」

川゚ー川「はっ!」

ぼんやりと虚空を見つめていた彼女は、オレの言葉に我に返ったようにこっちを見た。

91 名前: ◆cnH487U/EY :2009/01/31(土) 22:14:07.50 ID:FZJLHqAmO
川゚ー川「お名前は?」

('A`)「ドクオですけど……」

川゚ー川「いいお名前ですね」

<(*'A`)「有難うございます」

川゚ー川「……」

('A`)「……」

川゚ー川「……」

('A`)「いや、だからお部屋……」

川゚ー川「はっ!」

これは、しばらくは部屋に辿り着けそうもないな……。



next truck coming soon...

戻る

inserted by FC2 system